• もっと見る
« 社会福祉法人制度改革 | Main | 福祉施設士会»
<< 2025年04月 >>
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30      
最新記事
カテゴリアーカイブ
月別アーカイブ
日別アーカイブ
第3回経済財政諮問会議 [2025年04月16日(Wed)]
第3回経済財政諮問会議(令和7年3月25日)
議 事 (1) マクロ経済運営(春季労使交渉等) (2) 地方創生
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2025/0324agenda.html
◎資料1マクロ経済基礎資料(内閣府)
≪賃金の動向≫
○賃金の動向@
→・春季労使交渉の回答集計の結果(25年3月21日)をみると、大企業を中心に満額回答が相次ぎ、昨年同時期を上回る賃上げ率となっている。 ・今後、こうした賃上げの流れが、中小企業へ波及していくことが期待される。⇒図1・図2 参照。
○賃金の動向A→・実質賃金は、2024年後半から、プラス圏内に。ただし、足元では、物価上昇の影響により低下(3か月ぶりのマイナス)。 ・ 国際的にみると、日本の実質賃金の上昇率は、前年比でマイナスの期間が続くなど、総じて低い。⇒図1・図2 参照。

≪物価動向と主要な物価高対策≫
○物価の動向
→・足元では、生鮮食品を含む食料品価格が上昇し、消費者物価(総合)を押し上げ。米類等の価格は上昇。 コメの先物取引価格は、足元で低下。 ・ 電気代・ガス代は、負担軽減支援事業の効果もあり、2月は低下。ガソリン価格は、燃料油価格激変緩和補助金の 補助率の縮小により、足元では上昇。⇒図1〜図4 参照。
○主要な物価高対策 重点支援地方交付金
@ 低所得者世帯向け給付金→食料品やエネルギー価格の上昇に対応、賃上げの効果が出るまでの間、家計をサポート
A 地域の実情に応じた物価高対策→住民税非課税世帯以外の方も対象とする給付金、LPガス使用世帯への支援 学校給食費への支援 など
B 政府備蓄米の売渡し
C ガソリン等の価格の抑制→ • 全国平均で185円/Lとなるよう支援を継続 • 今後、原油価格の状況を丁寧に見定めながら適切に対応
D 中小企業の事業活動を支える価格転嫁の円滑化→民間、官公需 参照。

○物価高対策の主な施策の取組状況(2025年3月21日時点)
・5つの「分類」に「事業名」あり。「所管府省」「事業内容」「取組状況・今後の見込み」


◎資料2参考資料(持続可能で活力ある地方経済の構築に向けて)(内閣府)
○地方における質の高い雇用の創出
→・近年は女性の方が、男性と比べて東京圏(東京都及び埼玉県、千葉県、神奈川県)への純流入者数が多い傾向。コロナ禍後、再び純流入者数が増加している。 ・年代別に東京圏と全国平均とを比較すると、女性の雇用率には大きな差はないが、正規雇用率については、全国平均と比べて、若年層を中心に東京圏の方が高い。⇒図1・図2 参照。
○雇用・就業:最低賃金の動向→・賃金の地域間格差是正を図るうえで、最低賃金の底上げは重要。 ・令和6年度の地域別最低賃金の引き上げ額は、27県で、中央で決定した目安である50円を 上回り、それらは水準が相対的に低い都道府県に多かった。地域間の横比較が重要。⇒<図:2024(令和6)年度の地域別最低賃金> 参照。
○東京圏から人を惹きつけている自治体の例→・東京圏との間で人口が純流入になっている市町村は約200(2023年)でおおむね横ばい。 ※東京都及び埼玉県、千葉県、神奈川県内の市町村を除く。 ・特徴的な取組を推進している市町村を増やすような施策や支援を強化・拡充するべき。⇒自治体名 特徴  参照。
○質の高い産業・雇用の創出→・女性や若者にも選ばれる自治体(注)では、公務の比率が低いほか、開業率が高く、新しい産業が創出される傾向が強い。 ・就業率、共働き家事時間などについて、女性や若者に選ばれる自治体の方が、男女間の格差が相対的に小さい。 (注)転入超過であり、かつ、2010〜2020年の平均年齢の上昇幅が小さい(低下も含む)、15−64歳人口の女性比率 が高まっている(横ばいを含む)自治体とした。

○自治体規模別の人口推計について→•社人研「日本の地域別将来推計」によると、人口規模がより小さい自治体において、人口の減少及び高齢化率(65歳 以上人口/15−64歳人口)の上昇がより大きい姿。 •東京23区では、65歳未満の減少は小さく、65歳以上の増加により総人口は増加する見込み。 •生産年齢を20−74歳とし、高齢化率を75歳以上人口と生産年齢人口の比とすると、高齢化率は大幅に低下し、地域差 が縮まり、高齢化率の上昇幅は小さくなる。
⇒人口規模別年齢階級別平均人口(2020年人口=100)及び高齢化率 参照。

○自治体規模別の財政状況:歳入・歳出構造(2022年度)→•平均的には、基礎的財政収支に準ずる歳入(「PB歳入」)は同歳出(「PB歳出」)を上回り、総体としては財政は健全。 •歳出面:小規模自治体においては、総務費・土木費・農林水産費等の割合が大きい。大規模になると、歳出に占める 民生費(老人福祉費・児童福祉費等)の割合が高まる傾向※。 ※自治体の区分(政令指定都市等)によって行政権能が異なることによる影響も考慮する必要 •歳入面:小規模になるほど、地方交付税交付金への依存度が高く、大規模になると地方税等の収入が増加する傾向。
○自治体規模別の財政状況:歳入/歳出比率の分布→•小規模になるほど、財政調整前歳入(基礎的財政収支に準ずる歳入(「PB歳入」)から地方交付税交付金を除いたもの)によって賄われる割合が低い。 •地方交付税交付金の財政調整機能によって、全体で9割以上の自治体が、基礎的財政収支に準ずる歳出(「PB歳出」)の 95%以上をPB歳入により賄うことが可能になっている。 •他方、東京23区は財政調整前歳入がPB歳出を平均で上回っている。


◎資料3持続可能で活力ある地方経済の構築に向けて(有識者議員提出資料)
2025年3月24日     十倉雅和  中空麻奈  新浪剛史  柳川範之
東京一極集中を是正し、若者や女性にも選ばれる、魅力ある地方経済を構築する には、地方に質の高い産業・雇用の場を創出することが何よりも重要。この上に、誰もが安心して住み続けられる、一人一人のウェルビーイングが高い活力ある経済を構築していく必要がある。地方経済の活性化を、日本経済全体の活性化につなげる「令和の日本列島改造」を具体化する「基本構想」の策定にあたり、以下提言する。 ↓
1.地方における質の高い産業・雇用の創出
→ 地方経済の活性化に向けては、地域資源を最大限活用した高付加価値産業・事業の創出や、魅力ある働き方・職場づくりが重要。そのため人口減少による人手不足を梃子に、地方の賃金・処遇改善を図るとともに、地方創生交付金等を活用した地域それぞれの特性に応じた活性化等を講じ、東京との賃金格差を是正していくことが重要。⇒○ 地域づくりの担い手としても期待される関係人口や多地域居住者と地域との連携 強化、小規模でも生産性の高い企業の育成・誘致、人手不足に対応した省力化 投資の拡大等による生産性向上など、地方の創意工夫の下、活力ある経済の構 築に向け、官民を挙げて強力に推進すべき。 ○ 東京における30歳代、40歳代の女性正社員割合は全国平均を大きく上回っていること等から、地方における正社員雇用の拡大に向けて、本社機能、業務施設の地方移転、企業の地方拠点の拡充・強化など産業の多様化・活性化を更に推進 すべき。 ○ 地方において雇用割合の高い非正規の処遇改善も重要。最低賃金1,500円の目標に向けて取り組む際に、すべての働く人が安心して暮らせるよう、地域間格差 の是正を図りながら取り組むべき。
2.持続可能で質の高い地方行政サービスの実現→人口減少のもとでも誰もが安心して住み続けられるウェルビーイングの高い地域社会を構築するには、住民生活に密着した行政サービスの地域間格差が過度に生じないことが重要。地方における人材不足を補うため、デジタル共通基盤の整備による行政サービスの効率化や、都道府県域を超える連携を含め共通の目的を持つ自治体間 の広域的な連携を加速していくとともに、持続可能な地方行財政の構築に向けて、人 口減少や社会増減を踏まえた将来像を速やかに示し、経済財政諮問会議であるべき 対応について議論すべき。
3.効果的な「令和の日本列島改造」の取組→地方創生2.0の推進に当たっては、政策目標を明確にし、地域の特性も考慮しつ つ、成功事例も失敗事例も含めて効果を検証し、限られたリソースから高い政策効果 を生み出していくことが重要。定量的なKPIの設定やEBPMの枠組みを活用し、人口・ 経済財政の東京一極集中の是正の広がりといった観点も含めて検証すべき。これにより「令和の日本列島改造」の取組の全体像の「見える化」を徹底していくことが重要。 ○「令和の日本列島改造」にある5つの取組のうち、「若者や女性にも選ばれる地方 に向けた取組」、「広域リージョン連携の推進」など、社会全体で取り組む課題については、全体的に底上げを図るため、横比較が可能な指標をKPIに設定し、進 捗を比較して「見える化」を徹底すべき。 ○ また、「産学官の地方移転と創生」、「地方のイノベーション創生」、「新時代のインフラ整備」など、地域独自の特性・特色を活かしてオンリーワンを作りだして活性 化を図っていく課題については、重複投資による非効率を避け、全体の有機的な 成長に資する視点から、個々の取組をマッピングするなど「見える化」を徹底し、 各地域の戦略決定に資するべき。  ○特に交付金事業については、各地域の特性・特色を活かした適切かつ効果的な 取組が行われることが必要。⇒・ 個別事業の直接的なアウトプットの検証にとどまらず、若者・女性に選ばれる地域といった最終アウトカムに結びついた政策効果の把握につながるKPIを設定して(例:東京圏との間の転出入者数、女性就業率、女性正 規雇用率)厳密な効果検証を行うべき。 ・ 都道府県は、管内の市区町村の取組及びKPIについて、必要な調整を行った上で、それらを一覧性のある形で「見える化」し、事後の進捗管理を行うべき。その際には、市区町村の取組を束ねた都道府県全体のKPIを設定することも検討すべき。 ・ 国は、都道府県の取組の内容・進捗、KPIの達成状況等について、同様 に、一覧性のある形で「見える化」した上で、外部有識者の意見も聴きながら、十分な比較検証を行うべき。


◎資料4地方創生2.0について(伊東臨時議員提出資料)
令和7年3月24日   伊東良孝 新しい地方経済・生活環境創生担当大臣
1.地方創生2.0の検討状況について↓
1 これまでの議論の経過
→○ 昨年10月、総理を本部長、全閣僚を構成員とする閣僚本部として 「新しい地方経済・生活環境創生本部」(以下「閣僚本部」)を創設。 また、伊東大臣の下、産官学金労言の有識者を構成員とする「新しい地方経済・生活環境創生会議」(以下「有識者会議」)を開催。 ※これまで5回開催。 ○ 昨年12月末の閣僚本部において、これまでの地方創生の取組の成果と反省を含む「地方創生2.0の基本的な考え方」を決定。 ⇒ 概要について参考資料の6〜10ページを参照。 また、本年1月の総理施政方針演説において、地方創生2.0を「令和の日本列島改造」として、5本の柱で進めていく方針が表明されたところ。 ○「令和の日本列島改造」の5本の柱 @ 若者や女性にも選ばれる地方 A 産官学の地方移転と創生 B 地方イノベーション創生構想 ⇒2、3ページを参照。 C 新時代のインフラ整備 D 広域リージョン連携。
2 今後の議論の展開
→○ 本年1月から、有識者会議の地方開催を月1回のペースで行い、現場で取り組む方々と有識者との 意見交換を通じて、施策の具体化に向けた議論を進めているところ。 ○ 今後、本年夏の地方創生2.0の「基本構想」の策定に向け、5本の柱に沿って施策を具体化するとともに、骨格となるKPIを具体的に示せるよう有識者会議で議論を進めていく考え⇒4ページを参照。

2.地方イノベーション創生構想の推進@➁→○地方の経済・産業を創生するため、省庁の縦割りを排し、連携して施策を「統合化」、「重点化」し取組が「点」から「面」に広がる化学変化を起こす必要。このため、地方創生2.0では、様々な「新結合」、組合せの可能性を地方で展開する 「地方イノベーション創生構想」を関係省庁が連携し、官民を挙げて強力に推進。 ○ 多様な地域資源を活用した高付加価値化、デジタルの活用やコンテンツ産業と連携した国内外の新たな需要の掘り起こしなど、 地域の「産官学金労言士/師」の主体により、地方を起点とした、従来にない「新結合」を生み出していく。↓

1 「新結合」の要素→○施策の新結合− 地域資源の高付加価値化を図る組み合わせ⇒産業− 埋もれた地域資源の活用− 環境・GX− デジタル・新技術− 海外展開 ・・。○主体の新結合− 複数の主体の組み合わせ⇒産− 官− 学− 金− 労− 言− 士/師。○人材の新結合− 副業兼業を活用した人材の組み合わせ⇒ 関係人口の取り込みによる人材の組み合わせ
2 「新結合」のイメージ(例)→(1)伝統的な農林水産業・地域産業 ×歴史文化× 観光⇒ 宿泊施設での新たな食や工芸品の提供、文化芸術や自然を含む多彩な地方観光ルートを形成 (2)地方高専 × AI ⇒ 高専人材が × 中小企業 × 地方銀行 技術を活用して地元中小企業の課題解決、収益化。地元愛を持つ人材育成にも貢献 AI (3)量子技術×交通×観光⇒量子コンピューティングの活用による 地域の最適な観光 (4) イノベーション拠点× スタートアップ × ルートの提示、料金の最適化 まちづくり⇒イノベーション拠点を中心に若者・女性が集い、公共施設・商店・住宅などが集積した中心市街地を整備 ※ 今後、 新たに設ける関係省庁会議 において、各省庁の施策をもとに、「新結合」を生み出すプロジェクトとして具体化 していく。

