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労働基準関係法制研究会 第14回資料 [2025年01月08日(Wed)]
労働基準関係法制研究会 第14回資料(令和6年11月12日)
議題 労働基準関係法制について
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_45355.html
◎資料1 労働基準関係法制研究会(議論のたたき台)
T 総論 1 労働基準法制の構造的課題↓

○ 労働基準法制について、経済社会の構造変化に応じ、どこまで、どのような手法で見直しを進めていくのかが課題。
○ 多様化する働き方に対応すべく法整備が進むと、複雑で分かりづらい法制となっていく。保護が必要な場面においてはしっかりと労働者を保護することを前提に、原則的な制度をシンプルかつ実効性のある形で法令 において定め、一定の範囲内で、個別の企業、事業場、労働者の実情に 合わせて調整が可能なものとしていくという考え方を持つことが、今後 の労働基準関係法制の検討に当たっては求められる。 ↓
→ このような仕組みが有効に、弊害なく機能するためには、現場の労使の良質なコミュニケーションが必要。
→ 現行の過半数代表(過半数労働組合、過半数代表者)を軸とした労使コミュニケーションには課題も多い。
○ 労働基準法は罰則付きの強行法規であることから、他の法律やソフトロ ーなども含めて検討することが必要と考えられる。

2 本研究会における検討の柱 ↓
○ 「新しい時代の働き方に関する研究会」の報告書でも言及された二つの視点に基づいて制度を検討。→・ 全ての働く人が心身の健康を維持しながら幸せに働き続けることの できる社会を目指すということ。・ 働く人の求める働き方の多様な希望に応えることのできる制度を整 備すること(様々な働き方に対応した規制)
○ 法制度の検討を行うに当たっては、その制度が、 ・法的効果の対象者である労働者をどう捉えるのか(労働者性)(事業) ・具体的な法的効果(規制の内容) ・シンプルで分かりやすい制度(共通原則と労使合意による現場の実情に合わせた調整)の相互の関係を捉えて論ずる必要があるため、以下の4本の柱で検討。↓
(1) 労働基準法における「労働者」について
→・ 労働基準法制の保護対象者である「労働者」について、1985 年の労働者性の判断基準が作られてから約 40 年が経過し、労働者と非労働者の境界が曖昧になりつつあると考えられる。 ・労働者性の判断基準について、判断要素と法的効果の両面から検討を加 えることが必要と考えられる。
(2) 労働基準法における「事業」について→・労働基準法の適用単位は、「事業」であり、「事業場」単位。 → 近年は場所にとらわれない働き方も拡大。 ・ 企業単位の労働条件設定や、技術の進展により労務管理を一括・大くくりで行っている企業が増加。 ・ 「事業」の概念をどのように捉えるか検討が必要と考えられる。
(3) 労使コミュニケーションの在り方について→・労使協定の締結等の労使合意による現場の実情に合わせた調整を有効に 機能させるためには、できるだけ労使が対等に協議して合意できる環境の整備が重要と考えられる。労働者の意見を集約して使用者とコミュニ ケーションを図る主体の中核は労働組合であり、その活性化が望まれる。 また、労働組合のない職場も多い一方で、過半数代表者には、選出方法や役割・交渉力などに課題があることなどから、その改善が必要と考えられる。このように、集団的労使コミュニケーションの課題と改善方法 の検討が必要と考えられる。
(4) 労働時間法制の具体的課題について→・働き方改革関連法の施行から5年が経過しており、導入した制度の施行 状況を踏まえつつ、働き方改革関連法では対象とされなかった部分を含 めた制度研究が必要である。 ・労働時間法制の具体的な制度内容については、「早期に法制的・政策的対応が必要な事項」と「検討課題が多岐にわたり、中長期的な議論を要するもの」といった視点で検討することが必要と考えられる。

