第50回社会保障審議会生活保護基準部会 [2022年12月01日(Thu)]
第50回社会保障審議会生活保護基準部会 資料(令和4年11月22日)
≪議事≫(1)報告書(案)について (2)その他 3. https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_29291.html ◎資 料 1−1 社会保障審議会生活保護基準部会報告書(案) T はじめに→生活保護の基準⇒生活保護法に基づき厚生労働大臣が定め、昭和 59 年度以降、一般国 民の消費実態との均衡上妥当な水準を維持するよう設定(水準均衡 方式)。 平成 16 年の「生活保護制度の在り方に関する専門 委員会」による提言を受け、平成 19 年以降、消費実態に係る統計調査のデータ 等を用いて定期的に検証が実施されてきた。生活保護基準部会(「本部会」)⇒生活保護基準の定期的な評価・検証について審議する専門の部会として平成 23 年2月から社会保障審議会の下に設置され、生活扶助基準について、一般低所得世帯の消費実態との均衡 が適切に図られているか否かを見極めるため、専門的かつ客観的に検証を実施することとしている。 ・5年に1度実施される全国家計構造調査(旧 全国消費実態調査)の 2019 年 調査の結果が取りまとまったことを受け、令和4年は、同調査のデータ等を用 いて生活扶助基準の検証を実施する時期に当たるため、令和3年4月から令和4年●月まで、本部会を●回開催し、平成 29 年 12 月 14 日付の本部会報告書(「平成 29 年報告書」)におい て検討課題とされた事項や生活保護基準の新たな検証手法の開発等に関する検討会(「基準検討会」)における「これまでの議論を踏まえた検討 課題と論点整理」(令和3年3月2日。以下「論点整理」)を踏まえつ つ、下記 a)〜c)の検証等に関する議論を重ねてきた。⇒ a) 生活扶助基準の水準等の妥当性の検証 b) 生活保護基準の体系に関する検証 c) 過去の生活保護基準見直しの影響分析。 ・令和4年度における検証作業として、上記 c)の影響分析を行った上で、今 般、a)に関する検証結果を取りまとめたので、これを報告する。また、上記 b) に関しては、生活保護基準における級地区分の検証を行い、令和3年9月に分 析結果をまとめたので、本報告書においては当該分析結果のまとめを改めて掲 載する。 U 過去の生活保護基準見直しによる影響分析 (1)平成 30 年度以降に実施された生活保護基準見直しの概要 (2)検証方法 (3)検証結果 V 生活扶助基準の水準等の妥当性の検証→現行の生活扶助基準⇒一般国民の消費実態との均衡上の妥当な水準を維持する「水準均衡方式」の考え方により設定、生活扶助基準の水準に関する評価・検証に当たっては、一般低所得世帯の消費実態との均衡が適切に図られているかという観点から検証を行うことが基本。 V−1 2019 年全国家計構造調査の取扱い (1)生活扶助相当支出品目について→第1類相当・第2類相当の 区分は別紙資料5。 (2)標本規模について→2019 年全国家計構造調査⇒2人以上世帯は標本規模が小さくなったことには留意。 (3)調査対象期間について→ @ 検討課題 A 確認結果( a) 消費税率引上げ等の前後の消費支出の動向 b) 令和元年における 10・11 月の消費支出の水準) B 調査対象期間に関する留意事項 (3)調査対象世帯について V−2 生活扶助基準の水準の検証 (1)検証方法→基準設定の基軸とされる「標準世帯」が 33 歳、29 歳、4歳の3人世帯であることを踏まえ、引き続き夫婦子1人世帯をモデル世帯検証。2019 年全国家計構造調査により、夫婦子1人世帯の年収階 級第1・十分位における生活扶助相当支出額の平均を算出、生活扶助基 準額と比較することにより評価・検証を行うこととした。 (2)確認する指標→夫婦子1人世帯の年収階級第1・十分位の状況が、平成 29 年検証時に参 照した集団の状況と大きく変化していないかを確認する観点から、下記 a) 〜c)の指標について、それぞれ以下に続く考え方により確認を行い、状況 の評価をすることとした(下記 a) 〜c)の指標 参照のこと)。併せて、下記 d)〜f)も参照のこと。 (3)固定的経費の算出方法→ @ 固定的経費の判定を行う支出項目の単位 A 固定的経費の判定方法 B 固定的経費・変動的経費の判定結果(食料〜その他の消費支出) (4)検証結果→状況が概ね改善。夫婦子1人世帯における生活扶助相当支出額は 140,514 円、生活扶助基準額 137,790 円を2%程度上回っている。 V−3 生活扶助基準の較差の検証 (1)検証方法→「従前の方法」によることの確認。 (2)消費実態の較差の算出方法→ @ 基準体系の構成要素に関する説明変数(世帯人員別の較差指数を算出するための世帯人員数に関する説明変数、年齢別の較差指数を算出するための各年齢階級の構成割合) A 回帰分析の対象世帯の範囲(単身世帯、2人世帯、3人世帯、4人世帯、5人世帯のそれぞれにおい て年収階級第1・十分位を対象) B 年収に関する説明変数(年収に関する説明変数は設定しないこととした。) C 住居・資産に関する変数(ダミー変数を設定) D 外れ値の取扱い(トップコーディングは行わない) E 消費実態の較差の分析に用いる回帰式 F 消費実態の較差指数の算出方法 (3)消費較差指数の算出結果の確認→ @ 消費較差指数の算出結果 A 年齢別較差指数の差異の要因についての確認(第1類の年齢別較差指数の算出に用いる回帰式 参照) B 年齢別較差指数の算出構造についての確認(@確認方法)(A確認結果⇒算出構造より精緻に消費較差を捉えられるようになった) C 世帯類型間の消費較差(第1類)の反映状況の確認結果(今回の方法による世帯類型間の較差は、若年単身世帯を起点とした場合、従来の方法と比べ、概ね支出平均による世帯類型間の較差との乖離 が小さい状況となっている。) D 家賃・住宅ローンの金額の程度による影響の確認(持ち家や家賃支払いの状況については持ち家か否かのダミー変数により、住宅ローン支払いの状況についてはその支払い有無のダミー変 数によりコントロールすることとして問題ないと考えられる。) (4)検証結果→ @ 今回の方法による消費較差指数と基準較差指数の比較結果A 級地区分を3区分とした場合の算出結果B 検証結果に係る留意点 V−4 新型コロナウイルス感染症による影響等→今回、2019 年全国家計構造調査を用いて生活扶助基準の検証を行ったが、 当該調査の実施時点以降、新型コロナウイルス感染症による影響等で社会経 済情勢が変化している可能性があったことから、より直近の生活扶助基準の評価に資するよう、月次の消費動向を把握できる家計調査により、令和元年 以降の消費動向の確認を行った。その結果として、令和元年以降、令和3年にかけて、夫婦子1人世帯の年 収階級第1・十分位及び第1・五分位における生活扶助相当支出額は、新型 コロナウイルス感染症の影響等もあって減少していることを確認。 費目別⇒「食料」が増加する一方で「交通・通信」が減少するな ど、消費行動に変化があったものとみられるが、新型コロナウイルス感染 の影響による減少は、一時的なものである可能性に留意する必要がある。 特に、交際費やこづかい(使途不明)等の減少は、一時的なものである可 能性が高いとの指摘があった。 したがって、令和元年以降の新型コロナウイルス感染症による影響等を含 む社会経済情勢の変化について、2019 年全国家計構造調査による検証結果 に、家計調査等による経済指標の動向により機械的な調整を加えて消費実態 との均衡を評価することは難しいと考えられる。 V−5 新たな検証手法に関する検討 (1)検討事項→一般低所得世帯の消費実態との均衡が適切に図られているかという観点 から検証を行うことについては、これまでの検証方法との継続性、整合性 にも配慮した透明性の高いひとつの妥当な手法、平成 29 年の生活 保護基準部会報告書において「一般低所得世帯との均衡のみで生活保護基 準の水準を捉えていると、比較する消費水準が低下すると絶対的な水準を 割ってしまう懸念があることからも、これ以上下回ってはならないという 水準の設定について考える必要がある」という指摘がなされていたことから、今回、消費実態との比較によらない検証手法についての検討も行うこ ととした。 具体的には、「MIS手法による最低生活費の試算」及び「主観的最低 生活費の試算」について、調査研究結果 が、必ずしも基準額の設定の直接的な根拠となり得るものではないことに 留意しつつも、消費実態に基づく検証結果との関係において、補完的な参 考資料として、どのように参照することが可能かの検討を行った。 また、消費実態だけでなく生活の質も踏まえた検証を行う観点から、基 準検討会における論点整理も踏まえ、生活保護世帯における生活の質の面からみた生活実態・意識の分析を行った。 (2)各調査研究における試算結果の参照方法の検討→ @ 各調査研究における試算結果 a) MIS手法による最低生活費の試算結果 b) 主観的最低生活費の試算結果(一部抜粋) A 試算結果の評価→予算制約の影響を受ける一般低所得世帯の消費実態との比較では、必 要な最低生活費が算定できない懸念があるため、こうした研究は意義が あるとの意見があった一方で、実際の一般市民の生活はそれぞれの予算 制約の中で営まれており、予算制約を外した各調査研究の試算結果をど のように取り扱うかは慎重に検討する必要があるという意見。 