3.地方創生2.0のKPIに関する論点
1 現行のKPI
→○ 現行のデジタル田園都市国家構想総合戦略においては、85項目のKPIを設定(参考資料11,12ページ参照)。 そのうちの一つとして、「東京圏への過度な一極集中の是正」についてのKPI 「 2027 年度における地方と東京圏との転出・転入の均衡」が設定されている。
2 論点:○ 地方創生2.0の「基本的な考え方」では、少子化対策を講じることで人口減少のペースを緩めつつ、「当面は人口・生産年齢人口が減少するという事態を正面から受け止めた上で、 人口規模が縮小しても経済成長し、社会を機能させる適応策を講じていく」方針が示されている。 ○ 少子化により、地方の若者や女性の絶対数が減少して地方から東京圏への転入数が減少する可能性や、東京圏で生まれ育つ若者の割合が今後相対的に増加していくことを踏まえれば、 東京圏の転出入の均衡だけを目指すKPIが望ましいのか 、という論点がある。 ○ 例えば、「若者や女性にも選ばれる地方」をつくることを主眼とする地方創生2.0としては、 若者や女性が東京圏の大学などで学んだ後に地方へ転出していく形、 すなわち東京圏からの若者や女性の転出数に着目して望ましい姿を考えることも必要ではないか 。 ○ さらには、東京圏から転出しなくとも(住民票の異動がなくても)、関係人口・交流人口・兼業副業などの形で、 東京圏に居ながら地方に関わることで、地域の活力が維持される姿も考えられるのではないか 。 ○ そのほか、 地域の暮らしやすさについて、男女間の賃金格差、ジェンダーギャップ指数や、交通・買物などの生活環境に関する指標など、複数の指標を複眼的に捉えながら、政策の進捗を検証していく ことも考えられるのではないか。その際、人々の満足度(Well-being)を示す指標についても、検討を進める必要があるのではないか。
3 今後の検討方針
→○ こうした論点を含め、本年夏に策定する地方創生2.0の「基本構想」において、骨格となる KPIを 具体的に示せるよう議論を進めていく 。

≪参考資料≫↓
○地方創生2.0の「基本的な考え方」概要

「地方創生」を10年前に開始して以降、「まち・ひと・しごと創生法」の制定、政府関係機関の地方移転や地方創生の 交付金などにより、全国各地で地方創生の取組が行われ、様々な好事例が生まれたことは大きな成果である。一方、こうした好事例が次々に「普遍化」することはなく、人口減少や、東京圏への一極集中の流れを変えるまでには至らなかった 好事例の普遍化は、なぜ進まなかったのか。
自治体は、国−都道府県−市区町村という「縦」のつながりのみならず、 他の町といった「横」の関係をあらためて意識することが必要ではないか。各地域において、学生などの若者も含めて、「産官 学金労言」の関係者が、「女性や若者にも選ばれる地域」となるため、自ら考え、行動を起こすことが必要ではない 。その際、RESASなどを活用した客観的なデータの分析も重要ではないか。
明治維新の中央集権国家体制において、「富国強兵」のスローガンの下で「強い国」が目指され、戦後、敗戦からの復興 や高度経済成長期の下で「豊かな国」が目指された。こうした中、 特に東京が首都となって以降、効率的に資源を集積するかたちで、東京圏への一極集中が進んできた 。世界に大都市圏が多くある中で、極端に一極集中の国は日本と韓国 のみであるとも言われている。
一方、国民の持つ価値観が多様化 する中で、多様な地域・コミュニティの存在こそが、国民の多様な幸せを実現。 そのためには、一人ひとりが自分の夢を目指し、「楽しい (※)」と思える地方を、民の力を活かして、官民が連携して作り 出していく 必要がある。「都市」対「地方」という二項対立ではなく 高め合うことで、すべての人に安心と安全を保障、都市に住む人も、地方に住む人も、相互につながり、希望と幸せを実感する社会を実現する。
 今後、人口減少のペースが緩まるとしても、 当面は人口・生産年齢人口が減少するという事態を正面から受け止めた上で、人口規模が縮小しても経済成長し、社会を機能させる適応策を講じていく。 このため、 ・ 一極集中をさらに進めるような政策の見直し、
・ 持てるポテンシャルがまだまだ眠っているそれぞれの、政策の強化 地域の経済・社会、これらを支える人材の力を最大限に引き出す政策の強化 ・ 若者や女性にも選ばれる職場や暮らしを実現する政策の強化 、 ・ 都市と地方の新たな結びつき・人の往来を円滑化する政策の強化 などに取り組む。
⇒⇒こうした「地方創生2.0」の目指す先をこの「基本的な考え方」で確認し、「地方創生 2.0」を起動させる。


○地方創生2.0の「基本的な考え方」概要 ↓
来年夏に、今後10年間集中的に取り組む基本構想を取りまとめる↓
◆地方創生2.0起動の必要性
→・我が国の成長力を維持していくためには、都市も地方も、楽しく、安心・安全に暮らせる持続可能な社会を創っていく必要。 ・特に、人口減少が続く地方を守り、若者 ・女性にも選ばれる地方(=楽しい地方)、高齢者も含め誰もが安心して住み続けられる地方の構築は待ったなし。 ・地方創生2.0は、単なる地方の活性化策ではなく、日本の活力を取り戻す経済政策であり、多様性の時代の多様な幸せを実現するための社会政策であり、我がまちの良さ、楽しさを発見していく営み。 ・ それぞれの地域の「楽しい」取組が拡がっていくよう、次の 多様性の時代の多様 10年を見据えた地方創生2.0を今こそ起動し、この国の在り方、文化、教育、社会を変革する大きな流れをつくり出す。
◆これまでの取組の反省→・若者・女性からみて「いい仕事」、「魅力的な職場」、「人 生を過ごす上での心地よさ、楽しさ」が地方に足りないなど 問題の根源に有効にリーチできていなかったのではないか。 ・人口減少がもたらす影響・課題に対する認識が十分に浸 透しなかったのではないか。 ・人口減少を前提とした、地域の担い手の育成・確保や労働生産性の向上、生活基盤の確保などへの対応が不十分だったのではないか。・産官学金労言の「意見を聞く」にとどまり、「議論」に至らず、好事例が普遍化されないなど、地方自らが主体的に考え行動する姿勢や、ステークホルダーが一体となった取組、 国の制度面での後押しが不十分だったのではないか。 など
◆地方創生をめぐる情勢の変化→地方にとって厳しさを増す変化⇒・人口減少と出生数・出生率の低下が想定を超える ペースで進み、高齢化が進むことで、特に地方では労働供給制約、人手不足が進行。 ・ 地域間・男女間の賃金格差や、様々な場面にある アンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み)などにより、 若者・女性の地方離れが進行。 ・ 買物、医療・福祉、交通、教育など日常生活に不可欠 なサービスの維持が困難な地域が顕在化、深刻化 など。
地方にとって追い風となる変化→・インバウンドの増加、特に、地方特有の食や景観・自然、文化・芸術、スポーツなどを評価して地方を訪れ、産品・サービスを求める外国人の増加 ・ リモートワークの普及、NFTを含むWeb3.0などデジタ ル技術の急速な進化・発展 など
◆地方創生2.0を検討していく方向性(1.0との違い)→( 基本姿勢)⇒・当面は人口 ・生産年齢人口が減少するという事態を正面から受け止めた上で、人口規模が縮小しても経済成長し、社会を機能させる適応策を講じていく 。 ・ そのために、「人を大事にする地域」、「楽しく働き、楽しく暮らせる地域」を創る。人手不足が顕著となり、人材や労働力が希少となる がゆえに、教育・人づくりにより人生の選択肢・可能性を最大限引き出すとともに、その選択肢を拡大していく。 ・ 災害に対して地方を取り残さないよう 、都市に加えて、「地方を守る」。そのための事前防災、危機管理に万全を期す。 (社会)⇒・「若者・女性にも選ばれる地方(=楽しい地方)」をつくることを主眼とする。 ・ 賃金の上昇、働き方改革による労働生産性の向上、アンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み)の解消など魅力ある働き方・職場づくりを官民連携で進める。 ・ 児童・生徒や学生が、地方創生の観点から我が町の魅力を再発見し、将来を考え、行動できる能力を重視する教育 ・人づくりを行う。 ・ 年齢を問わず誰もが安心して暮らすことを可能とする 、医療・福祉等の生活関連サービス 、コミュニティの機能を維持する。 ( 経済)⇒・文化・芸術・スポーツなどこれまで十分には活かされてこなかった地域資源を最大限活用した高付加価値型の産業・事業を創出する。 ・ これまで本格的に取り組んで来なかったDX・GXなどの戦略分野での内外からの大規模投資や、域外からの需要の取り込みを進め、地域の総生産を上昇させる。 ・ 観光等の地域に密着した産業やサービスを支える教育・人づくりを進める。 (基盤)⇒・ GX・DXインフラの整備を進め、NFTを含むWeb3.0など急速に進化するデジタル・新技術を最大限活用する。 ・ 地方と都市の間で 、また地域の内外で人材をシェアし、人・モノ・技術の交流、分野を超えた連携・協働の流れを創る。 (手法・進め方)⇒・政策の遂行においては、適切な定量的KPIを設定 し、定期的な進捗の検証と改善策を講ずる。
◆地方創生2.0の基本構想の5本柱※考えられる各省の施策項目を列挙。基本構想に向けて具体化→@安心して働き、暮らせる地方の生活環境の創生→・魅力ある働き方、職場づくり、人づくりを起点とした社会の変革により、楽しく働き、楽しく暮らせる場所として、「若者・女性にも 選ばれる地方(=楽しい地方)」をつくる。 ・年齢を問わず誰もが安心して暮らせるよう、地域のコミュニティ、 日常生活に不可欠なサービスを維持。 ・災害から地方を守るための事前防災、危機管理。 A東京一極集中のリスクに対応した人や企業の地方分散→・分散型国づくりの観点から、企業や大学の地方分散や政府機関等の移転などに取り組む。 ・地方への移住や企業移転、関係人口の増加など人の流れを創り、過度な東京一極集中の弊害を是正。 B付加価値創出型の新しい地方経済の創生→・農林水産業や観光産業を高付加価値化し、自然や文化・芸術など地域資源を最大活用した高付加価値型の産業・事業を創出。 ・内外から地方への投融資促進。 ・地方起点で成長し、ヒト・モノ・金・情報の流れをつくるエコシステムを形成。Cデジタル・新技術の徹底活用 〇ブロックチェーン、DX・GXの面的展開などデジタル・新技術 を活用した付加価値創出など地方経済の活性化、オンライ ン診療、オンデマンド交通、ドローン配送や「情報格差ゼロ」 の地方の創出など、地方におけるデジタルライフラインやサイ バーセキュリティを含むデジタル基盤の構築を支援し、生活環 境の改善につなげる 〇デジタル技術の活用や地方の課題を起点とする規制・制 度改革を大胆に進める。 D「産官学金労言」の連携など、国民的な機運の向上→・地域で知恵を出し合い、地域自らが考え、行動を起こすための合意形成に努める取組を進める。 ・地方と都市の間で、また地域の内外で人材をシェアする流れをつくる
◆基本構想の策定に向けた国民的な 議論の喚起→・地方の現場をできるだけ訪問・視察し、意見交換を幅広く 重ね、地方の意見を直接くみ取り、今後の施策に活かす。 ・有識者会議でテーマごとに地方の現場で地方創生に取り 組む関係者のヒアリングや現地視察を行い意見を直接くみ取る。

○デジタル田園都市国家構想総合戦略におけるKPI@➁→1〜85まであり。

次回は新たに「第5回成年後見制度利用促進会議」からです。

令和7年第2回経済財政諮問会議 [2025年03月29日(Sat)]
令和7年第2回経済財政諮問会議(令和7年3月10日)
議事(1)マクロ経済運営(金融政策、物価等に関する集中審議) (2) 賃金向上に関する特別セッションA
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2025/0310/agenda.html
◎資料1植田議員提出資料
○2025年1月金融政策決定会合での決定内容
→経済・物価は、これまで示してきた見通しに概ね沿って推移、先行き、見通しが実現していく確度は高まってきている
○金融市場、預金・貸出金利→短期金利、長期金利、預金・貸出金利、為替・株価 参照。
○(参考)雇用者所得・物価→雇用者所得、消費者物価  参照。

◎資料2 マクロ経済基礎資料(内閣府)
○経済の見通し
→・日本経済は、プラス成長が継続する見通し。マクロの需給バランスは、供給制約の局面に入っている。 ・ 今後の持続的な経済成長に向けては、潜在成長率の引上げに重点を置いた政策対応を進めることが必要。→<図1・図2> 参照。
○海外経済の動向→・IMF世界経済見通し(2025年1月)によると、直近の貿易政策の不確実性指数は急上昇。世界経済のリスクの一つとして、相互関税の賦課など保護主義の高まりが、貿易摩擦の悪化、投資の減少、サプライチェーンの混乱等をもたらす点を指摘。 ・海外経済の不確実性や金融資本市場の変動等の影響には、引き続き、細心の注意が必要。
○物価動向@(消費者物価上昇率)→・足元では、生鮮食品を含む食料品価格が上昇し、消費者物価(総合)を押し上げ。(※)2025年1月 総合4.0%、生鮮食品除く総合3.2%。
・民間エコノミスト予測では、消費者物価(コア)は、2025年春にかけて、徐々に上昇幅が縮小し、2025年度を通じてみると、2%程度の安定的な物価上昇になると見込まれている。(※)民間エコノミスト予測平均 2025年度:2.18%、2026年度:1.72%。 ・食料品価格の動向をみると、米類、キャベツ等の価格が上昇している。コメの先物取引価格は、昨秋から年末にかけ 上昇傾向で推移。先行きの注視が必要。
○物価動向A(予想物価上昇率/為替の推移・見通し)→・企業等の中期的な予想物価上昇率は、2%近傍となっている一方、家計の1年後の予想物価上昇率は、5%超の高い水準。 ・為替について、民間エコノミスト予測では、2025年度は、140円台半ばまで、徐々に円高方向で推移すると見込まれている。
○賃上げ@→・実質賃金は、ゼロ近傍まで上昇していたが、足元では物価上昇の影響もあり低下。 ・民間エコノミスト予測では、昨年度とほぼ同水準となる5%程度(ベア3%程度)の賃上げが継続することが見込まれている。 ・2025年の春季労使交渉では、労働組合側からは、前年と同水準以上の要求が行われている。
○賃上げA →・民間機関のアンケート調査によると、2025年度に正社員の賃金改善を見込む企業は61.9%、そのうちベースアップの 実施を見込む企業は56.1%(いずれも過去最高)。 ・ 総人件費は、前年比で平均4.50%の増加が見込まれている(過去最高)。 ・ ただし、企業規模別にみると、正社員の賃金改善を見込む小規模企業の割合は小さい。
○賃上げB→・中小企業を対象とした日商のアンケート調査をみると、2025年度も約半数の企業が賃上げを予定しているが、引き続き、業績が改善していない中での防衛的賃上げと回答する者の割合が高い。・中小企業庁の「価格交渉促進月間フォローアップ調査」では、発注企業からの申し入れによる交渉が浸透しつつある 一方で、受注企業の意に反して交渉が行われなかったと回答する者も残る。・引き続き、生産性向上支援とともに、2次以降の下請を含め、価格転嫁の円滑化に向けた取組を強化することが必要。
○賃上げC→・取引先との共存共栄を目指すパートナーシップ構築宣言を行う企業は年々増加。直近の1年間では2万社程度増加。 ・多くの取引先を抱える大企業の宣言も増加してきているものの、全体の22%程度に留まっている。また、業界によって、取組の浸透に差がみられる。 ・価格転嫁を更に進める観点から、引き続き、宣言拡大とその実効性確保に向けた取組を強化していくことが必要。