U 労働基準法における「労働者」について
1 現代における「労働者」性の課題↓

○労働基準法による保護の対象者である「労働者」は、同法第9条に定義が規定され、1985 年に労働基準法研究会によりその判断基準が示されている。 ・研究会報告から約 40 年が経過し、経済社会は大きく変化する中で、労働者性判断の分かりにくさが増大し、予見可能性が低下しつつある。 ・多種多様な働き方が増え、労働者性の境界に位置するような働き方も増加。 ・テレワーク等の場所にとらわれない働き方も拡大 ・プラットフォーム・エコノミーの進展により、労働者に近似したギグ ワーカーやプラットフォームワーカーが世界中で拡大 ・AIやアルゴリズムによる労務管理のデジタル化なども発展
○ 諸外国でも様々な法制度上の対応が検討されてきたが、日本においても、 こうした新しい働き方への対応を含め、労働者性判断の予見可能性を再 び高めていくことが必要と考えられる。
2 労働基準法第9条について ↓
○ 労働基準法第9条の労働者の定義は以下のとおり。 「職業の種類を問わず、事業又は事務所・・・に使用される者で、賃金 を支払われる者をいう。」
○ 労働者の概念が多様化しているといっても、本条で規定するような抽象的属性は大きく変わっていない。諸外国をみても法律上の根本的な定義 規定を変えている国はほとんど無く、現行の規定には一定の合理性があ るのではないかと考えられる。
3 昭和 60 年労働基準法研究会報告について ↓
○ 1985 年の労働者性の判断基準については、作成から約 40 年が経過し、 働き方の変化・多様化に必ずしも対応できない部分も生じている。
○ 1985 年の労働者性の判断基準を所与のものとせず、約 40 年で積み重ね られた事例・判例等をしっかりと分析・研究し、学説も踏まえ、見直し の必要性を検討していくべき。 ○ 原則的な判断基準の議論と並行して、個別の職種について、労働者性を 判断するに当たって参考となるような指針等を必要に応じて示すことが 必要と考えられる。
※ 特にデジタルプラットフォームワーカーの問題については、来年 (2025 年)から ILO 総会において新たな国際労働基準の策定に向けた 議論が開始される予定。
○ 個別の職種の労働者性の判断については、国際的なルールとの調和も図 りながら、労働者性の法的推定や立証責任の在り方、経済的従属性につ いてどのように考えるか、労働者性の判断に当たって活用できる具体的 なチェックリストを設けられるかなどを含め総合的な研究が必要と考え られる。
4 働く人の保護法制との関係 ↓
○ 労働者性の判断は、必然的に境界事例を生ずる。そうした者に対しても、 適切な保護が必要である場合もある。フリーランス・事業者間取引適正 化等法との関係など、受け皿となる保護法制をにらみつつ検討が必要と 考えられる。
5 今後の研究について ↓
○ 1985 年の労働基準法研究会と同様に、労働者性の判断基準に関する知見 を有する専門家を幅広く集め、分析・研究を深めることが必要と考えら れる。厚生労働省において、継続的に研究を行う体制を整えることを要 望する。
6 家事使用人1について ↓
○ 現行法では、家事使用人は労働基準法の適用を除外されているが、現在では実質的な労働形態は、家事代行サービス事業者に雇用されて働く労働者とほとんど変わらなくなってきたことなどから、労働基準法の適 用を除外すべき事情に乏しくなってきたと考えられる。 ○ 一方、家事使用人に労働基準法を適用した場合にその使用者となると考 えられるのは私家庭であるところ、私家庭に対して使用者責任を負わせ ることについては慎重な検討が必要であり、家事使用人が職業紹介を介 して個人家庭に直接雇用されるケースも多い現状も踏まえ、履行確保の 在り方も含めた具体的な制度設計の検討が必要と考えられる。

