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社会保障審議会年金事業管理部会資料(第64回) [2022年12月20日(Tue)]
社会保障審議会年金事業管理部会資料(第64回)(令和4年12月13日)
≪議事≫(1)日本年金機構の令和4年度の取組状況について
https://www.mhlw.go.jp/stf/kanribukai-siryo64_00001.html
◎参考資料  業務・システム刷新プロジェクト憲章【第U版】
はじめに
→この憲章は、公的年金業務の「記録管理システム」及び「基礎年金番号管理システム」及びその周辺システムを利 用して行われる業務及びシステムの刷新を行うプロジェクトについて定めるものである。
<公的年金業務・システムの特性及び課題> →日本年金機構(「機構」)が担っている「公的年金業務」は、国民年金及び厚生年金保険等の被保険 者の適用、各種保険料の徴収、年金給付等の各種給付及びこれらに関連する相談対応に係る業務であるが、 2019 年(平成 31 年)3 月末時点で、被保険者 6,298 万人、受給者 7,059 万人、適用事業所 234 万事業所 (船舶所有者を含む。)を対象としている。事業主及び被保険者等から提出される各種届書の手続件数は、年金請 求などの給付関係を除いても年間約 13,800 万件(平成 23 年度時点)と膨大な届書の処理を要するものとなっている。 また、これらの届書の処理の結果として被保険者の加入記録などがつくられ、その記録が老齢・障害・遺族等の年金給付の基礎となっているところであり、年金記録の管理は、年金制度の変更があり得ることを前提としつつも、長期 にわたり細心の注意を払って一貫して正確に記録を管理しなければならないという、他に類例を見ない特色を持っている。 年金制度は、国民の安心や生活の基盤の重要な柱であるが、その中で、年金記録の管理は、年金制度の根幹に 関わる重要な基盤事務となっている。 他方、この年金記録の管理で中核的な機能を果たす「記録管理システム」は、1980 年(昭和 55 年)度からの稼働。その後の制度改正や業務改善など累次のシステム改修等がパッチワーク的に積み上げられ、プログラム 本数も「基礎年金番号管理システム」と合わせて約8万6000本に及んでおり、歴年によるシステム構造の複雑化、 ブラックボックス化など、新たな技術革新やニーズに適応しづらいものとなってしまっている。また、システム処理を 行うメインフレームの製造減少、利用言語の COBOL 技術者の減少傾向など、長期の安定的運用についても懸念が ある。
<これまでの経緯・背景>→ 年金記録に関するシステムをめぐっては、2006 年(平成18 年)に公的年金業務の業務・システム最適化計画が 策定(2014 年(平成 26 年)6 月改定。「最適化計画」)され、この計画に基づき、記録管理システム及 び基礎年金番号管理システム(以下「現行システム」)について、データセンターの統合、ネットワークの汎用化、周辺システムのオープン化や効率化等の取組を段階的に進めてきた。 また、マイナンバー制度の開始により、現行システムで実施していた基礎年金番号による年金関係業務内での情 報の連携に加えて、いわゆる刷新フェーズ1として、記録に関する届出を審査・電子決裁する経過管理・電子決裁 サブシステムの構築と対象届書の拡充に取り組んできている。 こうした中、政府では、「世界最先端デジタル国家創造宣言・官民活用基本推進データ計画」(2019 年(令和元 年)6 月 14 日閣議決定。以下「IT 戦略」)により、デジタルファースト(原則として、個々の手続・サービスが一 貫してデジタルで完結する。4)等の考え方のもと、行政サービスのデジタル化や、行政手続コスト削減等の様々な取 組を進めている。また、「厚生労働省デジタル・ガバメント中長期計画」(2019 年(令和元年)5 月 27 日改定)においても、「サービスの質の向上」、「業務運営の効率化や公正性の確保」、「IT ガバナンスの確立」等の目標が掲げられており、公的年金業務としても、最適化計画を踏まえつつ、これら各般の政府の方針に基づき、取組を進めていくこ とが必要になっている。 さらに、2015 年(平成 27 年)の不正アクセスによる情報流出事案や、2018 年(平成 30 年)の入力業務に係る 外部委託管理事案の発生など、情報セキュリティの確実な確保をはじめ、より適切な業務執行を可能とする業務基 盤を確立していくことも重要な課題となっている。
