令和6年第11回経済財政諮問会議 [2024年09月11日(Wed)]
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令和6年第11回経済財政諮問会議(令和6年7月29日)
議事(1)中長期の経済財政に関する試算 (2)予算の全体像 (3)令和7年度予算の概算要求基準 https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2024/0729/agenda.html ◎配付資料1 経済・財政・社会保障に関する長期推計(内閣府) 1.はじめに →「経済財政運営と改革の基本方針2023」(2023年6月16日閣議決定)に、中期的な経財政の枠組みの検討に関する規定が盛り込まれたことを受け、2023年秋以降の経済財政諮問会議では、中長期の重点課題に関する集中的な議論が行われた。その際の主 たる問題意識は、人口減少が2030年代以降に本格化するという見通しを前提に、それ以前の2020年代後半のうちに、将来の持続性確保につながる経済社会システムをいか にして構築するか、というものであった。 こうした中期的な枠組みの検討に当たり、2024年1月22日の経済財政諮問会議では、有識者議員より、「少子高齢化が加速する日本経済において、20〜30年後を見据えた、より長期の試算を示した上で、中長期的に取り組むべき課題についてバックキャストすべき」との提案がなされた。 定量的な将来展望については、内閣府はこれまでも、向こう10年間程度を試算期間 とする「中長期の経済財政に関する試算」を公表してきているが、20〜30年後を見据えるには、それとは別に、より長期の経済・財政・社会保障の展望を示す必要が生じた。折しも2023年7月に国立社会保障・人口問題研究所より新しい「将来推計人口」が公表されたタイミングであり、年金については次期財政検証の公表が予定されていた中で、医療・介護等の社会保障や財政の姿についても、経済と一体的に長期の姿を展望することが求められた。 これを受け、同年2月29日の経済財政諮問会議において、まず2060年度までを対象 期間とする長期の経済の姿を示したところ、有識者議員に加え、岸田総理より「人口減少が本格化する2030年までに、必要となる制度改革の実施を目指して、(中略)今後 3年程度の政策パッケージを骨太方針に盛り込んでまいる。その際には、経済・財政・ 社会保障の持続可能性を確保するための条件を明らかにした上で議論を進めることが 重要」との方針が示された。 その上で、同年4月2日の経済財政諮問会議に、2月の経済前提に基づく、2060年 度までの財政と社会保障の姿を示した「経済・財政・社会保障に関する長期推計」を提出するに至った。 本稿は、長期推計に用いたモデルや試算の前提の詳細、長期推計で示された結果の詳細を解説するもの。第2章では長期推計モデルの概要について、第3章では経済の前提と試算結果について、第4章では社 会保障・財政の想定について、その詳細を説明。第5章では社会保障・財政の姿 、第6章では長期金利の想定に係る感応度分析の詳細を解説する。最後に、 第7章において、長期推計を用いた政策的なインプリケーションと、今後の課題及び改善点等について考察する。なお、個々の計数については、一定の想定を置いて機械 的に試算したものであるため、相当の幅をもって理解する必要がある。 2.長期推計モデルの構造と推計の概要 →中長期試算において用いられている「経済財政モデル」は、経済・財政・社会保障が相互作用する構造となっているが、長期推計モデルについては、向こう 20〜30 年後の長期にわたって経済・財政・社会保障が安定的に推移する条件を検討するという使用目的に照らし、供給面から経済の姿を規定し、そこから求められる社会保障・ 財政の姿を計算する構造を有している。