社会保障審議会障害者部会(第124回) [2021年12月25日(Sat)]
社会保障審議会障害者部会(第124回)(令和3年12月13日)
《議事》(1)中間整理(案)について (2)その他 https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000195428_00050.html ◎資料1 障害者総合支援法改正法施行後3年の見直しについて 中間整理(案) T はじめに ○ 障害者の日常生活及び社会生活の支援や障害児の発達支援のための障害福祉サービス 等→障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者 総合支援法)及び児童福祉法により実施。平成 28 年には、障害者の望む地域生活や就労の実現、障害児支援ニーズへのきめ細かな対応、サービスの質の確保・向上を目的として、自立生活援助や就労定着支援といった新たなサービスの創設、保育所 等訪問支援の訪問先の拡大、情報公表制度の創設などを内容とする障害者の日常生活及 び社会生活を総合的に支援するための法律及び児童福祉法の一部を改正する法律(平成 28 年法律第 65 号)が成立し、平成 30 年4月に施行された。その際、施行後3年を目 途として施行の状況等を勘案しつつ検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ず ることとされた。 ○ 令和3年3月、本部会は、障害者総合支援法等の施行状況等について議論を開始。事業者団体、当事者団体等の 46 団体からヒアリングを行うとともに、ヒアリング後には計 13 回にわたって障害者総合支援法等の施行状況や施策の見直しに関する議論を行ってきた。また、障害者雇用・福祉施策の連携強化に関する検討会、障害児の新た な移行調整の枠組みに向けた実務者会議及び障害児通所支援の在り方に関する検討会において各分野について横断的・専門的に検討が行われ、その報告書についても本部会において報告され、議論してきたところである。 ○ 一方、現在、労働政策審議会障害者雇用分科会→障害者雇用率制度をはじめとした諸制度や施策について審議が行われており、雇用施策と福祉施策の連携強化や 就労系障害福祉サービス事業所の取扱いなども含めた議論が継続。 また、精神障害者に対する支援→令和3年 10 月に地域で安心して暮らせる精神保健医療福祉体制の実現に向けた検討会が立ち上げられ、「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」の構築のより一層の推進に向けた具体的かつ実効的な仕組 み・体制についての議論が行われている。 ○ 以上のような、議論の経過及び関連する審議会等の議論の進捗状況を踏まえつつ、本 部会におけるこれまでの議論を、下記のとおり中間的に整理することとする。 (1)一定の方向性を得るに至った障害児支援に関する論点(P.7 V 障害児支援)→必要な措置を講じていくべき。 (2)また、それ以外のさらに議論が必要な事項(P.15 W 引き続き検討する論点)→引き続き本部会における議論を継続し、来年半ばまでを目途に最終的な報告 書をとりまとめることを目指す。 U 基本的な考え方→ 障害者総合支援法改正法の施行後3年間の施行状況を踏まえ、今回の見直しの基本的な 考え方について、「1.障害者が希望する地域生活を実現する地域づくり」、「2.社会の 変化等に伴う障害児・障害者のニーズへのきめ細かな対応」、「3.持続可能で質の高い障害福祉サービス等の実現」の3つの柱に整理。こうした基本的な考え方に沿って、当事者中心に考えるべきとの視点をもち、どのように暮らしどのように働きたいかなど障害 者本人の願いをできる限り実現していけるよう、支援の充実を図っていくべき。その際、障害者自身が主体であるという考え方を前提に、行政や支援者は、「ともに生きる 社会」の意味を考えながら、当事者の目線をもって取り組むことが重要。また、家 族を含めた障害者の生活を支えていくという視点が重要である。 1.障害者が希望する地域生活を実現する地域づくり (1) 障害者が希望する地域生活を実現・継続するための支援の充実 → 障害者の入所施設や病院からの地域移行を進め、障害者が地域生活を安心して送れるよう、障害者が希望する多様な地域生活の実現に向けた支援や地域生活支援拠 点等の整備・充実等を図ることが必要。 