第2回2040年を展望した社会保障・働き方改革本部 資料(令和元年5月29日)
≪議事≫ 2040年を展望した社会保障・働き方改革本部のとりまとめについて
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000101520_00002.html◎資料4 健康寿命延伸プラン
T.基本的方向性と目標
○人生 100 年時代を迎えようとする今、求められる社会保障の姿は、国民誰もが、より長 く、元気に活躍できて、全ての世代が安心できる「全世代型社会保障」である。
○特に、2040 年頃には、いわゆる団塊ジュニア世代が高齢者となり、高齢者人口がピーク を迎える一方、現役世代が急激に減少する。このような中で社会の活力を維持、向上しつつ、「全世代型社会保障」を実現していくためには、高齢者をはじめとする意欲のある方々 が社会で役割を持って活躍できるよう、多様な就労・社会参加ができる環境整備を進める ことが必要であり、その前提として、特に、予防・健康づくりを強化して、健康寿命の延 伸を図ることが求められる。
○これまで、我が国は、国民皆保険制度や介護保険制度を整備し、国民の生活の安定を図り、安心を確保しつつ、国民健康づくり運動である健康日本 21(第二次)等に基づき、生 活習慣病予防などライフステージに応じた健康づくりを、地域や職場を巻き込んで総合的 に推進してきた。
○このような取組を進める中で、健康寿命は着実に延伸しており、2016 年では、男性: 72.14 年、女性:74.79 年となっている。今後、更なる健康寿命の延伸を図るためには、これまでの取組みをさらに推進するとともに、「健康無関心層も含めた予防・健康づくりの推進」、「地域・保険者間の格差の解消」に向け、「自然に健康になれる環境づくり(健康な食事や運動ができる環境、居場所づく りや社会参加))」や「行動変容を促す仕掛け(行動経済学の仕組み、インセンティブ)」 など新たな手法も活用し、
次の3分野を中心に取組を推進する。 @ 次世代を含めたすべての人の健やかな生活習慣形成 A 疾病予防・重症化予防 B 介護予防・フレイル対策、認知症予防。 これにより、2040 年までに健康寿命を男女ともに3年以上延伸し(2016 年比)、75 歳 以上とすることを目指す(2040 年の具体的な目標(男性:75.14 年以上 女性:77.79 年以上)。 なお、これらの取組を推進し、健康寿命延伸の目標を達成するためには、新たな手法 を積極的に活用しつつ、地方自治体や保険者など関係者・関係団体とこれまで以上に連携して、地域ぐるみや職場ぐるみで予防・健康づくりを進めることが必要。
U.健康寿命延伸のための取組→健康寿命延伸の実現に向けて、2025 年までに取り組むべき事項及びその工程は別紙の とおりであり、それぞれ進捗管理指標(実施指標、成果指標)を設定し取り組む。主要事項は次のとおり。
【主要事項】
1. 次世代を含めたすべての人の健やかな生活習慣形成
(1)栄養サミット 2020 を契機とした食環境づくり
【産学官連携プロジェクト本部の設置、 食塩摂取量の減少(8g 以下)】→東京での栄養サミット 2020(各国首脳級・閣僚級等)を契機に、関係省庁や民間の様々な主体と連携し、自然に健康になれる食環境づくりを推進する。 具体的には、主に以下の5つの視点を踏まえて総合的な施策について検討を進め、 2019 年度中に実施できるものから順次取り組む。 @エビデンスの構築・強化・活用→新たな食事摂取基準を踏まえた食塩減少・フレイル予防の取組の展開、ヘルシーメニ ューの提供など食環境づくりが健康増進に及ぼす効果の分析、加工食品などの栄養素等 摂取量の動向把握、食環境づくりに関する地方自治体や民間の好事例の横展開等を実施する。
A健康な食事への接点拡大→民間主導の健康な食事・食環境の認証制度の普及支援や、民間による健康な食事に資 する減塩商品等の製造・流通拡大、店舗での PR の強化などの取組を後押しする。