その基本的な考え方は、OECDの対日経済審査報告書(2021 年、2024 年)の長期推計で用いられているモデルと同様のものであり、また、米国CBOやEUなどにおける長期推計についても、同様に供給面から経済等が決まるモデルとなっている。 本長期推計は、2060 年度までを推計期間としている。これは、人口想定の違いが 労働市場に影響を強く及ぼすのが 2040 年代後半以降であることや、いわゆる団塊ジュニア(1971〜1974 年生まれ)の全てが 85 歳(介護費への影響が大きいとされる年齢)に到達すること等を踏まえたもの。 長期推計では、中長期試算における3つのケースを延伸する形で、以下の3つのシ ナリオを設定した。 @ 過去投影シナリオ:中長期試算のベースラインケースを延伸(以下「@」)。 A 成長移行シナリオ:中長期試算の参考ケースを延伸(以下「A」)。 B 高成長実現シナリオ:中長期試算の成長実現ケースを延伸(以下「B」)。 中長期試算期間(2033 年度まで、以下同様)においては、各種の数値は中長期試算のものと合致し、中長期試算期間以降(2034 年度以降、以下同様)は、全要素生産性(TFP)、人口、労働参加率等の想定をもとに、潜在成長率等を計算している。 社会保障については、加速する少子高齢化・人口減少の中で、給付と負担のバラ ンスの確保が引き続き課題となる「医療・介護」に焦点を当てている。物価・賃金動向及び人口要因等に応じて、医療・介護の給付額を推計した上で、現行制度に照らして公費負担を求め、給付額に対する残差として保険料負担を計算。なお、年金については、保険料負担率の上限が決められている点、収支のバランスはマクロスライド調整のように負担から給付を調節する機能がビルドインされており、また 100 年単位の制度の持続可能性が財政検証によって別途確認される点から、長期推計では 給付と負担のバランスは扱わず、公費負担分のみを計算している。 財政については、経済の姿と整合的な形で、上記の年金・医療・介護の公費負担に加え、その他の歳出及び歳入についても同様に一定の前提の下で延伸させ、財政健全化目標として掲げられている国・地方の基礎的財政収支(以下、「PB」という)および公債等残高の姿を計算している。その際、金利については、名目GDP成長率を 一定幅で上回るとする外生的な設定を置いている。なお、ここでの経済の前提や、社会保障給付費の伸びの想定などを変化させることで、PBや公債等残高に与える影響 についての分析が可能である。 3.経済の姿 (1)全要素生産性(TFP)→TFP上昇率は、中長期試算のそれぞれのケースにおける値で延伸している。なお、 中長期試算で取りまとめられている先行研究によれば、@からAのTFP上昇率への 引き上げ(+0.6%pt)を実現するためには、雇用の正規化、教育訓練投資、研究開発投資、企業の新陳代謝の向上などの取組が必要になると考えられる。⇒ 図表1: TFP上昇率の想定 (2)人口 →国立社会保障・人口問題研究所による「日本の将来推計人口(令和 5年推計)」を用いている。各シナリオの人口想定はそれぞれ、@では「出生中位(死亡中位)推計」、Aでは「出生高位(死亡中位)推計」、Bでは「合計特殊出生率 1.80(2070 年),外国人入国超過数本推計仮定(死亡中位)」による(図表2) (3)労働参加率・労働時間・失業率 →性別・年齢階層別の労働参加率については、中長期試算期間中は、それぞれのケー スの労働参加率の想定に依拠している。すなわち、@では「平成30年度雇用政策研究 会(2019年度)」において示された「経済成長と労働参加が一定程度進むケース」の労働力需給推計を、A及びBでは「経済成長と労働参加が進むケース」の労働力需給推 計を踏まえた推移となっている。 中長期試算期間以降、@では、引き続き、「経済成長と労働参加が一定程度進むケー ス」ケースの推移に準拠したうえで、2040年以降は一定になると想定している。A及びBでは、2045年度にかけて、60歳以上74歳未満の5歳ごとの各年齢階級における労 働参加率が、2025年度時点の5歳若い年齢階級の労働参加率と等しくなるものとし、 2045年度以降は一定になると想定している。