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第197回労働政策審議会労働条件分科会(資料) [2025年06月09日(Mon)]
第197回労働政策審議会労働条件分科会(資料)(令和7年5月13日)
議題 労働基準関係法制について
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_57740.html
◎資料No.1 労働時間法制の具体的課題について@(総論、時間外・休日労働時間の上限規制、労働時間の情報開示、法定労働時間週44 時間の特例措置、テレワーク等の柔軟な働き方、管理監督者)
1. 人口構造・産業構造↓
○日本の人口の推移
→2040年には、15〜64歳人口が2020年と比較して約1,300万人減少する見込み。また、2070年には総人口が9,000万人を割り込み、高齢化率は約39%になると推計されている。
○産業別就業者数の推移→非製造業(第三次産業)での就業者数が増加傾向で推移。
○企業規模別雇用者数(非農林業)の推移→企業規模別雇用者数の推移をみると、500人以上規模の企業の雇用者数が増加傾向にある一方で、1〜29人規模の企業の雇用者数が減少傾向にある。
○我が国における中小企業で働く従業者数の割合→企業規模別にみると、日本全体では、中小企業で働く従業員数は約7割を占め、地方(東京都、神奈川県、埼玉県、愛知県、大阪府、 京都府及び兵庫県以外の道県)をみた場合、地方全体の従業員数のうち中小企業で働く従業員数は約8割を占めている。
○現在の雇用情勢→現在の雇用情勢は、求人が底堅く推移しており、緩やかに持ち直している。物価上昇等が雇用に与える影響に留意する必要がある。
○産業別・企業規模別にみた雇用人員判断D.I.の推移→新型コロナウイルス感染症の感染拡大前から続く人手不足感は、感染拡大の影響により2020年前半は全ての産業で弱まったものの、2021年12月に全ての産業が「不足」超で推移しており、中小企業の人手不足感がより強い傾向がみられる。企業規模別 にみると、2024年12月は、「不足」超の水準が全産業で大企業は▲28、中堅企業は▲36、中小企業は▲40と中小企業の人手 不足感がより強い傾向がみられる。
○地域別でみた人手不足D.I.の動向→雇用人員判断D.Iを地域別にみると、2023年度の非製造業では、「北海道」「甲信越」「九州・沖縄」ではマイナス幅が過去最高の水準 になるなど、各地域で人手不足感が強まっている。

2. 労働時間等の状況
○年間総実労働時間の推移
→・減少傾向で推移、これは一般労働者(パートタイム労働者以外の者)の総実労働時間についてほぼ横ばいで推移するなかで、総実労働時間が比較的短いパートタイム労働者の比率が平成8年頃から高まったこと等がその要因と考えられる。 ・総実労働時間を就業形態別にみると、一般労働者はおおむね2,000時間台で推移していたが、平成31年以降、2000時間を下回っている。また、パートタイム労働者は長期的に減少傾向で推移し、平成31年以降、1,000時間を下回っている。
○企業・事業所規模別労働時間の推移→事業所規模が大きいほど全労働者平均の労働時間は長い傾向にある。 月末1週間に60時間以上就業する雇用者数の割合は、雇用者数の多い企業は低く、少ない企業は高い傾向にある。
○男女別労働時間の推移→男女別の総実労働時間の推移をみると、男女とも減少傾向、令和6年では男性の方が379時間長い。 女性の総実労働時間の減少傾向は、パートタイム労働者比率の増加による影響が大きいと考えられる。 男性については、月末1週間に60時間以上就業する雇用者の割合が、減少傾向にあるものの依然高い水準で推移している。
【パートタイム労働者比率】※毎月勤労統計調査:事業所規模5人以上 ↓
女性29.3%(平成6年)→41.7%(平成15年)→46.1%(令和6年)
男性5.1%(平成6年)→ 9.4%(平成15年)→16.8%(令和6年)
○産業別労働時間の推移→いずれの産業についても緩やかな減少傾向にあるが、調査産業計と比較すると、運輸業や建設業などの適用猶予業種において高い水準となっている。
