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労働基準関係法制研究会 第16回資料 [2025年01月22日(Wed)]
労働基準関係法制研究会 第16回資料(令和6年12月24日)
議題 労働基準関係法制について
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_47873.html
◎資料1 労働基準関係法制研究会報告書(案)
T はじめに
1 労働基準関係法制の意義
→本研究会においては、労働基準関係法制として、個別的労働契約関係について最低基準を設定し、その実効性を担保することを目的・意義とする 労働基準法(昭和 22 年法律第 49 号)を中心とした、個別的労働関係に関する法律群を念頭に議論を行う。 具体的には、労働基準法、最低賃金法(昭和 34 年法律第 137 号)、労働 安全衛生法(昭和 47 年法律第 57 号)のように、刑事罰、行政監督・指導 等の公法的手段によってその実効性を担保する法律(労働保護規範を公法 上の履行確保措置によって担保する労働基準関係法制を以下「労働保護法」 と呼ぶことがある。)や、個別の労使の自主的な交渉の下で行われる労働契約の基本的事項を定め、個別の労働関係の安定を図る労働契約法(平成 19 年法律第 128 号)、使用者による労働時間等の設定の改善に向けた自主的な努力を促進する労働時間等の設定の改善に関する特別措置法(平成4 年法律第 90 号。以下「労働時間等設定改善法」)など、様々な法律が制定されている。
また、法律ではないが、ガイドライン等の形で労使に自主的な改善を促すようなものも広義の法制の範囲に含まれ得る。加えて、これらの法律に関連する個別的労働関係に関する法律として、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成 3年法律第 76 号)など、それぞれの目的の中で労働者の保護等に関する条項を含むものもあり、このような法律との関係も踏まえつつ検討すること が必要。
また、労働政策の実現手法としても、労働基準監督機関による監督・指導等の公的権限の行使によるほか、ガイドラインの普及等を通じて自発的な法目的の実現の促進を図る手法、労使当事者や労働市場によるモニタリングを通じた実現、行動計画等の事業主による規範の自己設定を通じた実現など様々なものがあり、労働基準関係法制に係る政策についても、労働基準法における実効性のある規制の充実に加えて、様々な手法も考慮しな がら検討することが必要。
2 労働基準関係法制を巡る現下の情勢→・・(略)・・・。こうした社会や経済の構造変化も踏まえつつ、単なる規制の見直しを超えて、労働保護規範の設定の在り方や実効性の確保の在り方、労働者がそれぞれの事情に応じた多様な働き方も選択できる社会を実現するために労働政策が果たすべき役割等も踏まえて、労働基準関係法制が果たすべき役割を再検討し、労働基準関係法制の将来像について抜本的な検討を行う時期に来ていると考えられる。
3 労働基準関係法制の構造的課題 ↓
労働基準関係法制は、労働者に共通に妥当する最低労働基準を一律に設定するという形を基本に制定され、その後の社会や経済の構造変化に応じた見直しが進められてきたが、前述のとおり社会や経済の構造変化は更に 加速度を増しており、労働基準関係法制の見直しをどこまで進めていくのか、どのような手法で進めていくのかといった課題が生じている。 労働基準関係法制の見直しについては、これまでのところ、労働者の働き方の多様化等に対応する形で規制の多様化も行われてきたといえよう。 これは労働時間規制に顕著であるが、制定当初の一律の最低労働基準だけでは働き方の多様化等に対応できず、個別の企業、事業場、労働者の実情に合わせて法所定要件の下で法定基準を調整・代替することを可能とするために、1987 年(昭和 62 年)の労働基準法の改正以降、様々な制度が取り入れられてきた。一方で、規制の内容が複雑化し、労働者にとっても使用者にとっても分かりづらいものとなってしまっている現状もある。 したがって、保護が必要な場面においてはしっかりと労働者を保護することができるよう、原則的な制度を、シンプルかつ実効性のある形で法令 において定め、その上で、先述した労働基準関係法制の意義を堅持しつつ、 労使の合意等の一定の手続の下に個別の企業、事業場、労働者の実情に合わせて法定基準の調整・代替を法所定要件の下で可能とすることが、今後の労働基準関係法制の検討に当たっては重要である。一方で、現在の過半数代表(過半数労働組合及び過半数代表者)を軸とした労使コミュニケーションには課題も多く、実効的な労使コミュニケーションを確保する方 策も必要となる。
