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「社会福祉法人の事業展開等に関する検討会」の報告書を公表します [2019年12月26日(Thu)]
「社会福祉法人の事業展開等に関する検討会」の報告書を公表します(令和元年12月13日)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08411.html
◎社会福祉法人の事業展開等に関する検討会 報告書
社会福祉法人
→戦後、社会福祉事業が公的責任により実施されることになると、民間の社会福祉事業の自主性の尊重と経営基盤の安定等の要請から、旧民法第 34 条の公益法人の特別法人として昭和 26 年に制度化された。社会福祉法人は、旧社会福祉事業法に基づく規制や監督を受けながら、主として国からの措置事業を担う公共的な性格を有する法人 として機能してきた。以来、長きにわたり、社会福祉法人は、社会福祉 事業の主たる担い手として、我が国の社会福祉を支えてきた。
その後、平成 12 年の介護保険法の施行、同年の社会福祉事業法の改 正による社会福祉法の成立→サービスの利用の仕組みを措置から契約に転換し、多様な供給主体を参入させることにより、利用者の選択 の幅を広げるとともに、事業者の効率的な運営を促し、サービスの質の向上と量の拡大を図る政策がとられた。
今日、社会福祉法人の意義→社会福祉事業に係る福祉サービスの供 給確保の中心的役割を果たし、他の事業主体では対応できない様々な福 祉ニーズを充足することにより、地域社会に貢献することにある。平成28 年の社会福祉法の改正→社会福祉法人の公益性・非営利を確保する観点から、経営組織のガバナンスの強化や事業運営の透明性の向上等の制度の見直しが行われ、地域社会に貢献する法人の在り方がさらに求められることとなった。
一方、我が国の社会の人口動態→いわゆる団塊の世代が全員 75 歳以上となる 2025 年に向けて高齢者人口が急速に増加した後、その増加が緩やかになる。また、大都市とその郊外では高齢者が増加する傾向にある一方で、地方では高齢者が増加せず、減少に転じる地域も。さらに、現役世代(担い手)となる生産年齢人口の減少が 2025 年以降加速する。こうした人口動態の変化に加え、血縁、地縁、社縁と いった共同体の機能の脆弱化といった社会構造の変化が起きており、子育てや介護、生活困窮など、福祉ニーズがますます複雑化・多様化してきている。
このため、社会福祉法人が、法人の自主的な判断のもと、地域における良質かつ適切な福祉サービスの提供を可能とし、社会福祉法人の経営 基盤の強化を図るとともに、複雑化、多様化する福祉ニーズに対応する 観点から、住民に身近な圏域で様々な地域づくりの活動に参画する非営 利セクターの中核として、福祉分野での専門性を生かし、地域住民の抱 える様々な地域生活課題への対応を進められるようにするため、円滑に 連携・協働化しやすい環境整備を図っていくべきである。
こうした背景を踏まえ、本年6月に閣議決定された「成長戦略フォロ ーアップ」において、「社会福祉法人の事業の協働化・大規模化の促進方策等について、有識者による検討会を開催し、2019 年度中に結論を得る。また、希望する法人が、大規模化や協働化に円滑に取り組めるよう、 合併等の際の会計処理の明確化のための会計専門家による検討会によ る整理も含め、2019 年度中を目途に、好事例の収集やガイドラインの策定等を行う。」こととされた。 以上の問題意識の下、本検討会では以下の提言を報告する。
1 社会福祉法人の連携・協働化の方法→連携・協働化を推進する手法としては以下の3つが考えられる。
(1) 社会福祉協議会による連携や社会福祉法人の法人間連携