○週60時間以上就業する雇用者数及び割合の推移→月末1週間の労働時間が60時間以上の者の割合は減少している。
○週労働時間40時間以上の雇用者のうち、週労働時間60時間以上の雇用者の割合→いずれの産業についても、2018年以降減少傾向にある。
○適用猶予業種の労働時間の状況(1か月あたりの平均残業時間、1か月の時間外労働時間が45時間を超えた回数)→45時間以下⇒80→100%の範囲内。
○脳・心臓疾患に係る労災請求件数、支給決定(認定)件数の推移→令和5年度の業務災害の脳・心臓疾患に係る労災請求件数は1,023件で、前年度比220件の増加となり、労災支給決定(認定)件数は 216件(うち死亡58件)で、前年度比22件の増加となっている。
○産業別脳・心臓疾患の業種別請求、決定及び支給決定件数→参照のこと。
○精神障害に係る労災請求件数、支給決定(認定)件数の推移→令和5年度の業務災害の精神障害に係る労災請求件数は3,575件で、前年度比892件の増加となり、労災支給決定(認定)件数は 883件(うち未遂を含む自殺79件)で、前年度比173件の増加。
○産業別精神障害の業種別請求、決定及び支給決定件数→医療・福祉 多い。
○我が国の労働生産性と総労働時間→国際比較では、一人当たり総労働時間と時間当たり労働生産性には、負の相関関係がある。 我が国より一人当たりGDPの大きな国(青い丸で表示)の多くは、一人当たり総労働時間が短い。
○企業による設備投資の動向→設備投資の目的として、「新規事業への進出」「情報化関連」「合理化・省力化」などを挙げる企業の割合が2019年と比較して増加。 セルフレジ設置店舗があるスーパーマーケット運営企業は年々増加、2024年には37.9%に達している。

○自己啓発についての課題意識(2023年度)→ 自己啓発を行う上での問題点の内訳では、「仕事が忙しくて自己啓発の余裕がない」と答えた者の割合が高くなっ ている。
○睡眠時間の状況→ 国際的にみると、我が国の男女の睡眠時間は短くなっている。
○就業者の睡眠時間の状況→理想の睡眠時間は、「7〜8時間未満」が45.4%で最も多い一方で、実際の睡眠時間は「5〜6時間未 満」が35.5%で最も多い。理想の睡眠時間と実際の睡眠時間に乖離がみられ、約7割の労働者は、理想の 睡眠時間を取れていない。 1週間当たりの実労働時間別に理想の睡眠時間と実際の睡眠時間の乖離時間をみると、労働時間が長くな るにつれて乖離が大きくなる傾向がある。

3. 労働参加の状況
○都道府県別の労働参加率(15歳以上男女:2020年)
→都道府県別に労働参加率(※)をみると、東京都で68.7%と最も高くなっており、関東地方で比較的高い傾向にある。 また、中部地方においても、多くの県で全国の労働参加率(62.9%)を上回っており、高い水準となっている。
○都道府県別の労働参加率(65歳以上男女:2020年)→中部地方や山陰地方で全国の労働参加率(27.3%)を上回っ ている地域が多い。
○都道府県別の労働参加率(15〜64歳女性:2020年)→男性と比べて都道府県間のばらつきが大きく、東北地方、 中部地方、山陰地方、九州地方で全国値(73.2%)を大きく上回る地域が多い。
○女性を取り巻く雇用環境→ 近年では、女性の就業率のM字カーブの底は浅くなっているものの、正規雇用率のL字カーブがみられる。
○男女別の短時間労働者の労働時間の構成→ 2024年において、月末1週間あたりの労働時間が34時間以下の労働者は、男性が約697万人、女性が約1301万人 であった。
○労働時間の国際比較→ 週の労働時間ごとの分布を国際比較、我が国においては、女性については労働時間が短い者と長い者で二極化しており中間的な働き方の人が少ない状況。
○65歳以上の高齢者の就業率の推移→2005年以降20ポイント近く上昇し、70〜74歳についても15ポイント近い上昇がみられる。