この想定は、2023年の60歳以上の各年齢階級における労働参加率が、2003年時点の、それぞれ5歳若い年齢階級のそれと概ね等しいという実績を踏まえている。(図表3)。 性別・年齢階層別の労働時間は、中長期試算期間及びそれ以降について、いずれの シナリオにおいても、2022年度時点の実績値(労働力調査年報による年平均)から一 定としている。年齢階層別の人口比率が変化し、労働時間の短い高齢者層の割合が高くなることで、全体での平均的な労働時間は低下する傾向がある。 マクロの失業率については、中長期試算期間は試算値とし、総失業者数に対する性 別・年齢階層別の失業者数の比率が一定として、性別・年齢階層別の就業者数を計算 している。またAの失業率はBと同等としている。中長期試算期間以降は、マクロの 失業率が2033年度値で一定として、同等の想定をおいて、性別・年齢階層別の就業者数を計算している。 (4)潜在成長率 →潜在成長率については、中長期試算と同様に、コブ=ダグラス型の生産関数に基づいている。中長期試算期間以降については、上記の前提から、各シナリオでの潜在成長率を計算して求めている。なお、資本による潜在成長力への寄与については、均衡資本ストックが生産性及び労働力人口に依存するとの考え方に基づき、過去投影シナリオを基準として、TFP上昇率の寄与及び労働寄与の規模の増分に応じて高まるよう に機械的に計算している。 各シナリオにおける労働参加率の想定の違いや、人口(出生率)の想定の違いによ る潜在成長率の影響は図表4の通りである。労働参加率については2020年代から2040 年代まで年率0.1〜0.2%pt近くの押上げ効果が見られるが、2045年度以降は横ばいとなる想定を置いているため、2050年代での影響はなくなる。一方で、出生率の変化は、 2040年代以降で強い押上げ効果をもたらすことが分かる。 これらの結果から、各年代における潜在成長率は、図表5のように求まる。2030年 代以降において、生産年齢人口の減少による押下げが大きくなり、@ではゼロ近傍の 成長率となる。一方で、労働参加率の向上に加え、出生率も高まることで、A及びB で見られるような、長期にわたり1%を上回る潜在成長率が維持される姿が描かれる。⇒図表4: 労働参加率、出生率の想定の違いによる潜在成長率への影響(年度平均) 図表5:潜在成長率(年度平均) (5)物価上昇率・GDPデフレータ変化率 →物価上昇率(消費者物価(CPI)上昇率)については、中長期試算期間以降、中 長期試算における各シナリオのCPI上昇率を延伸している。すなわち、@では0.8% (2013年〜2019年の平均)、A及びBでは2%(物価安定目標の達成・維持が実現)となると想定。 CPI上昇率とGDPデフレータ変化率の差については、短中期的には各需要項目 の比重及び各項目のデフレータによる部分があるものの、長期的には統計手法の違い等による構造的な違いのみが残ると仮定し、中長期試算期間以後は、CPI上昇率と民間 最終消費デフレータ変化率の平均的な差である0.3%pt程度で一定になると想定。これは、年金財政検証の経済前提における考え方や規模と同様である。中長期 試算期間以降、5年程度かけて、上記の関係に収束するものとして計算している。 (6)実質・名目GDPの姿 →以上に述べた前提の下、実質・名目GDP成長率の推移を図示したものが図表6。2025〜2060年度での平均の実質GDP成長率、一人当たり実質GDP成長率及 び名目GDP成長率は図表7で示す。AないしはBの名目GDP成長率が実現すれば、 2040年頃に1000兆円規模の経済となる(図表8)。また、一人当たり実質GDPの水準について、OECDによる長期推計10におけるベースラインでの推計値と比較したところ、 Aではドイツ並み、Bでは米国やノルウェーと並ぶ水準となる(図表9)。