• もっと見る
« 2024年12月 | Main | 2025年02月»
<< 2025年01月 >>
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  
最新記事
カテゴリアーカイブ
月別アーカイブ
日別アーカイブ
第24回社会保障審議会年金部会 [2025年01月23日(Thu)]
第24回社会保障審議会年金部会(令和6年12月24日)
議事 社会保障審議会年金部会における議論の整理(案)について
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/nenkin_20241224.html
◎資料1 社会保障審議会年金部会における議論の整理(案)
T はじめに
1 これまでの年金制度改革の経緯↓

○ 我が国の公的年金制度の基本的な構造は、1985(昭和 60)年の年金制度改 正(昭和 60 年年金改正法)によって、それまで国民年金と厚生年金で別建て になっていた体系から、給付について新たに全国民を共通とした1階の基礎 年金(国民年金)と2階の報酬比例部分(厚生年金)に再構成されたことを基礎とする。 その際、それまで夫名義の年金で夫婦2人が生活できるようになっていた給付設計を見直して、サラリーマン世帯の専業主婦を国民年金の強制適用対象と し、第3号被保険者として自分名義の年金権を確立した。これにより公的年金 は、一人当たりの賃金水準が同じであれば、片働き、共働きなど世帯類型に関 わりなく負担、給付とも同じになる構造となった。この認識に基づき、2004(平 成 16)年の年金制度改正(平成 16 年年金改正法)では、第2号被保険者の負 担した保険料は夫婦で共同負担したものとする規定が設けられた。 なお、給付に必要な保険料財源については、第1号被保険者、第2号被保険 者、第3号被保険者に大別された国民年金被保険者の種別に応じて、第1号被保険者は定額の保険料、第2号被保険者は労使折半による報酬に対する定率の保険料、第3号被保険者は厚生年金制度全体の負担により賄う仕組みにするとともに、基礎年金給付のための基礎年金拠出金の仕組みが整備された。また、 配偶者や子どもに着目した加算や加給年金についても再設計が行われた。 こうした昭和 60 年年金改正法で導入された仕組みを基に、現在(2022(令和4)年度)の公的年金制度では、約 6744 万人の被保険者が年間約 41 兆円の 保険料を負担し、国庫負担約 13 兆円と合わせて、約 3975 万人に対して年間約 53 兆円の給付が行われることで、老後の所得保障の柱として重要な役割を担っている。
○ 2025(令和7)年は昭和 60 年年金改正法から 40 年に当たる年であり、2026(令和8)年には新制度発足下で当時 20 歳だった被保険者が 60 歳となり、 40 年という基礎年金拠出期間を終えることになる。 この間、年金制度を取り巻く社会経済の状況は大きく変化し、年金制度にも 様々な影響を与えてきた。少子高齢化の進行は、公的年金の給付と負担に影響 を与えるとともに、平成に入ってから我が国が経験したデフレ経済は、年金制 度の財政状況にも影響を及ぼした。 人口構造の変化や日本経済の低迷は、将来の公的年金制度の在り方の議論に つながり、昭和 60 年以降も約5年に1度のタイミングで行われてきた年金制 度改正では、将来的な制度の持続可能性の確保が大きな課題となった。
○ この点で大きな転機となったのは、平成 16 年年金改正法により導入された 財政フレームである。平成 16 年年金改正法前は、5年ごとの財政再計算の際 に、給付と負担を見直していたが、少子高齢化の影響によって、財政再計算毎 に保険料負担が増加する見通しが示され、現役世代にとっては、将来が見通し にくく、年金制度に対する不安につながっているという意見が強まった。 平成 16 年年金改正法では、それまでの給付と負担の見直し方法を改め、将 来の財源を固定し、その範囲内で給付水準を自動的に調整する方式を導入した。 具体的には、@保険料水準の引上げスケジュールを明記した上で将来の保険 料水準の上限を固定し、A基礎年金の国庫負担を2分の1へ引き上げることと した。さらに、B財政の均衡を図る期間を概ね 100 年とした上で、積立金を活 用することとした。この@からBにより、財源の枠組みを固定した上で、C少 子高齢化の中でも財政均衡期間で年金財政が均衡する水準まで、年金の給付水 準を自動的に調整する仕組み(マクロ経済スライド)を導入した。これにより、 長期的な年金財政の枠組みが構築され、年金制度の将来への不安の解消を図っ た。ただし、マクロ経済スライドについて、年金の名目額を維持するところま でしか給付調整を行わない措置(名目下限措置)がとられたために、その後の 発動に当たってデフレ経済の影響を受けていくこととなった。
