第21回 社会保障審議会「生活困窮者自立支援及び生活保護部会」(資料) [2022年11月04日(Fri)]
第21回 社会保障審議会「生活困窮者自立支援及び生活保護部会」(資料)(令和4年10月5日)
≪議事≫(1)被保護者健康管理支援事業・医療扶助 (2)生活困窮者自立支援制度と生活保護制度の連携のあり方 (3)生活困窮者自立支援制度と関連施策の連携のあり方等について https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_28565.html ◎資料4 委員提出資料 第21回社会保障審議会生活困窮者自立支援及び生活保護部会 医療扶助に関する都道府県等の関与について (意見書) 公益社団法人 日本医師会 常任理事 長島 公之 ○資料1−2 p.4に医療扶助に関する都道府県等の関与について、 【論点】が3 つ示されているが、以下のようにコメントする。 ↓ 【論点1つ目】→都道府県による市町村支援の強化として、都道府県の医学的な専門知識等を補強し、広域的な観点から管内市町村に対する必要な助言その他の援助を行うための会議体を都道府県に設置することについて、どう考えるか。⇒ 《コメント》 ◇ 異論ない。 【論点2つ目】→都道府県等による医療機関への関与について、専門性を有する関係者の意見 も踏まえつつ、指導対象となる医療機関を選定する際に頻回受診者が多いこと 等も考慮することについて、どのように考えるか。また、医療扶助の適正な運営 の観点から、対象医療機関への指導結果の内容等から留意すべき点を整理し、 管内医療機関に対して周知することについて、どう考えるか。 《コメント》 → 頻回受診の問題は医療機関のみに責があるわけではなく患者自身の問題もある。生活保護はフリーアクセスではなく、受診できる医療機関が指定されている。医学的に必要な受診は抑制されるべきでないことから、単なる受診回数で指導対象を選定するべきではなく、医療の専門性を有する関係者の意見も聴いた上で、指導につなげていくことが適当。 対象医療機関への指導の結果を管内医療機関に周知する場合、地域的な事情もあることを考慮すべき。健康保険法等による指導・監査・適時調査⇒地方厚生局が「主な指摘事項」をホームページに公表しているように、 医療機関名や患者名が特定できないようにした上で注意喚起を行うよう検討することが適当である。 【論点3つ目】→被保護者の国保等への加入は、他制度の被保険者の保険料負担や保険財政 に与える影響が大きいこと等を踏まえ、まずは、被保護者健康管理支援事業 取組強化や都道府県による市町村への支援等を強化することについて、どう考 えるか。 《コメント》 → 令和4年8月25日に開催された医療扶助に関する検討会で検討されたことが 反映された論点と考えられ、異論ないが、改めて、検討会での発言と同旨の内容を以下のように指摘しておく。 ⇒ 生活保護受給者の国保や後期高齢者医療制度への加入→財政負担を地方自治体などに付け替えることで、国の財政責任や負担を減らそう としているように見える。 脆弱な国保財政に対しての財政的な手当を講じない限り、国保制度等の破綻を招く恐れがあるのではないかと考える。また、特定健診・保健指導など、加入者の健康管理は保険者が実施することになっているが、国保に生活保護受給者が加入した場合、市町村国保にお いて、財政面や人員面で必要な体制の確保ができるのか、疑問を感じる。 ◎参考資料1 医療扶助に関する見直しに向けた整理 令和4年9月6日 医療扶助に関する検討会 1 はじめに ↓ 生活保護法(昭和 25 年5月4日法律第144号)→生活困窮者 等の自立を促進するための生活困窮者自立支援法等の一部を改正する法律(平成 30 年法律第 44 号。「改正法」。)附則第8条において、 法律の施行後5年(令和5年)を目途として、施行状況について検討を加え、 その結果に基づいて所要の措置を講ずること。これを受けて、生活保護制度の見直しに向けては、令和3年 11 月から6 回にわたって、国と地方自治体の実務者が協議を行い、令和4年6月から、 社会保障審議会生活困窮者自立支援及び生活保護部会(「困窮保護部会」)において、これまでの議論の整理を報告し生活保護制度の見直しについて更に議論を進めている。 