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新しい時代の働き方に関する研究会 第3回資料 [2023年04月29日(Sat)]
新しい時代の働き方に関する研究会 第3回資料(令和5年4月7日)
≪議題≫ 構成員からのプレゼンテーション ・大湾 秀雄 構成員 ・伊達 洋駆 構成員
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_32514.html
◎資料1 「人的資本投資を増やすために必要なこと」 (大湾構成員提出資料)
○日本の人的資本投資は低い
→国際比較で企業の育成投資・労働者の自己研鑽投資が低い。
・雇用形態・性別・年代別の「学習・研修参加経験なし」の割合→正規よりも非正規のほうが参加経験なしが多い。(パート的な存在か?)

≪企業の育成投資が低いのは何故か≫
○キーワードは、労働市場の摩擦→労働市場の摩擦とは?

• 転職や自由な労働契約の障害となるもの→ – 情報の非対称性⇒あなたが優秀だということを今の雇い主以外は良く知らない。雇用主がどれだけ人材 育成投資をしているか、他企業は知らない。 – サーチコスト⇒就職・採用にかける時間、労力、金銭的費用、精神的負担。 – 解雇コスト⇒解雇コストの不透明性が採用の抑制、非正規雇用の増大につながる。 – 年功賃金⇒労働者の転職コストを引き上げ、企業側も中途採用に消極的になる。 • 摩擦が大きいと 離職率が下がる。 – 労働市場はより非競争的になる。
○質問です→人的資本投資が増えるのは、摩擦が大きい時です か、小さい時ですか?↓
○人的資本投資のコスト回収→労働市場の摩擦が大だとコスト回収が可能。↓
・ ベルギー企業を対象とする 研究によると、研修による 生産性の伸びは賃金の伸び を大きく上回る(右図)。 右矢印1労働市場の摩擦
・労働市場の摩擦が大 きいことを示唆 右矢印1投資コスト回収が 可能となり投資イン センティブが生じる。
○疑問→労働市場の摩擦が人的資本投資のインセンティブを作り出すので あれば、どうして労働市場の摩擦が高い日本企業の人材育成投資 は欧米企業より低いのか?↓
○実は…労働市場の摩擦は効率的投資をもたらさない→• 労働市場に摩擦があるだけでは、人的資本投資は決して効率的 にはならない。⇒摩擦があっても雇用主はリターンをフルに享受できない。人的資本投資が競争優位につながる効果を経営者が理解していない可能性。 – コスト回収のため、投資期間を長引かせる誘因が働く。⇒Garicano and Rayo (2017)によると、企業にとって最適な人的資本投資のスピード は、10%(5%)の割引率のもとで11年(21年)のトレーニング。
○人的資本投資を生み出す2つのロジック→@摩擦の大きい労働市場+長期的雇用関係⇒ 従業員を「囲い込める」ので、投資意欲が生まれる。 A競争的労働市場+長期的な雇用関係+情報開示⇒ 労働市場における人材獲得競争を通じて、投資意欲が生ま れる。
○ロジックA:ベッカーの人的資本理論↓
• 人的資本理論(Becker 1962, Acemoglu and Pischke 1999)によると、以下の3つの条 件が成立すれば、効率的な人的資本投資を達成→「人的資本投資内容が契約に書ける」「労働市場が競争的である」「労働者が研修期間の低賃金を受け入れられる(十分な流動性や借入可能性)」。 • メカニズム:高い人的資本投資を契約で約束できる企業に、高い生涯賃金を求め て優秀な応募者が集まる。さらに競争を通じて、投資水準は効率的(社会的に望 ましい水準)に! 右矢印1 企業は、研修期間の賃金を下げて費用を回収する。 • 人的資本投資を契約に書くのは無理では? • 人的資本投資内容が開示されて、企業が人的資本投資にコミットし、社員や応募 者がそれを信頼できれば、契約に書くのと同じ効果が期待できる。 右矢印1 関係的契約の形成は可能。

○企業の人的資本投資水準の大小関係↓

@摩擦のない 競争的労働市場 +短期的雇用関係 ≺ A摩擦の大きい 労働市場+長期的雇用関係 ≺ B競争的労働市場 +長期的な雇用関係 +情報開示
・@右矢印1@右矢印1A右矢印1B右矢印1Bの順序必要。日本の場合@右矢印1BでAが飛んでいる。
○企業の人的資本投資を増やすには→企業の人的資本投資を増やすには、2つの軸で労働市場の改革を測ることが必要 。↓
1. 労働市場の摩擦を減らし、企業間で育成投資競争が起きる競争環境を整える。⇒職やスキルの標準化によって、人材仲介業におけるマッチング効率を引き上 げる。 経済合理性を失った制度や仕組みからの脱却を促す。
2. 人的資本情報の開示を推し進め、経営陣と社員の間で効率的な人 的資本投資に関する共有された期待(関係的契約)の形成を図る。

