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第11回 成年後見制度利用促進専門家会議(web会議) [2021年11月14日(Sun)]
第11回 成年後見制度利用促進専門家会議(web会議)(令和3年10月25日)
【議事】@成年後見制度の利用の促進に関する施策の進捗状況(報告) A〜B
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_21658.html
◎第11回専門家会議への意見   弁護士 青 木 佳 史
0 はじめに
→第10回専門家会議で提案した中長期的な課題の議論を踏まえ、次期計画に盛り込 むべき運用改善を念頭において、具体的な課題について意見を述べる。
1 権利擁護の地域連携ネットワークの4つの機能のあり方について
○ 広報機能
○ 相談機能
○ 利用促進機能(2つに分ける)
○ 後見人支援機能
2 市町村長申立の運用改善について →今後さらに全国的に増加する「身寄りのない」当事者への支援のために、市民後見人が相応しい事案の市町村長 申立の積極的な活用を含め、その必要性が高まる。
そこで、各地の運用 の実情から、下記の諸点についての検討・改善が求められる。 ↓
○ 福祉のために必要ある時に積極的に申立を行うこと。→ 現状では、虐待事案等に限定してその他の事案の申立をしない、保佐・補助事案 の申立をしない、担当課の審査・処理が進まず申立が遅延する、などの実情が各地 に存在し、そのため後見制度の利用に繋がらず、あるいは、やむをえず、本人に申 立の意思が明確でない場合まで無理に後見事案の本人申立の支援に回す等の事態が 生じている。 こうした実情を解消し、必要な事案を速やかに申立するように、標準処理期間を 定め、関係機関の書式の統一や担当部署の明確化による進捗管理等の迅速な申立の ための体制を整備すること。
○ 親族調査の範囲の柔軟化 →厚労省事務連絡により、申立にあたって親族の申立意向を確認する調査の範囲を 二親等を原則としているが、親族の関係性が希薄になっている実情に鑑み、事案に よる親族調査の範囲の限定をより柔軟にできるように改めること。
○ 申立担当課の継続的なスキルアップ→ 申立実務についての担当者スキルアップのため、申立マニュアルを作成し、都道 府県や市町村研修等を毎年継続的に実施し、担当職員の申立実務の不明により遅延 が生じないようにすること。
○ 申立すべき市町村間の調整→ルール作りと都道府県の調整対応を確立す ること。
○ 市町村長申立相当事案の運用について、各市町村と家庭裁判所との相互理解と連 携をはかること。→たとえば、市町村長申立に至る各市町村の支援スキーム(特に、虐待やネグレク ト事案)を家庭裁判所はよく理解し、申立における市町村の調査・準備に基づく速 やかな選任に繋げ、過度な疎明の負担や保全の必要性の厳格化をしないこと。一方、本人に申立意思が確認できないような無理な後見事案の本人申立を支援する事 案によって、審理・選任が滞る事案等について、家庭裁判所からの協力要請等によ り市町村長申立を積極的に行うようにすること。
○ 以上の諸点の運営改善のため、昨年度実施された市町村長申立の実務者協議に留 まらず、市町村長申立の運用全般の円滑化にむけた体制作りのための検討の場を設 けること。

3 中核機関の行う後見人相談・支援と家庭裁判所の行う助言・指導・監督の適切な役割分担
⑴ 問題の所在
→ 権利擁護の地域連携ネットワーク(中核機関)の機能の1つとしての
後見人支援 機能が位置づけられたのは、主として親族後見人が本人の権利擁護者として適切に 職務を担えるようにするための支援を念頭においてのことであるが、その機能・役割と家庭裁判所が本来果たすべき後見監督との関係性やそれぞれの役割分担については今期の計画では共通した認識・整理がなされてはいなかった。 この点、いくつかの裁判所から、家庭裁判所の後見監督は、広範な後見人職務の 裁量を前提にその裁量の逸脱の有無をチェックするものであるから、裁量の範囲内 にある職務について相談・助言を行うことはできない、とか、そうした相談・助言 を担うために必要な地域の情報量が家庭裁判所には欠如している、などとして、親 族後見人の相談・助言を将来的には全て中核機関等の後見人支援機能に委ねようと する見解が示されることがあった。しかしそのような見解は、法の予定する後見監 督の趣旨からも、また、福祉行政機関である中核機関の担うことのできる支援とし ても、不適切なものであり、まずは、本来の裁判所の後見監督の趣旨・役割を改め て明確にすることが重要である。

