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令和5年第7回経済財政諮問会議 [2023年06月15日(Thu)]
令和5年第7回経済財政諮問会議(令和5年5月 29 日)
≪議事≫(1) 経済・財政一体改革(社会保障)、こども、マイナンバー (2) 経済財政運営と改革の基本方針(骨子案)について
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2023/0526/agenda.html
◎資料3 こども政策DXの推進について(小倉臨時議員提出資料)
○「こども政策DX」の推進について
→取組の⽅向性⇒ こどもまんなか社会の実現に向けて、デジタル技術を積極的に活⽤して、伴⾛型相談⽀援の実施、就労証明 書に関する事務をはじめ、様々な事務において⼦育て家庭などが抱える様々な⼿間や負担を少しでも軽減し、 こどもと向き合う時間を増やしていくことができるよう取り組んでいく
・主な取組→伴⾛型相談⽀援 就労証明書 ⺟⼦保健⇒これまでに、オンライン⾯談の実施や、出産・⼦育て応援ギフトのマイナポータルでの電⼦申 請に対応。 今後、出産・⼦育て応援交付⾦事業の全国的な定着・充実に向けた対応や調査研究を実施する等により、デジタル技術の活⽤に係る地⽅⾃治体への必要な⽀援策について検討を進める。  就労証明書⇒オンライン提出についての課題等の整理や就労証明書の様式の統⼀を実施。 引き続き、令和5年秋頃⽬途の開始に向け、地⽅⾃治体等と連携し必要な取組を進める。   ⺟⼦保健⇒マイナンバーカードを乳幼児健診・妊婦健診の受診券として利⽤できるようにするとともに、 マイナポータル等を活⽤して問診票をスマートフォンで事前⼊⼒することができる取組を実施予定。健診結果のマイナポータルによる提供の拡充・迅速化を図る。

◎資料4 「経済財政運営と改革の基本方針 2023(仮称)」骨子(案)
第1章 マクロ経済運営の基本的考え方
1.本基本方針の考え方 2.環境変化に対応したマクロ経済運営 3.持続可能な成長の実現に向けた経済構造の強化
第2章 新しい資本主義の加速
1.三位一体の労働市場改革による構造的賃上げの実現と「人への投資」の強化、分厚い
中間層の形成  
2.投資の拡大と経済社会改革の実行→(1)官民連携による国内投資拡大とサプライ
チェーンの強靱化 (2)グリーントランスフォーメーション(GX)、デジタルトランスフォーメーション(DX)等の加速 (3)スタートアップの推進と新たな産業構造への転換、社会的インパクト投資の促進 (4)官民連携を通じた科学技術・イノベーションの推進 (5)インバウンド戦略の展開(高度人材等の受入れ、観光、国際金融センターの実現 など)
3.少子化対策・こども政策の抜本強化
4.包摂社会の実現 (女性活躍、共生・共助社会づくり、就職氷河期世代支援 など)
5.地域・中小企業の活性化 (デジタル田園都市国家構想、中堅・中小企業の活力向上、
物流対策 など)
第3章 我が国を取り巻く環境変化への対応
1. 国際環境変化への対応→(1) 外交・安全保障の強化 (2) 経済安全保障政策
の推進 (3) エネルギー安全保障の強化 (4) 食料安全保障の強化と農林水産業の持続可能な成長の推進 (5) 対外経済連携の促進、企業の海外ビジネス投資促進
2. 防災・減災、国土強靱化の推進、東日本大震災等からの復興
3. 国民生活の安全・安心
第4章 中長期の経済財政運営
1.中長期の視点に立った持続可能な経済財政運営 2.持続可能な社会保障制度の構
築 3.生産性を高め経済社会を支える社会資本整備 4.国と地方の新たな役割分担等 5. 経済社会の活力を支える教育・研究活動の推進
第5章 当面の経済財政運営と令和6年度予算編成に向けた考え方
1. 当面の経済財政運営について 2. 令和6年度予算編成に向けた考え方


◎資料5 マクロ経済運営の目指すべき方向性について 〜特別セッションの議論を受けて〜(有識者議員提出資料)
世界経済の構造が大きく変わる中、我が国のマクロ経済運営はどうあるべきか。経済財政諮問 会議では年初来、8人の特別有識者を交え、議論を行った
。我が国では、特に過去25年間、常に デフレとの闘いを政策運営の中心に置かざるを得ない状況が続いてきた。しかし現在、40年ぶり の物価上昇率や30年ぶりの高い賃上げ、人手不足と世界との人材獲得競争を背景とした労働需 給の逼迫など、デフレ経済は大きく変わりつつある。 世界においても、高インフレと金利引上げというマクロ環境の変化、不確実な国際情勢に伴うサ プライチェーンの分断リスクと経済安全保障への意識の高まり、グリーン、デジタル、ヘルスケア など社会課題の解決を経済成長のエンジンとする政策志向の世界的変化、そのために必要な官 民連携した中長期投資へのコミットメントの重要性など、これまで以上に戦略的なポリシーミックス が求められている。 こうした問題意識の下、特別セッションの議論を踏まえ、我が国が目指すべきマクロ経済運営の 方向性について、以下、提言する。
1.デフレ脱却と民需主導の持続的成長に向けて
→まずはデフレ経済に関する潮目の変化を確実に、持続的で安定的なものにしていかなければならない。その鍵は構造的な賃金上昇を着実に実現していくこと。このため、⇒・政府と日本銀行は緊密に連携し、賃金上昇を伴う形で、2%の物価安定目標と民需主導の経 済成長が持続的かつ安定的に実現することを目指すべき。 ・政府においては、まずは、足下で続く輸入物価上昇による外生的な物価上昇から、賃金上昇 やコストの適切な価格転嫁を通じたマークアップの確保を伴う「賃金と物価の安定的な好循環」 を目指すべき。これにより、日本特有の現象であった賃金と物価がともに動かない(凍結され た)状態を打破し、デフレマインドを払拭することが重要。 ・このため、中小企業の価格転嫁対策、最低賃金の引上げパスの提示やそのための環境整備、 適切な労働市場改革等を行うべき。 ・あわせて、政府は、成長力の持続的な向上と家計所得の幅広い増加に裏打ちされた消費や 国内需要の持続的拡大が実現する「成長と分配の好循環」を政策目標とし賃金・物価の好循 環に持続性を確保すべき。・その実現に向け、生産性向上とイノベーション促進に向けた民間投資を引き出すとともに、人 への投資、GXなど社会課題の解決にも必要ながら過少投資となりやすい分野への官民連携 した計画的な重点投資を推進すべき。 ・こうした取組を通じ、人々の物価観(デフレ予想から緩やかな物価上昇予想)と成長期待(潜在成長率の向上)をともに高め、デフレに後戻りしないとの認識を広く醸成していくべき。
2.財政政策と金融政策のポリシーミックスについて→特別セッションでは、より中長期の視点に立ったポリシーミックスの在り方についても議論を行っ た。2%の物価安定目標実現とデフレに後戻りしない経済環境を確実にし、その後も物価安定の 下での持続的な経済成長を実現していくため、⇒引き続き、政府と日本銀行は緊密な連携を図りつつ、経済・物価・金融情勢に応じて機動的な 政策運営を行う。 ・その中で、財政政策は主として潜在成長率の引上げと社会課題の解決に重点を置くなど、財政と金融の適切なポリシーミックスを目指すべき。・この観点から、財政政策は戦略的視点に立って、民需を引き出し、社会課題を解決する中長 期の計画的な投資を推進するとともに、それを担保するワイズスペンディングを徹底すべき。 緊急時の財政出動においては、その支出を必要以上に長期化・恒常化させない仕組みを予 め取り入れるべき。コロナ禍で拡大した財政支出については、早期に正常化して平時の歳出 規模に戻していくべき。内外経済を巡る不確実性が高い中、適切なポリシーミックスを実現するためにも、持続可能な 財政構造を確立するための取組を着実に推進し、財政に関する信認を確保すべき。・経済再生と財政健全化をともに実現する「経済・財政一体改革」について、2024年に総合的 な点検を行うとともに中期的な経済財政の枠組み(中長期的な投資資金の確保、財政規律の基本的考え方など)や進捗管理を行うための指標等について広く検討すべき。 ・日本銀行においては、適切な金融政策の運営を通じ、賃金上昇を伴う形で、物価安定目標を 持続的・安定的に実現することを期待する。 ・こうした取組を通じ、政府と日本銀行は緊密に連携し、マクロ経済運営の目標の実現を目指すべき。 ・ 経済財政諮問会議⇒財政政策と金融政策のポリシーミックスを含むマクロ経済政 策運営の状況、物価や賃金、分配面も含めた経済の状況、経済財政の構造改革の取組状況 などについて、定期的に検証すべき。


◎資料6 財政制度等審議会の建議の方向(鈴木議員提出資料)
○財政制度等審議会の建議の方向(基本認識等)↓
・歴史的な転機ともなりうる場面であり、地球環境問題、国際平和秩序への挑戦、格差の固定化・拡大等が問題視されている。グローバルな経済・金融環境も急速に変化。我が国は、経済の成長力の低下、少子高齢化の一層の深刻化、人口減少下における地域社会の問題といった課題を抱えている。
安全保障上の有事、震災、感染症等の危機への備えも必要。 平時こそ財政を健全化し財政余力を確保することが不可欠。コロナ対策により一層低下した財政余力の回復が急務。 ・コロナ禍を克服して平時に移行した後も、山積する諸課題への的確な対応が必要。一定の財政支出の拡大も必要となりうるが、その場合でも真に必要な支出に絞り込み、また財源を適切に確保することが必要。
・グローバルな経済・金融環境が激変する中、我が国でも潮目は変化。財政に対する信認の低下が市場の攪乱要因とならないよう、これまで以上に注意が必要。 ・これまで、拡張的な財政スタンスが成長力の強化につながってきたとは言い難く、財政支出は、単に需要喚起のために行う のではなく、必要性と有効性を見極めてターゲットを絞るべき。規制改革等と相まって社会課題の解決に向けた道筋を示し、 民間の活力を引き出すことで、日本経済の成長力強化につなげることが重要。 ・少子化対策の成否は、中長期的な日本経済の成長力や財政・社会保障の持続可能性に大きく影響する、国家の命運 を左右する取組であり、真に効果的な対応が求められる。恒久的な施策には恒久的・安定的な財源の確保が必要。少子化対策の財源負担をこれから生まれるこどもたちの世代に先送りすることは本末転倒。全世代型社会保障の考え方に立ち、医療・介護など社会保障分野の歳出改革を断行するとともに、企業を含め、社会・経済の参加者全員が公平な立場で広く負担する新たな枠組みを検討することが必要。歳出・歳入両面で、幅広い観点から検討を深めていくべき。 少子化対策の効果が顕在化するには時間を要するため、当面、人口減少の進行を前提とした持続可能な地域社会・行財政の在り方のデザインも不可欠。偏在性が小さい地方税体系の構築、社会インフラの維持管理や行政サービスの質向上に 向けた多角的な検討が必要。
・グランドデザインに基づき全体を俯瞰するアプローチが有効であり、その上でスクラップ・アンド・ビルドの考え方を徹底し、優先 度の高い政策に対して財政資金を重点投入するとともに、効果の低い既存予算の廃止・縮減を図るべき。全体最適の視点を持って、社会課題の解決、成長力強化、財政健全化の同時実現を追求していくことが必要。 歴史的転機とも言える今、より良い経済社会を将来世代に残していくため、真摯な議論と実践が求められる。
○財政制度等審議会の建議の方向(財政総論)↓
・経済・市場動向→世界の経済・金融環境は変化、我が国でも、潮目の変化を意識することが必要。円の信認を支えてきた経済的ファンダメンタルズも絶対的なものではなくなりつつあり、安定した財政運営を心がけるべき。 コロナ禍以降の巨額の財政出動の影響で、毎年の国債発行規模は拡大。短期債への依存が高まり、金利上昇に脆弱な資金調達構造に。金利が上昇すれば財政リスクが高まっていると受け取られ、それが更なる金利上昇要因にもなりかねない。海外投資家のプレゼンスが高まっている状況も踏まえ、市場の信認確保の重要性をこれまで以上に意識すべき。
・世界の中での日本→本年5月のG7財務大臣・中央銀行総裁会議共同声明でも指摘されたように、財政支援のターゲットを絞ることや財政の持 続可能性を確保すべきことなどは国際的な共通認識。国際機関の見解も踏まえるべき。格付会社の見方にも注意が必要。 欧米諸国は、直面する課題への対応を図りながら、財政健全化への取組との両立に試行錯誤している状況。日本の債務残 高対GDP比は世界最悪の状態にあり、国際的な共通認識に適う形で、現行の財政健全化目標の達成に向けて真摯に対応 すべき。大規模な補正
予算により財政状況が悪化している状況に歯止めをかけることが必要。
・危機への備え→財政支出・国債発行を歯止め無く行えば、日本国債や円に対する市場の信認が損なわれ、その価値を毀損させかねない。財政運営が引き金となって危機的状況を作り出すことは避けるべき。安全保障上の有事、震災、感染症といった危機時に、資金調達を市場から円滑に行えるようにするためにも、平時から節度ある財政運営に努め、財政余力を確保することが不可欠。 コロナ対策は、正常化までに時間が掛かりすぎている。危機対応の支出が常態化し、財政や成長力に影響しないよう、事態の進展に合わせて財政支援の正常化を図るべき。コロナ対策の効果等について検証を行い、教訓に基づき、必要な備えを行うべき。
・成果志向の財政運営→過去30年間、拡張的な財政スタンスをとり、債務残高も積み上げてきたにも関わらず、成長力の強化につなげる対応ができな かった。企業部門の貯蓄超過が続いている状況は、極めて特異。財政拡大に関わらず企業部門の動向が変化しなかったのが問 題であり、各種手段を組み合わせて成果につながる政策対応を展開していかねばならない。 成果志向の財政支出を徹底するため、EBPM手法の徹底、PDCAサイクルの確立が必要であり、行政事業レビューシートの実 効性を更に高めることが急務。政策評価と行政事業レビューを有機的に連携させるべき。
○財政制度等審議会の建議の方向(各論)↓
・成長
→ 労働面⇒生産年齢人口の減少に直面する中、リ・スキリングを含めた人への投資による労働の「質」の向上と労働資源の成長分野 への円滑な移行を促す労働市場改革が急務。企業を通じた支援から個人に対する直接的な支援への重点の移行、非正規雇用へのセーフティネットの適用拡大も重要。 資本面⇒企業部門の貯蓄超過が続いている状況を変え、成長につながる投資を促すことが必要。特に、世界的な成長分野として 期待される一方で投資が不足するGX・DX分野については、投資拡大に向けて官民を挙げた取組が重要。 ・ 経済成長の源泉である科学技術・イノベーション分野に投資し、拡大した財政支出が成果につながるよう、担い手の大学等の効果的取 組を促すことが必要。新技術・アイディアの社会実装により付加価値を生み出すスタートアップの振興、エコシステム形成も重要。 財政支出⇒「ワイズ・スペンディング」という錦の御旗の下、単に特定分野の支出が拡大することにならないよう留意。
・こども・高齢化等→急速な人口減少は成長力の低下や国民の豊かさの低下をもたらすばかりではなく、社会保障制度と財政の持続可能性を脅かすもの。少子化を押しとどめることは、年金、医療といった各保険制度を将来にわたって機能させるためにも必要。少子化対策⇒社会全体の構造や意識を変えていくことが不可欠。こども政策強化の予算については、真に必要な施策に重点 化するとともに、その財源⇒将来世代に負担を先送りするのではなく、社会全体で安定的に支えていく必要がある。 医療⇒効率的な医療提供体制確保のため、地域医療構想実現に向けた更なる法制的な対応や新規開業規制も含めた医療機関の偏在問題への対応が必要。医療DXを活用した医療の効率化と質の向上、リフィル処方箋の活用促進等にも取り組むことが重要。 介護⇒ICT機器の活用や経営の大規模化等に取り組みつつ、現役世代や低所得者の保険料の上昇を抑制する観点から、給付範囲の見直し等を進めると同時に、2割負担の範囲拡大等について速やかに結論を出す必要。 コロナ禍で積み上がった医療機関等の積立金活用等により、医療・介護の報酬改定で公費や保険料が増加しないよう取り組むべき。
・人口・地域→ 我が国は、本格的な人口減少社会に突入、経済力の一層の低下、地域社会の経済社会活動の衰退につながる懸念。 行財政⇒人口減少下では歳出増加を前提とせずとも一人当たりの行政サービスの水準の維持・強化が可能であることを踏まえた歳出改革、地方公共団体の人手不足を見据えた広域連携やデジタル技術の活用等の行政サービスの効率化の徹底が必要。 人口減少を前提として、持続可能な地域社会をデザインしていくことが必要。偏在性が小さい地方税体系の構築、少子化が進展する 中での教育の在り方などの行政サービスの質の向上に向けた対応の検討、既存インフラの有効活用や先端技術の実装加速等によるインフラ維持コストの増大への対応、まちづくり・農村等整備のコンパクト化の一層の推進が重要。 財政資源の有効活用のためにも、当該地域がどのような姿を目指すのかという前提を共有した上での省庁・分野横断的な対応が必要。

