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第57回厚生科学審議会疾病対策部会指定難病検討委員会 [2024年06月01日(Sat)]
第57回厚生科学審議会疾病対策部会指定難病検討委員会(令和6年3月25日)
議事 (1) 疾病ごとの個別検討(新規の疾病追加)について (2) 疾病ごとの個別検討(診断基準等のアップデート)について
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_39139.html
◎資料2−1指定難病の診断基準等のアップデート案について情報提供のあった疾病(一覧表)→1から85まで。「番号」「告示番号」「告示病名」「疾患群」「告示病名の変更」「診断基準の変更」「重症度分類の変更」の一覧表。


◎資 料 2 − 2指定難病の診断基準等のアップデート案について情報提供のあ った疾病(個票(見え消し))(第 57 回指定難病検討委員会に おいて検討する疾病)
○9 神経有棘赤血球症
→1.概要⇒末梢血に有棘赤血球を認め何らかの神経・精神症状を示す疾患群を神経有棘赤血球症と総称する。有棘赤血球舞踏病と McLeod 症候群が大半を占めるが、ハンチントン病類症 2 型(Huntington disease-like2)やパンテトン酸キナーゼ関連神経変性症(Pahtothenate kinase associated neurodegeneration:PKAN;NBIA1)なども本症の一つである。ハンチントン病類症 2 型は我が国では報告がなく、PKAN は(遺伝性ジストニア、指定難病 120) に含まれるため、神経有棘赤血球症の対象疾患は有棘赤血球舞踏病と McLeod 症候群である。 臨床症状としては、神経学的には随意運動障害、舞踏運動を中心とする不随意運動、様々な精神症状とを認める。我が国での疫学調査では全国で約 100 人程度の患者が見出されているが、詳細は不明である。 2.原因⇒神経有棘赤血球症の多くは病因遺伝子が解明されているが、遺伝子産物の機能については不明な点が多い。 有棘赤血球舞踏病の病因遺伝子は VPS13A、McLeod 症候群の病因遺伝子は XK である。 3.症状⇒運動障害としては嚥下障害、構音・構語障害、歩行障害の頻度が高い。不随意運動では口の周りに見られる 不随意運動が目立ち、多くは舞踏運動とジストニアである。口と舌の不随意運動により、咬唇や咬舌を来たし、さらに、上肢・手で口角を拭うような不随意運動により、舌・口部の変形を来す。また、歩行時の体幹を屈曲するような舞踏運動の頻度が高い。認知障害は比較的軽度であるが、衝動性制御障害や強迫性障害、固執性などの精神症状を示すことが多い。 4.治療法 ⇒根治療法はない。対症療法が主体で、舞踏運動や精神症状に対しては抗精神病薬などが、てんかん発作に 対しては抗てんかん薬を使用する。 5.予後⇒進行性疾患で予後不良である。本症の自然歴は不明な点が多い。

○10 シャルコー・マリー・トゥース病→1.概要⇒ シャルコー・マリー・トゥース病(Charcot-Marie-Tooth disease:CMT)は、臨床症状、電気生理学的検査所見、神経病理所見に基づいて、脱髄型、軸索型、中間型に大別され、さらにいくつかのサブタイプに分けられる。脱髄型 CMT では、一般的に神経伝導速度は 38m/s 以下、活動電位はほぼ正常又は軽度低下を示し、腓腹神経所見では節性脱髄、onion bulb の形成を認める。軸索型 CMT では、神経伝導速度は正常または軽度低下を示すが、活動電位は明らかに低下し、腓腹神経所見では有髄線維の著明な減少を示す。 いずれとも分けられない場合は、中間型 CMT としている。原因遺伝子が次々と明らかになり、その病態の 解明が進んでいる。 2.原因⇒これまでに 100 種類以上の CMT 原因遺伝子が特定されている。同一の遺伝子であっても、異なる臨床型 を示す場合がある。我が国では CMT の遺伝子診断に関し、大きな進展が見られている。本邦では、PMP22 重複による CMT1A が最も多いサブタイプで、GJB1、 MFN2、 MPZ 遺伝子変異の頻度がそれに続く。3.症状⇒CMT は、一般的に四肢、特に下肢遠位部の筋力低下と感覚障害を示す疾患であるが、近年の原因遺伝子の解明に伴い中枢神経系の障害も含む多様な臨床症状が明らかとなってきている。まれに、四肢近位部優位の筋力低下・筋萎縮を示す例もある。自律神経障害が前面に出るタイプもある。 4.治療法⇒CMT の根本的な治療法は確立しておらず、理学療法、足関節変形などに対する手術療法など対症療法が主である。ロボットスーツ「HALレジスタードマーク」によるリハビリテーション療法も有効とされる。 治療法の開発に関しては、薬物療法、遺伝子治療の研究が進められ、欧米ではいくつかの臨床試験が進行中である。 5.予後⇒ CMT 全体に共通する一般的な合併症としては、腰痛、便秘、足関節拘縮などが多く見られる。遺伝子異常のタイプによって、声帯麻痺、自律神経障害(排尿障害、空咳、瞳孔異常)、視力障害、錐体路障害、糖尿病、脂質代謝異常症などの合併が見られる。重症例では、呼吸不全を来たし、人工呼吸器を必要とする場合もある。

