第4回今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会資料(令和7年4月11日)
1.ヒアリング等を踏まえた意見交換 2.その他
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_56959.html◎資料1:関係者ヒアリングにおいて出された意見と今後の進め方について
関係者ヒアリングにおいて出された意見と今後の進め方について (今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会)→本研究会においては、第2回(本年2月28日)、第3回(同3月10日)に合計9の関係者からヒアリングを行った。 本資料は、今後の議論の円滑化及び明確化に資する観点から、事務局においてこれまで聴取した意見等を整理した。 今後、以下の各ヒアリング項目について、ヒアリングの意見等も踏まえ、構成員の間で議論を進めてはどうか。
【障害者雇用の質について】→ ⑴ 障害者の雇用者数は堅調に増加しているが、雇用者数のみならず、障害者の雇用の質についてもその向上を図 ることが求められている。 前回の法改正においても、厚生労働省労働政策審議会障害者雇用分科会等の意見を踏まえ、事業主の責務として職業能力の開発及び向上に関する措置が追加される等これまでも一定の措置が講じられているが更なる雇用の質の向上に向けてどのような対応が求められるか。
・雇用の質の評価の必要性→5つの対応あり。・ 「雇用の質」の指標として長期継続雇用の実現があるため、長期就労に一定以上の実績を示す企業に対し、実雇用率への加算又は助 成金等の支援を検討すべき。
・既存施策等の運用の改善による質の向上→3点の対応。・ 聴覚障害者についての研修等における環境(通訳配置等)の改善や、発達障害者を適切に配慮できる専門支援機関の体制整備や合理 的配慮を適切に提供できる人材・ジョブコーチの育成が必要。
・いわゆる障害者雇用ビジネス→4点対応。・ 雇用率ビジネスの見せかけだけの雇用より、むしろ福祉的就労の現場の障害者の働き方の方がディーセントワークに近い。福祉施設 で障害者が働く環境を提供するなどしている場合、例えば施設外就労や発注などの連携を一定評価すべき。
【障害者雇用率制度等の在り方について】→ ⑵ 障害者雇用率制度等について、合理的配慮等の障害者雇用の促進のための施策と併せて、どのようにあるべきと 考えるか。特に、労働政策審議会障害者雇用分科会等においては、以下の論点について、引き続き検討とされているが、どのように考えるか。
@手帳を所持していない難病患者や、精神・発達障害者の位置づけについて ・難病患者、精神・発達障害者共通→8点あり。・ 雇用率が今後も段階的に引き上げられるのであれば、根本的な課題整理が必要。生活困窮者、難病患者等の「働きづらさがある方」を 雇用率の対象とすることを検討するか、より重度の障害者の障害者雇用の促進を図るかの検討も併せて必要。
・難病患者→7点。・ 就労後の難病発症や再発、重症化では、環境整備や合理的配慮の提供が十分ではない場合には就労継続は困難であるため、企業の合理的配慮提供を一層推進するためには、補助金や助成・認定制度、企業コンソーシアムの構築などの施策が必要。
・精神・発達障害者→4点。・ 精神障害者は、症状緩和で手帳更新がされない場合もあり、その要因として、就職した企業の環境整備等が挙げられるため、企業努力 の評価と別の障害者の採用のための猶予期間という意味で、当該対象者を一定期間実雇用率にカウントできる措置が必要。
A就労継続支援A型事業所やその利用者の位置づけについて→6点。・ これから一定人数以上の調整金・報奨金の減額が始まる段階であり、その施行状況も踏まえて検討が必要。
B精神障害者において「重度」区分を設けることについて
・重度区分→3点。・ 「重度」区分は、手帳の級で区分するのではなく、「真に雇用に際して判定が必要な対象者」をしっかり検証することが必須。例えば 地域障害者職業センターが実施する知的障害者の「職業的重度判定」を参考とし、同様の方法の適用が有効ではないか。
・週所定労働時間20時間以上30時間未満の精神障害者の雇用率算定特例→・ 精神は他の種別と異なり、短時間ほど雇用管理の負担が重いことや、精神障害者の雇用推進に恩恵が大きいため、特例措置は維持・恒常化されるべき。
C常用労働者数が100人以下の事業主への障害者雇用納付金の納付義務の適用範囲の拡大について→4点。・ 納付金額の算定根拠・積算根拠は、長年変化がないため、適当なディスインセンティブとなっているかも含め検証し、計算根拠を改め るべき。また、昨今の物価の上昇率なども計算に加味する必要がある。
Dその他障害者雇用率制度全体について→3点。・ 就労系障害福祉サービス利用者の一般雇用への移行を今以上に促進することが不可欠。そのための施策強化が必要。
【その他】 ⑶ その他、障害者雇用を更に促進するため、どのような課題や対応が求められると考えるか。→6点。・ 加齢や障害の進行によって、企業に籍を置きながら福祉制度を利用できる仕組みが必要。
〇ヒアリング等団体→(第2・3回研究会)計9団体。
◎資料2:諸外国の障害者雇用促進制度について
令和7年4月14日 厚生労働省職業安定局
≪ドイツの制度概要≫↓
○ドイツの制度概要│雇用施策対象の障害者定義、雇用率制度
1.雇用施策対象の障害者定義→