どのような相談もまずは受け止める、アクセスしやすい相談体制を整備するた め、地域で中核的な役割を果たす相談支援の機関を中心に、本人の希望する暮らし を形づくり、継続するための相談支援の充実・強化が必要。こうした取組を進めるに当たっては、障害者総合支援法の基本理念である「可能な限りその身近な場所において必要な日常生活又は社会生活を営むための支援を受けられることにより社会参加の機会が確保されること」、「どこで誰と生活するかについての選択の機会が確保され」ること等を踏まえ、入所施設や病院からの地域移行を促進する必要があることを明確化していくとともに、親元からの自立を含めた ライフステージ全体や、様々な地域生活を支える社会資源全体の基盤整備も視野に入れた総合的な支援を進めていく必要がある。 (2) 地域共生社会の実現 →高齢、子ども、生活困窮等の分野の施策と連携し、相談支援や社会参加支援、居場所づくりといった支援を一体的に実施する重層的支援体制の整備が進められており、今回の見直しにおいても、地域共生社会を実現する地域づくりに資する取組を推進する必要がある。 障害者総合支援法の基本理念でも掲げられているように、「地域社会において他の人々と共生することを妨げられ」ず、「障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものの除去に資することを旨と」し、障害者のコミュニケ ーションやアクセシビリティを円滑にしていくことが重要。文化・芸術活動やスポーツ等の分野を含め、障害者の社会参加の機会が確保され、障害の有無に関わらず地域でいきいきと安心して暮らすことができる社会を目 指し、地域住民の障害理解の促進にも取り組む必要がある。 (3) 医療と福祉の連携の推進 →障害児・者の地域生活と健康を支えていくためには、本人の希望に応じた暮らし を実現する観点から、福祉と医療の両面からの支援・マネジメントが重要。 障害者の高齢化や障害の重度化、医療的ケア児や医療的ケアが必要な障害者、精神 障害者、難病患者などへの支援の必要性を踏まえ、多様な障害特性にも配慮しつつ、保健・医療、福祉及びその他の施策の連携を推進することが必要。このため、障害福祉サービスの利用や計画相談支援をはじめとする相談支援など、地域生活や就労等の様々な場面において医療と連携した支援が行われることが重要であり、その連携の在り方について、引き続き検討が必要。 (4) 精神障害者の地域生活に向けた包括的な支援 →精神障害の有無や程度にかかわらず、誰もが地域の一員として安心して自分らしい暮らしをすることができるよう、医療、障害福祉・介護、住まい、就労等の社会 参加、地域の助け合い、教育・普及啓発が包括的に確保された「精神障害にも対応 した地域包括ケアシステム」の構築をさらに推進する方策を引き続き検討する必要 がある。 2.社会の変化等に伴う障害児・障害者のニーズへのきめ細かな対応 (1) 障害児に対する専門的で質の高い支援体制の構築→ 発達障害の認知の広がりや女性の就業率の上昇に伴う預かりニーズの増加により、児童発達支援や放課後等デイサービスのサービス量が大きく拡大している一方で、質の確保が重要な課題となっており、支援の質の向上を図り、相談対応を含め た地域の支援体制を整える必要がある。また、地域共生社会の実現・推進の観点から、年少期からのインクルージョンを推進し、障害の有無に関わらず、様々な遊び等を通じて共に過ごし、それぞれの子どもが互いに学び合う経験を持てるようにしていく必要がある。 また、障害のある子どもも、成長した後は、大人として個を尊重され、成人に相 応しい環境の中で過ごすことができることが必要。障害児入所施設に入所した児童が 18 歳以上となっても障害児入所施設に留まっている、いわゆる「過齢児」 の課題→児者それぞれに相応しい環境が確保されるよう、取組を一層進 めるため、新たな移行調整の枠組みを構築していく必要がある。 こうした障害児支援を検討するに際しては、障害のある子どもの最善の利益の保障を第一にしながら、家族支援の視点を大切にすることが重要である。 (2) 障害者の多様なニーズに応じた就労の促進→ 障害者の就労とその支援は着実に進展しているものの、利用者や働き方の多様化 等、障害者の就労を取り巻く環境も変化。