令和5年第7回経済財政諮問会議 [2023年06月15日(Thu)]
令和5年第7回経済財政諮問会議(令和5年5月 29 日)
≪議事≫(1) 経済・財政一体改革(社会保障)、こども、マイナンバー (2) 経済財政運営と改革の基本方針(骨子案)について https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2023/0526/agenda.html ◎資料3 こども政策DXの推進について(小倉臨時議員提出資料) ○「こども政策DX」の推進について→取組の⽅向性⇒ こどもまんなか社会の実現に向けて、デジタル技術を積極的に活⽤して、伴⾛型相談⽀援の実施、就労証明 書に関する事務をはじめ、様々な事務において⼦育て家庭などが抱える様々な⼿間や負担を少しでも軽減し、 こどもと向き合う時間を増やしていくことができるよう取り組んでいく ・主な取組→伴⾛型相談⽀援 就労証明書 ⺟⼦保健⇒これまでに、オンライン⾯談の実施や、出産・⼦育て応援ギフトのマイナポータルでの電⼦申 請に対応。 今後、出産・⼦育て応援交付⾦事業の全国的な定着・充実に向けた対応や調査研究を実施する等により、デジタル技術の活⽤に係る地⽅⾃治体への必要な⽀援策について検討を進める。 就労証明書⇒オンライン提出についての課題等の整理や就労証明書の様式の統⼀を実施。 引き続き、令和5年秋頃⽬途の開始に向け、地⽅⾃治体等と連携し必要な取組を進める。 ⺟⼦保健⇒マイナンバーカードを乳幼児健診・妊婦健診の受診券として利⽤できるようにするとともに、 マイナポータル等を活⽤して問診票をスマートフォンで事前⼊⼒することができる取組を実施予定。健診結果のマイナポータルによる提供の拡充・迅速化を図る。 ◎資料4 「経済財政運営と改革の基本方針 2023(仮称)」骨子(案) 第1章 マクロ経済運営の基本的考え方 1.本基本方針の考え方 2.環境変化に対応したマクロ経済運営 3.持続可能な成長の実現に向けた経済構造の強化 第2章 新しい資本主義の加速 1.三位一体の労働市場改革による構造的賃上げの実現と「人への投資」の強化、分厚い 中間層の形成 2.投資の拡大と経済社会改革の実行→(1)官民連携による国内投資拡大とサプライ チェーンの強靱化 (2)グリーントランスフォーメーション(GX)、デジタルトランスフォーメーション(DX)等の加速 (3)スタートアップの推進と新たな産業構造への転換、社会的インパクト投資の促進 (4)官民連携を通じた科学技術・イノベーションの推進 (5)インバウンド戦略の展開(高度人材等の受入れ、観光、国際金融センターの実現 など) 3.少子化対策・こども政策の抜本強化 4.包摂社会の実現 (女性活躍、共生・共助社会づくり、就職氷河期世代支援 など) 5.地域・中小企業の活性化 (デジタル田園都市国家構想、中堅・中小企業の活力向上、 物流対策 など) 第3章 我が国を取り巻く環境変化への対応 1. 国際環境変化への対応→(1) 外交・安全保障の強化 (2) 経済安全保障政策 の推進 (3) エネルギー安全保障の強化 (4) 食料安全保障の強化と農林水産業の持続可能な成長の推進 (5) 対外経済連携の促進、企業の海外ビジネス投資促進 2. 防災・減災、国土強靱化の推進、東日本大震災等からの復興 3. 国民生活の安全・安心 第4章 中長期の経済財政運営 1.中長期の視点に立った持続可能な経済財政運営 2.持続可能な社会保障制度の構 築 3.生産性を高め経済社会を支える社会資本整備 4.国と地方の新たな役割分担等 5. 経済社会の活力を支える教育・研究活動の推進 第5章 当面の経済財政運営と令和6年度予算編成に向けた考え方 1. 当面の経済財政運営について 2. 令和6年度予算編成に向けた考え方 ◎資料5 マクロ経済運営の目指すべき方向性について 〜特別セッションの議論を受けて〜(有識者議員提出資料) 世界経済の構造が大きく変わる中、我が国のマクロ経済運営はどうあるべきか。経済財政諮問 会議では年初来、8人の特別有識者を交え、議論を行った。我が国では、特に過去25年間、常に デフレとの闘いを政策運営の中心に置かざるを得ない状況が続いてきた。