○ 2004(平成 16)年に導入された財政フレームは、現在も年金制度の基本的 なスキームであり、将来の年金制度の持続可能性を考える上での根幹となっている。 平成 16 年年金改正法で上限が固定された保険料水準は、予定通り 2017(平成 29)年に上限に到達し、それ以降は実質的な引上げは行われておらず、現役世代の負担への配慮が継続されている。 また給付面では、社会保障と税の一体改革の中で、消費税率引上げによる増 収分を活用して国庫負担割合の2分の1への引上げが完成した他、制度の持続可能性を高め、将来世代の給付水準を確保するため、2016(平成 28)年の年金 制度改正(平成 28 年年金改正法)では、マクロ経済スライドについて名目下限措置を維持しつつ、賃金・物価上昇の範囲内で前年度までの未調整分を調整するルール(キャリーオーバー制)と、賃金・物価スライドについて賃金変動が物価変動を下回る場合には賃金変動に合わせた改定をする考え方(賃金スラ イド徹底)を導入した。 マクロ経済スライドは、名目下限措置により長引くデフレ経済下で調整が 発動しない年が続き、2015(平成 27)年度に初めて発動したが、給付水準の調整は遅れ、将来的な年金給付水準が低下した。平成 28 年年金改正法で導入 されたキャリーオーバー制によって、発動できなかった分は本来発動すべき年から数年内に解消し、将来の給付水準の確保に一定の貢献をしている。
○ 社会経済状況に目を転じれば、働き方の多様化によって、パートタイムやア ルバイトといった非正社員の働き方が広まり、従来、フルタイム相当以外の適 用を除外していた厚生年金が適用されないような働き方をする者が増加した。 これらの者は、従来の自営業者を想定した国民年金の第1号被保険者とは異なるものの、フルタイムの正社員を想定した第2号被保険者(厚生年金被保険 者)には当てはまらないような働き方であり、被用者保険(厚生年金保険・健 康保険)における適用範囲について再度の検討が求められた。これを受けて、 2012(平成 24)年の健康保険法・厚生年金保険法の改正では要件を満たす短 時間労働者への適用が実現し(2016(平成 28)年 10 月施行)、2020(令和2) 年の改正まで段階的に拡大してきた。 働き方の多様化は、第3号被保険者制度にも影響し、女性の就業率の高まり や共働き世帯の増加によって、いわゆる専業主婦を想定していた第3号被保 険者のうち約4割が就労するようになり、それに伴う被扶養認定基準や被用 者保険の適用要件を意識した働き方から、いわゆる「年収の壁」の問題が意識 されることとなった。
○ また、平均寿命や健康寿命の延伸や高い就労意欲から、高齢者の就業が進み、 高齢者は社会経済の支え手としての重要性を増していった。より多くの人が 以前よりも長く多様な形で働く社会となることを展望した上で、高齢期の経 済基盤の充実のために、2020(令和2)年の年金制度改正(令和2年年金改正法)では、60 代前半の在職老齢年金制度の見直しや繰下げ受給制度の 75 歳ま での拡充など、高齢者の働き方に関わる制度の見直しに取り組んだ。 その後も、多くの産業に人手不足が生じ、就業者も高齢化していく中、高齢 者就業がサービスや製品の供給の前提となる業界も存在するほど、高齢者は重要な役割を果たしている。