こうした変化や課題に対応するため、雇用施策と福祉施策の一層の連携強化を図りながら、希望する障害者がより 働きやすい社会を実現していく必要がある。 障害者の希望や能力に沿った就労を支援→本人の就労ニーズや能 力・適性を客観的に把握・評価し、本人の可能性を狭めることなく、個々の状況に応じた適切な支援の提供につなげる必要がある。 3.持続可能で質の高い障害福祉サービス等の実現→障害福祉サービス等の利用者が多様化、障害福祉サービス等を提供 する事業者が増加する中で、利用者の個々のニーズに応じた良質なサービスを提供するためには、事業者が提供する障害福祉サービス等の質の確保・向上を図ってい くことが重要。 その際、計画相談支援は障害者の生活全般を支えるものであり、中立・公平性を 保ちつつ質の高いサービス提供が求められることから、相談支援専門員の資質向上 をはじめとする相談支援の質の向上に引き続き取り組む必要がある。 サービスの質の確保・向上に向けて、地域のニーズをより踏まえた事業所の指定の仕組みの見直しやサービスの質の適切な評価の在り方に関する検討、障害福祉分野におけるデータ基盤の整備、実地指導・監査の強化等についても、取組を推進する必要。 障害福祉人材の確保・育成に向けて、処遇改善や仕事の魅力発信などの取組をよ り一層進める必要があるほか、様々な障害保健福祉分野のサービスが整えられていく中で、サービス提供事業者にとっても事務・手続き等の負担感が少なく、わかりやすい制度の在り方を検討する必要がある。 V 障害児支援について 1 障害児通所支援 (1) 現状・課題 →障害児支援⇒平成 24 年施行の児童福祉法改正において、障害児や家族 にとって身近な地域で必要な発達支援を受けられるよう、障害種別毎に分かれていた 障害児の給付体系が通所・入所の利用形態別に一元化されるとともに、放課後等デイ サービスや保育所等訪問支援が創設された。 しかし、一部に併設の医療機関の医療を併せて実施している実態があること等を考慮し、児童発達支援センターは「福祉型」と肢体不自由児を対象とする「医療型」に分け、障害種別による類型が残された。また、児童発達支援・放課後等デイサービス→平成 24 年の制度再編以降、発達障害の認知の広がりや、女性の就業率の上昇に伴う預かりニーズの増加により、サービス量が大きく拡大している一方、一部の児童発達支援・放課後等デイサー ビスにおいて行っている支援は、十分な専門性を有しているとは言いがたく、適切な 発達支援を提供する環境整備の妨げとなっているとの指摘がある。 (2) 検討の方向性 (児童発達支援センターの役割・機能)→児童発達支援センター⇒当該センター以外の施設との役割・機能の違い が明確でないため、多様な障害等への専門的機能を強化し、児童発達支援事業所等に 対する助言その他の援助を行う機関として、以下のような機能・役割を担うべきであ ることを明確化すべき。 @ 幅広い高度な専門性に基づく発達支援・家族支援機能 A 地域の障害児通所支援事業所に対するスーパーバイズ・コンサルテーション機能 (児童発達支援センターが障害児通所支援事業所に対し、支援内容等への助言・援 助等を行う機能) B 地域のインクルージョン推進の中核としての機能 C 地域の障害児の発達支援の入口としての相談機能 また、こうした役割・機能を総合的に果たすため、「児童発達支援センター」は、「保育所等訪問支援」や「障害児相談支援」としての指定を併せて有することを原則とする方向で検討する必要がある。「児童発達支援」⇒障害種別にかかわらず、身近な地域で必要な発達支援 を受けられるようにするという障害児通所支援の理念をさらに進めるため、「福祉型」と「医療型」に区別せずに一元化する方向とし、全ての児童発達支援事業所において 肢体不自由児以外も含めた障害児全般に対する支援を行うべきである。 (児童発達支援事業及び放課後等デイサービスの役割・機能・在り方) ↓ ○ 児童発達支援・放課後等デイサービスの在り方→特定領域の支援のみを提供するのではなく、アセスメント及び個別支援計画の策定プロセスから個々の障害児の状態・発達過程・特性等に応じた日々の支援の中で、5領域(「健康・生活」「運動・ 感覚」「認知・行動」「言語・コミュニケーション」「人間関係・社会性」)全体をカバ ーした上で、特に重点を置くべき支援内容を決めていく「総合支援型」(仮称)を基本型とする方向で検討する必要。 