○労働参加の状況と労働投入量の変化→ 90年代にいわゆる生産年齢人口(15〜64歳)が減少に転じ、労働投入量も減少してきたが、2010年代半ば以降、女性や高齢者の就業者が 大きく増えることで、労働投入量は維持される状況となった。(新型コロナにより一時的に大きく減少したが、以後持ち直しの動きがみられる) ⇒ 女性・高齢者を含む全ての労働者が希望どおりに能力を発揮できる、働きやすい環境を維持することが必要。
○2018年度労働力需給推計と実績値の比較→ 2022年の労働力人口の実績を2018年度労働力需給推計による推計値と比較すると、実績が、最も労働力人口を多く見込む「成長実現・労働参加進展」シナリオを上回った。
○就業者数の将来推計→ 労働力需給の推計によると、就業者数は、一人あたりの実質成長がゼロ、労働参加も現状から進まないと仮定したシナリオでは、2040 年の就業者は5,768 万人と2022年の就業者数6,724万人と比較して約1,000万人減少する見込みだが、経済成長と労働参加が同時に実現 するシナリオでは、2022年の就業者数6,724万人と比較して、2040 年では6,734 万人となり、ほぼ現状の水準を維持する、といった推計となっている。
○女性の継続就業・出産と男性の家事・育児時間の関係→男性は1時間57分(/日)、女性は6時間32分(/日)となっており、女性に家事・育児 負担が偏っている。 夫の家事・育児時間が長いほど、妻の出産前後の同一就業継続割合が高く、また第2子以降の出生割合も高い傾向にある。
○共働き世帯数と専業主婦世帯数の推移とワークライフバランスを意識した働き方へのニーズ→ワーク・ライフ・バランスを意識した働き方へのニーズが高まっている。

4. 時間外・休日労働時間の上限規制
○時間外労働の上限規制等に関する労使合意(平成29年3月13日)(抜粋)↓

日本経済団体連合会と日本労働組合総連合会は、働き方改革を強力に推し進め、長時間労働に依存した企業文化や職場風 土の抜本的な見直しを図ることで、過労死・過労自殺ゼロの実現と、女性や若者、高齢者など多様な人材が活躍できる社会 の構築に不退転の決意で取り組む。 両団体は、罰則付きの時間外労働の上限規制導入という、労働基準法70年の歴史の中で特筆すべき大改革に合意した。そ の際、労働組合に属さない労働者の保護や中小・零細企業の対応可能性なども考慮した。 政府には、働き方改革実現会議が近く取りまとめる実行計画に、下記の合意内容を盛り込むことを要望する。 なお、労働基準法は、労働者が人たるに値する生活を充たすうえでの最低基準を定めたものであり、労使はその向上を図 るよう努めるべきとされている。特別の事情により「特別条項」を適用する場合でも、上限時間水準までの協定を安易に締 結するのではなく、月45時間、年360時間の原則的上限に近づける努力が重要である。 個別企業労使には、このことをしっかり確認し合いながら、自社の事情に即した時間外労働の削減に不断の努力を求めたい。

1.上限規制 時間外労働の上限規制は、月45時間、年360時間とする。ただし、一時的な業務量の増加がやむを得ない特定の場合の上 限については、⇒ 1.年間の時間外労働は月平均60時間(年720時間)以内とする 2.休日労働を含んで、2ヵ月ないし6ヵ月平均は80時間以内とする 3.休日労働を含んで、単月は100時間を基準値とする 4.月45時間を超える時間外労働は年半分を超えないこととする。
以上を労働基準法に明記する。これらの上限規制は、罰則付きで実効性を担保する。 さらに、現行省令で定める36協定の必須記載事項として、月45時間を超えて時間外労働した者に対する健康・福祉確保措 置内容を追加するとともに特別条項付36協定を締結する際の様式等を定める指針に時間外労働の削減に向けた労使の自主的な努力規定を盛り込む。 2〜5. (略)        一般社団法人日本経済団体連合会 会長 榊原 定征
日本労働組合総連合会 会長 神津 里季生

○働き方改革実行計画(平成29年3月28日働き方改革実現会議決定)(抜粋)
4.罰則付き時間外労働の上限規制の導入など長時間労働の是正
(基本的考え方)