○12 先天性筋無力症候群→1.概要⇒ 先天性筋無力症候群(CMS)は、神経筋接合部分子の先天的な欠損及び機能異常により、筋力低下や易疲労性を来す疾患。2023 年 9 月末までに 36 種類の遺伝子の病的バリアントが同定されてきた。 前シナプス障害・シナプス基底膜障害・後シナプス障害に大分類されるが、大分類の障害部位が不明の病態も多い。また、病態・臨床症状・治療に応じて 14 種類の病態に細分類され、メジャーな病態として、「終板アセチルコリン受容体欠損症」「スローチャンネル症候群」「終板アセチルコリンエステラーゼ欠損症」「神経筋接合部シグナル分子欠損」「先天性 Lambert-Eaton 筋無力症候群」「糖化酵素欠損」があげられる。2.原因⇒ 神経筋接合部で機能をする多数の分子のうちの1つの分子をコードする遺伝子の配列が正常者と異なる ことによって、十分な量の分子を作ることができない、あるいはその分子が本来持つ機能を果たせなくなる ことが原因である。原因となる欠損分子には、36 種類(AGRN, ALG14, ALG2, CHAT, CHD8, CHRNA1, CHRNB1, CHRND, CHRNE, CHRNG, COL13A1, COLQ, DOK7, DPAGT1, GFPT1, GMPPB, LAMA5, LAMB2, LRP4, MUSK, MYO9A, PLEC, PREPL, PURA, RAPSN, RPH3A, SCN4A, SLC18A3, SLC25A1, SLC5A7, SNAP25, SYT2, TEFM, TOR1AIP1, UNC13A, VAMP1) が知られている。スローチャンネル症候群、SYT2-CMS の一部、SNAP25-CMS, PURA-CMS が常染色体顕性(優性)遺伝形式で、他は常染色体潜性(劣性)遺伝形式である。 3.症状⇒多くの例において、出生直後に泣く力が弱かったり、母乳を吸う力が弱かったりという軽度の筋力低下から、呼吸困難のために人工呼吸器が必要になるという重度の筋力低下まで認められる。出生直後のこれらの症状がいったん軽快し、幼少児期に再度、持続的な筋力低下や、運動するにつれて筋力が弱くなる筋無力症状が出る。筋無力症状による筋力低下の日内変動(午前中は筋力が強いが午後になると筋力がなくなる。)が明らかではなく、むしろ日ごとに筋力が異なる日差変動が認められることも多い。発達障害を認め る病型や発作性無呼吸を認める病型もある。PLEC-CMS, GMPPB-CMS, PURA-CMS, TEFM-CMS のよう に神経筋接合部以外の症状が前景に立ち CMS 症状の存在に気づきにくい病態もある。 診断上、眼球運動障害の有無は問わない。出生直後の一時的 な筋力低下を含めて2歳以下に何らかの筋無力症状を発症することが多いが、スローチャンネル症候群に おいては成人発症のことも多い。また、口蓋の位置が高かったり、両耳の付け根が高かったりという顔面小奇形や、四肢の筋萎縮を認めることも多い。 4.治療法⇒CMS に対して認可された薬剤は存在しないが、病態に応じて有効な薬剤が存在する。エフェドリン、サルブタモールは多くの CMS 病態に有効である。しかし、抗コリンエステラーゼ剤は、スローチ ャンネル症候群と DOK7-CMS には無効であり、COLQ-CMS では重篤な副作用が報告されている。また、スローチャンネル症候群に対してキニジンやフルオキセチン、ナトリウムチャンネル筋無力症に対 してアセタゾラミドを使用する。 5.予後⇒進行性はないが症状は継続することが多い。呼吸筋の筋力低下や易疲労性に伴う呼吸困難を認めることがあり、特に「発作性無呼吸が複数の病態に求められ、乳児突然死症候群の原因となるため睡眠時呼吸モニターが必須である。嚥下障害による誤嚥性肺炎に注意が必要。脊柱筋の脱力による脊柱側湾があり、必要に応じて手術による矯正が必要である。

