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第1回「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会」 [2021年12月16日(Thu)]
第1回「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会」(令和3年12月6日)
《議題》(1)精神障害の労災認定の基準について (2)その他
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_22601.html
◎【資料 10】精神障害の労災認定の現状・課題と論点(案)について
○ 現状 ↓

・ 現行認定基準の策定から約 10 年が経過する中、労災請求件数は大幅に増加し、年に 2,000 件を超える状況。平均処理期間はいったん短縮がみられたが、近年の請求件数の増加を反映して再び長期化傾向にあり、令和2年度の平均処理期間は 8.5 か月となっている(調査・決定の流れは別紙のとおり。)。
・ この間、働き方の多様化が進み、労働者を取り巻く環境も変化している。 また、新たな医学的知見としてのストレス評価に関する調査研究等も行われ、裁判例、支給決定事例等の蓄積も進んでいる。
○ 課題 ↓
・ 今後も請求件数が増加することが考えられ、審査のより一層の迅速化、効 率化を図る必要がある。現下の労働環境の変化等に対応するため、最新の医学的知見、裁判例、支給決定事例等を踏まえ、認定基準の全般にわたって検証を行い、より迅速かつ適切な業務による心理的負荷の評価等が行えるものとする必要がある。
○ 論点(案)→以上を踏まえ、次のような事項の検討が必要ではないか。 ↓
@ 精神障害の成因、認定要件とその考え方について A 対象疾病について B 業務による心理的負荷の評価について(具体的出来事の追加・修正・統合、出来事ごとの心理的負荷の強度、出来事が複数ある場合の評価、労働時間の評価、評価期間等) C 業務以外の心理的負荷及び個体側要因の評価について D 発病の有無、発病時期、悪化等の判断、自殺の取扱いについて E 療養及び治ゆについて F 認定基準の運用について



◎【資料 11】精神障害の労災認定の考え方について
1 精神障害の成因
→現行認定基準は、精神障害の成因について、下記のとおり「ストレス−脆弱 性理論」に依拠している。 この考え方は、現在の医学的知見等に照らしても、適当と考えてよいか。 ↓
認定基準 第3 認定要件に関する基本的考え方(一部抜粋)) ↓
対象疾病の発病に至る原因の考え方は、環境由来の心理的負荷(ストレス)と、個体側の反応性、脆弱性との関係で精神的破綻が生じるかどうかが決まり、心理的負荷 が非常に強ければ、個体側の脆弱性が小さくても精神的破綻が起こるし、逆に脆弱性 が大きければ、心理的負荷が小さくても破綻が生ずるとする「ストレス−脆弱性理論」 に依拠している。

(精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会報告書(平成 23 年 11 月)↓
 2 検討に当たっての基本的考え方
(3)成因に関する考え方(ストレス−脆弱性理論に基づく評価)→精神障害の成因(発病に至る原因の考え方)として、判断指針及び11年報告書 が依拠している「ストレス−脆弱性理論」は、平成11年以後の精神医学上の知見 を考慮しても最も有力な考え方といえ、また、裁判例においても是認されている。 したがって、本検討会においても、精神障害の成因としては、「ストレス−脆弱性 理論」に依拠することが適当と考える。 (注)「ストレス−脆弱性理論」は、環境由来のストレスと個体側の反応性、脆弱 性との関係で精神的破綻が生じるかどうかが決まるという考え方であり、スト レスが非常に強ければ、個体側の脆弱性が小さくても精神障害が起こるし、逆 に脆弱性が大きければ、ストレスが小さくても破綻が生ずるとする考え方。 この場合のストレス強度は、環境由来のストレスを、多くの人々が一般的に どう受け止めるかという客観的な評価に基づくものによる。
⇒心理的負荷の強度と反応性・脆弱性の関係(概念図) 参照。
2 認定要件の考え方 「ストレス−脆弱性」理論に基づくとした場合に、現行認定基準の
認定要件の基本的な考え方(※)は、現在の医学的知見等に照らしても、適当と考えてよいか。 ※ 精神障害を発病し、業務による強い心理的負荷が認められ、業務以外の 心理的負荷及び個体側要因により発病したとは認められない場合に、業務 上の疾病として取り扱うこととしている。 ※ 対象疾病の範囲や評価期間等の詳細については、次回以降検討。
(認定要件) 1 対象疾病を発病していること。 2 対象疾病の発病前おおむね6か月の
間に、業務による強い心理的負荷が認められること。 3 業務以外の心理的負荷及び個体側要因により対象疾病を発病したとは認められな いこと。
3 判断の基準となる労働者
→「ストレス−脆弱性」理論に基づくとした場合に、心理的負荷の強度を客観的に評価するに当たり、どのような労働者にとっての過重性を考慮することが 適当か。↓
(認定基準 第3 認定要件に関する基本的考え方(一部抜粋))
この場合の強い心理的負荷とは、精神障害を発病した労働者がその出来事及び出来事後の状況が持続する程度を主観的にどう受け止めたかではなく、同種の労働者が一般的にどう受け止めるかという観点から評価されるものであり、「同種の労働者」とは職種、職場における立場や職責、年齢、経験等が類似する者をいう。