4 本研究会の目的・研究の視点 ↓

本研究会に先立ち、新しい時代を見据えた労働基準関係法制の課題を整 理することを目的として、「新しい時代の働き方に関する研究会」(座長: 今野浩一郎学習院大学名誉教授・学習院さくらアカデミー長)が開催され、 2023 年(令和5年)10 月 20 日に報告書が取りまとめられている。同報告書では、全ての働く人を「守る」ことと、働く人の多様な希望を「支える」 ことの2つを柱として、今後の労働基準関係法制の課題と目指すべき方向 性について取りまとめられている。 本研究会では、この「守る」と「支える」をどのようにして両立していくべきかという視点や、前述のような社会や経済の構造変化にどのように 対応するべきかという視点に立って、労働基準関係法制の将来像について 抜本的な検討を加えるとともに、現在直面している厚生労働行政の課題を踏まえ、喫緊に対応しなければならない課題としてどのようなものがある かについて、専門的見地から研究し、報告することを目的として設置された。 また、働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(平成 30 年法律第 71 号。以下「働き方改革関連法」という。)附則第 12 条第1項及び第3項においては、働き方改革関連法による改正後の労働基準法等 について、その施行の状況等を勘案しつつ検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとされている。そこで、本研究会としては、働き方改革関連法の施行状況も踏まえつつ、関係制度の見直しの必要性についても具体的な検討を行うこととする。
5 本研究会における検討の柱 ↓

「新しい時代の働き方に関する研究会」の報告書においては、これから の労働基準関係法制の検討に当たって、 大丸1 全ての働く人が心身の健康を維持しながら幸せに働き続けることので きる社会を目指すということ【「守る」の視点】 大丸1 働く人の求める働き方の多様な希望に応えることのできる制度を整備すること(様々な働き方に対応した規制)【「支える」の視点】 の二つの視点が重要であるとされている。「守る」と「支える」の視点を 両立するためには、まず、保護が必要な場面においてはしっかりと労働者を保護することができるよう、原則的な制度を、シンプルかつ実効性のある形で法令において定めた上で、法令において定められた最低労働基準としての規制の原則的な水準を守りつつ、多様な働き方を支える仕組みとすることが必要である。そのためには、それぞれの規制において適切な水準が担保されることを前提に、労使の合意等の一定の手続の下に個別の企業、事業場、労働者の実情に合わせて法定基準の調整・代替を法所定要件の下で可能とする仕組みとなっていることが必要であり、こうした仕組みが有 効に弊害なく機能するためには、それを支える基盤として実効的な労使コミュニケーションを行い得る環境が整備されていることも必要となる。また、「守る」と「支える」の視点から労働基準法を考えるに当たっては、 法的効果の対象となる「労働者」をどのように捉えるのかといった、労働基準関係法制に共通する総論的課題も踏まえた検討が必要となる。 働き方改革関連法は、労働者がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる社会を実現する働き方改革を総合的に推進するため、長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保等を目的として労働関係諸法の改正を行ったものであり、これにより、労働基準法においても時間外・休日労働時間の上限規制の導入や高度プロフェッショナル制度の導入など様々な見直しが行われた。働き方改革関連法の施行から5年が経過し、その効果を測りつつ、働き方の更なる 改革として何が必要かを検討しなければならない。その検討に当たっても、 上記のような労働基準関係法制に共通する総論的課題も踏まえた上で、労 働時間制度の具体的課題について検討していくことが必要となろう。 こうした観点から、本研究会では、議論の柱を次のように整理して検討 を進めていく。 ↓

労働基準関係法制に共通する総論的課題 ↓
1 労働基準法における「労働者」について