V 労働基準法における「事業」について ↓
○ 現時点では、労働基準法について、引き続き、事業場単位を原則として 維持することが適切と考えられる。 また、具体的な法規制の内容に応じて、企業単位、又は複数の事業場を まとめた単位で同一の労働条件が定められるような場合であって、企業 単位や複数事業場単位で適切な労使コミュニケーションが行われるときは、労使の合意により、手続を企業単位や複数事業場単位で行うことも 選択肢になることを明らかにすることが考えられる。また、企業単位で 法令の履行を確保することが、監督指導の有効性や行政手続の効率化等 の観点から、適切な場合もあると考えられる。
○ 情報通信技術の発展と場所にとらわれない働き方の増加により、働く人 が実際に生活する場や労務を提供する場と事業場が所在する場との乖離 がおき、法適用に影響する可能性がある。労働基準法制における「事業」 の概念については、将来的な労使コミュニケーションの在り方も含め、 検討していくことが必要と考えられる。

W 労使コミュニケーションの在り方について
1 労使コミュニケーションの意義と課題 ↓

○ 労使コミュニケーションには、以下のものなどがあるが、本研究会では、 A、Bの労使コミュニケーションの在り方について、現行制度の改善点を中心に議論した。 @ 労使が団体交渉して適切に労働条件を設定するもの A 法律で定められた規制の原則的な水準について、労使の合意等の一 定の手続の下に、個別の企業、事業場、労働者の実情に合わせて、 一定の範囲内で異なる水準の規制を適用するもの B 設定した労働条件の遵守状況のモニタリングや労使間の苦情・紛争 処理等を通じた労働条件規範の履行確保に関するもの C 労使間の情報共有を通じた労働者による経営参画に関するもの
○ 労働基準法制による法規制をシンプルに保ちつつ、経済社会の変化に対応して現場の実情に合わせた調整を有効に機能させることが必要と考えられる。そのためには、労働者の意見を集約して使用者とコミュニケーションを図る主体の中核たる労働組合の活性化や組織化の取組が望まれる。また、過半数労働組合がない事業場(企業)も含めて、できるだけ労使が対等に協議して合意に至ることのできる環境を確保していくことが重要と考えられる。労働組合の組織化や過半数代表者の課題を含め、 労使コミュニケーションを改善するための検討が必要と考えられる。
○ 過半数代表、過半数代表者や労使委員会については、現行の労働基準法において体系的に規定・整序されておらず、過半数代表等を必要とする 条項に、個別に規定されているのみとなっている。 また、労使コミュニケーションだけでなく、労働者集団内部のコミュニケーションが意見集約や調整という点で重要であるとの意見もあった。 この点について、労働組合の機能が優先されることを前提としつつ、現 に労働組合が存在しない事業場等におけるコミュニケーションの在り方 を考えてみると、諸外国においては、労働者のみで構成される労働者の 集団全体を適切に代表する組織を設ける仕組みや、労使双方で構成する 委員会を設け意思決定を行う仕組みなどが制度化されており、将来的には、これらも視野に、我が国における労使コミュニケーションの在り方 を検討していくことが期待される。 ○ しかしながら、まず早急に取り組むべきは現行の過半数代表制が抱える課題の解消であり、その改善方法として、過半数代表者の機能強化等について議論してきたところである。

2 労働組合による労使コミュニケーションについて ↓
○ 労使関係において、労働組合は実質的で効果的な労使コミュニケーショ ンを実現する中核である。一方、労働組合の組織率は長期的に低下していることも事実。 ○ 労働組合の自主独立性を損なわず、労働組合を一方の担い手とする労使 コミュニケーションを活性化していくことが望ましいと考えられる。 また、後述する過半数代表者に対する支援と併せて、過半数労働組合が過半数代表として活動する場合に、過半数代表者と同じように企業から受けることができる支援について、制度上明確化していくことが必要と考えられる。 ○ 労働基準法等に基づく労使協定を締結する際などには、過半数労働組合 が事業場の全労働者の代表であることの明確化が必要と考えられる。