○25 進行性多巣性白質脳症→1.概要⇒多くの人に潜伏感染している JCポリオ―マウイルスが、免疫力が低下した状況で脳内に移行して多発性の脱髄病巣を来す疾患である。 本邦での進行性多巣性白質脳症(Progressive Multifocal Leukoencephalopathy:PML)の基礎疾患として は、血液系悪性腫瘍膠原病/結合織病が多く、HIV 感染症などが続く。 欧米では PML の基礎疾患の多くを HIV 感染症が占めるが(約 85%)、本邦ではその基礎疾患は比較的 多岐にわたる結果である。 JCポリオ―マウイルスの初感染は幼・小児期に起こり、成人の抗体保有率は全人口の 80%程 度である。 2.原因⇒JCポリオ―マウイルスの初感染は無症候の場合が多く、その後、主に腎臓の集合管上皮等 に持続感染していると考えられており、健常人でも尿中に JC ウイルス遺伝子 DNA を検出できる。また、骨 髄や末梢血 B 細胞中にもウイルス DNA が検出され、潜伏持続感染しているものと考えられている。これら の細胞に持続感染している JC ウイルスポリオ―マウイルスが宿主個体の免疫不全(特に細胞性免疫不全) により再活性化され、PML を発症すると考えられる。 3.症状⇒PML の臨床症状は病名である「多巣性」を反映して多彩であるが、よく見られる初発症状は片麻痺・四肢 麻痺・認知機能障害・失語・視覚異常などである。その後、初発症状の増悪とともに四肢麻痺・構音障害・嚥 下障害・不随意運動・脳神経麻痺・失語などが加わり、失外套状態に至る場合が多い。 また、治療に伴う免疫再構築により中枢神経内の JC ウイルス排除の免疫反応が起こり、治療介入後に 臨床症状(及び画像所見)の増悪を見る場合がある(免疫再構築症候群(immune reconstitution inflammatory syndrome:IRIS))。 4.治療法⇒JCポリオ―マウイルスに対する特異的な治療はない。そのため、PML の治療は基礎疾患に伴う 免疫能低下を回復/正常化を目指すことが主体となる。つまり、HIV-PML では cART 療法、非 HIVPML では原因薬剤の中止や血漿交換による生物学的製剤の排除が行われる。DNA 合成阻害薬を中心とした抗ウイルス薬やインターフェロンなどは現時点で JCポリオ―マウイルスに明らかに効果があ るとのエビデンスレベルの高い研究報告はない。近年、マラリアの治療薬であるメフロキンや抗うつ剤であ るミルタザピンが有効だった報告もあり両者の併用療法がおこなわれる症例も増えてきている。 5.予後 一般に週単位から月単位で進行するが、治療効果や患者の免疫力の改善などにより進行が止まり、回 復する場合もある。HIV を基礎疾患とした PML の中央生存期間は 1.8 年、その他の疾患を基礎疾患とした PML は中央生存期間が3か月とされており、生命予後が非常に悪い疾患である。

