平成29年度 「全社協福祉懇談会」(平成29年10月5日)
《開催テーマ》「ともに生きる豊かな福祉社会をめざして」
http://www.shakyo.or.jp/organization/pdf/plan_h29.pdf○プログラムについて↓
・講演会(15:30〜16:40)→「地域共生社会」をどうつくりだすか?社会福祉法人の課題
中央大学法学部教授 宮本 太郎 氏 (会場:全社協・会議室5F)
・懇談会(17:00〜18:30)→「ともに生きる豊かな福祉社会をめざして」(会場:灘尾ホール)◎講演会(宮本太郎 氏)→28枚のスライド使用した解説。(参加者 約200名位?)
○今地域で起きていること→「人生100年時代」がなぜ幸福に感じられないか?1 日本社会が向かう方向→「支える」「支えられる」の二分法はもうもたない
・1億人人口突入社会(1967年)と1億人人口減少社会(2053年)の比較→現役世代から見て10対1から1対1、実質的には0.5対1?→1対1の「肩車」というより「重量挙げ」に匹敵か?→支えるために長続き出来ない。
2 人生100年時代に本格突入→2007年生まれの半数が107歳に、更に2014生まれの半数は109歳まで生きることになる。105歳までの「金さん、銀さん」「日野原先生」の例。
・カリフォルニア大学バークレイ校・マックスプランクインスティチューデントデーターペース↓↓
日本(107歳)、フランス・アメリカ・イタリア(104歳)、イギリス(103歳)、ドイツ(102歳)
3 それから考えると「65歳がゴールから折り返し点に」なる
・20〜65歳までの就労時間は10万時間、
・65〜85歳までの記居時間10万時間(107歳までならば20万時間)
4 長寿の夢実現したが、→なぜ幸福感が広がらない?
・困窮問題→厚生年金があっても高齢単身男性28%が年収150万円(女性は45%)、高齢単身女性の半数が生活保護へというシュミレーションも?
・孤立問題→高齢単身男性「会話頻度が2週間に1回以下」16.7%(2012年・内閣府調査 女性は3.9%)
・終活問題→非宗教社会で、自分が、家族が友人が最期を迎えていくことの受け止め方は?
(健康寿命は男性71歳、女性は74歳)
5 他方で現役世代の困難
・進学のコストとリスク(大学費用(3,000万円)→その人の生涯費用2億5000万円)→雇用不安定化⇔非婚・単身化⇔出生率低下・現役世代減少⇔雇用不安定になる、と悪循環へ。
6 子どもの貧困率は持ち直されているものの、所得中央値の名目値は下がったまま→実質は下がり続ける。
・H28年国民生活基礎調査の概況から
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa16/dl/03.pdf→15頁の図15参照。
7 社会的支出(=社会保障費)の増大と困窮率が同時進行
・子どもの貧困率(ユニセフ 2013) →日本14.9 オランダ5.9 ↓↓
https://www.unicef.or.jp/osirase/back2013/1312_06.html・女性の貧困率(Gornick&Jantti)→表1 相対的貧困率:日本12.6 オランダ4.6 ↓
http://www.ipss.go.jp/syoushika/bunken/data/pdf/19514506.pdf・高齢者の貧困率(OECD 2010)→日本19.4 オランダ1.4 ↓↓
http://top10.sakura.ne.jp/OECD-INCPOVERTY-T1E.html8 これまでの生活保障
・雇用と家族→男性稼ぎ主の安定雇用で家族扶養
・社会保障→「働けない人々」のための社会保障、現金給付中心(年金など)
・制度→縦割りの制度での「働けない人々」の選別、困難がはっきりしているほど保護可能。
9 これからの生活保障
・雇用と家族→不安定雇用の拡大と家族の変容
・社会保障→元気で活躍するのに支えが居る老弱男女みんなのため、社会包摂、サービス給付中心(介護、障害、保育など)
・制度→縦割りを超える包括的支援で複合的困難に対処、早期対応ほど効果的。
○なぜ今、「地域共生社会」か これまでの福祉改革との関連は?問題点はあるか?10 「地域共生社会」とは→「制度・分野ごとの『縦割り』や「支え手」「受け手」という関係を超えて、地域住民や地域の多様な主体が『我が事』として参画し(中略)地域を共に創っていく社会」(地域共生社会の実現に向けてより)
11 「地域共生社会」をつくるとは?