社会法典(Sozialgesetzbuch)第9篇※1第2条第1項 「身体的、知的、精神的あるいは感覚的な機能障害※2があり、態度や環境による障壁との間の相互作用により、他の者と同等 の社会参加が6か月を超えて妨げられる高度の蓋然性がある者」
※1 障害者の社会参加や雇用支援を規定する法律 ※2 身体的、精神的健康状態が年齢相応の典型的な状態から逸脱していること (参考)具体的な障害種別 頭・顔、神経・精神、視覚器官、聴覚・平衡器官、鼻、口腔・咽頭・上気道、胸部・下気道・肺、心臓・循環器系、消化器系、ヘルニア、泌尿器系、男性生殖器、 女性生殖器、代謝・内分泌、血液・造血器・免疫系、皮膚、運動器(腕、足、体幹)、リウマチ性疾患等。
2.雇用率制度→

法定雇用率5%※、達成企業割合38.5%(雇用義務のある使用者178,690中、68,850が達成。2022年時点。) ※20ポスト以上40ポスト未満の企業等については1人以上、40ポスト以上60ポスト未満の企業等については2人以上。 ※法定雇用率の設定方法は、公表なし。

対象事業主 ⇒年平均で月20以上のポスト(労働者、公務員、裁判官、職業訓練生等が勤務するポスト)があるすべての民間及び公的な使用者

対象障害者 ⇒市又は州の援護局にて、機能障害の基準により障害度を0〜100で認定し、障害度50以 上の困難度の高い障害者」及び「同等認定」を受けた者。

達成方法・達成状況の確認方法 ⇒直接雇用のみが対象。特に就労に困難を伴う障害者には複数カウント制度あり。事業主が毎年連邦雇用エージェンシーに報告 することで確認。
○ドイツの制度概要│納付金等の徴収金、助成金等支給金・税制優遇
3.納付金等の徴収金→

負担調整賦課金 ↓

雇用義務の範囲と負担調整賦課金の範囲は同じ。未達成率に応じて累進的に増額。
•年平均雇用率3〜5%未満 不足人数×140€(約2.2万円※)/月
•年平均雇用率0〜2%未満 不足人数×360€(約5.7万円※ )/月
•年平均雇用率0% 不足人数×720€(約11.5万円※ )/月

中小企業(従業員60人未満企業)に対する減額特例や福祉的就労への発注による減額の仕組みあり。

近時の改正により、0人企業に対する納付金額を引上げ(罰則的意味付けも含まれる)。
4.助成金等支給金・税制優遇→

助成金は、個々の事案に応じて決定される。(以下は主な支給内容の例として記載。) P4説明表 参照。
○ドイツの制度概要│支援機関、一般就労における職場適応援助者等の 仕組み、福祉的就労等の選択肢
5.支援機関→

連邦雇用エージェンシー ⇒障害リハビリテーション機関として、障害者に対する職業紹介、職業訓練等を担う。(障害度50以上に限定されない)

統合局 ⇒連邦雇用エージェンシー等と連携し、障害度50以上の「困難度の高い障害者」の支援や各種の助成を行う。

統合専門サービス(IFD) ⇒障害度50以上の「困難度の高い障害者」が就労に参加するための、紹介と引率のあらゆる範囲のサービスを提供。

その他 ⇒児童青少年扶助機関や、生活困窮者等の支援を担う統合扶助機関等も職業リハビリテーション機関として位置づけられる。
6.一般就労における職場適応援助者(ジョブコーチ)等の仕組み→