◎資料3 マクロ経済運営について(有識者議員提出資料)
2025年3月10日  十倉雅和  中空麻奈  新浪剛史  柳川範之
賃上げと投資がけん引する成長型経済への移行に向けた動きが進んでいるが、足元で物価 上昇率が高まり、長期金利も徐々に上昇している。また、通商政策などアメリカの政策動向も刻々 と変化するなど世界経済の不確実性は増しており、急激な変動への備えを万全にする必要があ る。石破総理が「賃上げこそ成長戦略の要」との考え方を示したが、今が、力強い賃上げモメンタ ムの「定着」や国内投資拡大等を通じ、長年にわたり染みついたデフレマインドを払拭し、成長型 経済への移行を進めるチャンスでもあるとの認識のもと、以下、提言する。
1. 経済動向に対応したマクロ経済運営
→消費者物価は今年1月に前年比4.0%増と高い伸びとなり、また、長期金利は15年ぶりの水準まで上昇している。食料品の価格高騰等によるコストプッシュの物価高が消費を下押しするリスクや、金利が今後急激に上昇した場合に企業・家計の投資マインドを悪化させるリスクなど、景気回復が後戻りする可能性に十分注意すべき。また、国債利払い増加などが財政に影響を及ぼす影響にも注意が必要。⇒・物価高対策については、物価動向を注視するとともに、閣僚懇談会(物価高への当面の対応、2月4日)において整理された取組をしっかりと検証すべき。 ・金利上昇下にあっても財政への信認を維持し、長期金利の急激な上昇など不測の事態 が生じないよう、政府は来年度予算修正案に関わる安定的な財源確保に取り組むととも に、早期のプライマリーバランス黒字化実現を含む今後の財政健全化に向けた道筋を提 示すべき。また、全世代型社会保障構築の改革工程に沿って取り組み、社会保障の持続 可能性を確保し中長期的な財政への信認が維持されるようにすべき。その下で、国債の 安定的な発行に向け、市場参加者と丁寧に対話すべき。

2.力強い賃上げと生産性向上による好循環拡大→消費マインドの改善に向けて、賃上げが一時的でなく今後も続くと見通せることが重要。一昨 年・昨年に続き、本年も力強い賃上げを実現し、我が国に賃上げモメンタムを定着させるととも に、それに見合った生産性の向上等を実現することにより、消費の活性化、経済の好循環につな げる。物価、賃金、金利といった動き始めている価格を活用した資源配分を行い、人手不足の程 度に沿った賃金上昇を実現させるなど、成長型経済への移行を実現すべき。⇒・ 力強い賃上げモメンタムを定着させるためにも、我が国が中長期的に目指す経済の姿の 全体像(成長率、生産性2、物価上昇率、賃金上昇率等)を分かりやすく提示し、関係者が 納得できるようにすべき。また、政府の最低賃金引き上げ目標3について、目標到達まで の道筋と生産性向上を含めた政策対応を明確化し、丁寧な議論を行い、多様なステーク スホルダーが取り組める環境を整備すべき。力強い賃上げモメンタムの定着に向けて、労 務費を含む適正な価格転嫁が重要であり、民間での転嫁対策に加え、エッセンシャルワーカーが多い公共調達においても予定価格の算定等に労務費上昇を適切に反映すべ き。 ・ 賃上げを起点に経済のダイナミズムを回復させるためには、賃金を通じて適切な資源配 分が促されることが重要。今後、賃上げの原資を活用しながら、人手不足が深刻な職種に は手厚く配分するなど需給を反映してメリハリある賃上げ4が期待されるが、合わせてリスキ リングと労働移動の円滑化によって労働供給のボトルネックを解消し、賃上げと雇用増が 同時に進む経済を構築すべき。また、賃上げを起点とした成長型経済への構造変化をデ ータで確認するため、行政保有データの活用5を推進すべき。 ・ これまでは女性・高齢者などの労働参加が進み、非正規雇用の割合が上昇してきたが、その過程で労働分配率が低下した。今後は労働参加のペースが鈍化すると見込まれることから、多様な働き方を促進して正規化を進めるとともに、リスキリングの支援など非正規 労働者の賃上げ・処遇改善・能力開発を後押しし、現在、非正規で働いている方の意欲と能力を最大限発揮できるようにすることが重要。・こうした賃上げ・処遇改善に合わせて、省力化投資等の投資拡大による生産性向上が極 めて重要。特に今後我が国経済の成長に大きく寄与する可能性のあるサービス業は人手不足が深刻であり、DX活用による生産性向上のポテンシャルは高い。中小企業の後継者 不足もあって事業継承・M&Aが重要であり、中堅企業は今後の成長のけん引役として期 待されている中で、経営の大規模化を図りながらDX投資を推進するとともに、労働者のAI 実装等のリスキリングを推進すべき。


◎資料4 マクロ経済運営について(参考資料)(有識者議員提出資料)
○経済動向に対応したマクロ経済運営
→・消費者物価は今年1月に前年比4.0%増と高水準となり、食料品の価格高騰等によるコストプッシュの物価高が消 費を下押しするリスクに留意が必要。物価高対策については、物価動向を注視するとともに、政府の取組をしっ かりと検証すべき。 ・金利上昇下にあっても財政への信認を維持し、長期金利の急激な上昇など不測の事態が生じないよう、政府は 来年度予算修正案に関わる安定的な財源確保に取り組むべき。また、全世代型社会保障構築の改革工程に 沿って取り組み、社会保障の持続可能性を確保すべき。

○力強い賃上げによる好循環拡大・成長力強化→・一昨年・昨年に続き、本年も力強い賃上げを実現し、我が国に賃上げモメンタムを定着させるとともに、それに見合った生産性の向上等を実現することにより、消費の活性化、経済の好循環につなげることが重要。・賃上げを起点に経済のダイナミズムを回復させるには、賃金を通じた適切な資源配分の促進が重要。今後、賃上げの原資を活用しながら、人手不足が深刻な職種には手厚く配分するなど需給を反映してメリハリある賃上げが期 待されるが、合わせてリスキリングと労働移動の円滑化を進め、賃上げと雇用増が同時に進む経済を構築すべき。・これまでは女性・高齢者などの労働参加が進んでいたが、今後は労働参加のペースが鈍化すると見込まれる中で、 リスキリングの支援など非正規労働者の賃上げ・処遇改善を後押しすべき。・賃上げ・処遇改善に合わせて、省力化投資等の投資拡大による生産性向上が極めて重要。経営の大規模化を図 りながらDX投資を推進するとともに、労働者のAI実装等のリスキリングを推進すべき。
○(参考)中長期試算等に基づいた実質GDP成長率の産業別分解(イメージ)→・過去10年(2012→22年度)と将来期間(2022→34年度成長移行ケース)の実質GDP成長率を産業別に寄与度分解。 ※2034年度の産業別GDPについては、過去のトレンド及びGX、DX、科学技術・イノベーション等の投資の効果を踏まえた 産業別の需要推計(JILPT)をもとに、2025年1月の中長期試算における実質GDPを分割して算出。 ・ 将来期間は、製造業、医療・福祉、研究開発、専門・技術サービス業等、情報通信業がGDPの伸びを牽引(図1)。 ・ 製造業の内訳をみると、一般機械器具・電気機械器具・その他の製造業が成長を牽引する見込み(図2)。
○(参考)産業別成長率の要因分解(イメージ)→・製造業、医療・福祉、研究開発、専門・技術サービス業等、情報通信業を中心に経済成長が高まっていくものの、 ・製造業、研究開発、専門・技術サービス業等は、労働生産性の上昇が大きく寄与する一方で、 ・医療・福祉、情報通信業は、就業者数の増加が大きく寄与している。 ・ 医療・福祉等、就業者数が大きく増加する産業の労働生産性を高めていくことが課題。 GX、DX、科学技術・イノベーション等への投資を通じて、経済全体のより一層の生産性向上、賃金向上を目指していくことが重要。


◎資料5賃金・物価・金利の正常化〜第1ステージから第2ステージへ〜
(渡辺努氏提出資料)東京大学大学院経済学研究科経済理論専攻 株式会社ナウキャスト創業者・技術顧問 https://sites.google.com/site/twatanabelab/ 2025年3月10日
○日米のモノ価格、サービス価格、賃金
→日米の格差違いあり。
○健全な循環への移行→日本版は成長に関する目標は?
Q1:正常化はなぜ始まったのか? Q2:正常化の過程で政府が果たしてきた役割、今後果たすべき役割は何か? Q3:正常化の仕上げに向けて今後何が必要か? Q4:正常化の実現で何が得られるのか?
→PDCAサイクルを視野に。

○民間予測機関によるCPI予測(2023年1月時点)
○This Time Is Different! 消費者のインフレ予想→1年後の物価は現在と比べてどうなると思いますか?  参照。
○This Time Is Different! 春闘での賃上げ→図の参照。
○経済財政諮問会議・特別セッション(2023年4月18日)議事要旨→最賃の計画化必要。
○正常化の仕上げに向けて今後何が必要か?→• 消費者のインフレ予想を2%程度の水準でアン カーさせる • 春闘での賃上げ要求のindexation • 政府の管理する価格・賃金のindexation
○賃金・物価・金利の正常化→第1ステージ:2022年春から現在まで⇒「名目」賃金、「名目」金利、物価という、3つの重要な「名目」変数の変調が修復される過程。
第2ステージ:先行き10年またはそれ以上⇒名目変数の修復が生産性など「実質」の変数へと波及する過程。 ・ 慢性デフレ期に機能不全に陥った「価格メカニズム」 が修復される過程。
○日米の労働生産性と実質賃金→日本では開差あり、アメリカでは開差なし。
○賃金・物価・金利の正常化が 財政に及ぼす影響↓
• 前提
– 政府債務は1100兆円ですべて名目債務  – 残存期間は9年
– 物価・賃金の上昇率がゼロ%から2%に上昇 
– 金利は2%ポイント上昇、新発債の利払いも同じだけ増加。
– 政府の歳出と歳入は2%だけ増加。
• 政府債務の実質減額の計算
– 物価・賃金の上昇率がゼロ%のときの残高は1100×1/(1+r)^9であり、物価・賃金の
上昇率が2%のときの残高は1100×1/[(1+r)^9×(1.02)^9] となる。したがって、政
府債務は両者の比である16%だけ減少(金額にして180兆円)。
– インフレ率ゼロ%の異常な経済では政府債務が過大になっていた。イ ンフレ率2%の
正常な経済への移行により、本来のあるべき水準まで 減ったと解釈すべき。

○インフレ税のタックスベース→7か国中0.215で最も高い。

次回は新たに「第4回労災保険制度の在り方に関する研究会 資料」からです。

令和7年第1回経済財政諮問会議 [2025年02月17日(Mon)]
令和7年第1回経済財政諮問会議(令和7年1月17日)
議 事 (1) 令和7年前半の検討課題 (2) 中長期の経済財政に関する試算
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2025/0117/agenda.html
◎資料1令和7年前半の検討課題について(有識者議員提出資料)
2025年1月17日  十倉雅和 中空麻奈 新浪剛史 柳川範之
石破総理が「楽しい日本」を目指す方向性を示されている。その実現のためには、国民一人一人が 自分の夢や目標に挑戦し、互いを尊重しながら自己実現を図っていける活力ある経済社会を構築する とともに、働く人々をはじめ頑張る人々が報われる、全ての国民が安心して暮らしていける仕組みを作 ることが重要。
そのために必要となる@的確なマクロ経済財政運営、Aグローバル経済の環境変化に 対応した経済成長、を実現するため、以下に掲げる政策課題に取り組むことが重要。経済財政諮問会 議において、政府内の他の会議体と連携しつつ検討を深め、内閣が目指す経済財政政策の全体像を 骨太方針で示していくべきである。
1.的確なマクロ経済財政運営
(当面の経済運営)
→足下の日本経済は、コストカット型経済から、賃上げと投資が牽引する成長型経済への移行に向け て着実に歩みを進めており、この移行を確実にできるか否かの正念場にある。2%の物価目標を安定 的に実現しつつ、「物価上昇を上回る賃上げの定着」を最優先目標に据えて取り組むべき。 (中長期的な経済運営)→中長期的には、人口減少が本格化する2030年代以降も、経済・財政・社会保障の持続可能性を確保するため、成長力を強化し、実質1%を安定的に上回る成長を実現しつつ、歳出・歳入両面から改革に 取り組むことが求められる。 同時に、地方で人口減少の加速と人手不足経済に対応しつつ地方の持続可能性の確保に向けた 検討を深めるとともに、地方の魅力を高め活力ある社会を実現するための仕組みを生み出していくこと が重要。 (取り組むべき施策)→ @賃金と物価の好循環→・賃上げモメンタムを強化し、「物価上昇を上回る賃金上昇」の定着に向けた道筋(価格転嫁対策など賃上げ環境 の整備、最低賃金引上げ、同一労働同一賃金の徹底等) ・コストプッシュによる一時的な物価高でも、デフレに後戻りするのでもなく、「適度な物価上昇」の安定的な実現。 A人手不足経済への対応→・リスキリング・人への投資、ジョブ型雇用、労働移動の円滑化等の労働市場改革による生産性向上 バツ1 人手不足に対応する規制・制度改革(就労の壁の抜本的見直し等)、 ・デジタル化の徹底活用と、エッセンシャルワーカーの人材確保(業種の特性に応じた人材確保策の促進、公的分 野の賃上げに向けた取組、外国人労働者との共生等) B持続可能な財政・社会保障の構築→ ・経済再生と財政健全化の両立(経済・財政一体改革、EBPMの推進など)、 ・年齢ではなく負担能力に応じて適切に支え合う全世代型社会保障の構築(国民の将来の安心確保による消費の 活性化、子育ての環境整備を通じた少子化対策など)、・人口減少が進む中での、地方行財政の持続可能性の確保とウェルビーイングの向上に係る方策の検討。

2.グローバル環境の変化に対応した経済成長〜令和の列島改造に向けて〜
(グローバル環境の変化と国際連携、科学技術力の強化)
→資源の無い我が国は、海外との貿易・投資の拡大とその基盤となる科学技術力が成長力強化に不可欠。厳しい国際情勢の中にあって、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序という基本的価値観を共有する国・地域と緊密に連携し、オープンでルールに基づく貿易・投資環境を維持・強化するとともに、経済安全保障を強化することが重要。二国間・多国間の枠組みにおいて、主張すべきは主張し、 国際的なルールメイキングを主導するなど、グローバル環境の変化に対して、柔軟に、したたかに、対応していくべき。同時に、貿易・投資の基盤となる我が国の科学技術力を強化していくべき。 (グローバルな視点からの「令和の列島改造」)→石破総理が提唱されている「令和の列島改造」の実現のためには、成長するグローバル経済の活力 を取り込み地方経済の成長につなげる、という視点が重要。また、人口減少を踏まえ、自治体の枠組みを超えた圏域での議論が有効。各地域・各圏域の特色に応じて、半導体やGX、HX等の世界の先端分 野の研究開発・生産拠点の拡大、インバウンドや農林水産品輸出の強化をはじめとして、各分野でグローバル需要を取り込む形で地方と都市が連携しつつ、高付加価値創出型の経済構造を構築するため、 ・海外市場に通じた都市人材の地方とのつながり強化(関係人口、二地域居住、特区等) ・自治体の枠組を越えた広域連携による、官民一体となった、グローバル市場で勝てる産業の育成 ・海外からの対内直接投資について、地方部にも積極的に呼び込むための投資環境の整備 等を積極的に進めるべき。
(取り組むべき施策)→ @ 内外からの投資を引き出す環境整備⇒・半導体・GX、HX等の戦略的な投資、グローバルな貿易・投資戦略などによる、「投資立国」の実現⇒海外への輸出など新ビジネス展開が可能となる環境整備(新ビジネス創出が可能となる規制・制度改革、事業承継・M&Aを通じた中小企業等の企業規模拡大・生産性向上)  ・ 国際競争力のある産業の創出に向けた、地方大学と民間企業の有機的な連携  ・「資産運用立国」に向けた取組(資産運用特区による資金の呼び込み、地域のビジネス・生活環境の整備等) A 地方のポテンシャルの拡大⇒・地域の社会課題解決に向けて、成功事例を面的に展開するためのメリハリある支援(関係人口や二地域居住の拡大、兼業・副業拡大、関係者のアイディアの結集)  ・自治体の枠組みを越えた産官学・多分野の広域連携(広域の圏域レベルでの将来ビジョン策定・連携強化等)、 政府機関・企業等の地方移転等によって、地方の成長に向けた体制強化  ・ハード・ソフト両面で防災機能の抜本的な拡充をはかるとともに、防災関連技術・ノウハウを国際展開。


