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消費者委員会 第24回公益通報者保護専門調査会 [2019年01月15日(Tue)]
消費者委員会 第24回公益通報者保護専門調査会(平成30年12月27日)
≪議事≫取りまとめに向けた検討について
https://www.cao.go.jp/consumer/iinkaikouhyou/2018/houkoku/1227_koueki_houkoku.html
◎資料1 公益通報者保護専門調査会 報告書
○はじめに

公益通報者保護法(平成16年法律第122号)は、食品偽装やリコール隠しなど、 消費者の安全・安心を損なう事業者の不祥事が、組織の内部からの通報を契機として 相次いで明らかになったことを受け、事業者の法令遵守を推進し、国民の安全・安心 を確保するために、平成16年に制定され、平成18年4月に施行された法律である。 かかる公益通報者保護法について、平成30年1月、内閣総理大臣から消費者委員会に対し、「同法の施行状況を踏まえ、事業者におけるコンプライアンス経営、国民の安全・安心の確保に向けた取組の重要性の高まりを始めとした社会経済状況の変化 への対応等の観点から、公益通報者の保護及び国民の生命、身体、財産その他の利益の保護に関わる法令の規定の遵守を図るため、規律の在り方や行政の果たすべき役割 等に係る方策を検討すること」について諮問がなされたことを受け、消費者委員会は、 公益通報者保護専門調査会(以下「本専門調査会」という。)の再開を決定した。 公益通報者保護法に関する検討事項は多岐にわたるが、本専門調査会では、まず、 @公益通報者保護法を使いやすいものにする、A通報を受ける側における体制整備、 B公益通報者の保護救済の充実及び不利益取扱いの抑止という3つのテーマに沿っ て論点を整理し、審議を行った。そして、一通りの検討を終えた段階で、それまでの 審議を踏まえ、各論点について、おおむね方向性が示された事項と、今後の検討課題 として残されている事項に振り分ける形で中間的な整理を行い、同年7月に、「中間整理」として公表した。 また、同年9月には、これまでの審議の内容や中間整理を踏まえ、各関係団体等か ら意見を聞くためのヒアリングを実施し、関係団体等から意見を聴取した。そして、 同年10月からは、かかるヒアリングの結果等も踏まえ、各論点について更なる審議を行ったものである。 このように、再開後、同年12月までに合計16回の専門調査会を開催し、審議を重ねたものであり、本報告書は、こうした審議内容をもとに、措置すべき内容等につ いて現時点での方向性を取りまとめたものである。

T 公益通報の現状等
1 通報相談の内容→保護の対象となる労働者(公務員、派遣労働者を含む)以外の者からの通報相談の割合は、退職者からの通報相談が労働者に次いで多く、役員等や取引先等事業者からの通報相談も存在。ハラスメントが最も多く、公務員法、補助金適正化法、税法等に関する通報相談 も存在している【図1】。
2 通報体制の整備状況
(1)民間事業者→事業 者における不正の発見の端緒の第1位は、内部通報(58.8%)。主に中規模・小規模の事業者において内部通報制度の導入が進んでおらず、また、内部通報制度を導入している事業者においても、重要な事項を社内規程で定めていない場合がある
(2)行政機関↓↓
ア 内部通報体制→府省庁及び都道府県では100%、市区町村では52.4%【図4】。より詳細には、指定都市 や中核市、特別区といった比較的規模の大きな市区では整備が進んでいるものの、 町村のように規模が小さくなるにつれて設置率が低下する傾向。
イ 外部通報対応体制→行政機関に対する外部の労働者からの公益通報の受理件数・是正措置件数は、毎年一定の水準で推移しており、事業者内の不正を知り得る立場にある労働者等からの通報は、行政機関の法執行力の向上を通じて、事業者の法令遵守の確保に資するものである【図6】。

3 不利益取扱いへの懸念→最初の通報先として勤務先以外(行政機関や 報道機関等)を選択する割合は、約半数。
4 公益通報に関する情報の漏えい→行政機関からの情報漏えいが問題となった案件も44.9%あり、公益通報に関する 秘密や個人情報の漏えいが公務員法上の守秘義務の対象となることの理解が徹底さ れていないことがうかがわれる【図10】。