2009年に社会法典第9篇で「援助付き雇用」が法制化され、その手段の一つとしてジョブコーチ制度を整備。

@統合局に在籍するジョブコーチとA援助付き就業ヨーロッパ連合(EUSE)に在籍するジョブコーチが存在

対象者は、福祉作業所からの移行者、精神障害者、職探しが困難な者。(なお、身体障害者のサポートはハンブルクアルバイトアシスタントという別の支援者が担う)
7.福祉的就労等の選択肢→

障害者作業所(Werkstatt) ⇒福祉的就労として、一般労働市場での採用が不可能、又は現時点で不可能である者、再就職できない障害度50 以上の「困難度の高い障害者」が対象。原則として雇用率の適用なし。

包摂事業所(Inklusionsbetriebe) ⇒社会的雇用として、負担調整賦課金を原資として運営される障害者雇用を目的とした一般就業。 障害度50以上の「困難度の高い障害者」を雇用する。労働市場に分類。障害者雇用割合は30%以上50%以下が求められる。
○ドイツの制度概要│重点的な雇用支援を必要とする者への対応、 雇用率制度等の対象より軽度の障害者への対応
8.重点的な雇用支援を必要とする者への対応→

雇用率の複数カウント ⇒手話通訳等支援員の配置が必要となる者や知的・精神障害者、50歳以上の者、福祉的就労からの移行者(少なくとも移行後2年間は2カウント)等、労働生活の参加に困難がある場合、雇用率算定時に2~3カウント可能。(職業訓練中の重度障害者は少なくとも2カウント、職業訓練を修了した者については、最初の1年間について2カウント)
9.雇用率制度等の主な対象より軽度の障害者への対応※→
同等認定 ↓
就職や就業継続が困難な障害度50未満の者に対し「同等認定」を行うことで各種支援を受けることを可能とする仕組み

認定基準 ⇒障害度30又は40で、障害のために適切な職場を取得あるいは保持できない者が対象

認定の実務 ⇒障害者本人からの申請を基に、実際の就職活動や就業継続場面で、障害者職業紹介や定着支援の現場支援者からの意見表明を受け、雇用エージェンシーが認定

認定により受けられるサービス • 雇用率へのカウント • 解雇時の援護局/統合局の介入 • 雇用主への各種要求の権利(特別休暇、公共交通機関の無料利用等)

課題 ⇒地域における機関の縦割りを超えた協力体制の構築と、同等認定の実務内容における地域・期間・支援者等の格差 を是正すること
○ドイツの制度概要│雇用の場における差別禁止
10.雇用の場における差別禁止
差別禁止の定義→

使用者は、「困難度の高い障害」のある従業員に対して、障害を理
由として不利益取扱いをしてはならない。個別には、 一般平等取扱法の規定が適用される(社会法典第9篇第81条2項)。

従業員は一般平等取扱法(Allgemeines Gleichbehandlungsgesetz)第1条に掲げられる事由(人種又は民族的出自、性別、宗教若しくは世界観、障害、年齢又は性的なアイデンティティ)のいずれかに基づき不利益な取扱いを受 けることがあってはならない。

第1条に掲げられる事由による不利益取扱いは、法律により、次に関連する事項について、違法。⇒ @ 採用及び昇進について、選択基準や採用条件を含む諸条件 A 労働の対価及び解雇条件を含む、特に、就労関係の遂行と終了にあたって、並びに昇進にあたっての個別的ないし集団的合意及び 措置における、就労条件ないし労働条件 B 職業上の助言、職業教育、再教育、継続訓練、インターンを含む職業訓練 C 雇用団体ないし使用者団体、その他の一定の職業グループに属する団体メンバーへの加入 D 社会保障関係職員及び福利厚生職員を含む社会的な公的な施設 E 社会的な優遇 F 教育 G 商品やサービスの支給開始とその供給(同法第2条要旨のみ)

対象事業主:使用者(同法第6条第1項の者を雇用する自然人、法人及び権利能力のある人的会社)

対象障害者:労働者、職業訓練の就労者、労働者類似の者(同法第6条第1項)

確認方法・違反時の対応 ⇒企業内での苦情相談での対応、又は必要に応じて統合局等への相談。解決しない場合には民事訴訟等での対応。
○ドイツの制度概要│雇用の場における合理的配慮、雇用の質向上の施策
11.雇用の場における合理的配慮
合理的配慮の定義 ※目的規定であり、規範的な意味はない→

使用者はその事業所や職場で定められた数の「困難度の高い障害者」ができるだけ継続的に障害に適した雇用を見つけることができるよう、適切な措置を確実に提供するものとする。(社会法典第9篇第 164条第3項)