≪自己研鑽投資をどう高める≫
○仕事の面白さの国際比較↓
○仕事の面白さは何によって決まるのか
→日本以外のOECD主要9か国⇒社会的意義・自律性・興味・関心 のマッチの順。日本⇒興味・関心 のマッチ・人間関係・社会的意義の順。
○中間管理職の部下育成力が弱い→中間管理職の時間の使い方 主要31か国(緑色)と日本(赤)の比較あり。⇒他人の業務計画については極端に低い。
○自己研鑽意欲を抑制している要因→•自律的キャリア形成の機会が与えられていない。– 自分のしたい仕事ができない。⇒ 仕事が面白くない。  • 職が標準化されていない。⇒キャリア志望を明確にし、それに必要なスキルを把握することが難しい。  • 中間管理職が部下のキャリア形成に主体的に関わらない。⇒上司自体が自分のキャリア形成に取り組んだことがない

≪必要な労働市場改革≫
○何が変化したのか↓

• オペレーションの効率性を求めるキャッチアップモデルの終焉と業務へのICT技術の導入を通じて、企業特殊的人的資本の価値が低下⇒企業特殊的人的資本の蓄積に貢献してきた制度や仕組みが経済合理性を失う(集権的人事、年功的処遇、遅い昇進など)。
• グローバル化や新しいデジタル技術の進展により、国境や事業領域間の迅速な資源配分能力の向上が求められるように⇒職能ごとの集権化(CXOの必要性)。従業員のリスキリング。
○伝統的日本企業の構造的問題↓
• 年功的処遇や遅い昇進など経済合理性を失った制度や仕組みを温存⇒若い社員のエンゲージメント低下、経営人材育成の遅れ、 役職を目標にしたシニアマネジメントの学ぶ意欲が低い。  • 職やスキルが標準化されておらず、キャリアも体系化されていない⇒育成計画やキャリア志望が立てにくい。 外部人材仲介機能におけるマッチング効率低い。
• CHROの役割を持つ役員が不在⇒事業戦略と育成計画がリンクしていない。
• 集権的人事が投資意欲を抑制⇒人材育成の予算権限が現場に与えられていない。 自分でキャリアを形成できない。 中間管理職の部下育成力が弱い。

○必要な労働市場改革↓

• 競争的な労働市場の確立(育成投資における競争、非効率な制度を 排除)⇒職とスキルの標準化、日本版O‐NETの内容充実で共通言語を提供する 。 解雇の金銭保証ルール + 非正規の正規化(雇止めの非合法化)。
• 人的資本投資内容を盛り込んだ関係的契約の形成を図る⇒経営陣のコミットメントを明確に(コーポレートガバナンスコード)。人的資本情報の開示義務化⇒求職者が比較しやすいようにする。
• 人的資本投資のコストを下げる⇒ 安価な学習プラットフォームの整備支援
•分権的人事を促す法整備⇒キャリア形成上合理性を持たない異動命令への拒否権を認める。


◎資料2 「テレワークとエンゲージメントをもとに新しい働き方を構想・展望する視点を得る:分化と統合の枠組みを切り口に」 (伊達構成員提出資料)
≪はじめに≫
○自分のことと会社のことを簡単に紹介する
→株式会社ビジネスリサーチラボ 代表取締役  理論と実践の知見を背景にデータ分析に関連するサービスを提供
○本報告の概要 テレワークとエンゲージメントを通じて新しい働き方 を展望する→効果と副作用、魅力と限界の両面を検討することで 新しい働き方を構想・展望するための枠組みを考える
1.テレワークの光と影
○テレワークの研究
→テレワークとは・・・ 労働時間の一部を、従来の職場の外で働き テクノロジーを使って職場メンバーとコミュニケーションすること
○ポジティブな影響→メタ分析によれば、テレワークはポジティブな効果をもたらすことが分かっている⇒ • 仕事の進め方・目標などの裁量が大きい(自律性) • 上司との関係が良い • 仕事と家庭の間の葛藤が低い • 会社や仕事への満足度が高い(職務満足) • 仕事のパフォーマンスが高い(主観・客観ともに) • 役割をめぐるストレスが低い など。
○好影響の背景→集中して自律的に働けることが理由⇒テレワークでは 自分のペースで集中して自律的に働けるため ポジティブな影響が出る
○ネガティブな影響→CMC(computer-mediated communication)研究のメタ分析を見ると CMCグループは対面グループと比べて⇒ • グループのパフォーマンスが低い(主観・客観ともに) • グループの満足度が低い • 意思決定に時間がかかる・・・。また、コロナ禍の個別研究を見ると、テレワークしているほど • イキイキと仕事に取り組んでいない(ワーク・エンゲイジメント) • 離職したい気持ちが強い(離職意思) • 情緒的に消耗している(バーンアウト)
○悪影響の背景→テレワークでは コミュニケーションの質と量が低下するため、 ネガティブな影響が出る
○テレワークのまとめ テレワークには光があれば影もある→自律性を下げるような監視は禁物だが 放置すると孤立につながるので、それも問題。 特に、悪影響を抑制することは重要ではないか⇒ • コミュニケーションツールの活用支援 • 面談や会議の短時間・高頻度での実施 • 孤立している労働者の発見とフォロー など