⑵ 家庭裁判所の後見監督の趣旨と範囲 →2000年の改正で、後見監督人を職権で選任できることとしたことにもある ように裁判所の後見監督の範囲・手法は、必要に応じて後見監督人を選任すること を含めて、後見人等が被後見人等のためにその職務を適切に行うように職務全般に ついて適切な助言、指導を行うことが後見監督の一環として予定されているのであ り、その延長線上に裁量を逸脱した行為への監督が予定されているのである。これ まで親族後見人就任時の説明会の開催や個別の相談への対応をしてきた実務も、そ うした本来の後見監督の一環としての助言、指導として行われてきたものである。 親族後見人の支援は、本来、第一義的には、裁判所の後見監督の一環として行われ るものであり、それは成年後見制度利用促進法ができたことにより変わるものでは ない。
⑶ 中核機関に後見人支援機能が期待される趣旨→ 他方、後見職務において、2000 年改正当初とは異なり、身上保護や意思決定支援 が重視されるようになり、親族後見人には本人に身近な存在として、その職務においてより期待されるところであるが、この部分に関する家庭裁判所の現体制においては、各地域の福祉的資源の活用や調整に関する情報を十分把握できないことや福 祉専門職の配置が十分ではないことから、それらについての相談・助言ができにく い実情がある。 そこで、この部分を中心に、親族後見人への支援を、本人や親族後見人に身近な 地域の中核機関(地域連携ネットワーク)におけるチーム支援の中で、適切な相 談・助言を行うことにより、親族後見人の職務を支援することが、中核機関等の機 能として位置づけられ期待されることとなったのである。

⑷ 家庭裁判所と中核機関の役割分担の共通認識→ こうした本来のあり方と中核機関に期待される機能から、家庭裁判所と中核機 関の役割の整理は、次のように考えるべき。
まず、親族後見人の支援の中味を分析的に確認すると、大別して、@財産管理、 A身上保護、B意思決定支援、C報告書作成等の後見事務手続の4項目に分けら れ、それぞれについて相談・助言があると思われる。 このうち@財産管理とC後見事務手続に関する相談・助言は、裁判所が主として 担うべき役割であり、A身上保護とB意思決定支援に関する相談・助言は、中核機 関にも期待することが可能な役割である。また、支援の手法としては、中核機関については、あくまでも親族後見人からの相談に基づく助言に留まるものであるが、 家庭裁判所については、相談・助言に留まらず、@からCの全てについて、必要に 応じ、指導、指示、監督処分といった後見監督へと発展するものである。
したがって、親族後見人の支援につき、中核機関がその機能を進めるとしても、 その役割は、あくまで身上保護や意思決定支援を中心とした相談・助言の役割であ り、財産管理や後見事務手続については、家庭裁判所の助言・指導を担う体制をよ り強化することが求められる。こうした役割分担についての認識をまずは共通に し、これを前提として体制整備をはかる必要がある。
⑸ 総合支援型監督人の位置づけ→ なお、これに関連して、現在、最高裁と各家庭裁判
所で、専門職団体への協力 要請により、親族後見人の支援の強化策として導入が検討されている「総合支援型 後見監督人」の運用は、親族後見人の選任初期の段階において、後見監督人による 後見職務の基本に関する丁寧な相談・助言を行うことで、親族後見人が適切な職務 を自立して担えるように育てようとするものであり、総合支援型後見監督人は、家 庭裁判所の後見監督の一環として選任され、その職務は上記の4項目全般に及ぶも のであり、監督機能よりも相談・助言機能を重視するものである。ここで留意しな ければならないことは、総合支援型を活用できるのは、後見監督人の報酬を担える 一定資産をもつ事案に限定されるものであって親族後見人全員の支援に及ばないも のであることないこと、また総合支援型後見監督人の役割が、将来的に、そのまま 中核機関の後見人支援機能に移行するものではないことに、留意が必要である。
⑹ 適切な役割分担の共通理解こそ肝要↓
いずれにしても、中核機関(地域連携ネットワーク)による親族後見人の支援 には、そのベースとなる家庭裁判所による全般的な後見監督を背景とした相談・助 言機能を、福祉的な側面から下支えすることにあるのであって、こうした役割分担 について、中核機関と家庭裁判所が共通認識をもって連携を進めていくことが重要 である。

