第13回今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会(資料) [2026年03月10日(Tue)]
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第13回今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会(資料)(令和8年1月29日)
1. 報告書(案)について 2.その他 労働政策審議会 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_69693.html ◎資料1:今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会報告書(案) I はじめに 1.障害者雇用の現状と課題→・我が国の障害者雇用促進制度は、障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和 35 年法律第 123 号。以 下「障害者雇用促進法」)の施行以来、障害者の職業の安定という法目的の下、障害者雇用 率(以下「法定雇用率」)による障害者雇用義務制度をはじめ、事業主による雇用障害者の 差別禁止や合理的配慮の提供義務、障害者職業リハビリテーション機関による就職支援等の様々な措置が講じられてきた。障害者雇用義務制度に係る法定雇用率は、障害の有無にかかわらず労働者となり得る機会を確保するという考え方の下、「労働者の総数」に対する「対象障害者である労働者の総数」(労働者には、労働の意思及び能力を有するにもかかわらず、安定した職業に就くことができない状態にある者を含む。)の割合が基準とされてきた。また、こうした障害者雇用促進法に基づく措 置以外にも、企業における障害者雇用に対する理解の広がりと経験の蓄積の大きな前進とともに、地域の就労支援体制の充実等も進み、障害者雇用の土台となる環境も大きく変化してきた。 ・ こうした背景の下、我が国の障害者の雇用状況については、直近(令和7年6月時点)の民間企業 (常用労働者 40 人以上に限る。)における障害者雇用者数は 70.5 万人と、22 年連続で過去最高を更 新する等、着実に進展している。とりわけ常用労働者数 1,000 人以上のいわゆる大企業においては、「ビジネスと人権」等の国際的な要請やコンプライアンス意識の高まりも背景にある中で、この約 20 年間で法定雇用率を達成する企業の割合が約3割から約5〜6割に増加するなど、雇用促進の動きが 見られる。 ・ 一方で、現在の我が国の障害者雇用に対する課題も指摘されている。例えば、課題の一つに、長年にわたる中小企業における障害者雇用の伸び悩みが挙げられる。常用労働者 100 人未満企業の実雇用率は、直近 10 年間で 1.55%から 1.94%と伸びてはいるものの、障害者を全く雇用していない企業 (いわゆる「障害者雇用ゼロ企業」)も依然多く、障害者雇用が比較的停滞している状況にある。ま た、大企業や特例子会社がない地域において、障害のある働き手にとって地元の中小企業は重要な職 場であり、今後、中小企業等における障害者雇用の場を更に広げていくために、雇用促進に向けた企 業支援が一層求められている。 ・ また、障害者雇用率制度(以下「雇用率制度」)の対象範囲についても、課題の一つである。雇用率制度に基づく雇用義務については、昭和 51 年から民間企業における身体障害者を対象として以降、平成 10 年には知的障害者、平成 30 年には精神障害者を対象に追加する等、順次拡大をして きた。 雇用義務は、長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難 な者としての障害者に対して、雇用の場の確保を通じ、障害者の勤労権の保障を具体化する大変重要 な制度である。一方で、事業主の経済活動の自由の一部である採用の自由に対する非常に強い制限として適用するものであることから、その双方の観点を十分に踏まえた検討が求められる。 このような前提の下、特に障害者手帳(以下「手帳」)を所持しない難病患者や精神・発達障害者の雇用率制度上の位置付けについては、10 年以上にわたり検討事項とされてきた状況にあり、 改めて議論を前進させることが求められている。 ・ さらに、障害者雇用の「質」の向上についても課題となっている。令和6年4月以降段階的に行わ れる法定雇用率の引上げ及び除外率の引下げにより、企業においては、何よりも法定雇用率の達成に 向けた障害者雇用の「数」の確保に意識が向かう環境にある中で、そのために乗り越えなければならない現実的なハードル(職務の選定・開拓、募集・採用、合理的配慮の実施、育成等)が高いことか ら、法定雇用率達成を目的に、いわゆる「障害者雇用ビジネス」の利用に至る企業が近年急増していることについても、問題提起の声が大きくなっている。 2. 本研究会における議論の論点→・ こうした課題がある中で、本研究会では、令和6年 12 月以来、障害者雇用に対する課題意識をもと に整理した以下の論点に沿って、障害者団体や障害者支援に携わる者、障害者雇用に積極的に取り組 む団体等の広範な関係団体、計9団体からのヒアリングを行った。 【障害者雇用の「質」について】→ ⑴ 障害者の雇用者数は堅調に増加しているが、雇用者数のみならず、障害者の雇用の「質」に ついても、その向上を図ることが求められている。 前回の法改正(※)においても、厚生労働省労働政策審議会障害者雇用分科会等の意見を踏 まえ、事業主の責務として職業能力の開発及び向上に関する措置が追加される等、これまでも 一定の措置が講じられているが、更なる雇用の「質」の向上に向けて、どのような対応が求め られるか。 ※障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律等の一部を改正する法律(令和4年法律第 104 号)による障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和 35 年法律第 123 号)の改正 【障害者雇用率制度等の在り方について】→ ⑵ 障害者雇用率制度等について、合理的配慮等の障害者雇用の促進のための施策と併せて、ど のようにあるべきと考えるか。特に、労働政策審議会障害者雇用分科会等においては、以下の 論点について、引き続き検討とされているが、どのように考えるか。 @ 手帳を所持していない難病患者や、精神・発達障害者の位置付けについて A 就労継続支援A型事業所やその利用者の位置付けについて B 精神障害者において雇用率制度における「重度」区分を設けることについて C 障害者雇用納付金の納付義務の適用範囲を、常用労働者数が 100 人以下の事業主へ拡大 することについて 【その他】→ ⑶ その他、障害者雇用を更に促進するため、どのような課題や対応が求められると考えるか。 ・ こうした論点に対するヒアリングを踏まえ、本研究会では、ヒアリング項目に沿って、障害者雇用 の「質」及び障害者雇用率制度等の在り方について、議論を進めてきた。本報告書は、本研究会の議 論のとりまとめとして、以下のとおり、「障害者雇用の「質」について」、「障害者雇用率制度等の在り方について」の2項目に整理し、報告するものである。本報告書で示した検討の方向性を土台としつつ、同時に本研究会の議論の中で示された意見や懸念等に十分に留意して、今後、労働政策審議会 障害者雇用分科会において、制度設計の具体化に向けた議論が深められていくことが望まれる。 U 障害者雇用の「質」について 1. 障害者雇用の「質」の規定及び「質」の向上に向けた事業主の認定制度の創設・拡大 等 (これまでの経緯)→・ 企業における障害者雇用において、雇用されている障害者の能力発揮等よりも、法定雇用率の達成 に向けた障害者雇用の「数」の確保が優先される傾向がある状況を背景に、令和4年6月の労働政策 審議会障害者雇用分科会意見書(以下「令和4年分科会意見書」)においては、「今後は、障害者雇用の数に加えて、障害者が個々に持てる能力を発揮して活き活きと活躍し、その雇用の安定に 繋がるよう、障害者本人、事業主、関係機関が協力して障害者雇用の質を向上させることが求められ る」とされ、特に、キャリア形成の支援を含めて、適正な雇用管理を一層積極的に行うことを求めることが適当であるとされた。 ・ 令和4年分科会意見書を踏まえ、令和4年の障害者雇用促進法の改正においては、障害者雇用促進 法第5条の事業主の責務規定について、事業主が措置する内容について「その有する能力を正当に評 価し、適当な雇用の場を与える」こと、「適正な雇用管理」に加え、新たに「職業能力の開発及び向上」が加えられた。 ・ 上記の改正も含め、障害者雇用促進法においては、障害者である労働者が、「経済社会を構成する 労働者の一員として、職業生活においてその能力を発揮する機会を与えられる」ことを基本的理念とし(第3条)、また、事業主に対して、社会連帯の理念に基づき、障害者である労働者が有為な職業人として自立しようとする努力に対して協力する責務を有するとした上で、「その有する能力を正当に評価し、適当な雇用の場を与える」こと、「適正な雇用管理」、「職業能力の開発及び向上」に関す る措置を行うことにより、「雇用の安定」を図るように努めなければならないものと規定されている (第5条)。 (現状)→・ 一方で、障害者雇用の現状(実態)として、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(以下 「JEED」)の「企業における障害者雇用の質の向上に向けた取組の現状と課題に関する調査 研究」(以下「雇用の質調査研究」)の結果のデータを見ると、相対的に特例子会社の方が、 一般企業よりも、障害者の能力発揮等に向けた取組が進展している傾向にあるものの、いずれの企業においても、「障害者の戦力化」や「社内のより中心的な業務」への貢献が十分に重視されていない 傾向にあり、能力発揮を促していくために重要と考えられる「個々の障害者の能力や特性に合った職 務の創出又は再構成」や、「障害者の能力や特性と業務とのマッチングの定期的な状況確認」等の取 組が十分でない等の傾向がみられる。 ・ また、障害者の多くが昇進の経験がなく、ステップアップの前提となる「多様な業務への取組機会」 や「指導役やチームリーダー役を経験する機会」の提供や、障害者の中長期的キャリア形成に向けた 計画的な取組が必ずしも十分でない傾向がある。・ さらに、同じく JEED の雇用の質調査研究のうち、事例調査の結果によれば、障害者の多くが、安定 的な雇用とともに、自らの能力向上や、能力発揮に対する評価・処遇への反映を希望し、「周囲の人 や社会の役に立ちたい」と考えている。 ・ このように障害者自らが能力発揮の機会やその向上を望む一方で、企業側からは、一般企業・特例子会社ともに障害特性を十分に踏まえた上で、障害者の持てる能力を十分に発揮していくためのノウ ハウ不足の課題や、雇用する障害者のサポートを行う人材の育成の課題が多くの企業等から挙げられ ている。また、徐々に向上していく障害者の能力発揮先として相応しい業務を安定的に開拓・確保し ていくことも課題となっている。 (制度的対応@ 障害者雇用の「質」のガイドライン等の創設)→・ 本研究会においては、障害者雇用促進制度の基本的理念や、現状(実態)を踏まえ、以下の方向で 検討する旨の論点提示を事務局(厚生労働省)より行い、議論した。⇒ ・ 障害者雇用の「質」として特に重視されるべき要素として、以下が特に中心的な要素と考えられ る。→ 1)能力発揮の十分な促進(@職務の選定・創出と障害特性等との適切なマッチング、A成長を促 す OJT や教育訓練機会の確保等) 2)能力発揮の成果の事業活動への十分な活用 3)適正な雇用管理(@採用・配置・育成等の計画的な実施、A障害特性に配慮した働きやすさを 高める措置等) 4)発揮した能力に対する正当な評価とその反映(@評価結果に相応しい配置(職務内容)、A処 遇(昇進・昇格)) 5)雇用の安定(安定的な雇用契約期間等) ・ こうした「質」として重視すべき中心的な要素については、法令において明示する。 ・ このような「質」として重視すべき要素を示すガイドライン等の根拠及び内容を法令上に規定する ことは、事業主が目指すべき方向性を明確に示す上で必要であり、これにより企業における取組を推 進していく方向で検討を深めていくべき旨の意見があった。 また、その際には、障害者雇用の現場を踏まえて適用時期を検討すべき旨の意見があった。・ また、「障害特性に配慮した働きやすさを高める措置」に関しては、障害のある労働者と職場(事業主)をサポートする体制や、直属の上司以外の相談支援体制が重要である旨の意見があった。 ・ さらに、こうした「質」として重視すべき要素について、障害者雇用状況報告(6.1報告)にお いて、一定の項目の報告を求め、実態を把握することが有効ではないかとの意見もあった。 ・ 一方で、こうした「質」として重視すべき要素については、その具体的な内容を丁寧に議論するこ とが必要であり、特に事業所規模によって可能な取組が異なることから、中小企業の実態を踏まえた 検討が必要であること、またこれを法令上に明示することは、一定の高いハードルを示すこととなり、 これから障害者雇用を進める事業主を萎縮させることにつながりかねないものでもあることから、慎 重に検討すべきとの意見もあった。 ・ また、法令上の規定の仕方として様々な選択肢を取り得るため、事業主を萎縮させない形で、どの ように規定できるかを含めて検討すべきという意見があった。 ・ さらに、障害者雇用の「質」の向上を目指していくためには、とりわけ中小企業にとっては、法定 雇用率達成と「質」の両方を同時に達成することは非常にハードルが高いこと、また、現在、職場適 応援助者(ジョブコーチ)が主に担っている、採用後の定着段階における外部からの企業支援機能の 拡充が必要であることから、認定を受けた事業者が障害者雇用の経験やノウハウが不足する事業主に 対して、雇入れやその雇用継続を図るための一連の雇用管理に関する相談援助を行う「障害者雇用相 談援助事業」をより効果的なものとしていくことを含め、検討すべきとの意見もあった。 ・ 今後、検討を深めていく際には、こうした意見も十分に踏まえ、進めていくことが必要である。 (制度的対応A 「質」の向上に向けた事業主の認定制度の拡大、認定に対するインセンティブの在り方等)→・ 現行制度においては、常用労働者 300 人以下の中小企業等を対象とし、強みとする取組の総合加点 方式による「もにす認定制度」があるが、本研究会においては、以下の方向で検討する旨の論点提示 を事務局(厚生労働省)より行い、議論した。 ・ 企業規模にかかわらず「質」を高める取組を促進していく観点から、大企業を含む全ての企業を 新たに認定制度の対象とした上で、認定基準等を改めて見直す。 ・ 認定基準の検討の際には、障害者自身による雇用の「質」に対する満足度やワーク・エンゲージメントについて勘案する、「質」における中心的な要素については達成必須とする、取組姿勢や内 容に加えデータ等の客観的指標を組み合わせる。 ・ 「質」を高めるために、一定の負担(例えば、教育訓練機会の提供や障害特性に配慮した働きや すさを高める措置等)が生じることも想定されることから、障害者雇用に伴う経済的負担の調整を 図るものである調整金・報奨金や、助成金などにおいて、認定事業主に対する一定の配慮を行う。 ・ 1点目(大企業を含む全ての企業を新たに認定制度の対象とした上で、認定基準等を改めて見直す 方向性)については概ね意見の一致があった。 ・ 2点目・3点目については、この方向性で更に検討を深めていくべき旨の意見があった。その際は、 認定事業主に対する一定の配慮(調整金・報奨金、助成金等)を行う場合には、更新制度等の認定後 の検証が必要である旨の意見があった。 ・ また、企業規模によって取組可能な方法等が異なる点を踏まえ、大企業と中小企業に異なる認定基 準を設定する必要がある旨や、既に「もにす認定」を受けた企業に対する影響等を併せて検討すべき との意見があった。 ・ さらに、認定を受けている旨を実雇用率の算定において評価することについては、「量」の概念で ある雇用率に「質」の評価を反映させることは適切でないとの意見や、「質」の評価の反映により雇 用の「量」がトレードオフになるような仕組みであってはならないという意見があった一方、企業と しては法定雇用率の達成に懸命に取り組んでおり、実雇用率へ算定することによる「質」の向上への インセンティブが必要との意見もあった。 ・ 今後、検討を深めていく際には、こうした意見も十分に踏まえ議論を進めていくことが必要である。 2.いわゆる「障害者雇用ビジネス」に係る対応 (これまでの経緯及び現状)→・ いわゆる「障害者雇用ビジネス」を利用した障害者雇用は、厚生労働省が把握した限りで就業障害 者数が令和5年3月末の約 6,600 人から令和7年 10 月末には約 11,100 人に増加する等、短期間で大 きく増加する傾向にある。この背景には、「ビジネスと人権」等の国際的な要請やコンプライアンス 意識の高まりの一方で、法定雇用率を達成するために求められる現実的なハードル(職務の選定・開 拓、募集・採用、合理的配慮の実施、育成等)を乗り越えることが容易でないことによって、企業に とっての利用ニーズが増大していることによると考えられる。JEED の雇用の質調査研究の結果を見て も、障害特性を十分に踏まえた上で、障害者の持てる能力を十分に発揮していくためのノウハウ不足 の課題を多くの企業が抱えており、この傾向は中長期的に継続すると想定される。 ・ 一方で、「障害者雇用ビジネス」については、前述の障害者雇用の「質」として重視すべき要素に 照らし、以下の課題が指摘されるなど、問題提起の声が大きくなっている。→ 1)業務内容・就業場所の分離によるインクルージョンの観点からの課題・雇用責任の希薄化 ・ 利用企業と障害者の間で、業務内容・就業場所の分離(利用企業の本業と障害者が従事する業 務の関わりが薄い/就業場所が利用企業の他の従業員と異なること)があり、「障害の有無にかかわらず共に働く」という理念から離れている。 ・ また、それに伴い、利用企業側(経営層・従業員等)における障害者への理解が深まっていか ない。 ・ さらに、雇用契約を締結しながら、利用企業側の日常的な接点が薄いことにより、雇用する障 害者のキャリア形成等を含めた雇用管理等の意識に至らない。 2)固定的な業務付与による能力開発の制限や障害特性への理解の不十分さなど、雇用管理上の課題 ・ 付与される業務が固定化し、障害者の習熟に伴う職務内容のレベルアップが図られない。 ・ 利用企業側の組織的関与が薄い(例:「障害者雇用ビジネス」の就業場所の管理のために採用 した非正規雇用労働者に雇用管理を任せている)ことや、「障害者雇用ビジネス」事業者の障害 特性の理解が不十分であること等により、適正な雇用管理(募集・採用・配置・育成等の計画的 な実施)や、障害特性に配慮した措置がなされていない。 3)障害者の能力発揮の成果が、有為な経済活動(事業活動)へ十分活用されないことに伴う課題 ・ 障害者の能力発揮の成果が、十分に利用企業の経済活動(事業活動)に活用されておらず (例:成果物の破棄、必ずしも重要性が高くない頒布に留まる等)、法定雇用率達成のみを目的 とした雇用となっている。また、働く障害者に対して十分な業務付与等がない中で賃金が支払わ れる構造であることにより、障害者自身の働く意欲を減退・喪失させることにつながっている。 ・ そうしたスタンスのために、利用企業内において、障害者雇用が一方的コストであるという認 識に陥り、障害特性に合わせた業務切出し・職務付与等により障害者の持てる能力の最大限の発 揮を促していこうとする方向性につながらず、中長期的な我が国の障害者雇用の進展にとっても 負の影響が懸念される。 ・ なお、上記のような課題は、「障害者雇用ビジネス」の利用がない、一般的な障害者雇用において も生じ得る点に留意が必要である(例:就業場所は一体であるが、業務内容が他従業員と分離して固 定的であり、他従業員との十分なコミュニケーションや習熟に応じた職務内容のレベルアップが図ら れず、結果として能力発揮の成果が処遇にも反映されていかない等)。 ・ このように、企業にとっての利用ニーズの増大が中長期的に継続すること、また、「障害者雇用= コスト」という認識・構造が強まっていくことは、中長期的な我が国の障害者雇用の進展にとって負 の影響をもたらすことが懸念されること等も踏まえれば、「障害者雇用ビジネス」に対し、従来の状 況把握の取組だけでは十分でない。 一方で、大部分の「障害者雇用ビジネス」については、明らかな法令違反ではない中で、憲法上保 障される経済活動の自由に対し、「公共の福祉に反する」ことを理由とした「禁止」(及び許可事業者 のみの「禁止」の解除)を行うことは、法制上の課題がある。 こうした点も踏まえ、以下のような制度的対応の検討を深めていくことが適当である。 (制度的対応@ 利用企業による報告)→・ 本研究会においては、以下の方向で検討する旨の論点提示を事務局(厚生労働省)より行い、議論した。⇒ ・ 障害者雇用状況報告(6.1報告)において、「障害者雇用ビジネス」を使用している場合(主 たる労働者の就業場所とは異なる第三者が提供する就業場所において障害者を勤務させている等) については、一定の項目(※)の報告を求めることにより、行政庁において網羅的に把握可能と し、必要な指導監督が行い得るようにする。 (※就業場所、ビジネス事業者の情報、障害者が従事する業務内容、利用予定期間等の適正な雇用 管理に係る情報) ・ この方向性で更に検討を深めていくべき旨の意見があった。 ・ また、障害者雇用状況報告(6.1報告)による「障害者雇用ビジネス」の利用状況の報告だけで はなく、利用企業名の公表を求める意見もあった。 ・ 一方で、報告を求める前提となる「障害者雇用ビジネス」の定義について、「主たる労働者の就業 場所と異なる第三者が提供する就業場所において障害者を勤務させている」のみでは報告義務の対象 となる範囲が必ずしも明確と言えないことや、利用企業としての事務負担及び心理的負担を考慮し、 報告を求めることについては慎重に検討すべき旨の意見があった。 ・ 加えて、「障害者雇用ビジネス」の利用拡大の背景には、近年の法定雇用率の大幅な引上げがある ことから、根本的な制度見直しを求める意見もあった。 ・ 今後、検討を深めていく際には、こうした意見も十分に踏まえ、「障害者雇用ビジネス」の業態等 に関する実態把握を更に進めた上で、より明確な定義付けに向けた検討を進めるとともに、利用企業 側の負担を併せて考慮しながら、議論を進めていくことが必要である。 (制度的対応A 「障害者雇用ビジネス」及び利用企業の望ましい在り方に向けたガイドラインの創設)→・ 本研究会においては、以下の方向で検討する旨の論点提示を事務局(厚生労働省)より行い、議論 した。 ◆ 上述(7〜8頁の1)〜3)の課題)のような課題の是正に向け、「障害者雇用ビジネス」に対 しては、以下のようなガイドラインを策定する。 <ガイドラインの内容の例> ・ 障害特性の十分な理解を含め障害者雇用に精通した一定の資格者等を配置すること、障害者及 び利用企業への支援に従事するスタッフに対する教育訓練等を実施すること ・ 利用企業に対して、以下の支援メニューを提供すること @ 障害者の就業を通じた成果物が、利用企業自身の事業活動において有為に活用されるための 10 提案・支援 A 利用企業自身の事業活動の中での障害者雇用のための業務切出しや業務設計・再構成、雇用 される障害者の希望を踏まえた複数の就業場所・業務内容の提案・支援 B 最終的に、利用企業が、自社の就業場所での障害者雇用に移行させていくための提案・支援 (利用企業自身の担当者の育成、自走開始後の助言等) ・ 上記の支援メニューの提供状況(実績)を含め、ガイドラインに沿った運営を行っている旨に ついて、定期的に情報開示を行うこと 等 ◆ 利用企業に対しては、1の(制度的対応@)の障害者雇用の「質」のガイドラインにおいて、以下を示す。⇒ ・ 「障害者雇用ビジネス」を利用する場合は、「障害者雇用ビジネス」のガイドラインに沿って いない運営を行う事業者の利用は望ましくない旨 ・ 障害者の就業を通じた成果物は、利用企業自身の事業活動において有為に活用すべき旨 ・ 一定期間の利用の後は、利用企業自身の事業活動の中で障害者雇用のための業務切出し等を行 い、雇用される障害者の希望を踏まえつつ、自社の就業場所へ障害者雇用を移行させていくこと が望ましい旨 ・ この方向性で更に検討を深めていくべき旨の意見があった。