次回も続き「資料7 活力ある多様な地域社会を実現するための地方税財政改革についての意見 の概要(地方財政審議会)(松本議員提出資料)」からです。

令和5年第7回経済財政諮問会議 [2023年06月14日(Wed)]
令和5年第7回経済財政諮問会議(令和5年5月 29 日)
≪議事≫(1) 経済・財政一体改革(社会保障)、こども、マイナンバー (2) 経済財政運営と改革の基本方針(骨子案)について
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2023/0526/agenda.html
◎資料1−1 社会保障分野における経済・財政一体改革の重点課題とマイナンバー制度の 利活用拡大(有識者議員提出資料)
○少子化対策への更なる対応が求められる中、こども政策も含めた将来の全世代型社会保障の展望を示すとともに、その給付をどのような保険料・税・資産収入等の財源構成で賄うかについて検討していく必要がある。その前提として、徹底した歳出改革と保険料負担の上昇抑制がこれま で以上に求められている。こども政策の強化も徹底した歳出改革を大前提とすべき。また 今年度は、新型感染症が5類となり平時への移行を早急に進める必要があるとともに、次期診療 報酬・介護報酬の同時改定をはじめ懸案の改革を進める極めて重要な年であり、この機を捉えて 社会保障改革を一層強力に前進させるべく、骨太方針に向けて、以下提言する。
1.強靭で効率的な医療・介護提供体制の構築
→各地域で国民一人一人が健康で安心した暮らしを送ることができるよう、オンライン診療等のデ ジタル技術の更なる実装を含め、次の施策に取り組み、限られた資源の最適配分を実現すべき。⇒「地域医療構想」「かかりつけ医機能」「タスク・シフト/シェア」「地域包括ケアシステム」「介護の担い手不足やビジネスケアラー増大への共助の連携」など5点の構築。

2.医療・介護分野でのイノベーション創出に向けた環境整備→医療・介護は、新たな担い手の参入を通じたヘルスデータの積極活用(HX)や、国際競争力の ある新薬の開発等により、産業として高付加価値を生み出す可能性を秘めた分野。イノベーショ ンが創出されるよう規制・制度整備を推進し、その便益が、予防・健康づくりやサービスの効率 化・質の向上等、社会全体で享受されるようにすべき。⇒「電子カルテ標準化や全国医療情報プラットフォーム構築」「社会のために二次利用されること」「国民の健康づくり」「創薬力強化、薬価改定」

3.社会保障制度の安定性・持続性の確保→ 持続可能な社会保障制度を構築するには、経済再生と財政健全化の両立を図るというマクロ 政策運営と整合的な形で、支え手を増やしながら、中長期的に給付と負担のバランスが保たれる よう不断の見直しを行っていく必要がある。こうした観点から次の取組を着実に進めるべき。⇒「序文の認識に立ち、最新の将来推計人口や働き方の変化等を踏まえた上で、こども政策も 社会保障のフレームに含めた新たな給付・負担の将来見通しを明らかにすべき」「健康寿命が70歳を超える中、年齢にかかわらず仕事を通じて活躍し、支え手に回ることが重要。生産年齢人口の年齢区分の見直しとともに、年金を含め高齢者の就業を妨げない制度 整備を推進すべき。また、女性の労働参加・正規化も同様に重要、年収の壁の解消や 子育てと仕事の両立支援の強化を図るべき」「その上で、高齢化に伴う給付増⇒保険料負担の増加を抑制するため、給付・サー ビスの見直しに加え、所得・資産に即した応能負担の強化が必要。介護保険の給付と負担も、 応能負担等の考え方に沿って検討し、利用者2割負担の判断基準や1号保険料負担、多床 室の室料負担の見直しは早期に結論を得るべき」「政策効果の検証とそれによる有効な政策立案のためにはデータ整備が不可欠。医療法人の 財務情報のデータベースは、できるだけ早期に全ての保険医療機関へと対象を拡大すべき。 さらに、保険給付の内外にかかわらず医療・介護サービスを包括的に捕捉できる国際基準での速やかなデータ整備と公表の早期化を実現すべき」「医療サービスの質の地域差是正・標準化による一人当たり医療費の地域差半減、医 師・薬剤師の連携等によるリフィル処方箋の所期の効率化効果の達成、OTC医薬品・検査 薬の拡大、バイオシミラーの研究開発・普及促進等、改革工程表の施策を着実に推進すべき」。

4.DXの利活用を通じた徹底的な行財政効率化と効果的な子育て支援の推進→マイナンバーカードの申請の累計は岸田政権の下で約1億件に倍増し、ほぼ全ての国民に普及。この成果を最大限活用し、マイナンバー制度を核とする行政DXを本格化すべき。社会保障 の効率化や安定性・持続性の確保につなげるとともに、こども家庭庁とデジタル庁の連携により、 デジタルネイティブ中心の子育て家庭への効果的な支援に活用すべき。⇒「EBPMによるワイズスペ ンディングを徹底、サービスの利便性向上と費用抑制を両立すべき」「多様化する子育て家庭の状況に効率的かつきめ細かく応えるために」「実務を担う基礎自治体からの意見をよく聴きながら効率的な情報連携を可能とする機能を同時に搭載すべき」。

◎資料1−2 社会保障分野における経済・財政一体改革の重点課題とマイナンバー制度の 利活用拡大(参考資料)(有識者議員提出資料)
○⼈⼝社会構造の変化を踏まえた、取り組むべき社会保障改⾰
→今後85歳以上単⾝世帯が急増することから、その万全なケアを可能にする医療・介護を⼀体とした提供体制の構築が急務。同時に、DX等を活⽤して健康寿命を⾼め、⾼齢者が仕事を通じて活躍できる制度整備を進めることが重要。社会保障におけるDXを活⽤した改⾰等を通じて、徹底した歳出効率化と⾒直しに取り組むことが必要。⇒≪取り組むべき社会保障改⾰≫1〜4あり。
○地域医療構想→地域医療構想は都道府県の権限強化等だけでは進展が不⼗分。改めて実効性が担保できるよう法制上の措置を講ずべき。
・機能別病床数の推移と⾒込み→ 〜2025年の機能別の病床必要量に対して回復期への転換が不⼗分〜
・医療法で定められている知事の権限→ 〜都道府県の権限強化は⾏われてきたが、ほとんど発動されていない〜
○医薬品の在り⽅、介護保険の給付と負担の⾒直し→創薬⼒強化に向けて、新薬創出を強⼒に後押しするとともに、⻑期収載品の負担やその他薬剤⾃⼰負担の在り⽅等、保険制 度の持続性確保に向けた⾒直しを進めるべき。3年毎の介護保険制度の⾒直し時期に当たる今年は、⼈⼝要因による将来の給付増も⾒据え、応能負担の考え⽅に沿って着 実に給付と負担の⾒直しを進めるべき。
・⽇本の薬剤構成→ 〜特許が切れた⻑期収載品に依存するのではなく、新薬創出によって収益を上げ、その資⾦が新薬開発の再投資に充てられる構造への転換が必要〜
・年齢階層別の要介護認定率→〜要介護認定率は、年齢とともに上昇し85歳以上では半分超〜
・年齢階層別の⼀⼈当たり介護給付費 〜要介護認定率の上昇等から年齢に対し加速的に給付費は増加、 85歳以上⼈⼝の増加は介護給付費の⼤幅増につながる〜
○社会保障給付の前回将来⾒通しと進捗→こども政策を含めた将来の社会保障給付を、どのような保険料・税・資産収⼊等の財源構成で賄うか検討していく必要。まずは緊急包括⽀援交付⾦等、コロナ禍で拡⼤した⽀出は早急に平時の状態に戻すべき。その上で、少⼦化の加速やこども 政策の拡充等を反映した新たな給付・負担の将来⾒通しを明らかにすべき。
○DXの利活⽤を通じた徹底的な⾏財政効率化と効果的な⼦育て⽀援の推進→⼦育て⽀援などの社会保障分野を中⼼に、DXによる効率化の余地が⼤きい。DXの利活⽤を社会保障の効率化につなげ るべき。新たに発⾜したこども家庭庁はこども政策DXを⼤胆に推進し、新時代の⾏政サービスをきめ細かく提供すべき。
・デジタルによって効率化可能な合計業務時間 (泉⼤津市の事例) 〜⼦育て⽀援などの社会保障分野を中⼼にオンライン化・⾃動化可能な業務は多い〜
・地⽅⾃治体の保育所⼊所選考業務へのAI導⼊の効果 〜AI導⼊によって⼤幅な業務効率化やサービス向上が可能
・介護事業所へのセンサー導⼊による夜間の⾒守り時間の変化の推計 〜デジタル機器によって⼈⼿の代替が可能〜


◎資料2 全世代型社会保障の構築に向けた課題と対応(加藤臨時議員提出資料)
○全世代型社会保障構築の必要性
→本年4月に公表した将来推計人口による、少子化・人口減少の 流れを変えるとともに、これからも続く超高齢社会に備える必要。全世代型社会保障構築会議の報告書も踏まえ、必要な社会保障サービスが、必要な方に提供されるようにするとともに、全ての世代で、能力に応じて負担し、支え合う仕組みの構築に向けた取組を進める。 (※)先日、同報告書の内容も踏まえた、医療保険制度、医療提供体制、介護保険制度等に関する制度改革に係る法案が成立。
・将来推計人口(令和5年推計)のポイント→我が国人口⇒1億2,600万人(2020年)→8,700万人(2070年)に 減少。 平成29年の前回推計と比べると⇒平均寿命が延伸し、外国人の入国超過数が増加するため人口減少のペースは緩和する見通し、将来の出生率は低下(1.44→1.36)。
・全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するため の健康保険法等の一部を改正する法律の概要→「医療保険制度の改正(3点)」「医療提供体制、介護保険制度の改正(3点)」。

○こども・子育て政策の観点からの働き方改革等の推進→「長時間労働の抑制などを進め、夫婦ともに育 児・家事に参画することを後押しすること」「長時間労働の是正⇒社内の生産性向上のほか、家庭の子育て環境を改善し、こどもを持ちたい人が、こどもを産み、育てる ことにつながる。延長保育等のニーズの減少を通じ、社会的コスト(公費・事業主拠出金)の抑制効果も期待。今後とも企業の働き方改革の取組を強力に推進」「併せて、若い世代の所得向上等に向けて、賃上げの実現や、いわゆる年収の壁を意識せずに働くことができる取組等を進める」。
・近年の労働環境に関する状況→≪週60時間以上就業する雇用者数・割合の推移≫減少とている。≪年次有給休暇の取得状況の推移≫増加している。
・育児時間の出生への影響→≪夫の休日の家事・育児時間別にみた第2子以降の出生割合≫⇒ 夫の家事・育児時間が長いほど、第2子以降の出生割合も高い傾向。≪6歳未満の子どもを持つ夫の家事時間・育児時間の推移≫上昇している。

○社会保障分野(医療・介護等)における当面の課題→社会保障分野を支える人材や提供体制を確保しつつ、質の高い医療・介護等を効率的・効果的に提供できる体制を構築し、国 民目線での改革に取り組むという観点から、全世代型社会保障構築会議の報告書等も踏まえ、以下の取組を進めることが重要。 併せて、社会保障分野における歳出改革等に関する取組を継続。↓
・物価・賃金の伸びへの対応→足下では、物価が大きく上昇しており、公的価格の下、経 営状況の悪化につながっている。賃上げも他分野に比べ進まず、人材確保の観点からも報酬の大幅な増額が必要。⇒≪医療・介護分野における物価高騰の状況(前年(度)からの増加割合)≫≪本年度の賃上げの状況≫参照。2024年度の診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス等報 酬のトリプル改定において、医療と介護等の連携による サービスの質の向上と効率化を図る。
・提供体制の見直し・見える化の推進→地域医療構想⇒都道府県のデータ 分析体制等の支援により、2025年に向け強力に取組を推進。また、2040年を見据えた検討を進める。
今般の法改正に沿って、費用の見える化等の観点から、医 療法人や介護サービス事業者に関する経営情報のデータ ベースの構築を早急に進める。
・医薬品の安定供給・医療DXの推進→革新的な医薬品や医療ニーズの高い医薬品の日本への早期取り入れと医薬品の安定的な供給を図る観点から、流通や薬価制度、産業構造の検証などについて幅広く議論し、対応策を検討。   医療DX推進本部で工程表を決定の上、全国医療情報プ ラットフォームの創設、電子カルテ情報の標準化等、診療 報酬改定DXの3本柱の取組を強力に推進。

≪参考資料≫
○将来推計人口(令和5年推計)の概要↓
<今回の推計のポイント>
→前回推計より出生率は低下(1.44→1.36)。前回推計より平均寿命が延伸し外国人の入国超過数 も増加することで、総人口の人口減少は緩和。⇒「将来推計人口(令和5年中位推計)の結果」「合計特殊出生率の仮定(中位)」「平均寿命の仮定(中位)」「外国人の入国超過数の仮定」参照のこと。
・高齢者数(65歳以上人口)のピーク(時期、数)→ 2043年 3,953万人(前回推計 2042年 3,935万人)
・高齢化率(65歳以上人口割合)→ 緩やかに上昇を続け2070年に38.7% (前回推計 緩やかに上昇を続け2065年に38.4%
・総人口が1億人を下回る時期→ 2056年 (前回推計 2053年)

○全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律(令和5年法律第3 1号)の概要↓
・改正の趣旨
→全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するため、出産育児一時金に係る後期高齢者医療制度からの支援金の導入、後期高齢者医療制度における後期高齢者負担率の見直し、前期財政調整制度における報酬調整の導入、医療費適正化計画の実効性の確保のための見直し、かかりつけ医機能が発揮される制度整備、介護 保険者による介護情報の収集・提供等に係る事業の創設等の措置を講ずる。↓

