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令和5年第3回経済財政諮問会議 [2023年04月26日(Wed)]
令和5年第3回経済財政諮問会議(令和5年3月30日)
≪議事≫ 特別セッション(成長と分配の好循環の実現)
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2023/0330/agenda.html
◎資料1 参考資料(成長と分配の好循環)(柳川議員提出資料)
○特別セッション・ヒアリングを踏まえた 「成長と分配の好循環の実現」の論点@A
1.「新しい資本主義」の経済学的意義↓
・「安定的なマクロ経済運営の下、経済政策を効果的に活用、政府が供給サイドに働きかけ、民間投資を喚起する取組が重要視」されてきている (参考1)。その背景として、人への投資、GX、経済安全保障など、外部効果が大きく、過少投資となりやすい分野が、今後の成長のカギとなっていることがあげられる。
・G7サミット⇒GXや経済安全保障など各国が共通して直面する課題を軸に、政府が供 給サイドに働きかける「新しい資本主義」の重要性とこうした取組への国際連携の必要性を訴え、G7間での政策協調を進める契機にすべき。
・我が国は、適切なポリシーミックスの下、これまでの需要創出策から転換し、こうした分野にリソースを集中していくべき。また、施策の手段は、最も効果的かつ持続的に成 果が上げられるよう、補助金(歳出)だけでなく、税制、規制改革等の手段を適切に組み合 わせるべき。
・施策の実施⇒ワイズスペンディング等適切な施策を実現するため事前のイン パクト評価(EBPM)、事後の検証とその結果に基づく臨機応変な政策調整(PDCA)を徹底すべき。

2.「成長と分配の好循環の実現」の着実な推進に向けて
・成長と分配の好循環の実現→成長の果実が賃金・所得として幅広く国民に還元されると ともに、社会課題の解決を通じた包摂的成長(Inclusive Growth)の実現により、国民生活の安心・安定を高め、好循環の持続性を高めていくことが重要。⇒人への投資が特に重要。ただしリスキリングなどの教育訓練分野のみならず、転職円滑化、働き方や雇用慣行改革など包括的な教育・労働市場改革を粘り強く進 める必要。
・こうした観点から、「成長と分配の好循環」の総合的な進捗状況について、従来のGDP、 雇用・物価などマクロ経済の動きのみならず、成長・分配の両面から、多面的な経済主体の 動きを定期的に確認してはどうか。

・まずは、好循環の進捗を、以下のようないくつかの指標で量的・質的観点からチェックし、その結果を施策にフィードバックすることで、好循環を持続・拡大すべき(参考2)。
(成長) ↓
一人当たり実質GDP→成長について、人口増減要因を省いた効果を確認
ウェルビーイング→経済社会の質を示す
(分配) ↓
賃金・雇用者への分配を見ることで一人当たり実質GDP成長率や労働生産性変化と比較。 中間層の所得割合→所得分布の偏り(格差)を評価