⇒図表6: 実質GDP成長率、名目GDP成長率の姿 図表7: 2025〜2060 年度の平均成長率(年率) 図表8: 名目GDPの推移 図表9:一人当たり実質GDP水準(万ドル、購買力 2015 年 US ドルベース) (7)賃金上昇率 →賃金上昇率(雇用者一人当たりの賃金・俸給総額の変化率)については、中長期試算期間中は同試算値を援用する。Aについては、@及びBの賃金上昇率の差を就業者 一人当たりの名目GDP成長率で按分して求めているが、結果として、AとBの賃金 上昇率の差はこれらの名目GDP成長率の差にほぼ相当する。中長期試算期間以降は、 賃金上昇率は就業者一人当たり名目GDPの変化率と同程度として計算している。 (8)長期金利 →長期金利(10年物国債利回り)については、中長期試算期間中、中長期試算の値を援用するが、Aについては、賃金上昇率と同様の考え方で、@とBの長期金利の差と 名目GDP成長率の差の関係から按分して求めている。中長期試算期間以降、3年程 度をかけて、名目GDP成長率より+0.6%pt上回って推移する姿となると想定。なお、0.6%ptという幅は、中長期試算のベースラインケースにおける最終年度での長期金利と名目GDP成長率の差である。同試算の成長実現ケースでは、リスクプレミアムの低下が作用し、この差は0.3%pt程度まで小さくなるが、財政の健全性を検討する長期推計では、A及びBにおいても、ベースラインと同程度の差となるとの想定。なお、1995年1-3月期から2023年10-12月期までの四半期ごとの名目 GDP成長率と長期金利の差の平均が0.6%pt程度である。 後に確認するように、長期金利と名目GDP成長率の差は、いわゆる「ドーマー条件」に見られるように、債務残高対GDP比の動向を決定する重要な要素であるため、 第6章において、長期金利と名目GDP成長率の差を変化させた場合の感応度分析を 行うこととした。 4.社会保障・財政の想定 →第3章で求めた経済シナリオを元に、社会保障(医療・介護)に係る費用・給付費 及び保険料や公費負担を求めるとともに、財政健全化目標に係る国・地方の基礎的財 政収支(PB)および公債等残高を求める。PB及び公債等残高の定義及び数値については、中長期試算の「復旧・復興対策及びGX対策の経費及び財源の金額を除いたベース」に準拠する。また、年金・医療・介護の給付費や保険制度間の移転等の詳細 については、「経済財政モデル(2018年度版)」の方程式群に基づき計算しているので、 中長期試算と整合的なものとなっている。 (1)医療 →医療保険に関する給付費等については、厚生労働省「医療保険に関する基礎資料」の実績値を基に、各保険制度における年齢階層毎の被保険者数、医療費及び医療給付費に加え、各保険制度毎の後期高齢者支援金、保険料負担及び公費(中央・地方)負担をもとに、公費負担率や支援金の算定方法等の現行の制度が維持されるものとし、 保険料負担(雇主負担を含む)については、給付費と公費負担の残差から計算。なお、本推計における給付費については、保険制度に基づくものに限定しており、 医療扶助や地方単独事業等による公的給付等は含んでいない。また、介護保険への移転分については、介護給付費の保険負担に含まれている。 医療給付費総額については、各保険制度の年齢階層毎の被保険者数に一人当たりの 医療給付費を乗じて求める。各保険制度における被保険者数は、年齢階層ごとの人口 に対する比率を一定として延伸する。各保険制度の年齢階層毎の一人当たり医療給付 費については、2021年度までは実績値を用い、国費の決算・予算が明確になっている 2022年度から2024年度については、2021年度値を基準として、決算・予算の伸びと整 合的となるように調整している。2025年度以降については、「単価要因」と「その他要因」から計算する。「単価要因」は、消費者物価上昇率及び賃金上昇率の加重平均とし て、費用構造に鑑み比重をそれぞれ0.5として計算している。「その他要因」は、医療 の高度化等を含むものであり、基本ケースでは年率1%としている。