→・・・。昭和 60 年労働基準法研究会報告から約 40 年が経過し、その間、働き方 の多様化やプラットフォーム・エコノミーの発展、AIやアルゴリズムに よる労務管理のデジタル化等によって、労働者と非労働者の境界が曖昧に なりつつある。あるべき労働基準関係法制を検討するに当たっては、どの ように働く人が「労働者」であるのか、「労働者」に対してはどのような 保護法制があり、「労働者」に該当しない者に対しての制度はどのような ものになるのかといった、法的効果とその対象者像を踏まえた上で、労働 者と非労働者の境界をどのように判断していくことが望ましいかを検討することが必要である。 本研究会では、こうした考え方を基に、労働基準法における「労働者」の概念について検討する。
2 労働基準法における「事業」について
→労働基準法の適用単位は、「事業」であり、「事業場」である。本研究会では、こうした状況を踏まえて、労働基準法における「事業」 又は「事業場」の概念をどのように捉えるかについて、制度改正を見据え た研究の前提として検討する。
3 労使コミュニケーションの在り方について→・・・・・。本研究会では、このような観点を踏まえ、集団的労使コミュニケーショ ンの課題と改善方法にどのようなものがあるか検討する。

U 労働基準関係法制に共通する総論的課題
1 労働基準法における「労働者」について

(1)現代における「労働者」性の課題
(2)労働基準法第9条について
(3)昭和 60 年労働基準法研究会報告について
(4)働く人の法的保護との関係
(5)今後の研究について→ 以上で述べたような専門的な研究を行うためには、昭和 60 年労働基準法研究会報告を取りまとめた労働基準法研究会と同様に、労働者性の判断基 準に関する知見を有する専門家を幅広く集め、分析・研究を深めることが必要。このため、厚生労働省において、継続的に研究を行う体制を整えることを、本研究会として要請する。
(6)家事使用人について
2 労働基準法における「事業」について
(1)「事業」の概念について
→一の事業であるか否かは主として場所的観念によって決定 すべきもので、同一場所にあるものは原則として分割することなく一個の事業とし、場所的に分散しているものは原則として別個の事業とする。
(2)事業場単位の法適用の在り方について→本研究会における議論の結果、労働基準法において、事業場を単位とし て法を適用することについては、 ・ 労務管理、意思決定、権限行使、義務履行がなされる場面や場所、監 督の実効性を考慮し、事業場を単位とすべきか、企業単位とすることも 許容されるかを検討する必要があること ・ 労働基準法等に基づく労使協定の締結等に当たって、職場の実態に即 した労使コミュニケーションが行われる必要があること ・ 企業単位で労働条件が画一的に設定されている場合など、複数の事業 場を束ねる形での労使コミュニケーションを行うことが合理的である場 合において、そのような形での労使コミュニケーションがなされること について妨げるものではないこと ・ 労働基準監督署においては、事業場単位の指導等を原則としつつ、企 業への指導等が有効なものについては、企業単位での指導等を行ってい ること
3 労使コミュニケーションの在り方について
(1)労使コミュニケーションの意義と課題
→そこで本研究会では、今日的な集団的労使コミュニケーションの課題 と改善方法にどのようなものがあるかについて検討を加え、労働組合の役割、過半数代表者の適正選出と基盤強化、労使協定等の複数事業場での一 括手続等について検討を行った。
(2)労働組合による労使コミュニケーションについて→労使関係において、労働者と使用者との間に厳然とした交渉力の格差が あることは、働き方が多様化した現在においても変わらない事実である。 労働組合法(昭和 24 年法律第 174 号)においては、個人では圧倒的に不利な立場にある労働者が団結し、争議権を背景に団体交渉を行うことによっ て労働者の交渉力を使用者と対等の立場に引き上げるものとして労働組合 が規定されており、労働組合の活性化が望まれる。 また、労働基準法における労使協定や就業規則の手続において、過半数 代表として優先されるのは過半数労働組合であることも踏まえると、労働 組合が実質的で効果的な労使コミュニケーションを実現する中核となる。 他方で、前述のとおり労働組合の組織率は長期的に低下しており、過半数労働組合がない事業場が多いことも事実である。労働組合を一方の担い手 とする労使コミュニケーションを活性化していくことが望ましい。 この点、後述する過半数代表者に対する支援と併せて、過半数労働組合 にも適用可能な支援は何かということを考える必要がある。例えば、労働 組合が過半数代表として活動する場合の活動時間の確保や、使用者からの 必要な情報の提供、意見集約のための労働者へのアクセス保障などの支援は、過半数労働組合、過半数代表者のいずれが過半数代表の役割を果たす場合においても共通して必要と考えられるため、労働組合が過半数代表として活動する場合に、当該労働組合に対しても行うことができる支援と して明確化していくことが必要と考えられる。 また、これも過半数労働組合と過半数代表者に共通しているが、労働基 準法等に基づく労使協定を締結する際等には、過半数代表は、事業場の全 労働者の代表として意見集約していくべきことも明確化すべきである。