また、各調査研究の試算結果は、いずれも一般市民が最低生活費について判断した結果をまとめたものとなるが、一般世帯の平均的な消費支 出額以上の水準となる試算結果も見られることから、一般市民が考える 「最低限の生活」が、平均的な人並みの生活を思い描くものとなってい ないか留意する必要があるとの指摘があった。 最低生活費を考えるに当たっては、費目によっては、必要な単位で積 み上げるべきものもあるという意見があった一方、生活扶助本体は、生 活の費用全体を扶助し、支出する費目の選択の自由を認めているので、 費目別に水準を見る前提で検証を行うのは望ましくないのではないかと いう意見があった。 B 検討結果→今回、様々な意見があり、部会として結論を得るには至らなか った。 一般低所得世帯との均衡のみで生活保護基準の水準を捉えていると、 比較する消費水準が低下すると絶対的な水準を割ってしまう懸念がある ことから、消費実態との比較によらない手法によって、その下支えとな る水準を明らかにする取組は重要である。 一方、一般国民の消費実態との相対的な関係によらず社会的な最低生 活の水準を規定しようとすると、各調査研究の結果を含めて様々な定義 が考えられることから、国民の理解が得られるかという課題もある。 こうした絶対的貧困の概念は、探索的な部分があり、現時点では、それにより多くの人の納得を得て、貧困水準を規定するというところまで は至っていないと考えられる。 最低生活費の水準を議論するに当たっては、引き続き一般低所得世帯 の消費実態との均衡が適切に図られているかという観点から検証を行う ことを基本としつつも、消費実態に基づく手法以外に、理論的根拠に基 づいた、複雑ではない生活扶助基準の検証方法を開発することについ て、今後も議論を重ねていくことが重要。 (3)生活の質の面からみた生活実態・意識の分析→ 消費実態だけでなく生活の質も踏まえた検証を行う観点から、「家庭の生 活実態及び生活意識に関する調査」等を用いて、生活保護受給世帯及び一 般世帯の生活実態・意識について分析を行った。 具体的には、「家庭の生活実態及び生活意識に関する調査」において調査 された社会的必需項目にあたる下記の 13 項目について、生活保護受給世帯 と一般世帯(全世帯)の不足状況の比較を行った。 生活保護受給世帯は、一般世帯と比較して、社会的必需項目が不足して いる割合が高く、特に、「急な出費への対応」ができない、金銭的な余裕がないために「親族の冠婚葬祭への出席」ができない、「生命保険等の加入」 ができないと回答した割合が高かった。 また、同程度の収入階級における生活保護受給世帯と一般世帯を比較し た場合でも、生活保護受給世帯の方が一般世帯よりも社会的必需項目が不足している結果となった。 このような差がみられた要因として、例えば、「急な出費への対応」や「親族の冠婚葬祭への出席」に関しては、生活保 護受給世帯は預貯金等が少ない状況にあること、 生命保険等の加入」に関しては、生活保護受給世帯は貯蓄性の高い保険 への加入が認められていないこと などの影響も考えられる。 なお、社会参加の状況や健康状態を含めた生活水準は、金銭給付の水準 のみによって評価されるものではなく、他の支援と相まって確保されるものであることにも留意する必要がある。 V−6 検証結果を踏まえる上での留意点→厚生労働省において、今回の検証結果を踏まえて、具体的な基準の見直し を検討する際には、検証作業に用いた集計結果等を機械的に適用するのでは なく、各検証結果に係る留意点を十分に踏まえて対応するよう強く求めるも の。 特に、生活保護を受給する個々の世帯の生活に急激な変化を生じさせない ように十分配慮することが必要である。 また、生活扶助基準を参照する他制度について、一般低所得世帯の生活へ の影響に配慮することも重要である。 W 生活保護基準における級地区分の検証 (1)検証の背景→各地域において同一の生活水準を 保障する観点から、級地制度により基準額の地域差が設けられてきた。 現行の級地区分⇒昭和 62 年度に、当時、級地間における一般世 帯の生活実態に相当の較差が認められたことを踏まえ、従前の3級地制から 現行の6級地制に級地区分を細分化する見直しが行われて以降、市町村合併 による上位級地への統合以外の見直しは行われていない。 一方で、地域における生活水準の実態は、昭和 62 年度当時から変化してお り、自治体等からも級地区分の見直しの要望があることから、級地区分について、現在の実態を把握し、検証を行う必要があった。 