「困難度の高い障害者」は、障害及びその雇用への影響を考慮して、能力及び知識を活用し、継続発展できる雇用(同 項第1号)、事業所内での職業教育の優先的考慮(同項第2号)、事業所外での職業訓練への参加を容易にすること (同項3号)、障害に適した職場の設備と維持(同項第4号)、必要な技術的作業補助のある職場を与えること(同項第5 号)に関する請求権を使用者に対して有する。

ただし、その履行が使用者にとって期待可能性がない場合、又は過度に費用がかかる場合、国又は同業者組合 (Berufsgenossenschaft)の労働保護法規、もしくは官吏法上の規定に矛盾する場合にはその限りではない。(同条第 4項)

対象事業主:すべての事業主

対象障害者:困難度の高い障害者(障害度50以上)、同等認定を受けた者

確認方法・違反時の対応:「10. 雇用の場における差別禁止」と同一
12.雇用の質向上の施策
人事包摂ガイド ⇒REHADAT(注)で展開。中小企業の経営者や人事担当者向けの障害者雇用のガイド。 障害者雇用の質を評価し比較する具体的な仕組みは、現時点でなし。 注:ドイツ経済研究所(Institut der deutschen Wirtschaft)が連邦社会労働省(BMAS)からの助成を受けて展開する情報提供サービス。中央の独立系情報 提供サービスとして、障害者の職業生活における社会参加やインクルージョンに関する情報提供を行っている。
○ドイツの制度概要│障害福祉分野における対象障害者
13.(参考)障害福祉分野における対象障害者※1→

法律上の定義は、「1.雇用施策対象の障害者定義」と同様。

対象者の認定は、雇用率制度の対象者の認定にも使用される障害度の他、個々の給付に紐づいた支援の必要性の評価、介護保険における介護度認定がある。

GdB及び支援の必要性の評価は、ほぼ全ての給付の認定において用いられる。

障害度(Grad der Behinderung:GdB)※2

各市町村レベルの援護局の鑑定医が「医学的鑑定業務のための指令(VersMedV)」によって障害認定を行う。その範囲 には、我が国の障害の範囲のすべてを含み、それを超えて、ICFの心身機能・身体構造の分類を踏まえ、我が国では障害 認定基準に含まれない、痛み、内分泌・代謝・造血系・免疫系等の内部障害や全身機能の障害や、皮膚や外観等の障害も含む、網羅的なものとなっている。

機能障害だけでなく疾病を特定した認定基準があることも特徴。障害度GdBは0から100までの10刻みのスケールにより、 健常者と障害者は連続的に捉えられ、20以上が「障害」と捉えられる。
≪フランスの制度概要≫
○フランスの制度概要│雇用施策対象の障害者定義、雇用率制度
1.雇用施策対象の障害者定義→

労働法典L.5213-1条 「身体、感覚器官、知能、精神の機能の一つ又は複数の変化により、雇用を得る又は維持する可能性が実質的に縮小されている全ての人」※ ※ 障害の定義は、社会福祉・家族法典や2005年法にも規定があるが、雇用・労働分野では、施策対象の障害者の範囲を画するものとして、別途規定。 (参考)2007年の改正で網羅的な定義となり、我が国の障害の範囲に加え、内分泌・代謝・造血系・免疫系等の内部障害、全身機能の障害や、皮膚や外観等を審美障害として含む。
2.雇用率制度→

法定雇用率6%、実雇用率3.6%、達成企業割合31%(2023年) ※5年ごとに、評議会と協議の上、労働人口における雇用義務の対象者の割合及び労働市場の状況に基づき決定(労働法典L5212-2条)。

対象事業主 ⇒公務部門を含む従業員20人以上の事業主(ただし、従業員数20人未満の事業主も、障害者雇用に関する報告義務を負う。)

対象障害者 ⇒障害者権利自立委員会(CDAPH)による障害者の認定を受けた者(障害者労働認定(RQTH)を含む)、労災年金 受給者、障害年金受給者、傷痍軍人年金受給者、戦争犠牲者遺族、志願消防士障害手当・年金の受給者、移動インクルージョンカード「障害」付記の保有者、成人障害者手当(AAH)の受給者

達成方法 ⇒直接雇用だけではなく、障害者のためのプログラムを定める労働協約の締結や納付金の納付自体も雇用目標の達成方法として認められる。

達成状況の確認 ⇒事業主が毎年3月1日までに、12月1日時点の雇用状況を障害者職業参入基金管理運営機関(AGEFIPH)に報告し、達成状況を確認。
○フランスの制度概要│納付金等の徴収金、助成金等支給金・税制優遇
3.納付金等の徴収金→