○30 遠位型ミオパチー→1.概要⇒ 遠位筋が好んで侵される遺伝性筋疾患の総称。世界的には少なくとも9つの異なる疾患が含まれるとされているが、これまでのところ、本邦では「縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチー」(常染色体潜性遺伝(劣性 遺伝))、「三好型ミオパチー」(常染色体潜性遺伝(劣性遺伝))、「眼咽頭遠位型ミオパチー」(常染色体顕 性遺伝(優性遺伝))の3疾患が中心として報告されている。いずれも本邦において発見された疾患である。 2.原因⇒縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチー」は、シアル酸生合成経路の律速酵素をコードする GNE 遺伝子のミ スセンス変異によりシアル酸合成能が低下することで発症する。「三好型ミオパチー」は、肢帯型筋ジストロ フィー2B 型と同じく、DYSF 遺伝子の変異による筋鞘膜修復に関係する蛋白質ジスフェルリンの欠損症であ る。近年、「眼咽頭遠位型ミオパチー」の原因遺伝子として LRP12、GIPC1、NOTCH2NLC、RILPL1 の CGG トリプレットリピート伸長が同定され、本邦における「眼咽頭遠位型ミオパチー」例の大半が、LRP12、GIPC1、 NOTCH2NLCのいずれかにリピート伸長を有することが報告された。ただし、「眼咽頭 遠位型ミオパチー」と診断される例の中には、実際には、臨床病理学的に類似する眼咽頭型筋ジストロフィ ーに罹患している例もある。 3.症状⇒「縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチー」は、10 代後半〜30 代後半にかけて発症し、前脛骨筋を特に強く侵 すが、進行すると近位筋も侵される。病理学的に縁取り空胞の出現を特徴とする。「三好型ミオパチー」は、 10 代後半〜30 代後半に発症し、主に下腿後面筋群が侵されるが進行すると近位筋も侵される。病理学的 には筋線維の壊死・再生変化が特徴であり、血清 CK 値が高度に上昇する。「眼咽頭遠位型ミオパチー」は、 通常成人期〜老年期にかけて発症し、眼瞼下垂、眼球運動障害、嚥下障害に加えて、特に下腿三頭筋を 侵すミオパチーを呈する。筋病理学的には縁取り空胞を認める。 4.治療法 転倒による外傷、また「眼咽頭遠位型ミオパチー」では嚥下障害による誤嚥性肺炎などに対して、対症療 法を行う。 5.予後 歩行障害、嚥下障害、誤嚥性肺炎などが生じる。

○112 マリネスコ・シェーグレン症候群→1.概要⇒マリネスコ・シェーグレン症候群は、白内障、小脳症状を特徴とする乳幼児期発症の難治性疾患である。 2.原因⇒ SIL1 遺伝子変異によるものが多いが、変異の認められない例もある。 3.症状⇒小脳症状は筋緊張運動失調、眼振、構音障害などが認められ、緩徐進行 性である。軽度から中等度の知的障害が認められる。有意語は獲得するが、独語を獲得する時期が1〜3歳と乳児期から発達の遅れが認められる。 筋力低下は全身性、あるいは近位筋優位で緩徐進行性。、頸定は4〜18 か月、座位は 10〜36 か月と運動発達遅滞が認められる。独歩獲得は約3 分の1で獲得年齢は平均7歳であ る。独歩を獲得しても 30 歳までに車椅子となることが多いが、寝たきりになることは少ない。 低身長、骨格異常(脊柱変形、外反扁平足、短趾症など)、斜視・眼球運動異常、原発性(高ゴナドトロピ ン性)性線機能低下を認めることも多い。 4.治療法⇒白内障に対して早期に手術が必要となる。その他の症状に対しては、対症療法はあるが、 根治のための治療法はないのみとなっている。 5.予後⇒成人期以降も呼吸機能、心機能、嚥下機能は保たれ、生命予後は比較的良好と考えられるが、疾患に起因する症状が長期にわたって継続する疾患であり、長期療養が必要となる。

○126 ペリー病→1.概要⇒ペリー(Perry)病は非常にまれな常染色体顕性遺伝(優性遺伝)性の神経変性疾患である。本疾患は 1975 年に Perry らにより家族性のうつ症状及びパーキンソニズムを伴う常染色体顕性遺伝(優性遺伝)性 疾患として報告され、現在まで欧米諸国や本邦から同様の家系が報告されている。臨床症状としては40 歳 代で発症と若年で発症し、比較的急速に進行するパーキンソニズムと体重減少に加えて、うつ症状、アパシー、脱抑制といった精神症状を認める。また、特徴的な症状として中枢性の低換気や無呼吸がある。治療法としてはパーキンソニズムに対して L-ドパ製剤などのパーキンソン病治療薬や抗うつ薬、低換気に対して人工呼吸器による呼吸管理など対症療法しかなく、根治療法はない。 2.原因⇒原因遺伝子として、2009 年に Farrer らによって dynactin タンパクをコードする DCTN1 の exon 2 に変異 があることが突き止められており、この遺伝子変異により本疾患が発症する事が明らかになっている。また、 筋萎縮性側索硬化症などと同様に TAR DNA-binding protein 43 (TDP-43) プロテイノパチーに分類される。 dynactin が TDP-43 に結合すること、その相互作用の制御異常が TDP-43 の誤局在化と凝集化を引き起 こす可能性が明らかになっているが、本疾患の発症機序について不明な点が多い。 3.症状⇒ペリー(Perry)病は非常にまれであるが、世界的に広い地域から報告されている。なかでも本邦からの 報告は比較的多く、そのうちの多くは九州地方からの報告である。九州地方の家系はいずれも創始者効果 は認められておらず、独立して発症した家系である。どの家系もおおむね 40 代から 50 代前半にパーキン ソニズム又はうつ症状や無気力などの精神症状で発症する。パーキンソニズムに対しては L-ドパ製剤が 有効であることも多く、L-ドパ誘発性ジスキネジアやウェアリングオフの合併をみとめる症例も報告されてい る。孤発性パーキンソン病と区別することが時に困難なこともある。しかし、発症早期より体重減少がみら れ、さらには呼吸障害が出現する。この呼吸障害は中枢性の低換気であり、頻呼吸、睡眠中の不規則呼吸、 呼吸停止などが出現する。呼吸障害に対する治療薬はなく、持続陽圧呼吸療法による効果も一時的であり 人工呼吸器による長期サポートが必要である。 4.治療法⇒運動症状については症例によって初期は L-ドパによる対症療法が有効である。しかし、有効性を認めない症例もあり、効果があっても症状の進行が早く一時的で不十分である。呼吸障害に対しては人工呼吸器による長期サポートが必要であり気管切開が必要となる。根治療法は現在のところ報告されていない。 5.予後⇒ 予後は2年から 26 年と症例によってばらつきはあるが、おおむね3年から5年で肺炎などの合併症により死亡することが多い。しかし、一部の症例は精神症状による自殺や中枢性呼吸障害に伴う突然死を生じることがある。