・縦割りを超えた包括支援(丸ごと)→「支え手」「受け手」超えた支え合い→我が事としてのまちづくり→再び、縦割りを超えた包括支援(丸ごと)→このようなサイクルをつくること。
12 これまでの福祉改革との関係は?→普遍主義・基礎構造改革(1990〜2000)以来の諸改革の「棚卸し」 介護保険、障害者総合支援と共生型ケア、生活困窮者自立支援、子ども子育て支援⇔諸改革の進捗を妨げている要因への対処 とくに自治体の力強化。常にこれを検証すること。
・特に要注意→「縦割り解消で補助金削減?」「支えられる側を働かせる?」「地域共生に責任転嫁」?にならないようにする
13 これまでの福祉改革と「地域共生社会」→「支える・支えられる」を超える先行的施策→高齢・困窮・子ども・障害→すべて「地域共生社会」へ。
14 「地域共生社会」づくりは社会福祉法人改革と一体
・社会福祉法人は「包括的支援(生活支援の公益的取組)」「まちづくりへの参加(組織ガバナンスの確立、情報公開による「見せる化」)」「利用者の地域参加・自立支援」
15 地域共生社会のかたちと社会福祉法人
・第一層(市町村)と第二層(中学校区)→社会福祉法人の経営多角化・他法人との連携などを通した行政の補完的取組(NPO法人との連携等で)
○新しい地域共生をどう実現するのか 就労と居住をめぐる新しい展開16 包括的相談支援のつくりかた(地域包括支援センターを中心にする場合)
・三重県伊賀市→市内3つの包括支援センターを「分野を問わない福祉の相談窓口」とする
・静岡県富士宮市→福祉総合相談課を設置し、地位ごと10か所の地域型支援センターとの連携
17 包括的相談支援のつくりかた(生活困窮者市背率支援制度を軸にする場合)
・富山県氷見市→生活困窮者支援担当の市社協、市の福祉介護課、子育て支援課が共同運営する福祉総合サポートセンターを立ち上げ
18 包括的相談支援のつくりかた(新たな拠点を作る場合)
・東京都江戸川区→子ども、障害、貧困を包括的に対応する拠点「なごみの家」3か所設置。
19 包括的相談支援のつくりかた(社協主導で新たな拠点形成)
・人口3,800人の街で113人の現役世代がひきこもり
・2011年に「こみっと」をオープン→障害者自立支援法の指定相談支援辞義洋書、就労継続支援B型事業所、能力開発機構の飢饉訓練事業、ひきこもり対策事業、民間財団の助成金などを組み合わせた現役世代の支援センターるその中核が「こみっとバンク」(人材センター現在はプラチナバンク)。まいたけキャッシュの生産販売などで町おこしの中心に。
20 職場の窓口を広げ共生の場をつくる(ユニバーサル就労など)
・千葉県社会福祉法人生活クラブ「風の村」(→
http://kazenomura.jp/ )
・静岡県富士市では「ユニバーサル就労条例」も。
21 共生の場を広げるため、企業に仕事の切り出しを働き掛ける
・大阪府豊中市の例→くらし支援課を軸に無料職業紹介事業(毎年300〜400の企業から受けた求人情報をあえて公開せずに扱う)→高齢・困窮・保険収納課などの窓口から紹介された人々について、労働時間、仕事の内容などを企業と個別交渉しカスタマイズ。
・東京のIT企業ISFnet→中核的業務の業務分解に報奨金
22 農業・自伐型林業の可能性
・青森県弘前市→2016年4月から就労自立支援室を新設、りんご課・農業政策課都の連携、りんご産業の担い手確保、地方移住の促進、りんご農園でユニバーサル就労目指す(除雪対応、剪定などのプロセスごとに業務分担)。
・千葉県香取市の社会福祉法人「福祉楽団」→自伐型林業→立ち上げ数百万の小規模林業、針葉樹も燃やせる薪ボイラーを導入したり軽トラで運べる短材を購入したりする仕組みなどが自伐型林業を支える(ユニバーサル就労導入)
23 共生型ケア(福祉現場で支える・支えられるを超える)
・富山型ディサービス(このゆびとーまれ)→1993年高齢者、障害者、子どもを区別しないで受け入れるディサービスとしてスタート、縦割りの壁を越えて人々の新たな支え合いの場として発展。障害者雇用(就労継続支援B型)の「はたらくわ」をつなげる。「場の共生」から「地域共生」へ。
24 「共生=ごちゃまぜ」のまちづくり(シェア金沢・社会福祉法人佛子園)
・障害者就労の事業、障害児の居住施設、サービス付き高齢者向け住宅、学生アパートが「ごちゃまぜ」暮らし(シェア金沢→
http://share-kanazawa.com/ )
25 「共生=ごちゃまぜ」のまちづくり
(B’s d’社会福祉法人佛子園→
http://www.bussien.com/#/ )
26 地域の困難に対する新しい縁づくりとまちづくり
・従来の「社縁、地縁・血縁」→子育て・介護などから生まれる新しい縁→新しい地縁・家族縁かも←行政のサービス・公的財源からかも
27 補完が他所得保障→ユニバーサル就労などではすぐに生活が成り立たない可能性あり、勤労所得頼みでも劣等処遇による代替え型所得保障でもなく、勤労所得を補完する所得補償が必要。
・補完型所得保障の例→家族手当(児童扶養手当などを含む)、住宅手当、給付型奨学金、負の所得税、給付付き税額控除、ベーシックキャピタル
○まとめ・「地域共生社会」ビジョンは、1990年代以来の福祉改革の
総まとめ(
一連の改革の「棚卸し」と実現を妨げている条件を是正する)
・自治体と地域の多様性を尊重し、その自治体の自発性を前提としたビジョンで、
全国一律のフォーマットはない・包括的支援→「支える・支えられる」を超えた共生の保障→まちづくりへの展開という内容はこの間の
「社会福祉法人改革と一体」のもの・他方で「縦割りを超える制度一元化」「支えられる側を支える側へ」といった理論が独り歩きをすると
財政支出抑制圧力の受け皿になってしまう可能性もあり。
次回は、講演会に続き、
「福祉懇談会」からになります。
◆講演会風景・全社協会議室(新霞が関ビル5階)
◆宮本太郎先生の熱弁から