◎資料2令和7年前半の検討課題(参考資料)(有識者議員提出資料)
2025年1月17日        十倉雅和 中空麻奈 新浪剛史 柳川範之
○マクロ経済財政運営→
・足下の日本経済は、コストカット型経済から、賃上げと投資が牽引する成長型経済への移行に向けて着実に歩みを進め ており、この移行を確実にできるか否かの正念場にある。2%の物価目標を安定的に実現しつつ、「物価上昇を上回る 賃上げの定着」を最優先目標に据えて取り組むべき。  ・ 中長期的には、人口減少が本格化する2030年代以降も、経済・財政・社会保障の持続可能性を確保するため、成長力 を強化し、実質1%を安定的に上回る成長を実現しつつ、歳出・歳入両面から改革に取り組むことが求められる。
○グローバル環境の変化に対応した経済成長→・オープンでルールに基づく貿易・投資環境を維持・強化するとともに、経済安全保障を強化することが重要。二国間・多 国間の枠組みにおいて、主張すべきは主張し、国際的なルールメイキングを主導するなど、グローバル環境の変化に対 して、柔軟に、したたかに、対応していくべき。同時に、貿易・投資の基盤となる我が国の科学技術力を強化していくべき。  ・ 「令和の列島改造」においても、成長するグローバル経済の活力を取り込み地方経済の成長につなげる、という視点が重要。また、人口減少を踏まえ、自治体の枠組みを超えた圏域での議論が有効。各地域・各圏域の特色に応じて半導体 やGX等の世界の先端分野の生産拠点の拡大、インバウンドや農林水産品輸出の強化をはじめとして、各分野でグロー バル需要を取り込む形で地方と都市が連携しつつ、高付加価値創出型の経済構造を構築すべき。


◎資料3−1中長期の経済財政に関する試算(2025 年1月)のポイント(内閣府)
○経済の中長期的な展望↓

【成長移行ケース】→賃上げと投資が牽引する成長型経済に移行し、実質成長率が20年代後半に1%台半ば、 30年度以降も1%を安定的に上回る成長(名目成長率は中長期的に2%台後半)。 全要素生産性(TFP)上昇率が過去40年平均の1.1%程度まで高まるシナリオ。
【過去投影ケース】→ゼロ近傍の成長を過去数値より投影し、中長期的に実質0%台半ば、名目0%台後半の成長。 TFP上昇率が直近の景気循環の平均並み(0.5%程度)で将来にわたって推移するシナリオ。

○財政の中長期的な展望↓
【国・地方のPB対GDP比】→ • 昨年11月の経済対策に係る歳出の追加等により、2025年度のPBは現時点で赤字の見込みとなる(▲4.5兆円程度、 対GDP比▲0.7%程度)。2026年度は、経済成長に伴う歳入増や同対策に係る歳出の執行縮小により、黒字化する 姿となっている(※)。 • その後、成長移行ケースでは黒字幅が拡大する一方、過去投影ケースでは次第に縮小して赤字となっていく。 (※)「防衛力整備計画」及び「こども未来戦略」は試算に反映している。国土強靱化実施中期計画は、一定の仮定の下、機械的に織り込んでいる。 その他の具体的に想定されない追加歳出は織り込んでいない。
【国・地方の公債等残高対GDP比】→ • 成長移行ケースではPBが黒字化する中で徐々に低下するが、過去投影ケースでは2020年代後半に上昇に転じる

○(参考)高成長実現ケース→成長移行ケースよりも更に高い成長となる高成長実現ケース(TFP上昇率がデフレ状況に入る前の期間の平均 1.4%程度まで高まるシナリオ)では、PB対GDP比や公債等残高対GDP比が、成長移行ケースに比べて、更に改善する姿となる。


◎資料3−2中長期の経済財政に関する試算(2025 年1月)(内閣府)
1.はじめに
→本試算は、今後10年間程度の経済財政の展望を提示するものであり、経済再生と財政健全化の進捗状況の評価や中長期的な経済財政政策の検討のための基礎情報として、その審議を行う経済財政諮問会議に提出するもの。この経済財政の展望は、試 算時点で利用可能なデータや政策方針を反映し、経済・財政・社会保障を一体的に示す「経済財政モデル」を用いて試算を行っている1 。
2.経済の中長期的な展望→本試算は、各種経済統計の実績値を反映するとともに、2025 年度までの経済動向については政府経済見通し等を織り込んで推計している。2026 年度以降については、G DPや物価動向等の経済の中長期的な展望を比較考量できるよう、TFP(全要素生産性 )上昇率が直近の景気循環の平均並みで将来にわたって推移する想定の「過去投 影ケース」と、TFP上昇率が過去 40 年平均程度まで高まる想定の「成長移行ケー ス」、TFP上昇率がデフレ状況に入る前の期間の平均程度まで高まる想定の「高成長 実現ケース」 を示している。各シナリオの主要な前提は以下のとおり。 各シナリオの主要な前提 参照。
(1)潜在成長率
→我が国の潜在成長率は1980年代に4.2%、1990年代に1.6%となった後、2000年代に 入ってからは1%以下で推移している。今後、少子高齢化の影響により、生産年齢人 口の減少が加速していく中で、経済構造の変化やこれまで以上の生産性上昇がなければ、経済成長は低下していくことが見込まれる。 直近の景気循環並みのTFP上昇率(0.5%程度)で推移する過去投影ケースでは、 内生的に計算される資本投入量の潜在成長率への寄与については、小幅ながらプラスとなるが、労働投入量については、労働参加は一定程度進むという想定を置いているものの、生産年齢人口の減少が大きく影響し、マイナスの寄与が拡大していくこととなる。総じて、潜在成長率は中長期的に0%台半ばにとどまる姿となっている。 これに対し、賃上げと投資が牽引する成長型経済に移行する成長移行ケース及び高成長実現ケースでは、最低賃金引上げ、人への投資、GX、DX、科学技術・イノベ ーション等の重点課題における中長期の計画的な投資の推進等によるイノベーションの活性化や生産の効率化等を通じて、TFP上昇率が今後3年程度を経て1.1%程度(成長移行ケース:過去40年間のTFP上昇率の平均)、更には1.4%程度(高成長実現ケース:デフレ状況に入る前のTFP上昇率の平均)に到達すると想定している。 この想定の下、TFP上昇率の高まりや企業の収益環境の改善によって、設備投資が促進され、内生的に計算される資本投入量の寄与が高まる結果となっている。これは、 各種投資促進により、民間の資本形成の増加が期待されることとも整合的な結果とな っている。労働投入量については、経済成長に伴って労働需要が高まるとともに、最 低賃金も含めた賃上げの効果や多様な働き方の拡大等により、女性と高齢者を中心に 過去投影ケースよりも労働参加が進むと想定している。それでもなお、人口減少・高 齢化の影響を相殺することはできず、労働投入量の寄与は小幅のマイナスとなる。総じて、潜在成長率は、中長期的に1%台半ば〜2%程度で推移する姿となっている。⇒図1:潜在成長率の内訳 参照。

(2)経済成長率、賃金上昇率→ 実質GDP成長率は、2013年度以降、新型コロナウイルス感染症が拡大する前の 2019年度までは、振れを伴いながらも平均0.9%程度で推移した。同感染症が拡大した 2020年度は大幅なマイナス成長(▲3.9%)、2021年度にはその反動でプラス成長(3.0%)となるなど、人為的な経済活動の抑制と緩和の影響を強く受けた後、2022年度は1.4%、 2023年度は0.7%となった。名目GDP成長率については、2013年度以降、実質と同様、 振れを伴いながらも平均1%台で推移した後、2022年度以降、物価上昇の影響を受けて上昇した。2023年度は4.9%と1991年度以来の高い伸びとなった。 政府経済見通しによれば、2024年度のGDP成長率は、内需は堅調である一方、財 輸出の鈍化とサービス輸入の増加により外需がマイナス寄与となり、実質で0.4%程度、名目で2.9%程度と見込まれる。2025年度は、物価上昇が落ち着く中、個人消費等 の内需が増加し、実質で1.2%程度、名目で2.7%程度の成長が見込まれる。 その後、マクロの需給がほぼ均衡する中で、実質GDP成長率は潜在成長率並みで 推移する姿となっている(過去投影ケースでは0%台半ば、成長移行ケースでは1% 台半ば、高成長実現ケースでは2%程度)。名目GDP成長率も同様に中長期的な推移 をみると、過去投影ケースでは0%台後半、成長移行ケースでは2%台後半、高成長 実現ケースでは3%程度で推移する姿となっている。 こうした成長率の下、試算最終年度(2034年度)の名目GDPは、過去投影ケース では680兆円程度、成長移行ケースでは810兆円程度、高成長実現ケースでは830兆円程度に達する姿となっている。⇒ 図2:実質GDP成長率 図3:名目GDP成長率 参照。
 また、今後人口減少が本格化していくことを踏まえると、マクロ(一国全体)の経 済成長に加え、国民の生活水準や生産性などの観点から、1人当たり成長の姿を見て いくことも重要である。1人当たり実質GDP成長率は、人口減少の影響を受け、マ クロで見た実質GDP成長率よりも高くなり、過去投影ケースでは1%程度、成長移 行ケースでは2%程度、高成長実現ケースでは2%台半ばで推移する姿となっている。⇒図4:1人当たり実質GDP成長率 参照・
次に、成長に応じた賃金の上昇が達成されているかといった分配面を確認するため、 賃金上昇率をみる。賃金上昇率は、2013年度以降、女性や高齢者の労働参加が進む中で非正規雇用者比率が上昇したこと等から下押しされてきたが、近年、労働需給のタイト化等の押上げ要因もあり、2013〜2023年度の平均で0.7%程度で推移してきている。2024年度には、33年ぶりの高水準となった春季労使交渉の賃上げ率を受け、2.8% 程度の上昇が見込まれ、2025年度には2.8%程度と見込まれる。 その後、過去投影ケースでは、労働生産性や物価の上昇率が小幅なものにとどまり、 中長期的に1%程度で推移する姿となっている。成長移行ケース及び高成長実現ケースでは、過去投影ケースよりも資本形成が進み、労働生産性が高まるほか、相対的に 高い成長率の下、需要の増大等に伴い物価が上昇していくことから、これが賃金の上 昇に反映され、中長期的に3%〜3%台半ばで推移する姿となっている。 なお、賃金上昇率から、後述する消費者物価上昇率を差し引いた実質的な賃金上昇 率については、過去投影ケースでは中長期的に0%程度、成長移行ケース及び高成長 実現ケースでは賃金上昇率が消費者物価上昇率を上回ることから1%〜1%台半ばと なる。⇒図5:賃金上昇率 参照。

(3)消費者物価、長期金利→2013年末以降、デフレではない状況となる中、消費者物価上昇率は、2013〜2019年度の平均で0.8%程度で推移した。新型コロナウイルス感染症が拡大した2020、2021 年度は、それぞれ▲0.2%、0.1%となったが、エネルギー・食料品を中心とした価格 上昇に伴い、2022年度は3.2%となった。2023年度は3.0%となり、政府経済見通しに よれば、2024年度は2.5%程度、2025年度は2.0%程度と見込まれる。 その後、過去投影ケースでは、消費者物価上昇率は、中長期的に1%程度で推移する姿となっている。また、名目長期金利は、中長期的に1%台半ばまで上昇する姿となっている。 成長移行ケース及び高成長実現ケースでは、消費者物価上昇率は、潜在成長率が高 まり、2026年度以降も安定的な賃金上昇が見込まれる中で、中長期的に2%程度で推移する姿となっている。また、名目長期金利は、経済成長に伴って中長期的に3%〜3%台半ばまで上昇する姿となっている。⇒図6:消費者物価上昇率 図7:名目長期金利 参照。

3.財政の中長期的な展望→ 財政については、令和7(2025)年度予算等を反映した上で、経済シナリオと整合的な姿を示している。歳出については、多年度の計画により具体的な規模が想定され ている防衛力強化や実施中期計画の策定が法定されている国土強靱化等を織り込みつつ、社会保障歳出は高齢化要因や物価・賃金上昇率等を反映して増加し、それ以外の一般歳出は物価上昇率並みに増加すると想定している。歳入については、税収等はマクロ経済の姿と整合的な形で推移すると想定。本節では、財政の持続可能性 に注目する観点から、過去投影ケースと成長移行ケースに関して記述する。なお、成 長移行ケースよりも更に高い成長となる高成長実現ケースでは、PB対GDP比や公 債等残高対GDP比が、成長移行ケースに比べて、更に改善する姿となる。
(1)国・地方の基礎的財政収支及び財政収支 →国・地方の基礎的財政収支(PB)対GDP比については、2013年度以降、高齢化 の進展や補正予算等による歳出増に関わらず、当初予算における歳出改革を進めてき たことや、名目GDPの拡大、消費税率引上げ等による歳入増加により、新型コロナ ウイルス感染症の拡大前まで着実に改善してきた(2018年度▲1.9%程度)。その後、 同感染症の拡大や原油価格・物価高騰対策等に伴う歳出増(多くが経済下支えに資する 支出)により、2020年度は▲9.1%程度、2021年度は▲5.5%程度、2022年度は▲3.6% 程度、2023年度は▲2.1%程度となった。2024〜2025年度は、賃金・所得の増加に向けた施策や物価高への対応等を含む総合経済対策に基づく歳出増等があり、2024年度は▲ 2.9%程度、2025年度は▲0.7%程度となることが見込まれる。 その後、過去投影ケースでは、2026年度に0.1%程度の黒字となった後、次第に黒字 幅が縮小して赤字となっていく。これは、名目GDP成長率並みに伸びていく歳入の 増加が、高齢化や物価・賃金要因等で伸びていく歳出の増加を下回るためである。な お、国・地方の財政収支対GDP比については、金利上昇を受けて利払費が徐々に増 加し、試算期間内を通じて赤字が続く姿となっている。
成長移行ケースでは、国・地方のPB対GDP比は2026年度以降、試算期間内にお いて黒字幅が拡大する姿となっている。これは、名目GDP成長率並みに伸びていく歳入の増加が、高齢化や物価・賃金要因等で伸びていく歳出の増加を上回るためである。なお、国・地方の財政収支対GDP比は、金利上昇を受けて利払費が拡大し、試 算期間内において僅かな赤字で推移する姿となっている。⇒図8:国・地方のPB対GDP比 参照。