その際には、主たる労働者の就業場所 とは異なる第三者が提供する就業場所で就業させる期間の望ましい在り方についても併せて検討すべ き旨の意見があった。 ・ また、ガイドラインについて、対象となる「障害者雇用ビジネス」の定義及び範囲が必ずしも明確 と言えない点も踏まえれば、慎重に検討すべき旨の意見があった。 ・ さらに、「障害者雇用ビジネス」の利用において、真に問題となるのは何か(例:障害者の就業を 通じた成果物が利用企業の事業活動において「有為に活用されていない」と判断される本質的要素は 何か)について十分見極めて、議論を進める必要がある旨の意見があった。 ・ 加えて、障害者である労働者と雇用主である利用企業の人事担当者等との間(さらに必要に応じ 「障害者雇用ビジネス」事業者も加えた三者の間)において、必要とする合理的配慮の内容を含め、 定期的にコミュニケーションが図られるようガイドラインに位置付けることが必要である旨の意見があった。・ 今後、検討を深めていく際には、こうした意見も十分に踏まえ、「障害者雇用ビジネス」の定義や、 問題があると判断される本質的要素の検討を進めるとともに、就労する障害者のために望まれる措置 の内容の検討を含め、議論を進めていくことが必要である。 V 障害者雇用率制度等の在り方について 1. 手帳を所持していない難病患者の位置付け (これまでの経緯)→・ 障害者雇用促進法における「障害者」とは、「身体障害」、「知的障害」及び「精神障害」に加え、 「その他の心身の機能の障害」があるため、長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、又は職業 生活を営むことが著しく困難な者とされている。「その他の心身の機能の障害」については、難病に よる心身の機能の障害も含まれており、これまでも職業リハビリテーションの措置や差別の禁止、合理的配慮の提供義務等については、難病患者も対象とされてきた。 ・ 一方で、雇用義務の対象としては、「身体障害者」、「知的障害者」及び「精神障害者」とされ、そ の取扱いに当たっては、原則、手帳の所持者に限るものとされている。これは、手帳は職業生活における制限の程度を直接評価しているものではないものの、雇用義務の対象としては、事業主がその対 象者を雇用できる一定の環境が整っていることに加え、対象範囲が明確であり、公正性、一律性が担 保されることが必要であることが理由である。 ・ この前提の下、令和4年分科会意見書においては、手帳を所持していない難病患者について、「個 人の状況を踏まえることなく、一律に就労困難性があると認めることは難しい」ことから、「手帳を所持していない者に係る就労の困難性の判断の在り方にかかわる調査・研究等を進め」た上で、取扱 いを検討することとされている。 (障害者総合支援法等での位置付け)→・ 障害者基本法(昭和 45 年法律第 84 号)については、平成 23 年の改正により、「障害者」として、 「身体障害者」「知的障害者」「精神障害者」に加え、「その他の心身の機能の障害がある者」が位置 付けられ、難病による心身の機能の障害がこれに含まれるとされた。この点については、障害者雇用 促進法と同様となっている。 ・ 他方で、障害福祉においては、平成 24 年の障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するため の法律(平成 17 年法律第 123 号。以下「障害者総合支援法」)の改正により、難病患者等を 「障害者」と位置付けた上で、対象疾病(令和7年4月時点で 376 疾病)による障害により「継続的 に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける」者について、必要と認められた障害福祉サービス等 の受給も可能としている。 ・ また、「身体障害者手帳」は、原則として原因疾病を問わずに判断しているが、身体機能の障害が 身体障害者福祉法(昭和 24 年法律第 283 号)別表に該当する場合に交付対象となるものであり、疾病 による心身の機能の障害があっても、必ずしも同法別表に該当しないことがある。 しかしながら、上述のとおり、障害者総合支援法では、身体障害者手帳の交付対象とならなくとも、 対象疾病であることをもって、具体的な「制限」の内容を障害支援区分認定のプロセスで把握し、サ ービスの給付対象としている状況にある (「身体障害者手帳」がサービスの給付範囲を画する訳では ない。)。 (現状)→・ 難病患者は、対象疾病により現れる症状や職業生活への制限も多様であり、また、長期にわたり療 養を必要とするが、JEED の「難病患者の就労困難性に関する調査研究」(以下「難病患者の就労困難性調査研究」)の結果を見ると、平均的には必ずしも就労困難性が高くない。 ・ 一方で、難病患者のうち「手帳を申請し不認定の者」は少数ではあるものの、その中では「手帳所 持者」と同等以上に、「就職活動場面」「職場適応や就業継続場面」における困難性を有している者が 多い傾向があり、その者の機能障害の内容が、身体障害者福祉法別表へ該当しない等により不認定と なった場合であっても、必ずしも、職業生活における制限が小さいとは言えない結果となっている。 (制度的対応 就労困難性のある難病患者の個別判定制度の創設及び実雇用率算定)→・ 本研究会においては、以下の方向で検討する旨の論点提示を事務局(厚生労働省)より行い、議論した。 ・ 手帳が得られていない難病患者については、本人からの申請により、医師の意見書等も勘案しながら、個別の就労困難性(職業生活への「制限」の程度)を判定し、一定水準にある場合、まずは、 実雇用率において一定の算定を可能とする。その上で、施行状況を注意深く見ながら更に雇用義務 の在り方を検討していく。 ・ 個別の就労困難性の判定基準の検討は、疾患による自己管理(休憩、服薬等)の必要性、疲れや すさや体調の不安定性等による仕事内容や働き方の制約や、通勤の困難性など、JEED の難病患者の 就労困難性調査研究結果で示された一定の就労困難性を参考としつつ、更なる調査研究や専門家の 知見を交えた検討等を経て、対象範囲の明確さや、公正性、一律性が確保できるような内容として いく。その際は、難病の診断や重症度を測る際に用いる臨床的・国際的な基準と、本人から聞き取 った就労困難性を組み合せること等により妥当性のある判定基準を目指す。 ・ また、まず現に困難に直面している者を優先的に判断する等の円滑・着実な施行体制の検討が併 せて必要。 ・ 実雇用率における算定は、他の障害種別への影響が生じないようにする観点からの方策を併せて 検討する。 ・ また、事務局(厚生労働省)より、個別判定の基本的考え方の粗いイメージとして、以下を提示するとともに、実雇用率算定の対象となり得る対象者の機械的な試算として、対象者の条件設定により 幅のある複数の試算(約 2,800 人〜約 65,400 人)を提示し、議論した。 <基本的考え方>→ ・ 障害者雇用促進法における「雇用義務」は、「対象障害者」の雇用の場を確保することが、自由 競争によっては困難であることを前提に、経済活動の自由の一部である採用の自由に制限を加える 性質を有している。 このため、「対象障害者」の範囲の検討に際しては、「対象範囲の明確性」、「公正性」、「一律性」 を確保することが引き続き重要。 ・ 今回検討する難病患者の「個別判定」は、難病による「身体機能の障害」が、身体障害者福祉法 別表に該当しないことによって手帳交付が得られない場合であっても、手帳所持者と同等以上に就 労困難性を有する者がいることを踏まえ、就労困難性が手帳所持者と同等以上と考えられる者を(手帳に依らず)個別に判断する仕組みとして検討を行う。