納付金 ↓

従業員数20~199人 :不足人数×最低賃金時給×400倍(年額)

従業員数200~749人 :不足人数×最低賃金時給×500倍(年額)

従業員数750人以上 :不足人数×最低賃金時給×600倍(年額)

3年以上納付金の支払のみの企業:不足人数×最低賃金時給×1,500倍(年額)

保護就労部門(ESATや適合企業)等への外注、障害者支援経費、特別な適性を要する雇用人員数による納付金 の減額あり
4.助成金等支給金・税制優遇→一覧表あり。参照。
○フランスの制度概要│支援機関、一般就労における職場適応援助者等の 仕組み、福祉的就労等の選択
5.支援機関→

Cap Emploi:職業紹介、就職前後の支援

県障害者センター: 就労・生活の課題に関する総合的アセスメント、支援計画作成、必要な支援の提供

障害者職業参入基金管理運営機関(AGEFIPH):事業主への支援

職業訓練機関:障害に対応した短期・長期の職業訓練の実施
6.一般就労における職場適応援助者(ジョブコーチ)等の仕組み→

2016年8月8日付「労働・社会対話の現代化・キャリア保護に関する法律第52条により、「援助付き雇用」が 労働法典体系として整備され、ジョブコーチが普及。

対象者は、障害種別に寄らないが、主に精神障害がある者が優先される地域が多い

各地域保健庁(国庫)、AGEFIPH、公共部門障害者職業参入基金(FIPHFP)が資金源
7.福祉的就労等の選択肢→

ESAT(就労支援・サービス機関:Les établissements ou
services d‘aide par le travail) ⇒福祉的就労として、保護的労働を提供する施設。職業活動だけでなく、医療社会福祉的支援も提供。

適合企業(Entreprise adaptée) ⇒社会的雇用として、納付金を原資として運営される障害者雇用を目的とした一般就業。障害者雇用割合は55%以上(ただし、助成金の対象は75%まで)が求められる。 ※ 近年まで福祉的就労への発注も雇用率に算定される制度があったが、2019年に廃止。現在も納付金等で一定程度評価され る間接雇用の制度があり(「3.納付金等の徴収金」参照)。
○フランスの制度概要│重点的な雇用支援を必要とする者への対応
8.重点的な雇用支援を必要とする者への対応↓
重度障害認定(Reconnaissance de la lourdeur du handicap:RLH) ※→

概要 ⇒障害者を雇用する使用者の負担を評価し、使用者が負う金銭的な負担を補償するために実施

認定基準 ⇒障害者個人の特性ではなく、使用者の負担を評価。認定にあたっては、生産性の低下、特別な仕事編成、社会的職 業的支援、第3者又はチューターによる支援等が考慮される。

認定実務 ⇒事業主から障害者職業参入基金管理運営機関(AGEFIPH)に対し申請。有効期間は最大3年。 対象者が50歳以上の場合は、退職まで自動更新。

認定により受けられるサービス ⇒使用者が合理的配慮を提供した後に、なお障害による財政的な影響が大きく残る場合、支援金を支給。 雇用率上の複数カウント制度や納付金の額の計算への考慮は既に廃止済み。

50歳以上の障害労働者の複数カウント ⇒高齢の労働者に長期失業が多いことを踏まえ、50歳以上の障害労働者に関して雇用率制度上1.5カウントされる。
○フランスの制度概要│雇用率制度等の主な対象より軽度の障害者への対応
9.雇用率制度等の主な対象より軽度の障害者への対応※1→

多分野専門家チーム(EP)による第2段階審査を経た障害労働者認定 ⇒

概要 ⇒能力低下率※2が80%未満でも、審査を経て、認定を受けることで、各種支援の対象となることを可能とする仕組み(能力低下率が80%以上の場合には医師等の判断に基づき、原則第1段階の審査で認定。)

認定基準 ⇒@障害の範疇に入る機能不全があり、A就業中又は求職中で、B求職又は就業の維持において機能不全の影響がある者が対象

認定実務 ⇒障害者本人等からの申請を基に、県障害者センター(MDPH)の職業参入専門員を含む多分野専門家チームによ る審査により認定

認定により受けられるサービス→ • 雇用率へのカウント • 県障害者センター(MDPH)の雇用に関する各種サービスや職業オリエンテーション、雇用センター・その他支援機関 の各種サービスの利用