<システムの根本的問題>→ こうした状況に加え、そもそも現行システムは、システム構成上の構造の問題(個人別ではなく制度別・年金事務 所別で分割管理、システム構成が極めて複雑化し高負荷で改修等がしづらい)、システム機能上の問題(システム チェック機能が不十分、紙媒体での処理や手作業・目視チェックによる処理を前提にシステム構築されている等)、 発注者主導が確立できない問題(システムの中核部分の著作権やプログラム仕様等から特定ベンダでないと処理 できず、設計・開発・保守が特定のベンダに過度な依存状態である等)などの根本的な問題がある。 そして、この根本的な問題を背景として、新たな技術進歩への適応やデジタルファーストへの対応、機構の業務 体制の見直し、制度改正や業務改善への対応が迅速・的確にできない状況であるが、これら新しい環境やニーズに 対応していくためには、現行システムの改修といった対応では、根本的な解決を図ることができない。
<取組の方向性> →こうした状況を踏まえると、中長期的な視点からみて、公的年金業務サービスを持続可能なものにしていくために は、業務・システムの刷新を進め、確固たるサービス基盤を構築していくことが必要である。 このため、現行の業務プロセスについて徹底的な見直しを図るとともに、システムについても、現行のデータベース やサブシステムの構成そのものを刷新して、重複した機能を排除した簡素で効率的なシステム・プログラム構成とし、 能率的に業務が遂行でき、発注者主導が可能となるような業務体系・システムに全面的に改め、これらの環境の変 化への対応や根本的な問題を解消していかなければらならない。 そして、この新しい業務体系・システム構築を実現することによって、永続する技術進歩や社会変化にも十分に適 応できるような、中長期に持続可能な公的年金業務サービスの安定基盤を確立し、もって、サービスの質の向上、 業務運営の効率性・公正性確保、発注者側としてのITガバナンス(発注者主導の開発)の確立を目指していく。
<刷新プロジェクトの推進に向けて> →言うまでもなく、機構が担う公的年金業務は、「システム」と「人」によって支えられている。この刷新プロジェクトは、 旧来の業務体系・記録管理体系を根本から改め、より能率的で保守性が高く、持続可能な業務・システムに切り替えるものであり、まさに、機構の「未来」を創るプロジェクト。 他方で、今回、刷新の対象となる年金記録管理に関するシステムは、一億人を超える人々の生涯の記録を、おおよそ 100 年にわたり確実にお預かりする日本最大級の規模のシステムである。また、これまで長年にわたり管理して きた被保険者の年金記録の移行も含むものであり、そのシステム開発に当たっては、正確性の確保は欠かせない。 長年にわたって積み重ねられてきた旧来の業務やシステムを正確・確実に切り替えていくためには、膨大な業務とシステム機能の関係一つ一つを明らかにし、これに見直しを加える作業を要するものであり、相当のボリュームと困 難性、難易度を持つ「挑戦」のプロジェクトと言わなければならない。 また、こうした大規模性・困難性とともに、公的制度として正確性が要求される業務特性を踏まえれば、最新の開 発手法において重視される迅速性よりも、正確性、安全性、確実性、そして、稼働後の安定性をより重視していくこと が必要である。
このため、刷新プロジェクトを進めるに当たっては、拙速は避け、各過程ごとに、適切に検証を行いながら、ステッ プ・バイ・ステップで進めていくことが必要である。 一方で、この刷新プロジェクトは、多くの組織資源を投入して行うものでもあることから、一定の期間の中で計画的・ 迅速に集中して取り組んでいくことが必要。また、国民・お客様の理解が得られるよう、費用対効果に留意しつつ、直接の費用対効果として現れにくい、事務処理の正確性確保、迅速化等のサービスの質の向上、システムの拡 張性の向上などの面も十分に勘案しながら、適切に進めていかなければならない。 