◎【資料 12】ICD‐10 準拠「疾病、傷害及び死因の統計分類」第 V 章精神及び行動の障害 →以下のような統計分類で処理。↓(11の分類障害)
F00-F09 症状性を含む器質性精神障害
F10-F19 精神作用物質使用による精神及び行動の障害
F20-F29 統合失調症,統合失調症型障害及び妄想性障害
F30-F39 気分[感情]障害
F40-F48 神経症性障害,ストレス関連障害及び身体表現性障害
F50-F59 生理的障害及び身体的要因に関連した行動症候群
F60-F69 成人の人格及び行動の障害
F70-F79 知的障害〈精神遅滞〉
F80-F89 心理的発達の障害
F90-F98 小児期及び青年期に通常発症する行動及び情緒の障害
F99 詳細不明の精神障害


◎【資料 13】精神障害の労災認定の考え方に関する最近の裁判例
1 令和3年9月 16 日名古屋高裁判決(国敗訴
)→(概要) 被災者(死亡時40 歳、男)は、自動車製造会社において、生産準備業務等に従事し ており、製造ラインの立ち上げを担当した後、9月から海外工場の設備改善等に関す る業務を担当していた。被災者は10 月下旬ごろから早朝覚醒等を訴えるようになり、 12 月にメンタルクリニックを受診してうつ病と診断され、翌年1月に縊死した。

2 令和3年5月 13 日東京高裁判決(国勝訴)→(概要) 被災者(死亡時 34 歳、男)は、6月からホテルに雇用され宴会部門の調理師 として業務に従事していたが、同年 10 月にマンションから飛び降り、死亡して いるところを発見された。

3 令和3年4月 28 日東京高裁判決(国勝訴)(令和3年 10 月 26 日最高裁上告不受理)→ (概要) 被災者(発病時 30 歳、女)は、1月末にコンサルタント会社にパートタイム 職員として採用され、経理関係を含む一般事務職として業務に従事していたが、 同年6月に事業場より解雇を通告され、同月頃気分変調症を発症した。

4 令和3年4月 28 日名古屋高裁判決(国敗訴)→(概要) 被災者(受傷時 47 歳、男)は、自動車部品の製造会社において、成形機等の オペレーター業務に従事していたが、○年 10 月に工場内の取出機のチャック板 と成型機の間に左顔面を挟まれ、左眼球破裂等の負傷をした。 請求人は当該負傷により○+2年5月までは休業が必要な、また、同年6月以 降は通院日について休業が必要な状態と判断された。なお、当該負傷については、 ○+4年2月に左眼失明の状態で症状固定となった。 請求人は当該負傷前からアルコール依存症及びうつ病について継続的に精神 科を受診していたが、○+2年 11 月に、当該負傷による左眼失明に基づく心因 反応(神経症性うつ病)との診断を受けた。