・改正の概要↓
1.こども・子育て支援の拡充【健康保険法、船員保険法、国民健康保険法、高齢者の医療の確保に関する法律等】
→ @ 出産育児一時金の支給額を引き上げる(※)とともに、支給費用の一部を現役世代だけでなく後期高齢者医療制度も支援する仕組みとする。 (※)42万円→50万円に令和5年4月から引き上げ(政令)、出産費用の見える化を行う。 A 産前産後期間における国民健康保険料(税)を免除し、その免除相当額を国・都道府県・市町村で負担することとする。
2.高齢者医療を全世代で公平に支え合うための高齢者医療制度の見直し【健保法、高確法】→ @ 後期高齢者の医療給付費を後期高齢者と現役世代で公平に支え合うため、後期高齢者負担率の設定方法について、「後期高齢者一人当たりの保険料」と「現役世代 一人当たりの後期高齢者支援金」の伸び率が同じとなるよう見直す。 A 前期高齢者の医療給付費を保険者間で調整する仕組みにおいて、被用者保険者においては報酬水準に応じて調整する仕組みの導入等を行う。 健保連が行う財政が厳しい健保組合への交付金事業に対する財政支援の導入、被用者保険者の後期高齢者支援金等の負担が大きくなる場合の財政支援の拡充を行う。
3.医療保険制度の基盤強化等【健保法、船保法、国保法、高確法等】→ @ 都道府県医療費適正化計画について、計画に記載すべき事項を充実させるとともに、都道府県ごとに保険者協議会を必置として計画の策定・評価に関与する仕組み を導入。また、医療費適正化に向けた都道府県の役割及び責務の明確化等を行う。計画の目標設定に際しては、医療・介護サービスを効果的・効率的に組み合わせた提供や、かかりつけ医機能の確保の重要性に留意すること。 A 都道府県が策定する国民健康保険運営方針の運営期間を法定化(6年)し、医療費適正化や国保事務の標準化・広域化の推進に関する事項等を必須記載とする。 B 経過措置として存続する退職被保険者の医療給付費等を被用者保険者間で調整する仕組みについて、対象者の減少や保険者等の負担を踏まえて廃止する。
4.医療・介護の連携機能及び提供体制等の基盤強化【地域における医療及び介護の総合的な確保の促進に関する法律、医療法、介護保険法、高確法等】→ @ かかりつけ医機能について、国民への情報提供の強化や、かかりつけ医機能の報告に基づく地域での協議の仕組みを構築し、協議を踏まえて医療・介護の各種計画に反映する。 A 医療・介護サービスの質の向上を図るため、医療保険者と介護保険者が被保険者等に係る医療・介護情報の収集・提供等を行う事業を一体的に実施することとし、 介護保険者が行う当該事業を地域支援事業として位置付ける。 B 医療法人や介護サービス事業者に経営情報の報告義務を課した上で当該情報に係るデータベースを整備する。 C 地域医療連携推進法人制度について一定の要件のもと個人立の病院等や介護事業所等が参加できる仕組みを導入。 D 出資持分の定めのある医療法人が出資持分の定めのない医療法人に移行する際の計画の認定制度について、期限の延長(令和5年9月末→令和8年12月末)等を行う。 等
令和6年4月1日より施行。

次回も続き「資料3 こども政策DXの推進について(小倉臨時議員提出資料)」からです。

令和5年第6回経済財政諮問会議 [2023年05月29日(Mon)]
令和5年第6回経済財政諮問会議(令和5年5月15日) 
≪議事≫(1) マクロ経済運営(金融政策、物価等に関する集中審議) (2) 特別セッション(マクロ経済運営の在り方)
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2023/0515/agenda.html
◎資料7 マクロ経済運営の在り方〜米国で変わる専門家の認識〜(永濱利廣氏提出資料)
1.全米経済学会調査(高まる財政の役割) 〜良い赤字と悪い赤字の見分けが重要〜→「⼤きな財政⾚字は経済に悪影響を及ぼす」「景気循環のマネジメントはFRBに任せるべきで あり、積極的な財政政策は避けるべき」⇒賛成・反対の比較あり。
2.世界標準ではない単年度の税収中立〜「新しい資本主義」に必要な長期間の税収中立〜→日本は、単年度の税収中立に縛られ、減税 が使いにくく、補助金や給付金などの政府 の裁量的な支出に手段が限られやすい。 減税を実施すれば、需要が存在する分野 に資金が回り、企業のより生産的な支出を 誘発し、需要喚起の効果が高まる。
3.多年度中立に何を担保するか 〜参考になる米国の財政健全化目標〜↓

・サマーズハーバード大教授・ファーマン元 CEA委員長(2020 年12月):低金利で償還費 は低下するため、それを考慮しない「政府債務/GDP」はミスリーディング。予算均衡を目指すのではなく、利払をGDP比で抑える運営を行い、利払費が急騰またはGDP比2%以 上になるのを避けつつ、成長を促進する分野 に焦点を当てた財政政策を行うべき。
• イエレン財務長官(2021 年 3月):支出の余地 がどの程度残されているかを把握する最善 の指針は政府の利払い費のサイズであり、 債務残高は増えたものの、経済全体とし比 較した利払い費は多くない。
• ラウズCEA委員長(2021 年 5月):財政の健全性を図る上で最も重要なのは債務に対する実質的な利払いであり、債務が経済に負担 をかけ、他の投資を締め出しているかどうか はこれによって判断される

◎資料8 ポストコロナのマクロ経済政策運営(仲田泰祐氏提出資料)
○ポストコロナのマクロ経済政策運営→短期的には財政支出の正常化。中・長期的には、(物
価上昇圧力が持続的であれば)金融政策の 正常化⇒これらの二つの正常化を、過去三年間
に新型コロナ危機の影響を 特に大きく受けた人々に配慮しつつ進めることが理想的。

・コロナ禍の財政:コロナ危機時の政府支出の恒常化の懸念
・コロナ禍の社会経済:少子化加速・若者の人的資本形成の阻害の懸念
・コロナ禍の社会経済:女性・低所得層により大きな負の影響
・ポストコロナの物価上昇圧力→現在のインフレ率上昇とそれに伴うインフレ率期待上昇は持続的な2%目標達成の一助となり得る。現在のインフレ率上昇が需給ギャップの改善よりもコストプッシュ要因に依存しているのであれば、名目賃金が 上昇しても実質賃金は低下する可能。

◎資料9 マクロ経済運営の在り方(滝澤美帆氏提出資料)
○中長期展望
→過去の経済計画や中長期展 望で掲げられている目的や目 標は、現在の経済環境にお いても重要⇒環境問題、経済安全保 障、少子高齢・人口減少、 財政(歳出・歳入改革)など。  中長期的視野に基づく成長政策(長期的な経済成長経路 を望ましい方向へ誘導する政 策)の重要性の認識。
○深尾教授らによる実質賃金変動の要因分解→賃金の持続的上昇 実現のために⇒生産性向上 • 交易条件改善が必要
○マクロ経済運営の在り方→様々な指標に注目する必要。 生産性⇒ • 参入・退出率 • 労働市場の流動化指標(生産性の高い企業に人が移 動しているかどうか)、労働市場の供給制約の状況 • 市場の競争度 • 無形資産投資(情報化資産、革新的資産、経済的競争 能力(組織資本、人的資本など)) • 働き方関連の指標 など。   交易条件⇒ エネルギー政策、立地政策の効果 などの必要性。


◎資料10 新しい資本主義のマクロ経済運営の在り方(マルティン・シュルツ氏提出資料)
・ 新しい資本主義 – 構造的課題から社会的課題の解決能力構築まで
→成熟した経済では、家計が痛みを伴う構造改革を拒否するようになり、社会サービスへの 依存度が高まったため、資本主義はある程度の限界に達しました。伝統的なマクロ政策が 社会的要請のギャップをうめることに失敗し、新しい供給側の社会的課題解決能力の構築 のための政策が必要になっているようです。 ただし、市場メカニズムによる従来の政策とは 異なり、これらの政策には、共通したパーパス、課題の政策目標、および社会的な富の創 出に対する測定可能な成果が必要です。
・新しい資本主義 – 持続可能な所得成長という共通したパーパス→新しい資本主義のパーパスは、家計の持続可能な所得創出能力をサポートし、成長と分配 の好循環をもたらすことです。 既存の市場的政策は引き続き有効ですが、新しい政策は、 グリーン (GX)、デジタル (DX)、学習 (LX)、持続可能な変革 (SX) の目標を達成するため に、従来の産業政策から社会政策まで、政策横断的に取り組む必要があります
・新しい資本主義 – 社会変革のためのミッション志向の政策→効果的で持続可能な所得成長政策は、持続可能な政策目標を官民のパートナーシップの 共有ミッションにしていく必要があります。GX は、製品の設計から使用までのサプライ チェーン全体を改善して、ゼロ カーボン エミッション効率を達成します。 DX は、地域や中 小企業全体に革新的なテクノロジーを普及させます。 LX は、会社の職場を超えて労働者 の成人学習と専門化をサポートします。 SX は、女性のキャリア機会を増やして、社会的公 平性を高めます。

○新しい資本主義  パーパスとミッション志向の政策→GDP 成長(政府主導)中心。公平性。
○伝統的な資本主義  課題と方針→競争による個人の所得増加 の課題。貧富の格差。



◎資料11 経済財政諮問会議特別セッション提出資料(佐藤主光氏提出資料)
○景気対策と成長戦略
→「経済成長なくして財政再建なし」とは経済成長すれば財政再建できるではなく、経済成長しなければ財政再建も覚束ないということ・・・。
・前提としての経済成長(経済実現ケース)から 目標としての経済成長へ 打ち上げ花火景気対策(=短期の需要喚起)を続けても、中 長期の経済成長に繋がるわけではない。「規模ありき」の需要喚起から生産性の向上(供給サイド)へ。
・財政政策の目標を当面の景気対策としてのマ クロ需要の喚起から持続的成長力の向上に向 けた生産性向上(イノベーションの創出等)に転 換する

○財政赤字の帰結→安全保障・子育て支援など中長期的支出には恒久的な財源が必要。
・課税権を永遠に先延ばしすることはできない(国債への市場からの信認の源泉は課税権)。
・長期的には財政再建(増税・歳出カット等)・インフレで辻褄合わせ(面は金利上昇への
備えが必要(財政・経済への波及効果の推計と対策)ではないか?)

○将来のリスクに備える→将来世代が将来に生じうる新たなリスク(自然 災害、感染症、地政学的リスク)に対処できるだ けの財政余力の確保が必要
・現在の財政赤字は現在のリスク(コロナ禍・物 価高等)を一方的に将来世代に転嫁→(金利を超過した)成長だけで帳尻を合わせる のは楽観的(財政ギャンブル)

○人口減少に備える→• 「次元の異なる」少子化対策で人口減少のト レンドが劇的に変わるわけではない・
・日本の総人口は令和2(2020)年1億 2,615 万人から2070 年には 8,700 万人 (2020 年 時点の 約7割)国立社会保障・人口問題研究所「日本の将 来推計人口 (令和5年)」。
• 少子化対策とは別に人口減少に対応した経 済・(年金等)社会保障制度の再構築が必要。


◆令和5年会議情報一覧
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2023/index.htm#tab0518

次回は新たに「第28回「障害福祉サービス等報酬改定検討チーム(オンライン)」資料」からです。

令和5年第6回経済財政諮問会議 [2023年05月28日(Sun)]
令和5年第6回経済財政諮問会議(令和5年5月15日) 
≪議事≫(1) マクロ経済運営(金融政策、物価等に関する集中審議) (2) 特別セッション(マクロ経済運営の在り方)
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2023/0515/agenda.html
◎資料1 植田議員提出資料 ↓
○わが国の経済・物価情勢→(1)個人消費・伸び悩み、(2)輸出・生産・まあまあ、(3)設備投・上昇傾向、(4)消費者物価・家庭持ち出しが高い。
○展望レポート(2023年4月)の見通し
・政策委員見通しの中央値→実質GDP、 消費者物価指数⇒いずれも1以上。
・経済・物価見通しのリスク→【リスク要因】【リスクバランス】あり。
○「多角的なレビュー」と先行きの金融政策運営方針 <2023年4月28日決定>
・金融政策運営の「多角的なレビュー」→1年から1年半程度の時間をかけて行う。
・ 先行きの金融政策運営方針→基本方針を新たに記述⇒2%の「物 価安定の目標」。従来の方針を維持⇒必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講 じる。


◎資料2 金融政策、物価等に関する集中審議資料(内閣府) ↓
○デフレ脱却の考え⽅
:持続性・安定性の確認→デフレ脱却とは、「物価が持続的に下落する状況を脱し、再びそうした状況に戻る見込みがないこと」。足下、消費者物価や賃金、予想物価上昇率に上昇傾向が見られ、価格転嫁も徐々に進んでいるが、その背景や内 外の不確実性を十分踏まえ、物価や賃金の上昇が持続的・安定的なものとなるか各種関連指標(注)をきめ細かく見 ていく必要あり。⇒図1〜図4参照。

○デフレに関する4指標の動向→消費者物価は、輸入物価の影響を受けやすい財物価の伸び率が高い一方、賃金等の国内要因の影響を受けやす いサービス物価の伸び率は相対的に低めで推移。GDPデフレーターは、価格転嫁の進展と資源価格等の下落によ り、2022年10−12月期にプラスへ転じた。単位労働コストは小幅の上昇が続き、GDPギャップは振れを伴いながらもマイナス幅が縮小傾向。 各指標ともプラス方向の動きが見られるが、デフレ脱却に向けて、デフレに後戻りしないための持続性と安定性を確 認していく必要あり。⇒図5〜図8 参照。

○物価を取り巻く環境→今年度の賃上げ率は30年ぶりの高い水準となり、近年0%台半ばで推移していたベースアップ率も2%を超える見 込み。価格転嫁を通じたマークアップ率の確保や労働市場の円滑化等を通じた構造的賃上げの実現により、賃金 上昇を伴う物価の持続的・安定的な上昇を目指していく。 企業の設備投資意欲も高く、昨年度の投資計画(実績見込み)は2桁の伸び。国内投資の拡大やイノベーション促 進に取り組み、生産性向上を伴う潜在成長率の引上げ、中長期的な成長期待(期待成長率)の上昇を目指す。

◎資料3 参考資料(マクロ経済運営の在り方)(柳川議員提出資料) ↓
○「マクロ経済運営の在り方」に関する論点@A↓
1.賃⾦と物価、成⻑と分配の好循環について
マクロ経済運営の⽬指すべき⽅向性として、以下の点が提⽰された。 ↓

• マクロ経済運営→政府と⽇本銀⾏は緊密に連携し、賃⾦上昇を伴う形で、2%の 物価安定⽬標 と⺠需主導の経済成⻑ が持続的かつ安定的に実現できるよう取り組む。
• 輸⼊物価上昇による外⽣的な物価上昇から、賃⾦上昇やコストの適切な価格転嫁を通じた マークアップの確保を伴う賃⾦と物価の安定的な好循環を⽬指す。このため、政府は中⼩企業の価格転嫁対策、最低賃⾦の引上げパスの提⽰、適切な労働市場改⾰等を⾏う。
• あわせて、政府は、成⻑⼒の持続的な向上と家計所得の幅広い増加に裏打ちされた消費や 国内需要の持続的拡⼤が実現する「成⻑と分配の好循環」をマクロ経済運営の⽬標とし、 賃⾦・物価の好循環に持続性を確保する。
• その実現に向け、⽣産性向上とイノベーション促進に向けた⺠間投資を引き出すとともに、 ⼈への投資、GXなど社会課題の解決にも必要ながら過少投資となりやすい分野への官⺠ 連携した計画的な重点投資を推進する。
• こうした取組を通じ、⼈々の物価観(デフレ予想から緩やかな物価上昇予想)と成⻑期待 (潜在成⻑率の向上)をともに⾼め、デフレに後戻りしないとの確信を広く醸成する。
2.財政政策と⾦融政策のポリシーミックスについて ↓
具体的なポリシーミックスについては、以下の点が提⽰された。 ↓
(財政政策)
→ 財政政策は主として潜在成⻑率の引上げ と社会課題の解決に重点を置いた政策対応をする。 この観点から、⺠需を引き出し、社会課題を解決する中⻑期の計画的な投資を推進するととも に、それを担保するワイズスペンティングを徹底。  緊急時の財政出動においては、その⽀出を必要以上に⻑期化・恒常化させない仕組みを予め取 り⼊れる。特にコロナ禍で拡⼤した財政⽀出を早期正常化して平時の歳出規模に戻していく。
• 内外経済を巡る不確実性が⾼い中、適切なポリシーミックスを実現するためにも、持続可能な 財政構造を確⽴するための取組を着実に推進し、財政に関する信認を確保する。
(⾦融政策)→内外経済や⾦融市場を巡る不確実性が⾼い中にあっては、経済・物価・⾦融情勢に応じた機動的な対応が重要。 ⽇本銀⾏には、⾦融緩和による資産価格や⽣産性への影響にも⽬配りしつつ、賃⾦上昇を伴う 物価安定⽬標の達成を⽬指すことを期待。  そのうえで、賃⾦上昇を伴う形でインフレ率が持続的・安定的に2%程度に定着する下で、適切な⾦融政策の運営を期待する。
(ポリシーミックス)
→こうした取組を通じ、政府と⽇本銀⾏は緊密に連携し、⽬標を共有してその実現を⽬指す