(2)国・地方の公債等残高→国・地方の公債等残高対GDP比は、2000年代、国・地方のPB赤字、名目GDP の伸び悩みを背景に上昇傾向にあり、リーマンショック時には大きく上昇した。2013 年度以降、国・地方のPB対GDP比の改善と、名目GDPの増加に伴い、その上昇ペースは鈍化したが、2020年度以降、新型コロナウイルス感染症の影響とそれに対応 するための補正予算等により再び大きく上昇し、2022年度は211.5%程度となった。 2023年度は、名目GDPの拡大等により、205.2%程度と低下に転じた。当面は、2024 年度は206.6%程度、2025年度は203.6%程度と低下傾向で推移することが見込まれる。 その後、過去投影ケースでは、分母となる名目GDPの伸びが小幅にとどまる中で、 国・地方のPB悪化等の影響を受けて、分子となる国・地方の公債等残高が増加する ことから、2020年代後半に上昇に転じる姿となっている。 成長移行ケースでは、分母となる名目GDPが拡大するとともに、国・地方のPB が改善していく中、分子となる国・地方の公債等残高の増加幅が抑制されることで、 試算期間内で安定的に低下する姿となっている。 なお、長期金利の上昇に伴い、低金利で発行した既発債についてより高い金利によ る借換えが進むことに留意が必要である。⇒図9:国・地方の公債等残高対GDP比 参照。

<BOX>国・地方のPBについて
・国・地方のPB対象歳入・歳出(対GDP比)の推移
・2025 年度における国・地方のPBの変化要因

4.リスク・不確実性→これまで述べてきた中長期の経済財政の姿には、種々のリスク・不確実性が伴う。 短期的には、欧米における高い金利水準の継続や中国における不動産市場の停滞の継 続に伴う影響など、海外景気の下振れが我が国経済を下押しするリスクとなっている。 また、物価上昇、アメリカの今後の政策動向、中東地域をめぐる情勢、金融資本市場 の変動等の影響に十分注意する必要がある。さらに、中長期の時間軸を見据えると、 例えば、以下(@)〜(B)のようなリスク・不確実性が考えられる。 リスク・不確実性のうち、外的なインパクトが我が国の経済と財政に及ぼす経路や 定量的な影響を把握するため、成長率の低下及び長期金利の上昇が生じた場合等の影 響について、機械的な試算による感応度分析を実施した。なお、本感応度分析は、機 械的な設定値を置いて実施したものであり、具体的なシナリオや特定の政策変更を念 頭に置いたものではない。 (@)中長期的な経済成長の変化 IMF「世界経済見通し」(2024年10月)では、今後の世界経済の成長について、金 融引締めの想定を上回る影響、新興国・途上国での政府債務負担の高まり、中国の不 動産部門の想定を上回る縮小、気候変動・地域紛争・地政学的緊張の高まりによる商 品価格の急騰、保護貿易主義の強化等による下振れリスクが挙げられている。こうし た世界経済の下振れは、輸出の減少等を通じて生産と企業業績を下押しするが、この 影響が長期化した場合、投資の低迷等を通じ、我が国の中長期的な経済成長にマイナ スの影響を与える。 国内経済においては、足下で見られているように、賃上げの動きや高い投資意欲が 継続する場合など、中長期の成長パスを上振れさせる要因もみられる一方で、大きな 経済変動や、少子化、労働参加意欲の低下などによる期待成長率の低下が生じる場合 など、中長期の成長パスを下振れさせる要因も考えられる。 以下では、潜在成長率が低下した場合の影響について、機械的な試算による感応度 分析を実施した。ここではTFP上昇率について、過去投影ケース対比で継続的に 0.5%pt程度引き下がったと設定した。結果、資本投入量の減少も加わり、潜在成長率 は試算期間の最終年度(2034年度)で0.9%pt程度低下する。この成長率低下による歳入減から、試算期間の最終年度において、国・地方のPB対GDP比は0.9%pt程度悪 化し、国・地方の公債等残高対GDP比は9.4%pt程度上昇する。⇒図10:潜在成長率が低下した場合 参照。

(A)金利の上昇→以下では、長期金利が上昇した場合の影響について、機械的な試算による感応度分 析を実施した。具体的には、長期金利が各ケース対比で継続的に0.5%pt程度上振れた と設定した。新発債・借換債の金利上昇により利払費が増加するため、両ケースにお いて国・地方の公債等残高対GDP比は試算期間の最終年度で3.2%pt程度上昇する。⇒図11:名目長期金利が上昇した場合 参照。

(B)景気変動等への対応→ 様々な経済の下振れ要因となるショックが発生した場合、発生した危機に対処するための追加的な財政支出が行われることが多い。国・地方の公債等残高対GDP比は、 過去20年程度の間(2002〜2023年度)に90%pt程度上昇したが、特にリーマンショッ クと新型コロナウイルス感染症への対応を行った期間で40%pt程度上昇した。 経済ショックに対し財政による調整機能が働き、早期に経済が安定することは望ま しいが、これまでリーマンショック、新型コロナウイルス感染症ほどの大きなショックではない場合にも、時々の経済情勢等に対する機動的な対応として、補正予算が編成されてきた。 一般会計における補正予算は、財政法上、特に緊要となった場合に編成されるもの であり、本試算では、そうした現時点で具体的に想定されない支出は織り込まない姿 を示している。政府は、緊急時の財政支出を必要以上に長期化・恒常化させないように取り組むこととしているが、それとともに、経済の安定的成長に高い効果をもたらすようワイズスペンディングを実現していくことが必要である。 以下では、政府支出が本試算で想定するよりも増加した場合の影響について、機械的な試算による感応度分析を実施した。具体的には、政府支出が各ケース対比で毎年 名目GDPの0.5%程度増加するものと設定した。これにより両ケースともにPBは 下振れ、過去投影ケースでは赤字が継続する姿となっている。⇒図12:政府支出が増加した場合 参照。

上記(@)〜(B)に加え、賃金交渉が賃金動向に与える影響、価格転嫁の状況が 物価・賃金に与える影響、税収のトレンドの変化や決算等を受けた財政収支の変動など、種々の不確実性が伴うため、試算結果については、相当な幅をもって理解される必要がある。 中長期の経済財政政策の検討においては、こうしたリスク・不確実性について留意して議論がなされることが重要であり、これらの議論に貢献するため、中長期的な経 済財政の展望では、リスク・不確実性にかかる影響を示すことが有用である。


1.主要計数表
・過去投影ケース  ・成長移行ケース  ・高成長実現ケース
2.財政の詳細計数表
・過去投影ケース  ・成長移行ケース 

(付録1)詳細な前提→(1)マクロ経済に関する想定(過去投影ケース、成長移行ケース・高成長実現ケース) (2)歳入 (3)歳出(4)防衛力強化の経費及び財源に関する想定 (5)こども・子育て政策強化の経費及び財源に関する想定 
(6)多年度で収支を完結させる枠組みを設定している施策に関する取扱い(@ 東日本大震災からの復旧・復興対策。A GX対策。B AI・半導体支援)
(付録2)部門別収支と国民総所得の推移
(付録3)過去の試算結果の推移→「実質GDP」「名目GDP」
(付録4)民間予測との比較
(付録5)成長と分配の好循環


◎資料4参考資料(中長期の経済財政に関する試算を踏まえて)(内閣府)
○中長期試算で示した経済の姿
→・「中長期試算」では、最低賃金も含めた賃上げや、人への投資、GX・DXなどの政策効果が発揮されるなか、 成長型経済への移行が実現するケース(以下、成長移行ケース、名目2%台後半の成長)を示し、 更に高成長が実現するケース(以下、高成長実現ケース、名目3%台の成長)も視野に入る経済の姿を併して示した。 ・ 成長移行ケースの場合、1人当たり平均賃金は年率3%程度で増加する姿になっている
○企業部門のISバランス→成長型経済への移行には、企業部門による適切な賃金への分配と国内投資の強化が欠かせない。これらの実現により、 中長期試算・成長移行ケースでは、企業部門のISバランスが投資超過へとシフトしていくことが見込まれている。 ・ 近年の企業部門の動向をみると、投資は増加傾向にあるものの、均してみれば、コロナ禍からの営業余剰や財産所得 の回復による貯蓄の増加の範囲内にとどまっている。その結果、ISバランスは足下では横ばい圏内で推移。 ・ 企業部門が投資主体として我が国の持続的な成長のけん引役となるよう、官民連携のほか、ボトルネックの点検など、 国内投資の更なる促進策を検討していく必要
○国・地方のPBの動向→・今回の中長期試算において、2025年度の国・地方のPBは、2024年7月試算と比べると、税収の上振れや歳出効率化 により改善する一方、2024年度経済対策の執行に伴う支出、所得税の基礎控除の引上げ等の税制改正、防衛力強化財 源の影響等によって、4.5兆円程度の赤字となった。 ・2025年度のPBの水準は、PB目標を掲げた2001年度以降で最も赤字幅が縮小する見通し。2026年度は、経済成長に 伴う歳入増や経済対策に係る歳出の執行縮小により、黒字化することが見込まれる。
○PBと債務残高対GDP比の関係→・成長型経済への移行を実現する中で、市場や国際社会における中長期的な財政の持続可能性への信認を維持していくためには、財政健全化を進めていくことが求められる。 ・ 債務残高対GDP比の動向は、名目金利と名目成長率の大小関係と、PBの水準の組合せで決まる。名目金利や名目成長率は民間の経済活動に大きく左右されることを踏まえると、「金利のある世界」となる中、債務残高対GDP比 の「安定的」な引下げには、成長力強化とともに、PBの黒字化が一層重要。


◎資料5中長期の経済財政に関する試算を踏まえて(有識者議員提出資料)
2025年1月17日   十倉雅和 中空麻奈 新浪剛史 柳川 範之
経済・財政・社会保障の持続性確保に向けて、「賃上げと投資が牽
引する成長型経済」へと移行し、中長期試算の成長移行ケースのように、人口減少下でも、実質1%を上回る成長を実現する必要がある。我が国を成長型経済へと導く予算・税制、規制・制度改革による措置を一体的・効果的に実行していくべき。 またこのためにも、各年度の予算編成において、経済再生と財政健全化を両立させなければならない。 政府は、「経済あっての財政」との考え方の下、2025年度のPB黒字化を目指して取り組んできたが、今回の中長期試算では同年度のPBは黒字化しない見通しが示された。この結果の検証・反省を次につなげ ることで、我が国財政の信認を確保していくことが重要である。こうした考え方に基づき、以下提言する。
1.財政健全化の進捗の検証→今回の試算結果は、2025年度にPBは黒字化しないものの、総じてみれば財政健全化に向けた前進 が確認できる。ただし、今後の経済状況の変化やそれに伴う追加的な対応が生じる可能性には十分に留意する必要がある。
・ 2025年度のPBは、黒字化しないものの、対GDP比▲0.7%程度と、PB目標を掲げた2001年度以降で 最も赤字幅が縮小する見通し1 。これまでの政策運営により、財政状況は着実に改善。
・ 2025年度のPBの変化要因をみると、経済成長に伴う税収の増加や歳出改革は改善に寄与。他方、 経済対策による支出増や、物価上昇・就業調整への税制面での対応、防衛力強化財源の影響等が下 押し。引き続き、「経済あっての財政」の考え方の下、必要な政策は講じつつ、歳出構造の平時化等、 次の有事に備えた財政運営は重要。
・PB黒字化の時期は、2026年度の見通し。骨太方針2024で示された「経済・財政新生計画」の計画期間(2030年度まで)を通じた中期的な財政の姿は大きくは変動していない。
・ 公債等残高対GDP比は、7月試算から上振れ。ただし、成長移行ケースでは徐々に低下し、過去投 影ケースでは2020年代後半に上昇に転じる姿は変わらない。PB改善とともに、成長力強化が重要。

2.経済再生と財政健全化の両立に向けて→ 以上の進捗を踏まえれば、早期のPB黒字化に向け、「経済・財政新生計画」の枠組みの下、潜在成長 率の引上げに重点を置いた財政運営に取り組むとともに、これまでの歳出改革努力や歳出構造の平時化、恒常的な支出増に対する財源確保などを継続すべき。その際、「EBPMアクションプラン」と「改革実 行プログラム」に沿って、プロセス管理とデータに基づくワイズスペンディングを徹底することが重要。 その上で、今年の骨太方針に向けた議論の中で、特に次の点を審議すべき。
・ 最低賃金の引上げを始めとする賃上げの中長期的な経済への波及の把握
・ 投資に係る環境や効果の分析と、企業部門が投資超過へとシフトしていくために必要な方策
・ 現行計画の枠組みの下での、早期のPB黒字化実現を含む、財政健全化に向けた取組
・ 社会保障の給付と負担等に係る新たな将来見通しの提示と、全体像を踏まえた社会保障改革の推進
・ 経済・物価動向等に配慮した歳出改革努力や公的部門のエッセンシャルワーカー確保に向けた方策


◎配付資料1)「経済・財政一体改革推進委員会」の設置について
平 成 2 7 年 6 月 3 0 日 経済財政諮問会議  平成 27 年 12 月 24 日一部改正
平成 29 年1月 25 日一部改正
平成 30 年7月9日一部改正
令和7年1月 17 日一部改正
1.趣旨→「経済財政運営と改革の基本方針 2024」に定める「経済・財政新生計画」を着実に実行するため、経済財政諮問会議の下に、専門調査会として「経済・財政一体改革推進委員会」を設置する。 推進委員会においては、経済、社会、環境や技術等の変化に適切に対応した予算編成や 制度改正に資するよう、人口減少下の持続可能な国・地方の行財政、人々のやりがいやウェルビーイング、デジタル・新技術の導入等による生産性向上等に着目しつつ、経済・財政一体改革を取り巻く課題について分析・評価し、プロセス管理を行う。具体的には以下の取組を進め、諮問会議に報告を行う。
(1)経済・財政一体改革の着実な推進に向け、EBPMアクションプラン及び改革実行 プログラム等により、毎年改革の進捗管理・点検・評価を行う。 なお、これらについては毎年必要な見直しを行い改訂するとともに、おおむね3年 を目途として包括的な検証を行う。 (2)経済・財政一体改革において客観的なデータに基づくワイズスペンディングを徹底 し、EBPMをさらに発展させるため、データの更なる利活用、分析手法の向上、府 省等間の連携協力を図る。 2.推進委員会の構成 (1)推進委員会は、経済財政諮問会議有識者議員及び有識者により構成する。
(2)推進委員会の下に、EBPMアドバイザリーボード及びテーマ別にワーキング・グ ループを置くことができる。また、必要に応じ、特定のテーマに係る会議等を開くことができる。
(3)各ワーキング・グループではテーマ毎の議論を深める。EBPMアドバイザリーボ ードでは、EBPMの取組の発展に資する検討を行う。推進委員会では、経済・財 政新生計画全体を俯瞰・横断する視点から議論を整理・調整する。