(3)「過半数代表者」の適正選出と基盤強化について→過半数労働組合のない事業場においては、過半数代表者を選出して労使 協定の締結等を行うこととなるが、過半数代表者については様々な課題が 指摘されている。これらの課題を大別すると、 @ 過半数代表者の選出が、事業場において適正に行われていない場合が ある A 過半数代表者の役割を果たすことは労働者にとって負担であり、また、全ての労働者が労使コミュニケーションについての知識・経験を持つわけではないことから、積極的な立候補が得られないことや、立候補者が いて選出されたとしても過半数代表の役割を適切に果たすことが難しい 場合が多い というものである。この二つは相互に関係しており、使用者側が適正な形 で過半数代表者の選出を求めようとしても、候補者が得られないことによ り結果的に適正な選出手続をとれないような場合もある。また、選出され た過半数代表者が労使協定についての情報や知識を持たず、選出された過 半数代表者が事業場の全労働者の代表として意見を集約するための制度的 担保がないことから、結果として使用者から提示された労使協定の案につ いて全労働者の代表として意見を集約して十分な議論を行うことなく協定 を締結するだけになっているような場合もあるとの指摘がある。こうした 課題を改善し、実質的で効果的な労使コミュニケーションを行う土台を作 っていくことが必要である。
現行の労働基準法では、「過半数代表」や「過半数代表者」は明 確には定義されておらず、過半数代表が締結の一方当事者となる手続を定 める条項において個別に規定されているのみである。過半数代表者の適正 選出を確保し、基盤を強化するためには、 ・ 労働基準法における「過半数代表」、その下位概念である「過半数労 働組合」、「過半数代表者」の定義 ・ 過半数代表者の選出手続 ・ 過半数代表、過半数労働組合、過半数代表者の担う役割及び使用者に よる情報提供や便宜供与、権利保護(不利益取扱いを受けないこと等) ・ 過半数代表として活動するに当たっての過半数代表者への行政機関等 の相談支援 ・ 過半数代表者の人数や任期の在り方 等について、明確にしていくことが必要ではないかと考えられる。
(3)−1 過半数代表者の選出手続について→・・・・・。最後に、労働者が過半数代表者に立候補し、その役割を適切に果たすた めには、過半数代表者の選出が必要になる前から、過半数代表の意義や役 割、選出手続、適正な選出の必要性、労働者の意見集約の手法等について 知識を得る教育・研修の機会があることが求められる。また、適切な労使 コミュニケーションを促進する観点から、過半数代表に関する教育・研修 の中で、労働組合を中心とした集団的労使関係についても扱われることが 望ましい。労働者の自主的な意思表示を担保するためには、こうした教 育・研修を使用者が行うことには問題があると考えられ、行政において一 定の教育・研修資料等を作成し、それを提供するという形が望ましいと考 えられる。
(3)−2 過半数代表者が担う役割及び過半数代表者となった労働者に対する使用者による情報提供や便宜供与
(3)−3 過半数代表者への相談支援
(3)−4 過半数代表者の人数
→・・・・。労働者側がこうした複数人選出を望 む場合や、選ばれた過半数代表者が補助者の指名を望む場合には、使用者 には、指名事務等を円滑に遂行できるよう必要な配慮が求められる。ただし、必要な配慮の名の下に、使用者による不当な介入等が行われないよう に留意すべきである。
(3)−5 過半数代表者の任期
(3)−6 労働基準法における規定の整備→本研究会としては、過半数代表者の適正選出を確保し、基盤の強化を行うに当たり、まずは労働基準法において、「過半数代表」、「過半数労働組 合」、「過半数代表者」の法律上の位置付け、役割、過半数代表者に対する 使用者からの関与や支援等を明確に定める規定を設ける法改正を行うこと が必要と考える。加えて、過半数労働組合に対する使用者からの関与や支援について、ど のようなことができるのか、労働組合法に規定する支配介入等の規定との 関係について、いずれかの法で明らかにしておくことも検討すべき。⇒【法制度のイメージの例】あり。 参照。
(4)労使協定・労使委員会等の複数事業場での一括手続について