課題 ⇒MDPHでのRQTH認定において、多分野専門家チームの構成や役割、認定判断には地域差がある。 また、申請が受理された後に評価が行われ、その結果を基にした会合は月に1回程度の開催、その後オリエンテーションを 実施した上で、障害者権利自立委員会にて2週間に1回程度の小会又は月に1回程度の全会で裁決される。
○フランスの制度概要│雇用の場における差別禁止
10.雇用の場における差別禁止
差別禁止の定義→

労働法典L.1132-1条 ⇒障害を理由とする募集手続きや企業での研修・職業訓練からの排除、懲戒、解雇、及び、報酬・利益配分又は株式 付与・職業訓練・再配置・配属・職業資格・職階・昇進・異動・契約更新における直接的・間接的差別的取扱いを禁止

刑法典(Code pénal)225-1条、225-2条 ⇒障害を理由とする採用拒否や懲戒、解雇、及び、障害に依拠する条件を雇用の提供や研修・職業訓練の申込みに付 すことを禁止

対象事業主:民間・公務部門のすべての使用者

対象障害者:差別禁止原則の対象となる障害・障害者の定義は特に置かれていない。

確認方法・違反時の対応→ @行政上の救済 ⇒権利擁護機関が対応。直接・間接差別の被害者は誰でも、DDDに申し立てるこ とができる。また、設立後5年以上の差別問題に携わる非営利組織も、被害者と共同でDDDに申し立てることができる。 A司法上の救済 ・民事訴訟:労働法典が定める差別については、労働審判所に提訴可能。 ・刑事訴訟:検事等に告訴した後、軽罪裁判所、控訴院軽罪部、破棄院刑事部にて審議。 B職場での救済 ⇒従業員代表は、差別が確認された場合、使用者のその事実を訴えることができる。この場合使用者(またはその代表)は、 直ちに従業員代表とともに調査を行い、改善のために必要な措置を講じることが求められる。
○フランスの制度概要│雇用の場における合理的配慮、 雇用の質向上の施策
11.雇用の場における合理的配慮↓
合理的配慮の定義→

労働法典L.5213-6条 ⇒使用者が「適切な措置」の提供を拒否することは、差別に該当する。使用者には、不均衡な負担が生じる場合を除いて、障害者に対し、具体的な状況に応じて資格に対応した雇用又は職業訓練が提供できるように「適切な措置」を講ずることが求められる。不均衡な負担か否かの判断においては、使用者が負担する費用の全部または一部を補填する様々な助成が考慮される。

対象事業主・障害者:「9.雇用の場における差別禁止」と同一

確認方法・違反時の対応:「9.雇用の場における差別禁止」と同一
12.雇用の質向上の施策→

障害者雇用尺度(Baromètre emploi et handicap) ⇒包摂性の評価ツール。政府サイトで公開され、自社の包摂性のアピールが可能。雇用率、職員の意識向上とポリシーの推進、 インクルーシブな採用、障害がある従業員の雇用維持、インクルーシブな調達、デジタルアクセシビリティ等が基準となっている。
○フランスの制度概要│障害福祉分野における対象障害者
13.(参考)障害福祉分野における対象障害者※
障害の包括的な定義は、「障害者の平等の権利、機会、参加、市民権のための2005年2月11日法(LOI n°2005-102 du 11 février 2005 pour l‘égalité des droits et des chances, la participation et la citoyenneté des personnes handicapées)」

自身の環境において、相当の、永続的な、または明らかな身体・感覚・精神・認知・心理の機能の変化、重度の障害、あ るいは健康を損なう問題が原因となって経験する、活動や社会参加に関する全ての制限

対象者の認定は、雇用率制度の対象者の認定にも使用される包括的な認定の他、個々の給付に紐づいた認定がある。

個々の給付に紐づく認定は、経済的損失の評価、医学的診断、支援の必要性の評価の概ね3類型→

経済的損失の評価(障害による所得の喪失等) ⇒各地域の健康保険機関による障害年金の給付等

医学的診断(医師の診断による数値化) ⇒ 環境移行省による移動インクルージョンカード(Carte mobilité inclusion:CMI)の発給

支援の必要性の評価 ⇒県によって提供される、教育を受ける際の支援(ヘルパー等)
≪アメリカの制度概要≫↓
○アメリカの制度概要│雇用施策対象の障害者定義、雇用率制度
1.雇用施策対象の障害者定義→