○130 先天性無痛無汗症→1.概要⇒先天性無痛無汗症は、全身の無痛を主症状とする疾患で、運動麻痺を伴わない。温痛覚障害に自律 神経障害を合併する遺伝性疾患群を、遺伝性感覚自律神経ニューロパチーと呼ぶが、このうち4型と5型 が先天性無痛無汗症に相当する(4型と5型は明確な区別が困難で臨床症状がオーバーラップすることも多いため、両者を含める)。4型は全身の温痛覚消失に、全身の発汗低下又は消失、様々な程度の精神発 達遅滞を示す疾患であり、5型は全身の温痛覚消失を示すが発汗低下や精神発達遅滞を伴わない疾患。しかし、4型と診断されても精神発達遅滞がごく軽度の患者、5型と診断されても軽度の発汗低下を 示す患者もおり、近年これらはオーバーラップする疾患と考えられている。 2.原因⇒遺伝性疾患であり、常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)を示す。4型は NTRK1(Neuropathic Tyrosine Kinase Receptor Type 1)の遺伝子変異が証明されているが、この変異が症状に結びつく詳細なメカニズム は判明していない。5型はNGFB(Nerve Growth Factor Beta)の遺伝子変異があり、軽症の症状を示すヘテ ロ結合の患者も報告されている。いずれも末梢神経の小径有髄線維(Aδ 線維)および無髄線維(C 線維) の減少が報告されているが、中枢神経系の症状の機序は不明である。前述のごとく、近年4型と5型はオーバーラップする疾患と考えられており、4型と考えられる患者で NGFB の遺伝子変異が証明されることがある。また5型とほぼ同一の表現型を示し、SCN9A(Sodium Channel, Voltage-gated, Alfa Subunit)の遺伝 子変異を示す患者も報告されている。 3.症状⇒全身の温痛覚が消失することにより、様々な症状を引き起こす。温痛覚による防御反応が欠如するた め、皮膚、軟部組織、骨関節に様々な外傷を受けやすく、また受傷に気付かずに重症化することもある。皮膚、軟部組織の外傷には、口腔粘膜や舌の損傷(咀嚼力の低下、齲歯、味覚障害等につながる。)、眼の角膜損傷(角膜潰瘍点状表層角膜症などから視力低下につながる。)、全身の熱傷や凍傷を含む。骨関節 では、下肢を中心に骨折、脱臼、骨壊死、関節破壊(Charcot 関節)などが多発し、下肢機能が廃絶し、移 動機能が著しく低下する。特に4型で発汗低下がある場合は、体温コントロールがつかずに脳症を引き起こし、時に小児期に死に至る。発汗低下は、皮膚の潰瘍形成にもつながる。また、精神発達遅滞には適応障 害、広汎性発達障害を合併することもあり、痛覚低下と相まって自傷行為が問題になることもある。また自 分のみならず相手の痛みへの共感も欠如するために、社会性に問題を生じる。睡眠障害、および自律神経 系の症状として、周期性嘔吐症を示す患者もいる。また機序は不明であるが、易感染性が存在 すると考えられ、化膿性骨髄炎や関節炎、外科手術に伴う感染、蜂窩織炎などの合併が多い。 4.治療法⇒ 根本的な治療法はない。患者・家族の教育を通じて骨折・脱臼や熱傷などを予防し、またこれらの早期発見、早期治療を心掛ける。クッション性の高い足底装具などの装具で外傷を予防したり、繰り返す脱臼や既 に発症した関節破壊に対して装具治療を行うことがある。舌や口腔粘膜の外傷等を予防するために、歯に 保護プレートを装着することがある。発汗低下がある場合にはでは体温コントロールが重要であり、室温の コントロール、クールベストと呼ばれる着衣を必要とする。これらの患者ケアに関係する資料として、研究班 が患者会に協力して作成したケアガイドやガイドラインがある(「先天性無痛症および無痛無汗症に対する 総合的な診療・ケアのための指針(第 2 版)」、小児神経学会 HP、および島田療育センターHP 掲載)。 5.予後⇒生命予後に関する詳細は不明であるが、予後に関係するのは、四肢の皮膚潰瘍などからの感染症と、 不十分な体温コントロールであると考えられる。小児期に脳症で死亡する患者、成人期に蜂窩織炎から敗 血症性で死亡する患者を経験している。50 歳を超える患者は極めて少ない。

