第53回社会保障審議会児童部会 資料 [2023年03月27日(Mon)]
第53回社会保障審議会児童部会 資料(令和5年3月13日)
≪議事≫ 最近の子ども家庭行政の動向について(報告) https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_31896.html ◎資料5 社会保障審議会児童部会放課後対策に関する専門委員会の議論状況について はじめに ・本専門委員会→平成 29〜30 年にこどもの放課後生活の重要性や放課後児童対 策の方向性、特に放課後児童クラブの今後のあり方について議論し、平成 30 年7 月 27 日に「総合的な放課後児童対策に向けて」と題する中間とりまとめを公表。 中間とりまとめ⇒こどもの放課後生活における目指すべき姿として、以 下の3つの視点を提示。↓ @児童の権利に関する条約と改正児童福祉法の理念を踏まえたこどもの主体性を尊重した育成(「こどもの最善の利益」を保障→放課後児童対策に関わる者のあり方も問われる。 こどもの主体性や自己決定力の尊重や育成が、児童の権利に関する条約 の精神からみた育成観)。 Aこどもの「生きる力」の育成(こどもの自主性、社会性や自立を育む観点に立ち、放課後生活と学校教 育を通じてともに「生きる力」を育成することが必要)。 B地域共生社会を創出することのできるこどもの育成( 地域社会を構成する一員として、人と人がつながり合い、多様性を許容 できるこどもを育てていくことが求められる。そのために、こどもが地 域に関わりをもって育つことが保障されなければならない。 ・これら3つの視点が、放課後児童対策におけるこどもの育成の理念として 貫かれることを求めた上で、こどもが育つ場が多様に用意される必要があり、総合 的な放課後児童対策の展開が求められる、とした。その後、平成 30 年9月 14 日付けで、「新・放課後子ども総合プラン」(文部科学 省生涯学習政策局長・初等中等教育局長・大臣官房文教施設企画部長、厚生労働省 子ども家庭局長通知。以下「新プラン」)が策定され、現在、これに基づ いた放課後児童対策が進められている。 ・新プランでは、令和5年度末までの以下の4つの目標が掲げられている。 @放課後児童クラブの待機児童解消を目指した受け皿の整備(量の拡充) A放課後児童クラブと放課後子供教室を一体的に又は連携して実施し、一体型を推進 B両事業の実施⇒学校施設を徹底的に活用 C放課後児童クラブの役割の徹底。 ・新プランの最終年を迎えるにあたり、幾つかの検討すべき喫緊の課題があること から、令和5年度に創設される「こども家庭庁」において継続的な議論が行えるよう、課題について議論し、現段階でできうる整理を行った。 また、放課後児童対策を議論⇒新型コロナウイルス感染症の感染拡大が、放課後児童クラブの運営に多大な影響を与えたことを考慮した議論 が求められ、また、児童館も重要な位置づけにある。放課後児 童クラブの議論と平行して、総合的に児童館のあり方を検討することとし、本専門 委員会にワーキンググループを設置して検討を行った。 なお、放課後児童対策について議論する際に、労働政策や教育政策についても視 野に含めることが必要であるが、本報告ではこども家庭福祉政策に絞ってとりまと めを行った。本報告における「放課後」とは、授業の終了後に加え、学校の 休業日(土曜日、日曜日、長期休業期間等)も含まれるものである T.放課後児童クラブの課題と施策の方向性について→次の3つの喫緊課題の検討。↓ 1. 放課後児童クラブの待機児童対策について↓ ・「実施状況調査」⇒令和4年5月1日現在支援の単位数は 36,209 支援の単位、 登録児童数は 1,392,158 人となり、過去最高を更新。なお、放課後児童ク ラブ数は 26,683 か所。放課後児童クラブの実施場所のうち、過半数(実施状況調査→令和4年5月 1 日現在、学校の余裕教室が 7,465 か所(28.0%)、学校敷地内の専 用施設が 6,696 か所(25.1%)が学校敷地内や余裕教室。 ・一方で、児童館など他の施設等を利用することで、放課後児童クラブを利用する のと同様に、放課後を安全・安心に過ごすことができるこどもも一定数いると考え られることから、放課後児童クラブだけでなく、自治体独自の事業や民間の預かり サービス等、多様な居場所を含めて総合的に検討することが必要である。 2. 放課後児童クラブと放課後子供教室の一体型の推進について ・全国の放課後児童クラブのうち、5,869 か所(41.4%)が一体型実施。 一体型の効果→所属の異なるこどもたちが交流できることや、放課後児 童クラブのこどもにとって、地域住民や学生、企業・団体、大学・研究機関等の参 加・協力による多様な魅力ある教育プログラムを体験できること等が挙げられる。 これは、両事業がこどもの最善の利益を保障し、地域全体でこどもを育んでいくと いう理念の共有の上に成り立っている。 