4 本人ニーズに応じた適切な後見人等の選任(受任者調整)と地域ごとの担い手の育成
⑴ 各地域における受任調整機能(マッチング機能)の目安の確
立→中核機関と地域連携ネットワークの利用促進機能の中核をなす、本人ニーズに応じた適切な候補者の調整と家庭裁判所の選任という受任調整機能(マッチング機 能)について、各地域ごとに、家庭裁判所と中核機関や市町村長申立担当課、市民 後見人育成機関や法人後見実施団体、候補者推薦を行う専門職団体等の間で、マッ チングの目安の共通認識を形成する取り組みを具体的に進めることが、次期計画の 重要な課題となる。まずは市町村長申立事案の候補者選定について、次には中核機 関等支援チームが関わって申立支援をする場合について、マッチングの目安及び具体的な候補者推薦のスキームを地域ごとに形成していくことである。
これまで市民後見人の推薦事案の目安を家庭裁判所と支援機関とで認識共有をし てきた経験等も生かし、これをさらに各地域の担い手の資源に応じたものに広げて いくことが必要である。 そして、家庭裁判所は、これらを踏まえ、市町村長や中核機関等が関わらない申 立事案についても、同様の目安に基づいた選任を考慮することで、本人のニーズに 応じた選任に向けた運用が進むことが期待される

⑵ 市民後見人育成体制の全市町村での整備 →地域共生社会の実現に向けた地域福祉に
おける住民参画の観点から、そして、 意思決定支援を重視した身近な権利擁護活動の推進の観点から、市民後見人の育成 事業(養成、選定、活動支援の一連の事業)を、老人福祉法や各障害者福祉法に定 める責務として、全ての市町村が、都道府県の支援を受けつつ実施することを、改 めて明確にし、未実施の4分の3の市町村が次期計画において実施に至ることを明 確にすべきである。この事業を展開することで、中核機関のマッチング機能や後見 人支援機能にも繋がるものとして、重要な位置づけである。そのためには、都道府 県が広域的に対応することが望ましい研修体制や専門職の参画などについて積極的 な取り組みを行うことが重要である。 同時に、養成後選任されない市民後見人バンクの方々が、地域の様々な意思決定 支援のための支援事業等に関わって経験を重ねる機会を作ることが重要である。

法人後見の育成・支援体制の整備 →法人後見の育成については、第三者後見の担い手の少ない地域における受け皿 として、また、長期間の継続的な支援を必要とする事案の受け皿として、そのメリ ットを生かした活動をはかるための支援体制を、都道府県が中心となって展開するべきである。 支援体制整備のために検討すべき課題は、以下のとおり。 ↓
○ 育成・研修のための研修の実施→ 国においてオンライン等を活用して、毎年継続して養成講座を実施いただく とともに、都市部や過疎地ごとの地域の担い手の事情をふまえた都道府県もしく は広域の市町村合同単位での研修をこれに付加するといった重層的な研修体制が 期待される。
○ 継続性の確保 →法人後見が継続するためには人の確保(育成・研修)と財源確保(法人の財 政基盤と行政負担)が不可欠であり、法人後見としての採算性をいかに図るか。
○ 質の確保 法人に求める理念や構成員の資格・資質、専門的知見や実績・経験をどう評 価するか。
○ 法人後見に適正な事案の整理→ 大別して、@困難事案・対応頻繁事案等の後見業務の内容や組織的対応の必 要性からの整理(都市部も地方も共通)とA第三者後見の受け皿確保からの必要 性の整理になると思われる。
○ 社会福祉法人による法人後見の扱い→ 現在、社会福祉法人の「社会貢献」の一環として、法人後見事業の促進が検 討されているが、果たして専任の職員を確保して経験を蓄積したり、多職種の専 門職が関与するなど法人後見のメリットを生かせるような人的体制や質の確保が可能か、同法人のサービス利用者を担当することのないように厳格な利益相反禁 止を維持できるか等の課題を克服できる体制作りを検討しなければならない。
※ 専門職が作る法人後見の扱い→ 形式的には法人とはいえ、実質的な専門職が個人で受任することと大きな 差はな いことが多く、これをどのように位置づけるか。少なくとも、育成・支援の対象とす べきかについての整理が必要である。
⑷ 専門職後見人等の持続可能な供給体制の検討→ これまで第三者後見の担い手のほと
んどを担ってきた3つの専門職団体(弁護 士会、リーガルサポート、ぱあとなあ)は、受任件数・無報酬案件・困難案件等の 増大と若手の担い手不足等により、都市部・地方ともに、持続的な供給体制が各地 で課題となってきている。そこで、今後も、各地域の専門職後見のニーズに対応で きる持続的な供給体制を維持するための課題につき、各地の家庭裁判所や都道府県 や各市町村の中核機関等と専門職団体との間で、現状の共有と課題の検討を行うことが必要である。
⑸ 各市町村ごとの担い手整備計画の作成と推進→ 以上のような都道府県や各市町村に
おけるマッチング機能と担い手整備を進め ていくためには、各市町村ごとに、裁判所や市町村が基礎的データを毎年公表した上で、今後予想される利用者数と各種担い手のニーズとそれに対応できるための担 い手育成数等などを分析・検討し、地域ごとの担い手育成計画を作成して、広域調 整を含めた体制整備を進めていくことができることを期待したい。