これは、一人当 たりの医療費の伸びと賃金・物価上昇率の差分の長期平均と同程度である。なお、高額医療へのシフトが近年進んでいること等に鑑み、中長期試算期間以降で、「その他要因」を2%とするケースを推計。一方、「その他要因」による増加を相殺する給付 と負担の改革効果に相当するものとして、「その他要因」を0%としたケースの推計も 併せて行う。これは、社会保障関係費の歳出について、経済・物価動向等を踏まえ、「実質的な増加を高齢化による増加分に相当する伸びにおさめる」としていたこれまでの歳出の目安に類似するものであり、この改革を給付抑制で対応するものと仮定して計算することに相当する。なお、これは推計上の便宜であり、医療が高度化していくこと自体を抑えることや、医療のみを改革の対象とすること等を意味しない。 以上の想定を元に、医療給付費の伸びを推計したものが図表10。単価要因(物価・賃金上昇率の加重平均)については、A・Bで大きくなるが、その一方で、名目 GDP成長率との関係で見ると、物価上昇率の寄与が相対的に小さくなるため、Bで は名目GDP成長率よりも小さくなる。逆に、@については、単価要因が名目GDP 成長率を上回る。人口・高齢化要因は、2030年代でマイナス寄与になるが、これは、 人口全体が縮小する寄与が大きくなるためである。なお、2030年代以降、それぞれの シナリオで人口・高齢化要因による寄与が違うのは、人口想定がそれぞれ異なり、更 に、乳幼児期の一人当たり医療給付費が比較的大きいことによる。いずれのケースも、「その他要因」による寄与もあり、名目GDP成長率よりも高い伸びとなる。⇒ 図表10:医療給付費の伸び率と要因分解 (「その他要因」1%のケース) (2)介護 →介護給付費や負担の計算には、まず、「介護給付費等実態調査(統計)」の年齢階層毎の介護給付費を年齢階層毎の人口で除して人口一人当たり介護給付費を求め、将来 の年齢階層別の人口と一人当たり介護給付費とを乗じて、各年度の年齢階層別の給付費を求める。次に、年齢階層別の給付費の総和の伸び率を、以下で示すの給付費総額に用いて、各年度の介護給付費総額を求める。介護給付費総額、保険料負担、中央政府負担及び他制度からの移転(第2号被保険者に係る介護納付金)については、国立 社会保障・人口問題研究所「社会保障費用統計」における介護保険の給付費を用い、 地方政府による負担はこれらの残差として求め、給付費に対する公費(中央・地方) 負担率及び保険料負担率が以後も一定として計算している。 年齢階層毎の人口一人当たり介護給付費の伸び率については、2021年度までは実績 値を用い、国費の決算・予算が明確になっている2022年度から2024年度までは、2021 年度値を基準として、決算・予算の伸びと整合的となるように調整している。2025年 度以降については、「単価要因」のみ考慮し、費用構造に鑑み、消費者物価指数×0.35 +賃金上昇率×0.65として計算している。 以上の想定を元に、介護給付費の伸びを推計したものが図表11。単価要因に ついては、医療給付費における単価要因の傾向と同様である。人口・高齢化要因は2040 年代まで徐々に小さくなるが、いわゆる団塊ジュニア世代(1971〜1974年生まれ)が 80歳以上となる2050年代で再び大きくなる。結果、一貫して高齢者人口の伸びが押上 げ効果となり、いずれのケースでも介護給付費の伸びは名目GDP成長率よりも高く なるが、成長率が高いほど両者の差は小さくなる。⇒ 図表11:介護給付費の伸び率と要因分解 (3)年金 →年金給付費については、「2019(令和元)財政検証」のケースI (A、B)及びX(@) に基づき、物価・賃金上昇率を置き換えて計算している。なお、各シナリオでの人口 想定等の違いについては、2060年度までで高齢者層の人口が変化しない点、また給付 水準の自動調整(マクロ経済スライド)が2040年代前半から中頃には終了する点から、 年金受給者数及び給付調整率への影響は捨象している。 