3 「過半数代表者」の機能強化について↓
○ 過半数労働組合のない事業場における過半数代表者については、以下の ような様々な課題があり、改善が必要と考えられる。
@ 過半数代表者が、事業場で適正に選出されないケースがあること A 過半数代表者の役割を果たすことの労働者の負担や、全ての労働者が労使コミュニケーションについての知識・経験を持つわけではないことから、積極的な立候補が得られないことが多いこと
○ 現行の労働基準法では、過半数代表や過半数代表者は明確には定義されておらず、過半数代表を必要とする手続規定に、個別に規定されている のみ。過半数代表の機能を強化するためには、 ・労働基準法における定義 ・過半数代表者を選出する際の使用者の関与 ・過半数代表、過半数代表者の担う役割及び使用者による情報提供や便 宜供与、権利保護(不利益取扱いを受けないなど) ・過半数代表として活動するに当たっての過半数代表者への相談支援 ・過半数代表者の人数や任期の在り方 等について、明確にしていくことが必要と考えられる。
3−1 過半数代表者の選出手続について ↓

○ 過半数代表者の選出は、使用者が何らかの労使協定を締結しようとする 場合等に、労働者側に選出を求めることが契機となると考えられるが、 その際、 ・当該事業場でこれまで締結された労使協定 ・今回の選出がどの労使協定に関するものか ・今回の労使協定の内容 等を使用者が明らかにすることが必要と考えられる。
○ 労働者が過半数代表者を選出する際には、事業場内での周知や選出事務 などに当たって使用者の配慮が必要と考えられるため、具体的にどの程度の配慮まで認められるのかを、制度上明らかにすることが必要と考え られる。
○ 過半数代表者の選出が必要になる前から、過半数代表の意義や役割、労働者の意見集約の手法などについて、労働者が知識を得る教育・研修の 機会があることが必要と考えられる。こうした研修は、行政が一定の研修資料等を作成し、それを提供するという形が望ましいと考えられる。
3−2 過半数代表者が担う役割及び過半数代表者となった労働者に対する 使用者による情報提供や便宜供与
○ 過半数代表者が役割を全うするために、例えば以下のような情報が必要であり、法制上使用者の責務として、こうした情報の提供を位置付けることが必要と考えられる。 ・関連する事業場の労働実態に関する情報 ・労働者の意見を集約するために、従業員名簿や、当該協定の影響を受ける労働者が誰であるかといった情報
○ 過半数代表者の活動には相応の時間がかかるため、労働時間の中で活動 することへの一定の保障を検討することや、意見集約のための社内イントラネットや通信機器、コピー機等の社内設備の使用などの便宜供与が必要。使用者がどのような便宜供与を行うことが望ましいか、どのようなものが許容されるのかを明確にすることが必要と考えられる。
○ 過半数代表者であること等を理由とした解雇・異動等の不利益取扱いを してはならない旨を明確にすることが必要と考えられる。 ○ こうした情報提供や便宜供与は、労使委員会の労働者委員や過半数労働 組合に対しても同様の扱いとすることが考えられるが、過半数労働組合に対する便宜供与については支配介入等との関係を明らかにする必要がある。
3−3 過半数代表者への相談支援 ↓
○ 過半数代表者や労使委員会の労働者委員が活動するに当たり、行政機関 や外部専門家などの相談支援を受けられるよう、体制の整備や、相談窓 口の周知なども行うことが必要と考えられる。
3−4 過半数代表者の人数 ↓
○ 通常1名選出されている過半数代表者が複数いれば、その事業場にいる多様な類型の労働者の意見集約が行いやすくなる可能性や、負担の軽減や相互相談などにより、より実質的で効果的な労使コミュニケーションができる可能性がある。現行法でも複数人の過半数代表者を選出することは適法に可能であり、複数人選出の選択肢もあることを明らかにしていくことが考えられる。また、過半数代表者自体が単独であったとして も、必要な補助者を指名して相談するなどの柔軟な方法も取り得ること を明らかにしていくことが必要と考えられる。
3−5 過半数代表者の任期 ↓
○ 過半数代表者は労使協定の締結等の手続ごとにその都度選出されるのが 基本であるが、労使協定の運用状況に関するモニタリングや、過半数代 表者の継続性を考えると、任期制も有効と考えられる。任期の設定は、 現行法でも可能であり、任期付き選出の選択肢もあることを明らかにしていくことが考えられる。
3−6 労働基準法における規定の整備 ↓
○ 過半数代表の機能強化を行うに当たり、まずは労働基準法において、過 半数代表、過半数労働組合、過半数代表者の法律上の位置付け、役割、 過半数代表者に対する使用者からの関与や支援を明確に規定する規定を 設ける法改正を行うことが必要と考えられる。なお、労使委員会の規定 についても同様に検討の対象となり得るとの意見があった。
○ 使用者から過半数労働組合への関与や支援について、どのようなことができるのか、労働組合法に規定する支配介入等の規定との関係について、 いずれかの法で明らかにしておくことも検討すべきと考えられる。