また、その際は、現行のデータベース等を前提にして取り組む先行的な措置(いわゆるフェーズ1として進めているペーパーレス化、大法人の事業所(資本金・出資金 1 億円超の法人)の電子申請の義務化を見据えた取組とい った政府全体の行政サービスのデジタル化等の取組や徴収対策系の強化等の対応)⇒できる限り早期 に取組を進めて、しっかりと効果を発現させていくことも必要。 このように、刷新プロジェクトは、慎重に、しかし、速やかに、国民・お客様の理解を得ながら適切に進めていかなけ ればならない。このため、各過程ごとに適切にプロジェクトをコントロールしながら進めていくことが大事である。 こうした認識のもと、将来にわたり、年金制度の信頼を確保し、質の高いサービスを確実に展開していける基盤を 創るため、厚生労働省年金局及び機構が相互に協力しながら一体となり、組織を挙げて、この刷新プロジェクトに挑 んでいく。 ここに、新たな環境変化・ニーズへの対応及び現在の業務・システムの持つ根本的な問題を解消する新たな業務体系・システムを構築し、中長期に持続可能な安定業務基盤を確立するとともに、サービスの質の向上、業務の 効率性・公正性の確保、IT ガバナンスの確立に資することを目指して、刷新プロジェクトを行うものとし、その目的、要 求事項、運営体制その他の基本的事項を明らかにするため、この憲章を制定する。

T 憲章の趣旨等
<憲章の趣旨>
→ ・この憲章は、刷新プロジェクトの目的、要求事項、課題、工期その他の基本的な方針を明確にし、関係者の共通認識を図るとともに、運営体制と権限・責任の明確化を図り、刷新プロジェクトの円滑かつ適正な実施に 資するために策定する。
<対象プロジェクト・期間>→この憲章の対象とするプロジェクトは、「刷新プロジェクト」とする。 「刷新プロジェクト」⇒公的年金業務の「記録管理システム」及び「基礎年金番号管理システム」 及びその周辺システムを利用して行われる業務及びそのシステムの刷新を行い、新たな業務体系及びそれを 支えるシステムを構築するプロジェクトをいう。 刷新プロジェクトの想定する期間は、刷新プロジェクトで新たに構築されるデータベース及びサブシステム開発が完了し、全体が稼働開始(遅くとも 2026 年(令和 8 年)1月 31 日までを目指す)し、検証を行った上で、当該 稼働が定常化・安定化したと認められるまでの間を想定する。
<見直し等>→この憲章は、刷新プロジェクトの基本的な方針、主要事項等を明確にすることとし、技術的事項の詳細等は別に定める。なお、本憲章の内容は、刷新プロジェクトの進捗や状況の変化等を踏まえながら、今後とも必要に応じ、見直しを行うこととする。

U 刷新プロジェクトの目的
1 刷新プロジェクトの背景→公的年金業務を取り巻く状況は、日々変化しており、新しい社会情勢やニーズに沿った業務・システム運用が求められるが、現行の業務・システムをめぐっては、以下のような課題等がある。これらの新たな変化、課題に対応できるようにしていかなければならない。 ↓

(1)新たな環境の変化・ニーズ↓
@ デジタルファースト・技術進歩への対応 〜デジタル化を前提とした業務・システムへ
〜→IT 戦略等により、デジタルファースト(原則として、個々の手続・サービスが一貫してデジタルで完結する。) 等の考え方のもと、行政サービスのデジタル化や、行政手続コスト削減等の様々な取組が進められ、厚生労働省デジタル・ガバメント中長期計画においても、「サービスの質の向上」、「業務運営の効率 化や公正性の確保」、「IT ガバナンスの確立」等の目標が掲げられている。   こうした中、既に電子申請の受理は取り組まれているものの、現行の事務処理は、紙媒体による届書の提出、紙媒体による事務処理を前提とした業務・システムとなっており、新たな技術進歩への適応がしづらい状 況となっている。