他方、医療扶助⇒困窮保護部会とは別に設置している「医療扶助に関する検討会」(「本検討会」)⇒医療扶助の諸課題について議論していることを踏まえ、医療扶助の制度見直しに向けては、本検討会において集中的に議論を深めることとした。 ○ 本検討会⇒改正法以降の医療扶助に係る取組状況等を踏まえ、 有識者・自治体関係者からのヒアリングを行いつつ、4回にわたって議論を 重ねてきたところであり、その検討結果に基づき、次のとおり医療扶助に関 する見直しに向けた整理を取りまとめた。 2 総論 (改正法以降の状況)↓ 改正法⇒被保護者は、医療保険加入者と比較して糖尿病等の生活習慣病の有病割合が高いなど、健康上の様々な課題を抱える者が多く、生活習慣病の発症予防・重症化予防の取組を更に推進する必要があることから、データに基づいた被保護者の生活習慣病の予防等を推進する「被保護者健康管理支援事業」が創設された。また、後発医薬品について、その使用割合に係る状況等を踏まえ、医療扶助による処方のうち、医師等が医学的知見から 問題ないと判断するものについて、後発医薬品の使用を原則とすることが盛り込まれた。 その後、被保護者健康管理支援事業⇒自治体関係者や保健・医療分野の有識者等で構成する「生活保護受給者の健康管理マニュアルに関するワーキンググループ」を開催し、当ワーキンググループにおける議論を踏まえて「被保護者健康管理支援事業の手引き」(「手引き」)を作成し、平成 30 年 10 月に配布した。また、試行的事業等の状況を踏まえて、令和2年8月に所定の改定を行い、令和3年1月に事業が施行された。 子どもに対する健康管理支援⇒「社会保障審議会生活困窮者自立支援及び生活保護部会報告書」(平成 29 年 12 月 15 日)における「受診勧奨含む健康管理支援が重要な課題であり、教育部門と連携して取組を進めることが重要。」との指摘を受け、平成 30 年度に福祉事務所が生活保護受給世帯の子どもとその養育者に対する健康管理支援を行う場合に補助を行うモデル事業が創設された。 後発医薬品の使用の原則化⇒平成 30 年 10 月に施行され、令和3年度の医療扶助における使用割合(数量ベース)は 87.7%で政府目標を達成した。原則化前の平成 30 年度と比較して 10.1 ポイント増加するなど、 着実に取組が進んでおり、引き続き、使用促進を図っていく。 このほか、医療保険制度⇒令和3年 10 月からマイナンバーカー ドを用いたオンライン資格確認が施行されたことを受け、医療扶助についても、「新デジタル・ガバメント実行計画」(令和元年 12 月 20 日閣議決定)や、「医療扶助のオンライン資格確認導入についての方向性の整理」(令和2 年 11 月 30 日「医療扶助に関する検討会」報告書)を踏まえ、オンライン資格確認の運用導入が方向づけられるとともに、令和3年6月に成立した「全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律」(令和3年法律第 66 号)により、生活保護法等の改正が行われてい る。なお、医療扶助のオンライン資格確認の運用開始は令和5年度中を予定 している。 (医療扶助の現状) ↓ 令和2年度の生活保護費負担金(事業費ベース)の実績額は約 3.5 兆円、そのうち医療扶助が占める割合は、例年、約半分程度で推移。 医療扶助費の動向は、世界金融危機後の被保護者の増加に伴い増加し、その後、平成 28 年度以降の増減幅は約1%で推移していたが、令和2年度は 1.75 兆円で令和元年度と比較して 2.7%減少となっている。医療扶助費の伸びを要因分解⇒平成 20〜25 年度までは被保護者の増加の影響が大きかったが、以後は年齢構成の変化(高齢化等)の影響が大きい。その他の影響(適正化対策含む)による伸びを医療費全体のそれと比 較すると、近年、医療扶助費の伸びは医療費全体よりも下回っている。 被保護者の約8割は何らかの疾患により医療扶助を利用しており、年齢階級別の構成割合では 65 歳以上の者が半数以上を占め、医療扶助費の診療種別では入院が約6割を占めている。また、傷病分類別のレセプト件数⇒入院では医療保険に比べて「精神・行動の障害」の割合が高く、入院外⇒医療保険とほぼ同様の構成割合となっている。 