我が国は欧州諸国と比較して労働時間が長く、この20 年間フルタイム労働者の労働時間はほぼ横ばいである。 仕事と子育てや介護を無理なく両立させるためには、長時間労働を是正しなければならない。働く方の健康の確保を図ることを大前提に、それに加え、マンアワー当たりの生産性を上げつつ、ワーク・ライフ・バランスを改善し、 女性や高齢者が働きやすい社会に変えていく。 長時間労働の是正については、いわゆる36協定でも超えることができない、罰則付きの時間外労働の限度を具体的に定める法改正が不可欠である。 他方、労働基準法は、最低限守らなければならないルールを決めるものであり、企業に対し、それ以上の長時間労働を抑制する努力が求められることは言うまでもない。長時間労働は、構造的な問題であり、企業文化や取引慣行を見直すことも必要である。「自分の若いころは、安月給で無定量・無際限に働いたものだ。」と考える方も多数いるかもしれないが、かつての「モーレツ社員」という考え方自体が否定される日本にしていく。労使が先頭に立って、働き方の根本にある長時間労働の文化を変えることが強く期待される。
(法改正の方向性) 現行の時間外労働の規制では、いわゆる36協定で定める時間外労働の限度を厚生労働大臣の限度基準告示で定め ている。ここでは、36協定で締結できる時間外労働の上限を、原則、月 45 時間以内、かつ年 360 時間以内と定めているが、罰則等による強制力がない上、臨時的な特別の事情がある場合として、労使が合意して特別条項を設けることで、上限無く時間外労働が可能となっている。 今回の法改正は、まさに、現行の限度基準告示を法律に格上げし、罰則による強制力を持たせるとともに、従来、 上限無く時間外労働が可能となっていた臨時的な特別の事情がある場合として労使が合意した場合であっても、上回ることのできない上限を設定するものである。 すなわち、現行の告示を厳しくして、かつ、法律により強制力を持たせたものであり、厳しいものとなっている。 労働基準法の改正の方向性は、日本労働組合総連合会、日本経済団体連合会の両団体が時間外労働の上限規制等 に関して別添2のとおり労使合意したことを踏まえて、以下のとおりとする。 (以下省略)
○働き方改革実現会議 構成員→議長 安倍晋三 内閣総理大臣 議長代理 加藤勝信 働き方改革担当大臣 塩崎恭久 厚生労働大臣ほか6名。 (有識者)→15名。

○時間外労働の上限規制の概要→ 働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(平成30年法律第71号)により改正された 労働基準法(昭和22年法律第49号)において、時間外労働の上限は、原則として月45時間、年360時 間(限度時間)とされ、臨時的な特別の事情がある場合でも年720時間、単月100時間未満(休日労 働含む)、複数月平均80時間以内(休日労働含む)とされた。 ※限度時間を超えて時間外労働を延長できるのは年6か月が限度。 ※平成31年4月1日施行/中小企業は令和2年4月1日施行/建設の事業、自動車運転の業務、医師については、令和6年4 月から、特例つきの上限規制が適用。 ※働き方改革関連法前は、大臣告示により限度時間等を定めていたが、臨時的な特別の事情がある場合においては、 同告示には時間外労働の上限は定められていなかった。
○諸外国の状況(法定労働時間、時間外労働、割増賃金等) 参照のこと。
○一般 (労働者)所定労働時間・残業時間 労働時間制度等に関するアンケート調査(令和5年)→1週の所定労働時間は「35時間超40時間以下」が40.2%と最も多くなっている。 直近3か月の、1か月あたりの平均残業時間については、「0時間」が32.3%、「1〜10時間」が34.4%、「11〜20時間」が 11.7%となっている。なお、81時間以上の回答の合計は、5%となっている。 労働者自身にとって適切だと考える1か月あたりの残業時間については、「0時間」が31.1%、「1〜10時間」が41.8%、 「11〜20時間」が14.8%となっており、20時間以下の回答の合計が、87.6%となっている。