社会福祉協議会は、地域福祉の推進を図ることを目的とする団体として、地域の社会福祉を目的とする事業を経営する者(社会福祉法 人等)等の過半数が参加している。現在、都道府県社会福祉協議会を中心に、都道府県域での複数法人間連携による地域貢献の取組が進 められており、平成 31 年3月末時点で 45 都道府県において、居場所づくりや総合相談、生活困窮者支援等の取組が進められている。 社会福祉法人間の連携に加え、社会福祉協議会の役割に鑑み、社会福祉法人の連携の中核として、都道府県域での複数法人間連携による地域貢献の取組を更に推進するなど、社会福祉協議会の積極的な活用を図っていくことが重要。 現在、厚生労働省において、単独で地域貢献の取組を実施することが困難な小規模法人において円滑な取組を推進できるような環境整備を図る観点から、平成 30 年度から、「小規模法人のネットワー ク化による協働推進事業」を実施しており、平成 30 年度は合計 23 府県市でネットワークの構築の取組が実施されている。引き続き、社会 福祉協議会とも連携しながら、「小規模法人のネットワーク化による 協働推進事業」における実施状況や課題を把握し、法人間連携の更なる推進を図る必要がある。 また、多様化・複雑化する福祉ニーズへの対応など、地域貢献の責務を負っている個々の社会福祉法人が、自主的に連携・協働化の取組を進めることも重要であり、厚生労働省は事例収集等による横展開にも努めるべきである。 さらに、各都道府県において、平時から災害時の支援体制(災害 福祉支援ネットワーク)の構築を進めるケースが増加しており、厚生労働省も「災害福祉支援ネットワーク構築推進事業」により推進している。災害対応の重要性に鑑み、災害時に備えた連携が法人間連携の きっかけとしても有効であることから、引き続き推進することが望ましい。

(2) 社会福祉法人を中核とする非営利連携法人制度の創設
医療分野においては、医療法人等の連携・協働化の方策の一つとして、地域医療構想の実現を目的とする地域医療連携推進法人制度が設けられている。 社会福祉の分野では、法人間連携の枠組みとして、1(1)で述べた 社会福祉協議会を通じた連携や下の(3)で述べる合併・事業譲渡がある。これらの方策についても法人の希望で活用できる環境を整備することも重要であるが、社会福祉法人の非営利性・公益性等を踏まえ つつ、社会福祉法人を中核とする非営利連携法人制度により、既存の 方策の中間的な選択肢の創設を図るべきである。具体的な制度は「2」 で記述する。

(3) 希望する法人が合併・事業譲渡に円滑に取り組めるような環境整備
社会福祉法人の数は約2万法人であるのに対し、合併認可件数は、 年間 10〜20 件程度で推移している。 所轄庁が合併等の手続への知見に乏しいとの意見や、実際に法人が合併等に苦労したとの意見等を踏まえ、合併や事業譲渡、法人間連携の好事例の収集等を行い、希望する法人向けのガイドラインの策定を進めるべき。 なお、ガイドラインの策定にあたっては、組織再編に当たっての 会計処理について、社会福祉法人は法人財産に持分がないことなど に留意しつつ、会計専門家による検討会で整理を進めるべきである。

2 社会福祉法人を中核とする非営利連携法人
今後ますます高まる地域の福祉ニーズに対応するため、社会福祉法人や社会福祉事業者が、地域の福祉サービスの需要にあった供給量や質を維持・向上することが必要。良質かつ適切な福祉サービスの 提供や社会福祉法人の経営基盤を強化するための連携・協働化の選択 肢を増やすため、社会福祉法人を中核とした非営利連携法人(以下「連携法人」という。)の制度を創設することが適当である。 具体的な仕組みとしては以下の通りとすることが適当
である。

(1) 法人格
法人として参加できる法人格とすることが適当。このため、 連携法人は、一般社団法人のうち、「社会福祉に係る業務の連携を推 進するための方針」の策定等、一定の基準に適合すると認めるもの を、都道府県知事などの(9)の所轄庁が認定する仕組みとすることが 適当である。
(2) 業務
連携法人の業務→福祉サービスの取り巻く課題に社会福祉 法人等が連携して対応するため、社会福祉事業を行わず、連携の推進 を図ることを目的とする業務として↓↓
@ 地域包括ケアシステムの構築も含めた、地域共生社会の実現に向けた連携
A 災害対応に係る連携
B 福祉人材確保・育成
C 本部事務の集約や生産性向上のための共同購入など、社会福祉事業の経営に係る支援 D 社会福祉法人への貸付 を対象とすることが適当である。
連携法人がこれらの業務を実施するにあたっては、連携法人が作成する「社会福祉に係る業務の連携を推進するための方針(仮称)(以 下「方針」という。)に記載し、(9)の所轄庁の認定を受けることが適当である。なお、災害対応に係る連携など地方公共団体等の取組と重 なる業務を行う場合には、当該業務と関係地方公共団体等の取組と 調和が図られるよう努めることが適当である。 上記@〜Dの連携の推進を図ることを目的とする業務以外の業務 を実施することについては、地域医療連携推進法人と同様、実施可能 とするが、@〜Dの業務に支障を及ぼす恐れがない範囲にとどめる ことが適当である。