しかし現在、40年ぶり の物価上昇率や30年ぶりの高い賃上げ、人手不足と世界との人材獲得競争を背景とした労働需 給の逼迫など、デフレ経済は大きく変わりつつある。 世界においても、高インフレと金利引上げというマクロ環境の変化、不確実な国際情勢に伴うサ プライチェーンの分断リスクと経済安全保障への意識の高まり、グリーン、デジタル、ヘルスケア など社会課題の解決を経済成長のエンジンとする政策志向の世界的変化、そのために必要な官 民連携した中長期投資へのコミットメントの重要性など、これまで以上に戦略的なポリシーミックス が求められている。 こうした問題意識の下、特別セッションの議論を踏まえ、我が国が目指すべきマクロ経済運営の 方向性について、以下、提言する。 1.デフレ脱却と民需主導の持続的成長に向けて→まずはデフレ経済に関する潮目の変化を確実に、持続的で安定的なものにしていかなければならない。その鍵は構造的な賃金上昇を着実に実現していくこと。このため、⇒・政府と日本銀行は緊密に連携し、賃金上昇を伴う形で、2%の物価安定目標と民需主導の経 済成長が持続的かつ安定的に実現することを目指すべき。 ・政府においては、まずは、足下で続く輸入物価上昇による外生的な物価上昇から、賃金上昇 やコストの適切な価格転嫁を通じたマークアップの確保を伴う「賃金と物価の安定的な好循環」 を目指すべき。これにより、日本特有の現象であった賃金と物価がともに動かない(凍結され た)状態を打破し、デフレマインドを払拭することが重要。 ・このため、中小企業の価格転嫁対策、最低賃金の引上げパスの提示やそのための環境整備、 適切な労働市場改革等を行うべき。 ・あわせて、政府は、成長力の持続的な向上と家計所得の幅広い増加に裏打ちされた消費や 国内需要の持続的拡大が実現する「成長と分配の好循環」を政策目標とし賃金・物価の好循 環に持続性を確保すべき。・その実現に向け、生産性向上とイノベーション促進に向けた民間投資を引き出すとともに、人 への投資、GXなど社会課題の解決にも必要ながら過少投資となりやすい分野への官民連携 した計画的な重点投資を推進すべき。 ・こうした取組を通じ、人々の物価観(デフレ予想から緩やかな物価上昇予想)と成長期待(潜在成長率の向上)をともに高め、デフレに後戻りしないとの認識を広く醸成していくべき。 2.財政政策と金融政策のポリシーミックスについて→特別セッションでは、より中長期の視点に立ったポリシーミックスの在り方についても議論を行っ た。2%の物価安定目標実現とデフレに後戻りしない経済環境を確実にし、その後も物価安定の 下での持続的な経済成長を実現していくため、⇒引き続き、政府と日本銀行は緊密な連携を図りつつ、経済・物価・金融情勢に応じて機動的な 政策運営を行う。 ・その中で、財政政策は主として潜在成長率の引上げと社会課題の解決に重点を置くなど、財政と金融の適切なポリシーミックスを目指すべき。・この観点から、財政政策は戦略的視点に立って、民需を引き出し、社会課題を解決する中長 期の計画的な投資を推進するとともに、それを担保するワイズスペンディングを徹底すべき。 緊急時の財政出動においては、その支出を必要以上に長期化・恒常化させない仕組みを予 め取り入れるべき。コロナ禍で拡大した財政支出については、早期に正常化して平時の歳出 規模に戻していくべき。内外経済を巡る不確実性が高い中、適切なポリシーミックスを実現するためにも、持続可能な 財政構造を確立するための取組を着実に推進し、財政に関する信認を確保すべき。・経済再生と財政健全化をともに実現する「経済・財政一体改革」について、2024年に総合的 な点検を行うとともに中期的な経済財政の枠組み(中長期的な投資資金の確保、財政規律の基本的考え方など)や進捗管理を行うための指標等について広く検討すべき。 ・日本銀行においては、適切な金融政策の運営を通じ、賃金上昇を伴う形で、物価安定目標を 持続的・安定的に実現することを期待する。 ・こうした取組を通じ、政府と日本銀行は緊密に連携し、マクロ経済運営の目標の実現を目指すべき。 ・ 経済財政諮問会議⇒財政政策と金融政策のポリシーミックスを含むマクロ経済政 策運営の状況、物価や賃金、分配面も含めた経済の状況、経済財政の構造改革の取組状況 などについて、定期的に検証すべき。 ◎資料6 財政制度等審議会の建議の方向(鈴木議員提出資料) ○財政制度等審議会の建議の方向(基本認識等)↓ ・歴史的な転機ともなりうる場面であり、地球環境問題、国際平和秩序への挑戦、格差の固定化・拡大等が問題視されている。グローバルな経済・金融環境も急速に変化。我が国は、経済の成長力の低下、少子高齢化の一層の深刻化、人口減少下における地域社会の問題といった課題を抱えている。安全保障上の有事、震災、感染症等の危機への備えも必要。 平時こそ財政を健全化し財政余力を確保することが不可欠。コロナ対策により一層低下した財政余力の回復が急務。 ・コロナ禍を克服して平時に移行した後も、山積する諸課題への的確な対応が必要。一定の財政支出の拡大も必要となりうるが、その場合でも真に必要な支出に絞り込み、また財源を適切に確保することが必要。 ・グローバルな経済・金融環境が激変する中、我が国でも潮目は変化。財政に対する信認の低下が市場の攪乱要因とならないよう、これまで以上に注意が必要。 ・これまで、拡張的な財政スタンスが成長力の強化につながってきたとは言い難く、財政支出は、単に需要喚起のために行う のではなく、必要性と有効性を見極めてターゲットを絞るべき。規制改革等と相まって社会課題の解決に向けた道筋を示し、 民間の活力を引き出すことで、日本経済の成長力強化につなげることが重要。 ・少子化対策の成否は、中長期的な日本経済の成長力や財政・社会保障の持続可能性に大きく影響する、国家の命運 を左右する取組であり、真に効果的な対応が求められる。恒久的な施策には恒久的・安定的な財源の確保が必要。少子化対策の財源負担をこれから生まれるこどもたちの世代に先送りすることは本末転倒。全世代型社会保障の考え方に立ち、医療・介護など社会保障分野の歳出改革を断行するとともに、企業を含め、社会・経済の参加者全員が公平な立場で広く負担する新たな枠組みを検討することが必要。歳出・歳入両面で、幅広い観点から検討を深めていくべき。 少子化対策の効果が顕在化するには時間を要するため、当面、人口減少の進行を前提とした持続可能な地域社会・行財政の在り方のデザインも不可欠。偏在性が小さい地方税体系の構築、社会インフラの維持管理や行政サービスの質向上に 向けた多角的な検討が必要。 ・グランドデザインに基づき全体を俯瞰するアプローチが有効であり、その上でスクラップ・アンド・ビルドの考え方を徹底し、優先 度の高い政策に対して財政資金を重点投入するとともに、効果の低い既存予算の廃止・縮減を図るべき。全体最適の視点を持って、社会課題の解決、成長力強化、財政健全化の同時実現を追求していくことが必要。 歴史的転機とも言える今、より良い経済社会を将来世代に残していくため、真摯な議論と実践が求められる。 ○財政制度等審議会の建議の方向(財政総論)↓ ・経済・市場動向→世界の経済・金融環境は変化、我が国でも、潮目の変化を意識することが必要。円の信認を支えてきた経済的ファンダメンタルズも絶対的なものではなくなりつつあり、安定した財政運営を心がけるべき。 コロナ禍以降の巨額の財政出動の影響で、毎年の国債発行規模は拡大。短期債への依存が高まり、金利上昇に脆弱な資金調達構造に。金利が上昇すれば財政リスクが高まっていると受け取られ、それが更なる金利上昇要因にもなりかねない。海外投資家のプレゼンスが高まっている状況も踏まえ、市場の信認確保の重要性をこれまで以上に意識すべき。 ・世界の中での日本→本年5月のG7財務大臣・中央銀行総裁会議共同声明でも指摘されたように、財政支援のターゲットを絞ることや財政の持 続可能性を確保すべきことなどは国際的な共通認識。国際機関の見解も踏まえるべき。格付会社の見方にも注意が必要。 欧米諸国は、直面する課題への対応を図りながら、財政健全化への取組との両立に試行錯誤している状況。日本の債務残 高対GDP比は世界最悪の状態にあり、国際的な共通認識に適う形で、現行の財政健全化目標の達成に向けて真摯に対応 すべき。大規模な補正 予算により財政状況が悪化している状況に歯止めをかけることが必要。 ・危機への備え→財政支出・国債発行を歯止め無く行えば、日本国債や円に対する市場の信認が損なわれ、その価値を毀損させかねない。財政運営が引き金となって危機的状況を作り出すことは避けるべき。