(5)労働者個人の意思確認について

(6)労働基準関係法制における労使コミュニケーションの目指すべき姿→労働基準法における労使協定は、法律で定められた規制の原則的な水準を個別の企業、事業場、労働者の実情に合わせて法所定要件の下で調整・代替することについて、免罰効を与えるとともに、当該事項に係る法定基準の強行性を解除する効果を持つ。 現行法においては、その時々に選出された過半数代表者によってこの労使協定が締結されるが、締結後にそれが締結当初の趣旨どおりに実施されているかについてモニタリングを行う制度はない。将来を見据えれば、モニタリングを含めた労使コミュニケーションを恒常的かつ実質的な形で行うことができる体制が確保されることが求められる。 この点について、労働組合の機能が優先されることを前提としつつ、現に労働組合がない事業場等におけるコミュニケーションの在り方を考えてみると、諸外国においては、労働者のみで構成される労働者の集団全体を 適切に代表する組織を設ける仕組みや、労使双方で構成する委員会を設け 意思決定を行う仕組み等が制度化されており、将来的には、これらも視野に、我が国における労使コミュニケーションの在り方を検討していくことが期待される。
将来的な労働者と使用者のコミュニケーションの場としては、以上のよ うに様々な形が考えられるところであり、諸外国の例を見ても、国によっ てとっている方向は異なっていることから、労使関係の実態も踏まえたよ り包括的・多角的な研究が必要となる。また、そうした労使コミュニケー ションを、現場に近い事業場単位で行うべきか、より多数の意見を集約で きる企業単位で行うべきかについても、より深い研究が必要となる。
本節でこれまで論じてきた事項は、こうした将来の検討にもつながるもの。まずは、労働組合の活性化が望まれるとともに、過半数代表者 の改善策を実施し、その状況を把握しながら、労使コミュニケーションの在り方について更に議論を深めていくべきである。 さらに、将来的に労働者全体の意思を反映した労使コミュニケーション が十分実効的に機能するようになった際には、過半数労働組合等の労働者 集団と使用者との合意と、労働契約の規律との関係について、長期的な課題として議論していくことも考えられる。

V 労働時間法制の具体的課題
1 最長労働時間規制
→・・・。労働時間法制の具体的課題の検討に当たっては、このような現行の労働時 間規制の体系的整理を念頭に議論を行った。
(1)時間外・休日労働時間の上限規制→・・・。なお、我が国全体の働き方への考え方として、長時間の時間外労働に対 応する労働者こそが会社の中核的なメンバーであり、そうでない者は周縁的なメンバーであるという考え方・空気感が今なお存在する面は否めない。 これからの時代においては、長時間の時間外労働を前提としない働き方が 通常の働き方とされる社会としていくことが重要であり、これまで述べてきた制度的な議論による対応に加え、人事評価制度や人員配置・管理等について、健康経営や人的資本経営の観点からも企業の意識改革が望まれ、 そうした気運の醸成に努めていく必要がある。 加えて、長時間労働の是正には、労働時間制度だけでなく、官公庁取引を含む商慣行の見直しや、大企業や親会社、国・地方自治体の働き方改革 が中小企業や子会社を始め取引先にしわ寄せを生じさせる状況の是正といった観点も重要であり、厚生労働省と業所管省庁が協力して進めることが 重要
(2)企業による労働時間の情報開示
@ 企業外部への情報開示  A 企業内部への情報開示・共有
(3)テレワーク等の柔軟な働き方
→本研究会では、テレワークに適用できるより柔軟な労働時間管 理について、 @ テレワーク日と通常勤務日が混在するような場合にも活用しやすいよう、コアタイムの取扱いを含め、テレワークの実態に合わせてフレックスタイム制を見直すことが考えられるか A 緩やかな時間管理の中でテレワークを行い、一時的な家事や育児への 対応等のための中抜け等もある中で、客観的な労働時間が測定できるか 否か、測定できるとしてもプライバシーの観点から測定するべきか否か という観点から、実効的な健康確保措置を設けた上で、テレワーク時の 新しいみなし労働時間制を設けることが考えられるか という2つの視点を基に、フレックスタイム制の改善や、テレワークを行 う際の新たなみなし労働時間制の導入可否について検討した。
【フレックスタイム制の改善について】
【テレワーク時のみなし労働時間制について】