これら IT 化に向けた政府の方針や方向性、IT技術の進展を踏まえて、デジタル化を前提とした業務・シス テムへと転換(紙届書の処理を前提としたシステムからデジタルによるデータ処理・管理をベースとしたシス テムへ転換)していくことが必要となっている。 A 情報連携への対応 〜適切な情報連携による合理的なシステムへ〜→基礎年金番号による年金関係業務内での情報の連携に加えて、個人番号による他機関との情報連携に より取得した情報の活用が可能。個人番号による情報連携の進展によって、お客様・国民の負担の軽減と同時に、目視チェックや手入力 等の削減など、事務処理誤りが起こりにくいシステム・業務運用が可能になる。 個人番号に限らず、他機関との情報連携を適切に行っていくことで、可能な限り、これらの負担軽減が図 れるよう、業務・システムの刷新に取り組んでいくことが重要。  他方で、個人番号等の利用等に当たっては、セキュリティや情報管理等において、特に信頼性の高い業 務体制・システムを構築していくことが求められており、万全な対応をしていかなければならない。
B 効率的な業務運営体制の構築 〜効率的な業務運営体制を可能とするシステムへ〜→ 新たな業務ニーズや変化に迅速・適切に対応し、限りある人材や資源を有効に活用していくためには、各 年金事務所があらゆる業務を担うことを前提とした業務運営体制について、業務の標準化など全国統一的 な業務基盤を確立し、必要な機能集約などにも、柔軟に対応できるようにしていくことが求められている。 ・ また、本部が、現場や機構全体の業務の実施状況をタイムリーに把握・管理できるようにし、必要な対策 等をより的確に企画立案できるようにすることも必要。 これらにより、本部・拠点ともに、それぞれの役割に応じた機能を十分に発揮し、パフォーマンスの高い能 率的な組織として、業務を適切に展開できるようになることが期待される。 ・ こうした業務体制の方向性を踏まえ、機構全体の業務や実施体制の変革に柔軟に対応しつつ、PDCAサ イクルによる企画・運営を推進するシステムを構築していくことが求められている。
C 適正な業務執行の徹底 〜適正な業務執行が実現できるシステムへ〜→2015 年(平成 27 年)の不正アクセスによる情報流出事案や、2018 年(平成 30 年)の外部委託管理事 案の検証等を踏まえ、適正な業務執行の更なる徹底が必要となっている。 ・ 情報セキュリティ対策、IT 化による入力作業の削減、事務処理誤りのシステム面からの再発防止を図って いくことが必要であり、適正な業務執行を可能とするシステムとしていくことが必要になっている。

(2)現行システムの根本的問題 ↓
@ システム構造上の問題
〜個人別の記録管理ができる簡素・柔軟で拡張性の高いシステムへ〜→現在の記録管理システムでは、制度別・年金事務所別にデータが分割管理されており、これに伴い、機能 も制度別に分割して構築されている。 さらに、過去数十年にわたる累次の制度改正や改修等もパッチワーク的に加わることで、制御管理等も膨 大な規模で複雑化し、現行システムの運営・メンテナンスに係る負荷が高いシステム構造となっており、制度 改正や業務改善のためのシステム開発やその改修に係る影響調査に多くの時間と費用を要している。 また、現行システムは、厚生年金・国民年金といった制度別を基本として、基礎年金番号をキーとして紐づけ、基本情報を共有した上で、各制度別の情報を管理する仕組みとなっているが、この仕組みのままでは、 個々のライフサイクルの多様化が進む中で、個人の年金記録を長期間にわたって正確かつ適正に管理しづ らい。 さらに、年金事務所別に被保険者や事業所の情報が作成・管理されてきており、そうした年金事務所別の 管理を前提とした事務処理系事務と対策系事務をシステム化したため、年金事務所の管轄に紐づけた記録 の持ち方となっており、権限や対象を柔軟に見直していく際の足かせとなっている。このため、制度別・年金事務所別ではなく、個人別に記録管理を行うシステム構成に基本構造を改め、システムの維持・改修等への負荷が低い、重複する機能を排除した簡素で効率的なシステム・プログラム構成 等とすることで、中長期の視点からみて、様々なリスクや将来の改善、個人番号による情報連携等に適切に 対応できるようにしていくことが必要となる。