4 労使協定・労使委員会等の複数事業場での一括手続について ↓
○ 労働基準法の適用:事業場単位 ・労務管理におけるデジタル技術の活用が進む中、事業場単位で細かく労 務管理を行うケースが減少。 → 本社の参画がなければ実質的な労使協議を行えないケースが増加。 ・特に労働組合のない事業場で、単独事業場では実質的な労使協議が行え ないケースもある。
○ 事業場単位の労使合意を前提としつつ、手続をある程度まとめて行うことは現行法でも許容されており、その点を明らかにすることが考えられる。(下図参照)→「労使協定」「労使委員会」「 就業規則」(9頁参照)  第9回資料より抜粋されている。
○ このような取扱いを明らかにする場合であっても、使用者が複数事業場 をまとめて手続を行うことについて労働者側に対して提案したとしても、 各事業場の過半数代表者はこれを拒否することができることを明確化す ることが必要と考えられる。
○ 複数事業場をまとめて手続を行う際には、参加する事業場の過半数代表 者が、使用者を交えずに相談する場を設けることを、使用者に求めるこ とも考えられる。

5 労働者個人の意思確認について→○ 原則として法律で示された規制について、労働者の個人同意のみにより 基準のラインを再設定することは不適当と考えられる。 ○ 集団的合意に重ねて本人同意を求める制度については、企画業務型裁量 労働制などの例もあるところ。各制度における労働者個人の意思確認の 必要性の度合いや、現場の労働実態を踏まえて、それぞれに検討することが適当と考えられる。

6 労働基準法における労使コミュニケーションの目指すべき姿→○ 現行制度では、労使協定の運用状況をモニターする制度はなく、労使協 定の適切な運用には、その状況をモニタリングする機能を備えることが 望ましいが、実情として労働組合の組織率が低く過半数代表者のなり手 も確保されていない状況では、モニタリング機能を過半数代表者に求め ることは困難と考えられる。 ○ 将来的には、モニタリングを含めた労使コミュニケーションを恒常的に、 実質的な形で行える体制が必要。それが労働者の代表団のような形か、 労使の入った委員会のような形かについては、先行する各国の制度でも 様々であるし、労使の意見も異なると思われ、より深い研究が必要と考 えられる。 ○ 労使コミュニケーションを現場に近い事業場単位で行うべきか、より多 数の意見を集約できる企業単位で行うべきかについてもより深い研究が 必要と考えられる。 ○ まずは過半数代表の改善策を実施し、その状況を把握しながら、労使コ ミュニケーションの在り方について更に議論を深めていくべき。