障害のあるアメリカ人法(The Americans with Disabilities Act:ADA)第3条⇒

主要な生活活動の一つまたは複数を実質的に制約する身体的又は精神的機能障害※1を有する者

そのような機能障害の記録を有する者

そのような機能障害を有すると見なされる者 ※1 身体的又は精神的機能障害とは、神経系、筋骨系、特殊感覚器官(味嗅視聴触)、呼吸器系(言語器官を含む)、心臓血管系、生殖系、消化系、泌尿 系、免疫系、循環系、血液系、リンパ系、皮膚系、及び内分泌系の一つ又はそれ以上の身体的システムに影響のあるあらゆる身体的障害又は状態、顔面変形症、 解剖学的損失、知的障害、器質脳症候群、情緒又は精神疾患、及び学習障害などのあらゆる精神的又は心理的不調
2.雇用率制度→

雇用目標として、@連邦政府12%、A連邦政府の請負業者及び下請け業者7%を設定。

対象者は、@連邦政府12%の雇用目標 ⇒障害種別にて特定※2。うち2%分は重度障害者※3の雇用が求められる。 A連邦政府の請負業者及び下請け業者7%の雇用目標 ⇒生活の中で広範な活動を大幅に妨げられる身体的・精神的障害や症状がある場合、又は該当する障害や病状の病 歴がある場合。
○アメリカの制度概要│雇用率制度、助成金等支給金・税制優遇、 支援機関、一般就労における職場適応援助者等の仕組み 2.雇用率制度(つづき)→

障害者から事業主への自己申告によって、事業主が対象者を確認

事業主が、アメリカ雇用機会均等委員会(Equal Employment Opportunity Commission :EEOC)に申告することで達 成状況を確認

納付金等の徴収金の仕組みはない
3.助成金等支給金・税制優遇→

バリアフリーの推進や支援機器への税制優遇あり

各州によっては、障害者や企業を支援する独自の事業あり
4.支援機関→

アメリカンジョブセンター(American Job Centers) ⇒職業相談・紹介、職場定着指導を実施。州ごとに設置

州職業リハビリテーション局(State Vocational Rehabilitation Agencies) ⇒職業訓練、各種専門支援

IPSエンプロイメントセンター(IPS Employment Center) ⇒精神科医療機関内に就労支援チームを作成し、総合的な支援を実施。トレーニングおよび教育資料の準備、トレーニングおよびコンサルティングサービスを担う。
5.一般就労における職場適応援助者(ジョブコーチ)等の仕組み→

1986年の改正リハビリテーション法(Rehabilitation Act)により、一般雇用(Competitive Employment)が法制化され、そ の具体的方法として、援助付き雇用(Supported Employment)を規定。援助の方法としてジョブコーチが普及。
○アメリカの制度概要│福祉的就労等の選択肢
6.福祉的就労等の選択肢→

企業での直接雇用が重視されている。

一般就業とされる障害者雇用の条件を「競争的統合就業(Competitive Integrated Employment :CIE)」として定義。 重度の障害者も援助付き就業やカスタマイズ就業※により、CIE の条件を満たすための支援を受けることができる。ただし、依然と してCIEの条件が満たされない保護作業所などの環境で働く場合もある。⇒「競争的統合就業(CIE)」→• 最低賃金以上であり、障害のない従業員が同様の職務を行い、同様の訓練と経験を積んだ場合に事業主が支払う一般的な 賃金と同等の報酬が支払われること • 同様の職務にある障害のない他の従業員と同レベルの手当を受けること • 障害のある従業員が障害のない他の従業員と交流する場所であること • 同様の職位にある障害のない他の従業員と同様の昇進の機会が与えられていること。

地域リハビリテーションプログラム(Community Rehabilitation Program :CRP) ⇒最低賃金が除外される雇用であり、支援・監督の下、他の障害者とともに働く非営利の施設や地域密着型支援を提供する (CRPの他厚生労働基準法第14条(c)の認証を保有する雇用主は最低賃金が除外される雇用を行うことが可能)。 障害者団体等の指示により最低賃金除外の規定を廃止し、「競争的統合就業」に向けた支援に一本化する州も増加している。

保護作業所(Sheltered Workshop) ⇒民間の非営利団体が運営する作業所。
○アメリカの制度概要│重点的な雇用支援を必要とする者への対応
7.重点的な雇用支援を必要とする者への対応→