次回は新たに「第 80 回 労働政策審議会雇用環境・均等分科会」からです。

令和6年第16回経済財政諮問会議 [2025年02月10日(Mon)]
令和6年第16回経済財政諮問会議(令和6年 12 月 26 日)
議 事 (1) 令和7年度の経済見通し (2) 経済・財政新生計画に基づく EBPM の強化及び改革工程の具体化
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2024/1226/agenda.html
◎資料5−3 EBPM アクションプラン 2024
≪総論≫

1. 「EBPMアクションプラン」の位置づけ
・位置づけ
・EBPMアクションプランの活用
・関係府省庁等との連携
2.EBPM推進に向けた今後の課題及び進め方→2025年春にかけて、改革工程に係るKPIを用いた進捗管理・点検・評価を行い、その成果をその後のEBPMアクションプラ ンの見直しの検討に活用する。
(参考)「EBPMアクションプラン」の今後3年間のスケジュール→2025年夏(1年目) 2026年夏(2年目) 2027年夏(3年目)

≪各論≫
○「EBPMアクションプラン2024」が対象とした重要政策・計画
1.効率的な医療・介護サービスの提供体制の構築(地域医療構想、医師の偏在是正等)

1.政策体系の概要→政策目標:国民皆保険の持続可能性を堅持しつつ、国民一人ひ
とりが、年齢や性別にかかわらず、可能な限り長く、健康で有意義な生活を送りながら活 躍できる社会を実現する。⇒ @〜C 参照。
2.検証事項
3.分析・検証方法、用いるデータ等→【医療提供体制】【医療費適正化】【医療DX】
【介護DX】
4.分析・検証体制→【医療提供体制】【医療費適正化】【医療DX】
【介護DX】
5.ロードマップ→【医療提供体制】【医療費適正化】【医療DX】
【介護DX】
6.エビデンスの政策見直しへの活用方法→【医療提供体制】【医療費適正化】
【医療DX】【介護DX】

○これまでの主な議論(新たな地域医療構想の基本的な方向性(案))→現行の地域医療構想から新たな地域医療構想へ。参照。
○医師偏在の是正に向けた総合的な対策パッケージ(概要)@
○医師偏在の是正に向けた総合的な対策パッケージ(概要)A
○かかりつけ医機能が発揮される制度整備
○医療費適正化計画(概要)について
○全国医療情報プラットフォームの全体像(イメージ)
○介護分野におけるデジタル行財政改革の方向性
○協働化・大規模化等による介護経営の改善に関する政策パッケージ

2.年齢・性別に関わらず生涯活躍できる環境整備
1.政策体系の概要→国民皆保険の持続可能性を堅持しつつ、国民一人ひとりが、年
齢や性別にかかわらず、可能な限り長く、健康で有意義な生活を送りながら活 躍できる社会を実現する。⇒ @〜B 参照。
2.検証事項
3.分析・検証方法、用いるデータ等→【女性活躍】【高齢者雇用】
【予防・健康づくり】
4.分析・検証体制→【女性活躍】【高齢者雇用】【予防・健康づくり】
5.ロードマップ→【女性活躍】【高齢者雇用】【予防・健康づくり】
6.エビデンスの政策見直しへの活用方法→【女性活躍】【高齢者雇用】【予防・健康
づくり】
○女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(平成2 7年法律第6 4号)の概要
○高齢者雇用対策の概要
○健康日本21(第三次)の概要
○国民や企業への健康づくりに関する新たなアプローチ <スマート・ライフ・プロジェクト> 参画団体数 11,773団体 (R6.10.31現在)
○データヘルス計画とは

3.少子化・こども:急速な人口減少に歯止めをかける少子化対策(こども未来戦略)
1.政策体系の概要→政策目標:少子化のトレンドの反転、こどもを産みたい、育て
たいとの希望が叶う社会の実現、 こどもたちが健やかに育まれる社会の実現。
2.検証事項
3.分析・検証方法、用いるデータ等
4.分析・検証体制
5.ロードマップ
6.エビデンスの政策見直しへの活用方法
○少子化対策のKPI(素案)
○こども未来戦略 「加速化プラン」 施策のポイント

4.質の高い公教育の再生
1.政策体系の概要→政策目標:個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実と学
校における働き方改革を通じた学校教育の質の向上
2.検証事項
3.分析・検証方法、用いるデータ等
4.分析・検証体制
5.ロードマップ
6.エビデンスの政策見直しへの活用方法

○国策としてのGIGAスクール構想の更なる推進
○学校における働き方改革

5.研究・イノベーション力の向上
1.政策体系の概要→政策目標:研究大学群における多様で卓越した研究を生み出す
環境の再構築及び新たな産業を創出するイノベーション・エコシステムの形成
2.検証事項
3.分析・検証方法、用いるデータ等
4.分析・検証体制
5.ロードマップ
6.エビデンスの政策見直しへの活用方法

○国際卓越研究大学法に基づく基本方針の主なポイント@
○国際卓越研究大学法に基づく基本方針の主なポイントA
○地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS)の支援スキーム
○研究環境の強化に資する観点からの研究時間の質の向上ガイドライン

6.広域のまちづくり
1.政策体系の概要→政策目標:広域的な都市圏のコンパクト化の推進による地域社
会の持続可能性の向上、まちづくり計画と連携した老朽化対策(修繕・更新、集約・複合化等)の推進によるインフラ機能の確実かつ効率的な確保。
2.検証事項
3.分析・検証方法、用いるデータ等
4.分析・検証体制
5.ロードマップ
6.エビデンスの政策見直しへの活用方法

○広域のまちづくり→人口減少とインフラ老朽化が進む中、広域的な都市圏のコンパクト化の推進による地域社会の持続可能性の向上と、 まちづくり計画と連携した老朽化対策(修繕・更新、集約・複合化等)の推進によるインフラ機能の確実かつ効率的な確保を図る。

7.地方創生2.0
1.政策体系の概要→政策目標:国民・国・地方が一丸となった地方創生の機運醸成、
地方創生の好事例の横展開等を通じて、都市も地方も、安心・安全で心豊かに暮らせる持続可能な地域経済社会を創ることを目指す。 ※「基本的な考え方」のポイント(一部抜粋) (1)安心して働き、暮らせる地方の生活環境の創生 (2)東京一極集中のリスクに対応した人や企業の地方分散 (3)付加価値創出型の新しい地方経済の創生。
2.検証事項
3.分析・検証方法、用いるデータ等
4.分析・検証体制
5.ロードマップ
6.エビデンスの政策見直しへの活用方法

○新しい地方経済・生活環境創生本部(新地方創生本部)について
○地方創生2.0の「基本的な考え方」概要→以下の5本柱に沿った政策体系を検討し、来年夏に、今後10年間集中的に取り組む基本構想を取りまとめる⇒@安心して働き、暮らせる地方の生活環境の創生A東京一極集中のリスクに対応した人や企業の地方分散B付加価値創出型の新しい地方経済の創生Cデジタル・新技術の徹底活用D 「産官学金労言」の連携など、国民的な機運の向上。

8.防衛生産・技術基盤の維持・強化
1.政策体系の概要→政策目標:自衛隊の任務遂行に必要不可欠な防衛生産⇒・技術基盤を維持・強化するため、 ・事業撤退等のサプライチェーンリスクにできるだけ未然に対処する ・新しい戦い方に必要な先端技術を含め、必要な技術をできるだけ早期に取り込むとともに、より装備化につながる研究を促進する ・防衛装備移転を推進する
2.検証事項
3.分析・検証方法、用いるデータ等
4.分析・検証体制
5.ロードマップ
6.エビデンスの政策見直しへの活用方法

○防衛生産基盤強化法
○集中的な研究開発投資・防衛技術基盤の強化→・将来の戦い方に直結し得る装備・技術分野に集中的に投資。また、10年より先も見据え、防衛用途 に直結し得る技術に重点的に投資し、早期に技術獲得。 ・研究開発プロセスに、従来型とは異なる新たな研究開発の手法を導入。 @ 防衛省による、 集中的な研究開発 投資 防衛省による、集中的な研究開発投資(概ね10年後までの主な事業の例)

9.2050年カーボンニュートラルに向けたGXへの投資(GX実現に向けた基本方針、GX推進戦略)
1.政策体系の概要→政策目標:2030年度の温室効果ガス46%削減及び2050年カー
ボンニュートラルの国際公約の達成 我が国のエネルギー需給構造の転換、さらには産業構造・社会構造の変革を通じ、日本経済の産業競争力強化・経済成長につなげていく
2.検証事項
3.分析・検証方法、用いるデータ等
4.分析・検証体制
5.ロードマップ
6.エビデンスの政策見直しへの活用方法

○「成長志向型カーボンプライシング構想」→規制・支援一体型の新たな政策パッケージの実現・実行により、今後10年間で150兆円超の官民GX投資を実現 @ 「GX経済移行債」*を活用した、「分野別投資戦略」に基づく、20兆円規模の大胆な先行投資支援 * 世界初の、国による「トランジション・ボンド」の発行(本年2月に約1.6兆円) ⇒ 民間のトランジション・ファイナンスも活性化 A カーボンプライシングの導入 * GX関連製品・事業等の付加価値向上の効果も。エネルギーに係る負担の総額を中長期的に減少させていく中で導入が基本。 @)28年度から「化石燃料賦課金」を導入 A)33年度から発電事業者への有償オークション ※23年度から、排出削減に積極的に取り組む企業等が参加する「GXリーグ」を始動→ 26年度から排出量取引市場を本格稼働 B 新たな金融手法の活用 トランジション・ファイナンスに対する国際的な理解醸成(G7コミュニケ等)、GX推進機構による債務保証 等

10.半導体関連の国内投資促進
1.政策体系の概要→政策目標:我が国産業の発展と社会のデジタル化による高度化
に必要不可欠なAI・半導体分野の産業競争力を強化させるとともに、安定的な生産能力を確保することで、経済安全保障を確保するとともにエネルギー効率化に繋げること。
2.検証事項
3.分析・検証方法、用いるデータ等
4.分析・検証体制
5.ロードマップ
6.エビデンスの政策見直しへの活用方法

○我が国半導体産業復活の基本戦略→2030 年に、国内で半導体を生産する企業の合計売上高(半導体関連)として、15 兆円超(※2020年現在5兆円)を実現し、我が国の半導体の安定的な供給を確保する。⇒Step 1〜Step 3 参照。


◎資料5−4経済・財政新生計画 改革実行プログラム 2024
○経済・財政新生計画 改革実行プログラム2024の位置づけ
→• 骨太方針2024第3章「経済・財政新生計画」(計画期間:2025年度〜2030年度)にお いては、「本年末までにEBPMの強化策及び経済・財政一体改革の工程を具体化する とともに、毎年改革の進捗管理・点検・評価を実施する」とされたところ。 • 「経済・財政新生計画 改革実行プログラム2024」は、これを受けて、骨太方針2024 に掲げられた改革項目の着実な推進に向けて、@社会保障、A文教・科学技術、B社会 資本整備、C地方行財政について、今後3年間(2025年度〜2027年度)を中心に、「何 を」「いつまでに」「どのように」進めるか、改革のロードマップを具体化したもの。 • 「EBPMアクションプラン2024」及び「経済・財政新生計画 改革実行プログラム 2024」は、財政状況の改善を進め、力強く発展する、危機に強靭な経済・財政を作るた めの具体的な指針となる。これらに基づき、改革を着実に進め、限られたリソースから 高い政策効果を生み出し、客観的なデータに基づくワイズスペンディングの徹底につな げていく。
1.社会保障
○社会保障
【ポイント】
→・ 社会保障を持続可能なものとするため、応能負担の徹底を通じて現役世代・高齢世代などの給付・負担構造を見直し、国民の 安心につながる効率的で強靱な医療・介護の提供体制を実現するなど、全世代型社会保障制度の構築を進める。 ・ そのために、「全世代型社会保障構築を目指す改革の道筋(改革工程)」 「改革工程表2023」「骨太方針2024」に掲げられ た改革項目のスケジュールを明確化し、実現できる項目から着実に実施する。
工程の主な概要】→・勤労者皆保険の実現に向けた取組等の働き方に中立的な制度の構築 ・生産性の向上、効率的なサービス提供、質の向上 ・能力に応じた全世代の支え合い ・医薬品等のイノベーションの推進、安定供給確保、薬剤保険給付の在り方の見直し等

2.文教・科学技術
○文教・科学技術
【ポイント】
→・喫緊の課題である教師を取り巻く環境整備について文部科学省・教育委員会等が連携して一体的に推進するとともに、 GIGAスクール構想の下での学びの効果や端末の活用状況の検証を経ながら教育データの利活用促進を含め教育DXを加速する。 ・少子化の急速な進行を見据えた今後の高等教育の在り方について早期に結論を得て、機能強化に向けた取組を講じていく。 ・研究の質や生産性向上に向けた仕組みを構築し、世界最高水準の研究大学の実現や地域の中核大学等の機能強化を着実に進める。
【工程の主な概要】↓
<質の高い公教育の再生>
→・学校における働き方改革の更なる加速化、教師の処遇改善、学校の指導・運営体制の充実、教師の育成支援の一体的な推進。・GIGAスクール構想の検証と教育DXの加速に向けた教育環境の充実、教育データの収集・分析・利活用の促進
<高等教育の機能強化等>→・教育研究の質的改善のためのガバナンス・経営改革等や高等教育全体の規模の適正化に向けた取組促進、学生等の多様性・流動性の確保。・学生への効果的な修学支援の推進
<研究・イノベーション力の向上>→・イノベーションの持続的な創出に向けた研究大学群の形成。・研究の質を高める仕組みの構築及び博士人材をはじめとする若手研究者の処遇向上・活躍促進に向けた仕組みの構築

3.社会資本整備
○社会資本整備

【ポイント】→・骨太方針2024に掲げた「地域ごとの特性・成長資源をいかした持続可能な地域社会の形成」に向けては、高度経済成長期以降に整備され たインフラの加速度的な老朽化や、更なる人口減少による担い手不足と一人当たりの公共サービス維持コストの増大への対応が必要となる。 ・持続可能なまちづくりとインフラメンテナンスサイクルの構築を目指し、地域の将来像を踏まえた施設の集約・複合化等やインフラを 「群」として捉えた広域・複数・多分野の連携による戦略的なインフラマネジメント、社会全体の生産性向上にも資するインフラデータの 分野横断的な整備・オープン化等を推進する。
【工程の主な概要】
<まちづくりとインフラ維持管理の効率化・高度化>→・ 広域的な都市圏のコンパクト化、まちづくり計画と老朽化対策の連携。・広域的・戦略的なインフラマネジメントの推進。
<公共投資の効率化・重点化>→・ インフラデータの整備・オープン化
<PPP/PFIの推進>→・ 分野横断・広域型の案件形成を促進
<持続可能な土地及び水資源の利用・管理> →・ 所有者不明土地等対策の推進。・流域総合水管理の推進