X 労働時間法制の具体的課題について
1 最長労働時間規制(実労働時間規制)
(1)時間外・休日労働時間の上限規制
→○ 現時点で、時間外・休日労働時間の上限規制(原則:月 45 時間・年 360 時間/特別条項:単月 100 時間未満・複数月平均 80 時間以内・年 720 時 間)そのものを変更するための社会的合意を得るためには蓄積が不足し ているのではないかと考えられる。 ○ 2017 年の労使合意で掲げられた長期的な目標である月 45 時間、年 360 時 間を見据え、定期的に時間外・休日労働等の実態を把握し、上限規制の 水準の見直しについて議論することが必要と考えられる。 ○ 自動車運転者や医師などの、なお一般より長い上限が適用されているも のに対する一般則の適用等について、議論が必要と考えられる。
(2)企業による労働時間の情報開示
【企業外部への情報開示】
→○ 労働基準法の強行的な規制による時間外・休日労働時間の短縮のほか、 労働市場の調整機能を通じて、個別企業の勤務環境を改善していくこと が考えられる。特に企業の時間外・休日労働の実態について、企業自ら 正確な情報を開示することが望ましい。 ○ 現行法制では女性の職業生活における活躍の推進に関する法律や次世代 育成支援対策推進法に基づく認定制度などの企業による自主的な取組を 促す仕組みを含め、各制度の目的に応じて様々な情報開示の仕組みが既 に設けられているが、時間外・休日労働時間を短縮するという観点から も、こうした様々な情報開示の取組が進められ、また、これらの情報を 労働者・求職者が一覧性をもって閲覧できるようになることが望ましい と考えられる。企業による自主的な情報開示を充実させるための基盤整 備や、その先の義務的な情報開示の検討については、厚生労働省として 不断に取り組んでいくことを期待する。
【企業内部への情報開示】→○ 企業内部への労働時間情報の開示については、誰に対して、どのような 目的で開示し、何を改善していくのかを整理することが必要。具体的な 検討例は以下のとおり。→ @ 衛生委員会や過半数代表への時間外・休日労働の状況等の情報開示 ・衛生委員会等の実質的な議論のために情報開示が重要。
・36 協定などを締結する際に過半数代表に情報開示することが必須。 → 実効的な労使交渉を進めていくため、情報開示に取り組むべきと考 えられる。  A 管理職に管理対象となる部署の時間外・休日労働時間の情報開示改善を求める取組 ・管理職による労務管理改善のため、情報開示が有効。 ・管理職は「使用者」とも考えられ、労働基準法での規定が適当かどう かという課題がある。 B 個別の労働者に対する情報開示 ・当該個人の情報を開示するか、事業場全体の情報を開示するかで効果 が異なると考えられる。 ・個人で時間外・休日労働時間を短縮できるのは限られた労働者だけで はないかという課題
がある。  ○ 企業としても、安定的な人手確保や労働者の離職抑制が課題であり、情 報開示により働き方・働かせ方の企業間の競争が生じ、労働条件の改善 につなげうる。こうした情報開示について、できることから取り組むべ きと考えられる。
(3)テレワーク等の柔軟な働き方→○ テレワークに適用できるより柔軟な労働時間管理については以下のとお り。なお、@とAは制度として両立可能。 @ テレワークの実態に合わせたフレックスタイム制 ・フレックスタイム制のコアタイムを拡張し、コアデイ(特定の日につ いて始業と終業時刻を使用者が決定する制度)を導入することで、テ レワーク日と通常勤務日が混在する場合にもフレックスタイム制を導 入できるようにすることが考えられる。 →コアデイの導入はフレックスタイム制の導入促進につながると考えられ、テレワークの場合に限らず、導入すべきと考えられる。 A テレワーク時に利用可能なみなし労働時間制度 ・テレワークの際は、仕事と家庭が近接しており、厳格な労働時間管理 はプライベートに踏み込みかねないこと等を踏まえ、テレワークに対 応したみなし労働時間制度が考えられる。 ・一方で、みなし労働時間制度については長時間労働のリスクも指摘さ れており、テレワークにおける労働時間の実態や、労使のニーズ等を 把握した上で、中長期的な検討が必要と考えられる。
(4)法定労働時間週 44 時間の特例措置→ ○ 法定労働時間を週 44 時間とする特例措置対象事業場について、8割の事 業場がこの特例措置を使っていない現状に鑑みると、概ねその役割を終 えており、業種による状況の違いを踏まえつつ、特例措置の撤廃に向け た検討に取り組むべきと考えられる。
(5)実労働時間規制が適用されない労働者に対する措置→○ 管理監督者等には、労働基準法制定当時から現在に至るまで、特別な健 康・福祉確保措置は設けられていない。 ○ 管理監督者等に対して、より効果的に健康・福祉確保措置を位置付ける ことができるよう、労働基準法以外の法令で規定することを含めて、その内容の検討が必要と考えられる。 ○ 現行の管理監督者等がどういう性質のものかを明らかにし、要件を明確 化することが必要と考えられる。