2 令和2年年金改正法成立後の検討→○ 令和2年年金改正法の前提となった 2019(令和元)年の財政検証では、2014 (平成 26)年財政検証を踏襲して、引き続きオプション試算(被用者保険の更なる適用拡大、保険料拠出期間の延長と受給開始時期の選択肢の拡大等)を実施し、本部会では、その結果を参照しながら制度改革の議論を行った。 その結果、2020(令和2)年5月には、被用者保険の適用拡大の促進(@短時間労働者の適用に関する企業規模要件の 500 人超から 50 人超までの段階的引下げ、A常時5人以上の従業員を使用する個人事業所に係る適用業種への士業の追加等)、60 歳から 64 歳に支給される特別支給の老齢厚生年金を対象とした在職老齢年金制度の支給停止基準額の引上げ等を行う令和2年年金改正法が成立した。なお、令和2年年金改正法は、与野党共同提出の修正案は全会 一致で賛成、修正部分除く政府案も概ね賛成の上、成立している。 ○ 令和2年年金改正法の成立後、2022(令和4)年 10 月から再開した本部会では、上記のようなこれまでの改革の経緯に加え、年金制度を取り巻く社会経 済状況の変化や令和元年の本部会の議論の整理、令和2年年金改正法の検討 規定や附帯決議、委員から寄せられた課題等を踏まえ、幅広い事項を取り上げて議論を開始した。 ○ 各テーマのうち、被用者保険の適用範囲については、令和2年年金改正法の規定により、法成立以後に初めて作成される財政検証等を踏まえ、検討を加え、 その結果に基づき必要な措置を講ずることとされている。また、全世代型社会 保障構築会議においても、国民の価値観やライフスタイル、働き方の多様化が進む中で、格差の固定化や貧困の防止を図り、社会の分断を防ぐ観点からも、 働き方、雇い方に中立的な社会保障制度の構築が求められてきた。 以上を踏まえ、2024(令和6)年2月より、「働き方の多様化を踏まえた被 用者保険の適用の在り方に関する懇談会」(保険局長及び年金局長が開催)において、適用拡大に伴う関連データや動向の検証、関係者からのヒアリング等による実態把握、更なる適用拡大に伴う諸課題の分析・整理が行われ、2024(令和6)年7月3日に議論の取りまとめが行われ、本部会にも報告された。 ○ また、被用者保険の加入には、報酬比例部分の年金が基礎年金に上乗せされるなど給付面のメリットがある一方で、国民年金第3号被保険者が被用者保険に加入する際に、新たに保険料が発生することによる手取りの減少を避けるため、就業調整が行われ、希望どおりに働くことが阻害されているとの指摘があり、いわゆる「106 万円の壁」として対応が求められた。また、第3号被 保険者が、被用者保険に加入せず年収が 130 万円を超えて、第1号被保険者 になる場合には、新たに保険料が発生しながら給付は変わらないことを踏ま えた就業調整については、いわゆる「130 万円の壁」として対応が求められた。 ○ こうした背景の下、2023(令和5)年 10 月からは「年収の壁・支援強化パ ッケージ」が開始された。 いわゆる「106 万円の壁」については、キャリアアップ助成金により、短時 間労働者が被用者保険の適用による手取り収入の減少を意識せず働くことが できるよう、賃上げや所定労働時間の延長のほか、被用者保険適用に伴う保険 料負担軽減のための手当(社会保険適用促進手当)により労働者の収入を増加 させる取組を行った事業主に対する支援を行うとともに、事業主が支給した 社会保険適用促進手当については、適用に当たっての労使双方の保険料負担 を軽減するため、新たに発生した本人負担分の保険料相当額を上限として被 保険者の標準報酬月額等の算定において考慮しないこととした。 また、いわゆる「130 万円の壁」については、事業主の証明による被扶養者 認定の円滑化として、被扶養者の生計維持等の認定基準である年収 130 万円 未満であることを医療保険者等が判断する際に、労働時間延長等に伴う一時 的な収入変動である旨の事業主の証明を添付することで迅速な判断を可能と した。 これらの措置は、当面の対応策で時限を定めた上で講じられたものが多く、 終了後も見据え、制度的な対応の検討が併せて求められた。 ○ こうした背景も踏まえて、「経済財政運営と改革の基本方針 2024」(令和6 年6月 21 日閣議決定)等の各種閣議決定・政府決定でも、働き方に中立的な 年金制度の構築等を目指すこととされ、短時間労働者への被用者保険の適用 拡大、いわゆる「年収の壁」を意識せず働くことができるような制度の見直し が、課題として盛り込まれている。 ○ 加えて、令和2年年金改正法の法案審議過程では、附帯決議の中で基礎年金水準の低下への対応の検討が求められた。1つは、基礎年金の拠出期間の 45 年への延長の検討である。