○(参考1−1)「新しい資本主義」の経済学的意義に関連する米欧識者コメント
・新しいサプライサイド経済学の考え方→国の潜在成長力は労働力の規模、その生産性、 資源の再生可能性、政治体制の安定性に依存。 新しいサプライサイド経済学は、格差や環境へのダメージを軽減しながら労働供給を高め、生産 性を向上させることによって経済成長を引き上 げていく。本質的に、持続不可能な高成長の達成 に焦点を当てるのではなく、代わりに包摂的でグリーンな成長を求めていく。(イェレン財務長官ダボス会議スピーチ)
・生産能力投資・政府の重要性→経済の長期的な生産能力は、労働力の成長・熟練、質の高い物的インフラ、生産プロセスの効率性などの要因に依存⇒経済能力の向上に投資することで、中長期的に多くの需要に対応できるようになし、経済ショックに対する耐性を強化、インフレリスクを最小化することができる。   民間セクターと異なり公的セクターは(市場全 体が効率化するような)経済全体を考慮した投資 を行うようデザインされている⇒更に、民間 セクターが低投資に陥った場合、公的セクターは人的・物的資本への投資に踏み出しうる。(2023年米国大統領経済報告)
・投資における政府の重要性→財政政策は金融政策より強力なマクロ安定化装置であるのみならず、政府は資本を配分する金融システムから分かれているただ一つの存在。 もし我々が純粋な金融の論理から形作られるだけの技術やインフラ投資を望まないのであれば、 ミッション指向型の・・・公的投資戦略の必要性は避 けられない。(ロバート・スキデルスキー(英 ウォーリック大学名誉教授))
・新自由主義に代わりうる 新たな経済政策パラダイム→政治的な立場の左右を問わず、新自由主義に とって代わりうる新たな経済政策のパラダイムが 現れている。新たなフレームワークは政府や地方 組織に、良質な仕事、気候変動、より安定的で強 靭な社会を維持する更に大きな責任を求め、現在 のパラダイムよりも市場や大企業により懐疑的である。 (ダニ・ロドリック(ハーバード大学教授)

○(参考1−2)主要先進国の経済財政政策→日本、米国、EU、ドイツ、英国による「直面する主な課題」「主な政策対応」の一覧に。

○(参考2−1)成長と分配の好循環をマクロで確認する指標→【成長】一人当たり実質GDP、【分配】一人当たり賃金の推移→一人当たりでみた実質成長率は、安定的に1%程度で推移し、各国と同程度で推移。 一人当たり実質賃金の伸び⇒日本では実質成長率を大きく下回るが、各国では実質成長率と近い伸び。名目賃 金では、日本では実質成長率も下回るが、各国は成長率を上回る。

○(参考2−2)成長と分配の質を確認する指標↓
【成長】ウェルビーイング(生活満足度等)、【分配】分厚い中間層(中間所得層の構成割合や中位所得の推移)→一人当たり実質GDPと主観的ウェルビーイング指標は正の関係。日本は幸福度が相対的に低い。 日本は中間所得層の所得の占める割合が他国より高い。但し近年、日本の中位所得は低下している。


○(補足資料1)特別セッション・ヒアリングにおける主な御意見@ 「新しい資本主義」の経済学的な意義と今後強化していくべき分野 ↓
(「新しい資本主義」の経済学的意義)
→・過去のサプライサイド政策は、小さな政府・市場による経済活性化。他方、減税や市場任せでなく政府が 一定の役割を果たすことが「モダン」の意義。政府が戦略を持って将来の成長に向けた取組を進めるべき。 ・新しい資本主義は、社会的に望ましい価値を促進しながら、潜在成長率を引き上げる試み。MSSEよりも、スタートアップやGX等の政策アジェンダは総合的。 ・米国モデルは、古典的産業政策であり多額の資金が必要。財政的な余裕がない日欧では、民間資金を上手く統合すべき。新しい資本主義の特徴は、GDPから所得にフォーカスしていること。 ・我が国の状況は米国より欧州に近く、欧州のSocial Capitalismの方が近いのではないか。
(今後強化すべき分野・取組)→・企業の異常な過剰貯蓄を、政府が明確な方向を示しながら呼び水となって、将来の課題解決や成長に資する投資に誘発させることが最大のポイント。 ・これまでの需給ギャップをどう埋めるかという議論からサプライサイドに政策目標をシフトして、生産性 向上や技術革新、スタートアップ増加、労働参加率上昇などを目標とすべき。 ・持続的成長のためには、技術進歩と無形資産の蓄積が効果的であり、無形資産の中では人が身に付けた技 能が一番重要。 ・規制緩和により、スタートアップやIT事業者・異業種などの新たな担い手からの新規参入を促し、新規 性のあるイノベーションを発生させ、生産性を向上させるべき。 ・人への投資や社会資本のマネジメントは、市場任せでは上手くいかない。新しい資本主義の特性は、人への 投資。中小企業における人への投資の促進や個人ごとに異なるニーズへの対応を考えるべき。 ・バイデン流の環境改善のための公共投資や補助金政策は、相対的に経済規模の小さい日本では非効率であり、炭素税の導入が効果的。 ・具体的施策の期待される効果を提示するとともに、事後に施策の費用対効果を検証すべき。