○一般 (労働者) 労働時間(残業時間の認識@)労働時間制度等に関するアンケート調査(令和5年)→現在の残業時間数について、「ちょうどよい」と考える労働者は48.5%となっている。 残業時間の長さについて、「減らしたい」、「やや減らしたい」の合計が26.1%、「増やしたい」、「やや増やしたい」の合 計が10.9%となっており、減らしたいと考えている労働者の方が増やしたいと考えている労働者よりも多い。 残業時間を減らしたい理由は「自分の時間を持ちたいから」が57.2%、残業時間を増やしたい理由は「残業代を増やしたいから」が67.5%、残業時間がこのままでよい理由は「今の生活リズムを変えたくないから」が54.2%となっている。
○一般 (労働者)労働時間(残業時間の認識A)→残業時間を「減らしたい」「やや減らしたい」と回答した労働者に聞いた、残業時間を減らすことにより残業代が減少するこ とに対する認識については、「残業代が減ってもよいので、残業時間を減らしたい」が55.9%、「残業代が減るならば、残業 時間は減らしたくない」が20.3%となっている。 残業時間を削減するために有効な措置については、多い順に、「人手不足を解消する」が35.3%、「業務の簡素化、効率化を進める」が28.5%、「業務分担が偏らないようにする」が27.7%等となっている。
○労働基準関係法制研究会報告書 概要 U 労働時間法制の具体的課題
1 最長労働時間規制
(1)時間外・休日労働時間の上限規制
→・上限規制による労働時間短縮の効果はある程度表れていると考えられるものの、2020年(令和2年)以降は新型コロナウイル ス感染症の影響が無視できないことなどから、現時点では、上限そのものを変更するための社会的合意を得るためには引き続き上限規制の施行状況やその影響を注視することが適当ではないかと考えられる。もちろん、「時間外労働の上限規制等に関する労使合意」(2017年(平成29年)3月)にあるように、時間外労働の上限を36協定の原則である月45時間・年360時間に近付けられ るよう努めていくべきであり、目標を見据えて定期的に時間外・休日労働等の実態を把握し、上限規制の水準の見直しについて議 論することが必要である。また、自動車運転者や医師などは、2024年(令和6年)度から時間外・休日労働時間の上限規制が適 用となったが、なお一般より長い上限が適用されているため、健康確保措置の在り方や、一般の上限規制の適用に向けた取組をど のようにするかを議論すべきである。 ・36協定はあくまで上限設定であり、個別の労働者の事情を踏まえて、時間外・休日労働を行うことが難しい労働者が安心して働 けるような環境を整備することや、育児や介護等の特定の事由に限定せず、働き方や労働時間を選択できるようにすることなど、 柔軟な働き方を可能にする法制度について、労働基準法以外の法令における対応を含めて中長期的に検討していく必要がある。 ・労働基準法第33条第1項の特例について、同項は災害時等による臨時の必要がある場合の規定ではあるが、日本は災害が多いこ とも踏まえれば、長時間の時間外・休日労働をせざるを得ない場合の健康確保について、何らかの対応が望まれる。 ・これからの時代においては、長時間の時間外労働を前提としない働き方が通常の働き方とされる社会としていくことが重要であ り、これまで述べてきた制度的な議論による対応に加え、人事評価制度や人員配置・管理等について、健康経営や人的資本経営の 観点からも企業の意識改革が望まれ、そうした気運の醸成に努めていく必要がある。 ・加えて、長時間労働の是正には、労働時間制度だけでなく、官公庁取引を含む商慣行の見直しや、大企業や親会社、国・地方自治体の働き方改革が中小企業や子会社を始め取引先にしわ寄せを生じさせる状況の是正といった観点も重要であり、厚生労働省と 業所管省庁が協力して進めることが重要である。

5. 企業による労働時間の情報開示
○職場情報に関する法定開示項目
→「5つの法令名」「開示を求められる内容」「開示義務を負う事業主」「開示方法」 参照のこと。
○職場情報に関する法定開示項目(各法で開示を求められる内容の詳細)→「開示を求めている項目(種別)」「開示を求めている項目(詳細)」 参照のこと。