○135 アイカルディ症候群→1.概要⇒1965 年に脳梁欠損、点頭てんかん、網脈絡膜症を三主徴として Aicardi らにより初めて報告された先天する先天性奇形症候群である。様々な種類の脳形成障害、難治性てんかん発作、重度の精神発達遅滞を呈し、本疾患の本態は神経発生異常と考えられている。 まれな疾患であり、原因も不明であるため治療法も確立されていない。 2.原因⇒ 現時点では不明。患者の大部分が女児であることから、X 染色体顕性遺伝(優性遺伝)(男児では致死 性)又は常染色体上の限性発現遺伝子の異常により女児にのみ発症するとも考えられている。de novo の 均衡型転座(X;3)を伴う症例から遺伝子座は Xp22 にマッピングされているが、原因遺伝子の同定には至っていない。 3.症状⇒ 脳梁欠損、てんかん性スパズム、網脈絡膜症(Lacunae)を三主徴とするが、てんかん性スパズムは他 の発作型(多くは焦点運動起始発作)でも代替可能である。痙攣発作は生直後から3か月頃までに発症す ることが多く、全例に出現し、難治性である。脳波ではヒプスアリスミアの頻度は低く,左右独立した解離性 サプレッション・バーストが特徴的である.完全脳梁欠損は 70%前後に認められ,部分欠損は前方欠損が 多い.多小脳回と脳室周囲の異所性灰白質がほぼ全例に認められる.大脳半球の非対称性も特徴的で ある.約半数で半球間裂や脈絡叢に囊胞が認められる.網脈絡膜裂孔は,通常両側性で,大きさの異な る複数の病変が視神経乳頭や黄斑部の周辺に存在する. 4.治療法⇒ 痙攣に対しては抗けいれん薬(ACTH、バルビツレート等)を用いるが、難治性である。摂食障害や肺炎 などが主な死因であることから、それらに対する予防や対症療法などの全身管理となる。根本治療はな い。 5.予後⇒中枢神経系の異常(脳回・脳室の構造異常、異所性灰白質、多小脳回、小脳低形成、全前脳胞症、孔脳 症、クモ膜嚢胞、脳萎縮など)、重度の精神運動発達遅滞、筋緊張低下、眼症状(視神経・脈絡膜欠損)、 骨格異常(椎体奇形、側弯、肋骨欠損、癒合、二分肋骨)、口唇口蓋裂、摂食障害、肺炎、腫瘍性病変を 併発し、不良である。