A システム機能上の問題 〜事務処理誤りのリスクが生じにくい能率的システムへ〜 → 現行システムでは、職員によるデータ入力を基本とし、年金給付に最低限必要な情報を登録する処理を 前提としているため、届書審査時のシステム・チェック機能が十分に具備されておらず、職員の手作 業や目視による確認・チェックが必要となり、確認・決定誤りの原因と。 届書の受付・進捗管理についても、システム連動がされていないため、届書受理後の書類管理誤りや未 処理・処理遅延が生じる原因となっている。 ・ 更に、現行システムは、給付につながる記録管理が主たる目的であったことから、そもそも対策系業務(徴 収事蹟管理等)の機能が具備されておらず、対策系業務の標準化も遅れているため、職員はツールや紙を 用いて手作業で業務・管理を行っている。このため、拠点での作業の負荷が過重になっていると同時に、本部で対策系業務の詳細が管理できていない状況。 また、現行システムが構築されたときの業務運用から、社会情勢の変化やIT技術の進展に伴う業務運用 の変更に対応できていない機能もある。例えば、二以上の事業所に勤務する被保険者については、かつて は事例数が少なかったことから、選択事業所、非選択事業所それぞれの被保険者として加入情報を保有できる仕組みになっていない。電子申請も、業務運用として紙で事務処理を行うことを前提にしており、デジタ ルファーストに対応できないシステムとなっている。 ・ このため、システムの基本構造とともに、紙媒体や手作業を前提にした業務の在り方そのものも見直してい くことにより、事務処理誤りのリスクを最小化し、正確かつ能率的な業務遂行が可能となるようにしていく必要。すなわち、システムチェックや処理機能を基本にしたシステム、電子申請へ効率的に対応するシス テムへと根本から切り替えていく必要がある。
B 発注者主導が確立できない問題(特定ベンダへの過度な依存) 〜オープン性が確保され、発注者主導の 下で競争が働きやすいシステムへ〜→ 現行システムの中核部分は、発注者主導の要件定義や設計開発が十分ではない状況にある。システム の運営や改修・更改を特定のベンダに過度に依存してしまい、発注者責任を十分に果たしていない状況が 続いている。 このため、システム改修等のあらゆる場面において、特定ベンダの状況等に左右されやすい。 また、プログラム仕様や言語等を特定のベンダでないと処理ができなかったり、「ブラックボックス」の存在 などによる特定ベンダへの過度な依存状態(いわゆる「ベンダロックイン」。以下同じ。)により、競争性も働き にくく、高コストとなりがち。 また、現行システムの主要機能はメインフレームで構成されているが、メインフレームの新規開発・製造自体が少なくなっており、利用言語である COBOL も技術者が減少傾向にある。そのことも、中長期的にみて、 価格・採用技術の競争が働きにくく、高コストとなりがちな要因の一つとなっている。 今後、低コストで適切に保守運用・改修等もできるよう、システムのオープン化(システムの著作権が国又 は機構に属するようにしていくとともに、システムのアーキテクチャを可能な限りオープンな標準に基づくもの とし、業務やシステム仕様等の内容を可能な限りオープンにしていくなど、幅広い事業者が参画しやすいよう にしていくことを通じ、ベンダロックインを解消していくことをいう。以下同じ。)され、発注者主導で競争が働き やすいシステムにしていくことが必要である。

2 刷新プロジェクトの目的↓
(1) 1の(1)で述べた新しい環境の変化・ニーズに対応し、かつ、1の(2)で述べた根本的な問題を解消する新た な業務体系・システムを構築して、中長期に持続可能な公的年金業務の安定基盤を確立する。
(2) また、(1)で述べた新たな業務体系・システムの構築を通じ、@サービスの質の向上、A業務運営の効率 化・公正性の確保及びBIT ガバナンスの確立等に資する。
(3) なお、(2)の@からBに掲げるものの具体的な内容は、以下のとおり。
@ サービスの質の向上(正確性・迅速性・負担軽減等)
A 業務運営の効率化・公正性の確保
a) システムチェックの拡充等による効率化・公正性の確保
b) 全国統一業務基盤の確立等による効率化・公正性の確保
c) システム構成と業務の見直しによる運営コスト全体の最適化と業務運営の効率化・公正性の確保
B IT ガバナンスの確立→ 発注者主導で、自立的に年金業務システムの維持管理ができるよう、刷新プロジェクトの実施を通じて、機 構の発注者としての管理手法と体制を確立し、IT ガバナンスを確立する。

V 刷新プロジェクトの基本的な進め方と主な内容 ↓
1 基本的な進め方
→刷新プロジェクト⇒社会保障審議会年金事業管理部会情報セキュリティ・システム専門委員会(「専門委員会」)の提言も踏まえながら以下の進め方を基本。