加えて、財政検証において、基礎年金が厚生年金に 比べ、マクロ経済スライドによる調整期間が長期化する見通しで、所得代替率 のうち基礎年金相当部分の水準低下が大きくなることが予想されていることを踏まえた対応の検討も求められた。 ○ 本部会では、こうした政府等における課題の設定や社会経済状況の変化を 踏まえつつ、被用者保険の適用拡大、高齢期と年金制度の関わり等、年金制度において改革を進めるべき事項について、2022(令和4)年 10 月から 2024(令 和6)年 12 月までの○回にわたり、精力的に議論を行った。この中で、公的年金と私的年金の連携については、本部会と企業年金・個人年金部会の合同開 催を初めて行った。また、部会の内容への国民のアクセス向上、制度や見直し 案の理解促進の観点から、議事録の早期の公開や公開までのアーカイブ配信 の試行を行うこととした。

3 2024(令和6)年財政検証→○ 2024(令和6)年は、5年に1度の財政検証を行う年であり、同年7月3日 に財政検証結果が公表され、本部会に報告された。2019(令和元)年の本部会 の議論のとりまとめにおいて、内容の充実も含めて、次のように、オプション 試算を重視した改革論議を進めていくべきとされた。 「社会経済状況に応じて5年に1度財政検証を行う公的年金制度には、制度改革、その効果検証、社会保障の動向把握、年金財政の現状把握と将来像の投影というPDCAサイクルが組み込まれている。このサイクルにおいて、オプション試算は社会経済の変化に対応した改革志向の議論を進めていく上で必要不可欠なものである。今後とも、課題に対応した内容の充実も含めて、オプション試算を重視した改革論議を進めていくべきである。」 こうした経緯も踏まえ、2024(令和6)年財政検証は、新しい将来推計人口と幅広い経済前提の設定に基づき試算を行うだけでなく、被用者保険の更なる 適用拡大、基礎年金の拠出期間の延長・給付増額、基礎年金のマクロ経済スライドの早期終了(調整期間の一致)、在職老齢年金制度、標準報酬月額上限等、 制度改革を実施した場合を仮定したオプション試算を実施した。 また、従来から示しているいわゆる「モデル年金」の年金額や所得代替率の将来見通しに加え、世代ごとの 65 歳時点における老齢年金の平均額や分布の 将来見通し(年金額の分布推計)を初めて実施した。 ○ この財政検証の結果からは、以下の点が明らかになった。 @ 1人当たり成長率をゼロと見込んだケースを除き、現行の年金制度の下でも、引き続き、所得代替率 50%の給付水準を今後概ね 100 年間にわたり 確保できることが確認できた。また、近年の女性や高齢者の労働参加の進展や積立金の好調な運用等により、2019(令和元)年財政検証に比べ、将来の 給付水準の向上が確認できた。 A 一方で、平成 28 年年金改正法による年金額の改定ルールの見直し以前の名目下限措置ゆえのマクロ経済スライドの未発動の影響を報酬比例部分に 比べ強く受けた基礎年金の調整期間が長期化し、過去 30 年の経済状況を投 影した保守的なケースでは、30 年以上の調整が必要となる結果、将来の基 礎年金の給付水準が低下する見通しとなった。 B 被用者保険の更なる適用拡大では、適用拡大を 90 万人、200 万人、270 万 人、860 万人の4つのケースで試算を行い、対象者の規模が大きいほど所得代替率や基礎年金の水準確保に効果が大きいことが確認できた。 C 基礎年金の拠出期間の延長・給付増額、基礎年金のマクロ経済スライドの 早期終了(調整期間の一致)は、基礎年金を含めた年金の水準確保に効果が 大きいことが確認できた。 D 65 歳以上の在職老齢年金制度や標準報酬月額上限の見直しについても試 算を行い、在職老齢年金制度については現在の働く年金受給者の厚生年金 給付の水準確保に、標準報酬月額上限の見直しについては上限該当者も含めて将来の厚生年金給付の水準確保に効果があることが確認できた。 E 年金額の分布推計により、若年世代ほど労働参加の進展により厚生年金の被保険者期間が延伸し、将来的な年金額の増加に寄与することが確認された。