その上で、特定領域のプログラムに特化した支援のみを行う事業所の場合でも、専門性の高い有効な理学療法、作業療法、言語療法等の発達支援→「特定プログラム特化型」(仮称)として位置付ける方向で検討する必要がある。なお、医療的ケア児に対する看護師による医療的ケアの提供は、児童発達支援・放課後等デイサービスの提供に際して不可欠なものとして、引き続き提供できるよう考慮する必要。 その際、引き続き適切な支援が行われるよう留意しながら、それぞれの類型に応じた人員基準と、親の就労に対応するための時間も含めた支援時間の長短が適切に評価されるよう検討する必要。 こうした親の就労への対応を検討する際には、保育所、放課後児童クラブ、日中一 時支援など他のサービスの実態を踏まえた役割分担を意識して検討する必要がある。 一方、見守りだけで個々の障害児に応じた発達支援がなされていない場合、学習塾 のような学習支援のみとなっている、ピアノや絵画のみの指導となっている等、必ずしも障害特性に応じた専門性の高い有効な発達支援と判断できない場合、サービス提 供からみて障害のない子どもであれば私費で負担している実態にあるような内容の場合は、公費により負担する障害児通所支援の内容として相応しいかを検討する必要がある。 〇 「放課後等デイサービスガイドライン」は、「児童発達支援ガイドライン」や「放課 後児童クラブ運営指針」と比較し、学齢期の障害児の発達支援(本人支援)の内容が 十分に示されていない面があるため、ガイドラインの見直しを検討する必要がある。 その際、「児童発達支援ガイドライン」に示した本人支援の5領域は一定の共通性 を持つと考えられる。その上で、放課後等デイサービスの対象が学童期・思春期であ るという点も踏まえ、この時期の発達支援に重要な要素である「自己肯定感」「達成感」「仲間形成」「孤立の防止」などを盛り込むことを検討する必要がある。 また、幅広い年代が利用する放課後等デイサービスは、小学生低学年・小学生高学年・中学生・高校生の4段階に分けて支援の目的や内容を検討することが適当。その上で、地域という単位の中で異年齢と関わりができることの大切さも考慮すべき。さらに、思春期等の各発達段階での関わりの難しさ等を踏まえ、放課後等デイサービスでも家族支援をしっかりと位置付けることを検討する必要がある。 ○ 放課後等デイサービスの対象の範囲→専修学校・各種学校に通学中の障害児でも、障害の状態・発達段階や家庭環境等の状況から、学校終了後や休日に自立的に過ごすことが難しく、放課後等デイサービスによる発達支援を特に必要とするものとして市町村長が認める場合は、その給付決定を行うことを可能とすべき。 その際は、様々な観点からのアセスメントが必要となること等を踏まえれば、相談支援の関与の必要性や、発達支援の必要性判断のためのアセスメント指標等を併せて 検討する必要。 また、放課後等デイサービスと通学先である専修学校・各種学校との連携の在り方 についても併せて検討する必要がある。 なお、児童発達支援において用いられている「適応訓練」等の文言は、障害を治すもの、克服すべきもの等と捉える表現であり、相応しくないという指摘もあることか ら、この点については関係者に誤解を与えないための対処について、他法令との整合 性等の観点も含め、検討することが望まれる。 (インクルージョンの推進) ↓ <地域の中の役割分担・連携体制> →インクルージョン(地域社会への参加・包摂)の推進に関する地域の中の役割分担・ 連携体制として、 ・ 児童発達支援センターは、地域の中核機関として保育所等からの要請を受けて行う保育所等訪問支援を積極的に活用して、地域全体の一般施策側の後方支援を進め、 ・ 児童発達支援・放課後等デイサービスの各事業所は、市町村や児童発達支援セン ター等と連携しつつ、自らの事業所に通所する個々の障害児について状態や希望を 踏まえながら移行支援(併行通園等の事例提供・提案や実現・継続のサポート)を 行う という方向性で検討する必要がある。 <児童発達支援事業や放課後等デイサービスにおけるインクルージョンの推進(※)>→児童発達支援や放課後等デイサービスにおいて、個々の通所する障害児について移 行支援が効果的に実施されるため、保護者等の意向の把握から保育所等への定着支援 に至る一連のプロセスを効果的な標準的手法としてまとめ、わかりやすく提示するこ とを検討する必要がある。 