○特別セッション・ヒアリングにおける主な御意見↓
(賃⾦と物価、成⻑と分配の好循環)↓

• 賃⾦・物価の好循環の⼆巡⽬以降に向け、物価⾯ではインフレ予想の定着、年⾦給付額・規制価格の物価スライド推進、賃⾦⾯では中⼩企業の価格転嫁、最低賃⾦の引上げ・先⾏きの引上げパス提⽰が課題。
• 賃⾦・物価の好循環実現により、企業の価格⽀配⼒、⾼付加価値商品開発、イノベーション、⾼賃⾦に向けた スキルアップと労働⽣産性上昇が期待。まずは賃⾦・物価の好循環を2025年までに定着できるよう政策資源 を集中。その定着を確認後、成⻑と分配の好循環に向けたミクロ施策への取組を本格化
(ポリシーミックス)↓
• 経済成⻑率=潜在成⻑率+短期・中期ショックによる景気変動。財政政策は主に潜在成⻑率を押し上げる役割、 ⾦融政策は景気変動に対応する⼿段。
• ポストコロナのマクロ政策運営→短期的には財政⽀出の正常化、中⻑期的には、物価上昇圧⼒が持続的であれば、⾦融政策の正常化。正常化についてはコロナ危機の影響を⼤きく受けた⼈々に配慮しつつ進める。
• 当⾯は超低⾦利政策を継続。政府は競争⼒と成⻑⼒を強化、ワイズスペンディングで社会問題を解決。 景気に配慮した財政健全化が重要。不況時に緊縮財政を⾏うリスクを避けるべき。 • 世界的低⾦利、デフレ、⾦余りという環境が変化。この変化を意識したマクロ経済運営をすべき。
(⾦融政策)↓
• 賃⾦・物価の好循環に向け、インフレ予想を定着させることが⼤事な局⾯。物価⽬標の柔軟化は不適切であり、 物価⽬標政策を堅持すべき。
• 量的・質的緩和の副作⽤として、不動産等の資産価格が⾼くなり、新規企業の参⼊や若い世帯の住宅取得が難しくなっている。⻑い⽬で⾒ると、⽣産性や総⽣産の成⻑を停滞させることになってしまう。
• 世界全体で2%以上のインフレが数年続くと予想される。⽇本もインフレ率が2%程度に定着すれば、量的・ 質的緩和は解除するのが望ましい。
• 物価と賃⾦の上昇が続けば、異次元の⾦融緩和政策の⾒直しも視野に⼊れるべき。


◎資料4 成長と安定のためのマクロ経済運営(清滝信宏氏提出資料) ↓
○量的•質的金融緩和の目的
:デフレを止める 過去10年間にデフレを止めて、1−2%程度のインフレを達成するの に一定程度の効果があった 1−2%のインフレを維持するのは、活発な財•労働市場と効果的な金融 政策のために重要。 しかし現在、世界全体でインフレが進行しており、欧米では政策金利の急上昇にもかかわらず、2%を超えるインフレが数年続くと予想される。
日本でも、円安と輸入物価の急騰から、目標値を超えるインフレが続い ている → 年金と預金に頼る老齢世帯の生活が苦しくなっている

○量的•質的金融緩和の問題点 ↓
長短金利差やリスクプレミアムが小さくなりすぎる
不動産等の資産価格が高くなりすぎる
→ 新規企業の参入や若い世帯の住宅取得が難しくなる → 生産性や 総生産の成長が停滞する。
1%以下の金利でなければ採算が取れないような投資をいくらしても、経済は成長しない 。長期金利を低く抑える政策も長く続けると、一方的な投機にさらされ国 が損をする。
 インフレ率が1−2%程度に定着すれば、量的•質的緩和は解除す るのが望ましい。
金融政策の判断は日銀が責任をもつべきだが、1990年代末以降のデフレの トラウマのために、政策判断が遅れてはいけない。
過去30年間、日本の労働生産性の上昇は他国に比べて低かった → 実質賃 金と非貿易財価格の上昇が他国より低くなる(バラッサ•サムエルソン効果)→ デフレになりやすい傾向があった。
他国と同程度の労働生産性の上昇を維持することで、デフレになりにくくなる
生産性向上に最も効果的なのは無形資産の蓄積と技術進歩。



◎資料5 消費者の物価・賃金予想と企業の価格転嫁(渡辺努氏提出資料) ↓
○消費者のインフレ予想は2022年春から顕著に改 善し、現時点では、欧米の消費者と大差ない

○企業は21年夏以降、コスト増の国内価格への 転嫁を進めている
○賃金は据え置きとの予想が依然として過半を占 めており、欧米との差は縮まっていない
○日銀のフォワードガイダンス (2023 年 4 月28日)→日本銀行は、内外の経済や金融市場を巡る不確実性がきわめて高い中、経済・物 価・金融情勢に応じて機動的に対応しつつ、粘り強く金融緩和を継続していくことで、 賃金の上昇を伴う形で、2%の「物価安定の目標」を持続的・安定的に実現すること を目指していく。↓
• 物価との対比で賃金の改善が遅れている現状にあって、FGに賃金への 言及が追加されたことは適切。
• 金融緩和の解除のタイミングは賃金の動向によって決まる可能性が高い。 以下の工夫によりFGの効果を高めることができる。→誰の賃金(大企業、中小企業、正規、非正規etc)、
どの賃金(所定内、 所定外etc)かを明示する。 物価には「 2%」という数値目標がある。これと同様に、賃金も数値的 な目途を示す。
• 政府による最低賃金の改定は賃金全般に影響を及ぼす。この点で、政 府と日銀の協調が必要。


◎資料6 物価・賃金とマクロ経済運営の在り方(福田慎一氏提出資料) ↓
○2000年代以降の日本経済の特徴
→名目賃金の低迷は日本固有 の特徴
○足元の賃上げの動向→他の主要国に比べると、上昇の勢いは十分ではない⇒これまで賃金が低迷してきたことを鑑みれば、持続的な賃上げの 流れを定着させることが重要。
○コロナ禍でも日本の賃金・物価の低迷 は顕著→日本は、賃上げを行っても、賃金・物 価スパイラルへの懸念は小さい。現状では、賃上げは、デフレ脱却の メリットの方が大きいのではないか。
○わが国で求められること→持続的な賃上げを実現するには、経済の構造改革が不可避。 政府は、競争力と成長力の強化に向けた取組を積極化すべき。特に、経済の新陳代謝の促進など、構造改革は不可欠。政府・日銀の「共同声明」の考え方は重要!⇒政府と日銀が一体となって取り 組むことが経済再生につながる。

次回も続き「資料7 マクロ経済運営の在り方〜米国で変わる専門家の認識〜」からです。

令和5年第4回経済財政諮問会議 [2023年05月04日(Thu)]
令和5年第4回経済財政諮問会議(令和5年4月18日)
≪議事≫ 特別セッション(目指すべきマクロ経済の構造と求められる政府の役割)
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2023/0418/agenda.html
◎資料8 経済財政諮問会議特別セッション提出資料(佐藤主光氏提出資料)
○其の1:財政規律とはコントロール↓

• コロナ禍・物価高を契機に補正予算・予備費を含む国の予算が膨張している。非常時において機動的な財 政政策は必要だが、問われるのは予算の規模と配分をコントロール出来ているかどうか? →財政規律=緊縮財政ではない。財政規律とはマクロ=財政規模とミクロ=予算配分へのコントロールである。
• マクロの規律とは経済が非常時から平時に回帰したときに速やかに非常時前の規模(高齢化による社会 保障費の自然増を勘案すれば元のトレンド)に戻す(一度拡げた風呂敷を閉じる)こと→非常時の政策(例:医療機関・中小企業、国内旅行等への支援、ガソリン・電気料金補助金)に充てる大型 の補正予算・予備費が常態化するならマクロ=規模のコントロールが出来ていないことになる。
• ミクロの財政規律とは
少子化対策(子育て支援)、国家安全保障、デジタル化・グリーン化など「新たな財政 ニーズ」に応じて既存の事業を見直すなど予算にメリハリをつけること→新たな財政ニーズを財政の拡大で賄うのではなく、他の事業の見直しの契機にする(Pay as you go)。

○其の2:無謬性を捨てた政策の効果検証が必要
• 近年、大型の補正予算・予備費など事前の査定(評価)や国会での審議が働き難くなっている。非常時に おける財政の機動性・柔軟性は必要としても事前の評価が難しいならば事後的な検証の徹底が求められる→事後的な検証は予算の使途に係る国民への説明責任を果たすとともに、非効率な(効果に乏しい)事業を 見直す契機にもなる。事後的検証は自己評価に留まらず、外部(第三者)の評価を取り入れる(例:行政事業レビュー公開プロセス、秋のレビュー等)。
• 国の政策はややもすれば無謬性に縛られて、誤りを認めないが、非常時の(効果が予め知られない)実験的な対応を可能にするためにも事後的検証(PDCAサイクル)を充実させるのが望ましい→加えて、経済状況が(デフレから物価高など)刻々と変化するなか、政策の随時の見直し=ギアチェンジが 求められる(非常時においても望ましい政策は状態に応じて変化する)。一度決めたことを変えられない(ギアチェンジが難しい)現状を改める。

○其の3:財源論は選択肢の問題
• 少子化対策(子育て支援)、安全保障など恒久的な財政支出には恒久的な財源を充てるのが原則→赤字国債は恒久財源にはならない(「フリーランチ」は存在しない)。赤字国債への信認は将来の課税権によって裏付けられている。(経済成長による自然増収を期待するだ けではなく、償還財源を確実の確保する必要)。 赤字国債に恒久的に依存する(=将来的にも課税権を行使しない)のであれば、国債は市場から信認され ない 。
• 財源は税・保険料が望ましいか否か(望ましくなければ、赤字国債に依存)ではなく、いずれの税・保険料を 充てるかの選択の問題である→少子化対策の財源の是非(社会保険料か否か)ではなく、財源の選択肢(消費税か社会保険料か)を国民 に示すべき。恒久財源の確保のタイミングは経済動向を見極め、当面は国債発行するとしても、その償還財源としての 恒久財源(消費税・社会保険料等)を予め定めておく。

○留意点
• 「規模ありき」の需要喚起から生産性の向上(供給サイド)へ →財政政策の目標を当面の景気対策としてのマクロ需要の喚起から持続的成長力の向上に向けた生産性向上(イノベーションの創出等)に転換する
• 働き手のセイフティーネットが必要→諸外国の「給付付き税額控除}(英国のユニバーサルクレジット)のような勤労者(=社会の支え手)を支えるセイフティーネットの整備が不可欠。
• コミットメント装置が必要→財政規律(マクロ・ミクロ)は「べき論」で済ませるのではなく、規律=コントロールを担保するルール=仕組みを予算制度に組み込む(効果検証・Pay as you go原則など)。
• 備えあれば憂いなし・・・→今後、金利・物価が上昇したときの家計・企業、財政に及ぼす影響を試算の上、対応策を予め検討しておく


◎資料9 政策コミュニケーション・政策検証(仲田泰祐氏提出資料)
○マクロ経済運営における「今後の見通し」の活用

・ 生産的な政策議論のためには現実的な見通しといくつかのリスク シナリオの提示が有用→楽観シナリオだけでなく悲観シナリオ。不確実性の定量化・可視化。過去の見通しと現実の乖離の提示。
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/FOMC20171213tealbooka20171201.pdf
https://www.federalreserve.gov/econres/feds/monetary-policy-and-economic-performance-since-the-financial-crisis.htm  →金融経済ディスカッションシリーズ(FEDS)

○検証プロセスの改善
・「デフレ脱却と持続的な経済成長の実現のための政府・日本銀行 の政策連携について(共同声明)」(平成25年1月22日)
→「経済財政諮問会議は、金融政策を含むマクロ経済政策運営の状況、その下での物価安定の目標に照らした物価の現状と今後の見通し、雇用情勢を含む経済・財政状況、経済構造改革の取組状況などについて、定期的に検証を行うものとする。」↓
https://www.mof.go.jp/public_relations/statement/other/20130122.pdf
・検証の現状 →経済諮問会議における年4回の「金融政策、物価等に関する集中審議」、年 2回の「中長期の経済財政に関する試算」
・ 検討に値する検証の改善→労働市場に関する指標、格差に関する指標等の提示(名目賃金・実質賃金(全体)、労働生産性、労働参加率、名目賃金・実 質賃金(性別・学歴別・所得別)等)。中長期シナリオ提示の際には不確実性の提示。過去のシナリオと現実の乖離の提示。
・ 数年に一度、定量的な分析も活用した「本格的な」検証作業をする 機会を設けることも有用→財政金融政策に関して、政府エコノミスト、大学研究者、民間エ コノミスト等による膨大な定量的な政策効果検証分析が存在。そういった知見の整理、それらに基づく政策効果・副作用の総合的判断をまとめることも今後の政策を考える上で有用。政策現場以外の人々と協力しながらの検証も検討に値する。
・参考:「Review of Monetary Policy Strategy, Tools, and Communications」
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/review-of-monetary-policystrategy-tools-and-communications.htm
・ 検証プロセス自体が一般国民とのコミュニケーションとして役立つ可能性
・2024年には、「経済・財政一体改革委員会」が2025年の基礎的 財政収支黒字化目標に向けた10年間の取組の総括予定。 ここでも「本格的な」検証作業が理想的。

◆令和5年会議情報一覧↓
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2023/index.html

次回は新たに「新しい時代の働き方に関する研究会 第5回資料」からです。

令和5年第4回経済財政諮問会議 [2023年05月03日(Wed)]
令和5年第4回経済財政諮問会議(令和5年4月18日)
≪議事≫ 特別セッション(目指すべきマクロ経済の構造と求められる政府の役割)
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2023/0418/agenda.html
◎資料3 賃金と物価の好循環をいかにして実現するか(渡辺努氏提出資料)
○過去1年間(2022年春以降)の 特筆すべき変化
→❶ 消費者のインフレ予想の上昇 ❷ 消費者の値上げ耐性の改善 ❸ 企業の価格転嫁の拡がり ❹ 労働者の賃上げ要求の強まり
・「慢性デフレ」のサイクル(90年代後半以降の四半世紀)➜➜ 賃金と物価が持続的かつ緩やかに上昇する健全なサイクル →健全な価格メカニズム を取り戻す

○賃金・物価サイクルの二巡目以降の 実現に向けた政府・日銀の役割
≪物価面の課題≫
・インフレ予想の定着↓
-「インフレを知らない世代」が初めてインフレを経験 右矢印1インフレ予想が社会に定着す  る可能性は高まった。
-日銀の物価目標政策の維持が必須須(物価目標の「柔軟化」は不適切)
・年金給付額の物価スライド
・規制価格の物価スライド」
≪賃金面の課題≫
• 中小企業の価格転嫁を促進
• 最低賃金の引き上げ

– 最低賃金の決定に当たってマクロの要因を考慮すべき
– 先行き数年間の最低賃金のパス(の目安)を政府がアナウンス→最低賃金の先行きパ
スを明示することで、2024年以降の賃上げ交渉で 中小企業の労働者を後押し。企業の中長期の経営計画に賃上げ・人件費の増加パスが織り込まれ、 社会が賃上げを当然のことと受け止める素地が拡大。