○衛生委員会等→ 労働者の健康障害の防止及び健康の保持増進を図るための取り組みは労使が一体となって行う必要があり、そのためには、衛生委員会や安全衛生委員会(衛生委員会等)において、労働者の健康障害を防止するための基本となるべき対策などの重要事項に ついて十分な調査審議を行う必要がある。
○労働時間等設定改善法の概要→「労働時間等の設定の改善に関する特別措置法」は、「労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法」(時短促進法。平成4年から5年間の時限法、平成9年、平成13 年に廃止期限を延長)を、労使の自主的な取組を中心とする基本的性格は保ちつつ、平成17年に改めたもの。 ⇒時短(年間総実労働時間1800時間の数値目標)から、事業場における「労働時間等の設定の改善」へ ※数値目標を含めた「労働時間短縮推進計画」から「労働時間等設定改善指針」へ/時限法から恒久法へ
○労働基準関係法制研究会報告書 概要→1 最長労働時間規制
(2)企業による労働時間の情報開示
(2)ー1 企業外部への情報開示
→労働基準法の強行的な規制による労働時間の短縮のほか、労働市場の調整機能を通じて、個別企業の勤務環境を改善していくこ とが考えられる。 長時間労働の是正について考えると、特に企業の時間外・休日労働の実態について、正確な情報が開示されていることが望ましい。 企業による自主的な情報開示が、質・量ともにより充実するよう、その基盤を整えることや、義務的な情報開示について検討することについては、厚生労働省として不断に取り組んでいくことを期待する。
(2)ー2 企業内部への情報開示・共有→ 衛生委員会や労働時間等設定改善委員会等の労使の会議体への時間外・休日労働の状況等の情報開示は、例えば衛生委員会にお いては長時間にわたる労働による労働者の健康障害の防止を図るための対策の樹立に関することが調査審議事項とされているように、実質的な議論をする上で非常に重要となる。 個別の労働者に対して個人の情報を開示し、改善を促すとしても、自主的な行動変容によって労働時間を短縮できるのは、ある程度働き方に裁量のある労働者に限られるのではないかという懸念もある。一方で、個別の労働者に対する情報開示は、割増賃金 が適正に払われているかを確認し、労働基準法違反の状態の発生を防止し、あるいは迅速に是正することにも資するものといえる。 管理職に対してその管理対象となる部署の時間外・休日労働時間の情報を共有し、改善を求めることが考えられる。これは、企 業による労働時間短縮の取組を強く促すという点で有効と考えられる。一方、管理職は部下との関係では労働基準法第10条の使用者に当たる面もあることから、管理職への情報共有と改善の取組はある種の企業内ガバナンスの整備のような問題として捉えられ る。

6. 法定労働時間週44時間の特例措置
○法定労働時間週44時間の特例措置
→ 労働基準法別表第1第8号(商業)、第10号(映画・演劇業)(映画の製作の事業を除く。)、第13号(保健衛生業)及 び第14号(接客娯楽業)のうち、常時10人未満の労働者を使用するものについては、保健衛生業についてはその公衆の不便を避けるために必要なものであること、商業、映画・演劇業及び接客娯楽業については労働の実態として手待ち時間が多い等 の特殊性があること等を考慮し、1週の法定労働時間が44時間とされている。(労働基準法施行規則第25条の2)
・今後の労働時間法制の在り方について(建議)(2015年2月13日労働政策審議会)(抄) 5その他 ⑴特例措置対象事業場→・週44時間特例対象事業場の所定労働時間の現状をみると、79.7%の事業場で所定労働時間が週40時間以下となっているが、一部の業種では過半の事業場で所定労働時間が週44時間前後という状況にある。 ・こうした状況や労働基準法第40条の趣旨を踏まえ、必要に応じさらに詳細な実態の調査を行った上で、特例措 置対象事業場の範囲の縮小を図る方向で、法案成立後、改めて審議会で検討の上、所要の省令改正を行うこと が適当である。
○事業所 所定労働時間 労働時間制度等に関する実態調査(令和6年) 参照のこと。
○事業所 所定労働時間を超えた時間外労働に対する割増賃金(令和6年)参照のこと。