→「年金業務システムの開発(フェーズ2)について」(平成 30 年 6 月 5 日専門委員会)。 「年金業務システムの開発(フェーズ2)に向けた基本方針について」(平成 29 年 7 月 14 日専門委員会)。↓
(進め方の基本方針)↓
(1) 複数ベンダの調達参加・汎用性の高い製品等の採用
(開発に当たっては、システムのオープン化を図るため、可能な限り、複数ベンダの調達参画の下で行うこと を目指すとともに、開発後の保守・改修等に対してもオープン性汎用性の高い製品や方式等を極力活用)。 (2) 事業者との連携・コミュニケーションの強化(各工程(開発準備工程を含む)においては、発注者と受託者間で、重要な方針や、全体の方向性、進捗 状況や課題等の共有などについて、受託者との連絡協議等の場を活用し、密接なコミュニケーションを図る)
(3) 開発準備工程・業務プロセス点検の実施(正確かつ効率的な業務刷新を実現する観点から、機構において、刷新後の業務の進め方・システム処理 の在り方等の方向性を検討しつつ、徹底した業務プロセス点検を行った。 併せて、フェーズ2の本格開発に先立ち、設計方式の妥当性等を検証する観点から、開発準備工程を行 っている。 これらの結果等を踏まえて、本格開発に係る仕様等に適切に反映させる)。
(4) 段階的な開発と検証(この刷新プロジェクトは、難易度が高く、膨大な開発規模になるものであることから、正確を期すため、各過程ごとに、適切に進捗管理と検証を行いながら進める必要があるため、段階的に進めることとし、大きく分けて、フェーズ1・フェーズ2の二段階で進める。 その際は、早期に実現可能なもの、開発ニーズの高いもの等は、可能な限り速やかに、開発等に取り組む ことを基本、フェーズ1、フェーズ2のそれぞれの開発についても、それぞれの機能の性質、ニーズ等を踏まえつ つ、開発可能な粒度かつ合理的な範囲で工程等を分割し、段階的に進める。 これら段階的に開発を行う際には、それぞれ、それまでの過程で判明した課題について、以降の開発への 反映の必要性などの検証を適切に行いながら進め特に、開発準備工程⇒その結果等を踏まえ、総合的に検証を行い、刷新プロジェクトの在り方を 含め、必要な見直しを検討する。
(5) IT ガバナンスの確保(この刷新プロジェクトは、難易度が高く、膨大な開発規模になるものであることから、政府のデジタル・ガバメント推進標準ガイドラインに則り、発注者の IT ガバナンスを確保して推進する。)
2 フェーズ1・フェーズ2 (対象範囲等) ↓
(1) フェーズ1
→記録管理に係る事務処理業務全般について、現行データベース等を前提としつつ、デジタルファーストも 踏まえ、可能な限り個々の処理が一貫してデジタルで完結するよう、業務プロセスやシステムの見直しを行う。 これらのシステム開発では、当面、フェーズ2が完了するまでの先行的な措置として、フェーズ1では、対象届書に対して、原簿更新機能を除いた経過管理・電子決裁サブシステム(フェーズ 2 のサブシステム構成における記録管理・決裁サブシステム)等を 構築。 なお、新たな刷新形式データベースへの移行を伴うものを除いては、原則としてフェーズ1の対象とし、効 率化効果の高い届書や早期に実施可能なもの(合理的に開発を進めるため、処理件数が多いなどニーズの 高い主要なもの、開発上の技術的難度が高くないもの等)は優先的・段階的に開発等に取り組み、業務・シ ステム刷新を進めることを基本とする。 ・ フェーズ1で開発を行ったシステムについて、現場の意見等も取り入れつつ、必要な改善を随時行う。
@ 事務処理のペーパーレス化 紙届書の移動及び紙媒体での証跡管理の廃止を図る。
A 事務の省力化・正確性の確保(手作業や目視等のシステム化)
B 情報連携の推進(個人番号)
C 確実な経過管理の実施(事務処理の経過管理・電子決裁を通じて、処理漏れや遅延の防止。事務処理の仕分け作業を解消するため、記録管理に係る全ての届書を画像化、処理状況の進 捗管理について経過管理・電子決裁サブシステムによる一元管理を図る。)
D 電子申請への対応
E 統計・業務分析サブシステムの開発
F 徴収対策系機能の強化