(「対象障害者」の範囲について、「公正性」を確保するために、「対象範囲の明確性」と「一律性」を十分に確保しながら、制度設計を行う。) ※ なお、こうした手帳に依らない「個別判定」は、現行制度においても、 ・ 身体障害者について、指定医又は産業医の診断書による判定(身体障害者福祉法別表に該当する旨を確認) ・ 知的障害者について、判定機関(児童相談所、知的障害者更生相談所、精神保健福祉センター、精神保健指定医及び 地域障害者職業センター(JEED 地域センター))による判定 があり、特に、手帳を所持する者を主たる対象とする重度知的障害者判定は、年間 3,000 件前後、実施されている。 <個別判定の方法(粗いイメージ)>→ 具体的な判定方法としては、例えば以下のような方法等が考えられるか。 案1:難病に罹患していることが分かる診断書+就労困難性のアセスメント ⇒ (1)難病に罹患していることが分かる診断書の提出に加え、(2)支援職によるアセスメント情報 (易疲労性・痛み・免疫力低下等を想定)により、一定基準以上の者を判定する。 案2:難病の医療費助成の重症度判定 + 就労困難性のアセスメント ⇒ (1)難病指定医による判断(医療費助成の認定時に使用される「診断書(臨床調査個人票)」をベ ースとすることを想定)と、(2)支援職によるアセスメント情報(易疲労性、痛み、免疫力低下等 を想定)により、それぞれ一定基準以上の者を判定する。 案3:難病の医療費助成の重症度判定 + 就労困難性のアセスメント + 国が設置する審査委員 会による合議 ⇒ (1)難病指定医による判断(医療費助成の認定時に使用される「診断書(臨床調査個人票)」をベ ースとすることを想定)と、(2)支援職によるアセスメント情報(易疲労性、痛み、免疫力低下等 を想定)を組み合わせて判断材料とした上で、(3)国において審査委員会(難病指定医や、就労支 援関係者、障害者の就労に精通した学識経験者等を構成員とする審査委員会を想定)を設け、合議 を経て、就労困難性が手帳所持者と同等以上にあると考えられる者を判定する。 ・ 上述のような難病患者の就労困難性の状況等を踏まえ、また、本論点は平成 24 年から 10 年以上に わたり引き続きの検討事項とされてきており、今回は方向性を示して具体的な制度設計に入る時期に きているという認識の下、この方向性で検討を深めるべきとする意見があった。 ・ その上で、実雇用率算定における他の障害種別への影響に関して、過去の実雇用率算定の対象とな る障害者の範囲拡大時には、政策的対応が必要となる状況ではなかったため、当該方策を改めて講じ る必要性は高くないという意見もあった。 ・ また、個別判定に際しては、就労困難性のアセスメントが重要であるが、就労困難性の医療的な背 景(例:免疫力の低下等)については医師による客観的裏付けが併せて必要であること、支援職によ るアセスメントは医療的な背景に基づいた職業生活の制限(例:(免疫力の低下に由来する)通勤や 移動の制約等)を見る必要があること、審査委員会による合議で判定を行うことが重要であること等 の意見があった。 ・ 一方で、法定雇用率が引き上がる現状の中、将来的な雇用義務の在り方の検討につながり得る本論 点については、難病患者の個別性の高さ等により、就労困難性の個別判定を行うことの難易度が高い と想定される中で、現時点においては具体的な判定基準等の仕組みが明らかでなく、実雇用率の算定 の対象者についても、試算によって開きがあるため、個別判定制度を設けることの是非の判断はでき ず、引き続き慎重な検討が必要との意見があった。 ・ こうした意見も十分に踏まえ、就労困難性の個別判定のための判定基準等の仕組みについて、更な る調査研究等も併せて進めながら、手帳を所持していない難病患者の個別判定制度の創設及び実雇用 率算定の妥当性について、引き続き丁寧に議論を進めていくことが必要である。 2. 手帳を所持していない精神・発達障害者の位置付け (これまでの経緯)→・ 雇用率制度(雇用義務)の対象となる「精神障害者」については、1の難病患者の場合と同様に、 対象範囲の明確さや、公正性、一律性が必要等との考え方の下、精神障害者保健福祉手帳の所持者に 限るものとされてきた。 ・ こうした中で、手帳を所持していない精神・発達障害者については、令和4年分科会意見書等にお いて、「自立支援医療受給者証」や同受給者証の「重度かつ継続」、「診断書」をもって雇用率の対象 としてはどうか等の意見があった上で、「個別の状況を踏まえることなく、一律に就労困難性がある と認めることは難しい」ことから、「手帳を所持していない者に係る就労の困難性の判断の在り方にかかわる調査・研究等を進め」た上で、取扱いを検討することとされてきた。 (現状)→・ 精神障害者保健福祉手帳については、身体の機能障害の内容が、身体障害者手帳の交付対象(身体 障害者福祉法別表)に該当しないことがある難病患者に関する議論とは状況が異なり、国際疾病分類 15 において「精神及び行動の障害」とされている疾患のすべて及びてんかんは対象となっている。 ・ その上で、精神障害者保健福祉手帳は、その原因にかかわらず、精神疾患を有する者のうち、精神 障害(発達障害を含む。)のため長期にわたり日常生活や社会生活への一定の制限があると認められ る方を交付対象としており、その判定過程において、生活能力の状態を把握・判断している。 ・ 一方で、「自立支援医療受給者証」については、医療費の自己負担軽減を目的に、「通院により治療 を続ける程度の状態の者」を対象としている。また、同受給者証の「重度かつ継続」については、医 療費の大きさ(高額療養費の多数回該当)、特定の疾病である者や、3年以上の精神医療の経験を有 する医師により、情動及び行動の障害又は不安及び不穏状態を示すことから入院によらない計画的か つ集中的な精神医療を継続的に要すると判断された者を対象としており、その者の日常生活における 制限を把握・判断するものとはなっていない。 ・ また、JEED の「障害者手帳を所持していない精神障害者、発達障害者の就労・支援実態等に関する 調査研究」(以下「精神・発達就労調査研究」)の状況を見ると、手帳を所持していない精 神・発達障害者を支援したことがある支援機関の認識として、「手帳を所持していない理由」におい て、最も多いのが「本人が必要性を感じていない」であるが、それに次いで「本人の手帳についての 知識が不十分なため」、「本人の心理的抵抗等」となっている。また、手帳所持に対する心理的抵抗感 については、「手帳を所持して利用できる各種制度などの理解がすすんだこと」「障害者雇用率制度に よる障害者雇用が広がっていること」等を背景に、減少してきているという調査結果も同時に示されている。 (検討の方向性 精神・発達障害に対する理解及び合理的配慮の推進、関係機関における支援)→・ 本研究会においては、以下の方向で検討する旨の論点提示を事務局(厚生労働省)より行い、議論 した。 ・ 精神障害者保健福祉手帳における対象範囲の網羅性や、判定内容(日常生活等における制限の状 態を認める)に加え、JEED の精神・発達就労調査研究の状況を踏まえれば、手帳を所持しない者を 別途の基準を用いて雇用率制度の対象とする必要性・合理性は高いとは言えず、雇用率の対象を精 神障害者保健福祉手帳の所持者とする現行の仕組みを維持する。 ・ その上で、引き続き職場を含めた社会全体の精神・発達障害に対する理解の促進を図っていくと ともに、職場における合理的配慮の推進やハローワーク等の関係機関における支援を更に進めていく。 ・ この方向性で概ね意見の一致があった。 ・ その上で、手帳取得に抵抗感がある者や手帳取得方法の理解が十分でない者への丁寧な説明や相談 支援、手帳の有無にかかわらない本人の働きづらさに対する支援や合理的配慮の必要性に対する職場 の理解促進が重要との意見があった。 (制度的対応 精神障害者保健福祉手帳の更新ができなかった場合における雇用率の算定) → 精神障害者保健福祉手帳には有効期限があることから、更新が得られなかった場合に、一定の期間 については引き続き雇用率制度の対象とすることについて、これまで検討課題とされてきた。 ・ 支援機関へのヒアリング結果によると、企業の職場環境が良くなったことによる症状の改善等、 様々な事情で更新がなされなかったケースが現に見られ、またデータ上も手帳の返還件数及び有効期 限切れ件数は一定数見られる。 ・ このため、本研究会においては、以下の方向で検討する旨の論点提示を事務局(厚生労働省)より行い、議論した。 ・ 精神障害者保健福祉手帳の更新が得られなかった場合については、当該労働者が企業に引き続き 雇用されており、かつ、今後も雇用される見込みである(障害者雇用率の算定外となったことを理 由とした契約の不更新等は行わない)と判断できる場合においては、一定期間(例えば、新規採用 に向けた業務切出しや採用プロセスに要する期間を勘案した1年間程度)、雇用率制度及び障害者 雇用納付金制度上の取扱いを検討する ・ 当該取扱いを検討する際には、同様にその他の手帳等の更新が得られなかった場合の取扱いにつ いても合わせて検討する ・ 一定の場合、一定期間は引き続き対象障害者として取り扱う等制度上の取扱いを検討する方向で概 ね意見の一致があった。 ・ その上で、「一定期間」については議論を進めていく必要がある。 3. 就労継続支援A型事業所やその利用者の位置付け (これまでの経緯及び現状)→・ 就労継続支援A型事業所(以下「A型事業所」)は、まだ我が国の障害者雇用の場が限られていた「福祉工場」の時代より、労働関係法令の適用を受け、雇用契約が結ばれることに着目し、 調整金及び報奨金の支給対象とされてきた。 その後、平成 18 年の改正障害者自立支援法(現在の障害者総合支援法)の施行により、現在のA型 17 事業所が創設された際に、改めて、雇用率制度及び納付金(調整金及び報奨金)の対象と整理された。 ・ A型事業所は、障害者総合支援法上の位置付けとしては、制度創設当初より、「通常の事業所に雇 用されることが困難」であるが「雇用契約に基づく就労が可能な者」に対して、就労機会の提供とと もに、必要な訓練等の支援を行うものとされ、一般就労に必要な知識・能力が高まった者について一 般就労に向けて支援するものとされてきた。 ・ しかしながら、雇用率制度及び障害者雇用納付金制度(以下「納付金制度」)におけるA 型事業所の取扱いの妥当性については、平成 30 年頃より議論がなされてきており、令和4年分科会意 見書においては、「実態把握に基づきA型が障害福祉制度においてどのように整理されるかも踏まえ た上で、雇用率制度・納付金制度からの除外の可能性も視野に入れ、一方で様々な影響も考慮しつつ 引き続き検討していくことが適当である。」とされていることを踏まえ、本研究会において議論が行われてきた。 (検討の方向性 労働施策・福祉施策両面からの検討の上での判断)→・ A型事業所の位置付けに関しては、本研究会において、以下の各論点を事務局(厚生労働省)より 提示し、議論を行った。 <論点1> 雇用率制度の対象とすべきか(全国で適用される法定雇用率の算定式にA型事業所の雇 用量を含めるか/A型事業所における雇用量を各法人において実雇用率として計上可能とするか) 当該論点に関しては、以下の意見があった。 ・ A型事業所で就労する者は「通常の事業所に雇用されることが困難」な状態像のはずであり、法 定雇用率の算定式の分子に入れることには違和感がある。十分な経過措置を講じた上で、雇用率制 度から除外すべき。 ・ 雇用率の算定対象であることや調整金・報奨金の受給対象であることによって、本来一般就労へ 移行可能な人たちがA型事業所に留め置かれている可能性が拭えないのではないか。 ・ 「通常の事業所に雇用されることが困難」な者と制度創設当初から定義されているが、この間、 企業における一般就労の場が相当進展している中で、利用者の実態がこの定義に合致していないの ではないか。 ・ A型事業所の利用者も労働者であり労働関係法令が適用され、障害福祉とはいえ独立採算である 事業活動収支から賃金を払う形であり、事業活動の性質も一般的な事業活動であること等から、雇用率制度の対象に引き続き含めるべき。 <論点2> 納付金制度等の対象とすべきか(調整金及び報奨金の支給対象とするか/特定求職者雇用開発助成金等の事業主負担財源による財政支援の支給対象とするか) また、障害福祉サービスとしてのA型事業所に与える影響をどう考えるか 当該論点に関しては、以下の意見があった。 ・ A型事業所は通常の事業所で雇用されることが難しい障害者の方にとっての選択肢の広がり、働きがいの提供など、一定の社会的役割を果たしている。社会保険の適用拡大や物価高騰、最低賃金 の引上げの影響により厳しい状況にある中、さらなる経営悪化を招くような納付金制度対象からの 除外は避けるべき。多くの障害者が職を失うこととなる。 ・ 調整金・報奨金は、障害福祉サービス等報酬と目的が重複しているのではないか。 ・ A型事業所は、確かにとりわけ都市部以外の地域の貴重な雇用の場になっているものの、現状で は、一般企業の雇用への移行機能が十分でなく、一般雇用を増やす結果とならない。激変緩和措置 を十分に講じた上で、納付金制度から除外すべき。 ・ また、A型事業所を特例子会社のような企業体に少しずつ移行させる道を探るべき。 <論点3>→ その他、事業協同組合等算定特例制度(特に LLP)や、特例子会社制度(グループ算定 含む)におけるA型事業所の位置付けをどう考えるか 当該論点に関しては、以下の意見があった。 ・ LLP(有限責任事業組合)の場合の算定特例制度については、組合参加企業の中に、A型事業所 を招き入れるだけで、新たに障害者雇用を行わなくても組合参加企業が法定雇用率を達成できてし まう実態となっており、制度趣旨に照らし、喫緊に検討すべきではないか。 ・ 企業にとって、A型事業所を保有してグループ算定を行えば、より社会的責任を果たしている特 例子会社を作らなくても雇用率が達成できてしまい、望ましくない方向になるのではないか。 ・ 雇用率制度は、社会連帯の理念の下で、共同責務として事業主が確保すべき障害者雇用の量の想定 に基づいた雇用義務制度であり、納付金制度(調整金・報奨金)は、共同責務を負う事業主間の経済 的負担の調整のための制度である。 これら雇用率制度及び納付金制度の対象を検討する上では、A型事業所の制度創設以降の我が国の 一般就労の場の進展や、その中でのA型事業所の利用者像の変化、経営状況等、現状の実態把握を十 分に行う必要がある。その上で、通常の事業所に雇用されることが困難な方の就労の受け皿や、一般 就労への移行支援といった、A型事業所が果たすべき役割について、雇用、福祉の役割分担など、両 面から丁寧に検討し、制度見直しがもたらす社会的影響にも留意しつつ、議論を進めていくことが必 要である。 4. 精神障害者について障害者雇用率制度における「重度」区分を設けること (これまでの経緯及び現状)→・ 精神障害者は身体・知的障害者と異なり「重度」区分が設けられていない。その設定要否については、令和4年分科会意見書において「精神障害者の就労困難性と精神障害者保健福祉手帳の等級は必 ずしも関係するものではないという意見等の様々な意見があることを踏まえると、精神障害者の「重 度」という取扱いについては、ただちにこれを設けるのではなく、調査・研究等を進め、それらの結 果等も参考に、引き続き検討することが適当」とされてきた。 ・ この点、ハローワークの求職者情報や JEED の「精神障害者の等級・疾患と就業状況との関連に関す る調査研究」(以下「精神障害者の就業状況調査研究」)によれば、就職割合や新規求職申込 みの割合は、手帳の障害等級が1級の精神障害者の割合が比較的低いものの、ハローワークに新規求 職申込みをした者の就職率は、各等級を比較しても同じであること、また精神障害者の就業状況調査 研究においても、精神障害者の雇用に係る事業主の負担感や就業の課題については、細かい違いはあ るものの、等級別で大きな特徴は見られなかったことなどから、手帳の等級に比例して就労困難性が 高くなるとは十分に言えない結果であった。 (検討の方向性 精神障害者の区分に関し、現行制度の運用の維持)→・ 本研究会においては、以下の論点提示を事務局(厚生労働省)より行い、議論した。 ・ 精神障害者保健福祉手帳所持者の等級別就労状況は、手帳の等級に比例して就労困難性が高くな るとの結果は明確にはなっておらず、精神障害については、症状に波がある等、個別の判定が困難 との指摘もあることを鑑みれば、現時点で、雇用率制度において等級ごと又は等級以外での困難性 の違いにより、重度区分を設けることについて、どう考えるか。 ・ 精神障害者の状態は、本人の内部要因に加え、環境等の外部要因によっても非常に変化しやすく、 ある一定程度の安定的な就業能力を含めた重症度を判定することは難しいことから、精神障害者につ いて「重度」区分を設けることは、就労困難性やそれに伴う事業主負担が合理的に反映された雇用率 制度とならないという旨の意見等があった。 ・ そのため、精神障害者について、雇用率制度における「重度」区分を設けることは適当とはいえず、 引き続き、現行制度の運用を維持する方向性で概ね意見の一致があった。 5. 精神障害者である短時間労働者の算定特例 (これまでの経緯及び現状)→・ 雇用率の算定において、短時間労働者(週所定労働時間(以下「週」)20 時間以上 30 時間 未満)は重度身体・知的障害者を除き、1人につき 0.5 カウントとなっているが、精神障害者である 短時間労働者の実雇用率算定については、精神障害者の職場定着を進める観点から、令和4年度まで 当該短時間労働者のうち新規雇入れ又は手帳取得から3年間の者に限り1カウントとする特例措置が 設けられ、その後、令和5年度以降は当該3年間の要件を除外した上で、当分の間当該特例措置を延 長することとされてきた(令和4年改正においては、同時に、精神障害者である特定短時間労働者 (週 10 時間以上 20 時間未満)を 0.5 カウントとする特例措置も設けられている。)。 (検討の方向性 精神障害者である短時間労働者の算定特例制度の運用の維持)→・ 本研究会においては、精神障害のある短時間労働者(週 20 時間以上 30 時間未満)の実雇用率の算 定特例について、以下の論点提示を事務局(厚生労働省)より行い、議論した。 ・ 短時間労働者である精神障害者は、その人数が減少基調にあるものの依然一定の割合を保ってい ること、フルタイムの者と比べ定着率が高いこと、算定特例が実態上も雇用推進に貢献していると の指摘があること等を鑑み、1人をもって1人とする現在の算定方法を維持すること、また、その 措置の性格について、どう考えるか。 ・ 当該算定特例については、精神障害者の雇用率の向上、定着率の改善のために、引き続き適用する ことが望ましいとの意見があった。その上で、精神障害者の短時間労働をより積極的に支えるために、 特例措置ではなく恒久化を考えるべきとの意見があった一方で、当該特例措置の恒久化については、 当該特例措置の導入当初の精神障害者の定着促進という目的から考えると、制度開始後まだ日が浅く、 定着促進の政策効果が十分に見定められない状況でもあり、現時点での恒久化の判断は慎重に検討す べきとの意見もあった。 ・ この点については、当分の間、特例を継続することとし、恒久化の要否については、現場の雇用状 況の推移も踏まえて引き続き検討する方向性で概ね意見の一致があった。 ※ なお、特定短時間労働者(週 10 時間以上 20 時間未満)は雇用義務の対象とはしていないが、実雇 用率算定が開始されてから間もなく、施行状況を十分把握し得る時期に至っていないため、現行の取 扱いを維持しつつ、現在、実雇用率算定の対象外である週 10 時間以上 20 時間未満で働く重度以外の 身体・知的障害者や週 10 時間未満で働く障害者も含め、調査研究等により実態把握等を進め、それら の結果等も参考に、引き続きその取扱いを検討することが適当である。 6.障害者雇用納付金の納付義務の適用範囲を、常用労働者数が 100 人以下の事業主へ拡 大すること (これまでの経緯)→・ 納付金制度については、制度創設当初(昭和 51 年)より、事業主の社会的連帯を基本理念とし、全ての事業主がその雇用する労働者の数に応じて完全平等に負担するのが原則であるとされた上で、中 小企業の負担能力に対する配慮に加え、当時は、中小企業は雇用率達成が進んでいるのに対し、大企 業が進んでいないという事情があったことから、当分の間、常用労働者 300 人超の事業主に適用対象 が限定された経緯がある。 ・ その後、「本来中小企業も適用対象となるもの」であり、「積極的に障害者の雇用に取り組んでいる 企業も多い中で、障害者の雇用が進んでいない企業との間での経済的不均衡がある」(平成 19 年 12 月 労働政策審議会意見書)こと等を踏まえ、常用労働者 100 人超の事業主にまで対象が拡大されてきた。 ・ また、令和4年分科会意見書においては、コロナ禍での経営悪化の状況等を前提とした上で、「常 用労働者 100 人以下の事業主に対する納付金の適用範囲の拡大については、これらの事業主における 障害者雇用が進展した上で、実施することが適当である。」「そのため、まずは、常用労働者 100 人以 下の事業主における障害者雇用が進むよう、これらの事業主、特に障害者雇用ゼロ企業が抱えるノウ ハウ不足の課題に対して支援することが適当である。」とされた。 (現状)→・ 常用労働者が 100 人未満の事業主については、法定雇用率達成企業の割合が半数を下回り、かつ長 期的に見ると改善傾向が見られない状態が続いており、未達成企業のうち障害者雇用ゼロ企業の割合 も約9割と比較的停滞している。一方で、令和4年から令和7年にかけての 100 人未満の事業主の実 雇用率は、1.84%から 1.94%へと推移している。 ・ また、この間、ハローワークでの企業向けチーム支援や雇用関係助成金の拡充に加え、民間主体同 士で、採用から定着に至る障害者雇用のノウハウ支援を行う「障害者雇用相談援助助成金」の創設や、 中小企業が共同して障害者雇用に取り組む「事業協同組合等算定特例制度」の LLP(有限責任事業組 合)への拡大等、100 人以下の事業主を含む中小企業の障害者雇用を支援する施策も拡充・強化され てきている。 ・ また、過去の実績からみて、納付金制度の適用範囲を 300 人超から 100 人超まで引き下げた際には、 対象拡大の前の一定期間において、納付義務が課されない 100 人以下の事業主と比較して、実雇用 率・法定雇用率達成企業割合がより大きく改善する傾向も見られており、納付金制度の適用により、 100 人以下の事業主における障害者雇用がより促進される側面もあると想定される。 (制度的対応 常用労働者数 100 人以下の事業主への納付金の納付義務の適用拡大) ・ 本研究会においては、常用労働者数 100 人以下の事業主への納付金の納付義務の適用拡大について、 以下の論点提示を事務局(厚生労働省)より行い、議論した。 ・ 常用労働者数 100 人以下の企業は、達成企業の割合が半数を下回り、かつ長期的に見ると改善傾 22 向が乏しいことから、障害者雇用の更なる促進が求められる。中小企業の障害者雇用を支援する施 策の拡充・強化も踏まえ、この状況の改善や企業間の公平性の確保の観点から、100 人以下の企業 についても納付金の納付義務の対象とすることについてどう考えるか。 ・ 常用労働者 100 人以下の事業主に対しても、納付金の納付義務の適用拡大を行うことを通じ、障害 者雇用義務の意識を強化することにより、当該企業規模の事業主における障害者雇用を促進する方向 性で検討を深めるべきとする意見があった。また、適用拡大に当たっては、受入れの難しさは個別性 が高く、中小企業であることをもって一律に受入れの難しさがあるとは言えないとの意見、周知から 実際の適用までに相当の期間を設け段階的に進めていくべきとの意見、一律に相当の期間を想定する のではなく具体的な準備に要する期間を考えるべきとの意見、またその間に 100 人以下の事業主に対 する業務の切出しや定着に係る企業支援をセットで重点的に行っていくことが重要との意見があった。 また、その際、100 人以下の事業主に対する納付金徴収や企業支援の事務体制の在り方について、 併せて検討すべきとの意見があった。 ・ 一方で、地域別最低賃金の大幅な引上げ等により、中小企業等は厳しい経営環境に置かれている上 に、中小企業特有の難しさ(業務の切出しや人員体制が薄い中での障害者である労働者のサポート体制等)もあり、十分な受入れ体制が整備できないまま無理に雇用しても企業・障害者双方に好ましく ない結果につながることから、中小企業の雇用の十分な進展がみられない現状を踏まえれば、更なる 経済的な負担を課して障害者雇用の取組を進めるのではなく、障害者雇用相談援助事業等を通じた十 分な支援等により、中小企業における障害者雇用の進展を確認した後に、改めて検討するべき旨の意 見があった。 