○「賃金・物価」の好循環を「成長・分配」の好循環に つなげるための戦略的な手順
• 賃金と物価の好循環を定着させることができれば、企業のイノベーション、労働者のス
キルアップに望ましい効果が期待できる

– 企業はプライシングパワーをもつようになる。優れた新商品を開発し高い値段で売る
インセ ンティブをもつ。それによるイノベーションの加速が期待できる。
– 労働者は、高い賃金を得るために、スキルアップに積極的に取り組むインセンティブを持つ。 労働生産性の上昇が期待できる。
• 賃金・物価の好循環は成長・分配の好循環につながる面がある。しかし、片方の循環の実現が他 方に直結するわけではない。成長・分配の好循環の実現には、ミクロの施策が別途、必要。
– 2つの好循環の主役はあくまで民間であり、政府・日銀は初期の加速など、補助的な役割に 徹すべき。

– 政府・日銀の役割分担としては、賃金・物価の好循環は、「ノミナル」の好循環であ
り、主とし て日銀が担当(ただし、政府にも最低賃金など一定の役割)。一方、成長・分配の好循環は、「リアル」の好循環であり、主として政府が対応。
• 2つの好循環について、この先の戦略的な手順としては以下が考えられる。
– 賃金・物価の好循環は2022年春から既に始まっており、1巡目は一応成功した。目下
の喫緊 の課題は、これを定着させる(=2巡目、3巡目を着実に実現させる)こと。これは、今後2−3 年の短期決戦。ここに政策資源を集中させ、2025年を目途に、好循環を定着させたい。
– 賃金・物価の好循環の定着を確認した後で、成長と分配の好循環を実現するためのミクロの 施策への取り組みを加速させる。


◎資料4 サプライサイド経済構造と求められる政府の役割 (マルティン・シュルツ氏提出資料)
○サプライサイド経済構造と求められる政府の役割
・新しい資本主義 - サプライサイドの機会と課題→
新しい資本主義は、従来の市場取引を超えて、社会の所得創出能力を強化します。そのためには、複 雑なサプライサイドの政策が必要ではあるものの、対象範囲が広すぎて効果が出ない、逆に限定しす ぎて社会的インパクトがない、あるいは費用がかかりすぎて持続可能でないといったリスクもあります。 この問題を解決するにはどうすればよいのでしょうか。
・政策の成果や付加価値に着目する 経済のサプライサイドでは、政府はもっと企業のように考えて行動する必要があります。つまり、政府 も、付加価値やイノベーションを生み出し、測定可能な成果をださなければなりません。マクロ指標やビ ジネスライクなKPI(重要業績評価指標)を利用して政策目標を策定し、政策実行を確認する必要
があります。もちろん、政府が企業のようにといっても、大変困難です。均衡を保たなくてはならない対象が あまりに多種多様であるからです。さらにほとんどのマクロ指標はゆっくりとしか反応せず、具体的な情 報を与えてくれない上、ミクロ指標は扱いが複雑です。今のところ、金融政策においてのみ、その政策 目的(インフレ率)と手段(金利)が明確に定義されています。以上から、新しい資本主義を実行する政府は、複雑な環境下でも革新的に動いている企業のやりかたから学ぶことで問題を解決できるのでは ないでしょうか。つまり、各政策の目的を明確に定義し、それを実行する際に柔軟性と変革の余地を与 える。効果をあげるには、それぞれの目的と共通項(共通したパーパス)に基づく政策構築し、持続して 価値を高めることが重要です。
・明確に定義された政策目標による持続的な所得増加→新しい資本主義の中心的な目的は、持続可能な所得面での成長です。この目的を達成するために、 DX、GX、SXなど、より多くの政策で、革新性から効率性、社会的公平性に至るまで、それぞれに目的 を必要とします。そして、その実現に向けて国民の信頼を得るためには、わかりやすい目的、目に見える政策の実行、早期の付加価値創出が最も重要になります。
⇒次ページの「持続可能な 所得面での成長」(6つの共有化必要) 参照。


◎資料5 目指すべきマクロ経済の構造と求められる政府の役割(滝澤美帆氏提出資料)
○投資関連のデータ→2つのデータ
⇒・民間の投資額は1994年と同水準。公的投資額は94年の7割弱。 ・投資が増加しないため、設備年齢も上昇。 ・予算が限られている中で、政府は生産性向上に資するインフラの維持・整備のための 投資を優先的に行う必要。
○市場構造関連のデータ→法人数及び欠損法人割合の推移(過去30年)⇒・足元の欠損法人割合はピーク時よりも低いが、バブル崩壊直後の平成4年より高い(法人税収も平成4年時より少ない)。 ・全体への支援ではなく、「よい」企業を選択し、支援する必要。
○市場構造関連のデータ(つづき)→足元の市場占有度の推移⇒・日本は米国と異なり市場占有度が低下していたが、足元やや上昇。 ・成長志向の企業を支援し、そうした企業へ人など資源が移動することで、効率的 な生産活動が実現する可能性


◎資料6 目指すべきマクロ経済の構造と求められる政府の役割(永濱利廣氏提出資料)
1.世界標準的なPB黒字化とは 〜需給要因を除いた構造的PB黒字化を目指すべき〜

・世界標準は構造的プライマリーバランス→不況期には⾚字許容も好況期でも構造⾚字減らす。
・主要先進国のGDPギャップ→ 〜⽇本だけ需要不⾜〜

2.構造的に税収上振れの可能性 〜23年度は30年ぶり賃上げで更なる上振れも〜
・⼀般会計税収( 4〜翌2⽉集計)→ 〜インフレ・円安・雇⽤所得改善で⼤幅増
・22年度の税収⼤幅上振れの可能性 〜消費税上振れで安定的に上振れか〜

3.景気に配慮した財政健全化が重要 〜動き始めた好循環の芽を摘まないために〜
・消費者物価インフレ率と春闘賃上げ率→ 〜重要なのは来年の春闘〜
・消費増税前後の負担増と実質家計消費→ 〜負担増は規模とタイミングが重要〜


◎資料7 成長と分配の好循環の実現に向けたマクロ経済運営 ― 長期停滞からの脱却に向けた供給サイドの経済学(福田慎一氏提出資料)
○⽇本の⻑期停滞(低成⻑、低⾦利、低インフレ)↓

• ⽇本は、 1980年代まで⾼い経済成⻑
• 1990年代初頭、⽇本の⼀⼈当たりGDPは 世界トップクラス(1993年国連統計では 7位、⽶国(11位)を上回る)
• しかし、1990年代以降、先進主要国の中 でも最も成⻑率が低い国の1つに!
• 2021年国連統計では⽇本の⼀⼈当たり GDPは世界の33位(⽶国は9位)
○ 原因は潜在成⻑率の低下↓
• 1983年度から90年度平均:4.04%(⽇銀)
• 2010年度以降の平均:0.41%(⽇銀)
• 今後、労働⼈⼝の減少で潜在成⻑率はさら に低下する⾒込み • 危機感の共有が必要
・危機感の共有が必要
• 技術進歩や労働の質の向上による⽣産性 の改善
• ⽬先の景気対策ではなく、中⻑期的観点 からの供給サイド強化が重要!

○現代版の供給重視経済学( MSSE )の重要性
• 経済成⻑の実現に向け、⼈的資本の蓄積、研究開 発の促進、環境対策の推進などを優先
•「新しい資本主義」と多くの点で共通した考え⽅ • かつての供給重視経済学=サプライサイド・エコ ノミクス(SSE)とは異なる!
• SSE=新⾃由主義:⼩さな政府、減税や規制緩和 で⺠間投資を喚起 • 例. レーガノミクス、サッチャーの経済政策 • MSSEでは、政府の役割が重要。
○なぜいまMSSEなのか?→ かつてはなかった新しい課題の出現: GX、DX,、格差問題。これらは市場だけでは解決できない。政府の役割:「市場の失敗」を解決。 GX:地球温暖化は市場の失敗(外部不経済、共有地の悲劇)。DX: ネットワーク外部性、情報の利活⽤。格差問題:オートメーション化、デジタ ル化、AI の出現
○⽇本に適⽤する際の留意点→きわめて厳しい財政事情の中でのMSSE。⽇本の政府債務:数字上わが国の現状は きわめて深刻⇒ きわめて厳しい財政事情の中でMSSE の考え⽅をどのように実現していくか?
○ワイズ・スペンディングの重要性→政策⽬標を明確にし、効果が確認された⽀出のみを実施すべき。 費⽤対効果が⼩さい歳出を削減。 • EBPM(証拠に基づく政策⽴案)。 • 政策のPDCAサイクル(計画→実⾏→評価→ 改善)。
○供給⼒を⾼める政策と景気対策の違い→短期の景気対策:需要サイドの経済学⇒深刻な不況期に、需要不⾜を補うため、⼀定 の⾦額の財政⽀出が必要。 常時⾏うべきものではない。 ⻑期の経済成⻑:供給サイドの経済学⇒インフラ投資、⼦育て・教育・温暖化対策。持続的に⾏う必要だが、⾦額ありきではない。
○これまでの⽇本経済の悪循環→潜在成⻑ 率の低下のサイクル。
○今の⽇本に求められること→悪循環を断ち切り中⻑期的な成⻑⼒の強化によって潜在成⻑率を⾼めること。 今後、より⼀層少⼦⾼齢化が進⾏すること が⾒込まれるなか、早急な対応が必要。 ⺠間の投資や労働供給を誘発する財政政策。 脱炭素化による新しい産業の創設。ただし、MSSEを理由に、政府債務を過度 に拡⼤することは避けるべき。
○供給⼒を⾼める財政政策→ 景気対策とは異なり、必要な財政⽀出は⾦額 ありきではない! しばしば、補助⾦だけでなく、課税も有効。 例.脱炭素化は、補助⾦だけではなく、炭素 税によっても実現可能。• 賢い財政⽀出の余地は⼤きい!
○MSSEでも、市場のイノベーションが最⼤の成⻑の源泉→かつてのSSE(=新⾃由主義)の成果。 サッチャーの経済改⾰:ゆりかごから墓場まで ⇒英国病⇒経済の低迷⇒経済改革⇒成長率回復。 この考え⽅は、そのままは当てはまらない。しかし、SSEが主張した「市場重視の考え方」は依然として重要 • マーケット・フレンドリーな政府の介入が重要。

次回も続き「資料8 経済財政諮問会議特別セッション提出資料」からです。

令和5年第4回経済財政諮問会議 [2023年05月02日(Tue)]
令和5年第4回経済財政諮問会議(令和5年4月18日)
≪議事≫ 特別セッション(目指すべきマクロ経済の構造と求められる政府の役割)
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2023/0418/agenda.html
◎資料1 参考資料(目指すべきマクロ経済の構造と求められる政府の役割) (柳川議員提出資料)
○「目指すべきマクロ経済の構造と求められる政府の役割」に関する論点@AB↓
1.「新しい資本主義」を通じた持続的な成⻑を可能とする経済構造↓

• サプライサイド強化:社会的課題解決、持続的な経済成⻑につながる「質の⾼い」投資の促進→⺠間が主体となって質の⾼い投資を⾏うことが原則。政府は、⺠間投資を誘発するために、予算、税制、規制改⾰等を適切に組み合わせた上で、企業の予⾒可能性を⾼めるため、多年度のフレームとして提⽰                                                                   
• 2つの好循環の実現: 成⻑の果実が賃⾦に分配され、セーフティネット等による暮らしの安⼼の下でそれが消費へとつながる「成⻑と分配の好循環」。企業が賃⾦コストを価格に反映することで収益を確保し、それが更に賃⾦に分配されるという「賃⾦と物価の好循環」。
⇒⇒「成⻑と分配の好循環」と「賃⾦と物価の好循環」を⽣み出す経済構造(イメージ)参照。
2.政府の政策展開・財政規律の在り⽅↓
• 政策の有効性確保には、補正予算を含め、EBPM(エビデンスに基づく政策立案)を通じたワイズスペンディングの徹底が必要。その際、政策の将来にわたる効果を⾒据えた「動的思考」も踏まえて多年度で政策を評価し、優先順位を明確にすべき。
• 新規事業のみならず既存事業のPDCAも強化し、社会保障を含めて歳出改⾰を徹底する必要。 新しい財政ニーズが⽣まれれば、既存事業の⾒直しにより、時代の変化に即した財政資源のシフトを図るべき。
• 現在の歳出改⾰努⼒の枠組みが2024年度を期限としていることを踏まえれば、しっかりとした 財政規律を内外に⽰せるよう、PB⿊字化等財政健全化⽬標の実現とその先を⾒据えた、新たな中期経済財政フレームの策定が必要。2024年度に改⾰の進捗を点検すべく、今年度から評 価・分析の強化を実施すべき。

3.市場経済を補完する政府の役割↓
• こども政策や社会保障は、少⼦⾼齢化・⼈⼝減少等に伴う国⼒の縮⼩への対応、あるいは公平 で活⼒ある社会形成を図る上で重要な基盤。⼦供から⾼齢者まで誰も取り残さないよう機能強 化を図るとともに、医療・介護を成⻑分野とする規制緩和や⾼齢者の就業を妨げない制度整備 を推進すべき。同時に、全世代型社会保障改⾰の推進、費⽤の適正化や必要な財源の確保を通 じて持続性の確保を図るべき。
• 地⽅⾏財政は、広域連携により⾃治体ごとの⼈⼿不⾜に対応し、デジタルを活⽤した⾏政サー ビスの効率化を徹底すべき。インフラ整備においても、広域的・戦略的な管理が重要であり、 費⽤対効果に基づき、⽼朽化するインフラの予防保全型メンテナンスを効果的に進めるべき。
• 国・地⽅⼀体となって、地⽅創⽣臨時交付⾦、緊急包括⽀援交付⾦等、コロナ禍で肥⼤化した 政府⽀出の正常化(特に補正予算・予備費の縮⼩)をできるだけ早急かつ確実に実⾏すべき。
4.好循環実現により導かれるマクロ経済↓
• ⼈⼝減少、過少投資下では停滞した経済状況に陥る可能性が⾼くなる中で、「成⻑と分配の好循 環」と「賃⾦と物価の好循環」を⾞の両輪とする経済の実現に向けて取り組むことにより、持続的 成⻑を可能とする以下のようなマクロ経済が導かれる。
⇒好循環実現に向けた⺠間の主体的取組と政府のサポートにより導かれるマクロ経済の姿 参照。

○(参考1)経済主体別のISバランス(→経済全体の投資(investment)と貯蓄(saving)のバランスのこと)→・我が国は、バブル崩壊以降、企業が収支黒字(貯蓄超過)となり、余剰資金を保有する状態に。その反面、家計の収 支黒字は小幅となり、一般政府は大きな収支赤字から脱却できずにいる。・持続的な経済成長に向けて、政府によるサポートの下で、民間における賃金への分配や国内投資の強化が実現す ることで、企業は収支赤字(投資超過)方向にシフト、政府は民間の活動が活発化する中で収支を改善という姿を目指していくべき。
○(参考2)企業部門と家計部門のISバランス→・企業は、国内の余剰資金を活用し、近年、対外直接投資を拡大。今後、GX、経済安全保障等に取り組み、国内投資 の増強に結び付ける必要。  ・ 家計の収支黒字は、1990年代以降、高齢化の影響等により縮小。人への投資により労働生産性を高め、抑制されて きた賃金への分配を強化すべき。また、高齢化が更に進む中で家計所得の拡大を図るには、資産所得の増加も重要
○(参考3)政府部門のISバランス→・政府は、短期的には政府が呼び水となる支出を行って民間投資を誘発しつつも、民間の予見性向上と財政健全化に 向けて計画的な財政運営を行うべき。 ・財政状況の改善には、国のみならず、地域における公的サービスの提供者である地方も一体となって取り組む必要。 まずは、コロナ禍での支出増の正常化をできるだけ早急かつ確実に実施すべ。