5 後見職務に関する苦情への対応 →後見職務に関する苦情への対応は、家庭裁判所、専門職団体、中核機関、市町村 担当課などへ様々な形で持ち込まれているところであるが、適切な対応体制が十分に とられているわけではない現状がある。これに対する適切な対応体制を、地域連携ネ ットワークと家庭裁判所と専門職団体との連携の中で行っていくことで、本人の権利 擁護につなげる必要がある。 この点でまず、後見職務に関する苦情というものには、本人の権利・利益が損なわ れるような不祥事もしくは不適切な職務に関するものや、身上保護や意思決定支援を 軽視し後見人等の価値感だけに基づく独善的な職務に関するものがある一方で、周囲 の親族や支援者の便宜や都合に沿わないことへの不満にすぎないものや、法令や制 度・実務への十分な理解のないもの、被後見人等本人が後見制度による自身への支援 の必要性を理解・納得できないことによる訴えの現れ、支援者や本人とのコミュニケ ーション不足であるものも相当数ある(もちろんその中にも、それを踏まえて後見人 等側により適切な対応を見直す事案はある)。 そのため、後見職務への苦情対応としては、まずは、事情を十分に聴取・確認し、 本人の権利・利益の観点から、苦情として具体的な対応を必要とするものかどうかを 見極めることのできる対応体制が求められる。その結果、本人の権利・利益の観点か ら、後見人等の職務の改善を求める必要がある場合、後見人等の交代(辞任+選任) を検討するべき場合、さらには後見人等の解任が必要な場合について、それをどのよ うな体制・スキームで対応していくことができるかについて、各地域ごとの具体的な 体制作りが求められている。 後見職務の苦情対応として、各地域ごとに統一の苦情窓口が必要との意見もある が、まずは、当該後見人等の選任された経過に応じた対応体制を整備していくことか ら始めるべきであると思われる。たとえば、市町村長申立や中核機関の申立支援によ りマッチング・選任に至った事案であれば、当該市町村や中核機関がケース会議等に おいて当該後見人等を含めた事情確認や調整を行うこと、専門職団体が家庭裁判所や 自治体に候補者を推薦して選任に至った事案であれば、専門職団体が当該後見人等等 や関係者への事情確認や調整を行うこと、その他の経緯で選任に至った事案であれ ば、家庭裁判所が事情確認や調整を行うこと、といったようにである。こうしたいく つかの対応体制による事情聴取と調整を行う実践を積み重ねた上で、将来的に統一的 な苦情対応窓口の必要性を検討していくことが相当であると思われる。 また、上記の各対応体制での対応が不調・困難であった事案については、後見監督 を司る家庭裁判所が、その指導権限に基づき、専門職団体や中核機関と連携して、当 該後見人等への適切な対応を行うことになると思われる。

6 後見人等の柔軟な交代→ 後見人等の交代を検討する場面は、大別して、@選任時の本人のニーズや対応すべ き課題が変化し、それに応じて求められる適切な後見人等の属性が変化し、マッチングをしなおすべき場合、A本人と後見人等との相性が合わないなどの事情から、本人 が後見人等の交代を求めている場合、B現在の後見人等が不祥事もしくは不適切な後 見職務をしているため、本人の権利・利益のために交代を必要とする場合、などが想定される。 いずれについても、まずは上記の苦情対応と同様に、当該後見人等の選任の経過に 応じて、中核機関・自治体や専門職団体、家庭裁判所による調整により、関係者が交 代の必要性の共通認識にいたり、円滑な交代手続(辞任申立+選任申立)を行えるよ うな調整機能が果たせる運用を培っていくことが求められる。 しかし上記@やAの類型について関係者の共通理解が得られない場合、特に当該後 見人等の理解が得られない場合には、家庭裁判所が、本人のニーズや意思尊重の観点 から、より望ましい後見人等選任を確保するという立場で、その調整機能を発揮する ことが期待される。Bの類型についても、後見人等の裁量の範囲を逸脱した明らかな 不祥事や不適切な職務があれば、家庭裁判所の後見監督に基づく辞任の勧告や最終的 には解任により後見人等の交代を果たすことができるが、Bの中でも、後見人等の広 範な裁量の範囲内の職務ではあるものの、本人の権利・利益からは適切とはいえな い、より適切な対応ができるという質の向上を確保したい場合には、@やAと同様 に、家庭裁判所の調整機能を発揮することが期待される。 こうした柔軟な交代を運用において実現していくための具体的な方策としては、選 任時に将来の課題解決やニーズ変化に応じた後見人等のリレーの予定・見込みを、支 援機関や家庭裁判所、選任される後見人等との間で確認しておくことや、一定期間経 過後に後見人等の交代の必要性を検討することを想定して、何らかの手法で記録に残 しておく運用が考えられる。 また、選任当初には想定されなかったけれども、その後の事情で後見人等交代が求 められる事案では、各調整機関の調整が果たせればいいが、そうならなかった場合 に、家庭裁判所において、後見監督の一環としての863条の指導として、家事事件 手続規則による「指示」、調査人選任による調整、調査官調査等も活用して、当該後 見人等と支援機関のケース会議の開催や本人の表示されている意思を尊重した職務、 あるいは、本人の意思決定支援の実践を求め、その指示事項への当該後見人等の対応 の結果を踏まえて、交代の必要性等への調整機能を発揮するといった方策を具体的に 運用していくべきである。 後見人等の柔軟な交代については、様々な契機や事案の多様性、対応する機関の特 性などもあるため、交代に向けた対応の在り方について、いくつかの類型ごとの具体 的モデルスキームを検討し、各地での実践を行い、それを踏まえて現行制度下におけ る後見人等交代の可能性と限界を見据えていくことが重要である。