→・・・こうした点に関する検討も含め、在宅勤務における労 働時間の長さや時間帯、一時的な家事や育児への対応等のための中抜け時 間の状況等の労働時間の実態や、企業がどのように労働時間を管理しているのか、新たなみなし労働時間制に対する労働者や使用者のニーズが実際にどの程度あるのかということを把握し、また上記により改善されたフレックスタイム制の下でのテレワークの実情や労使コミュニケーションの実態を把握した上で、みなし労働時間制の下での実効的な健康確保の在り方 も含めて継続的な検討が必要であると考えられる。
(4)法定労働時間週 44 時間の特例措置→87.2% の事業場がこの特例措置を使っていない現状に鑑みると、概ねその役割 を終えていると考えられる。
(5)実労働時間規制が適用されない労働者に対する措置→労働基準法では、実労働時間規制から外れる裁量労働制、労働時間規制 の適用を除外する高度プロフェッショナル制度や管理監督者等の規定が設 けられ、それぞれ適用要件が定められている。この中で、裁量労働制や高度プロフェッショナル制度は、制度を導入する過程で、健康・福祉確保措置が設けられた。一方で、管理監督者等については、労働安全衛生法にお いて労働時間の状況の把握が義務化され、長時間労働者への医師による面接指導の対象とされてはいるものの、労働基準法制定当時から現在に至るまで、特別な健康・福祉確保措置は設けられていない。このため管理監 督者等に関する健康・福祉確保措置について、検討に取り組むべきである。
2 労働からの解放に関する規制→労働時間規制には、使用者がどれだけの労働を労働者にさせてよいか (労働者の労働力をどこまで使ってよいか)という「最長労働時間規制」 と、使用者が労働者に対し、労働から解放される時間をどれだけ確保しなければならないか(労働者の労働力の回復の時間や私生活の時間等がどれくらい確保されるべきか)という「労働からの解放に関する規制」が含まれている。前者は法定労働時間、36 協定による時間外・休日労働規制、変形労働時間制、フレックスタイム制等が該当。後者は法定の休憩、休 日、そして広い意味では、年次有給休暇等や、現行制度では努力義務である勤務間インターバル制度もこれに該当する。 働き方改革関連法での労働時間規制の改革は、時間外・休日労働時間の 上限規制が中心であり、「労働からの解放に関する規制」に係る内容は多くなかった。「労働からの解放に関する規制」は、健康確保や自由時間の確保等の意義があり、また労働者の休養確保は、疲労の回復と労働者の作 業効率化を通じて、企業にもメリットを生じることから、本研究会では、 「労働からの解放に関する規制」についても改めて整理・検討を加えた。
(1)休憩
(2)休日  @ 定期的な休日の確保 A 法定休日の特定
(3)勤務間インターバル
→・ 勤務間インターバル時間として 11 時間を確保することを原則としつつ、制度の適用除外とする職種等の設定や、実際に 11 時間の勤務間インターバル時間が確保できなかった場合の代替措置等について、多くの企業が導入できるよう、より柔軟な対応を法令や各企業の労使で合意して決めるという考え方 ・ 勤務間インターバル時間は 11 時間よりも短い時間としつつ、柔軟な対応についてはより絞ったものとする考え方 ・規制の適用に経過措置を設け、全面的な施行までに一定の期間を設ける考え方
(4)つながらない権利→こうした点を整理し、勤務時 間外に、どのような連絡までが許容でき、どのようなものは拒否すること ができることとするのか、業務方法や事業展開等を含めた総合的な社内ル ールを労使で検討していくことが必要となる。このような話し合いを促進 していくための積極的な方策(ガイドラインの策定等)を検討することが 必要と考えられる。
(5)年次有給休暇制度→本研究会はの@〜C議論。 @ 使用者の時季指定義務の日数(現行5日間)や時間単位の年次有給休 暇の日数(現行5日間)の変更等、A 計画的・長期間の年次有給休暇を取得できるようにするための手法 (ILO132 号条約に規定する「2週間からなる年次有給休暇の連続取得」の推進等)、B 1年間の付与期間の途中に育児休業から復帰した労働者や、退職する 労働者に関する、残りの期間における労働日と時季指定義務の関係につ いての取扱いの改善、C 年次有給休暇取得時の賃金の算定方法として現行定められている3つ の方法について、それぞれの方法で計算される金額の妥当性⇒ 年次有給休暇期間中の賃金については、就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより、 (1) 労働基準法第 12 条の平均賃金 (2) 所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金 (3) 当該事業場の労働者の過半数代表との労使協定により、健康保険 法(大正 11 年法律第 70 号)上の標準報酬月額の 30 分の1に相当す る額 のいずれかを支払わなければならないものとされている(労働基準法第 39 条第9項)。