本部会においては、令和2年度に実施された厚生労働省の委託事業「生活 保護基準における級地制度に係る調査研究等」(「級地調査研究」)の報告を踏まえ、下記 a)〜c)の検討事項について議論し、令和3年9月 に分析結果のまとめを行った。 a) 地域の生活水準を示す指標について b) 級地の階級数について c) 各市町村の級地区分の指定について。 なお、現行の級地の指定単位が市町村単位であることについては、平成 29 年報告書では「実際の生活の営みが行政区域にとどまらないことを踏まえる と、生活実態からみた圏域を検討していくことも考えられる。」とされたが、 市町村単位よりも細かい地域区分での利用可能な統計データが限られる可 能性があること、 制度運用上、級地の指定単位を現行の市町村単位から細分化等を行うことは、各自治体内におけるその具体化の難しさや、制度運用がさらに複雑に なること、現状の運用等を踏まえれば現時点では困難と考えられること から、級地の指定単位は市町村単位であることを前提に分析を行ったものとなる。 (2)地域の生活水準を示す指標について→ 地域の消費実態の分析にあたっては、サンプル世帯の抽出のない市町村も含めた全市町 村の消費実態を分析することとした。 回帰分析の結果を基に各市町村における「平均的な世帯に係る生 活扶助相当支出の理論値」(「市町村理論値」)を評価指標 として算出。 これは、級地区分の検討に係る市町村別の分析方法としては、世帯要因 を考慮した上で地域差を分析しているという点で、過去の級地区分の検討 にあたって用いられた手法と比べ、より精査された方法と考えられる。 (3)級地の階級数について→手法(a) 閾値を等間隔に設ける階層化 同一階層内の市町村理論値の差を大きくしない観点から、各階層間の閾 値を等間隔に設けることにより地域を階層化する方法。手法(b) クラスタリングによる階層化(人口ベース) 人口ベースでの市町村理論値の分布の粗密に応じて階層を設ける観点か ら、市町村理論値を指標としたクラスタリングにより階層化する方法。手法(c) クラスタリングによる階層化(市町村数ベース) 市町村数ベースでの市町村理論値の分布の粗密に応じて階層を設ける観 点から、市町村理論値を指標としたクラスタリングにより階層化する方法 であり、各市町村を1サンプルとしてクラスタリングを行うものとなる。 級地の階級数に係る検証のひとつとして、「級地を6区分に細分化した昭和 62 年度における級地間の較差と比較して、現在でも相当程度の地域較差が認 められるか」という観点から、各階層化手法により6区分に階層化した場合 の階層間の最大較差(第1位階層と第6位階層の較差)について、昭和 62 年 度当時の生活扶助基準における級地間の最大較差(1級地−1と3級地−2の較差)との比較を行ったところ、いずれの階層化手法を用いた場合も、昭 和 62 年度当時の生活扶助基準における級地間の最大較差と比べて有意に小さいという結果となった。 次に、「級地の階級数をいくつに設定することが妥当か」という観点から、 各階層化手法について、階層化の手順に従って階層数を6区分から減らして いった場合に、隣接階層間に有意な較差が認められるかを確認した。 階層間較差が有意であるか否かとそれぞれの階層化手法の考え方が一致す るものではないことには留意が必要であるものの、 ・手法(b)、手法(c)による場合は、階層数を3区分まで減らした際に、初め てすべての隣接階層間で有意な較差が認められ、 ・手法(a)による場合は、設定可能な最小の階層数(4階層)まで減らして も、隣接階層間に有意な較差が認められない箇所が生じる結果となった。 (4)各市町村の級地区分の指定について→市町村理論値の誤差の程度を一定の前提の下で評価し、3区分 に階層化した場合における個別の市町村に係る階層化結果の有意性の検証 として、「他の階層と有意な差があるか」という観点から検定を行ったとこ ろ、個別の市町村に係る階層化結果については、ほとんど有意な結果となら なかった。 (5)分析結果のまとめ(令和3年9月 21 日)→令和3年9月 21 日に取りまとめられた生活保護基準における級地区分の検証に係る分析結果のまとめは以下のとおりである。 <参考> 本部会資料 URL ↓ https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-hosho_126702.html ○社会保障審議会生活保護基準部会 委員名簿→7名。専門委員名簿→1名。 次回も続き「資 料 1−2 社会保障審議会生活保護基準部会報告書 別紙(案)」からです。 |