○136 片側巨脳症→1.概要⇒片側巨脳症は、一側大脳半球が 2 脳葉以上にわたって対側よりも大きい状態のことであり、、てんかん、 不全片麻痺、知的発達及び運動発達の遅れの三主徴を呈する。片側巨脳症だけの弧発性、神経皮膚症 候群などの基礎疾患を伴う症候性、患側の脳幹と小脳の肥大も伴う全片側巨脳症の 3 型がある。 2.原因⇒脳の発生過程における神経細胞の増殖、遊走、分化の障害による大脳半球の過誤腫性過成長であり、 幹細胞の異常な増殖の結果である。症候性では神経皮膚症候群に高率に合併し、表皮母斑症候群、伊藤 白斑に高率で、色素失調症、Klippel-Trénaunay-Weber 症候群、Proteus 症候群、結節性硬化症、神経線 維腫症T型に合併することがある。一部の患者の脳の病変切除組織から、mTOR シグナル経路の遺伝子、 PIK3CA、MTOR、AKT3 などの体細胞モザイク変異が見つかっている。 3.症状⇒ 胎児期に片側の巨脳を指摘されていることもある。典型的には、てんかん、不全片麻痺、知的発達・運動 発達の遅れがみられる。てんかんは難治なことが多く、大部分は新生児期〜乳幼児期に部分発作で発症する。発作型は、てんかん性スパズム、焦点起始運動発作、焦点起始両側強直間代発作が多い。大田原 症候群、乳児てんかん性スパズム症候群を示すことが少なくなく、発達の遅滞や停滞をきたす。脳波 では患側半球の異常が見られる。不全片麻痺は乳児期後半に顕在化する。 4.治療法⇒てんかん発作は、種々の抗てんかん薬で抑制が試みられるが、治療抵抗性の場合が多い。てんかん発 作が抑制されない場合は、早期に外科治療(半球離断術)を行うことで、約6割の症例で発作消失が期待で きる。不全麻痺にはリハビリテーションが必要である。 5.予後⇒病変の範囲や基礎疾患により、知的発達、運動発達の遅れは重度から軽度まで様々な程度で見られる。 一般的に、孤発性に比べ、症候性では予後が不良であるとされている。てんかん発作の抑制は、本性の治 療の主要な治療目標であり、抗てんかん薬で抑制されない場合は、半球離断術により、発作の消失と発達 の改善が見込める。

○137 限局性皮質異形成→1.概要⇒大脳皮質における局所的な発生異常(神経細胞の発生、増殖及び遊走の障害)に関連した病巣により、 主としててんかん発作を呈する。主に乳幼児〜学童期に発症するが、中学生以降あるいは成人でも発症す る。MRI により限局性の皮質を主体とする特徴的な異常所見で検出される一方、MRI 異常を欠き病理診断 で明らかになる場合もある。大脳皮質神経細胞の配列が様々な程度に乱れる。病理組織学的所見の特徴 からタイプ分類がなされる。大脳皮質のどこにでも生じうる。 2.原因⇒原因は不明で遺伝的素因は知られていないが、FCD タイプ 2 の発生には発達中の脳における体細胞体 性遺伝子の突然変異が関与している。特に細胞の分化・増殖に関連する PI3K-AKT3-mTOR シグナル伝 達経路の遺伝子(AKT3, DEPDC5, NPRL2, NPRL3, PIK3CA, RHEB, MTOR, TSC1, TSC2)の突然変異が高 率に報告されている。3.症状⇒ 限局性皮質異形成の存在部位に応じててんかん発作症状は多彩である。乳幼児ではてんかん性脳症 (てんかんが認知機能を進行性に障害する。)を呈することもある。長じては、主として部分てんかんを呈 し、異形成を中心としたてんかん焦点の発作症状を示す。てんかん重積状態を来すこともある。 4.治療法⇒ 抗てんかん発作薬が積極的に用いられるが、難治である。異形成が画像診断で同定でき、臨床所見や 脳波所見と一致する場合には手術や凝固手術が行われる。しかし、しばしば異形成の広が りを推定することが困難であり、十分な切除や凝固が行われないとてんかん発作が消失しない。また、異形 成が機能的に重要な脳部位(運動皮質や言語領域など)を巻き込んでいる場合や、異形成が多発性の場 合には、切除手術は困難である。 5.予後⇒てんかんが進行性に増悪することは少ないが、年齢とともに発作が軽減することもなく、てんかんは難治 なままである。頻発する発作による社会的な支障は極めて大きい。けいれん重積状態になり重篤な後遺症 を残すこともある。