7 家庭裁判所の果たすべき役割と機能強化→ 以上のような様々な積極的な運用の改善をはかっていくには、中核機関と地域連携 ネットワークが、都道府県や各市町村の福祉行政とともに、求められる機能を果たしていくとともに、家庭裁判所の福祉機関との緊密な連携が不可欠である。家庭裁判所 が管轄下の各市町村に出向いて協議会や中核機関の運営会議等に参加するなどして地 域状況を把握し、マッチングを含めた共通認識を醸成するとともに、家庭裁判所自体 が身近でアクセスしやすい存在になることが求められる。また、意思決定支援や身上 保護も含めた後見職務のきめ細やかな評価を行い、後見監督の前提となる助言・指導 を的確に行い、苦情対応や柔軟な後見人等交代へのイニシアティブを的確にとりえる 専門性も求められる。 こうした役割を、福祉機関と連携しつつ、それぞれの役割を担い合っていくことが 可能となるように、家庭裁判所の支部・出張所を含めた人的体制の拡充、専門資格を もった職員の確保、身上保護や意思決定支援等の継続的な研修等、質・量の両面にお ける人材確保・育成策が求められる。

8 福祉と司法の連携にあたっての個人情報の取り扱い→ 家庭裁判所と中核機関等が、適切なマッチングによる選任、親族後見人の支援、柔 軟な後見人等の交代、後見人等への苦情対応を、連携して担っていくためには、本人 や後見人等の情報を必要に応じて適切に共有することが不可欠であるが、その際の個 人情報の取り扱いについてのルール等については、各対応を要する目的に応じた情報 共有の必要性も吟味しつつ、令和3年個人情報保護法改正による自治体個人情報保護 条例の統一的扱いなどの推移を踏まえ、整理・検討を行っていく必要がある。また、 地域連携ネットワークの構成員間、支援チームのメンバー間での情報共有のあり方に ついても同様である。 この点、適切なマッチングや親族後見人の支援などにおいては、原則としては、同 意に基づく個人情報の共有のあり方を具体化することになると思われる一方、後見人 等の苦情対応や共通理解の難しい後見人等の交代事案や不祥事対応などにおいては、 同意に基づかない例外的な個人情報共有のルール等の検討も必要になると思われる。