B健康無(低)関心層への啓発→啓発を行うため、例えば SNS やゲームアプリの活用等、民間 の知見も活かして適切な栄養・食生活情報の提供方法を開発するとともに、地方自治体等とも連携し、おいしく健康な食事の普及に向けボランティア等と協働した取組を実施。 C推進体制の整備等→「社会保障制度の新たな展開を図る政策対話」における各業界関係者や有識者との意見交換の結果を踏まえ、自然に健康になれる食環境づくりを進めるため、産学官連携プロジェクト本部を設置し、産学官で目標を共有した上でそれぞれ取組を展開。 D人材育成の推進→地方自治体の管理栄養士等について、民間企業も含めた地域関係者間の調整など、コ ーディネート能力の強化等、人材育成を推進する。
(2)ナッジ等を活用した自然に健康になれる環境づくり【2022 年度までに健康づくりに 取り組む企業・団体を 7,000 に】→「健康寿命をのばそう!アワード」にて、生活習慣病予防の啓発、健康増進のための 優れた取組を行っている団体を表彰し、先進・優良事例の横展開を進めているが、これに加え、毎年作成している、「スマート・ライフ・プロジェクト(SLP)」の 事例集の更なる充実化を図るため、有識者へのヒアリングや成功要因(Key Success Factor)の分析を行い、横展開の促進に向けた必要な措置を検討する。これらを通じて、健康づくりに取り組む企業・団体(SLP 参画団体数:4,682 団体)を 7,000 に増やす。 また、「スポーツを通じた健康増進のための厚生労働省とスポーツ庁の連携会議」を設置し、スポーツ庁との連携強化に取り組んでおり、今後、地域の関係者が一体となって 取り組む体制を整備するため、例えば、経済産業省で取り組んでいる「地域版次世代ヘ ルスケア産業協議会」との連携など、関係る団体や会議等との連携体制などを整備していくため関係省庁等とともに検討する。
(3)子育て世代包括支援センター設置促進【2020 年度末までに全国展開】→妊娠期から子育て期にわたる切れ目のない支援として、妊娠・出産・育児に関する相談に応じ、必要な情報提供・助言・保健指導等を行う子育て世代包括支援センターについて、 2020 年度末までの全国展開を目指して、設置を促進する。
(4)妊娠前・妊産婦の健康づくり【長期的に増加・横ばい傾向の全出生数中の低出生体重 児の割合の減少】→生涯を通じた健康づくりの推進に向けて、「妊産婦のための食生活指針」の改定や平成 31 年3月に改定した「授乳・離乳の支援ガイド」の普及啓発等を通じて、妊娠前・妊産婦 の健康づくりの支援を行う。 また、健やか親子 21(第2次)の中間評価の結果を今後の母子保健分野の取組に反映さ せるとともに、成育過程にある者及びその保護者並びに妊産婦に対し必要な成育医療等を 切れ目なく提供するための施策の総合的な推進に関する法律(平成 30 年法律第
104 号) に基づき、施策を実施する。
(5)PHR の活用促進【検討会を設置し、2020 年度に本人に提供する情報の範囲や形式に ついて方向性を整理】→特定健診、薬剤、乳幼児健診等のデータについて、2020 年度(薬剤は 2021 年度)から マイナポータルを活用して提供開始を目指す。さらに、PHR(※PHR(パーソナル・ヘルス・レコード):個人の健康診断結果や服薬履歴等の 健康等情報を、電子記録として、本人や家族が正確に把握するための仕組み)の更なる推進に向け、 検討会を設置し、本人に提供する情報の範囲や形式について 2020 年度早期に基本的な方 向性を整理しつつ、必要な健康等情報を電子記録として本人に提供する仕組みの構築を進める。
(6)女性の健康づくり支援の包括的実施【本年度中に健康支援教育プログラムを策定】 厚生労働科学研究において、エビデンスに基づいた女性に関する健康情報、生涯を通 じた女性の健康の包括的支援に関する知見の収集、これらの知見を普及するための研究 等を行っている。これらの研究成果を踏まえて、女性の健康に関する情報を提供するためのウェブサイトの充実や、女性のライフステージを考慮した健康教育指導テキスト及び教育プログラムの作成、作成したテキスト・プログラムを活用した女性の健康を支援 する立場にある専門職等に対する効果的な研修等の実施により、女性の健康の包括的支 援に向けた取組を推進する。
2. 疾病予防・重症化予防