安全保障上の有事、震災、感染症といった危機時に、資金調達を市場から円滑に行えるようにするためにも、平時から節度ある財政運営に努め、財政余力を確保することが不可欠。 コロナ対策は、正常化までに時間が掛かりすぎている。危機対応の支出が常態化し、財政や成長力に影響しないよう、事態の進展に合わせて財政支援の正常化を図るべき。コロナ対策の効果等について検証を行い、教訓に基づき、必要な備えを行うべき。 ・成果志向の財政運営→過去30年間、拡張的な財政スタンスをとり、債務残高も積み上げてきたにも関わらず、成長力の強化につなげる対応ができな かった。企業部門の貯蓄超過が続いている状況は、極めて特異。財政拡大に関わらず企業部門の動向が変化しなかったのが問 題であり、各種手段を組み合わせて成果につながる政策対応を展開していかねばならない。 成果志向の財政支出を徹底するため、EBPM手法の徹底、PDCAサイクルの確立が必要であり、行政事業レビューシートの実 効性を更に高めることが急務。政策評価と行政事業レビューを有機的に連携させるべき。 ○財政制度等審議会の建議の方向(各論)↓ ・成長→ 労働面⇒生産年齢人口の減少に直面する中、リ・スキリングを含めた人への投資による労働の「質」の向上と労働資源の成長分野 への円滑な移行を促す労働市場改革が急務。企業を通じた支援から個人に対する直接的な支援への重点の移行、非正規雇用へのセーフティネットの適用拡大も重要。 資本面⇒企業部門の貯蓄超過が続いている状況を変え、成長につながる投資を促すことが必要。特に、世界的な成長分野として 期待される一方で投資が不足するGX・DX分野については、投資拡大に向けて官民を挙げた取組が重要。 ・ 経済成長の源泉である科学技術・イノベーション分野に投資し、拡大した財政支出が成果につながるよう、担い手の大学等の効果的取 組を促すことが必要。新技術・アイディアの社会実装により付加価値を生み出すスタートアップの振興、エコシステム形成も重要。 財政支出⇒「ワイズ・スペンディング」という錦の御旗の下、単に特定分野の支出が拡大することにならないよう留意。 ・こども・高齢化等→急速な人口減少は成長力の低下や国民の豊かさの低下をもたらすばかりではなく、社会保障制度と財政の持続可能性を脅かすもの。少子化を押しとどめることは、年金、医療といった各保険制度を将来にわたって機能させるためにも必要。少子化対策⇒社会全体の構造や意識を変えていくことが不可欠。こども政策強化の予算については、真に必要な施策に重点 化するとともに、その財源⇒将来世代に負担を先送りするのではなく、社会全体で安定的に支えていく必要がある。 医療⇒効率的な医療提供体制確保のため、地域医療構想実現に向けた更なる法制的な対応や新規開業規制も含めた医療機関の偏在問題への対応が必要。医療DXを活用した医療の効率化と質の向上、リフィル処方箋の活用促進等にも取り組むことが重要。 介護⇒ICT機器の活用や経営の大規模化等に取り組みつつ、現役世代や低所得者の保険料の上昇を抑制する観点から、給付範囲の見直し等を進めると同時に、2割負担の範囲拡大等について速やかに結論を出す必要。 コロナ禍で積み上がった医療機関等の積立金活用等により、医療・介護の報酬改定で公費や保険料が増加しないよう取り組むべき。 ・人口・地域→ 我が国は、本格的な人口減少社会に突入、経済力の一層の低下、地域社会の経済社会活動の衰退につながる懸念。 行財政⇒人口減少下では歳出増加を前提とせずとも一人当たりの行政サービスの水準の維持・強化が可能であることを踏まえた歳出改革、地方公共団体の人手不足を見据えた広域連携やデジタル技術の活用等の行政サービスの効率化の徹底が必要。 人口減少を前提として、持続可能な地域社会をデザインしていくことが必要。偏在性が小さい地方税体系の構築、少子化が進展する 中での教育の在り方などの行政サービスの質の向上に向けた対応の検討、既存インフラの有効活用や先端技術の実装加速等によるインフラ維持コストの増大への対応、まちづくり・農村等整備のコンパクト化の一層の推進が重要。 財政資源の有効活用のためにも、当該地域がどのような姿を目指すのかという前提を共有した上での省庁・分野横断的な対応が必要。 次回も続き「資料7 活力ある多様な地域社会を実現するための地方税財政改革についての意見 の概要(地方財政審議会)(松本議員提出資料)」からです。 |