9 後見報酬のあり方と報酬助成制度
⑴ 後見報酬のあり方
→ 後見報酬は、従来、民法862条の「被後見人等、後見人等の資
力その他の事情」との規定に基づき、本人の資産や収入を中心とした報酬算定をしてきたものであるが、これは最高裁が指摘するように、財産管理面においては客観的で分かりや すい考慮要素として実務に定着してきたものであり、その面では現在でも妥当するものであると思われる。そこで、「実際の事務の内容や負担の程度等に見合わない 報酬額になる事案の存在」と言われるものがどういうものなのか、具体的に検証することが必要であるところ現時点までなされていない。一方、後見職務における身 上保護や意思決定支援の重視を受け、これに関する評価を報酬に反映する観点は重 要であり、そこから今後の後見報酬の算定要素として多面的な考慮が必要になった というのが、検討の出発点である。 そして現在、最高裁と各家庭裁判所では、従来の報酬算定の基準を全く止めて、 「後見人等の事務の内容と負担」という単一の指標での見直しを検討している。し かしそもそも後見報酬のあり方は後見人等等の役割への評価の問題であるところ、 現在の多種多様なニーズに応じた後見人等等の職務は、いくつかの評価軸の複合的 な要素で評価されるべきである。後見事務の内容と負担だけではなく、後見事務の 質への評価、各専門職の専門性自体への評価、管理財産についての責任への評価、 専門職団体としての質確保への評価といった多面的な評価軸による総合的評価がな されるべきであり、単一の評価軸でまとめることは困難である。特に、管理財産の 多寡や後見人等のマッチングにおいて重要なポイントとなる専門性や属性が報酬で は全く考慮されないことは、ドイツの経験を踏まえても極めて不十分なものである。従来の基準に、後見人等の事務の内容と負担を考慮要素に加え、さらに多面的 要素を加えたあり方が検討されなければ、今後の後見人等の持続可能な確保は困難 であるといわざるをえない。 第4回の運用改善ワーキングで、最高裁から報告された検討状況の個別の点につ いても、就任時、継続時、終了時という時期的な区切りは選任から数年間全く落ち 着かない事案も少なくないこと、「事務内容と負担」については専門性を求められ る事案では事務負担では評価できない質的な要素が大きいこと、身上保護と財産管 理の事務負担の区別は、当事者団体からも指摘され、実務経験からも実感するとこ ろとして、実際は分けがたく渾然としているものであり区別した評価が適切かとい う疑問があること等、基本的な観点で検討を要するものである。 また、報酬算定のあり方は、各地域の担い手・給源の実情とも密接に関わるもの であるところ、必ずしも十分な給源がない地域、あるいは中核機関が機能していな い地域、柔軟な交代ができずやむを得ず後見人等を続けないといけない地域等々、 過渡的な状況下で後見人等が選任されている事情に対し、「事務の内容と負担」だけで対応することの不適合さへの視点も重要である。現状を踏まえた過渡的な場合 のものと、将来的に描かれる十分な給源のもとで後見人等の交代が速やかに行わ れ、さらには必要性・補充性の原則に基づき、適時適切な場合だけに後見人等が選 任される場合のものと、前提となる実情を区別して、報酬のあり方を議論すること が、持続可能な供給体制を維持するために重要であると思われる。
⑵ 後見報酬助成制度の抜本的拡充→ 後見人等報酬の助成制度は、本人資産から賄うこと
の負担の大きさや資産僅少 の本人の負担困難性に鑑みれば、必要な人への普遍的な制度利用の観点からは、後見報酬のあり方と切っても切り離せない両輪として進めていくべき課題であり、最 高裁も指摘するように、新たな報酬算定の運用の基盤となる環境整備の問題として、運用開始時期にも影響するものであり、報酬のあり方の議論だけが先行することがあってはならない。 特に、現在の成年後見制度利用支援事業では、市町村ごとに、助成対象が市長申 立事案や生活保護に準じた世帯だけに限定したりしなかったりが区々であり、各市 町村の財政負担能力にも左右されており、それが倉敷市の報告にもあるように、担 い手確保にも影響している。全国どこでも同じような助成を受けることができる制 度にするためには、抜本的な報酬助成制度の見直しが不可欠である。 最近の新規申立の傾向が表すように、市長申立や本人申立による福祉的ニーズに 対応する(身寄りのない世帯や生活保護世帯の支援)制度利用の高まりは、成年後 見制度による支援が、医療や介護と同様に、自己決定を支援・代行する福祉的支援 としての役割を果たしてきており、その財源基盤は国が担うべきものである。
生活 保護の生活扶助項目への追加や介護保険法や障害者総合支援法の個別給付に準じた 対応を含め、国としての助成制度を創設すべきである。 また、成年後見制度が民法に基づく制度であり、上記の福祉的ニーズとは別に、 虐待対応や消費者被害、親族間紛争、法的トラブル等における本人の権利回復のた めの支援としても重要な役割を担い、今後も認知症高齢者の増加に伴いその役割が 増大することを踏まえれば、司法制度としても、報酬を賄うことのできない低所得 者への司法的支援策として、総合法律支援法に基づく後見報酬等の援助等を援助対 象として追加すべきである。

⑶ 後見報酬付与の現状データの整理・分析と開示 →ところで、後見報酬のあり方及び報酬助成制度の検討は、現行基本計画の中間 検証以降に議論が本格化したものであるところ、そもそも現行の報酬付与の決定状 況が、全体の事案総数の中でどのように運用されているかの基礎データの分析はないままに、個別事案や現場感覚で議論されてきたように思われる。どのような見直 しを行うにしても現状の客観的認識が重要であり、最高裁において各家庭裁判所の 把握しているデータを集積し、各家庭裁判所ごと(本庁・支部を含め)の過去1年 間の全事件(継続事案)における、後見人等等の属性(親族、市民、第三者、法 人)による選任数・割合、報酬付与の有無(後見人等等の属性別)、報酬付与した 場合の報酬額(年額又は月額)の分布状況(後見人等等の属性別)についてデータ 整理をしていただくことを求めたい。