(1)ナッジを活用した健診・検診受診勧奨【がんの年齢調整死亡率低下、2023 年度まで に特定健診実施率 70%以上等を目指す】→がん検診の受診率向上を通じたがんの年齢調整死亡率低下や特定健診実施率の向上を目指し、今年度取りまとめを行ったナッジ理論等を活用した取組事例のハンドブックを 活用する。具体的には、特定健診・保健指導について、先進・優良事例の横展開等により、実施率の向上につながる効果的な方策等を検討し、がん検診について、国立がん研 究センターが開発した乳がん検診受診勧奨はがきなどの効果的な受診勧奨を支援するとともに、がん検診受診率向上に効果をあげた自治体の優良事例の横展開を行う。また、 がん検診受診率を向上させるための取組も含め、今後のがん検診のあり方について検討し、科学的根拠に基づいた
がん検診を推進する。
(2)リキッドバイオプシー等のがん検査の研究・開発【がんの年齢調整死亡率低下を目指す】→がんの年齢調整死亡率低下を目指し、早期診断方法が確立されておらず、有効な治療 法も少ない膵がんなどの難治性がんを含め、がんを早期発見し、早期治療に結びつける ため、より精度の高い検査方法に関する研究や、血液や唾液等(リキッドバイオプシ ー)による検査などについて、ゲノム情報等も活用しながら、より簡便で低侵襲な検査方法の開発を推進する。また、国内外の知見を収集し科学的根拠に基づいた早期診断方法及びがん検診の方法等について検討を進め、必要に応じて導入を目指す。
(3)慢性腎臓病診療連携体制の全国展開【2028 年度までに年間新規透析患者 3.5 万人以下】→予防・健康づくりを推進するため、関係団体と連携して取組を進めている糖尿病性腎症重症化予防プログラムを更に進めるとともに、かかりつけ医・腎臓専門医療機関等が 連携し、慢性腎臓病(CKD)患者を早期に適切な診療につなげる慢性腎臓病(CKD)診療連携体制の構築や先進事例の横展開等を通じて疾病予防・重症化予防を実施する。
(4)保険者インセンティブの強化【本年夏を目途に保険者努力支援制度の見直し案のと りまとめ】→国民健康保険の保険者努力支援制度等について、疾病予防・重症化予防の推進に係る先進・優良事例について把握を行うとともに、2017・2018 年度の実施状況等を見つつ、 日本健康会議の重症化予防 WG での議論も踏まえ、評価指標の見直しを検討する。
(5)医学的管理と運動プログラム等の一体的提供【本年度中に運動施設での標準的プロ グラム策定】→生活習慣病の発症や重症化のリスクのある者に対しては、医療機関と保険者・民間事業者等の連携により、年齢や性別等も勘案した適切な運動プログラム等を組み合わせて 提供することが重要であり、運動施設での標準的プログラムの策定を行うとともに、インセンティブ措置を活用した医学的管理と運動プログラム等の一体的実施のための具体 的方策について検討する。
(6)生活保護受給者への健康管理支援事業【2021 年1月までに全自治体において実施】 →生活保護受給者の多くは、医療保険者が実施する保健事業の対象とはなっていない一 方で、多種多様な健康上の課題を抱えている場合もあることから、医療と生活の両面か ら健康管理に対する支援を行うことが必要。このため、医療保険におけるデータヘルスを参考に、福祉事務所がデータに基づき生活習慣病の発症予防や重症化予防等を推進するための「被保護者健康管理支援事業」の施行に向け、試行事業等の準備を進めていく。
(7)歯周病等の対策の強化【60 歳代における咀嚼良好者の割合を 2022 年度までに 80% 以上】→歯科健康診査推進事業において、効果的・効率的な歯科健診の実施方法の検討、歯科健診等の介入効果等の検証を行う。 う蝕、歯周病等の対策(歯科健診・保健指導を含む)を検討するワーキンググループ を順次設置し、一定の結論を得ていく。
3. 介護予防・フレイル対策、認知症予防
(1)「通いの場」の更なる拡充【2020 年度末までに介護予防に資する通いの場への参加率 を 6%に】→介護予防として、「通いの場」を大幅に拡充していくため、介護保険制度の保険者機能 強化推進交付金を活用する。
(2)高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施【2024 年度までに全市区町村で展開】 →高齢者の身体的、精神的及び社会的な特性(フレイル等)を踏まえ、保健事業と介護予 防を効果的かつ効率的で、高齢者一人ひとりの状況に応じたきめ細かなものとするため、 市町村における、高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施を推進する。