U 個別論点
1 不利益取扱いから保護する通報者の範囲
(1)退職者(退職者を不利益取扱いから保護することの是非 退職者を不利益取扱いから保護する通報者の範囲に含めるべき)。保護の対象とする退職者の範囲()
(2)役員等
ア 役員等を不利益取扱いから保護することの是非→役員等を不利益取扱いから保護する通報者の範囲に含めるべきである。
イ 保護の対象とする役員等の範囲→法制的・法技術的な観点から整理を行 い、合理的な範囲の役員等を不利益取扱いから保護する通報者の範囲に含めるべき
ウ 保護の内容→役員等の解任については、例えば会社法上の役員のように、根拠法において解任に理由が不要とされている例もあり、一律に公益通報を理由とする解任を不利益取 扱いとして位置付けることは、今後、必要に応じて検討を行うべきである。 また、他の法令で正当な理由のない解任に対して損害賠償請求が予定されている場合には、公益通報を理由とする解任に対し、損害賠償を請求することができることとすべきである。
(3)取引先等事業者
(4)役員等であった者、取引先等事業者であった者
(5)その他の通報者

2 通報対象事実の範囲
(1)刑事罰の担保による限定
(2)法目的による限定→今後の課題
(3)規定の方式→今後の課題
(4)条例→事業者には、法律と同様に条例の遵守が求められ、公益通報者保護法において、 条例に違反する行為についての通報に保護を与え、通報を促す必要性がある。

3 外部通報の保護要件
(1)2号通報の保護要件 ア 要件を緩和することの是非
(2)3号通報の保護要件 ア 真実相当性、イ 特定事由
(3)不利益取扱いから保護する通報者の範囲の拡大と外部通報の保護要件 ア 退職者 イ 役員等

4 通報を裏付ける資料の収集行為に関する責任

5 切迫性の要件→通報対象事実が「まさに」生じようとしているとの要件(以下「切迫性の要件」)について、早期の通報を促し、不祥事の芽を早期に摘む必要がある等の理由 から、切迫性の要件を削除し、「生ずるおそれ」とするか、「高度の蓋然性」など、よ り緩やかな文言とすべきとの意見があった。

6 通報体制の整備
(1)内部通報体制
ア 内部通報体制の整備義務を課すことの是非→民間事業者及び行政機関に対し、内部通報体制の整備を義務付けるべきである。
イ 対象とする民間事業者及び行政機関の範囲 (ア)民間事業者→民間事業者に内部通報体制の整備を義務付けるべき。但し、常時雇用する労働者の数が300人以下の民間事業者については、事務負担等を勘案し、努力義務とすべきである。(イ)行政機関 行政機関については、民間事業者に対して率先垂範する観点から、規模にかかわらず、内部通報体制の整備を義務付けるべき。
ウ 履行すべき義務の内容→@-C参照。
エ 義務の履行を確保するための措置→助言、 指導、勧告及び公表とすべき
(2)外部通報対応体制
ア 外部通報対応体制の整備義務を課すことの是非→権限を有する行政機関に対して、外部通報対応体制の整備を義務付けるべきであ る。
イ 対象とする行政機関の範囲→権限を有する行政機関については、規模にかかわらず、外部通報対応体制の整備を義務付けるべきである
ウ 履行すべき義務の内容→窓口設置、周知等

7 守秘義務
(1)1号通報先
ア 守秘義務を課すことの是非→労働者等は、公益通報に際して、情報が漏えいし、解雇その他不利益な取扱いや 嫌がらせ等を受けるおそれがあることを強く懸念しており、実際に、内部通報を受け付けた者による情報漏えいにより通報者が特定され、被害を受けた事案も生じている。そのため、通報者がより安心して通報できる体制を確保し、内部通報を促進するという観点から、通報窓口の担当者その他通報対応に関する業務に携わる者に守秘義務を課すことが考えられ、本専門調査会では、これに賛成する意見が多かっ た
イ 守秘義務に関連する論点→(ア)守秘義務が解除される例外 (イ)守秘義務に違反した場合の行政措置及び刑事罰 
(2)2号通報先 行政機関の職員については、1号通報先としての行政機関の場合(脚注21参照) と同様に、まずは公益通報に関する秘密や個人情報の漏えいが、公務員法上の守秘 義務等、既に講じられている法律上の措置に抵触し得ることを周知することが先決 である。 したがって、行政機関の職員に対して公益通報者保護法でも守秘義務を課すこと については、更なる立法事実の蓄積を待って、今後、必要に応じて検討を行うべき である。 (3)3号通報先 3号通報は、報道機関や消費者団体等、通報先が様々であり、現時点では、これ らの者に一律に守秘義務を負わせる必要はない。

