第42回「障害福祉サービス等報酬改定検討チーム」資料 [2023年12月08日(Fri)]
第42回「障害福祉サービス等報酬改定検討チーム」資料(令和5年11月15日)
議題:1. 令和6年度障害福祉サービス等報酬改定に向けて(就労選択支援、障害児支援) 2.令和5年障害福祉サービス等経営実態調査の結果について https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_36399.html ◎参考資料3 令和5年 11 月1日財政制度等審議会財政制度分科会提出資料 4.障害報酬改定↓ ○障害福祉サービス等(総括)→障害福祉サービス等の予算額は直近10年間で約2倍に増加。障害福祉サービス等の持続可能性を確保するためには、サービスの質を確保しながら総費用額を抑制する取組が不可欠。 需要サイドである利用者に牽制が働きにくく、供給サイドである事業所の増加に応じて総費用額が増加しやすい構造にある中で、報酬改定における収支差率を踏まえた報酬の適正化の徹底、総量規制によるサービス供給量の適正化の取組を強化する必要。 ○障害福祉サービス等の現状@(予算・利用者数・事業所数の推移)→障害福祉サービス等の予算額は直近10年間で約2倍に増加(障害児向けサービスは約5倍に増加)しており、利用者数や事 業所数も約2倍に増加。 障害福祉サービス等予算額の過去10年間平均の伸び率は、社会保障関係費全体に比して約4倍であり、著しく高い伸び。 ○障害福祉サービス等の現状A(総費用額の増加の要因分析)→総費用額の伸びには、利用者数の増加が大きく寄与。高齢化による影響は限定的であり、とりわけ障害児の伸びが顕著。 事業所数の伸びを見ると、近年、大半が営利法人の増加によるものであるが、特に一部のサービスでは営利法人の参入が急増。 原則1割の利用者負担であるが、所得に応じて負担限度額が設定。利用者負担割合は他のサービスと比べても僅少。 ○障害福祉サービス等の現状B(事業者の経営状況)→障害福祉サービス等事業者の収支差率は5.1%と中小企業を上回る水準。さらに、事業者の本部や他の事業との間の資金移動 を除外するため特別費用・特別収益を除いた収支差率で見ると、通常の収支差率よりも1.5%高くなっている。 また、サービスごとの収支差率を見ると、中小企業の2倍以上の高い収支差率となっているサービス類型も見られる。⇒【改革の方向性】(案)→サービスごとの状況を踏まえてメリハリのある対応を行うべき。 ○障害福祉サービス等の現状C(事業者の売上げ・内部留保)→障害福祉サービス等は業界全体として、コロナ禍においても一貫して収益が拡大している。障害福祉サービス等事業所を行っている 社会福祉法人について見ると、事業者当たりの収益は増加傾向にあり、また、内部留保についても収益の増加に伴って積み上がって いる状況。内部留保の割合も全産業・中小企業等と比べても高い水準。⇒【改革の方向性】(案)→報酬改定においては、障害福祉サービス等事業者の安定した収益状況や、積み上がった内部留保の活用を考慮すべき。 ○障害福祉サービス等の現状D(処遇状況等調査結果)→2022年10月の臨時報酬改定で創設された「福祉・介護職員等ベースアップ等支援加算」は約7割の事業所で取得されている。 ○ 同加算を取得した事業所においては、福祉・介護職員(月給・常勤の者)の平均給与額は1年間で6.8%増(月額+ 20,130円)と、同加算(3%増(月額平均+9,000円相当)を大きく上回る賃上げが実施。 また、同加算の直接の対象でないその他の職員についても賃上げ(+2.9%〜6.1%)が実施されている。 今後も継続的に介護従事者の賃上げ状況を調査・分析していく必要がある。⇒【改革の方向性】(案)→賃上げの呼び水として処遇改善加算を活用し、経営改善等の取組を通じた成果とあわせ、従業員の賃金に適切に還元すべき。 賃上げ状況の継続的な調査・分析を行えるよう、処遇改善加算取得に当たって、職種別の給与等の報告を要件とすることを検討すべき。 ○障害福祉サービス等の現状E(事業者に対する実地指導)→障害福祉サービス等事業者に対する行政処分の件数が増加。