5 令和3年2月4日高松高裁判決(国勝訴)→(概要) 被災者(発病時 44 歳、女)は、A協会において手話通訳者として勤務してい たが、○年4月よりB社会福祉法人に採用され生活支援員兼コーディネーター として勤務していたところ、翌年4月頃から疲れやすく、気持ちが不安定になる などしたため、同年5月に医療機関を受診しうつ病と診断された
(判旨)
労災保険法に基づく保険給付は、業務災害、すなわち労働者の業務上の疾病等 について行われ、労働者の疾病等を業務上のものと認めるためには、業務と当該 疾病等との間に相当因果関係が認められることが必要(最高裁昭和 51 年 11 月 12 日第二小法廷判決参照)。そして、労働者災害補償保険制度が、労働基本法上の使用者の災害補償責任を担保する制度であり、同制度が使用者の過失 の有無を問わず被災者の損失を店舗する危険責任の法理に基づくものであるこ とに鑑みれば、上記の相当因果関係を認めるためには、当該疾病等の結果が、当該業務に内在する危険が現実化したものであると評価し得ることが必要である (最高裁平成 8 年 1 月 23 日第三小法廷判決、最高裁平成 8 年3月 5 日第三小法 廷判決参照)。 ところで、精神障害の病因に関する今日の精神医学的・心理学的知見としては、 精神障害が生じるか否かが環境由来の心理的負荷(ストレス)と個体側の反応性・脆弱性との関係で決まり、ストレスが非常に強ければ個体側の脆弱性が小さ くても精神障害が起きるし、逆に脆弱性が大きければストレスが小さくても精 神障害が生じるという「ストレス−脆弱性」理論が広く受け入れられていること が認められる。そして、当該業務が危険であるかどうかは、当該業務の内容や性 質に基づいて客観的に判断されるべき事柄であり、本人の脆弱性は、判断の対象 である業務に内包されない業務外の要因であることや、ストレスの受け止め方 は個々人によって異なるが、「ストレス−脆弱性」理論においては、ストレスの 大きさを客観的に観察し、比較的小さなストレスに過大に反応することは当該 特定人の個体側の脆弱性の問題として理解するものとされることによれば、業務が精神障害との関係で危険であるかどうかは、飽くまで平均的な労働者、すなわち、当該労働者と職種、職場における立場、経験等の点で類似する者であって、 通常業務を支障なく遂行できる労働者を基準とすべきである。このような意味 での平均的な労働者を基準として、業務による心理的負荷が、他の原因と比較して相対的に有力な原因となって当該精神障害を発症させる程度に強度であると いえる場合は、業務に内在する危険が現実化したものとして、業務と当該精神障 害発症との相当因果関係を認めるのが相当である。 前提事実及び証拠によれば、平成 23 年 11 月に取りまとめられた「精神障害 の労災認定の基準に関する専門検討会報告書」は、専門家によって構成された専 門検討会が、医学的知見、それまでの労災認定事例、裁判例等の状況等を踏まえて、判断指針が依拠する「ストレス−脆弱性」理論を相当であるとして、これに 引き続き依拠し、従来の考え方を維持しつつ、業務による心理的負荷の評価基準 の改善と審査方法等の改善を提言したものである。そして、厚生労働省は、上記報告書を踏まえて、平成 23 年 12 月 26 日に、精神障害の業務起因性判断の基準 として認定基準を定めて判断指針を廃止し、新たに「業務による心理的負荷評価 表」を定め、「出来事」と「出来事後の状況」を一括して心理的負荷を判断する こととして具体例を示したほか、「出来事の類型」を見直し、対象疾病の発病に 関与する業務による出来事が複数ある場合の心理的負荷の程度は全体的に評価 することなどを示した。認定基準は、行政処分の迅速かつ画一的な処理を目的と して定められたものであって、その法的性質からすれば、裁判所による行政処分 の違法性判断を直接拘束するものではないが、その作成経緯や内容等に照らせば、相応の合理性を有しており、労働者災害補償保険制度が根拠とする危険責任 の法理にかなうものである。したがって、精神障害に係る業務起因性の有無を判 断するにあたっては、認定基準を参考にしつつ、個別具体的な事情を総合的に考 慮して行うのが相当である。

次回は新たに「令和3年第16回経済財政諮問会議」からです。

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