○140 ドラベ症候群→1.概要⇒ 生後 1-20 か月(多くの場合 2-15 か月)の健常児に発症し、全身もしくは片側性のけいれん性発作を繰り返し、薬物治療に抵抗性、という特徴をもつ。発作は発熱、入浴、ワクチン接種により誘発されやすく、遷延す るてんかん重積や発作群発となりやすい。1歳以降にを過ぎると発達遅滞や運動失調が出現することが 多く、ミオクロニー発作や欠神発作、焦点発作を伴うこともある。原因として SCN1A 遺伝子の異常を高 率に認める、てんかん性脳症の1つ。 2.原因⇒ SCN1A 遺伝子の病的変異を 75%に、微小欠失を数%に認める。SCN1B、SCN2A、GABRG2 など の遺伝子変異の報告も希にある。約 20%では病的遺伝子異常は明らかではない。 3.症状⇒ 全身又は片側性のけいれん性発作を反復し、焦点性発作、ミオクロニー発作、非定型欠神発作など がみられることもある。発作は、発熱や入浴、ワクチン接種によって誘発されやすい。、間欠光刺激 や模様注視によって発作や脳波異常が誘発されることがある。けいれん性のてんかん重積ないしは群発を起こしやすい。1歳以降に発達遅滞や運動失調が出現することが多い。4.治療法⇒ バルプロ酸、クロバザム、スチリペントール、臭化剤、トピラマート、フェンフルラミンなどに効果を期待できる。ケトン食療法などのてんかん食が有効な場合があるが、外科治療は一般に有効ではない。 カルバマゼピン、ラモトリギン、フェニトインによって発作が悪化することがある。けいれん性のてんかん重 積に対しては病院外使用が可能なミダゾラム口腔用液の早期投与に効果を期待でき、病院内ではベンゾ ジアゼピン系もしくはバルビツール系薬剤などの静脈内投与を行う。5.予後⇒上記治療により、けいれん性てんかん重積の減少、各種てんかん発作の減少・軽減を期待できるが、 完全に治癒することはない。経過とともに極めて高率に知的発達症、神経発達症、運動失調 などを伴い、成人期に自立した生活を送ることは稀である。思春期までの死亡率が約 10%と の報告があり、突然死や急性脳症による死亡率が高いとされる。

○143 ミオクロニー脱力発作を伴うてんかん→1.概要⇒ 乳幼児期に発症する小型運動発作(ミオクロニー発作、失立発作、脱力発作など)を伴うてんかん群は、 その特異な発作型や治療抵抗性で世界的に早くから注目されてきた。中でも1歳以上になってから発症す るものとしてレノックス・ガストー症候群(Lennox-Gastaut症候群:LGS)が、全般性遅棘徐波と強直発作、非 定型欠神発作などの多彩な発作型を持つ独立したてんかん症候群として確立されたが、その後、Doose ら は正常発達幼児で、遺伝性素因を背景としミオクロニー脱力発作を主徴とする「ミオクロニー脱力発作を伴 うてんかん」を提唱した。潜因性 LGS、乳児重症ミオクロニーてんかんや乳児良性ミオクロニーてんかんと の異同が問題となった時期もあるが、1989 年国際てんかん症候群分類より独立したてんかん症候群として 認知された。 2.原因⇒ 痙攣性疾患の家族歴が高頻度であり、遺伝性疾患が想定されているが、まだ不明である。 3.症状⇒ てんかん発症前の発達は通常は正常〜軽度遅滞、生後6か月〜8歳の発症(2〜6歳が多い。)で、てんかん発作型は主発作型として@ミオクロニー屈曲発作、Aミオクロニー脱力発作/脱力発作 によるてんかん性転倒発作が最も重要で必須である。@ミオクロニー屈曲発作では、一瞬の躯幹の前方屈 曲、特に腰のところで屈曲し、勢いよく前方に放り投げられるように転倒し、Aミオクロニー脱力あるいは脱 力発作では、文字通り、全身あるいは立位を維持する姿勢制御筋の突然の脱力により、患者が転倒する。 しかし、意識障害はなく、すぐに回復し立ち上る。その他にB欠神発作(重積)、全般強直間代発 作を合併する。睡眠時の全般性強直発作は、一部の予後不良例に合併することが多い。発作間欠期脳波所見では全般性2〜6Hz 棘徐波あるいは多棘徐波異常を認め、背景脳波に 単形性の両側頭頂部θ律動の存在が特徴とされるが、すべての患者で認められる わけではない。持続性の焦点性異常は認めない。 4.治療法⇒ 抗てんかん発作薬治療に抵抗性とされるが、バルプロ酸、エトスクシミド、レベチラセタム、クロナゼパム、 クロバザムなどで効果が期待される。これらが無効の場合ケトン食治療の有効性 が高い。 5.予後⇒ 予後:50〜80%の症例で発作は軽快する。知的予後は中度遅滞から正常まで様々であるが、臨床経 過が短時間であるほど良好である。

次回も続き資料2-2「144 レノックス・ガストー症候群、145 ウエスト症候群、146 大田原症候群、147 早期ミオクロニー脳症、 148 遊走性焦点発作を伴う乳児てんかん」からです。

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