(2) フェーズ2→Uの目的を達成する新たなシステムの開発・稼働を図る。具体的には、以下の@からBを行う。 @ 新たな刷新形式データベースの構築とデータ移行(記録管理システムの被保険者及び事業所原簿のデータベースを、制度別・年金事務所別から、個 人別・全国ベースにデータ構造を見直し、刷新形式データベースの運用へと移行する)。 A サブシステムの再構築 ・ サブシステムは、Xの1(システム構成全体の基本方針)の考え方に沿って、分割して構築。 ・ サブシステム構成の在り方⇒開発準備工程の結果等を踏まえ、確定する。 B 事務処理の電子化・統一化の完成

W 開発準備工程・業務プロセス点検の実施
1 開発準備工程
(1) 開発準備工程の概要
→開発準備工程⇒本格開発に向けた見通しを得るために、選定した一部のユースケースを対象に、詳細 設計からテスト工程までを実施し、更に実機によるアーキテクチャの妥当性及び性能検証を行う工程のことを いう。
(2) 開発準備工程の目的→フェーズ2の本格開発を見据えたプロトタイプを作成し、設計方式の妥当性や性能を検証することにより、本開発工程におけるリスクの回避、課題の抽出、見積精度の向上等を図り、本開発に向けた見通しを得る目的。
(3) 実施時期・期間→令和元年 10 月から令和 2 年 9 月 7 大規模システムを、業務機能のまとまりを範囲として、あるいはシステムの基盤のみを切り出して、適度な規模に分割したもの。 開発準備工程で前提としているサブシステム構成は以下の(1)から(8)のとおり。なお、開発準備工程でプロトタイプ開発するサブシステム は(2)から(4)。
(1)記録管理・決裁サブシステム、 (2)記録照会サブシステム、(3)帳票作成サブシステム、(4)保険料債権管理サブシステム、(5)滞納整理事蹟管理サブシ ステム、(6) 統計・業務分析サブシステム、(7)情報連携サブシステム、(8)適用業務支援サブシステム(既設)(別紙1−1参照)
(4) 開発準備工程推進協議会→希望する事業者及び機構・年金局で情報収集・共有等を行うため、 開発準備工程推進協議会(以下「協議会」)を設置する。
(5) 協議会の協議事項等→ @具体的な実施方法等の協議(協議会では平成 29 年 12 月から平成 30 年 11 月までの間、主に次の事項を協議し、開発準備工 程に係る調達仕様書の作成にあたっての参考情報とした。 ア サブシステム構成等の在り方 イ 対象ユースケース等の在り方 ウ 開発管理標準等の在り方 エ 性能検証のレベル オ 主要製品の在り方)。 A 役務の進捗状況等の共有(開発準備工程の役務の開始以後における役務の進捗状況等について情報提供する。)
(6) 開発準備工程で開発するプロトタイプ・性能検証のレベル→業務関係のシステム⇒機能ごとに分類されたサブシステム構成として、サブシステム間の独立性を 高めた構成で、プロトタイプ検証を行う。 対象とするユースケースは、対象サブシステムを網羅でき、業務処理パターンを網羅し、かつ、1回当たりの 処理量の多いものを選定。 アーキテクチャ・性能の妥当性検証の観点整理を行い、作業深度について事業者の意見を踏まえて、完全 な実運用を想定したレベルではなく、おおよその網羅性を想定してアーキテクチャ・性能の妥当性検証に耐え うるレベルで検証を行うこととする。
(7) 開発準備工程での主な確認事項等→開発準備工程の目的に照らし、主に以下の点を重点的に確認。 @ プロジェクト管理方法(マルチベンダで効率的に並行開発を行うことを踏まえたプロジェクト管理方法が確立されているか。 プロジェクト管理関連業務の中で、更に効率化、改善を図れる点がないか)。 A 開発方法(開発標準、規約、作業手順、成果物等に沿って開発作業が実施されることが効率的かつ有効であるこ とが確認されているか。 各種ドキュメント作成における重複の排除、ドキュメントの簡略化、自動作成等を再評価し、真に必要な 成果物が確認されているか)。 B プロトタイプ開発の開発生産性(プロトタイプ開発に基づく、詳細設計からテスト工程までの開発生産性が実績に基づいて示されているか)。 C アーキテクチャの妥当性及び性能検証 (別紙1−1、別紙 1−2 参照)(業務アプリケーションと基盤ソフトウェアの境目が明確化されるなど、アーキテクチャ設計等の妥当性が 確認されているか。 