2 労働からの解放の規制→○ 働き方改革関連法での労働時間規制は、時間外・休日労働時間の上限規 制が中心。「労働からの解放の規制」についても改めて整理・検討を加えた。
(1)休憩→○ 現行制度の休憩時間は以下のとおり。 ・労働時間が6時間を超える場合には少なくとも 45 分の休憩時間 ・労働時間が8時間を超える場合には少なくとも1時間の休憩時間 ・労使協定がある場合を除き、休憩は一斉に付与 ○ 1日8時間を大幅に超えて長時間労働する場合(例えば、1日に 14 時間 以上労働する場合)や、6時間未満の勤務の場合の休憩付与 → 時間外労働が何時間になるかは事前把握が難しいこと、労働者としても休憩より早く帰りたい場合もあること、短時間労働者は拘束時間が長くなることは望まれないケースが多いことなどから、法改正は不要と考えられる。 ○ 休憩の一斉付与原則を維持すべきか。 → 働き方の多様化等を踏まえると、休憩の一斉付与を必ずしも要しな いケースも出てきているのではないか。そうした実情を踏まえ、どの ような手続が必要かを検討することが考えられる。
(2)休日↓
@ 定期的な休日の確保→・現行制度下の法定休日 原則:毎週少なくとも1回の休日を付与 変形休日制:4週間を通じ4日以上の休日を付与。 ・業務の繁忙や業種・職種の特性により長期間の連続勤務を余儀なくされているケースも現存、労災事例も発生。 ※労災保険における精神障害の認定基準:2週間以上にわたって休日のない連続勤務を行ったことが心理的負荷の一つの指標。 ・労災の認定基準である2週間以上の連続勤務を防ぐ観点から、⇒ @ 36 協定に休日労働の条項を設けた場合を含め、「13 日を超える 連続勤務をさせてはならない」旨の規定を労働基準法上に設ける こと A 災害復旧などの真にやむを得ない事情がある場合の例外措置等 を労使の合意で可能とすること について検討が必要と考えられる。
A 法定休日の特定→・休息により労働者の健康を確保するとともに、労働者の私的生活のリ ズムを保つため、あらかじめ法定休日を特定すべきことを法律上に規 定することが必要と考えられる。 ・その際、罰則適用、法定休日の振替え、パートタイム・シフト制労働 者への対応(いつまでに休日を特定するかを含む。)など、実態を十分踏まえた上で、各論点に対する法解釈の明確化が必要と考えられる。
(3)勤務間インターバル ↓
@ 勤務間インターバル制度について→ ・現在の導入企業割合(6.0%)や、諸外国の勤務間インターバル制度 の内容などを踏まえ、抜本的な導入促進と法規制の強化について検討 することが必要と考えられる。 ・研究会では、勤務間インターバル時間を 11 時間とすることを原則としつつ、適用除外や、インターバルをとれなかった日の代替措置などの柔軟な対応を、法令や労使合意によって広く認めるという考え方や、 勤務間インターバル時間は 11 時間よりも短い時間としつつ、柔軟な対 応についてはより絞ったものとするという考え方、規制の適用に経過措置を設け、全面的な施行までに一定の期間を設けるという考え方な どが示されており、より多くの企業が導入しやすい形で制度を開始し、 段階的に実効性を高めていく形が望ましいと考えられる。 ・また、義務化の度合い等についても、労働基準法による強行的な義務 とするという考え方や、労働時間等設定改善法等による措置義務や配 慮義務とするという考え方、現行の抽象的な努力義務規定を具体化す るという考え方などが示されており、様々な手段を考慮した検討が必 要と考えられる。
A つながらない権利→・労働契約上労働時間ではない時間に、仕事が私生活に入り込む問題が 生じることがあるが、欧州などでは「つながらない権利」が提唱され ている。 ・法制化しているフランスの例を見ると、具体的な内容の設定の仕方・範囲は労使で協議して決めており、その内容も企業によって様々。・勤務時間外にどのような連絡までが許容でき、どのようなものは「つながらない権利」として拒否できるのか、総合的な社内ルールについて労使の話合いを促進していくための方策を検討することが必要と考えられる。
(4)年次有給休暇↓
@ 使用者の時季指定義務の日数(現行5日間)や時間単位の年次有給休 暇の日数(現行5日間)の変更 → 制度の趣旨から考えれば、現在の5日間から特段変更すべき必要性 があるとは思われない。 A 計画的・長期間の年次有給休暇取得をできるようにするための手法(ILO132号条約3に規定する「2週間からなる年次有給休暇の連続取得」 の推進など) → 我が国の労働者から長期休暇・バカンスのニーズがどの程度あるのか、計画的な長期間の年次有給休暇の付与が労働者にとって望ましいのか、祝祭日を含めた我が国の労働者の休み方なども踏まえてどうなのか、年次有給休暇の在り方について、中長期的な検討が必要と考えられる。 B 年次有給休暇の時季指定に関する1年間の付与期間の途中に育児休業 から復帰した労働者や、退職する労働者に関する、残りの期間における 労働日と時季指定義務の関係についての取扱いの改善 → 当該付与期間の残り労働日が著しく少なくなっている労働者に対し てまで、他の労働者と同じ日数の時季指定義務を課すことは、使用者や労働者にとって不合理な制約になる場合があることからも、取扱いを改善することが必要と考えられる。 C 年次有給休暇取得時の賃金の算定方法 ・年次有給休暇期間中の賃金については、以下のいずれかで計算。 (1) 労働基準法第 12 条の平均賃金 (2) 所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金 (3) 当該事業場の労働者の過半数代表との労使協定により、健康保 険法上の標準報酬月額の 30 分の1に相当する額 ・(1)や(3)の手法では、計算式上賃金が大きく減額されてしまうことが 生じる。(1)や(3)の手法が必要な状況を考慮しつつ、原則として(2) の手法をとるようにしていくべきと考えられる。