医療扶助⇒これまで、後発医薬品の使用促進、頻回受診対策など、後述する様々な施策を進めてきている。一方で、「新経済・財政再生計 画改革工程表 2021」(令和3年 12 月 23 日経済財政諮問会議まとめ)(「改革工程表 2021」)⇒適正受診指導の徹底等による医療 扶助の適正化の推進や、中長期的な課題として、医療扶助のガバナンス強化 に向けた検討を行うことが指摘されている。 (本検討会での検討事項等)→以上の改正法以降の取組状況や生活保護制度における国と地方の実務者協議におけるこれまでの議論等を踏まえつつ、本検討会⇒次期生活保護制度見直しに向け、以下のとおり検討事項を設定して議論を行った。 ↓ 【主な検討事項】 @ 被保護者健康管理支援事業→被保護者健康管理支援事業の着実な実施を図っていく観点から、福 祉事務所と保健部局との連携をどのように考えるか。 レセプトデータ等を用いた PDCA サイクルに基づく取組としていく 観点から、事業の実施に係る指標の設定・評価、各種データの効率的 な収集・活用等に係る手法について、どのように考えるか。 事業対象者には、糖尿病等生活習慣病の方のみならず、精神疾患や 依存症などを抱える方が含まれることも踏まえ、社会生活面に着目し たアプローチの推進方策について、どのように考えるか。 生活保護世帯の子どもの事業利用の推進方策について、どのように考えるか。 A 医療扶助の適正化→頻回受診者の該当要件(同一疾病について、同一月内に同一診療科 目を 15 日以上受診しており、短期的・集中的な治療を行う者を除いたもの)どのように考えるか。 頻回受診指導の結果、未改善者が5割弱存在する状況を踏まえ、効果的な頻回受診対策をどのように考えるか。また、頻回受診対策のみならず、重複投薬や多剤投与等に着目した方策について、どのように 考えるか。 長期入院患者の退院促進について、退院後の地域での定着支援も含 め、更なる実効的な取組をどのように考えるか。 B 医療扶助に関する都道府県等による関与→医療扶助に関してはガバナンス強化の必要性が指摘されていること を踏まえ、都道府県によるデータに基づく適正化方策の推進について、 どのように考えるか。 その際、都道府県によるデータに基づく管内自治体や指定医療機関に対する助言・指導等の効果的な実施方策など、都道府県による実効的な支援方策について、どのように考えるか。 (今後の対応について)→本検討会において取りまとめた「医療扶助に関する見直しに向けた整理」⇒ここで提示された方向性を踏まえつつ、実効性かつ具体的な方策を検討できるよう、医療扶助の制度見直しについて、今後は困窮保護部会の場において更に検討を深めていただきたい。 3 各論 (1)被保護者健康管理支援事業 【現状・課題】 (効果的・効率的な実施体制の構築)→事業が施行されて1年以上が経過し、9割以上の福祉事務所が何らかの 健康管理支援の取組を実施。しかし、各福祉事務所における保健医療専門職の在籍状況は様々、専門職の在籍の有無によって各取組の実施状況や関係部局との連携状況に大きな差がある。事業を効果的かつ効率的に進めるためには、EBPM の観点から、他の医療保険制度が、保険者機能の一環とし て行っている健康・医療情報の活用や PDCA サイクルに沿った事業運営を参 考にすべき。そのため、保健部局に加えて、保険者として保健事業等 を実施する国保部局等との連携も重要。現状は、国保部局等と連携し ている福祉事務所は限られているものの、連携している一部の福祉事務所では、データ分析も含めた事業の企画段階から、保健事業等の知見やノウハウの活用、情報共有、専門職との相談等によって効果的に実施している取組事 例が確認されている。 (EBPM の観点からの事業の推進)→事業評価⇒手引きにおいて事業の企画段階で、ストラクチャ ー、プロセス、アウトプット、アウトカムの観点から取組の目標・評価指標を設定し、当該評価指標に沿って事業評価を行うこととしている。 事業の評価指標を設定している福祉事務所は3割未満と低調で各福祉事務所⇒統一的な基準を求める声もあり各取組の達成状況や効果を測定する客観的な指標の設定や、事業の評価方法を検討する必要がある。 (事業の機能強化)→実施状況にはばらつきがあり、特に「保健指導・生活支援」や「主治医と連携した保健指導・生活支援(重症化予防)」のうち、「生活支援」に取り組む福祉事務所は限られている。 事業の対象者には、精神疾患や依存症等を抱える方や、孤独・孤立 等の社会生活面での課題を有する方も含まれることから、社会参加も含めた生活支援を強化していくことが重要と考えられる。現在は 40 歳以上を事業の主な対象者としている福祉事務所が多く、 子どもの健康面に着目した支援に取り組む福祉事務所は限られているが、 モデル事業等において、子どもの学習・生活支援事業等の他施策と連携した取組も複数みられ、子どもへの健康生活支援の実施形態としては様々な 方法が把握されている。 子どもの健康生活支援の取組内容⇒歯科医療機関への受診勧奨や、調理技術の習得や食育など食事を切り口とした取組が比較的多くみられ、受診率が向上したり、健康意識に変化がみられたりするなど、一 定の効果も出ている。このほか、被保護者健康管理支援事業の一環で母子世 帯に対する保健指導・生活支援を実施し、子どもに介入することを通じてそ の家庭全体の生活習慣等が改善した事例も報告されている。 今後、こうした事例も参考にしつつ、被保護者健康管理支援事業において 子どもに対する健康生活支援の取組を推進していく方策を検討する必要。ケースワーカーが子どもに直接アプローチしにくい状況も踏まえ、効果的に事業につなげていくための取組方策を検討する必要がある。 【対応の方向性】 ↓ (効果的・効率的な実施体制の構築)→ 事業が施行されて間もないことから、まずは、着実な実施を図るため、各地域の実情に応じて、効果的かつ効率的な実施体制を構築することが重要。 庁内の関係部局との連携⇒保健部局は重要な連携先の一つとして更なる連携強化が望まれる一方、保険者として保健事業等に取り組む国保部局等との連携も重要。特に、データ分析も含めた PDCA サ イクルの各段階(企画段階・実施段階・評価段階)において、実施段階での 連携のみならず、企画段階や評価段階での連携について、専門職や他制度の知見やノウハウの活用も含め、効果的な連携を推進していくことが適当。関係部局との連携を進める上で、まずは健康管理支援の重要性について、ケースワーカーの理解や認識を向上していくことも重要であり、福祉事務所がもつリソース等を踏まえて連携したい内容を明確化し、その機能を 有する部局と協働して実施することが望ましい。 より効果的かつ効率的な実施体制としていくためには、国や都道府県、自治体内関係部局に加え、医師会、歯科医師会、薬剤師会等の医療関 係団体や外部機関も含め、必要な関係機関との連携体制を構築することも重要。こうした連携体制を構築するために、国が医療関係団体や外部機 関との連携事例を収集して横展開することが適当である。 (EBPM の観点からの事業の推進)→医療・健康情報等の活用と PDCA サイクルに沿った事業展開とするためには、取組指標の設定・評価、各種データの効率的な収集・活用等により、EBPM の観点からの事業の推進を図っていくことが重要。 データに基づく取組をより一層推進するために、現在、手引きの中で例示 されている評価指標等も参考に、国による参酌標準としての数値目標の設定 も含め、標準化された指標づくりを進めていくことが適当。ア ウトカム指標⇒根拠となるデータ収集等を行いつつ、「社会のつながり」も考慮した指標設定を検討することも必要。福祉事務所でこうした指標を参考に、地域の実情を踏まえて適切な指標を設定した 上で事業を実施し、評価していくことが適当。都道府県による支援が重要である。 データ収集・分析⇒レセプトや健診情報の活用を基本としつつ、 福祉事務所が効果的かつ効率的に行うために、上記指標による評価も含め、 福祉事務所でのデータ収集・分析に対し、都道府県による後方支援や国による匿名レセプト情報・匿名特定健診等情報(NDB)を活用した全国データ分 析の充実など、都道府県や国が支援等を行うことが適当。 多角的な観点から、社会生活面の課題の把握を効果的かつ効率的に 行うため、国において、優先的に把握すべき社会生活面のスクリーニング項 目を整理し、支援することが適当である。 (事業の機能強化)→頻回受診の中には、社会的孤立や精神的不安に起因するものも多く、従来 の頻回受診指導の仕組みでは効果が得られにくいといった課題等も踏まえて当該原因の解消に向けて、頻回未改善者を被保護者健康管理支援事業による保健指導・生活支援の対象に位置づけ、より丁寧な支援を行うことで頻回受診の改善につなげていくこと。適正な受診等が制限されることはあってはならず、精神疾患や社 会的孤立等が頻回受診の一因となっている可能性も踏まえ、まずは受診回 数や処方薬剤種類数等を用いてスクリーニングし、医療機関や医師と連携 する等が重要。一方、受診者が抱えている健康課題に合っていない診療科への受診⇒個々の状況に応じて、医師のほか、看護師、保健 師その他の福祉サービス等との連携も図りつつ、相談援助機能の充実も併 せた頻回受診対策を進めていくことが重要。 子どもに対する健康管理支援⇒これまでモデル事業を中心に行 ってきているが、ケースワーカーが子どもに直接アプローチしにくい状況も踏まえ、事業において効果的に取組を進めていくこと。子どもの学習・生活支援事業等と連携した取組事例も踏まえ、親も含めた世帯全体 の支援の観点も含め、関係施策と連携しながら、健康増進に係る普及啓発、 相談支援、受診勧奨等を推進していくこと。あわせて、ケース ワーカー等が健康生活面で支援が必要な子どもの把握に必要な項目を国が 整理することが適当。令和5年1月に導入される電子処方箋の活用により、医療機関と薬局間で 薬剤情報を共有できる環境が整っていくことで、複数の医療機関・薬局間で の情報共有が進み、適正な服薬管理に資することが期待される。また、こう した仕組みも活用しながら、福祉事務所が庁内の関係部局や、地域の医療機 関及び薬局等の関係機関と連携し、更に取組を進めていくことが望まれる。 具体的には、予防・健康づくりの観点からは、被保護者健康管理支援事業⇒医薬品の適正使用を支援する必要がある者に対し、薬剤師等の医療 関係者による訪問支援や薬局等への同行支援を行うほか、福祉事務所への専門的助言や協力援助等も行っていくことが重要。 また、上記の支援に応じなかった場合や、処方薬剤数が一定以上の者に対し、薬剤師等の医療関係者との連携の上で適正な服薬に向けた指導を行うなど、予防・健康づくりと医療扶助適正化の両側面で取組を進めていくことも重要。処方薬剤数が一定以上の投与を受けている者への指導⇒それぞれの疾病状況等を踏まえて医学的に判断する必要から一律の基準を設けて医薬品の投与を是正することは適当ではないことに留意が必要。 (2)医療扶助の適正化 【現状・課題】 (頻回受診対策)→受診状況把握対象者数の年次推移をみると、令和2年度は、頻回受診対策 の取組が全国に広がった平成 16 年度と比較して半数程度まで減少、適正受診指導対象者のうち、適正な受診日数に改善された者の割合は 上昇している。 被保護者健康管理支援事業において、頻回受診指導を必須の取組として位置づけ、本人と面談等を行い、頻回受診になる要因・支援の方向性を 分析するともに、同行受診による主治医の説明の理解のサポート、社会資源 へのつなぎ等の取組も実施している。なお、有効期間を1か月よりも短期に 設定した医療券(短期医療券)の発行により面談機会を増加する取組も可能 としている。 頻回受診指導は、福祉事務所がレセプトから対象者を抽出して実施して いるため、受診から実際の指導までに2か月程度のタイムラグが生じ、指導 の前に受診行動が習慣化してしまうこと等から、効果的な取組が難しく、頻 回受診の傾向がある者に対する早期からのアプローチが求められる。 改革工程表 2021⇒「生活保護受給者の頻回受診対策→本検討会での議論や 2021 年度までの実績等を踏まえ、受診状況 把握対象者の該当要件についての検討を 2022 年度中に行う」旨が示され、受診回数に係る基準(定義)の見直しについても、検討が求められている。 (重複・多剤投薬の対策)→被保護者に対する重複投薬に着目した現在の取組としては、複数の医療 機関・薬局から同一の向精神薬の投与を受けている者について、主治医等に 確認の上、医療機関と協力して適正受診指導を行っている。近年では、一般医療において、高齢者のポリファーマシー(多剤服 用でも特に害をなすもの)に着目した対策が必要とされ、「高齢者の安全な 薬物療法ガイドライン 2015」⇒5〜6種類以上を多剤併用の目 安と考えるのが妥当、との指摘。 