○各産業・規模別の事業場における週48時間制から週40時間制への移行経過 参照。
○労働基準関係法制研究会報告書 概要 1 最長労働時間規制 (4)法定労働時間週44時間の特例措置
→ 法定労働時間を週44時間とする特例措置の対象事業場について、87.2%(※)の事業場がこの特例措置を使っていない現状に鑑みると、概ねその役割を終えていると考えられる。現状のより詳細な実態把握とともに、特例措置の撤廃に向けた検討に取り組むべきである。その際、業種に特徴的な労働時間の実態もあることから、業種による状況の違いを把握しつつ検討するべきである。 (※)厚生労働省が委託して実施したPwC コンサルティング合同会社「労働時間制度等に関するアンケート調査」(2024 年)によると、特例措置対象事業場の1週当たり所定 労働時間は「35 時間超40 時間以下」が84.0%、「35 時間以下」が3.2%となっている。

7. テレワーク等の柔軟な働き方
○フレックスタイム制度がある企業の割合
→フレックスタイム制度がある企業の割合は7.2%(令和6年度)、適用を受ける労働者の割合は11.5%(令和6 年)。 新型コロナ感染症対策として企業のテレワークの導入率は増加。
○フレックスタイム制→一定の期間についてあらかじめ定めた総労働時間の範囲内で、労働者が日々の始業・終業の時刻、労働 時間を自ら決めることのできる制度 時間外労働となるのは、清算期間における法定労働時間の総枠を超えた時間数※ (時間外労働を行わせるには、36協定の締結が必要)
○フレックスタイム制に関する現行の規定(法律・省令)→ ◎労働基準法(昭和22年法律第49号)(抄) 第三十二条の三  ◎労働基準法施行規則(昭和22年労働省令第23号)(抄) 第十二条の三  参照。
○フレックスタイム制に関する現行の規定(解釈通達)→ ◎昭和63年1月1日基発1号・平成11年3月31日基発168号・平成31年4月1日基発0401第43号 (2) フレックスタイム制  イ 趣旨 フレックスタイム制は、一か月以内の一定の期間の総労働時間を定めておき、労働者がその範囲内で各日の始業及び終業の時刻 を選択して働くことにより、労働者がその生活と業務との調和を図りながら、効率的に働くことを可能とし、労働時間を短縮しようとするものであること。フレキシブルタイムが極端に短い場合、コアタイムの開始から終了までの時間と標準となる一日の労働時間がほぼ一致している場合等については、基本的には始業及び終業の時刻を労働者の決定にゆだねたこととはならず、フレックスタイム制の趣旨に合致しないものであること。
○テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン(抜粋)@➁→6 様々な労働時間制度の活用(1)(2) (3) 参照。
○一般 (企業)フレックスタイム制と通常勤務日を組み合わせる制度 労働時間制度等に関するアンケート調査(令和5年)→フレックスタイム制と通常勤務日を組み合わせる制度は必要だと思うかについて、「必要である、ある方がよい」が23.7%、「不要である、ない方がよい」が18.1%、「どちらでもよい、わからない」が55.7%となっている。フレックスタイム制の適用者について見ると、「必要である、ある方がよい」が47.1%となっている。
○労働基準関係法制研究会報告書 概要 1 最長労働時間規制 (3)テレワーク等の柔軟な働き方 →【フレックスタイム制の改善について】⇒特定の日については労働者が自ら始業・終業時刻を選択するので はなく、あらかじめ就業規則等で定められた始業・終業時刻どおり出退勤することを可能とすることにより、部分的にフレックスタ イム制を活用できる制度の導入を進めることが考えられる。まずは、このフレックスタイム制の改善に取り組むべきと考えられる。  【テレワーク時のみなし労働時間制について】⇒在宅勤務を対象とする新たなみなし労働時間制については、実労働時間管理をする場合の課題やそれに代わる健康管理時間の把握をめぐる課題等を踏まえて、こうした点に関する検討も含め、在宅勤務における労働時間の長さや時間帯、一時的な家事や育児への対応等のための中抜け時間の状況等の労働時間の実態や、企業がどのように労働時間を管理しているのか、新たなみなし労働時間制に対する労働者や使用者のニーズが実際にどの程度あるのかということを把握し、また上記により改善されたフレックスタイム制の 下でのテレワークの実情や労使コミュニケーションの実態を把握した上で、みなし労働時間制の下での実効的な健康確保の在り方も 含めて継続的な検討が必要であると考えられる。