10 任意後見制度の適切な運用改善や法改正に向けて→ 任意後見制度は、意思決定支援の延長に位置づけることのできる自己決定に基 づく代理代行制度として、利用促進をはかることが求められる、より身近な 制度として感じられ利用に結びつけるための方策とともに、主に親族が任意後見受 任者となっている現状における課題につき、日弁連の「任意後見制度の利用促進に 向けた運用の改善及び法改正の提言」(2020年11月18日)を参考にしてい ただきたい。
⑴ 任意後見制度の利用促進に向けて↓
○ 任意後見制度の利用を阻害している原因を的確に把握し、運用の改善や法改 正を検討するためのさらなる実態調査を行うこと。
○ 中核機関や地域包括支援センター等の第一次相談機関において、任意後見制 度の理解を周知徹底させ、一般市民に対する啓発活動や相談活動を強化する。
○ 誰もが、身近な地域の中に自分に合った適切な受任者を見付けられるよう、任 意後見受任者の担い手につき、適切な質を確保した受任者として適切な専門職や 団体についての適切な情報提供体制の検討
○ 任意後見監督人の報酬助成の制度の検討
○ 任意後見契約発効後も、柔軟に代理権目録の追加変更の登記を可能にすると ともに、本人の意思決定能力やニーズに即して、代理権の段階的発効が可能にな るような法改正
⑵ 任意後見制度の濫用防止に向けて ↓
○ 移行型の任意後見契約において不正が行われることを防止する
ため、任意後見 発効前の委任契約における代理権を必要なものに限定するとともに、地域連携ネ ットワーク等において任意後見監督人選任申立ての支援を行う取組の実施 。 任意後見契約発効後の権限の濫用を防ぐため、不祥事対策に有用な契約条項の 在り方を普及・啓発
⑶ 専門職が任意後見受任者である場合の登記表示に関する改善提言。 専門職が業務として任意後見契約を締結する場合には、業務の本拠である事 務所の所在地を住所として登記できるよう改善を図ること。 任意後見の登記においても職務上の通称姓の登記ができるよう適切な措置を 講じること。

11 法定後見制度・任意後見制度の不正防止策
⑴ 後見人等を孤立させない支援体制の重要さ→
後見制度の信頼維持のために、後見人等の不正防止策は重要であるところ、主 として事前防止策を充実させることに向けた対応をさらに進めることが大切であ る。そのためには、親族後見人・市民後見人であれ、専門職後見人等であれ、後見 人等を孤立させないように、バックアップ体制や本人支援のネットワークの中で職 務を担わせる環境整備が重要である。家庭裁判所と中核機関の連携による親族後見 人の支援策の推進、市民後見人の育成体制における継続的な支援機関による定期的 な助言・確認体制、専門職団体における家庭裁判所とも連携した定期確認や指導体 制を、各地で整備・充実させることが最大の不正防止策であることを確認したい。
(2) 後見支援商品の課題 →また、事前防止策の1つとされる後見制度支援信託や後見支援
預金については、導入時に財産の固定化や自己決定への制約が懸念されていたが、全国の身近な 金融機関全てで支援預金が利用できるようになれば、従来本人が形成した資産を変動させることなく利用できるという意味で、本人の自己決定に反する弊害を抑える ことが期待できる。ただし、支援商品選択時に設定した日常生活に必要な収入・資 産範囲の見極めが、その後変動する本人の生活状況に的確に対応できているのか、 設定時の枠内に本人の生活が押し込められることになっていないかの検証が必要である。 加えて、長期化するゼロ金利時代において、今後の制度利用者は、流動資産を預 貯金より有価証券・投資信託等で形成する傾向にあり、毎年相当の配当利益を受け ているにもかかわらず、これを解約して利息の伴わない支援商品の適用を指示する ことは、本人の経済的利益を損なうものとして慎重にすべきであり、むしろ証券取 引における不正防止策を別途検討することが求められる。 さらに、保佐・補助類型についても、後見支援類似の商品の検討が金融庁のフォ ローアップ会議でなされていることが報告されたが、被保佐人・被補助人は、被後 見人等以上に、自己の資産についての意思を表明する機会が多くこれを尊重する必 要があり、また日常生活や社会生活の変動も大きいため、より柔軟な資産活用への 対応が求められるため、商品検討にあたっては、必ず、現場の保佐・補助の職務の 実情や当事者の意見を踏まえて、その可否を検討すべきである。 なお、保佐,補助類型においては,第 10 回専門家会議の意見において、必要 性・補充性の原則の運用レベルでの反映として、代理権付与の範囲の必要性を事案 に応じて厳格に吟味することを提案したが、これを金融機関との取引においても, 管理の必要な銀行口座の取引についてのみ保佐・補助人に代理権を付与し、その余 は本人が取引を行い保佐・補助人は同意権を行使するという形態とすることで、不 正行為は行われにくくなる一方、意思決定支援の理念にも資するものであり、代替 策として検討に値する。
⑶ 損害保険等の事後救済策の整備→事後救済策としての後見職務についての損害保険等の整備については、後見人 等の善管注意義務違反による損害を填補する保険だけでなく、監督責任機関の責任 を填補する保険も整備されつつあり、さらに後見人等の故意の不祥事をカバーする 商品の開発も進んでおり、こうした保険等を後見人等の属性を超えて全ての後見事 案に普及させる環境整備が重要である。これについて、保険料負担のあり方を含め て普遍的な制度としていくためのあり方の検討が求められる。