2.エンゲージメントの光と影
○エンゲージメントの興隆
→様々な要素を伴うエンゲージメントは産業界で人気
○エンゲージメントの整理→エンゲージメントは仕事と会社との関係で2つに分 けられる⇒@ 組織コミットメント→ 個人と「組織」の関係性が良好であること A ワーク・エンゲイジメント→ 個人と「仕事」の関係性が良好である。
○ポジティブな影響→エンゲージメントは2種類とも有効な結果をもたらす
○ネガティブな影響→仕事や組織にのめり込むことで悪影響が起こる⇒一方で・・・ 組織コミットメントもワーク・エンゲイジメントも、悪影響が生じ得ることが指摘されている。
○エンゲージメントのまとめ→エンゲージメントは促進すべきではあるが 副作用にも目を配らなければならない 特に、悪影響を抑制することは重要ではないか⇒ • 健康を害さないような支援、自己管理の推進 • 越境学習を通じた社外との継続的な交流 • ワークライフバランスの促進 など

3.分化と統合による整理
○整理のフレームワーク→分化と統合という概念で議論を整理・深掘する⇒整理のフレームワークとして援用するのは 経営学の古典的な概念である「分化」と「統合」。
○分化と統合への関連付け
→テレワークは分化、エンゲージメントは統合を促す。テレワーク:バラバラな場所で働くことで、個人が自分のペースで集中して自律的に働ける =「分化」を促す作用がある。 エンゲージメント:仕事に打ち込み、会社に愛着を持つことで、個人と仕事や会社との関係を近づける =「統合」を促す作用がある。
○分化と統合の状態→分化と統合の程度によって4つの状態が浮かび上 がる⇒第一象限:分化が強く統合も強い 例)個々人が自由に動きながらも、パーパスが浸透している。第二象限:分化が弱く統合が強い 例)会社がキャリアを主導し、リテンションも効いている。第三象限:分化が弱く統合も弱い 例)個々人が自律しておらず、他方で共通目標もない。第四象限:分化が強く統合が弱い 例)テレワークをしているが、エンゲージメントは低くバラバラ。
○今後の推測→環境の不確実性が高い中で 企業は今後も分化の程度を高めようとするのでは⇒分化の程度が大きくなると 統合の程度も大きくしなければならない。
○注意すべき点→@ 分化を強める際に、分化の悪影響に気をつける • テレワーク:コミュニケーションの質と量が低下 • ダイバーシティ:対立が起きたり、少数派の価値が貶められたりする。キャリア開発:独立心が高まり、離職したい気持ちが上昇 A 統合を強める際に、統合の悪影響に気をつける⇒ • エンゲージメント:仕事や会社に過剰にのめり込む • パーパス:変化を拒み、異質な意見を拒絶する。• リテンション:ポジティブな転職の可能性をなくす。B 分化と統合の 両方を強める際に、ダブルバインドに気をつける⇒ ダブルバインド:相反する要請を同時に受けて混乱する※6 ”キャリアを自由に描いてください、ただし会社主導で異動は行います” ”個々人の価値観は尊重しますが、パーパスから乖離するのは問題です” ”自律的に仕事を行ってください、とはいえ上司の指示はよく聞くように。
○分化と統合のまとめ→悪影響とダブルバインドに対応する必要がある⇒分化の悪影響や統合の悪影響 さらに分化と統合のダブルバインドに対して 職場、企業、市場、政策、法それぞれが役割分担をして気を配っていく必要があるのでは
○副作用とダブルバインドへの支援→副作用とダブルバインドにはそれぞれ様々な支援 が想定される⇒分化の副作用、統合の副作用、分化と統合のダブルバインドを支援。

◆新しい時代の働き方に関する研究会
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-roudou _558547_00021.html


次回は新たに「第1回こども未来戦略会議」からです。

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