○特別セッション・ヒアリングにおける主な御意見@A 目指すべき経済社会構造と財政規律の在り方↓
(⽬指すべき経済社会構造の在り⽅) ↓
• 新しい資本主義の根幹→成⻑とともに、社会資本(社会保障・教育等の制度資本、インフラ等の公共資本、地球環 境等の⾃然資本)の充実による安定した⽣活を確保すること。マイクロレベル(家計・企業)での安定には、社会保 障と教育が重要。

• 少⼦⾼齢化や深刻な財政⾚字の蓄積等により、将来に希望を持てないことが、⺠間が資⾦を貯め込む原因。構造改⾰ を通じて、これを解決することが⾮常に重要。
• ⾼齢者社会→成⻑や⽣産性が鈍化し所得分配も不均等となり、より質の⾼い⽣活や環境が求められるが、⾼齢世帯は、⻑期的な成⻑よりも、損失や痛みを恐れて構造改⾰を拒否する傾向。
• 市場原理に任せていてはうまくいかない教育を含めた社会資本について、どの部分が⽼朽化しているのかを検討して、 どの分野に資⾦を投⼊していくべきかを⽇本として考える必要がある。 • 新しい資本主義は、⼈への投資を通じた労働⽣産性上昇、所得格差の縮⼩、環境保護等の理念で共通点が多い。格差→結果の格差が全くない社会では、がんばる意欲が失われる。機会の格差が⼩さい社会、貧困率がある程 度低い社会が望ましい。
• 物価と賃⾦→⽇本は両⽅が動かない状況が四半世紀にわたって続いてきたが、⾜下では、消費者のインフレ予想、企業の価格転嫁、賃上げの動き等、前向きな変化が⽣じている。この変化を定着させ、賃⾦と物価の好循環を 実現する必要がある
• 社会保障→⼈々の中で⼀番弱いグループである幼児と⾼齢者への⽀援が重要。介護と年⾦は⾼齢者にセーフティネットを提供する意味で不可⽋。良質な医療は持続的な成⻑と補完的。
• 医療・介護は、費⽤の適正化に加え、この分野を成⻑センターにする必要。新しい担い⼿の参⼊や異業種間の連携を 促す規制緩和や、オンライン診療等のITの実装が必要。
• 社会保障の財源→社会保険料は勤労世代に⼤きな負担。事業主負担もあり、雇⽤に対して悪影響が⽣じる。 負担の公平や効率性の観点からは消費税の方が妥当。消費税には、国内⽴地企業の国際競争力を阻害しないというメ リットもある。
•少子高齢化の問題は世界の中でも日本がかなり突出しているという状況を認識すべき。団塊ジュニア世代が退職する2040年代頃を見据え抜本的な改革により解決していくことが非常に重要。 • 地⽅の国からの⾃⽴を促すためにも、地⽅財政計画や地⽅予算等の費⽬名の統⼀を含め、国から地⽅への資⾦の流れを⾒える化すべき。費⽤対効果を検証し、PDCAを回すことが必要。
•⼈⼝減少の中、市町村が地⽅分権の受け⽫となるのは限界が来ている。地⽅は、モノ・カネに⽐べ、⼈が不⾜。複数 の⾃治体が専⾨⼈材を共有するなどの広域連携で対応する必要。
• 公共投資→新規投資が強調されがちだが、古くなったインフラの維持は効率が良い。限界⽣産性やコスト ベネフィットの⾼いものを選択する必要。
• 政府が、基礎研究への助成に加え、幼児教育を中⼼に良質な基礎教育を全ての⼦供に提供することが重要。

(財政規律の在り⽅)↓
• 従来のデフレ下と異なり、世界的な⾦利やエネルギー価格の上昇等、潮⽬が⼤きく変化する中で、社会の⾼齢化に備え、危機に対する財政余⼒を確保する必要。
• 財政⾚字は、世代間の不平等を助⻑。⽇本は⾼齢者に資産が偏在している上、政府は借⾦により将来世代に負担を残している。世代間の不平等は現在のセーフティネットでは解消が困難。 • 家計部⾨の資⾦余剰が、政府の財政⾚字を⽀えているが、今後、⾼齢化に伴い資⾦余剰は減少。 • 財政運営→需要を埋める対応から供給サイドに働きかけるものに(量から質に)転換すべき。補正予算を含め⽀出に優 先順位をつけ、その効果(⽣産性向上のようなアウトカム)の検証により、ワイズスペンディングを徹底すべき。
• 企業の過剰貯蓄に対して、政府の⽀出を呼び⽔として課題解決や成⻑に資する投資を誘発することが重要。税制優遇 を活⽤すべきであり、その際、海外のように多年度で税収を中⽴にする視点が重要
• ポストコロナの政策運営→コロナ危機の政府⽀出拡⼤の正常化に時間がかかるリスクがある。財政政策の正 常化をコロナの影響を⼤きく受けた⼈々に配慮しつつ進めることが理想的。
• 新しい財政ニーズが⽣まれれば、既存の財政ニーズを⾒直す必要。古い事業に対する検証が乏しい。 経済が不調な中で財政健全化を進めると、成⻑の⾜を引っ張って税収が改善しないことになる。GDPギャップがあ る程度改善するまでは経済成⻑を優先することが重要。
• 財政健全化⽬標→当⾯は2025年度のPB⿊字化は避けては通れない。この達成が無理であれば検証し、コ ロナ等で拡⼤した⽀出の継続が原因の場合は歳出を適正化すべき。
• 財政健全化→平均寿命が⻑くなる下では、働く期間の延⻑で対応することが⾃然。それでも⾜りなければ、課税ベースの広い消費税で対応。 • 財政健全化に向けては、世代間の格差を是正させる⼀定の負担 や資産を踏まえた応能負担が必要。
• PBは2025年度以降も重要な指標。
債務残高対GDP比を管理する上で、金利と成長は経済要因で決まることから、 政策で決められるのはPBのみ。それを目標とすることは理に適っている。 国際標準に照らし、構造的PBや純利払費、粗債務に加えて純債務も参照すべき。
• 経済・財政⼀体改⾰推進委員会で2025年PB⿊字化⽬標に向けたこれまでの取組を総括する中で、定量的な 分析も活⽤した本格的な検証作業の機会を設けることが理想的。


◎資料2 マクロ経済と財政(清滝信宏氏提出資料)
○⽇本の貯蓄と投資のバランス
→家計部⾨の資⾦余剰は、1990年代は40兆円ほどあったが、 2000年以降はコロナ危機の期間以外10兆から20兆円の間。 ⺠間⾮⾦融法⼈企業部⾨は、1990年代初めまで40兆円ほど の資⾦不⾜、2000年頃から余剰が拡⼤、2014年以降は資 ⾦余剰と海外直接投資は10兆から20兆円ほどでほぼ均衡。 ⼀般政府部⾨は、1990年代初めより⼤幅な資⾦不⾜が続いており、10兆から50兆円ほどの間を変動している。 今後、⾼齢化と共に家計部⾨の資⾦余剰が減少すると予想される。 持続的な貯蓄∙投資(経常収⽀)のバランスのためには、対内直接 投資の促進と財政⾚字の縮⼩が必要。

○財政と社会保障の持続→社会保障制度を充実して困難に陥った家計を保護することは、悪い ショックが起こるたびに補助⾦を出すより効率的で国⺠を安⼼させる。 財政の悪化が続くと、社会保障制度に対する国⺠の不安が⾼まる。また 国債∙社債の格付けが低下し、海外で展開する⽇本企業に不利になる。 国債の安全性が疑われ、流動性プレミアムが縮⼩すると、国債利⼦率が 上昇する。⽇銀が準備⾦に⽀払う⾦利も上がり、国⺠負担が増える。 そうなる前に、財政再建の⾒通しを⽴てる必要がある。 働く期間を延⻑すると、財政収⼊が増え⽀出も減る。 それでも不⼗分なら、課税ベースの広い⼀般消費税の増税が適当。

○従来のマクロ経済と財政の予測は楽観的すぎる
新成⻑戦略(鳩⼭2009.12 )2020年度の名⽬GDP650兆円を⽬標(実現値540兆円)。
⽇本再⽣戦略( 野⽥2012.7)今後8年間名⽬GDP成⻑率3%(0.9%) 。
⽇本再興戦略(安倍2013.6)今後10年間名⽬GDP成⻑率3%(1.2%) 。
⽇本再興戦略2016(安倍2016.6 ) 2020年頃、名⽬GDP600兆円 (550兆円) 。
2012ー2022暦年の平均成⻑率:名⽬1.0%, 実質0.6% 。

OECDによると今後20年間の20−69歳の⼈⼝は年率1%で減少。就業者 は⼥性∙⾼齢者の労働参加率上昇と移⺠の増加を考慮しても年率0.5%程度減少すると予想される。

成⻑戦略を⽴てるのは良いが、財政計画には2023−33暦年の平均成⻑率を 名⽬1.5%, 実質0.6%程度に想定するのが堅実。

次回も続き「資料3 賃金と物価の好循環をいかにして実現するか」からです。

令和5年第3回経済財政諮問会議 [2023年04月27日(Thu)]
令和5年第3回経済財政諮問会議(令和5年3月30日)
≪議事≫ 特別セッション(成長と分配の好循環の実現)
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2023/0330/agenda.html
◎資料3 成長と分配の好循環の実現(マルティン・シュルツ氏提出資料)
○成長と分配の好循環の実現 - 新しい資本主義
・「新しい資本主義」の何が新しいのか?→成長の好循環のビジョンは、GDP の成長から持続可能な所得の創出に移行。

・米国の「モダン・サプライサイド・エコノミクス」やEUの「グリーン・ディール」の先を目指して→持続可能な変革には、投資の先にある社会資本の構築に よって、成長の質を向上させる必要があります。
・家族の幸福と持続可能な成長が重要な要素に→若い経済は、若い世代の「アニマルスピリッツ」を土台に、創造的破壊と構造改革で成長を支えること ができます。成熟した経済は、成長の質を向上させ、ライフサイクル全体で持続可能な視点を提供す る必要があります。まず、若年世帯が子育てとキャリア形成を両立できることが必要です。成長のた めには、配偶者の所得が機会均等に成長する必要があります。退職後も生産的でアクティブである には、生涯学習の機会と生産的な政府サービスが鍵となります。持続可能な成長政策は、成熟した 経済のライフサイクル全体をサポートします

○新しい資本主義 - 政府および 市場経済 –→政府政策⇒GDP 市場経済成長から家計所得(ウエルビーイング)にシフト。
・成長経済 (資本主義)→GDP成長のサポート⇒成熟経済では、構造改革を非効率なマクロ政策に置き換える傾向があり、その結果、公的債務が増大。成長のためには、グローバル化、イノベーション、技術分散がよ り重要になる
・成熟経済 (新しい資本主義)→高齢化社会では生産性と技術の導入が鈍化し所得分配が乖離し行政サービス、レジリエンス、持続可能性がより重要になる⇒政府は、高齢化する労働力に合せた能力開発により、持続可能な 所得成長を支援。 持続可能性、若い家族への支援、革新的なデジタルサービスで成 長の質を向上させる。
○成熟した経済への挑戦-異なる所得の成長
・GDP成長 vs 家計所得→富の集中や企業投資の低迷、社会サービスの不透明化 によって、家計に分配されない経済の割合が高くなる。 →高齢世帯の所得創出能力の支援、未利用資産の共有、 付加価値の高い社会サービスの提供などが必要。
・世帯収入、共稼ぎ 男女共同参画 (1,000円)→女性の労働収入の増加は、世帯収入を増やす上で最も重要、達成可能な方法。ジェンダー による相対的所得平等 (スウェーデンと同様)な場合、 世帯収入が200万円以上増やせる。世帯収入が800 万円超では、子ども数も1人以上であり、少子化対策 にもつながる


◎資料4 成長と分配の好循環の実現に向けた施策の検討(滝澤美帆氏提出資料)
○賃金と生産性→実質賃金の変化は労働の生産性と労働の分配率の変化・その他要因で。
○労働分配率の変化(B)→付加価値で決まる。付加価値は人件費・営業と純益・その他で。
○成長と分配の好循環の実現に向けて→労働生産性、インフラ整備など政府の積極的関与が必要。


◎資料5 成長と分配の好循環の実現 〜企業部門の過剰貯蓄是正が必要〜(永濱利廣氏提出資料) ↓
1.成長と分配の好循環のメルクマール 〜問題は企業の過剰貯蓄と低い労働分配率

・企業の資⾦過不⾜国際⽐較 〜⽇本の異常な過剰貯蓄で⻑期停滞〜
・労働分配率の国際⽐較 〜⽇本は構造的に低⽔準〜
2.30年ぶり賃上げを持続可能とするために 〜海外の給料は「上がる」ものではなく「上げる」もの〜
・主要国の失業率と賃⾦上昇率 (2010〜2020年平均)〜転職者への所得税優遇も効果的か〜
・理由別⾮正規職員(2022年) 〜⼥性正規化は週休四⽇制推進が効果的か〜
3.効果的な対内直接投資増と生産国内回帰 〜TSMC誘致で進む賃上げと人材育成〜
・G7の対内直接投資残⾼/GDP 〜2030年倍増(12 %)達成でも最下位〜
・ドル円と海外⽣産⽐率 〜アベノミクス以降ピークアウトする 海外⽣産⽐率〜

◎資料6 「新しい資本主義」に関するコメント(仲田泰祐氏提出資料)
○ポリシーミックス→経済成長率=潜在成長率+短期・中期ショックによる景気変動⇒財政政策:潜在成長率の押し上げ
、Automatic Stabilizerを通し た景気変動対応(特に金利下方制約下において)。金融政策:景気変動対応(金融政策も潜在成長率とは全く無関係ではないことには留意)。
○「新しい資本主義」→1.潜在成長率を上げる試み 2.社会として望ましい価値観を促進する試み( この二つは必ずしも同一でないが必ずしも相互排他的でもない)↓
○「新しい資本主義」↓
・Modern Supply Side Economicsとの共通点
減税と規制緩和による成長を目指したSupply Side Economicsと 違い、Modern Supply Side Economicsは財政支出を用いて労働 供給・労働生産性の向上を通した成長、所得格差縮小、環境保 護を目指す。 「新しい資本主義」で強調されているいくつかの項目(人的投資、 スタートアップ加速、GX投資)はModern Supply Side Economics で強調されている項目と整合的 。「新しい資本主義」はModern Supply Side Economicsよりも多くの Agendaに触れており、より総合的。  Modern Supply Side Economicsに対する批判は「新しい資本主 義」にも当てはまり得る。実際に打たれる政策が意図した効果を生み出さない可能性。政府の投資が民間の投資よりもリターンが低い可能性。Gramm and Solon (2022): https://www.aei.org/op‐eds/the‐folly‐of‐modern‐supply‐side‐economics/ 。こういった批判は「新しい資本主義」に限らず財政政策全般に当てはまり得る。
・「新しい資本主義」 の社会的インパクトを最大化するためには…→具体的な施策一つ一つにどのような効果が期待されるかを提示。 具体的な施策一つ一つの事後検証。期待されていた効果が実際にあったか。可能な限り因果的効果を検証することが理想。検証結果によって政策を臨機応変に調整。効果の小さい政策に関しては縮小・撤廃を検討。効果の大きい政策は継続・拡大を検討。