多種、多様、大量のデータを管理、利用して、短期間に処理を行う必要があるという年金業務の運用特 性を踏まえた性能を満たせているか。 新たなサブシステム構成の妥当性が確認されているか。 開発準備工程の前提として選定したソフトウェア製品等の適切性が確認されているか)。 D 各作業工程への評価 (各作業工程への評価結果を踏まえて、必要な見直しが提起されているか。 開発準備工程では、主に上記の点を確認した上で、その結果について総合的に検証を行い、全体アー キテクチャ設計の具体化、開発対象の分割可能性、開発方法、基本設計書や詳細設計書の縮減可能 性、開発標準の妥当性、変更管理ルール、開発時のプロジェクトマネジメントツール、本開発で用いる製 品や仕様などの検討・確定に向けた情報を得る。 上記に掲げるもののほか、開発準備工程に関し必要な事項は、機構が別に定める)。
(8) 受託者との意思疎通( 開発準備工程の検証過程において、発注者と受託者間で、進捗状況や課題、受託者からの技術提案等の共 有ができるよう、受託者との連絡協議等の場を開催する)。
(9) 留意事項等( 開発準備工程の実行に当たっては、専門委員会が提言した「開発準備工程に先立ち検討すべき事項」を踏 まえる)。

2 業務プロセス点検
(1) 業務プロセス点検の基本的内容
→刷新プロジェクトで開発したシステムが現場で
円滑に利用されるようにするため、利用者視点を含めて設計 内容の妥当性が十分に検証されるよう、業務プロセスの点検を実施した。 ・ その際は、主に(2)に掲げる観点から年金記録の正確性確保、デジタルファーストの推進、お客様の利便性 の向上及び業務の効率化を実現できるよう、利用者視点による検証を行った。 このような点検を踏まえて要件定義書を作成することにより設計・開発後の大幅な変更や稼働後の見直しを 防ぐのみならず、開発されるシステムの要件の完全性を確保するとともに、機構内における刷新プロジェクトの 理解の促進・体制強化を行っている。 ・ 業務プロセスの点検で用いる業務プロセス図等を作成することで、設計・開発業者と発注者が共に業務プロ セスを理解し、要件や設計の安定化を図る。 具体的には、業務プロセスについて、業務プロセス図(AsIs)を作成して現状を整理した上で刷新後の姿 (ToBe)を検討し、業務プロセス図(ToBe)や画面、帳票等を作成し、業務プロセス(AsIs・ToBe)の「見える化」 を行った。そして、事業部門担当者や現場の実務に詳しい拠点職員等からなる実情点検 WG 等において、業務プロセス図(AsIs・ToBe)等を確認し、利用者視点による業務要件の妥当性・網羅性等を検証し、検証を踏 まえて業務プロセス図等を修正した。(業務プロセス図(AsIs・ToBe)、画面イメージ、帳票イメージ、AsIs から ToBe への変更の概要等を作成)。 最終的には、システム開発の要件定義上必要となる業務プロセス図等の確定を行った。 これらの業務プロセス点検は、2019 年(令和元年)10 月末までに、基本設計修正工程の対象となる 260 プ ロセスについて完了した。 ・ 作成した業務プロセス図等については、今後の設計・開発段階においても必要な修正を行うとともに現行の 業務の変更等を適時のタイミングで反映するなど適確に変更管理を行う。また、稼働後も年金制度改正等を 反映し、維持・管理段階において活用を図る。
(2) 業務プロセスの点検の観点
→@ ペーパーレス化の推進 A システムチェック等が可能な手作業のシステム化・自動化 B 処理時間の短縮・処理遅延の削減 C 不要な業務・機能の廃止、統合 D 拠点を超えた事務処理、進捗管理(事務処理の標準化・全国一元管理)E 事務処理誤りの検証
(3) 業務プロセス点検結果の要件定義への反映プロセス →業務・システム刷新本部9において、業務刷新の方向性等を確認するとともに、業務の機能等に応じて業務 プロセス点検の結果について確認した。確認された点検結果を踏まえ、設計・開発に対する要件定義書を確定 させる。業務プロセスの点検で作成した業務プロセス図(ToBe)等については、要件定義書の一部として活用す る。

次回もこの続き「X システム構成・業務アプリケーション・データ管理の基本的な考え方」からです。

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