4.地方行財政
○地方行財政
【ポイント】
→・人口減少による担い手不足や少子高齢化が急速に進む中にあっても、持続可能な地方行財政基盤を構築するため、自治体DX の推進、地方自治体の広域連携や多様な主体との連携・協働、財政マネジメントの強化等に取り組むことが重要。 ・自治体DXについては、住民と行政との接点(フロントヤード)と内部事務(バックヤード)の一体的な改革を推進するとと もに、それを支えるデジタル人材の確保・育成、マイナンバーカード等のデジタルインフラの整備に取り組む。 ・地方自治体の広域連携については、地域に必要な人材を連携して確保する取組や事務の共同実施、広域的な公共施設の集約 化・共同利用等に取り組む。また、地域における多様な主体が連携・協働し、生活サービスを提供しやすい環境整備を推進。
【工程の主な概要】 ↓
<自治体DXの推進>
→@フロントヤード改革とバックヤード改革の一体的な推進⇒・総合的なフロントヤード改革の推進。・窓口DXSaaSの提供や窓口BPRの推進。・基幹業務システムの統一・標準化。Aデジタル人材の確保・育成、都道府県と市町村が連携した推進体制の構築 B利活用シーンの拡大をはじめとするマイナンバーカードの利便性、機能向上⇒・給付支援サービス。・マイナンバーカードを活用した救急業務の円滑化
<地方自治体の広域連携及び多様な主体との連携・協働>→・関係省庁や地方自治体との連携による事務の共同実施、複数団体による広域的な公共施設の集約化・共同利用。・地域の多様な主体との連携・協働

次回は新たに「第177回市町村セミナー 資料」からです。

令和6年第16回経済財政諮問会議 [2025年02月08日(Sat)]
令和6年第16回経済財政諮問会議(令和6年 12 月 26 日)
議 事 (1) 令和7年度の経済見通し (2) 経済・財政新生計画に基づく EBPM の強化及び改革工程の具体化
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2024/1226/agenda.html
◎資料1−1令和7年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度(ポイント)(内閣府)
1.経済成長の見通し
→・2024年度は、内需は堅調である一方、財輸出の鈍化とサービス輸入の増加により外需がマイナス寄与とな り、実質成長率は0.4%程度、名目成長率は2.9%程度となる見込み。 ・2025年度は、物価上昇が落ち着く中、個人消費等の内需が増加し、実質成長率は1.2%程度、名目成長率は 2.7%程度となる見込み。
2.賃金と個人消費の見通し→2024年度を通じてみると、賃金上昇率は物価上昇率を上回り、2025年度には、それが定着する見込み。 それに伴い、実質個人消費も徐々に増加する見通し。
3.設備投資・輸出入の見通し→設備投資は、企業の収益増加や投資意欲の高さを背景に、名目・実質ともに、引き続き増加する見込み。 実質輸出は、2024年度は、自動車認証不正問題の影響や中国経済の鈍化により低い伸びとなる一方で、 2025年度は、海外経済が緩やかに成長する中で、伸びが高まる見込み。 実質輸入は、内需の緩やかな伸びが継続する中で、2024年度・2025年度ともに、増加する見込み。
4.マクロの需要と供給のバランス→労働力人口の伸びが頭打ちとなる中、労働需給はひっ迫。 マクロ経済で見ても、需要不足の局面から、供給制約の局面に入る見込み。

◎資料1−2令和7年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度 (令和6年 12 月 25 日閣議了解)
1.令和6年度の経済動向及び令和7年度の経済見通し

(1) 令和6年度及び令和7年度の主要経済指標→国内総生産、国民総所得、物価など。
(2)令和6年度の経済動向→コストカット型経済から脱却し、デフレ に後戻りせず、「賃上げと投資が牽引する成長型経済」に移行できるかどうかの 分岐点。
(3)令和7年度の経済見通し→総合経済対策の効果が下支えとなって、賃金上昇が物価上昇を上回り、個人消費が増加するとともに、企業の設備投資も堅調な動きが継 続するなど、引き続き、民間需要主導の経済成長となることが期待される。
@ 実質国内総生産(実質GDP)A 実質国民総所得(実質GNI)B 労働・雇用
C 鉱工業生産 D 物価 E 国際収支
2.令和7年度の経済財政運営の基本的態度→最低賃金の引上げ価格転嫁等の取引適正化、人手不足に対応する省力化・デジタル化投資の促進、人への投資を含む三位一体の労働市場改革に取り組む。また、DX・GX、AI・半導体等の成長分野における官民連携投資など、「投資立国」の取組とともに、国民の資産形成を後押しする「資産運用立国」の取組を進め、我が国経済を高付加価値創出型の成長経済へと転換していく。


◎資料2植田議員提出資料
○金融政策の多角的レビュー(1)
→経済がデフレに陥った1990年代後半以降の金融政策運営について理解を深め、将来の政策運営にとって有益な知見を得るため、多角的にレビューを実施⇒内部での調査分析、外部との意見交換(地域の企業・金融機関等との懇談会、学界有識者とのコン ファレンス等)、企業・家計・金融機関へのアンケート調査等
1990年代後半以降のわが国の経済・物価・金融情勢 参照。

○金融政策の多角的レビュー(2)↓
・大規模な金融緩和の効果と副作用の評価
→• 金融市場や金融機関収益などの面で一定の副作用はあったものの、現時点においては、全体と してみれば、わが国経済に対してプラスの影響。・ただし、今後、なお低下した状態にある国債市場の機能度の回復が進まない、あるいは副作用 が遅れて顕在化するなど、マイナスの影響が大きくなる可能性には留意
・先行きの金融政策運営への含意→ • 非伝統的な金融政策手段を用いる必要が生じた場合:ベネフィットとコストの比較衡量が重要⇒現時点においては、将来の政策運営を考えるうえで特定の手段を除外するべきではないが、今後、各手段の採用を検討する際には、留意点等を勘案し、可能な限り副作用を抑制しながら効果を発揮できるよう、制度設計していく必要。 • 引き続き、2%の「物価安定の目標」のもとで、その持続的・安定的な実現という観点から、 金融政策を運営していくことが適切 打ち上げ花火 非伝統的な金融政策手段は、短期金利操作の完全な代替手段にはなりえず、可能な限りゼロ金利制約 に直面しないような政策運営が望ましい。景気悪化時に実質金利を引き下げることができるように、小幅のプラスの物価上昇率を安定して実現していくことが重要。


◎資料3 マクロ経済財政運営(参考資料)(内閣府)↓
○日・米・ユーロ圏のマクロ経済及び財政・金融政策の推移
→・GDPギャップ: 各国・地域とも、コロナ禍からの経済社会活動正常化の動きを背景に、縮小の動き。 ・ 物価: アメリカ・ユーロ圏では、需要の増加や資源価格上昇の影響により、2022年に物価上昇率が大きくなったが、その後は 緩やかになりつつある。日本は他国ほどは高まらず。 ・ 財政政策:基礎的財政収支(PB)は、各国・地域とも、コロナ禍の大幅な赤字は縮小しつつあるが、未だマイナス圏内で推移。 ・ 金融政策:アメリカ・ユーロ圏では、物価が大きく上昇する局面で、政策金利の引上げが進んだ。
○就業調整に関する取組状況等→税や社会保険料の負担等を避けるために年収を一定額以下に抑える「就業調整」の解消に向けた取組が進展。⇒<図1>〜<図4> 参照。
○我が国の経済財政運営の変遷→引き続き、「賃上げと投資が牽引する成長型経済」への移行を実 現しつつ、財政状況の改善を進め、力強く発展する、危機に強靭な経済・財政を作っていくことが重要。
○公債等残高対GDP比の変化要因→・公債等残高対GDP比の動向は、 2016〜18年度: 実質成長による低下要因と利払費増加による上昇要因が概ね拮抗する中、PB赤字の累積分、比率は上昇。 2019〜21年度: コロナ対応に伴いPB赤字による上昇要因が拡大。実質成長要因も上昇側に転じ、比率は大幅に上昇。 2022〜24年度: PB赤字の上昇要因は大きいものの、実質成長の回復と大幅な物価上昇による低下要因により、比率は低下。 ・ 今後、金利上昇に伴い利払費要因(上昇要因)の拡大が見込まれることや、コロナ禍のような債務残高対GDP比が大きく上昇 する危機対応に備えるため、PB黒字化と高い名目成長率の実現による債務残高対GDP比の安定的な引下げが一層重要。


◎資料4 マクロ経済財政運営(有識者議員提出資料)
2024年12月26日 十倉雅和 中空麻奈 新浪剛史 柳川範之
来年は、米国における新政権の誕生に加え、先進各国で政治状況が変動し、各国の通商政策や 財政政策などの経済政策も変化する可能性がある。日本経済は、そうした変化に適切に対処しつつ、 「金利のある世界」に対応しながら、賃上げと投資が牽引する成長型経済への移行を進めていく必要 がある。以下提言する。
1.成長型経済への移行に向けて
→・政府経済見通しで示されている、物価上昇を上回る賃金上昇を通じた消費の拡大、民間投資拡大などによる、民需主導の経済成長の姿を現実のものとすることが重要。政府において、賃上げ環境の整備や、潜在成長率を高めるための戦略的な投資支援など、今般の経済対策・補正予算、 来年度予算・税制、規制・制度改革による大胆な措置を、スピード感を持って実行していくべき。 ・ 今回、103万円の壁の引上げ等が協議されたが、就労調整(働き控え)をなくすことは、人手不足への対応として重要。今回の議論を契機に、多くの国民に「就労調整するより、もっと働いた方が 良い」と思ってもらえるように、トータルパッケージで就労調整の解消に対応していくべき。 ・ 様々な「壁」があって分かりにくく、政府の対策を含め、国民に十分に伝わっておらず、今般 の制度改革など制度の全体像を分かりやすく周知徹底すべき。 ・ 企業の配偶者手当も就労調整の要因の1つであり、働き方に中立的なものとなるよう見直しを促進。 ・ 第3号被保険者制度について、次期改正を待たずに、見直しの議論を。

2.政策遂行に不可欠な財政の信認確保→・「金利のある世界」へと変化する中、積極果敢な政策運営により、厳しい状況にある我が国の財政 に負荷がかかることに留意する必要がある。適切なマクロ経済運営を図るには、政府による安定 的な資金調達を維持し政策効果を十全に発揮させることが重要であり、そのためにも財政に対する市場の信認は欠かせない。 ・ PB黒字化という財政健全化の旗を下ろすことなく、これまでの歳出改革努力1 の継続や歳出構造 の平時化など、歳出・歳入両面から改革に取り組み、計画的に財政状況の改善を進めるべき。その際、今般取りまとめる「経済・財政新生計画 改革実行プログラム」や「EBPMアクションプラン」 に沿った進捗管理の下で改革を進めることが重要。 ・ 防衛力強化やこども・子育て政策に係る恒常的な支出増に向けては、既定の財政フレーム(防衛 力強化は2027年度まで、こども・子育て政策は2028年度まで)に沿って、歳出改革、税外収入、税制措 置等の財源を計画的に確保していくべき。 ・ 先に成立した2024年度補正予算に加え、2025年度予算案・税制改正案等の影響を精査し、1月 に新たな中長期試算を提示の上で、財政健全化の進捗を検証すべき。


◎資料5−1 「EBPM アクションプラン 2024」・「改革実行プログラム 2024」〜「経済・財政新生計画」に基づく EBPM の強化及び改革工程の具体化〜(経済・財政一体改革推進委員会・2024年12月26日)
○EBPMアクションプラン及び改革実行プログラム 「経済・財政新生計画」に基づくEBPMの強化及び改革工程の具体化
→・EBPMアクションプラン2024:多年度にわたる重要政策及び計画(効率的な医療・介 護サービス、質の高い公教育、広域のまちづくり、半導体・GX投資等、10分野)を対象 に、エビデンスに基づく政策立案を行うため、政策目標、達成・進捗の検証方法、データ の整備方針、政策への反映等の手法を明確化。このプランに基づいて、EBPMの実践・ 実装を本格化させる。・改革実行プログラム2024:社会保障、文教・科学技術、地方行財政、社会資本整備等の各 分野の200を超える改革項目について、「何を」「いつまでに」「どのように」進めるか を明確化。この具体的な改革工程に従って改革を実行していく。 EBPMアクションプラン及び改革実行プログラム 「経済・財政新生計画」に基づくEBPMの強化及び改革工程の具体化。 これらを用いながら、毎年改革の進捗管理、点検、評価を実施し、経済財政諮問会議にお いて必要な政策対応等に結び付ける。

○EBPMアクションプラン2024→「予算の全体像」(令和6年7月29日諮問会議決定)に示された10の重要政策・計画を対象に、@政策体系 (ロジックモデル)、A検証事項、B分析・検証方法等、C体制、D分析・検証やデータ整備におけるロードマップ、 E政策見直しへの活用方法について、有識者の指導の下に十分な検討を行って取りまとめたもの。
⇒EBPMアクションプランの活用、関係府省庁等との連携など 参照。
・EBPMアクションプラン 重要政策・計画10分野 参照。

○EBPMアクションプラン2024における「半導体関連の国内投資促進」(抜粋)(ロジックモデル)↓
1.政策体系の概要
→政策目標:我が国産業の発展と社会のデジタル化による高度化に必要不可欠なAI・半導体分野の産業競争力を強化させるとともに、安定的な生産能 力を確保することで、経済安全保障を確保するとともにエネルギー効率化に繋げること。⇒最終アウトカム指標、中間アウトカム指標、関連施策 あり。 参照。
2.検証事項→公的支援により実現した研究開発や設備投資が、 @各種半導体の売上高増加及び日本のシェア拡大(ロジック、メモリ、パワー半導体等)、地域・関連産業への裨益、 A国内需要に対する十分な供給能力の確保 B半導体を使用する製品に係る二酸化炭素排出削減 に繋がっているか。
3.分析・検証方法、用いるデータ等→確認するエビデンス等(ABCあり)、ABCの分析・検証方法と、それに 用いるデータ等の解説表一覧。参照。

○改革実行プログラム2024→経済・財政新生計画に掲げられた主要分野の200超の改革項目について、今後3年間(2025〜2027年度) を中心に、「何を」「いつまでに」「どのように」改革を進めるのかを明確化。⇒分野、テーマ 、項目 の参照。

○(参考1)経済・財政一体改革について↓
<骨太方針2024(令和6年6月21日)(抄)>
→経済・財政・社会保障の持続可能性の確保を図るには、人口減 少が本格化する2030年代以降も、実質1%を安定的に上回る成長 を確保する必要がある。人口減少が本格化する2030年度までが、こうした経済構造への 変革を起こすラストチャンスである。このため、本基本方針第3章を 「経済・財政新生計画」として定め、、今後3年程度で必要な制度改革を含め集中的な取組を 講じていく。
・ー 経済・財政一体改革に関する記述 ー→(新たな枠組みと基本的考え方)⇒本計画の対象期間は、人口減少が本格化する2030年度まで の6年間とし、引き続き経済・財政一体改革を推進する。経済・財政・社会保障を一体として相互に連携させながら改革を 進め、経済社会の持続可能性を確保していく。(経済・財政一体改革の点検・評価)⇒本年末までにEBPMの強化策及び経済・財政一体改革の工程を具体化するとともに、毎年改革の進捗管理・点検・評価を行う。