◎資料7 持続的な成長と分配のためのマクロ経済政策(清滝信宏氏提出資料)
○新しい資本主義の経済的な意義
→ 市場経済は充実した社会資本により国⺠⽣活に安定と幸福をもたらす 企業や個⼈の私的利益の追求は、公共の利益に貢献してこそ正当化され 持続する。
社会資本には、制度資本、公共資本、⾃然資本がある。 教育と医療は最も⼤事な制度資本 公共資本は拡⼤より維持が重要 どのように社会資本を充実させるかは、歴史的背景と国⺠の選択に依存。
○持続的な成⻑と分配のためには教育と技能の蓄積が重要→すべての⼦供が良質の基礎教育を受けることは、⾼等教育や成⼈教育の⽀援より、 ⽣活⽔準の持続的向上に結びつく。 転職が⼀般化するなか、企業は終⾝雇⽤に基づかない新たな技能の蓄積のシステ ムを模索すべき。
技能の蓄積は、⺠間の主導で⾏うのが効率的 分配で⼀番⼤切なのは弱者を保護することで、富裕層∙中間層の間の再配分では ない 幼児に良質な医療と教育を提供する → 少⼦⾼齢化対策としても有効 ⽼齢者に介護と年⾦を通じてセイフティネットを提供す
○⽇本の実情に応じた政策で成⻑と分配を持続させる
⽇本の企業や⼈が海外に進出するとともに、海外の企業や⼈が⽇本 に来ることが必要
。 バイデン流の環境改善のための公共投資や補助⾦政策は、相対的に経 済規模の⼩さい⽇本では⾮効率。 政府は基礎研究を助成するとともに、炭素税を通じて地球環境の持続 に貢献する

◎配付資料1 経済・財政一体改革推進委員会 委員名簿(案)→12名

次回は新たに「第11回目安制度の在り方に関する全員協議会 資料」からです。

令和5年第3回経済財政諮問会議 [2023年04月26日(Wed)]
令和5年第3回経済財政諮問会議(令和5年3月30日)
≪議事≫ 特別セッション(成長と分配の好循環の実現)
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2023/0330/agenda.html
◎資料1 参考資料(成長と分配の好循環)(柳川議員提出資料)
○特別セッション・ヒアリングを踏まえた 「成長と分配の好循環の実現」の論点@A
1.「新しい資本主義」の経済学的意義↓
・「安定的なマクロ経済運営の下、経済政策を効果的に活用、政府が供給サイドに働きかけ、民間投資を喚起する取組が重要視」されてきている (参考1)。その背景として、人への投資、GX、経済安全保障など、外部効果が大きく、過少投資となりやすい分野が、今後の成長のカギとなっていることがあげられる。
・G7サミット⇒GXや経済安全保障など各国が共通して直面する課題を軸に、政府が供 給サイドに働きかける「新しい資本主義」の重要性とこうした取組への国際連携の必要性を訴え、G7間での政策協調を進める契機にすべき。
・我が国は、適切なポリシーミックスの下、これまでの需要創出策から転換し、こうした分野にリソースを集中していくべき。また、施策の手段は、最も効果的かつ持続的に成 果が上げられるよう、補助金(歳出)だけでなく、税制、規制改革等の手段を適切に組み合 わせるべき。
・施策の実施⇒ワイズスペンディング等適切な施策を実現するため事前のイン パクト評価(EBPM)、事後の検証とその結果に基づく臨機応変な政策調整(PDCA)を徹底すべき。

2.「成長と分配の好循環の実現」の着実な推進に向けて
・成長と分配の好循環の実現→成長の果実が賃金・所得として幅広く国民に還元されると ともに、社会課題の解決を通じた包摂的成長(Inclusive Growth)の実現により、国民生活の安心・安定を高め、好循環の持続性を高めていくことが重要。⇒人への投資が特に重要。ただしリスキリングなどの教育訓練分野のみならず、転職円滑化、働き方や雇用慣行改革など包括的な教育・労働市場改革を粘り強く進 める必要。
・こうした観点から、「成長と分配の好循環」の総合的な進捗状況について、従来のGDP、 雇用・物価などマクロ経済の動きのみならず、成長・分配の両面から、多面的な経済主体の 動きを定期的に確認してはどうか。

・まずは、好循環の進捗を、以下のようないくつかの指標で量的・質的観点からチェックし、その結果を施策にフィードバックすることで、好循環を持続・拡大すべき(参考2)。
(成長) ↓
一人当たり実質GDP→成長について、人口増減要因を省いた効果を確認
ウェルビーイング→経済社会の質を示す
(分配) ↓
賃金・雇用者への分配を見ることで一人当たり実質GDP成長率や労働生産性変化と比較。 中間層の所得割合→所得分布の偏り(格差)を評価


○(参考1−1)「新しい資本主義」の経済学的意義に関連する米欧識者コメント
・新しいサプライサイド経済学の考え方→国の潜在成長力は労働力の規模、その生産性、 資源の再生可能性、政治体制の安定性に依存。 新しいサプライサイド経済学は、格差や環境へのダメージを軽減しながら労働供給を高め、生産 性を向上させることによって経済成長を引き上 げていく。本質的に、持続不可能な高成長の達成 に焦点を当てるのではなく、代わりに包摂的でグリーンな成長を求めていく。(イェレン財務長官ダボス会議スピーチ)
・生産能力投資・政府の重要性→経済の長期的な生産能力は、労働力の成長・熟練、質の高い物的インフラ、生産プロセスの効率性などの要因に依存⇒経済能力の向上に投資することで、中長期的に多くの需要に対応できるようになし、経済ショックに対する耐性を強化、インフレリスクを最小化することができる。   民間セクターと異なり公的セクターは(市場全 体が効率化するような)経済全体を考慮した投資 を行うようデザインされている⇒更に、民間 セクターが低投資に陥った場合、公的セクターは人的・物的資本への投資に踏み出しうる。(2023年米国大統領経済報告)
・投資における政府の重要性→財政政策は金融政策より強力なマクロ安定化装置であるのみならず、政府は資本を配分する金融システムから分かれているただ一つの存在。 もし我々が純粋な金融の論理から形作られるだけの技術やインフラ投資を望まないのであれば、 ミッション指向型の・・・公的投資戦略の必要性は避 けられない。(ロバート・スキデルスキー(英 ウォーリック大学名誉教授))
・新自由主義に代わりうる 新たな経済政策パラダイム→政治的な立場の左右を問わず、新自由主義に とって代わりうる新たな経済政策のパラダイムが 現れている。新たなフレームワークは政府や地方 組織に、良質な仕事、気候変動、より安定的で強 靭な社会を維持する更に大きな責任を求め、現在 のパラダイムよりも市場や大企業により懐疑的である。 (ダニ・ロドリック(ハーバード大学教授)

○(参考1−2)主要先進国の経済財政政策→日本、米国、EU、ドイツ、英国による「直面する主な課題」「主な政策対応」の一覧に。

○(参考2−1)成長と分配の好循環をマクロで確認する指標→【成長】一人当たり実質GDP、【分配】一人当たり賃金の推移→一人当たりでみた実質成長率は、安定的に1%程度で推移し、各国と同程度で推移。 一人当たり実質賃金の伸び⇒日本では実質成長率を大きく下回るが、各国では実質成長率と近い伸び。名目賃 金では、日本では実質成長率も下回るが、各国は成長率を上回る。

○(参考2−2)成長と分配の質を確認する指標↓
【成長】ウェルビーイング(生活満足度等)、【分配】分厚い中間層(中間所得層の構成割合や中位所得の推移)→一人当たり実質GDPと主観的ウェルビーイング指標は正の関係。日本は幸福度が相対的に低い。 日本は中間所得層の所得の占める割合が他国より高い。但し近年、日本の中位所得は低下している。


○(補足資料1)特別セッション・ヒアリングにおける主な御意見@ 「新しい資本主義」の経済学的な意義と今後強化していくべき分野 ↓
(「新しい資本主義」の経済学的意義)
→・過去のサプライサイド政策は、小さな政府・市場による経済活性化。他方、減税や市場任せでなく政府が 一定の役割を果たすことが「モダン」の意義。政府が戦略を持って将来の成長に向けた取組を進めるべき。 ・新しい資本主義は、社会的に望ましい価値を促進しながら、潜在成長率を引き上げる試み。MSSEよりも、スタートアップやGX等の政策アジェンダは総合的。 ・米国モデルは、古典的産業政策であり多額の資金が必要。財政的な余裕がない日欧では、民間資金を上手く統合すべき。新しい資本主義の特徴は、GDPから所得にフォーカスしていること。 ・我が国の状況は米国より欧州に近く、欧州のSocial Capitalismの方が近いのではないか。
(今後強化すべき分野・取組)→・企業の異常な過剰貯蓄を、政府が明確な方向を示しながら呼び水となって、将来の課題解決や成長に資する投資に誘発させることが最大のポイント。 ・これまでの需給ギャップをどう埋めるかという議論からサプライサイドに政策目標をシフトして、生産性 向上や技術革新、スタートアップ増加、労働参加率上昇などを目標とすべき。 ・持続的成長のためには、技術進歩と無形資産の蓄積が効果的であり、無形資産の中では人が身に付けた技 能が一番重要。 ・規制緩和により、スタートアップやIT事業者・異業種などの新たな担い手からの新規参入を促し、新規 性のあるイノベーションを発生させ、生産性を向上させるべき。 ・人への投資や社会資本のマネジメントは、市場任せでは上手くいかない。新しい資本主義の特性は、人への 投資。中小企業における人への投資の促進や個人ごとに異なるニーズへの対応を考えるべき。 ・バイデン流の環境改善のための公共投資や補助金政策は、相対的に経済規模の小さい日本では非効率であり、炭素税の導入が効果的。 ・具体的施策の期待される効果を提示するとともに、事後に施策の費用対効果を検証すべき。

○(補足資料1)特別セッション・ヒアリングにおける主な御意見➁ 「成長と分配の好循環」の実現に向けた方策
(「人への投資」のための取組)
→・成長と分配の好循環の実現には、賃金の上昇が必要。名目・実質賃金、労働生産性、労働分配率、労働参 加率などを政策運営中でチェックしていくべき。 ・成長と分配の好循環の実現に必要で重要な要素は、配偶者や高齢世帯などへのリスキリングと就労促進によ る家計所得の向上。日本には、男女格差是正やデジタル活用、高齢社会への対応に潜在力あり。 ・政府が、基礎研究への助成に加え、幼児教育を中心に良質な基礎教育を全ての子供に提供することが重要。 ・転職が一般化する中で、終身雇用に基づかない新たな技能の蓄積のシステムを模索すべき。 ・生産性の高い企業への労働者の移動の円滑化や転職者への思い切った支援により、労働市場の流動化を進め、労働分配率や生産性の高い企業のシェアを向上させるべき。 ・都合の良い時間に働ける正社員の枠を思い切って拡大させることで、女性や非正規労働者の賃金を向上さ せるべき。・サービス産業の労働生産性を向上させるためには、有形資産投資を増やすことで資本装備率を上げること や、正規労働者・非正規労働者の差がない形で人への投資の支援を受けられるようにすることが必要。
(成長力強化に向けた取組)→・高齢化が進む中でマクロの資金余剰は縮小することが予想される。対内直接投資が海外直接投資に比べて 少ないこともデフレ要因。 ・重要物資の生産拠点の空洞化への対応が重要。生産拠点の国内回帰や対内直接投資の促進に加え、エネルギーの自給率向上や、規制緩和による一次産業の生産性向上を通じた自給率向上を進めるべき。 ・政府は古典的な中小企業支援政策から移行し、高い技術を有する中堅・中小企業の設備投資や研究開発投資、輸出の促進を支援するなど、成長企業支援にフォーカスした政策を積極的に導入すべき。 ・ベンチャー等の増加には、資金支援だけでなく、セーフティネットの充実にも取り組むべき。

○(補足資料2)成長と分配の好循環を確認する指標→「名目・実質賃金、労働生産性、労働分配率、労働参加率などを政策運営中でチェックしていくべき。」 ⇒成長と分配の両面について、その量と質を確認
【成長面】の「指標」と「 指標の示す意味・検証のポイント」、その根拠の「 統計」あり。
【分配面】も「指標」と「 指標の示す意味・検証のポイント」、その根拠の「 統計」あり。


◎資料2 成長と分配の好循環の実現に向けたマクロ経済運営の在り方 ― モダン・サプライサイド・エコノミクス(MSSE)の考え方(福田慎一氏提出資料)
○モダン・サプライサイド・エコノミクス(MSSE)の重要性
ー⽶国イエレン財務⻑官が中⼼に進めているバイデン政権の成⻑戦略
• MSSE=現代版の供給重視経済学: 経済成⻑の実現に向けて、⼈的資本 の蓄積、インフラの整備、研究開発 の促進、環境対策の推進などを優先 • 「新しい資本主義」とも多くの点で 共通した考え⽅ • かつての供給重視経済学=サプライ サイド・エコノミクス(SSE)とは ⼤きく異なる! • SSE=新⾃由主義:⼩さな政府、減 税や規制緩和で⺠間投資を喚起 • 例. レーガノミクス、サッチャーの 経済政策 • MSSE:潜在成⻑率を中⻑期的に押 し上げるには、それを⽀える政府の 役割も重要
• なぜいまMSSEなのか? • かつてはなかった新しい課題の出現:GX、 DX,、格差問題 • GXやDXによる産業の育成や、有能な労働⼒ の確保は、今後の成⻑のエンジン。 政府の役割:「市場の失敗」を解決 • GX:地球温暖化は市場の失敗(外部不経済、 共有地の悲劇) ⇒ ⾃由競争では脱炭素化は実現できない • DX: ネットワークの外部性、情報の利活⽤ ⇒ 政府による共通基盤・制度整備 • 格差問題:オートメーション化、デジタル化、 AI の出現 ⇒ さまざまな労働の価値を低める ⇒ ⼈的資本を⾼めるための再教育の必要性

○⽇本の特殊事情:きわめて厳しい財政事情の中でのMSSE
• ⽇本の政府債務 • 数字上わが国の現状はきわめて深刻。 • 巨額な政府債務は、成⻑にマイナスであ るだけでなく、世代間の格差を拡⼤
• MSSE • 潜在成⻑率を中⻑期的に押し上げるため の政府⽀出の重要性 • ⽀出を⼀律に削減する緊縮財政は好ましくない。 • ⺠間の投資や労働供給を誘発する政府⽀ 出は必要。 • 脱炭素化ための補助⾦ • 少⼦化の流れに⻭⽌めをかけるための対 策も不可⽋。 ⇒ きわめて厳しい財政事情の中でMSSEの 考え⽅をどのように実現していくか?
• 賢い財政⽀出(ワイズ・スペンディング) • 政策⽬標を明確にし、効果が確認された⽀ 出のみを実施すべき。 • 実現は難しいがやるしかない! • 財源 • まずは費⽤対効果が⼩さい歳出を削減。 • 社会保障関係費の抑制も避けられない。 • しかし、わが国の政府債務は、それだけで は到底解消できない規模。 • 今後起こりうる危機に備え、平時のうちに 財政の健全化が必要。 • 増税や社会保険料の引き上げの道筋を⽰す ことは、危機を未然に防ぐと同時に、将来 世代の負担軽減という点から不可避。 • 炭素税によるGX経済移⾏債の償還財源

○MSSEは財政⾚字を容認する理論ではない! マクロ経済学における2つの考え⽅↓
•⻑期の経済成⻑:供給サイドの経済学 • インフラ投資、⼦育て・教育・温暖化対策 ⇒ 政府の役割が重要! • 潜在成⻑率を中⻑期的に押し上げ • 政府債務拡⼤は限定的 • 短期の景気対策:需要サイドの経済学=ケ インズ経済学のアプローチ • 不況期に、需要不⾜を補うため、財政⽀出 の拡⼤や⾦融緩和が必要 • 景気が回復した場合には、過去の政府債務 を償還し、⾦融緩和もやめることが重要 • しかし、景気回復後の債務償還が不⼗分に なる傾向 • ⽇銀の異次元の⾦融緩和も、政府債務拡⼤ につながりやすい ⇒中⻑期的な成⻑にはむしろマイナス
• MSSEを理由に、政府債務を過度に拡⼤すること は避けるべき! • MSSEでも、市場経済における競争がイノベー ションの源泉 • 政府の役割は、「市場の失敗」を是正すること に限定すべき。 • 政府による市場への過度の介⼊は、成⻑にはマ イナス • かつてのSSE(=新⾃由主義)が主張した「規制緩和」は依然として重要 • 「市場」ができることは、「市場」に任せるこ とが重要 • 市場メカニズムは、本源的には効率的 • 政府の機能は、市場を補完することに限定 • 効果が確認された政府⽀出のみを実施 • 市場と政府による最適なポリシーミックス。