4 次期年金制度改革の方向性→ ○ 本部会では、これまで見てきたような令和2年年金改正法以降の議論や、 2024(令和6)年財政検証結果を踏まえ、 ・ 平均寿命・健康寿命の延伸や家族構成・ライフスタイルの多様化、女性・高齢者の就業拡大、今後見込まれる最低賃金の上昇・持続的な賃上げという 社会経済の変化に対応する観点から取り組むべき課題 ・ 年金制度が有する所得保障機能の強化の観点から取り組むべき課題 への対応を大きな2つの柱として、次期年金制度改革に向けた具体的な見直しの方向性について、2024(令和6)年夏から精力的に議論を重ねてきた。 ○ 本部会の議論では、個別の検討課題については、それぞれの委員間で意見の 相違が見られたものの、検討項目全体を貫いて今後の制度改革の基本に置く べき考え方として、概ね以下のような方向性を共有した。@ ライフスタイル等の多様化の反映・働き方に中立的な制度の構築 基礎年金が創設されてからの 40 年間で、国民のライフスタイルは大きく変化している。単身世帯が増加するとともに、夫婦世帯においても、 かつては夫が生計を維持し妻が被扶養者となるいわゆる専業主婦世帯が 多かったが、平成以降は女性の就業参加が拡大する中で、共働き世帯が 専業主婦世帯を上回っており、近年はその差が拡大する傾向にある。 公的年金は、一人当たりの賃金水準が同じであれば世帯類型に関わりなく負担、給付とも同じになる構造となっていることは、先に述べた通 りである。 一方で、年金制度には、遺族年金制度のように従来の性別による固定的な役割分担を念頭に制度上の男女差がある制度や、加給年金など賃金 水準との関係ではなく扶養関係を前提にした制度が存在しており、ライフスタイルの多様化を反映した制度の在り方について議論を深める必要がある。 また、総人口の減少に伴う労働力人口の減少や、産業界から人手不足が指摘される中で、年齢や性別に関わりなく、誰もが意欲と能力に応じて就労できる機会の拡大が求められており、近年、女性や高齢者の就業 拡大している。 現行の被用者保険制度では、労働者の勤め先や働き方、企業の雇い方 の選択により適用が異なるほか、被用者保険が適用される際の保険料負 担の発生による手取りの減少を避けるため、就業調整が行われていると の指摘がある。また、高齢期に就労する際も賃金等の多寡によって老齢 厚生年金の一部又は全部が停止される制度(在職老齢年金制度)も課題として指摘されている。 次期制度改正に向けては、ライフスタイルの多様化を反映し、どのような働き方、雇い方を選択しても中立的な制度であって、就労インセンティブを阻害せず、より長く働いたことが年金給付に的確に反映される制度が求められる。 A 高齢期の経済基盤の安定や所得保障・再分配機能の強化 高齢期の所得保障の柱となるのは公的年金であり、そのうちの基礎年金 は、所得の多寡にかかわらず、全国民に共通して給付され、定額給付であることを通じて、2階の報酬比例部分の存在の下、所得再分配機能も有している。しかしながら、2024(令和6)年財政検証の結果では、5年前の検証と比べて将来の全体的な給付水準は上昇するものの、特に経済が成長型経済移行・継続ケースより低位で推移する過去 30 年投影ケースでは基礎年金のマクロ経済スライドの調整期間が長期化し、将来的な基礎年金の給 付水準がより低下する見通しであることが示されている。↓
ケース         基礎年金調整終了年     基礎年金所得代替率
2019 年検証ケースW・X   2053〜2058 年度       21.9〜23.4%
2024 年検証過去30 年投影 2057 年度 23.5%
2019 年検証ケースT〜V 2046〜2047 年度 26.2〜26.7%
2024 年検証成長移行・継続 2037 年度 32.6%

これに対して、同時に行われたオプション試算では、 ・ 被用者保険の更なる適用拡大 ・ 基礎年金の拠出期間延長・給付増額 ・ 基礎年金のマクロ経済スライドの早期終了(調整期間の一致) を行った場合には、いずれも基礎年金の給付水準を確保する上でプラスの効果があることが確認された。また、標準報酬月額の上限の見直しについては将来の厚生年金の水準にプラスの効果が確認された。 基礎年金と厚生年金を合わせた公的年金は、平均で、高齢者世帯の家計の収入の約6割を担っており、今回の改正においても、高齢期の経済基盤の安 定や所得保障・再分配機能の強化の観点から制度の在り方について検討する必要がある。
○ 以下、これまでの本部会における議論に沿って、次期年金制度改革の具体的 内容等について整理する。

次回も続き「U 次期年金制度改革等」からです。

| 次へ