○(補足資料1)特別セッション・ヒアリングにおける主な御意見➁ 「成長と分配の好循環」の実現に向けた方策
(「人への投資」のための取組)
→・成長と分配の好循環の実現には、賃金の上昇が必要。名目・実質賃金、労働生産性、労働分配率、労働参 加率などを政策運営中でチェックしていくべき。 ・成長と分配の好循環の実現に必要で重要な要素は、配偶者や高齢世帯などへのリスキリングと就労促進によ る家計所得の向上。日本には、男女格差是正やデジタル活用、高齢社会への対応に潜在力あり。 ・政府が、基礎研究への助成に加え、幼児教育を中心に良質な基礎教育を全ての子供に提供することが重要。 ・転職が一般化する中で、終身雇用に基づかない新たな技能の蓄積のシステムを模索すべき。 ・生産性の高い企業への労働者の移動の円滑化や転職者への思い切った支援により、労働市場の流動化を進め、労働分配率や生産性の高い企業のシェアを向上させるべき。 ・都合の良い時間に働ける正社員の枠を思い切って拡大させることで、女性や非正規労働者の賃金を向上さ せるべき。・サービス産業の労働生産性を向上させるためには、有形資産投資を増やすことで資本装備率を上げること や、正規労働者・非正規労働者の差がない形で人への投資の支援を受けられるようにすることが必要。
(成長力強化に向けた取組)→・高齢化が進む中でマクロの資金余剰は縮小することが予想される。対内直接投資が海外直接投資に比べて 少ないこともデフレ要因。 ・重要物資の生産拠点の空洞化への対応が重要。生産拠点の国内回帰や対内直接投資の促進に加え、エネルギーの自給率向上や、規制緩和による一次産業の生産性向上を通じた自給率向上を進めるべき。 ・政府は古典的な中小企業支援政策から移行し、高い技術を有する中堅・中小企業の設備投資や研究開発投資、輸出の促進を支援するなど、成長企業支援にフォーカスした政策を積極的に導入すべき。 ・ベンチャー等の増加には、資金支援だけでなく、セーフティネットの充実にも取り組むべき。

○(補足資料2)成長と分配の好循環を確認する指標→「名目・実質賃金、労働生産性、労働分配率、労働参加率などを政策運営中でチェックしていくべき。」 ⇒成長と分配の両面について、その量と質を確認
【成長面】の「指標」と「 指標の示す意味・検証のポイント」、その根拠の「 統計」あり。
【分配面】も「指標」と「 指標の示す意味・検証のポイント」、その根拠の「 統計」あり。


◎資料2 成長と分配の好循環の実現に向けたマクロ経済運営の在り方 ― モダン・サプライサイド・エコノミクス(MSSE)の考え方(福田慎一氏提出資料)
○モダン・サプライサイド・エコノミクス(MSSE)の重要性
ー⽶国イエレン財務⻑官が中⼼に進めているバイデン政権の成⻑戦略
• MSSE=現代版の供給重視経済学: 経済成⻑の実現に向けて、⼈的資本 の蓄積、インフラの整備、研究開発 の促進、環境対策の推進などを優先 • 「新しい資本主義」とも多くの点で 共通した考え⽅ • かつての供給重視経済学=サプライ サイド・エコノミクス(SSE)とは ⼤きく異なる! • SSE=新⾃由主義:⼩さな政府、減 税や規制緩和で⺠間投資を喚起 • 例. レーガノミクス、サッチャーの 経済政策 • MSSE:潜在成⻑率を中⻑期的に押 し上げるには、それを⽀える政府の 役割も重要
• なぜいまMSSEなのか? • かつてはなかった新しい課題の出現:GX、 DX,、格差問題 • GXやDXによる産業の育成や、有能な労働⼒ の確保は、今後の成⻑のエンジン。 政府の役割:「市場の失敗」を解決 • GX:地球温暖化は市場の失敗(外部不経済、 共有地の悲劇) ⇒ ⾃由競争では脱炭素化は実現できない • DX: ネットワークの外部性、情報の利活⽤ ⇒ 政府による共通基盤・制度整備 • 格差問題:オートメーション化、デジタル化、 AI の出現 ⇒ さまざまな労働の価値を低める ⇒ ⼈的資本を⾼めるための再教育の必要性