年金の公費負担(中央政府)については、基礎年金給付費の2分の1が中央政府による負担として、上記で求めた基礎年金給付額の伸び率を2024年度までの年金の決算 額・予算額に接続して計算している。 (4)その他の歳出 →上記の年金・医療・介護給付費に係るもの以外の中央政府・地方政府における基礎 的財政収支に係る歳出(PB歳出)については、中長期試算期間において、基本的に は物価上昇率に基づいて増加すると設定されてため、AはBと基本的には合致する13 こととなる。中長期試算期間以降は、2033年度値を名目GDP成長率で延伸している。 (5)歳入 →中央政府・地方政府における基礎的財政収支に係る歳入(PB歳入)については、 中長期試算期間においてはPBとPB歳出の差で求め、中長期試算期間以降は、2033 年度値を名目GDP成長率で延伸している。 (6)公債等残高 →公債等残高については、中長期試算期間中は、中長期試算の値を援用している。中 長期試算期間以降、t 年度の公債等残高については、 公債等残高(t)=公債等残高(t-1)-PB(t)+ 公債等残高(t-1)×実効金利(t) という式により計算している。ここで、実効金利は、長期金利の前方 9 か年移動平均 値として計算している。これは、財務省「普通国債残高の残存期間別構成の推移」等 により、国債の平均残存期間が概ね9年程度であることから想定を置いている14。 5.社会保障・財政の姿 (1)社会保障(医療・介護)の姿 →第3章の経済前提及び第4章の想定から、3つの経済シナリオにおいて、3つの医 療給付費の伸び方のケースについて、医療・介護の給付と負担の推計をしたものが図表 12。 医療の「その他要因」が1%(灰実線)ないしは2%(赤点線)の給付と負担の 改革を織り込まないケースでは、いずれのシナリオにおいても、給付費対GDP比が 上昇する姿となっている。なお、高成長のシナリオほど、給付費対GDP比での増加 は緩やかとなる。 一方で、医療給付費の「その他要因」による増加分を相殺する給付と負担の改革を行 うケース(青点線)を見ると、給付費対GDP比は、Aでは 2033 年度以降横ばいと なり、Bでは低下し、いずれのシナリオでも保険料負担対GDP比が低下していく姿 となり、社会保障制度の長期的な安定性が確保されることとなる。⇒ 図表12:医療・介護の給付と負担(対GDP比) (2)財政の姿 →同様に、3つの経済シナリオにおいて、3つの医療給付費の伸び方のケースについてPB対GDP比及び公債等残高対GDP比を推計したものが、図表 13 及び 14 である。 PB対GDP比については、給付と負担の改革をしなければ、いずれのケースでもPB対GDP比は長期的に悪化していくことになる。Aにおいて、その他要因が 1%ではPB黒字を維持しているが、その他要因が 2%となると、2050 年代中頃にPB赤字に再度転じる。給付と負担の改革を中長期試算期間以降に行う場合、A及びB では、PB対GDP比の黒字幅を維持・拡大する姿となる。 公債等残高対GDP比については、@ではいずれのケースも発散に向かい、Bについては、いずれのケースでも一定規模のPB黒字幅があることから、安定的に低下する 姿となる。Aでは、給付と負担の改革を継続することで、PBの黒字幅が維持され、 安定的に公債等残高対GDPが低下する姿となる。「その他要因」が2%の場合、P Bが赤字になるのが 2050 年代中頃であるが、公債等残高対GDP比が上昇に転じる のは 2040 年代前半である。また、「その他要因」が1%のケースでは、黒字を維持しているにも関わらず、2040 年代中頃に公債等残高対GDP比が増加に転じる。これは、いわゆる「ドーマー条件」からも示されるとおり、実効金利が名目GDP成長 率よりも高いことから、一定のPB対GDP比の黒字幅がないと利払い費分をまかなえず、公債等残高対GDP比が上昇するためである。