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第5回職場適応援助者養成研修のあり方に関する研究会(資料) [2021年01月25日(Mon)]
第5回職場適応援助者養成研修のあり方に関する研究会(資料)(令和3年1月19日)
≪議題≫ 研究会報告書(案)について その他
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_16180.html
◎資料1−2:研究会報告書(案)
T はじめに
→養成研修のカリキ ュラムはここ 10 年大幅な改定を行っておらず、そのニーズに十分対応できていない状況。 本研究会では、改めて、ジョブコーチを取り巻く状況の変化と求められる役割・スキル を整理し、今後のジョブコーチのあり方を展望しつつ、現在のニーズ等を踏まえた養成研 修のカリキュラムの改定を主目的として検討を行った。

U 職場適応援助者(ジョブコーチ)を取り巻く状況の変化と役割・スキル
1.ジョブコーチを取り巻く状況の変化→4点あり。

・一点目→障害者雇用の進展が挙げられる。
・二点目→精神・発達障害者の求職・就職者数の増加が挙げられる。
・三点目→福祉・教育から一般就労への移行の促進や障害者総合支援法におけ る就労系障害福祉サービスの充実が挙げられる。
・最後に、障害者差別禁止・合理的配慮の提供義務化が挙げられる。
2.ジョブコーチに求められる役割・スキル
・精神・発達障害者の支援の増加に伴い、職場におけるコミュニケーション や人間関係の課題に対して、本人や職場からの聞き取り、分析や助言、環境調整を行う 支援が増えてきており、情報を収集し分析するスキルがより求められるようになっている。
・特に、精神・発達障害者に対しては、本人も気づいていない課題を抽出し、どういっ た課題でつまずいているのかをアセスメントして整理し、説明することが求められる。 加えて、結果をどう伝えるかについてもアセスメントの重要な要素であり、コミュニケ ーションスキルや伝え方の技術が必要である。また、職場で起こる課題の背景には障害 特性に起因する場合が多く考えられ、アセスメントの前提として障害特性の理解が重要 。職場になじんだ後でも、職場には言えない悩みを抱えて いることや新たな課題が発生する場合もあり、職場定着のためには、職場外のサポート も重要。障害者が抱えている 問題は生活面・経済面など多様であり、医療、生活支援等その他の支援機関との連携が必要である。
・ジョブコーチは、今起こっている職業上の具体的な課題を短期間の支援の中で解決 る役割である。一方、課題には短期で解決できることと長期に渡っての支援が必要なも のもあり、後者については、職場内のサポート体制を整えるとともに、職場外のサポー トとして障害者就業・生活支援センター等が継続的に支援していくことが望ましい。

V 職場適応援助者養成研修を取り巻く状況と中長期的課題
1.職場適応援助者養成研修の現状
→養成研修の修了者層の変化としては、訪問型については、所属法人のうち、社会福祉法人の割合が減り、営利法人の割合が増えていることが特徴。平成 20 年度の実 態調査では、修了者の所属法人のうち社会福祉法人の割合が 85.6%であったところ、今 回の調査では 39.7%と減少、一方、株式会社については、同割合が 0.5%から 27.9%と増加。また、企業在籍型については、修了者の増加が顕著であり、「地 域の就労支援の在り方に関する研究会(第2次)報告書」においてその必要性について示された企業内でのジョブコーチ活用が促進されているものと思料される。
2.地域の就労支援体系とジョブコーチ支援→支援対象者全体としては、精神・発達障害者の割合が増えているが、視覚障害者や聴覚障害者等のジョブコーチ支援においてはなお困難な課題がある。特定の障害種 別に特化したジョブコーチのニーズは一定ある一方で、ジョブコーチを養成する中で特定の障害種別に係る専門的なスキルを新たに学ぶよりも、必要な専門的なスキルを有する人材にジョブコーチのスキルを付与していく方が効率的。こうした人材の受講を促進するため、積極的な周知を行うとともに、特別枠を設ける等のインセンティブに ついて、ニーズや実態を踏まえ、引き続き検討する必要がある。

3.高等教育機関におけるジョブコーチの養成→平成 30 年度から高等教育機関においても養成研修を 行うことが可能。現在、1機関が指定を受けており、社会福祉士や精神保健福祉士の養成課程を専攻している学生に対してジョブコーチ養成課程を実施。卒業と同時に国家試験に合格していることを求めることによって、養成に係る質を担保している

