第9回 地域共生社会に向けた包括的支援と多様な参加・協働の推進に関する検討会 [2019年12月22日(Sun)]
第9回 地域共生社会に向けた包括的支援と多様な参加・協働の推進に関する検討会(令和元年12月10 日)12/22
《議事》 ・最終とりまとめ案について https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000213332_00019.html ◎資料1-1 地域共生社会推進検討会 最終とりまとめ(案) W 市町村における包括的な支援体制の整備促進のための基盤 1 人材の育成や確保 (1)専門職に求められる資質 ・ 市町村の専門職や新たな事業の委託を受けた事業所の専門職など、包括的支援に携わる人→地域共生社会への意識を高めその意識を基に日々の実践を展開していくための倫理観を向上することが求められる。その上で、 その支援の質を担保することは、新たな事業を実施する上での要であり、研修カリキュラムや教材等の整備の推進、研修の実施等、人材の育成・確保に向けた取組を進めることが重要である。 ・ 断らない相談支援→本人や家族を包括的に受け止めるためのインテークの方法や、課題を解きほぐすアセスメントの視点、さらに市町村全 体でチームによる支援を行うための総合調整等に関する手法・知識が求められる。また、自ら相談に来られない人も想定したアウトリーチの手法や、DV 被害者や性暴力被害者、児童虐待の被害者など回復に時間が掛かる状態も想定し、継続的に関わり、つながり続ける支援を進めるスキル等も求められる。 ・ 参加支援→本人の抱える制度の狭間のニーズに対応するため、福祉分野のみならず地域の多様な分野とつながりながら、既存の人的・物的資源 を組み合わせたメニューを作ったり、資源がない場合には新たに作り出すた めのノウハウが求められる。 ・ 地域づくりに向けた支援→地域の人と人のつながりや既存の活 動を把握した上で、それらを活性化すること、包摂的な地域社会を目指して、 共生社会への意識啓発を進めること、子どもから大人まで全世代にわたる福 祉教育、学習の場、新たな地域活動を創出することに関するスキルが求められる。 (2)市町村の人材の育成・確保 ・ 新たな事業を円滑に進めるためには市町村の人材の育成・確保も求められる。 新たな事業を開始するに当たっては、庁内全体で包括的な支援体制について検討し、体制の構築を進めることが求められる。その中では、福祉部門の職 員だけではなく、職員全体に対して研修等を行う必要がある。また、例えば、 庁内にプロジェクトチームを設置し、自分の部署の役割を離れて、包括的な支 援体制の構築に向けてどのような取組が求められるか等を職員が主体的に考 えていくことも重要。 加えて、事業開始後も、例えば、新人職員や各役職の研修に包括的な支援体 制に関する内容を盛り込み、すべての職員が定期的に包括的な支援体制につ いて学ぶといった工夫も有効である。また、庁内において福祉領域全体はもち ろんのこと、教育やまちづくり等に関する制度や仕組み、財政等に関する知識 を有する人材を組織的に育成しつつ、チームで対応していくことが求められる。 ○ さらに、地域住民と市町村職員や専門職が共に研修を行う機会を作ること により、地域づくりの推進に向けて共に学び合うことができるようになり、地域で人と人のつながりや既存の助け合い活動の重要性などを理解し、地域住民が主体性を持って地域づくりを進められるようになる。 2 地域福祉計画等 ・ 改正法で、地域福祉計画→市町村に策定の努力義務が課されるとともに、福祉の各分野における共通事項を定め、上位計画として位置付けられた。また、市町村が包括的な支援体制の整備を進める場合には、地域福祉計画 に記載することとされている(都道府県が策定する地域福祉支援計画も同様)。今般、市町村が新たな事業を実施する場合にも、地域福祉計画の記載 事項とすべきである。 ・ 計画の策定過程を通じて、市町村が、住民や関係者・関係機関との意見交換等を重ね、包括的な支援の考え方や新たな事業に関する共通認識を醸成する ことが重要。また、定期的に事業の実施状況等の分析・評価等を進める。 地域福祉計画の策定に当たっては、介護保険事業計画など他の分野の計画との記載の整合を図る必要がある。 ・ また、都道府県においても、市町村の事業実施を支援することを始め、包括的な支援体制の構築における役割について、地域福祉支援計画の記載事項とすべきである。 ・ 地域福祉計画等の策定に当たっては、自殺対策基本法(平成 18 年法律第 85 号)において、すべての都道府県及び市町村が地域自殺対策計画を定めるものとされていることから、記載事項等について調整を図るとともに、成年後見制 度等の権利擁護、再犯防止・更生支援に関する計画とも調整を図ることが求められる。 なお、地域共生社会の推進→地域福祉計画だけでなく、自治体の最上位計画である総合計画に記載する自治体もある。地域共生社会を総合計画に位置付け、福祉部局だけでなく、自治体全体で取組を推進することは重要であることから、国はそれらを好事例として積極的に周知していくべきである。 3 会議体 ・ 包括的な支援体制の構築に向けては、多職種による連携や多機関の協働が重要な基盤となる。これが充実するためには、多職種、多機関が集い情報共有 や協議を行う場(会議体)の機能が重要である。 既存の属性別の制度等による会議体(※)があることに十分に留意して、これらを有効活用し、市町村の職員も参画した上で、包括的な支援の提供に向け 個別事例の検討等を行うことが望ましい。これにより、包括的な支援の提供が 推進されるとともに、個別事例の検討が積み重なることで地域の課題が明ら かになり、その解決に向け、例えば、参加支援の充実の検討を進めるなど、市町村の取組が充実することも期待される。 ・ なお、地域ケア会議(介護)、支援会議(生活困窮)、要保護児童対策地域協 議会(子ども)は、各法律で構成員に守秘義務が課されていることから、関係 者で個人情報を共有しながら個別事例の検討を行う場としての活用も可能である。 4 都道府県及び国の役割 (都道府県の役割) ・ 市町村における包括的な支援体制の構築を促進するため、広域自治体である都道府県は、管内自治体の実情に応じて、→「市町村における包括的な支援体制の構築の取組の支援」「 市町村域を越える広域での人材育成やネットワークづくり」「広域での支援や調整が求められる地域生活課題への対応」などの役割を担うことが考えられる。 市町村における包括的な支援体制の構築の取組の支援としては、管内自治 体の実態を把握した上での広域実施や他の事業との一体的実施などに向けた 支援、管内自治体における先駆的取組やノウハウ等の情報収集及びそれらの 情報の発信が考えられる。 ・ 市町村域を越える広域での人材育成やネットワークづくり→包括 的な支援体制の構築に係る人材の育成に向けた研修の開催や、支援員のバーンアウトを防止するために、支援員同士のネットワークづくりや、管内自治体 相互のネットワークをつくり、広域での地域づくりや参加支援等のバックア ップを行うことが求められる。 ・ 広域での支援や調整が求められる地域生活課題への対応→DV 被害者や性暴力被害者、刑務所や少年院からの出所者など、住民の身近な圏域で対 応しがたい場合や、より専門的な支援が求められる場合等において、都道府県 が積極的に対応することが考えられる。具体的には、都道府県が自ら相談を受 け、支援を行うことに加え、広域的な支援という観点の下、市町村や断らない 相談支援に従事する支援員を後方支援する事業(スーパーバイズを行う事業) の実施や、複数の都道府県域にまたがるケースの場合には、都道府県同士が連携し、対応するということも重要である。 特に、小規模な自治体や自立相談支援機関を有しない町村に対しては、都道 府県によるきめ細かな支援が必要。 また、本人や世帯の状況に合わせた多様な支援の実施が求められる参加支援→生活困窮者自立支援制度の実践で見られるように、当該市町村と 意見交換しながら、事業の共同実施の調整、都道府県に対する事業実施の委託の調整等、サポートを積極的に行う必要がある。 (国の役割)→ 引き続き、SNS 等も活用しつつ、都道府県域を越える相談事業を進めるほか、市町村等に対して、→「標準的な研修カリキュラムや教材等の整備」「それぞれの地元の大学の力を活用するなど、都道府県と連携したブロック別研修等の実施を通じた人材育成の推進」「職員を個別に市町村へ派遣し、包括的な支援体制の構築に向けた気運を醸 成」「体制構築に関する事例の分析や共有」 といった支援を進めることが考えられる。 (留意すべき点)→国及び都道府県が、こうした役割を果たすに当たり、各市町村の直面する状況が非常に多様であり包括的な支援体制の姿やその構築に向けての歩 みも一様ではないことを十分に理解しできるだけ多くの住民が新たな事業による支援を受けられるように、各市町村に足を運び、状況の把握に努め、その時々で市町村が必要としている支援を柔軟に提供していくことが重要。特に小規模市町村の状況等には十分に留意しつつ、その支援を円滑に提供するために様々な支援手法の具体化を図っていくことも求められる。 X 終わりに ・日本社会の変化や個人の人生の多様化や複雑さが増していることを踏まえると、今後、福祉の対人支援に求められるのは、一人ひとりの個別のニーズや 様々な生活上の困難を受け止め、自律的な生を継続していくことを支援する という視点である。 このような福祉政策の新たなアプローチを強化し、個人の尊厳の保持と存在そのものの承認を核としながら、包摂的な地域社会の実現を図るための一方策として、本検討会では、属性を超えた支援が可能となるよう、@断らない相談支援 A参加支援 B地域づくりに向けた支援 を内容とする事業を創設するとともに、財政支援の方法を改めるように提言を行った。 市町村が包括的な支援体制の構築を検討する際には、地域住民や関係機関 と協働していくプロセスを重視し、また、事業を実施する中でも試行錯誤を繰 り返しながら、地域のニーズに合わせて取組内容や組織体制等を変化させて いくという柔軟性は、属性毎の専門的な支援を充実させてきた福祉分野の成 り立ちからすれば、新たなパラダイムである。さらに、地域共生社会の理念の中で謳われている、一人ひとりの生きがいや 役割は、このような協働のプロセスを多くの関係者や地域住民と共有する中 から生まれてくるものと考えられる。 ・ 今後、新たな事業の実施に向けて、より詳細な要件や基準、財政支援に係る 交付の在り方等に関する検討が行われるが、国においては各分野の支援関係 者や自治体の声を十分に聞いた上で、これまでの各分野での取組等も十分に 尊重しながら、丁寧で納得感のあるプロセスとすることが重要。 ・ また、本検討会は社会福祉法に創設する新たな事業の枠組みに重きを置い た議論となったが、本来、地域共生社会の理念が捉えている射程は福祉の政策 領域にとどまるものではない。福祉以外の領域においても、地方創生施策、地域循環共生圏など、包摂的な地域社会を目指した取組が進められている。社会福祉法の新たな事業の創設が契機となり、他の分野との協働や省庁横断的な 取組が更に推進されるように、広がりのある議論やその具体化が進むことが求められる。 〇 2040 年の構造変化も見据え、日本において人と人とのつながり、人と地域とのつながりを生み出し、包摂的な地域社会を作っていくことは個人の幸福 や地域社会の存続という観点から極めて重要であり、新たな事業の推進がその第一歩につながっていくことを期待したい。 これで、「資料1-1 地域共生社会推進検討会 最終とりまとめ(案)」が終わり、次回は、「資料1-2 参考資料」からです。 |