次回も続き「資料3 成長と分配の好循環の実現(マルティン・シュルツ氏提出資料)」からです。

令和4年第16回経済財政諮問会議 [2023年01月13日(Fri)]
令和4年第16回経済財政諮問会議(令和4年12月16日)
≪議事≫(1) 令和5年度の経済見通し (2) 中長期の経済財政運営 (3) 新経済・財政再生計画 改革工程表の改定
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2022/1222/agenda.html
◎資料3−1 新経済・財政再生計画 改革工程表 2022 概要
○全体総括表↓

・社会保障→医療資源の地域差の解消の適正化に向けた取り組み、DXの課題が必要。
・社会資本整備等→全体的にPPP/PFIのPKI値の上昇、インフラ維持管理、不動産IDの活用等、さらなる一層の取り組みが必要。
・地方行財政改革等→自治体業務・経営改革の見える化、デジタル化による歳出効率化への取り組みは進展しているものの、地方創生臨時交付金事業の見える化や効率化について一層の取り組み必要。
・文教科学技術→GIGAスクール構想について支援は進みつつあるが、研究時間の確保に向けた重点的な取り組みが重要。
○以下、「社会保障、参考図表(社会保障)」、「社会資本整備等、参考図表(社会資本整備等)」「地方行財政改革等、参考図表(地方行財政改革等)」「文教科学技術、参考図表(文教科学技術)」を参照のこと。
○新たな拡充を要する政策課題のPDCA構築に向けたポイント
○「マイナンバー利活用拡大に向けたロードマップ」について


◎資料3−2 新経済・財政再生計画 改革工程表 2022
1.社会保障
○社会保障 1.医療・介護分野におけるDXの推進↓
・政策目標
→医療・介護分野でのDX(デジタルトランスフォーメーション)を通じたサービスの効率化・質の向上を実現することにより、国民の保健医療・介護の向上を図るとともに、最適な医療・介護を実現するための基盤整備を推進する
・工程(取組・所管府省、実施時期)→1〜14まで。2023年から2025までの計画。
○社会保障 2.予防・健康づくりの推進
・政策目標
→社会全体の活力を維持していく基盤⇒予防・健康づくりの推進や高齢者の就業・社会参加率の向上等の観点から、2040 年までに健康寿命を男女ともに 3年以上延伸し75 歳以上とすることを目指す。具体的には、先進事例の横展開やインセンティブの積極活用等を通じて糖尿病等の生活習慣病の予防・重症 化予防や認知症の予防等に重点的に取り組む。 ■2040 年までに健康寿命を男女ともに3年以上延伸し75 歳以上とする。
・工程(取組・所管府省、実施時期)→15〜31まで。2023年から2025までの計画。
○社会保障 3.多様な就労・社会参加
・政策目標→生涯現役社会を目指し、高齢者、女性をはじめとして多様な就労・社会参加を促進するため、働き方の多様化に応じた年金受給開始時期の選択肢の拡大、被 用者保険の適用拡大について検討を進めるとともに、元気で働く意欲のある高齢者の雇用機会の更なる拡大に向けた環境を整備する。
・工程(取組・所管府省、実施時期)→32〜34まで。2023年から2025までの計画。
○社会保障 4.医療・福祉サービス改革
・政策目標→持続可能な社会保障制度の実現に向け、医療・介護提供体制の効率化を促進する、医療・福祉サービスの生産性向上・質の向上を図るため、地域医 療構想に示された病床の機能分化・連携や介護医療院への移行等を着実に進める、人口減少の中にあって少ない人手で効率的なサービスが提供できるよう、AIの実装、ロボット・IoT・センサーの活用、データヘルスの推進など、テクノロジーの徹底活用を図る。これらにより、医療費・介護費の適正化並びに一 人当たり医療費の地域差半減及び介護費の地域差縮減を目指す。 ■一人当たり医療費の地域差半減  ■一人当たり介護費の地域差縮減
・工程(取組・所管府省、実施時期)→35〜59まで。2023年から2025までの計画。
○社会保障 5.給付と負担の見直し
・政策目標 高齢化や現役世代の急減という人口構造の変化の中でも、国民皆保険を持続可能な制度としていくため、勤労世代の高齢者医療への負担状況にも配慮しつ つ、必要な保険給付をできるだけ効率的に提供しながら、自助、共助、公助の範囲も見直しを図る。
・工程(取組・所管府省、実施時期)→60〜69まで。2023年から2025までの計画。
○社会保障 6.再生計画の改革工程表の全 44 項目の着実な推進
・工程(取組・所管府省、実施時期)→@〜㊷まで。2023年から2025までの計画。

2.社会資本整備等
○社会資本整備等 1.公共投資における効率化・重点化と担い手確保
・政策目標
→公共投資における効率化・重点化と担い手を確保するため、i-Construction の推進、中長期的な担い手確保に向けた取組、費用便益分析、効率的・効果 的な老朽化対策等に取り組む。 i-Construction について、調査・測量から設計、施工、検査、維持管理・更新までの全ての建設生産プロセスにおける建設現場の生産性を2割向上することを目指す。  また、インフラメンテナンスについて、各省庁が公表する「予防保全等の導入による維持管理・更新費の縮減見通し」を念頭に、中長期のトータルコストの抑制を 目指す。
・工程(取組・所管府省、実施時期)→1〜6まで。2023年から2025までの計画。
○社会資本整備等 2.PPP/PFIの推進
・政策目標
→ 民間の資金・ノウハウを最大限活用するとともに、公的負担の最小化を図るため、「PPP/PFI推進アクションプラン」に基づき、多様なPPP/PFIの 活用を重点的に推進するとともに、地方部へのノウハウの浸透を図るなど、地方公共団体等がPPP/PFIに取り組みやすい方策等を講じる。事業規模目標 (2022〜2031 年度の 10 年間で 30 兆円)の達成を目指す。
・工程(取組・所管府省、実施時期)→7〜9まで。2023年から2025までの計画。
○社会資本整備等 3.新しい時代に対応したまちづくり、地域づくり
・政策目標
→デジタルの力を活用した地域づくりとコンパクト・プラス・ネットワークの推進に向けた政策手段の強化を一体となって 進める必要。このため、デジタル田園都市国家構想の一翼を担うスマートシティの推進や不動産ID等の総合的な活用など、デジタルの力により地域課題に取り組 むための基盤整備を進める、立地適正化計画及び地域公共交通計画の作成促進や策定された計画の実現を通じ、持続可能なまちづくりと地域公共交通ネット ワークの再構築を一体的に進める。併せて、空き家等の利活用や所有者不明土地対策等を推進。⇒ @社会のDX化による地域サービス等の進展や新技術活用による新たな価値創出に資する基盤を構築、都市マネジメント高度化等による社会課題 解決を目指す取組への民間企業・市民の参画状況を向上させる。このため、デジタル基盤、運営体制、人材等のスマートシティ推進の基盤整備を図る、質的な効果に着目した活動・サービス推進を通じ、住民満足度の向上、産業の活性化、グリーン化の実現など社会的価値・経済的価値、環境的価値等を高める多様で持続可能な都市が各地で形成され、国内外に紹介できる優良事例を創出。A市町村の全人口に対して、居住とともに誘導区域内に居住している人口の 占める割合が増加している市町村数を、2024 年度末までに評価対象都市の2/3とすることを目指す。
・工程(取組・所管府省、実施時期)→10〜13まで。2023年から2025までの計画。

3.地方行財政改革等
○地方行財政改革等 1.持続可能な地方行財政基盤の構築
・政策目標 持続可能な地方行財政基盤を構築するため、将来の人口構造の変化に対応した行財政制度の在り方の検討や地方交付税をはじめとした地方の財政に係る 制度の改革に取り組むとともに、見える化、先進・優良事例の横展開、公営企業・第三セクター等の経営抜本改革を推進。  安定的な財政運営に必要な一般財源総額を確保した上で、臨時財政対策債の発行額(減少の方向)、地方公共団体財政健全化法に基づく健全化判断比率・ 資金不足比率(改善の方向)
・工程(取組・所管府省、実施時期)→1〜14まで。2023年から2025までの計画。
○地方行財政改革等 2.デジタル田園都市国家構想の実現による個性を生かした地方の活性化→デジタル田園都市国家構想の実現に向けて、地域ごとの自主的・主体的な取組を進めるため、国・地方はデジタル田園都市国家構想基本方針で示された方向 性にのっとり、様々な施策を通じて、当面の取組を進める。
・工程(取組・所管府省、実施時期)→15〜18まで。2023年から2025までの計画。

4.文教・科学技術
○文教・科学技術 1.少子化の進展を踏まえた予算の効率化と教育の質の向上
・政策目標
→教育政策における外部資源の活用やPDCAサイクルの徹底、デジタル化の推進、改革の取組や教育成果に応じた財政支援のメリハリ付けの強化等により、少子化の進展や厳しい財政状況等の中でも、学習環境の格差が生じることを防ぎ、次代を担う人材育成の取組の質を向上させる。  OECD・PISA調査等の各種調査における水準の維持・向上 ※科学リテラシー等、読解力、数学リテラシーなど、世界トップレベルの維持・向上(PISA(2015, 2018)︓科学リテラシー(1位, 2 位)、読解力(6位, 11 位)、数学リテラシー(1位, 1位)) ※知識・技能、思考力・判断力・表現力等、学びに向かう力・人間性等の資質・能力の調和がとれた個人を育成
・工程(取組・所管府省、実施時期)→1〜4まで。2023年から2025までの計画。
○文教・科学技術 1.少子化の進展を踏まえた予算の効率化と教育の質の向上
・政策目標 →教育の質の向上⇒就職を希望する大学等卒業者の就職率の向上 ※2018 年度実績︓97.7%→毎年度︓前年度実績を上回る。 大学卒業者の就職・進学等率の向上 ※2017 年度実績︓92.2%→毎年度︓前年度実績を上回る。学部の壁を越えた充実した教育課程の構築を行う大学の割合の向上 ※2016 年度実績︓37.3%→毎年度︓前年度実績を上回る。
被引用回数トップ 10%論文数の割合の増加 (現状値 2018-20 年:8.2%)
企業等からの大学・公的研究機関への投資額※2025 年度までに、大学・国立研究開発法人等への投資(共同研究受入額)を3倍増→「第6期科学技 術・イノベーション基本計画」による目標値は 2025 年度までに、対 2018 年度比で約7割増加(2018 年度実績︓884 億円、2025 年度目標値︓1,467 億円)
・工程(取組・所管府省、実施時期)→5〜8まで。2023年から2025までの計画。
○文教・科学技術 1.少子化の進展を踏まえた予算の効率化と教育の質の向上
・政策目標→教育政策における外部資源の活用やPDCAサイクルの徹底、デジタル化の推進、改革の取組や教育成果に応じた財政支援のメリハリ付けの強化等により、少子化の進展や厳しい財政状況等の中でも、学習環境の格差が生じることを防ぎ、次代を担う人材育成の取組の質を向上させる。⇒地方自治体の点検・評価(地教行法第 26 条に基づく教育に関する事務の管理及び執行の状況の点検及び評価)の結果を政策立案または予算要求・査定の際に参照している割合 ※2020 年度︓都道府県︓83.0%、指定都市︓85.0%、市区町村︓70.7%→2024 年度︓100%。全国学生調査や大学自らで実施した学生調査の結果をPDCAサイクルに組み込み、教育内容等の改善に向けた取組に活用している大学の割合。
・工程(取組・所管府省、実施時期)→5〜8まで。2023年から2025までの計画。
○文教・科学技術 2.イノベーションによる歳出効率化等
・政策目標→ 科学技術・イノベーション政策においてエビデンスに基づく政策立案等を図りながら、官民をあげて研究開発等を推進することで、国民の生活の質の向上等に貢 献する形で、Society5.0 やイノベーション・エコシステムの構築等の実現を目指し、「科学技術立国」の実現につなげる。⇒工程10〜13番まで。
○文教・科学技術 3.民間資金等の一層の活用によるスポーツの普及・発展
・政策目標→東京オリンピック・パラリンピック大会のレガシーを継承し、全ての国民が気軽にスポーツできる環境を整備し、スポーツの価値を実感できる社会を実現するととも に、民間資金等の一層の活用により、スポーツの成長産業化・地域スポーツの普及・発展を図る。 ・スポーツ実施率の向上【成人や障害者の週1回以上のスポーツ実施率︓2026 年度に 70%、40%程度(2021 年度︓成人 56.4%、障害者 31.0%)】 ・企業等からスポーツ機関への投資額 ※スポーツの市場規模【2025 年までに 15 兆円】⇒14番。
○文教・科学技術 4.官民一体となった文化の振興
・政策目標→文化の経済的価値等を活用した財源を将来の投資に活用・好循環させることにより、文化の価値を当該分野の振興のみならず経済・社会の発展に活用する。 ・2025 年の文化の市場規模︓18 兆円(GDP 比3%程度)

5.歳出改革等に向けた取組の加速・拡大
○歳出改革等 1.先進・優良事例の横展開(含む業務イノベーション)
○歳出改革等 2.インセンティブ改革(頑張る系等)
○歳出改革等 3.見える化
○歳出改革等 4.公的サービスの産業化
○歳出改革等 5.既存資源・資本の有効活用等による歳出改革
○歳出改革等 6.公共調達の改革
○歳出改革等 7.多年度にわたる基金事業のPDCA強化
○歳出改革等 8.その他

◎(別冊1) 新たな拡充を要する政策課題 (防衛・GX・こども)の 新経済・財政再生計画 改革工程表2022
◎(別冊2)マイナンバーの利活用拡大に向けたロードマップ


◎資料4 経済・財政一体改革の一層の強化に向けて(有識者議員提出資料)
新経済・財政再生計画改革工程表 2022
→主要政策課題について着実な前進を 図るとともに、様々な分野でのDX推進やEBPMの推進、事業の性質に応じた基金 の活用、関係府省庁の連携によるマイナンバー利活用の拡大等の成果も得られた。また、新たに拡充を図ることとされている政策分野(防衛、GX、こども政策)におけるPDCA構築の端緒を開く取組も進められた。 このような成果の一方で、課題も明らかになった。諸施策に関する取組は着実に進んではいるものの、大きな「政策目標」の観点からは、未実現なものが多い。 社会保障分野では、地域医療構想に基づいた病床機能の分化は進んでおらず、病床 の再編や一人当たり医療費の地域差半減も進んでいない。国・地方分野では、自治体 業務自体の効率化に係る取組も広がりが限られており、また、予防保全型インフラメ ンテナンスへの転換に向けた取組の深化も課題である。
経済社会の活力分野→国 際的な研究開発の競争力の低下に歯止めがかかる兆しは見えていない。 こうした課題への対応を進めるため、経済・財政一体改革推進委員会は以下の3点 について重点的に取組み、骨太方針に向け、来春の経済財政諮問会議に報告すべき。
・進んでいない重点課題への取組の強化→ 上記で掲げたような改革の進捗が進んでいない課題について、政策目標に照らし、 どうして成果があがっていないのか、進捗していないか、徹底して評価・分析し、 今後の対応策につなげていくべき。
・予算編成後の改革工程管理の充実→ 社会保障分野を中心に、年末の予算編成・税制改正等において方針が決定される 重要政策についても、効果的・効率的な支出(ワイズスペンディング)の観点か ら、速やかに検討・精査を行うべき。
・多年度にわたる予見可能性の向上と官民連携の観点からの検討 これまでの「見える化」、インセンティブ付与、産業化等によって現場の行動変容 を促すアプローチをより強化すべき。 多年度にわたる投資の予見可能性を高め、官民連携で効果的に推進する観点から、 投資的取組について、工程表のなかで取組期限、成果目標や目標に向けた明確なコミットメントの策定を進めるべき。

令和4年会議情報一覧
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2022/index.html

次回は新たに「第94回社会保障審議会年金数理部会 資料」からです。