4.就労支援を担う人材の底上げ→平成 21 年度から JEED において「就業支援基礎研修」が開始。就労移行支援事業所の就労支援員をはじめとした、福祉、教育、医療等の就労支援担当 者を対象に、必要とされる基礎的な知識・技術の付与を目的として実施。雇用・労働と福祉分野において求められる専門人材の両方を見据えたニーズ に対応できる人材が求められており、自ずと分野横断的な人材育成のあり方が問われる。

5.ジョブコーチのスキルアップに向けた研修の必要性→養成研修に盛り込むべき内容は多々あるが、現在の研修時間内における対応は難しい。 そのため、別途スキルアップ研修を実施する等、習得できる機会を設けることが必要。また、スキルアップ研修を実施する際には、修了することで制度上何らかのメリットがある仕組みも同時に検討していくことが望まれる。 この研修は、就労支援、障害者雇用の分野における最新の動向や、受講者の 経験、ニーズに応じて内容が設定されることが望ましい。


W 職場適応援助者養成研修のカリキュラムの見直し
1.職場適応援助者養成研修のカリキュラム見直しに関する考え方
・ 養成研修
→ジョブコーチがどういった役割を担い、どういった立ち位置で支援を行っていくか、ジョブコーチ支援の根幹について、より確実な習得を目指すことが求められる。
・ 現行のモデルカリキュラムは、現在は精神・発達 障害者への支援が増えてきたため、現行の養成研修カリキュラムの中で、認知面や人間 関係、生活面の課題にどうアプローチしていくかといった内容を盛り込むなど各養成研 修機関が工夫して対応している。 例えば、「アセスメントの視点と支援計画に関する理解」の演習において、企業在籍 型と訪問型でチームを組んで面接のロールプレイをすることで、お互いの立場を理解し たり、採用時から支援者と連携する重要性を伝えている。また、「課題分析と作業指導」 においては、以前はわかりやすく教える技術(システマティックインストラクション) に重点を置いていたが、仕事を一から指導する機会が減ってきたため、作業場面における行動観察を組み入れている機関もある。 また、地域の産業動向を踏まえた職業能力開発に関する科目や自社での課題解決に向 け、研修で学んだことをどう活かしたいかというプレゼンテーションを行うとともに、 フォローアップ研修の際にそれを用いた振り返りに活用するなど、モデルカリキュラム 以外に独自科目を設けている機関もある。
・ 精神・発達障害者への支援の増加により、ジョブコーチ支援において、情報を収集し、 分析するスキルがより求められるようになっている。アセスメントについては、実地で しか学べないこともあるが、座学によりベースとなる知識を身につけておくことは可能。全ての障害種別に特化した内容を研修カリキュラムに全て盛り込むことは困難であ るため、障害への配慮や専門機関にどう繋ぐかといった普遍的な内容を含めることが必 要である。
・ 現行でも研修時間数が多いことから、受講者の負担を勘案すると、カリキュラムの見 直しに当たっては、スクラップアンドビルドを基本とすることが不可欠。今般の 見直しにあたっては特段削減が必要な科目はなかったことから、カリキュラムの構成は 大きく変更せず、科目の内容を明確化・追加することで、研修実施に係る留意点及び重点について明確化することとした。