3 割増賃金規制
(1)割増賃金の趣旨・目的等

○ 時間外労働・休日労働の割増賃金の目的→ @ 通常の勤務時間とは異なる時間外・休日・深夜労働をした場合の労 働者への補償 A 使用者に対して経済的負担を課すことによる、これらの労働の抑制
○ 割増賃金の意義や見直しの方向性については様々な意見があったが、ど のような方策をとるにせよ十分なエビデンスが必要。割増賃金に係る実 態把握を含めた情報収集を進め、中長期的に検討していくことが必要と 考えられる。
(2)副業・兼業の場合の割増賃金→○ 現行制度では、労働者が副業・兼業を行う場合、健康管理と割増賃金計 算の双方で、労働時間を通算しなければならない。 ○ 厚生労働省のガイドラインで管理モデルなどを示しているが、割増賃金 の通算については、本業・副業双方の使用者が、本業・副業先の労働時間を1日単位で細かく労働時間を管理しなければならない(通常の労働時間管理が概ね月単位)ことなどから負担が重く、雇用型の副業・兼業の許可や受入れが難しいなどの指摘がある。 ※ 米国、フランス、ドイツ、イギリスでは副業・兼業を行う場合の割 増賃金について労働時間の通算を行う仕組みとはなっていない。 → 労働者の健康確保のための労働時間の通算は維持しつつ、割増賃金 の支払いについては通算を要しないよう、制度改正に取り組むべきと 考えられる。
【留意事項】→・割増賃金の通算対応を必要としなくする分、企業はこれまで以上に 健康確保に万全を尽くすべきと考えられる。 ・同一の使用者の命令に基づき複数の事業者の下で働いているような場合に割増賃金規制を逃れることを防止する制度設計が必要と考えられる。

次回は新たに「社会保障審議会障害者部会(第143回)・こども家庭審議会障害児支援部会(第8回)合同会議の資料について」からです。

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