12 高齢者・障害者の取引主体としての合理的配慮の確保と成年後見制度の円滑な 運用のために金融機関が果たすべき役割→ 高齢者や障害者も、取引社会の一員として、他の者と同様の扱いを受ける権利が あるのであり、そのため支援者が意思決定支援によりそれを支援するとともに、事 業者が本年成立の障害者差別解消法改正による3年以内の合理的配慮の義務化が求 められることになったことを受け、金融機関もまた、まずは、認知症や知的・精神 障害がある顧客についても、職員が認知症や障害特性について十分に理解し応対できるための研修の実施や人材の養成、本人の意思及び認知判断能力の確認方法や支 援の在り方の検討など、適切な「合理的配慮」を提供することのできる体制整備が 重要である。近時の金融機関のペーパーレス、デジタル化、店舗縮小等の流れは、 こうした個別の特性に応じた合理的配慮を難しくする面もあり、改めて体制整備を 本格的に検討いただく時期である。 そして、同様に、本人が任意後見や保佐、補助の利用となった場合も、本人の取引 主体としての地位が失われるものではないにもかかわらず、実務上は、本人自身の取 引が制限され、本人が取引から排除されてしまう運用の改善が求められるとともに、 成年後見人等や任意後見人等、保佐人、補助人についての制度理解を進め、従来本人 あれば認められていた取り扱いと同様の地位を保障し(全支店での取引、キャッシュ カードの利用、ネットバンキングの利用等)、円滑な金融機関の利用を継続できるよ うに運用改善をはかるべきである。 まずは、こうした本人の取引主体性の確保及び成年後見制度の円滑な利用継続を確 保した上で、それでも本人の取引が難しい場合の日常生活の必要性に応じた家族等に よる代理・代行などの取り組みにつき検討することが道筋である。 この点、本年2月18日に公表された全国銀行協会の「金融取引の代理等に関する 考え方および銀行と地方公共団体・社会福祉関係機関等との連携強化に関する考え方 (公表版)」は、認知症高齢者を念頭においた代理・代行等の考え方を示している が、上記の諸点についての十分な配慮とともに、@任意代理人との取引については、 その運用に当たり、本人の権利・利益確保の観点から、濫用防止の措置を講じること が不可欠であり、A親族等による無権代理取引への対応を安易に広げることは、本人の権利・利益を害するおそれもあるため、具体的にどのような場合に「本人の利益に 適合することが明らかである」として依頼に応じるかについては、慎重な検討がなさ れるべきである(以上については、本年6月17日付、日弁連意見書「一般社団法人 全国銀行協会「金融取引の代理等に関する考え方および銀行と地方公共団体・社会福 祉関係機関等との連携強化に関する考え方(公表版)」についての意見書」を参照さ れたい)。

13 次期計画における目標値の設定→ 以上で意見を述べてきた次期計画に盛り込むべき実務運用改善の各課題について は、次期計画において、成年後見制度利用促進法12条2項に基づき、目標指標化の 可能なものにつき、期限を定めた目標指標を明確に定め、その進捗を具体的・着実に 進めていくことが重要である。 次の諸点については、具体的な指標を掲げた課題の推進が期待される。↓
・地域連携ネットワークにおける第一次相談機関における権利擁護相談の効果検証
・家庭裁判所と中核機関におけるマッチング機能の運用
・中核機関の後見人支援機能の運用 ・家庭裁判所と中核機関の連携による柔軟な後見人等交代スキーム試行
・市町村長申立の件数、標準処理期間
・市民後見人の全市町村での育成体制整備 ・都道府県の法人後見支援体制の整備
・家庭裁判所の都道府県や各市町村の協議会や中核機関の運営協議への参画
・市町村の成年後見制度利用支援事業の標準的な助成要件の達成
     
以 上

次回も続き「第 11 回 成年後見制度利用促進専門家会議 意見書」からです。

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