医療扶助における処方薬剤種類数をみると、65 歳以上の高齢者のうち、同一月内に 15 種類以上の薬剤の処方を受けている患者の割合は、薬剤が投与されている高齢者の約 10%存在、医療全体と比較してその割合 が高い可能性がある。 (精神障害者等の長期入院対策)→医療扶助の入院における傷病分類別レセプト件数の構成割合→「精神・行動の障害」の割合が最も多く 33.0%(令和2年医療扶助実態調査)、医療保険の 9.9%(令和元年度医療給付実態調査)と比較して高いが、「精神・行動の障害」による入院件数は過去 10 年間で減少傾向、特に入院期間が5年を超える長期入院者の数は減少。 長期入院患者への対応⇒各福祉事務所において医療扶助による入 院患者であって、その入院期間が 180 日を超える者の実態把握を行っており、嘱託医による書面検討、主治医等への意見聴取等から入院継続の必要性を検討し、入院を要しないことが明らかになった者⇒適切な退院指導を実施することとしている。 精神科病院に長期入院している被保護者の地域移行を推進⇒福祉事務所と障害保健福祉部門との連携を更に進めるとともに、生活支援の体制が整った居住環境を確保することが重要。これまでも入院の必要のない長期入院患者の退院・地域移行の実績の高い自治体では、専門性 のある主体への外部委託、障害福祉担当部局との連携、救護施設等の活用に より成果をあげている例がある。こうした取組等により入院期間が 180 日を超える者の数、入院の必要がないとされた者の数、そのうち福祉事務所による退院促進の措置が未対応の 患者数はいずれも減少傾向にある。 【対応の方向性】 ↓ (頻回受診対策)→頻回受診の中には、社会的孤立や精神的不安に起因するものも多く、従来の頻回受診指導の仕組みでは効果が得られにくいといった課題等も踏まえて、当該原因の解消に向けて、従来の頻回受診指導によっても受診行動に改善が見られない場合には、被保護者健康管理支援事業による保健指導・生活 支援の対象に位置づけ、指導から支援への切れ目のない丁寧な対応を行うことが重要。こうした切れ目のない取組の実効性を持たせる観点か ら、支援策を拡充した上で、それでもなお、正当な理由なく、保健指導・生 活支援を受けることに応じない場合は、福祉事務所において、平成 14 年度 に発出している通知の中で求めている保護の変更、停止又は廃止を見据え た指導・指示等を行うことで適切な受診を促していくことも重要。ただし、被保護者が頻回受診となっていることや、保健指導・生活支援に 応じないことの原因には、精神疾患等による場合や社会的孤立や精神的不安 に起因する場合も十分に考えられることから、正当な理由なく応じていない のかの判断は、医療関係者等の意見も踏まえて慎重に行われるべき。 このほか、オンライン資格確認の導入により、資格確認の実績(ログ情報) を集計し、生活保護システムへ連携することで、福祉事務所で頻回受診の傾 向がある者を把握することが可能となる。福祉事務所では、この仕組みを活 用して、頻回受診の傾向がある者に対して早期の状況把握及び助言等を行 うことが適当。 (重複・多剤投薬の対策)【再掲】→処方薬剤数が一定以上の投与を受けている者への指導に当たって は、それぞれの疾病状況等を踏まえて医学的に判断する必要があることから、 一律の基準を設けて医薬品の投与を是正することは適当ではないことに留 意が必要。 (精神障害者等の長期入院対策)→精神疾患を抱える者等の退院促進・地域移行は重要な課題であり、自治体 における長期入院患者の状況把握に係る嘱託医協議の検討状況等を基に、福祉事務所自らが組織的に、長期入院患者の特徴や退院の阻害となっている要因等を分析し、その結果に基づき、退院や地域移行に向けた継続的な支援体 制の構築に努めるべき。 福祉事務所と障害精神保健部門との連携が重要であるが、福祉事務所は、郡部福祉事務所を除き、基礎自治体単位で設置されている一方で、 連携先として想定される精神保健福祉センターは都道府県単位で設置され ているなど、連携に当たっての課題があるため、都道府県において広域的な 観点から専門的助言が行える体制の構築についても検討していく必要があ る。 (3)医療扶助に関する都道府県等による関与 【現状・課題】 ↓ (都道府県の役割)→生活保護制度は、頻回受診対策等に係る制度全体の取組として一定の成果が認められている、医療扶助や被保護者健康管理支援事業の取組状況⇒各福祉事務所間で被保護者の健康課題の把握や健康保持・増進のため の関係部局との連携、取組状況に地域差が生じており、改革工程表 2021でも「中期的にガバナンス強化に向け、EBPM の観点も踏まえて検討を 行う」と記載されているなど、取組を効果的かつ効率的に進めるためには、広域の地方公共団体である都道府県が、管内市町村の取組に対して後方支援 を行うといったガバナンス強化のための役割が一層求められている。 また、医療提供体制整備や国保の財政運営等に係る都道府県のガバナンス が医療扶助に及ぶようにするなどの観点から、改革工程表 2021 において、 「中長期的課題として、都道府県のガバナンスを強化する観点から、生活保 護受給者の国保及び後期高齢者医療制度への加入を含めた医療扶助の在り 方の検討を深める」と記載されている。 (都道府県による市町村への支援の強化)→生活保護法第 81 条の2において、都道府県知事は市町村長に対して、保護の適正な実施 や、被保護者健康管理支援事業の効果的かつ効率的な実施等のために必要な 助言その他の援助を行うことができることとなっているが、現状として、都道府県は市町村に対して、医療扶助の運用等に係る疑義照会があった際の回 答対応にとどまっている場合が多い。 また、「生活保護法による医療扶助運営要領」(昭和 36 年9月 30 日社発第 727 号厚生省社会局長通知)⇒都道府県等(指定都市・中核市を含む。 以下同じ。)の本庁には、医療扶助の決定実施に係る医学的判断等に関する 諮問機関として、医療関係者等で構成する医療扶助審議会を設置することを 望ましいと定めている。しかしながら、現状、医療扶助審議会が設置・運用されている都道府県等 は少なく、都道府県による市町村への関与は、市町村から寄せられる個別事 案に係る照会への回答等にとどまっていることが多い。 (都道府県等による医療機関への関与)→生活保護法による指定等、指導、検査、指定取消・効力停止があり、都道府県等による指定医療機関に対する指導は年間 700 件程度、検査は数件から数十件程度、指定取消・効力 停止はそれぞれ年間数件程度実施。 指定医療機関に対する個別指導は、関係機関からの情報提供や、社会保険 診療報酬支払基金から提供される診療報酬請求データ等の分析結果等から 得られる指定医療機関の特徴等を総合的に勘案し、個別に内容審査した上 で対象医療機関を選定することとしている。このうち、診療報酬請求データ⇒請求全体に占める被保護者に関する請求割合が高いことや、被保護者以外と比較して被保護者の診療報酬明細書等の1件当たりの平均請 求点数が高いこと等を例示している。 平成 25 年の生活保護法改正⇒一部で生じている医療機関の不正事案に対して厳正な対処が必要であることから、指定要件及び指定取消 要件の明確化や指定の有効期間(6年間の更新制)の導入など、指定医療機 関制度の見直しを行った。 指定医療機関に対する指導体制の強化の観点から、都道府県知事と 厚生労働大臣による共同実施の仕組みと、都道府県等が指定した医療機関 に対して緊急時に厚生労働大臣も検査を実施できる仕組みの導入を行った。 都道府県等⇒医系職員の配置や医療扶助審議会の設置等 が十分ではないことから、医療の専門的な見地からの効果的な指導・検査等の実施及び診療内容等に係る指摘が困難な実態がある。加えて、医療機関へ の関与の手法が、指導の実施後は、不正又は不当な診療若しくは診療報酬の 請求が疑われる場合に検査を行うといった仕組みであり、指導と検査の間の 段階的な関与の手法が求められている。 【対応の方向性】 ↓ (都道府県の役割)→市町村又は福祉事務所単位では、地域的な地理的特色や実施体制等によってそれぞれの取組レベルに地域差が生じることは避けられないものの、その 縮減に向けては、まず、管内複数市町村による広域での取組実施に係る調整や、対応困難事例への対応に関する助言など、都道府県が広域的な支援のた めの一定の役割を担う仕組みが重要である。 