事業者に対する都道府県等の実地指導については、厚生労働省の指導指針 において概ね3年に1度の実施が求められているが、ほとんどの自治体でその水準を下回っている状況。足下では、コロナの影響もあり、事業所 数が増加する一方で、実施指導件数は減少し、実施率は10%と、概ね10年に1度のペースまで落ち込んでいる。⇒【改革の方向性】(案)→実地指導の取組の強化とともに、報酬改定においても、悪質な事業者の参入を防ぐ観点からも、収支差率を踏まえた報酬の適正 化を徹底するとともに、これまで以上にサービスの質を適切に評価する報酬体系を目指していくべき。 ○障害福祉サービス等の現状F(地域差)→都道府県別に人口当たりの利用者数を比較すると、障害者向けサービスで最大2.1倍、障害児向けサービスで最大3.9倍の地域 差が存在しており、地域差が大きい。障害者手帳についても、都道府県別の人口当たりの新規交付数を比較すると、身体障害者手 帳で最大2.4倍、療育手帳で最大3.1倍、精神障害者保健福祉手帳で最大4.2倍の地域差が存在しており、地域差が大きい。⇒【改革の方向性】(案)→障害福祉サービス等の持続可能性の確保のため、地域毎の偏在が生じている要因を分析し、是正のための適切な対応を講じるべき。 ○各論@:グループホーム(営利法人の参入・収支差率の偏り)→グループホーム(共同生活援助)の収支差率は全サービス平均より高く、近年は営利法人が多数参入している。自治体からの意見 の中には、障害福祉サービスの経験が少ない新規事業者の参入の増加に伴い、サービスの質が低下することを懸念する声も。 障害支援区分ごとに見ると、支援区分が中程度(支援区分3・4)の場合の収支差率が高くなっているが、これらの区分の利用 者の割合は全体の約4割を占めており、これらの収支差率が高い支援区分の方にサービスが偏っている可能性がある。⇒【改革の方向性】(案)→報酬改定において、グループホームについての現場の意見・実態を踏まえて、収支差率に応じた報酬の適正化を徹底するべき。 ○各論@:グループホーム(サービスの質の適正な評価)→グループホームにおける具体的な支援内容について明確な基準がなく、事業者によるばらつきも見られ、支援の質に違いが見られる。 サービス提供時間に基づく報酬となっているが、事業所が任意で設定可能な週所定労働時間に基づき算出される体系となっている ため、短いサービス提供時間で高い報酬を得ている可能性。 訪問系サービスである居宅介護等を併用した場合の減算について、居宅介護等の利用時間が勘案されない体系になっているが、 実際の利用時間にはばらつきが見られ、長時間の併用にも関わらず同額の減算にとどまっているケースがある。⇒【改革の方向性】(案)→グループホームにおける具体的な支援内容について明確な基準を定めるとともに、報酬についても支援内容に応じたものとするべき。 実態を踏まえ、サービス提供時間を勘案した報酬体系への見直し、居宅介護等の併用時の減算の見直し等を行うべき。 ○各論@:グループホーム(地域差の是正・総量規制)→利用者数の地域差を分析すると、総量規制がある生活介護よりも、総量規制のないグループホームの方が、地域差が大きい。 自治体からの意見の中には、グループホームの事業所の規制が行われていないため、質の低下が懸念されるという意見も見られ、 質が担保されていないグループホームの過多な供給が進んでいるケースがある可能性。⇒【改革の方向性】(案)→地域の実態を踏まえた事業所の指定を行うことにより、サービスの供給が計画的かつ効率的に行えるよう、自治体に おいてサービス見込み量を精査するとともに、総量規制の対象拡大を検討するべき。 ○各論A:就労継続支援A型(生産活動収支の二極化等)→就労継続支援A型(利用者と雇用契約を締結)は収支差率が全サービス平均よりも高く、事業所の半数が営利法人となっている。 報酬上の「生産活動スコア」を見ると、生産活動収支から賃金を支払えている事業所(40点)と、賃金を支払えていない事業所 (5点)に二極化。特に営利法人は後者が多く、設置基準でも求められる生産活動の経営改善に取り組んでいない可能性がある。 