○⽇本の特殊事情:きわめて厳しい財政事情の中でのMSSE
• ⽇本の政府債務 • 数字上わが国の現状はきわめて深刻。 • 巨額な政府債務は、成⻑にマイナスであ るだけでなく、世代間の格差を拡⼤
• MSSE • 潜在成⻑率を中⻑期的に押し上げるため の政府⽀出の重要性 • ⽀出を⼀律に削減する緊縮財政は好ましくない。 • ⺠間の投資や労働供給を誘発する政府⽀ 出は必要。 • 脱炭素化ための補助⾦ • 少⼦化の流れに⻭⽌めをかけるための対 策も不可⽋。 ⇒ きわめて厳しい財政事情の中でMSSEの 考え⽅をどのように実現していくか?
• 賢い財政⽀出(ワイズ・スペンディング) • 政策⽬標を明確にし、効果が確認された⽀ 出のみを実施すべき。 • 実現は難しいがやるしかない! • 財源 • まずは費⽤対効果が⼩さい歳出を削減。 • 社会保障関係費の抑制も避けられない。 • しかし、わが国の政府債務は、それだけで は到底解消できない規模。 • 今後起こりうる危機に備え、平時のうちに 財政の健全化が必要。 • 増税や社会保険料の引き上げの道筋を⽰す ことは、危機を未然に防ぐと同時に、将来 世代の負担軽減という点から不可避。 • 炭素税によるGX経済移⾏債の償還財源

○MSSEは財政⾚字を容認する理論ではない! マクロ経済学における2つの考え⽅↓
•⻑期の経済成⻑:供給サイドの経済学 • インフラ投資、⼦育て・教育・温暖化対策 ⇒ 政府の役割が重要! • 潜在成⻑率を中⻑期的に押し上げ • 政府債務拡⼤は限定的 • 短期の景気対策:需要サイドの経済学=ケ インズ経済学のアプローチ • 不況期に、需要不⾜を補うため、財政⽀出 の拡⼤や⾦融緩和が必要 • 景気が回復した場合には、過去の政府債務 を償還し、⾦融緩和もやめることが重要 • しかし、景気回復後の債務償還が不⼗分に なる傾向 • ⽇銀の異次元の⾦融緩和も、政府債務拡⼤ につながりやすい ⇒中⻑期的な成⻑にはむしろマイナス
• MSSEを理由に、政府債務を過度に拡⼤すること は避けるべき! • MSSEでも、市場経済における競争がイノベー ションの源泉 • 政府の役割は、「市場の失敗」を是正すること に限定すべき。 • 政府による市場への過度の介⼊は、成⻑にはマ イナス • かつてのSSE(=新⾃由主義)が主張した「規制緩和」は依然として重要 • 「市場」ができることは、「市場」に任せるこ とが重要 • 市場メカニズムは、本源的には効率的 • 政府の機能は、市場を補完することに限定 • 効果が確認された政府⽀出のみを実施 • 市場と政府による最適なポリシーミックス。

次回も続き「資料3 成長と分配の好循環の実現(マルティン・シュルツ氏提出資料)」からです。

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