革工程表 2021⇒「中長期的課題として、都道府県のガバ ナンスを強化する観点から、生活保護受給者の国保及び後期高齢者医療制度 への加入を含めた医療扶助の在り方の検討を深める」と指摘。被保護者の国保等への加入⇒そもそも被保護者は、保険料の負担能力がなく、その多くが医療扶助を受けており、国保等における他の被保険者の保険料負担や保険財政に与える影響が大きいことから、地方公 共団体の意見を十分に踏まえた上で慎重に議論を行うことが適当。医療扶助においても他の医療保険制度のように都道府県による関与を 強め、ガバナンスを強化していく必要があるとの意見があった。 これまでの福祉事務所における頻回受診対策等の取組や成果も踏まえて、 まずは、被保護者健康管理支援事業の取組強化や都道府県による市町村への 支援及び指定医療機関への関与の強化を進めていくことが適当である。 (都道府県による市町村への支援の強化)→市町村における 医療扶助及び被保護者健康管理支援事業の取組評価に対して、国による参酌標準としての数値目標の設定も含め、標準化された指標づくりを進めていくことが重要。現状として、市町村によって評価指標の設定状況に違いがあることや、地域ごとの地理的特色や実情が異なることを 踏まえると、統一的な指標に対する取組状況を都道府県が一律で分析する ことは難しいとの意見があった。 以上を踏まえ、国による標準化された評価指標例は示しつつ、都道府県が 当該指標例を参考に、地理的特色や地域の実情を踏まえて適切な指標を設定 することとし、それに沿った取組状況を都道府県が把握し、その結果を管内市町村に共有することが適当。なお、その際にも、地域ごとに地理的 特色や実情が異なることに留意する必要がある。 上記のような都道府県による市町村支援の取組を効率的かつ効果的に進 めていくためには、都道府県が広域的な観点から、管内市町村に対する必要 な助言その他の援助を行うために有効な仕組みを構築することが必要。このため、例えば、通知において都道府県等に設置を推奨している医療 扶助審議会につき、現状、医療要否判定等の医療扶助の決定実施にあたる医 学的判断等に係る諮問機関であるところを改め、都道府県の医学的な専門知 識等を補強し、上記の目的を果たすための機関とした上で、法制上、位置づ けることを検討していくことも考えられる。なお、医療扶助審議会の在り方を見直す場合、会議体を設置することが目 的となるなど、形骸化しないよう、審議内容を整理し、明確化することが適当。まずは、その設置状況等の実態を国が把握するとともに、都道府 県の事務負担の観点も踏まえつつ、自治体関係者の意見も聴取して検討を進 めていくことが適当である。 (都道府県等による医療機関への関与)→レセプトの分析結果等から 得られるものとして、請求全体に占める被保護者の請求割合が高いことや、 被保護者以外と比較して被保護者のレセプト1件当たりの平均請求点数が 高いことなどの医療機関の特徴も総合的に勘案し、個別に内容審査をした 上で、対象医療機関を選定することとしている。 ○ 指導対象となる医療機関を選定する際の総合的に勘案する項目として、頻 回受診者や多種類の医薬品の投与を受けている者が多いことも考慮するよう示すことが適当であるとの意見があった。一方で、上記のような指導対象の選定、指導結果の周知を行う場合、個々の患者における状態や地域の特性 等が大きく影響している可能性もあることから、頻回受診者の人数や医薬品の種類の多寡のみを指導対象の選定基準とすることは慎重に判断すべきとの意見があった。 以上を踏まえ、受診者の人数や多種類の医薬品の投与を受けている者の人 数のみで判断するのではなく、医師、歯科医師、薬剤師等の専門性を有する関係者の意見も共有できる仕組みも検討することが適当。あわせて、都道府県等による指定医療機関に対する検査の前段階として、頻回受診への恣意的な誘導等が行われ、指導によってもその改善が見られない場合に、適正な対応を求めるための新たな措置を設けること等も検討して いくことが適当である。 ○最後に以下があります。↓ ・医療扶助に関する検討会 構成員名簿 ・医療扶助に関する検討会 開催経過 次回は新たに「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律等の一部を改正する法律案が閣議決定されました」からです。 |