(3)介護報酬上のインセンティブ措置の強化【2020 年度中に介護給付費分科会で結論を 得る】→平成 30 年度介護報酬改定において、通所介護事業所について、自立支援・重度化防止の観点から、一定期間内に当該事業所を利用した者のうち、ADL(日常生活動作)の維持又は改善の度合いが一定の水準を超えた場合を評価する加算を新設。今後、今回の改定の効果等について調査を行う。
(4)健康支援型配食サービスの推進等【2022 年度までに 25%の市区町村で展開等】 →「地域高齢者等の健康支援を推進する配食事業の栄養管理に関するガイドライン」(平成 29 年3月厚生労働省健康局策定)を踏まえた配食サービスの普及に向けて、地域の共食の場やボランティア等も活用した適切な栄養管理に基づく配食サービスを予定している事業者に対して、管理栄養士等の専門職を継続的に供給又は参画できるようにするモデル事業を実施し、横展開を進める。 咀嚼機能等が低下した高齢者等に向けた健康な食事の普及を図る。
(5)「共生」・「予防」を柱とした認知症施策【本年6月目途に認知症施策の新たな方向性 をとりまとめ予定】→通いの場の活用などの認知症予防に関する先進・優良事例を、全国の自治体から収集。 それらを活用し、事例集を作成するとともに、実践に向けたガイドラインを作成する。 また、エビデンスの確立を目指して認知症予防に関する研究を推進する。 (6)認知症対策のための官民連携実証事業【認知機能低下抑制のための技術等の評価指標 の確立】→経済産業省を中心に、厚生労働省も協力しつつ、認知症官民連携実証プラットフォーム プロジェクトを実施しており、官民が連携して予防やケア等について社会実装の促進に取り組む。
◎実施年度2019年度から2025年までの工程表が整理されています(項目のみ)↓↓
1次世代を含めたすべての人の健やかな生活習慣形成等@ 子育て世代包括支援センターの質と量の充実等による「健やか親子21」に基づいた次世代の健やかな生活習慣形成の推進及び関連研究の実施
A 成育サイクルに着目した疾病予防・治療方法等に関する研究の推進
B 乳幼児期・学童期の健康情報の利活用の推進
C自然に健康になれる食環境づくりの推進
D 自然に健康になれる社会環境づくりの推進
E PHRの推進
F 健康寿命に対する生活習慣の影響度の要因分析
G 地域における健康づくりの促進(地域・職域連携促進事業ガイドラインの改定)
H 受動喫煙対策の徹底
I 女性の健康
2 疾病予防・重症化予防@ 保険者に対するインセンティブ措置の強化、先進・優良事例の横展開等による疾病予防・重症化予防の推進
A 医療機関と保険者・民間事業者等が連携した医学的管理と運動プログラム等の一体的な提供
B 個人の予防・健康づくりに関する行動変容につなげる取組の強化(ナッジ、ヘルスケアポイント、ウェアラブル機器等)
C 生活保護受給者の健康管理支援の推進
D がんの早期発見に向けた精度の高い検査方法等の研究・開発等
E 歯科健診や保健指導の充実を図り、歯科医療機関への受診を促すなど、全身の健康にもつながる歯周病等の歯科疾患対策の強化
3 介護予防・フレイル対策、認知症予防@ 保険者に対するインセンティブ措置の強化等により、@身近な場所で高齢者が定期的に集い、身体を動かす場等の大幅な拡充、Aあわせて、高齢者の保健事業(フレイル対策等)と介護予防の市町村における 一体的な実施を推進
A 効果検証の上、介護報酬上のインセンティブ措置の強化(デイサービス事業者)
B「共生」・「予防」を柱とした認知症施策の推進(身体を動かす場等の拡充、予防に資するエビデンスの研究等)
C 「健康支援型配食サービス」の推進等
4 その他・ かかりつけ薬剤師・薬局の基本的な機能を有し、地域住民による健康の維持・増進を積極的に支援することを目的とした「健康サポート薬局」の普及
・ 100歳まで生き生きと働けるようにするための「治療と仕事の両立支援」の充実
・ 住宅政策(住まいを通じた介護予防・健康寿命の延伸)
次回は、「
資料5 医療・福祉サービス改革プラン」からです。