また、そうしたインクルージョン推進のための具体的なプロセスは、一定期間にわたり継続的に行われるべきことを踏まえ、適切な評価の在り方を検討する必要がある。 (※ここでは、年少期より、障害の有無に関わらず、子どもたちが様々な遊びを通じて共に過ごし、 それぞれの子どもが互いに学び合うことができる限り可能となるよう、児童発達支援事業や放課 後等デイサービスが、障害児及び家族の希望を踏まえ、保育所や放課後児童クラブ等への併行通園や移行の支援、一体的な支援の取組を行うことを指す。) さらに、併行通園等の実現に関しては、市町村には、保育所等の関係者に向けて、インクルージョン推進の意義と保育所等訪問支援の目的・内容、児童発達支援事業や 放課後等デイサービスによる移行前後のサポートの状況や好事例などの理解・普及を 図ることなど、大きな役割が期待される。市町村との連携の在り方を含め、児童発達支援事業・放課後等デイサービスにおいてインクルージョンを推進するための具体的 なプロセスについて整理・提示していくことを検討する必要がある。この際には、学校との連携の視点も重要。 なお、現状の障害児通所支援の状況等を踏まえれば、こうした併行通園や移行の支 援の取組が積極的に行われるように制度の在り方を検討する必要があるが、本来的な 「インクルージョン」の推進とは地域社会への参加・包摂を進めることであることから、年少期より、障害の有無に関わらず、子ども達が様々な遊びなどの機会を通じて 共に過ごし、それぞれの子どもが互いに学び合い、成長することができる社会の実現 を目指して、こうした取組も進められる必要がある。 <保育所等訪問支援> →児童発達支援センターが地域のインクルージョンを推進する中核機関として果たす役割の重要性を勘案しつつ、個々の支援対象や時期、具体的な支援方法等の違いによる差異やタイムスタディ等の実態把握も踏まえ、改めて より適切な評価の在り方等を検討する必要。また、保育所等訪問支援の手引書について通知により示すとともに、同手引書において示している保育所等訪問支援の支援内容など支援の根幹に関わる重要部分については運営基準等に位置付け、それらが適切に実施される報酬体系となるよう検討する必要がある。 さらに、保育所等訪問支援は、基本的に、併行通園等の経験のない保育所等において、支援を実践しながら理解・展開・定着し、適切な支援を行うための経験と力量を向上させることを想定。このため、個々の支援対象施設等の状況を十分に踏まえ、支援の終了の目安となる標準的な期間の在り方を併せて検討する必要がある。 <児童発達支援・放課後等デイサービスにおける障害児以外の児との一体的な支援> → インクルージョンや地域共生社会の実現・推進等の観点からは、年少期より、障害の有無に関わらず、様々な遊びを通じて共に過ごし、それぞれの子どもが互いに学び合うことは、生涯にわたって記憶される貴重な経験となる。 児童発達支援及び放課後等デイサービスの人員基準では、児童指導員及び保育士に 専従規定を置いており、児童発達支援等を利用する障害児以外への支援はできないこ ととしているが、保育所や放課後児童クラブと一体的に支援できるよう検討することが必要。例えば、保育所と児童発達支援事業所が、一日の活動の中で、設定遊び等において子どもが一緒に過ごす時間を持ち、それぞれの人員基準以上の保育士等 が混合して支援を行う等、一体的な支援を可能とする方向で検討する必要がある。 (障害児通所支援の給付決定の在り方)→ 5領域 11 項目の調査で把握できることは介助の有無、行動障害及び精神症状の頻度であり、給付決定においてどのような発達支援が障害児に必要かを判定するために は十分とは言えないと考えられる。 児童発達支援・放課後等デイサービスが、発達の只中にある子どもの育ちを支援することに鑑みれば、「児童発達支援・放課後等デイサービスの指標の在り方に関する研究」(令和3年度障害者総合福祉推進事業)の結果も踏まえ、介助の有無や行動上の 課題のみならず、個々の障害児に特に必要とされる発達支援の内容等について十分に 把握することができる指標を新たに設ける方向で検討する必要がある。 その際、子どもの育ちにくさ、学びにくさ、生活のしづらさ等の視点で、より適切に個々の障害児に必要とされる発達支援の領域・必要量等を把握しうる指標に見直す ことを検討する必要がある。