例えば、公債等残高対GDP比 及び実効金利と名目GDP成長率の差がそれぞれ 170%、0.6%pt(Aの各ケースで の 2030−50 年代における平均値に概ね該当)であるとすれば、公債等残高対GDP 比の上昇・低下の閾値となるPB対GDP比は、0.6%×170%≒1%程度となり、 先述の反転時期と整合的な姿となる。⇒ 図表13:PB対GDP比の推移 図表14:公債等残高対GDP比の推移 6.感応度分析 (長期金利の変化) →第5章で確認したように、長期金利と名目GDP成長率の関係の想定は、公債等残 高対GDPの挙動に影響を与える。そこで、本章では、3つの経済シナリオにて、社 会保障の改革効果を含むケースをベースとして、長期金利と名目GDP成長率の差を変化させて、その影響を分析する(図表 15)。長期金利について、基本ケースとして 名目GDP成長率+0.6%pt(灰実線)と置いているところを、名目GDP成長率+ 1.0%pt(赤点線)、名目GDP成長率±0%pt(黄点線)、名目GDP成長率−0.5% pt(青点線)として計算。 まず@では、社会保障の改革を継続し、かつ金利が成長率を下回る想定にもかかわらず、公債等残高対GDP比は増加し続ける姿となる。なお、@の名目GDP成長 率は 0%台半ばであるため、この場合の長期金利は 0%近傍の値である。 また、Aでは、第5章で確認したように、社会保障の改革を継続した場合、基本 ケースでは安定的に公債等残高対GDP比が下がるが、金利が更に上がる場合では、 上昇に転ずることとなる。金利のショックに対する財政の強靭性を更に高めるために は、Bで示されるような更なる高成長と、PBの黒字幅が重要となる。⇒ 図表15:長期金利の想定の違いによる公債等残高対GDP比の変化 7.政策的なインプリケーション及び今後の課題等について→本長期推計より、長期的に経済成長を遂げるには、生産性の向上、労働参加の拡大、出生率の上昇等による供給力の強化と、成長と分配の好循環の実現が必要、その際、財政や社会保障(医療・介護)の長期安定性を確保するには、現状のまま では長期的に 0%程度と見込まれる実質GDP成長率を1%以上に引き上げていくこ とが必要であることが示された。 医療・介護給付費の伸びは、高齢化や医療の高度化等により自然体では長期的に経 済の伸びを上回る見込みであるが、これに対し、実質1%超の成長の下、毎年の医療の高度化等のその他要因による増加を相殺する給付と負担の改革効果を実現できれば、制度の長期的安定性の確保が見通せる結果となった。なお、本推計では、給付と 負担に係る改革は、中長期試算期間以降に行われるものと想定しているが、中長期試 算期間中はGDP比が増加している姿となっており、医療・介護の更なる持続可能性 を確保するためには、給付費対GDP比の上昇基調に対する改革に取り組んでいくことが重要であり、中長期試算期間中においても、「全世代型社会保障構築を目指す改 革の道筋(改革工程)」に掲げられた改革を着実に実現していくなどの対応が必要。 財政について、高い成長の下でも、長期的には社会保障費の増加によりPBの黒字幅は縮小し、赤字となる可能性もある。更に、金利が成長率よりも高い場合、PBの 黒字幅が一定水準を切ると、公債等残高対GDP比は上昇する。今後の経済財政政策 は、官民連携による投資拡大やEBPMによるワイズスペンディングの徹底、社会保 障の給付と負担の改革等により、成長力強化を図りつつ、持続可能な財政構造を確保 していくことが重要である。 以上が、本長期推計によるインプリケーションである。供給側から決まるモデルで あるため、人口想定や全要素生産性の想定、歳出の伸び方の想定等を変更すること で、様々なシナリオを容易に確認することが出来るが、その一方で、需要項目ごとの 状況、家計の姿など、セミマクロ、ミクロの観点に対しての推計・分析は困難である ため、他のモデルなども併用して更にきめ細かい分析につなげていくことが重要であ る。 次回は新たに「第2回地域共生社会の在り方検討会議 資料」からです。 |



