令和元年度 ひきこもり支援者スキルアップ研修会(2回目)報告から [2019年11月02日(Sat)]
◆司会進行する支援センターの伊藤さん 令和元年度 ひきこもり支援者スキルアップ研修会報告から(令和元年10月29日) 日時: 令和元年10月29日 午後1〜3時まで 場所:カレッジプラザ2階 大講義室 ◎上記の「支援者スキルアップ研修会」は、秋田県ひきこもり相談支援センター(秋田県精神保健福祉センター内)の主催で、年4回に分けて実施されており、昨年に引き続き今年度も実施されているもの。相談者のスキルアップには大変勉強になり、今回は医学的アプローチとして、新しい根拠の知識として参考になっている。 ◎開会後、「ひきこもりと発達障害・睡眠障害」のテーマで講演(PM1:05〜PM2:00) 講演者 秋田県精神保健福祉センター所長 清水徹男 氏 (演者は、秋田大学医学部教授、同大学院教授を経て定年後、秋田県職員として現職に就任。専門分野は精神科・睡眠医学。医学博士で秋田大学名誉教授。日本睡眠学会の元理事長、現在同学会監事。その他多数の役割をしている)。 ◎↓以下、スライド説明から、新知識として報告。 ・ひきこもりの三分類→第一群(病気:統合失調症・気分障害・不安障害など薬物療法が期待されるもので、精神療法的・福祉的・心理社会的支援も同時に実施される)。第二群(発達障害:ASD・ADHD・LDなど)。第三群(個性:ソーナリティ障害・同一性の問題などを主診断とするひきこもり)。→今日のテーマは第二群「発達障害について」となる。 ・ひきこもりセンター相談者(523ケース)→昼夜逆転など約2割が眠りの問題で困っている ◯眠り問題の説明に入る前に、第二群「発達障害(アスペルガー)について」説明あり ・対人関係の障害→相手の気持ち、意図を想像したりその場の「空気」や社会的暗黙のルールを理解するのが苦手(アスペルガー)→正直に事実を言ってしまうので、嫌われる。 ・コミュニケーションの障害→知的には問題ないが言葉の使い方が子どもなのに大人びていたり、独特で意思疎通が難しい場合あり。耳からの情報処理が不得意で会話についていくことが難しい。いわゆるマッチングの会話になっていない。 ・パターン化した興味や活動(想像力の障害)→決められた手順などにこだわりが強いために、新しい人や場面・予想外の事態への臨機応変な対応が苦手傾向。不安になったりパニックになったりと。人付き合いを避け、自分の好きなものに没頭も。 ・その他の特徴→感覚の過敏さ・鈍さ。体のバランスに欠け不器用、姿勢が悪かったりと。しかし興味のあるものには高い記憶力や集中力があり特定分野では他人にはできないような業績を上げることもあり(トーマス・エジソンなど)。 ◯注意欠陥・多動性障害(ADHD:Attention Deficit Hyperactivity Disorder)→不注意(集中力がない)、多動性(じっとしていられない)、衝動性(思いつくと行動してしまう)という症状。 不注意優勢型と、多動性−衝動性優位型あり。 ・大人のADHD→貧乏ゆすりなど目的のない動き。落ち着かない感じ。思ったことをすぐ口にしてしまう。衝動買い。ケアレスミスをする。時間管理が苦手。順序だてて行うことが苦手。 ◯昼夜の逆転から時間を知らせる「腹時計」は、どこに?→脳内視神経交差の視交叉上核に→一日の生体時計は約25時間(この根拠は「社会生活」と、光を遮断している「洞窟暮らし」を対比させて光を感じなければ体内時計はずれてしまうことの説明。我々は体内時計を暮らしに合わせて毎日1時間進めている→朝の光は時計の針を進める) ◆1日は24時間以上!?↓↓ https://www.aist.go.jp/science_town/medical/medical_11/medical_11_02.html ◆睡眠リズムラボ https://www.otsuka.co.jp/suimin/ ・どうやって我々は1時間進めているか→毎日の朝の光で進めている→夜の光は時計を遅らせる(洞窟暮らしから)→視覚とは異なる時計などに関係した回路がある(網膜→視床下部の視交叉上核(SCN)が親時計→専用のメラノプシン(タンパク)が光をキャッチ→感度が高く腹時計を決める)→これに関する事例を引いてわかりやすく説明。 ・昼間の光と夜の光でメラトニンを説明→あさのひかりは生物時計をリセット、昼の光は覚醒を高め夜のメラトニン分泌を高める。これが抑制されると昼夜逆転。→睡眠覚醒リズム障害にはメラトニン使用あり。→実体験の様々な例で説明あり。 ◆メラトニン(めらとにん) https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-062.html ・時計遺伝子を壊すとメタボになる→「ねずみ」の実験から紹介。高脂肪食もメタボの元、概日リズムにも影響を与える。 ◯ひきこもりと睡眠・覚醒障害→昼夜逆転なので朝どうしても起きれない。特に、ADHDやASDの眠気では睡眠不足とは無関係に出てくることが少なくない。 ・この眠気との対策では特効薬はないものの、ヒントとしてだれでもできる「快眠法」を紹介。→まず「おひさまにあたること」「体を動かしそれからひと汗かいてお風呂に入る」→眠くなるまで布団に入らない、決まった時刻に起きる→規則正しい生活のリズムを身に着ける。→習慣となるまで繰り返し意識的に続けること。→このことは薬物療法にも指摘するほど。 ◎まとめ→人間の体内時計は25時間。もし昼夜逆転した生活ならば主時計(視交叉上核)に登録され継続的に睡眠リズムが狂い、本人にとって当たり前とした生活になってしまう。これを救うのは「朝の光による日常習慣へのリセット」となる。このほかにも睡眠リズムが乱れると、メタボ、身体の異常、幸福感が味わえなくなる。 すなわち細胞一つ一つに「腹時計」があり、人を構成している細胞数の正常さと、その何十兆個の細胞の協力が自己肯定感を生み出すということ。支援者は自分の生活にこの考えを取り入れ、常にその人の生きがいに配慮しながら楽しく家族や関係者とともに話し合いをする必要があると感じられた。 参加させていただきありがとうございます。第3回もよろしくです。 ◎情報交換・意見交換(14:10〜15:00) ・参加者→行政担当者、社協、NPOなど40名位。6班に分かれて自己紹介と実践分野の紹介。時間が短く討議まではいかない。しかし、秋田県内の様々な活動が聞けて良かったと思っている。私は第一回の研修会には参加できなかったが、資料だけはいただいているので、いつか紹介したいものと考えています。 参加締め切りを極端にオーバーしたにもかかわらず、意をくんでいただき感謝です。 次回は、「令和元年度 あ旗県福祉大会への出席報告」からです。 ◆司会者(伊藤さん)と 主催者側挨拶 ◆秋田県精神保健福祉センター所長 清水徹男 氏 |