その新たな指標を基に、子どもの生活全体を捉えた上で、適切な給付決定が行われ るよう、給付決定のプロセスの見直しを検討する必要がある。 特に、特定プログラム特化型(仮称)の支援に関しては、個々の障害児について、 特定領域のみでなく、全体的な発達支援の必要性を十分勘案できるよう、児童発達支援センター・相談支援事業所が適切にアセスメントを行い、複数事業所の併用等のコ ーディネートを担うことを給付決定のプロセスに組み込む方向で検討する必要がある。 ○ 必要な発達支援をコーディネートする上で相談支援事業所の果たす役割は重要で あるが、障害児の場合、セルフプラン率(障害児通所支援の申請を行う者が自ら障害 児支援利用計画を作成する割合)が依然として高い上に、成長・発達が著しくニーズ の変化が大きい児童期であるにも関わらず、モニタリング頻度は「6月に一回」に集 中している現状がある。 相談支援事業所の果たす役割の重要性を踏まえ、相談支援を必要とする家庭を必要な相談につなぐとともに、市町村の給付決定において個々の障害児の状況に応じたモ ニタリング頻度の設定が行われるよう、運用状況の把握を随時行いつつ、運用の徹底 を進めることを検討する必要がある。 また、給付決定に関する自治体間の格差が大きい現状を踏まえ、新たな指標を運用 していく際には、判断のバラツキが生じにくくなるよう、市町村職員向けのガイドラ イン等の整備を検討する必要がある。 (障害児通所支援の事業所指定の在り方)→ 指定基準を満たせば事業者として指定することが原則である中で、都道府県としては総量規制による指定の拒否は慎重にならざるを得ない一方、できる限り障害児通所支援事業所の地域偏在やサービス不足・過剰をなくし、より身近な地域での整備・配置を促していくことも重要。 こうした観点から、都道府県の障害児福祉計画及びその積み上げの基となる市町村 の障害児福祉計画において、保護者や子どもが居宅からより容易に移動することが可能な区域での事業所配置を意識し、より狭い圏域でも必要量を見込んでいく方向で、 具体的な方法を検討する必要がある。 これにより、広域でのサービス全体の必要量に達しない限り総量規制の対象とならず、事業所指定を検討する者との意見交換等を行いにくい現状を、より狭い圏域で必要量に達している場合でも近隣の他の圏域での事業所指定の検討を促すなど、地域偏在やサービス不足・過剰をできる限り解消するよう検討する必要がある。 また、重症心身障害や医療的ケア等の支援が行き届きにくいニーズ→障 害児通所支援の全体の必要量とは別に、医療的ケアスコアの高い子どもの受け入れを含め、そのニーズを十分見込み、整備を促していく方向で検討する必要がある。 一方、人口の分散状況等から、狭い圏域ではニーズがまとまらず、事業運営の安定 性が確保できない地域も想定されるため、具体的な方法の検討に際しては、 ・ 例えば放課後等デイサービス等相対的に必要量が大きく充足しているサービスは、 より狭い圏域での必要量を基に総量規制の判断を行い ・ 例えば医療的ケアに対応する児童発達支援等相対的に必要量は少ないが充足していないサービスは、より広域での必要量を基に事業所の誘致等を働きかける 等、複数の圏域を組み合わせて判断することも含め検討する必要がある。 (支援の質の向上等)→ 障害児通所支援については、児童発達支援及び放課後等デイサービスの各ガイドラ インで定めた自己評価票・保護者評価票について改善に向けて改めて見直した上で、 現在、評価方法が任意とされている自己評価・保護者評価について、ガイドライン上 の評価票の内容を最低限実施する等、運営基準等での位置付けを見直す必要がある。 また、第三者による外部評価については、今後の障害福祉サービス全体の検討(P.29 参照)も踏まえつつ、評価の具体的な内容について、研究の報告(※)等を参考に検 討を進めることも考えられる。 (※事業所間の支援の質の格差が大きいことが課題となっていることから、事業所における自己 評価・保護者評価以外に、評価の第三者性や支援現場の実態の把握という観点から、令和元年度障 害者政策総合研究事業「障害児支援のサービスの質の向上のための外部評価の実施とその検証の ための研究」を行った。) ○ また、児童発達支援センターにおいて、こうした各事業所における自己評価・保護 者評価の結果を集約し、各事業所とともに、それぞれの事業所の強み・弱みを分析し、 地域の事業所が互いの効果的な取組を学び合いながら、より良い支援の提供につなげ ていくことを後押しすることを検討する必要がある。 