また、受入れ体制の整備には、相当な準備期間を要する旨や、中小企業に対する企業支援機能の更 なる拡充が必要である旨、「事業協同組合等算定特例制度」がより効果的で利用しやすい制度となる ような見直しが必要である旨の意見もあった。 ・ 今後、検討を深めていく際には、こうした意見を十分に踏まえ、障害者雇用促進法の基本的考え方 である社会連帯の理念に基づき、議論を進めていくことが必要である。 併せて、最初の1人を雇用する際の負荷が特に大きいことも踏まえ、障害者雇用ゼロ企業等に対す る雇用に向けた支援や、雇用後の定着支援を中心に、中小企業に対する企業支援機能を一層強化する 具体的方法を検討していくことが必要である。 W おわりに→・ 我が国の民間企業の障害者雇用については、雇用義務制度の創設の翌年である昭和 52 年に 1.09% であった実雇用率が、約半世紀を経て、令和7年には 2.41%となり、障害者雇用の場が大きく広がっ てきた。 こうした障害者雇用の場の広がりは、創設当時 1.5%であった法定雇用率が、徐々に引き上げられ 23 るとともに、多くの企業の法定雇用率達成に向けた努力の上で進展してきたものである。 ・ 一方、近年、法定雇用率は短期間に連続で大幅に引き上げられてきており、令和6年4月の 2.3% から 2.5%への引上げ、令和7年4月の除外率の引下げに続き、令和8年7月から 2.7%への引上げが 予定されている。こうした近年の連続的な引上げに対しては、企業の採用準備や採用・定着への影響 が大きくなっており、近年の「障害者雇用ビジネス」の利用の急速な増加の背景となっている旨の指 摘がある。 また、従来、計画的に障害者雇用に取り組んできた場合においてもなお、法定雇用率の達成が困難 になっている企業が生じているとの指摘もある。・法定雇用率は、社会連帯の理念に基づき、雇用の場を提供し得るのは事業主のみであることにかんがみ、障害の有無にかかわらず、同水準で労働者となり得る機会を確保するという考え方の下で算定 式が定められているものであり、この基本的考え方は、障害者雇用促進法の目的や基本的理念に通じ る制度の根幹として尊重すべきものである。 その一方で、制度創設当初からは我が国の障害者雇用の状況が大きく変化していることに加え、近 年の連続的な引上げを背景に、制度の運用等が、労働市場の変化のスピードや、採用準備等を含めた 現場の雇用実態等も踏まえたものになっているかどうかについては、別途丁寧な検討が求められている。 ・ 今後、労働政策審議会障害者雇用分科会において、次の法定雇用率設定期間である令和 10 年4月か らの5年間を想定し、前述の制度設計の具体化等につき検討するに当たっては、見直し後の制度に基 づいて新たな法定雇用率の算定を行うことを前提に、上記のような障害者雇用の状況変化等を十分に踏まえ、今後の雇用率の運用の在り方についても、併せて検討を行う必要がある。 ・ 雇用率算定を含めた障害者雇用促進制度の在り方をより良いものとすることを通じ、障害のある労 働者が、経済社会を構成する労働者の一員として能力発揮の機会を得られ、希望や障害特性に合った 就業環境の中で、事業活動に大いに貢献できる社会を目指していくことが重要である。 ○参考 今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会 開催要綱 1.趣旨 我が国の障害者雇用については、引き続き着実に進展している状況にあるところ、令和4年 12 月に成立した障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律等 の一部を改正する法律において、障害者の雇用の促進等に関する法律についても改正が なされ、令和6年4月に施行された。 他方、本改正の検討過程における議論を取りまとめた労働政策審議会障害者雇用分科 会意見書(令和4年6月 17 日)や、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援する ための法律等の一部を改正する法律案に対する衆参附帯決議において、障害者雇用率制 度における障害者の範囲や障害者雇用の質の観点など、引き続き検討が必要な事項につ いても指摘がなされている。 こうした背景も踏まえ、今後の障害者雇用の更なる促進のための制度の在り方等を検 討し、適切な政策を講じていくため、公労使、障害者関係団体等の関係者から成る「今 後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会」を開催し、現状の分析や論点整理を 行い、障害者雇用促進制度の在り方を検討する。 2.主な検討事項 (1)障害者雇用の質の向上について (2)障害者雇用率制度の在り方について (3)その他 3.本研究会の運営 (1)本研究会は、厚生労働省職業安定局長が学識経験者等の参集を求めて開催する。 (2)本研究会には、座長を置き、参集者の互選により選出する。座長は、本研究会を統 括する。 (3)本研究会には、座長代理を置くことができる。座長代理は、参集者から座長が指名 し、座長を補佐するとともに、座長に事故があるときには、その職務を代行すること とする。 (4)本研究会は、必要に応じ、参集者以外の有識者等の出席を求めることができる。 (5)本研究会の会議、資料及び議事録は、原則として公開とする。 ただし、座長は、公開することにより、個人の権利利益を害するおそれがあると認 めるときその他正当な理由があると認めるときは、非公開とすることができる。この 場合においては、その理由を明示するとともに、少なくとも議事要旨を公開する。 参考 25 (6)本研究会の庶務は、厚生労働省職業安定局障害者雇用対策課において行う。 (7)この要綱に定めるもののほか、本研究会の開催に必要な事項は、座長が厚生労働省 職業安定局長と協議の上、これを定めるものとする。 4.参集者 参集者は、別紙のとおりとする。 5.開催時期(予定) 令和6年 12 月(月1から2度程度) ○(別紙) 今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会 参集者→14名。 ○今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会(開催状況) 第1回(令和6年 12 月3日)・研究会の開催について ・ 障害者雇用促進制度における課題等について ・ 今後の研究会の進め方について ・ その他 第2回(令和7年2月 28 日 ・ 関係団体からのヒアリング ・一般財団法人 全日本ろうあ連盟 大竹 浩司 氏、市山 小織 氏 ・一般社団法人 障害者雇用企業支援協会 澁谷 栄作 氏、畠山 千蔭 氏、石崎 雅人 氏 ・一般社団法人 日本発達障害ネットワーク 大塚 晃 氏 ・特定非営利活動法人 全国就業支援ネットワーク 藤尾 健二 氏 ・ その他 第3回(令和7年3月 10 日)・ 関係団体からのヒアリング ・NPO法人 就労継続支援A型事業所全国協議会 久保寺 一男 氏、加藤 裕二 氏 ・公益社団法人 全国障害者雇用事業所協会 加藤 勇 氏、湯浅 善樹 氏 ・社会福祉法人 全国社会福祉協議会 全国社会就労センター協議会 小畑 治 氏、 井上 忠幸 氏 ・NPO法人 全国就労移行支援事業所連絡協議会 酒井 大介 氏、稲葉 健太郎 氏 ・一般社団法人 日本難病・疾病団体協議会 辻 邦夫 氏 ○ その他 第4回(令和7年4月 14 日)・ ヒアリング等を踏まえた意見交換 ・ その他 第5回(令和7年5月9日) ・ 障害者雇用率制度等の在り方について ・ その他 第6回(令和7年6月 10 日) ・ 障害者雇用率制度等の在り方について ・ その他 ◎参考資料1:今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会参集者→14名。 次回は新たに「令和7年度地域・職域連携推進関係者会議 資料」からです。 |