8 行政通報の一元的窓口の設置→権限を有する行政機関の通報窓口(以下「個別窓口」)において引き続き 通報を受け付けて対応する体制を維持しつつ、個別窓口を補完するものとして、行政通報の一元的窓口を消費者庁に設置すべき

9 2号通報として保護の対象となる通報先の拡張
(1)一元的窓口への通報、誤って権限のない行政機関になされた通報
(2)権限を有する行政機関が指定した者への拡張→「機関等の共同設置」など

10 不利益取扱いをした事業者に対する行政措置、刑事罰
(1)行政措置→不利益取扱いに対する抑止の観点から、通報を理由として通報者に不利益取扱い をした事業者に対する行政措置を導入すべきである。 行政措置の種類としては、助言、指導を行うほか、勧告を行い、勧告に従わない 場合には公表を行うことができることとすべきである 25。
(2)刑事罰→今後の課題。

11 不利益取扱いに関する紛争解決手続

12 不利益取扱いが通報を理由とすることの立証責任の緩和
(1)解雇
(2)その他の不利益取扱い→解雇以外の不利益取扱いについても、情報や証拠資料が事業者側に偏在している ことなどから、その立証が通報者にとって大きな負担となっており、不利益取扱い が通報を理由とすることの立証責任を事業者側に転換すべきとの意見があった。解雇以外の不利益取扱いについても、立証責任を事業者側に転換す ることについては、今後、必要に応じて検討を行うべきである。
13 通報行為に伴う損害賠償責任→通報者が、不利益取扱いから保護される要件を満たしている場合、通報したことを 理由として損害賠償責任を負わないとする規定を設けるべき。

14 通報行為に伴う刑事責任

15 その他の論点
(1)行政による調査措置義務の対象となる通報者の範囲
(2)通報者の探索及び通報妨害→違法
(3)通報者へのフィードバック→今後の検討

○おわりに
本報告書の提言内容は、本専門調査会における約1年にわたる真摯な議論を取りまとめたものであり、政府においては、本報告書で提言された事項について、その実現に向けてできる限りの努力を行うよう期待したい。 なお、提言の中には、法制的・法技術的な観点から整理を行うべき事項、民間事業 者及び行政機関の負担の増加を伴う事項も含まれており、今後、政府において、必要 に応じて関係者から意見を聴く機会を設け、法改正も視野に更なる検討を行うことを求める。また、提言では、行政機関における適切な執行体制の構築を求めているが、 政府においては、提言の内容をできる限り尊重した対応を求める。 消費者庁においては、これらの事項を含め、提言された内容の実現に向けて更に具体的に検討を行い、その結果について消費者委員会に報告があり、当該報告を受けた 消費者委員会から本専門調査会に要請がなされた場合には、本専門調査会において、 必要に応じて更に検討を深めることとする。 法改正が実現した場合には、改正内容を、現行法の内容と共に、消費者、民間事業 者及び行政機関に対して幅広く周知することが重要である。その際、本専門調査会における審議の状況等も踏まえ、法令の解釈や具体的な事例等について逐条解説等で明 確化を図ることも求められる。 方向性が示されなかった論点についても、政府において、今後の検討課題とし、その時々の状況をみながら、必要に応じて更なる調査・分析を行った上で、検討を深めていくことが期待される。 なお、本専門調査会における審議の中で、事業者における公益通報制度の運用上、公益通報と、公益通報以外の通報相談(個人的な悩みの相談など)のそれぞれについ て、通報者・相談者の理解を得ながら適切に対応することの難しさを指摘する意見もあった。事業者において公益通報制度を実効的に運用し、また、社会に向けて公益通報制度の重要性を示していくために、政府において、情報提供その他の方法により、 こうした実務運用上の課題にも対処することを期待したい。

次回は、「資料2 公益通報者保護専門調査会 報告書(概要)」からです。

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