こうした自己評価・保護者評価の分析・検討の場には、子ども自身の思いをできる 限り取り入れる観点からの保護者の参画や、相談支援事業所、保育所・学校等の地域 の関係者等の参画を検討し、事業所・利用者・関係者がチームとして協力しながら事 業所の質を高める方向で具体的な仕組みを検討する必要がある。 2 過齢児の移行調整 (1) 現状・課題 →平成 24 年施行の児童福祉法改正において、18 歳以上の障害者については、就労支 援施策や自立訓練を通じ、地域移行を促進するなど、大人としてふさわしい、より適切な支援を行っていくため、障害者施策で対応することとされた。 一方、施行後直ちに指定基準を満たすことが困難な場合、現に障害児入所施設に入 所している 18 歳以上の者が退所させられることがないよう特例措置を行ってきた経過がある。入所施設の中に子どもと大人が混在することにより、年齢に合った児童集 団の形成が困難であり、また年齢に合わせたきめ細かい支援体制の確保ができないな ど支援の質が低下するおそれがあることから、成人期にふさわしい暮らしの保障と適 切な支援を行っていくべき。 (2) 検討の方向性 ↓ (都道府県による新たな移行調整の枠組み)→ 障害児入所施設からの円滑な移行を促進するため、都道府県及び政令市の責務とし て、関係者との協議の場を設け、移行の調整及び地域資源の整備等に関する総合的な 調整を行うこととすべき。 その際は、市町村(政令市を除く。)、児童相談所、障害児入所施設、相談支援事業 所等がそれぞれの役割を果たしながら都道府県又は政令市と連携し、円滑・速やかな 移行を図る必要がある。 (移行先確保・施設整備の在り方)→専門的な手厚い支援が必要な者も多いことから、各都道府県等において、15 歳以上 の移行支援対象者数の中長期的な見通しを考慮しながら、新たな整備(グループホー ム等)の要否・具体的な内容について検討し、都道府県・市町村の障害福祉計画・障害児福祉計画へ的確に反映させていくことを検討する必要。児者転換・児者併設により、地域から短期入所を含め障害児入所施設の定員が失わ れることとなる場合は、地域のセーフティネットとしての障害児の定員の在り方を障 害児福祉計画の改定等において改めて検討する必要がある。強度行動障害の適切なケアのための基盤整備は、ハード面だけでなく支援人材の育 成等ソフト面も重要であり、報酬改定による対応等を含め、検討する必要がある。 (移行支援のための新たな制度)→15 歳頃から、ソーシャルワーカー等の障害児入所施設職員が本人の意思決定を支援 しつつ、相談支援事業所が障害児施設入所中から成人としての生活への移行・定着ま でを一貫して支援することを可能とする仕組みを設けることを検討する必要。 その際には、本人の意思を最大限に尊重し、本人の状態像や保護者の状況等も踏まえつつ、まず家庭への復帰やグループホーム等への移行を十分に検討する必要。障害児入所施設の措置・給付決定主体である都道府県等が、移行調整に必要となる 相談支援やグループホーム等の体験利用について、障害児入所施設の支援の一環とし て、一元的・包括的に決定できる仕組みを設けることを検討する必要がある。 ○ 現行制度では、満 20 歳到達時まで、措置又は契約の延長により、障害児入所施設 としての措置費又は給付費の支給が可能とされているが、特別な事情により移行が困難な者(@例えば 15 歳以上等一定年齢以上の入所児童で移行可能な状態に至っていない場合、A強度行動障害や情緒障害などの精神症状が 18 歳近くになって強く顕在化し、18 歳前後での移行が適切でない場合等)→都道府県等の協議の場で の判断を経て、満 22 歳満了時まで(満 23 歳に達するまで)入所が継続できるように すべきである。 (みなし規定の期限)→上記の対応を進めた上で、成人施設としての設備基準を満たさないまま「みなし規定」により継続する「経過的サービス費」の支給は、未移行者の移行完了に向けた「準 備期間」として、令和5年度末までは継続する必要がある。 次回も続き「W 引き続き検討する論点について」からです。 |