しかし、一体型の考え方や目的が現場に浸透しているとは言えず、企画立案、実施場所の確保等の準備段階における放課後児童クラブと放課後子供教室の関 係者間の連携や、実際に支援に当たる人材の確保などの課題がある。また、待機児 童対策同様に学校の余裕教室活用や特別教室等のタイムシェア→教室 の利用調整や管理責任の明確化等の課題が指摘されている。 ・ 特に、両事業に関わる人材の確保→課題が大きいことが指摘された。 ・一体型の運営→放課後児童クラブに通うこどもの生活の場としての機 能を十分に担保し、育成支援の環境に配慮することが必要。なお、一体型を推進する際には、両事業の目的や趣旨を正しく理解することが重 要であり、放課後児童施策に期待されるところと重ね合わせて、検討することが求 められる。具体的には、目的・趣旨の違いを越え、こどもたちの放課後が豊かにな るよう、こどもの目線に立った検討が行われ、両事業に関わる人や団体の研修が合 同で行われる等、地域における連携や協働が実施されることを期待する 3.障害のあるこどものインクルージョンの推進について→受け入れクラブ 数、登録児童数ともに増加傾向。令和4年5月 1 日現在、受け入れクラブ数 15,801 か所(59.2%)、登録児童数は 53,813 人(3.9%)。今後も放課後児童クラブでの障害のあるこどもの受け入れは期待される。 令和3年成立「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」(令和3年法律第 81 号)が同年に施行、障害のあるこどもの保護者の就労を支援する観点からも、放課後児童クラブには 期待が寄せられるところであるが、職員体制等を理由に受入が困難であったり、障害特性に応じた対応ができずに退所を余儀なくされているケースがあることも報告された。放課後児童クラブにおける障害のあるこどもの受け入れについては、施設・設備、知識や技術をもつ職員の確保をはじめとした様々な課題があると言える。 ・ 障害のあるこどもの受け入れにあたっては、各自治体においてさまざまな工夫が 見られる。保護者の就労支援や、インクルージョン(包容・参加)の観点から、多 様な障害特性や医療的ケアの内容への対応が求められるようになるのではないか。 そのため、職員の質の向上のための研修等も期待される。 ・放課後児童クラブにおける障害のあるこどものインクルージョンの推進につい ては、医療的ケア児を含めてその実態を把握し、こどもの意見を中心とした上で保護者の意向はもちろんのこと、放課後児童支援員、市町村職員、関係機関・施設 等の意見も聴取しながら、引き続き議論されることを期待する。なお、児童館にお いても同様のことが考えられる。 4.その他の課題→放課後児童クラブにおける育成支援の質の向上に対する検討の必要性の指摘。また、多様な体験活動が創り出されるための人材等の中間支援 機能の参考事例や、デジタル技術等を活用することによって、課題を抱える等の 多様なニーズを有するこどもたちがつながる機会づくりも模索されている等の事 例も紹。特に遊びのプログラムの充実は、生活の質を高めることにつな がることから、引き続き検討を要する。 U.児童館について −児童館のあり方に関する検討ワーキンググループとりまとめ− 1. 検討の背景→「児童の権利に関する条約」に掲げられた精神及び児童福祉法の理念に のっとり、こどもの心身の健やかな成長、発達及びその自立が 図られることを地域社会の中で具現化する児童福祉施設。これまで各児童の創意工夫の下、こどもの年齢・発達に応じた育成、様々な悩みを抱えた保護者へ の相談支援を行うなど、地域の人々とともに、こどもや子育て家庭の居場所として、地域における児童福祉の向上の役割を果たしてきた。 児童館の機能・役割を見直していく中で、地域の児童館の中枢的機能 を有する大型児童館が果たすべき機能・役割や、こどもの健全育成に係る「遊び」 の位置づけなど、引き続き、検討を要する課題等は多岐に渡るが、令和5年度に 創設される「こども家庭庁」において取り組むこととされている「こどもの居場 所づくり指針(仮称)」の策定に向けて、継続的な議論が行えるよう、今後児童館 が果たすべき機能・役割等について整理を行った。 2.児童館の現状と課題→昭和 40〜50 年代の高度経済成長期に全国的に設置。その施設数は、平成 18(2006)年度の 4,718 か所をピークに減少傾向に転じ、ここ数 年は横ばいから減少傾向。令和2年 10 月1日現在、4,398 か所設置。民営が増加傾向にある。課題はありつつも、児童館の有用性はその位置づけや運営実態から理解できる。 特に、児童館は唯一こどもが自ら選んで行くことができる児童福祉施設、こどもが有する権利を保障する施設。遊びを通じた健全育成を 行うことで、こどもの福祉増進を目指すという目的そのものが希有であり、児童福 祉法に位置づけられたことの意義がある。 