2.モデルカリキュラムの見直し案
・意見は、以下のとおり。↓
(1)訪問型ジョブコーチについて
は、地域の就労支援を担う多様な事業ができたことに より、就労支援のプロセスが分断されて、自分が担当している部分しか見えにくくなってきている。そのため、養成研修では、全体のプロセスと訪問型ジョブコーチの役 割や立ち位置といった根幹をしっかり教えていくことが求められる。 (2)障害者権利条約が批准され、企業に対しては合理的配慮の提供が義務化された。障 害者の適切な雇用管理には、雇用率の達成のみならず、障害のある人の働くという権 利をどう守っていくか、障害者の能力を最大限に引き出して充実した働き方ができる ようにどう支援するかというアプローチの姿勢をジョブコーチに学んでもらい、実践 していくことが求められる。 (3)「職務分析と作業指導」の内容に行動観察を追加することについて、現行でも、現 場で働いている場面を撮影したビデオや実演を見て、行動観察をして記録を取り、フィードバックするといった演習を行っている機関もある。 人間関係やコミュニケーションに課題がある場合は、課題になる場面を動画にする ことは難しいため、別の科目の演習の中で、支援対象者の発言等に対してどうフィー ドバックしていくかといったロールプレイを行う等により盛り込むことが考えられる。 (4)職場定着できる人は、ストレス対処ができ、ストレスがあっても、誰かに相談して 自分の抱えている問題を解消できる人である。ストレスの把握と対処に関する詳細な内容はスキルアップのための研修の中で取り上げていくことが適切であり、養成研修 では、その重要性やアウトラインを押さえておくことが求められる。 (5)支援者は、障害の当事者から学ぶところが大きい。ジョブコーチは、経験の数や幅 で力量が分かれるところがある。特に企業在籍型ジョブコーチは、自社で採用している人材のタイプに傾向があるため、それ以外のタイプの人材について知見がない場合もある。そのため、タイプの異なる人材を知る機会はあってもよいだろう。一方で、 限られた時間の中で、特定の当事者の話を聞くことは偏った印象を与える可能性もあり、全ての障害種別をカバーできないため、プラス面とマイナス面がある。障害当事 者の話を聞く機会を設けることについては、カリキュラムの方法や工夫の1つとして、 取り入れることは考えられるだろう。

・ 以上のようなモデルカリキュラムに関する意見に基づき、変更・追加した点は以下の とおり→(1)@職業リハビリテーションの理念とA就労支援のプロセスを統合するとともに、就 労支援のプロセスにおける「職場適応援助者の役割と活用」を明示した。 (2)障害者権利条約の批准や合理的配慮の提供の義務化等の制度改正を受け、B訪問型 /企業在籍型職場適応援助者の役割に「職場における障害者の権利擁護」を追加した。 (3)アセスメントの前提として障害特性の理解が重要であることから、C障害特性と職 業的課題において障害種別を明示した。 (4)当事者の声を聞くことは重要であることから、研修内容の工夫として、C障害特性 と職業的課題とO事業所における職場適応援助者の支援の実際(事業所実習)に「可能であれば」として追加した。 (5)D就労支援に関する制度の中に、「活用できる助成金制度の概要」と「労働安全衛生法」を追加した。 (6)職場定着のためにストレスの把握と対処は重要であることから、I事業所での支援 方法の基礎理解に「ストレスの把握と対処の重要性」を追加した。 (7)面談や面接を通じたアセスメントを行う場面が多いことから、Gアセスメントの視 点と支援計画に関する理解に「面接・面談のポイント」を追加した。 (8)J職務分析と作業指導の中に、「作業場面における行動観察とフィードバック」を 追加した。