(3) 連携法人に参加できる社員
連携法人の社員は、社会福祉法人を始めとする社会福祉事業を行う事業者の他、社会福祉従事者の養成施設、連携業務に関する業務を行う者を認めることが適当。社員は社会福祉事業を実施している法人を2以上とし、社員の過半数が社会福祉法人であることを 必須とすることが適当である。 なお、地域医療連携推進法人では社員のうち、「参加法人」は、予 算や事業計画等について参加する地域医療連携推進法人にあらかじ め意見を求めなければならない仕組みが設けられているが、連携法 人については社員に対し、(7)を除き設けないものとすることが適当である。

(4) 連携法人の活動区域
医療法人と異なり、都道府県域、市町村域に社会福祉協議会が存在することから、連携法人の活動区域は、自治体に関わらず、連携法 人の自主的な判断で決めることが適当である。ただし、活動区域については方針に盛り込むことを必須とすることが適当である。

(5) 連携法人の経費
貸付業務を除き、社員からの会費、業務委託費で運営することが 適当。また、貸付業務については、(7)のとおり行うことが適当である。

(6) 議決権
原則として社員は各一個の議決権を有することとし、公益社団法人等と同様の趣旨である、不当に差別的な取扱いをしないなどの一 定の要件のもと、定款で別段の定めをすることができることとすることが適当。 連携法人が社会福祉法人を中核とした連携・協働化の選択肢であるという観点を踏まえ、議決権の過半数を社会福祉法人とすることが適当。

(7) 社会福祉法人への貸付業務を行う場合の取扱い
社会福祉法人への貸付業務については、社会福祉法人の収入・収益について法人外への支出が認められていない現状を踏まえて、次 の通りの仕組みとする。なお、貸付業務が個々の社 会福祉法人の経営に重大な影響を与えないよう、制度の詳細につい ては、施行までに慎重かつ十分に検討することが適当。
・ 貸付を受ける社会福祉法人毎に、当該法人への貸付の内容を(9) の所轄庁が認定する仕組みとすること
・ 社会福祉法人への貸付の原資として、貸付対象ではない社員で ある社会福祉法人から連携法人への貸付(※)を認めること 認める貸付の限度額は、連携法人の貸付が当該社会福祉法人の 拠点において運営に影響を与えないようにするため、拠点から法 人本部に繰入が可能な範囲で認めること (※)当該貸付資金については、社会福祉充実財産においては、控除対象財産に該当 するものと整理する。
・ 連携法人は社員である社会福祉法人から貸し付けられた資金について他の資金とは区分経理をし、社会福祉法人への貸付以外の用途への使用は一切認めないこと
・ 貸付を受ける社会福祉法人社員が予算や事業計画等の重要事項 を決定する際には、連携法人の承認を受けなければならないこと

(8) 地域の意見の反映
連携法人が活動区域の地域住民の意向を十分に反映し、地域の福祉サービスの維持・向上に資する存在となるよう、福祉サービスを受ける立場にある者や、社会福祉に関する団体、地域福祉の実情を知る専門家(社会福祉士等)等の地域関係者からなる評議会を設置すること。 評議会は、連携法人の運営状況を評価する役割や、社員総会及び 理事会に意見具申をする役割を持たせることが必要である。また評議会が把握した連携法人の運営状況の評価を地域住民に伝える仕組 みも合わせて整備することが適当である。

(9) 所轄庁
所轄庁は、主たる事務所の所在地、事業区域に応じた、社会福祉 法人の所轄庁と同様とすることを基本とすることが適当。また、所轄庁の職務→連携法人の認定、方針の認定、貸付業務 に関する認定等を行うほか、連携法人の指導監督を行うことが適当である。