3 割増賃金規制
(1)割増賃金の趣旨・目的等
→本研究会では、 ・ 企業が時間外労働等を抑制する効果が期待される一方、労働者に対しては割増賃金を目的とした長時間労働のインセンティブを生んでしまう のではないか ・ 労働市場において人手不足の傾向が強まり、労働条件が上がりやすく なっている現状も踏まえると、労働者は割増賃金に頼らなくても収入を 確保できるようになるのではないか ・ 深夜労働の割増賃金は、労働強度が高いものに対する補償的な性質が あるが、健康管理の観点からは、危険手当のような位置付けではないか ・ 我が国の割増賃金率は諸外国と比較して低い水準となっており、長時 間労働を抑制する機能を十分に果たしていないのではないか。均衡割増 賃金率を考慮して割増賃金率を設定することや、割増賃金率を 50%以 上としなければならない時間外労働の基準(月 60 時間超)を時間外労働 の原則的上限(月 45 時間)と整合させることも考えられるのではないか ・ 事業運営上生ずる労働力需要の波動を外部労働市場ではなく内部労働 市場を通じて調整することを優先してきた我が国の雇用慣行を考慮した ときに、割増賃金率の引上げによる時間外労働の抑制を議論するのであ れば、雇用維持の優先度を引き下げることがセットにならないか ・ 企業は人件費を総額で管理している実態があり、割増賃金率を引き上 げるとなれば、企業行動としては所定の給与を相対的に引き下げること が合理的な選択となり、結果として、長時間労働をしなければ十分な収 入を得られないといった、制度改正の意図しない効果が生じないか ・ 深夜労働の割増賃金について、使用者の命令ではなく、働く時間の選 択に裁量のある労働者(管理監督者、裁量労働制適用労働者等)が自ら 深夜帯に働くことを選んだ場合には、割増賃金は必ずしも求められない のではないか ・ 歩合給制の場合の割増賃金規制について労使自治により法定基準を調 整することは、中長期的に検討する事項としてあり得るのではないか ・ 割増賃金の計算の基礎となる「通常の賃金」について、解釈が明確に 整理されていない。立法による対処ではないかもしれないが解釈の整理 は必要ではないか  といった意見があった。
(2)副業・兼業の場合の割増賃金→労働基準法第 38 条を受けた 通達に基づき、事業主を異にする場合についても労働時間を通算して割増 賃金を支払うこととされている。このため、現在は厚生労働省のガイドラ インに基づき、労働契約の締結の先後の順に所定労働時間を通算し、次に 所定外労働の発生順に所定外労働時間を通算することによって割増賃金を 計算するか、あらかじめ設定したそれぞれの事業場における労働時間の範 囲内で労働させる管理モデルを利用するかのいずれかとされている。
なお、欧州諸国の半数以上の国で実労働時間の通算は行う仕組みとなっ ているものの、それらの国でも、フランス、ドイツ、オランダ、イギリス 等では、副業・兼業を行う場合の割増賃金の支払いについては労働時間の 通算を行う仕組みとはなっていない。
・・・・なお、副業・兼業先が非雇用の形態の場合であっても、健康確保の観点 から、本業先の企業が全体の就業時間や疲労度に応じて何らかの配慮を行 うことも期待されるという意見や、副業・兼業を行う労働者自身が自らの 健康管理に対するリテラシーを高めていくことも期待されるという意見が あった。
W おわりに ↓
これまで述べてきたとおり、本研究会では、労働基準関係法制にかかわ る諸課題について検討し、それぞれを早期に取り組むべき事項、より良い 制度に向けて中長期的に検討を進めるべき事項に分け、方向性を示すこととした。 本研究会としては、本報告書において早期に取り組むべきとした事項を中心として、今後、公労使三者構成の労働政策審議会において、労働基準 関係法制に係る諸課題についての議論が更に深められることを期待するものである。一方で、中長期的に検討を進めるべきとした事項については、 国内外の実態把握や国際的な動向の把握を進めつつ、引き続き学術的な検 討を進めることが必要と考えられる。 本研究会は厚生労働省労働基準局長の開催する研究会である。厚生労働 省においては、この報告書をもって労働基準関係法制に係る研究を終了す るのではなく、本研究会のような労働基準関係法制に係る研究を行う場を 引き続き設けていくことを要望する。

次回は新たに「第24回社会保障審議会年金部会」からです。

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