「労働時間スコア」を見ると、短時間の労働時間(4時間以上4時間30分未満)の割合が最も高い。特に営利法人はこの割合が大 きく、短時間のサービス提供時間に留まり、利用者への十分な就労継続支援が行えていない可能性。 他方で、「地域連携活動スコア」を見ると、約6割の事業所が取得しており、特に営利法人は約7割の事業所が取得している。営 利法人は、生産活動スコア・労働時間スコア以外のスコアを獲得することで、報酬額を決める全体のスコアを補っている可能性がある。⇒【改革の方向性】(案)→実態を踏まえて、サービスの質に応じた報酬体系とする観点から、「生産活動スコア」、「労働時間スコア」のより一層のメリハリ付け、 経営改善の取組状況の評価、「地域連携活動スコア」等の見直しといったスコア全体の体系の見直しを行うべき。 ○各論A:就労継続支援B型(工賃向上の取組の評価)→就労継続支援B型(利用者と雇用契約を結ばず工賃支払い)は、営利法人の伸び率が高く、直近5年間で2倍に増加。就労継続支援B型は、基本的に工賃向上の取組を評価する報酬体系となっているが、平均工賃区分別の事業所の内訳を見ると、 低工賃が全体の5割強を占めており、さらに、足下では1万円未満の工賃区分の事業所が大きく増加。 就労継続支援B型全体を見ると、前回報酬改定後に収支差率が伸びているが、平均工賃別に収支差率の伸びを見ると、1万円 未満の工賃区分の収支差率が大幅に上昇している。また、報酬区分ごとの収支差率の内訳を見ると、工賃の水準に関わらず報酬 が得られる参加型の区分(V・W)が、工賃の水準で報酬が決まる区分(U)よりも収支差率が高くなっている。このように工賃 向上の取組が十分に評価されない報酬体系になっている可能性がある。⇒【改革の方向性】(案)→報酬改定において、工賃の金額に関わらず報酬が得られる区分の報酬の見直しを含め、工賃向上の取組をより評価する報酬体系 への見直しを行うべき。 ○各論B:生活介護(サービスの質・利用時間に応じた報酬)→生活介護の収差率は全サービス平均よりも高く、特に営利法人の収支差率は高い水準となっている。この点、営利法人の経費を見 ると、社会福祉法人と比べ、非常勤職員や、勤続年数が低い職員を雇うことで、給与費が低く抑えられている。 生活介護の報酬は、営業時間で設定され、利用者ごとのサービスの利用時間が考慮されていない。営業時間を見ると、大宗の9 割強の事業所は6時間以上の営業時間であり減算の適用はされていない一方で、利用時間を見ると約3割の事業所は6時間未満 となっており、短いサービス提供時間で高い報酬を得ている可能性がある。⇒【改革の方向性】(案)→営業時間ではなく、サービス利用時間に応じた報酬体系への見直しを行うとともに、サービスの質を適正に評価す る報酬体系への見直しを行うべき。 ○各論C:障害児通所サービス(サービスの質・利用時間に応じた報酬)→放課後等デイサービス・児童発達支援は、総費用額が著しく伸びている。営利法人が事業所に占める割合も大きく、伸び率も高い。 これらの障害児通所サービスは営業時間で設定され、利用者ごとのサービスの利用時間が考慮されていない。このため、利用者ごと の利用時間に大きなバラツキがあるにも関わらず同額の報酬となっており、短いサービス提供時間で高い報酬を得ている可能性がある。⇒【改革の方向性】(案)→営業時間ではなく、サービス利用時間に応じた報酬体系への見直しを行うとともに、サービスの質を適正に評価す る報酬体系への見直しを行うべき。 ○各論C:障害児通所サービス(自治体の給付決定・セルフプラン)→障害児支援においては、利用者一人当たりの給付決定量において地域差が大きい。また、専門職である相談支援専門員の支援を 受けずに利用計画案が策定されるセルフプランが著しく高い地域もある。⇒【改革の方向性】(案)→地域差解消のため、国が給付決定における具体的な基準等を定めるとともに、相談支援専門員による計画作成を徹底しセルフプラン の解消を推進すべき。また、国が自治体の実態を把握し、かい離が大きい自治体等に助言等を行うことで地域差解消を支援すべき。 次回は新たに「第7回 国内の労働分野における政策手段を用いた国際課題への対応に関する検討会」からです。 |