X 職場適応援助者養成研修の研修方法等の見直し
1.研修方法の見直しに関する考え方

・ 各養成研修機関は、受講者が参加しやすくなるよう日程を分割して実施する機関もある。様々な立場の受講者にとって参考になるよう多様な立場の人に講師を依頼したり、 研修期間中に関係構築を図り、修了後のジョブコーチ活動を円滑にスタートできるよう サポートしている機関もある。
・ 今年度はコロナ渦により、養成研修の実施にあたり一部オンライン方式を導入する等 臨時的な対応を行っているが、こうした対応を踏まえ、今後の恒常的な研修方法のあり方について検討を行った。
2.オンライン方式について
・ ジョブコーチは現場で支援を行うことが本旨であり、養成研修は理論を実践にどう応用させていくかを伝えるものであるため、引き続き対面型での研修が基本。演習は相互作用やグループダイナミックスを活かして行うことがあるべき姿であり、 実習は実際に現場を見ることに勝るものはない。仮にオンライン方式で行う場合は、双方向性と参加状況の確認は不可欠であり、単に 録画された講義を適宜視聴するオンデマンド方式は概して望ましくない。一方で、一部 の制度面の知識を付与することを目的とする科目等については、繰り返し視聴すること により知識の定着が図られる等のメリットもあることから、そういった科目については オンデマンド方式で実施することも考えられる。
・ 講義をオンライン方式で実施する場合、双方向性が担保されたリアルタイム方式で行 なうこと、受講者の出席・参画状況を把握すること、レポートの課題を出すこと、授業 を分割して小テストを設けることなど習得状況の把握を対面式以上にやっていく必要がある。
・ また、対面による研修では、通常、基本的な理論に加えて、様々なエピソードを交えながら講義が行われるほか、実践ではどのように応用されているのかといった多様な情 報も提供される。養成研修の場合は、特にこうした付加された情報も重要、オ ンライン方式では情報過多になるため、基本的な理論のみに絞り、習得状況を確認することが求められる。このため、オンライン方式による講義を行う場合には、演習等による補完が一層重要。
・ オンライン方式による養成研修は、ジョブコーチの活動状況が低調な地域からの受講 が可能となる点、受講にあたって法人の了解が取りやすくなる点、移動コストが減る点、 講師のオンライン化により講師の幅が広がる点等のメリットもある。しかしながら、一 方で、課題も多く、またジョブコーチ支援や養成研修の性質を考えると、特例的な措置 として柔軟な対応はその都度検討するものの、現時点では、基軸は対面で実施していくべき。
・ 中長期的には、オンライン方式のメリットも踏まえ、平時においても、養成研修のう ち基本的な制度に関する講義等については、上記に挙げた課題を解決した上で、オンラ イン方式で実施することも考えられる。そのため、今後、研修の質を保ちながらオンライン方式を導入していくことについて引き続き検討していくことが求められる。

3.演習と実習の見直しについて
・ 養成研修については、養成研修機関それぞれが工夫している状況にある。 演習について、令和2年度のコロナ渦においては、オンライン方式により行うことを一部認めている。
・ 実習については、実習のみ、日程を延期して実施することも考えられるが、 養成研修の修了が遅れることは、活動開始時期にも影響することから、他県からの受講 者等については、実習のみを他機関の実習を受講できるようにするなどの柔軟な運用も 考えられる。また、非常事態下においては、ビデオにより事業 所の映像を視聴しながら事業所担当者から説明を受けたり、映像を題材に演習を行うなど柔軟な対応も検討することが考えられる。全国一律に実施するのではなく、地域・時期等により判断することが適切である。
・ 一方で、実習の受け入れが不可となった場合でも他の受け入れ先を確保したり、実習受け入れ可能な範囲内において定員の規模を縮小するなどして実習を実施している機 関もある。実習を通して得られるものは、座学では得がたいものであり、可能な限り実 施することが望ましい。

Y おわりに
・ 本報告内容
→障害者雇用・福祉施策の連携強化に関する検討会などでの議論の参考とするとともに、今後の事業・制度運営におけ る実現に向けて検討を進めていくことが望まれる。特に、養成研修や就労支援を担う人 材の底上げに関する議論は、連携検討会の下に設置された「障害者就労を支える人材の 育成・確保に関するワーキンググループ」と密接に関連しており、地域の就労支援体系 とジョブコーチ支援に関する議論は、「障害者の就労支援体系の在り方に関するワーキ ンググループ」にも関係する内容である。 本研究会での議論が、これらの検討に資することを期待している。
・ 連携検討会→雇用施策と福祉施策の更なる連携強化に向けた必要な対応策 についてより具体的な検討の方向性について議論することを目的としているが、ジョブ コーチ支援は、福祉等の就労支援人材が雇用の現場に入って支援を行い、企業人材が福 祉等の就労支援人材と連携した上で障害者を支援していく、まさに雇用と福祉の双方に 関連する支援制度である。 そのため、養成研修は、ジョブコーチ支援に必要な雇用・福祉両分野の横断的な幅広い知識と実践的なスキルを付与するもの。今後も、障害者雇用や障害者就労支援 を取り巻く状況の変化が見込まれる中で、必要な知識・スキルを継続的に習得・向上させ、変化に柔軟かつ的確に対応できる人材を養成していくことが求められる。
・ 今回提言した内容が実現されることを通じて、ジョブコーチが引き続き求められる役 割を果たし、社会的ニーズ・期待に応えていくこと、さらには、障害者の就労支援を担う人材全体の底上げを通じて、地域における障害者雇用の一層の推進を祈念するものである。

次回も続き「参考資料1:これまでの主なご意見」からです。

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