(10) その他
(2)のとおり、連携法人は社員の人材確保を受託して行う業務を行うことから、連携法人の社員(社会福祉事業を経営する者)が行う労働者の募集の委託について、一定の要件のもと、労働者の委託募集の 特例を認めることが適当
である。 また、代表理事の選任等、連携法人のその他の仕組み→地域医療連携推進法人の仕組みを参考に、次のようにすることが適当である。
・ 連携法人の代表権を持つ代表理事の選任は所轄庁の認可を必要。理事会は必置。
・ 名称は「社会福祉連携推進法人」を基本に、社会福祉法人を中核とする非営利連携法人であることが明らかになるものとすること。
・ 連携法人の合併は、地域医療連携推進法人と同様に認めないこととする。
・ 連携法人の社員は、当該法人の社員であることを示すこと。
・ 連携法人の公益性に鑑み、次に掲げる項目等の法人のガバナンス→社会福祉法人と同様。
→「 理事会・理事・監事・会計監査人の機関の設置」「定款変更の所轄庁認可」「財務諸表等の閲覧・公表義務」「解散・清算の手続」「残余財産の帰属先」
・ 連携法人の会計基準は、貸付業務における区分経理の取扱いや 社会福祉法人の会計基準に留意した取扱いとすること。

3 連携・協働化に向けた今後の課題
本報告書→
社会福祉法人が人口構造の変化や複雑化・多様化する 福祉ニーズに対応するため、連携・協働化が可能となるよう、既存の仕組みの活性化を図るとともに新たな制度を創設することを盛り込んだ。
今後、福祉サービスの質の向上のためには、こうした仕組みが実際に 機能するよう、厚生労働省が関係団体と協力して取り組む必要がある。 こうした観点から、社会福祉法人の実質的なガバナンスを高めるため、 例えば、社会福祉法人版のガバナンスコードのようなものを策定する 等、関係団体が必要な取組を行うべきではないかとの意見があった。また、小規模法人が会費の負担が困難なために結果として連携法人に参加できないことがないように配慮すべきとの意見もあった。
一方、社会福祉法人本体の経営基盤を高める観点から、現行の社会福 祉法人の資金等の取扱いについて見直すべきではないかとの意見があった。特に、法人本部の運営に要する経費に充当できる範囲を拡大するべきとの意見や、法人内の1年以上の貸付を認めるべきとの意見があった。この点については厚生労働省において、必要性、実施可能性も含 めた検討を行うべきである。 今後とも、地域における良質かつ適切な福祉の提供主体として社会 福祉法人が事業展開していくことが期待される。

◯(参考資料1)社会福祉連携推進法人(仮称)の創設(案)→社会福祉法人間の連携方策に、社会福祉法人の自主性を確保しつつ、連携を強化できる新たな選択肢の一つとして、 社会福祉法人を中核とする非営利連携法人である「社会福祉連携推進法人(仮称)」を創設

◯(参考資料2)社会福祉連携推進法人(仮称)の業務のイメージ→地域生活課題や福祉サービスの提供のための課題に対し、社会福祉法人等の連携により対応する選択肢の1つとして制度化。 具体的な業務として、「地域共生社会の実現に資する業務の実施に向けた種別を超えた連携支援」、「災害対応に係る連携体制 の整備」、「福祉人材不足への対応」、「設備の共同購入等の社会福祉事業の経営に関する支援」などが想定される。

◯(参考資料3)社会福祉法人への資金の貸付業務イメージ→社会福祉事業を安定的に行うために実施する連携法人から社会福祉法人への貸付の原資として、貸付対象ではない社員である社会福祉法人 から連携法人への貸付を認める。 連携法人への貸付額は、当該社会福祉法人の拠点において経常活動収支差額が黒字かつ資金不足が生じない範囲等(法人本部への繰入れ 可能額)の範囲で認める。 (※)社会福祉法人から連携法人への貸付額は、社会福祉充実財産(法人全体における「活用可能な財産」から事業に活用している財産や運転資金などの 「控除対象財産」を除いたもの)においては「控除対象財産」に当たる。

◆社会福祉法人の事業展開等に関する検討会
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_04399.html

次回は、「令和元年度厚生労働省補正予算案の概要をお知らせします」からです。
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