連邦政府での2%の雇用目標⇒

対象者⇒発達障害や外傷性脳損傷、聴覚や視覚障害、肢体不自由、てんかん、知的障害、重篤な精神障害、小人症、著しい 醜態などの「対象障害」がある者が対象。

専門支援(個別就労支援(IPS)、援助付き就業、カスタマイズ就業)⇒

対象者⇒ 上記の2%雇用目標の対象者に加え、就労困難性に応じて対象者を決定。

支援内容⇒ @個別就労支援(IPS) ⇒精神科医療機関を中心として、重度精神障害者等を対象に個別の就労支援施策を実施 A援助付き就業 ⇒知的障害者、精神障害者の個別ニーズに応じ、個別就労支援(IPS)の中で必要と認められた者に対し、援助付 きの就業を実施。 Bカスタマイズ就業 ⇒労働省障害者雇用政策局が実施する施策。障害のある求職者と雇用主のニーズの両方を充たす雇用創出のために、障害がある求職者を中心として、さらに支援環境、事業主の間で最適な就労状況を特定し、障害者本人の興味、 好み、能力、及び事業主のニーズを反映した職務を開発した上で、当該職務内容を基準に職探しを行う。
○アメリカの制度概要│雇用の場における差別禁止
8.雇用の場における差別禁止
差別禁止の定義(ADA法)⇒

[1]「障害」、すなわち→・ 一つあるいはそれ以上の主要な生活活動(one or more major life activities)を、 ・ 実質的に制限する(substantially limits)、 ・ 身体的あるいは精神的損傷(a physical or mental impairment) をもつ人であって、かつ

[2]「適格性」を有する人、すなわち→ ・ 職務の本質的機能(essential functions of the job)の遂行を、 ・ 合理的配慮が提供されたならば、あるいはなくとも (ただし、配慮することが使用者にとって過度の負担(undue hardship)となる場合を除く)できる人に対し、

[3]障害を理由に「差別」してはならない。

対象事業主:使用者※、雇用斡旋機関、労働団体、労使合同委員会。

対象障害者:「障害(disability)」をもち、かつ当該職務に対して「適格性」を有する人

確認方法・違反時の対応 ⇒アメリカ雇用機会均等委員会(EEOC)に苦情が提出された場合、
EEOC が調査を行い、調停を通じて問題の解決を試みる 場合がある。調停が失敗した場合、EEOC は訴訟を起こすか、または個人が連邦裁判所に訴訟を起こすことを許可する「訴訟 権」通知書を発行することがある。
○アメリカの制度概要│雇用の場における合理的配慮、 雇用の質向上の施策
9.雇用の場における合理的配慮→

合理的配慮の定義 ⇒具体的な定義はなし。ADA法において、合理的配慮に含まれるものとして、「(A)従業員が使用する既存の施設を障害者が 容易に利用もしくは使用できるようにすること。」「(B)職務の再編成、労働時間の短縮、勤務割の変更、空席の職位への配置転換、機器や装置の購入・改良、試験・訓練材料・方針の適切な調整・変更、資格をもつ朗読者もしくは通訳の提供、及び障害者への他の類似の配慮。」を挙げている。

対象事業主→・障害者:「8.雇用の場における差別禁止」と同一

確認方法→・違反時の対応:「8.雇用の場における差別禁止」と同一
10.雇用の質向上の施策
障害平等指数(Disability Equality Index :DEI)
障害者の包摂と平等を達成するための具体的な行動のロードマップと評価ツール。 0~100点で評価可能。

非営利団体Disability:INとアメリカ障害者協会 (AAPD) が共同で開発。

2024年の登録企業はアメリカで約540。イギリス、インド、カナダ、ブラジル等の企業も登録あり。 2023年には、Fortune 100企業71社、Fortune 500企業207社、Fortune 1000企業249社を含む485社 が、障害者インクルージョンの取り組みを評価するためのベンチマーキング指標としてDEIを採用。
○アメリカの制度概要│障害福祉分野における対象障害者
11.(参考)障害福祉分野における対象障害者※
法律上の定義は、「1.雇用施策対象の障害者定義」と同様。
対象者の認定は、個々の給付に紐づいて行われ、その方法は給付によって異なるが、概ね以下。→ • 医学的診断 ⇒社会保険庁(Social Security Agency :SSA)による社会保障障害保険(Social Security Disability Insurance :SSDI)の給付の認定、補足的所得保障(Supplemental Security Income :SSI)の給付の認定 等。 •支援の必要性の評価 ⇒社会保険等によるSSI の給付の認定(所得及び資産要件の審査)、家族介護者向けの支援プログラムの認定等。
次回も続き
「≪イギリスの制度概要≫」からです。