3.今後の児童館のあり方 (1)こどもの居場所としての児童館機能・役割の強化 (2)ソーシャルワークを含めた福祉的課題への対応強化 (3)大型児童館を中心とした、地域における児童館全体の機能強化 (4)児童館の制度について→以上(1)〜(3)の3つの視点が、総合的に展開されていくことが、児童館の今 後のあり方としてふさわしく、これらを実現するための制度が整備されていくこと が肝要である。 4.今後に向けて→改めて児童館の果たすべき役割を明確化し、その質を高める方 策を検討する必要があるだろう。すべての「こどもの居場所づくり」に対するこ ども家庭庁の今後の役割に大いに期待する。また、今後の児童館のあり方につい ては、この提言を踏まえて、議論を継続いただきたい。 議論においては、こどもの意見が重視されるべきである。こどもの意見反映の 機会は児童館運営のみならず、設置や改廃、運営者選定等のこどもに影響がある 場合が考えられる。こどもの意見の代表性に配慮しつつ、当事者であるこどもと 共に児童館のことを考える機会づくりが期待される。 なお、本ワーキンググループでは、今後求められる可能性のある論点についても 委員から意見があった。こども家庭庁がこども政策の司令塔機能を発揮する中で、 議論の機会があることを期待⇒児童厚生施設類型における、児童遊園のあり方について。社会教育施設等を含むこどもが利用する施設のあり方について 等。 おわりに ・ 本専門委員会は全 15 回に亘り、我が国の放課後のこどもたちの育つ場について 議論してきた。この間に、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、こども たちの育成環境には大きな影響があったことは間違いない。保護者の働く環境にも変化が見られ、放課後児童クラブの整備や利用に少なからず影響があった。 こども家庭庁設置が決まり、新・放課後子ども総合プランの最終年度を 迎える中、専門委員会を再開できたことは意義深い。 ・児童館についてもワーキンググループを設け、議論を行うことができた。課題 を整理し、今後のあり方を検討する過程において、既存施設を有益な資源と捉え、 多様な提案を行うことができた。引き続き、児童厚生施設の法的位置づけや、地 域における児童館の活動領域等を含めた総合的な議論が展開されることを期待する。 ・ 本専門委員会においては「こどもの権利」を基盤とした議論が行われた。こどもの権利保障の観点から、すべての関係者によって課題を解決していくという基本姿勢が求められる。「こども基本法」の理念を反映する制度等の改正の必要性についても検討が期待される。 ・ 放課後児童施策を担う人材の確保や養成、資質の向上、労働条件、職名、専門 性等について、多くの課題が指摘された。特に、こどもや子育て家庭の抱える課 題が深刻化・多様化しているなかで、こども家庭福祉専門職等の検討状況に合わ せた整理が期待される。 ・放課後児童施策→今回扱った論点以外にも多様な課題があることは認識している。例えば、社会的・文化的にハンディキャップをもったこどもたちのソー シャルインクルージョンについても検討していくことが求められる。 今後設置されるこども家庭庁において、放課後児童クラブや児童館は「こども の居場所づくり」の範疇で推進されると示されている。多くのこどもたちに関係 している放課後のあり方については、継続した議論が展開されることが望まれる。 その際、こどもを中心にしつつ、施設・事業・分野等の垣根を越えて、こどもの 放課後のあり方を検討する場を設けることを期待する。 特に、こどもの居場所として共通するところを大事にしつつ、放課後児童クラブや児童館がもつ固有の機能である「遊び及び生活の場における育成支援機能」を踏まえた議論が必要。また、今後政府で検討される「こどもの居場所づくり指針(仮称)」と放課後児童クラブ運営指針、児童館ガイドラインとの整合を 検討する場面も必要と考えられる。 ・ また、こどもが放課後を過ごす場は多様である。社会教育施設等を含むこどもが利用する施設相互の連携や協働のあり方についての検討が望まれる。特に、こどもの放課後に必要不可欠な「遊び」や「学び」はもとより、これらを支える「生活」について、時代の変化に応じた更なる検討が期待される。 ・ なお、議論においては、繰り返し「こどもが主体であること」や「こども参加」 に関する指摘があった。今後、地域のこどもに関わる施設等に参考となるような 「こども参加」の好事例集の横展開等の推進策が期待される。こども政策が目指 す「こどもまんなか社会」が放課後児童施策からも実現されるよう注視していき たい。 ・ そのためにも、こども政策の司令塔機能を持つこども家庭庁が、総合的な放課後児童施策を進めるための役割を発揮することを期待する。 次回も続き「資料6−1 新たな児童虐待防止対策体制総合強化プランについて」からです。 |