8. 管理監督者
○裁量労働制・高度プロフェッショナル制度・管理監督者等の適用要件
→それぞれ適用要件が定められている。
○労働者の種別に応じた健康・福祉確保措置等→参照のこと。
○高度プロフェッショナル制度の健康・福祉確保措置 健康確保のための措置→(1)〜(4)
○管理監督者の概要
→ 「管理監督者」は、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者をいい、労働基準法で定められた労働時間、休憩及び休日に関する規定の適用が除外される。 「管理監督者」に当てはまるかどうかは、役職名ではなく、その労働者の勤務態様、職務内容・責任・権限、待遇を踏まえて実態により判断される。
○管理監督者をめぐる裁判例 ※いずれも時間外割増賃金等の支払義務の存否が争点となったものであり、いずれも「管理監督者に当てはまらない」とされた。⇒「10の事件名」「原告の地位」「認定した事実」 参照のこと。
○管理職の月間残業時間数 →管理職の月間残業時間数(1日8時間もしくは週 40 時間を超える労働時間)の分布の状況を見ると、全体では、「0時間」 (24.7%)の占める割合が最も高く、次いで「40 時間以上」(17.5%)、「20 時間以上 30 時間未満」(17.1%)の順と なっている。残業時間数は、19.5 時間であった。(令和2年9月の状況) ※本調査において、「管理職」とは、監督または管理の地位にあり、時間外労働や休日労働に対する割増賃金の対象とされてい ない者を指す。
○管理職に対する健康・福祉確保措置の実施状況→ 勤務先の会社での健康・福祉確保措置の実施状況について尋ねた結果、実施されている割合の高い順に、「勤務状況及び健 康状態に応じて、健康診断を実施する」(89.6%)、「産業医等による健康指導を受けさせる」(89.0%)、「勤務状況及び 健康状態に配慮し、必要な場合に適切な部署に配置転換する」(85.2%)となっている。 実施されていないが、今後実施してほしいとする割合が高い順に、「勤務状況及び健康状態に応じて、代償休日又は特別な 休暇を付与する」(21.4%)、「健康相談窓口を設置する」(14.4%)、「勤務状況及び健康状態に配慮し、必要な場合に適 切な部署に配置転換する」(11.7%)と、実施されている割合が低い措置の割合が高くなる傾向にある。 なお、「実施されている」割合と「実施されていないが、今後実施してほしい」割合を加えると、いずれの項目も9割程度 以上となっている。 ※本調査において、「管理職」とは、監督または管理の地位にあり、時間外労働や休日労働に対する割増賃金の対象とされていない者を指す。
○労働基準関係法制研究会報告書 概要 1 最長労働時間規制 (5)実労働時間規制が適用されない労働者に対する措置→ 管理監督者等については、労働安全衛生法において労働時間の状況の把握が義務化され、長時間労働者への医師による面接指導の対象とされてはいるものの、労働基準法制定当時から現在に至るまで、特別な健康・福祉確保措置は設けられていない。このため、 管理監督者等に関する健康・福祉確保措置について、検討に取り組むべきである。 加えて、本来は管理監督者等に当たらない労働者が管理監督者等と扱われている場合があると考えられることから、現行の管理監督者等についての制度趣旨を踏まえて、その要件を明確化することが必要と考えられる。

次回も続き「資料No.2 労働条件分科会におけるこれまでの意見」からです。

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