○(参考2)経済・財政一体改革推進委員会の検討体制・委員
・検討体制→「社会保障」「国と地方のシステム」「経済社会の活力」のワーキングシステムあり。
・委員→12名。


◎資料5−2経済・財政一体改革の強力な推進に向けて(柳川議員提出資料)
経済・財政一体改革の強力な推進に向けて
2024年12月26日 経済・財政一体改革推進委員会会長 柳川 範之
1.EBPMアクションプラン2024及び改革実行プログラム2024の策定 −経済・財政新生計画−
→今回の取組は、経済・財政新生計画のなかの重要政策等のEBPMの強化及び改革工程を具 体化。財政状況の改善を進め、力強く発展する、危機に強い強靭な経済・財政を作るための具体 的な指針となるもの。今後はこれに沿って、スピード感を持って改革を進めるとともに、各府省の 連携やプロセス管理を強化し、限られたリソースから高い政策効果を生み出していく。また、こうし た取組は予算の説明力を引き上げるものであり、十分な周知に取り組む。
(1)EBPMアクションプラン2024 →・対象10分野は、成長型経済への移行と国民の安全・安心の確保に関わる、政府の重要政策 課題。今般新たに策定された本プランに基づき、財政支出の政策効果を高め、ワイズスペン ディングを徹底すべき。 ・ 特に多年度で取り組む半導体投資、GX投資、防衛生産・技術基盤の維持・強化は強力に推 進すべき分野であり、今回の経済対策において「AI・半導体産業基盤強化フレーム」が構築されたことは重要。予見可能性を高め、民間投資を呼び込み、イノベーションの創出、グロー バル競争の視点、地域経済の活性化も含め、PDCAをしっかりと回していくべき。・今後は、EBPMの実践・実装を進めて、「データに基づく政策立案」をさらに進化させ、ミクロの施策の評価とマクロの政策の効果分析を連結させる試みを発展させるべき。また、10分野以外の重要政策課題の改革に当たっても、明確な政策目標とロジックモデルの議論など今回得られた知見を活かし、より効果的なPDCAを進めていくべき。
(2)改革実行プログラム2024→・今回、詳細に具体化した200超の改革工程に沿って、地方自治体等現場の実施主体とも連 携し、スピード感を持って改革を実行することが重要である。毎年の点検・評価をタイムリー に行っていくべき。 ・社会保障改革について、年金制度改革、医療・介護体制等についての課題に結論が得られ たことは大きな前進である。子育て世代への支援強化の財源となるものであり、改革実行プ ログラムに沿って、成果を定量的に把握しつつ改革を進めるべき。

2.今後の経済・財政一体改革の取組→経済・財政一体改革を一層効果的に推進するには、人口減少下の持続可能な国・地方の行財政、人々のやりがいやウェルビーイング、デジタル・新技術の導入等による生産性向上、などに着目しながら、経済、社会、環境や技術等の変化に適切に対応した予算編成や制度改正に結び つけていく必要がある。こうした経済・財政一体改革をとりまく課題について、引き続き分析・評価 し、プロセス管理を行いながら、定期的に経済財政諮問会議に報告を行うべき。

次回も続き「資料5−3 EBPM アクションプラン 2024」からです。

令和6年第15回経済財政諮問会議 [2025年01月17日(Fri)]
令和6年第15回経済財政諮問会議(令和6年12月3日)
議事(1) 令和7年度予算編成の基本方針 (2) 持続可能な地方行財政に向けて (3) 持続可能な社会保障に向けて
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2024/1203/agenda.html
◎資料1 内閣総理大臣からの諮問第 52 号について
○令和6年12月3日 諮問第 52 号「令和7年度予算編成の基本方針」いかん。


◎資料2 令和7年度予算編成の基本方針(案)
1. 基本的考え方 ↓
(1)経済の現状及び課題
→@ 我が国経済は、600 兆円超の名目GDP、33 年ぶりの高い水準となった賃 上げを実現した。成長と分配の好循環は、動き始めている。現在は、長きにわたったコストカット型経済から脱却し、デフレに後戻りせず、「賃上げと投資 が牽引する成長型経済」に移行できるかどうかの分岐点にある。 A こうした前向きな動きを、国民一人一人が実際の賃金・所得の増加という形で、手取りが増え、豊かさが実感できるよう、更に政策を前進させなければ ならない。賃金・所得が力強く増加していく状況が定着するまでの間、家計を温め、生活者が豊かさを実感できるよう、幅広い方策を検討することも必要。 B 最重要課題は、全ての世代の現在・将来の賃金・所得の増加であり、賃金上昇が物価上昇を安定的に上回る経済を実現し、新たなステージとなる「賃上げと投資が牽引する成長型経済」への移行を確実にすることである。 C 我が国経済が緩やかな回復を続けると見込まれる中、経済全体の需給バランスは、今後、需要不足から供給制約の局面に入ると見られる。官民が連携する形で成長分野における投資を促進するとともに、地方の中堅・中小企業の人手不足対策を含めた生産性向上の取組を支援するなど、日本経済及び地方経済の中長期的な成長力を強化することが必要となる。それらの取組と人への投資及び労働市場改革を合わせ、賃上げの流れを構造的・持続的なものとする。 同時に、現下の物価高の下、誰一人取り残されない形で成長型経済に移行 するためには、特に物価高の影響を受ける低所得者世帯への支援や地域の実 情に応じたきめ細かい物価高対策など、当面の措置を講ずる必要がある。 東日本大震災や令和6年能登半島地震を始めとする自然災害からの復旧・ 復興、外交・安全保障環境の変化への適切な対応、防犯・治安対策の強化、公教育の再生、女性や高齢者の活躍・参画の推進を含め、「誰一人取り残されな い社会」の実現に向けた取組を推進し、成長型経済への移行の礎となる国民の安心・安全の確保に万全を期すことも必要である。
(2)経済財政運営の基本的考え方→@ 政府は、こうした重要課題に迅速に対応するため、日本経済・地方経済の成長、物価高の克服及び国民の安心・安全の確保を3つの柱とする「国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策」(令和6年 11 月 22 日閣議決 定)を策定した。経済対策の裏付けとなる令和6年度補正予算の早期成立を図り、その成立後には、できる限り速やかに関連する施策を実行する。その上で、令和7年度の予算編成に取り組み、切れ目のない経済財政運営を行う。 A 経済財政運営に当たっては、デフレを脱却し、新たな経済のステージに移行することを目指して、「経済あっての財政」との考え方に立ち、「賃上げと投 資が牽引する成長型経済」を実現しつつ、財政状況の改善を進め、力強く発展 する、危機に強靱な経済・財政を作っていく。
(3)施策の方向性→@ 物価上昇を上回る賃金上昇の普及・定着に向け、地域の中堅・中小企業及び小規模事業者を含め、最低賃金の引上げを始めとする賃上げの環境について、 その業種・規模に応じた環境整備を行う。国民一人一人の生産性と所得を向上させる全世代のリ・スキリング支援、成長分野への労働移動の円滑化など、 三位一体の労働市場改革を推進する。建設・物流、医療・介護等の現場におけるロボット・ICT機器の活用を通じた生産性向上・職場環境改善等による 更なる賃上げ等を支援する。公正取引委員会の下請代金支払遅延等防止法(昭和31年法律第120号)の執行強化、「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」(令和5年 11 月 29 日公表)に基づく取組の徹底、国等及び地方公共団体の官公需における入札制度の適切な運用を含め、中小企業等の価格転嫁の円滑化を支援する。中小企業等のM&A及び事業承継の環境整備、 資金繰り、経営改善・再生・成長の支援に取り組む。 A 地方こそ成長の主役である。ICT技術も活用しながら、新たな地方創生 施策(「地方創生2.0」)を展開する。「新しい地方経済・生活環境創生本部」(令和6年 10 月 11 日設置)において、今後 10 年間集中的に取り組む基本構想を策定する。地域の産官学金労言が連携し、それぞれの知恵と情熱を活か して地域の可能性を引き出そうとする取組を後押しする中で、買物、医療、交 通など日常生活に不可欠なサービスの維持向上や足元の経営状況の急変を踏 まえた医療・介護の提供体制の確保、デジタルトランスフォーメーション(D X)・グリーントランスフォーメーション(GX)の面的展開等の取組を進め、新たな需要創出や生産性向上につなげる。地方創生の交付金を当初予算ベー スで倍増することを目指して取り組む。 B 賃上げの原資となる企業の稼ぐ力や地方経済の潜在力を引き出すための国 内投資を促進する。科学技術の振興及びイノベーションの促進、創薬力の強 化、GX・DX及びAI・半導体の分野における官民連携での投資の促進や産 業用地の確保、宇宙・海洋のフロンティアの開拓、スタートアップへの支援等 に取り組むことによって、成長力を強化するとともに、新たな需要を創出する。 半導体を始めとする重要な物資のサプライチェーンの強靱化や先端的な重要技術の育成など、経済安全保障の確保に向けた取組を推進する。併せて、食料安全保障及びエネルギー安全保障に係る政策対応を強化する。 C 農林水産業の持続可能な成長、文化芸術・スポーツ及びコンテンツ産業の 振興、交通・物流インフラの整備、観光立国に向けた取組を推進する。2050 年 カーボンニュートラルを目指したグリーン社会、地域・くらしの脱炭素化や サーキュラーエコノミーの実現等に取り組む。2025 年大阪・関西万博の準備 及び安全な運営に取り組むとともに、我が国の魅力を世界に発信し、交流人口の拡大及び地方活性化につなげる。 D 令和6年能登半島地震等の自然災害からの復旧・復興に取り組む。今後も 想定される災害への備えに万全を期すため、令和8年度中の防災庁の設置に 向けた検討と並行して、まず、内閣府防災担当の機能を予算・人員の両面で抜 本的に強化するとともに、避難所環境の整備など、防災・減災及び国土強靱化 の取組を着実に推進する。 「5か年加速化対策」後も、中長期的かつ明確な見通しの下、継続的・安 定的に切れ目なくこれまで以上に必要な事業が着実に進められるよう、「国土 強靱化実施中期計画」の策定に係る検討を最大限加速し、早急に策定する。 東日本大震災からの復興・創生に取り組む。ALPS処理水に関し、一部の 国・地域による日本産水産物の輸入停止に対し、即時撤廃を強く求めるととも に、安全性の確保と風評対策・なりわい継続支援に万全を期す。 E 日米同盟を基軸に、自由で開かれたインド太平洋というビジョンの下、法の支配に基づく国際秩序を堅持するため、各国・地域との協力連携を深めるとともに、ルールに基づく自由貿易体制を推進する。 戦後最も厳しく複雑な状況となっている安全保障環境を踏まえ、国家及び 国民を守り抜くため、令和5年度から令和9年度までの5年間で 43 兆円程度 の防衛力整備の水準を確保し、防衛力の抜本的強化を速やかに実現する。「自 衛官の処遇・勤務環境の改善及び新たな生涯設計の確立に関する関係閣僚会議」における検討を踏まえた人的基盤の強化に係る施策に取り組む。 F 若い世代の所得の増加と社会全体の構造・意識の変革、全てのこども・子育 て世帯に対し切れ目のない支援を行う観点から、「こども未来戦略」(令和5 年 12 月 22 日閣議決定)で示された「こども・子育て支援加速化プラン」を 着実に実施する。「こども誰でも通園制度」の制度化やこどもの貧困等の多様 な支援ニーズへの対応の強化、育児休業制度の充実等に取り組む。 G 誰一人取り残されない安心・安全な社会の実現を目指し、都市部を含む社会全体での防犯・治安対策の強化、厳格かつ円滑な出入国在留管理、全世代型 社会保障の構築、健康寿命の延伸による生涯活躍社会の実現、公教育の再生、 女性や高齢者の活躍・参画の推進、障害者の社会参加や地域移行の推進、孤 独・孤立対策・就職氷河期世代のリ・スキリングの支援等に取り組む。

2.予算編成についての考え方→@ 令和7年度予算は、令和6年度補正予算と一体として、1.の基本的考え方 及び「経済財政運営と改革の基本方針 2024」(令和6年6月 21 日閣議決定。 以下「骨太方針 2024」という。)に沿って編成する。 足元の物価高、賃金や調達価格の上昇に対応しつつ、デフレを脱却し、新たなステージとなる「賃上げと投資が牽引する成長型経済」への移行を実現することを目指して、物価上昇を上回る賃金上昇の普及・定着、地方創生2. 0の起動、官民連携による投資の拡大、防災・減災及び国土強靱化、防衛力の 抜本的強化を始めとする我が国を取り巻く外交・安全保障環境の変化への対 応、充実した少子化・こども政策の着実な実施など、重要政策課題に必要な予 算措置を講ずることによって、メリハリの効いた予算編成を行う。 A その際、骨太方針 2024 に基づき、経済・物価動向等に配慮しながら、「中期的な経済財政の枠組みに沿った予算編成を行う。ただし、重要な政策の選択肢をせばめることがあってはならない」との方針を踏まえる。 B 骨太方針 2024を踏まえ、経済・財政一体改革の工程を具体化するとともに、 EBPM1 やPDCAの取組を推進し、効果的・効率的な支出(ワイズスペン ディング)を徹底する。


◎資料3 経済・財政一体改革(地方行財政等) 参考資料(内閣府)
○自治体の規模別の人口の推移
→・過去10年間で相対的に若年者人口比率が高まった自治体の中には、高齢者数の減少に伴って老人福祉費を減少させる一方、 児童福祉費を増加させた自治体がある。 ・ 自治体が、若年者や子育て世帯を積極的に受け入れるための施策に特徴がある。現時点でこうした自治体の数は多くないが、 今後増えていく可能性もある
⇒<表:過去10年間で、15歳未満人口変化率が65歳以上人口変化率を上回った自治体のうち、 老人福祉費が減少する一方で、児童福祉費が増加した自治体の例> 参照。
○自治体の規模別の財政の姿→・気候変動等による災害の高頻度化・激甚化や、首都直下地震や南海トラフ地震等の大規模災害のリスク。 ・ インフラの老朽化や人的リソースが限られる中、ハザードマップの周知やまちづくり等への活用も含む平時における事前防災 の取組や、緊急時における防災体制や避難所の整備など、ソフト・ハード両面での取組が必要。
○人口動態(高齢者比率が低下する例)→・2020年から2050年にかけて高齢者比率は高まっていくが、小規模自治体の中には相対的に高齢者比率が低下する自治体も見られる。・こうした小規模自治体においては、人口ピラミッドは、逆三角形型から、長方形型へ変化し、人口減少は継続するものの、人口動態はバランスしていくことが見込まれる。
○過去10年の人口比率の変化と自治体の歳出→過去10年間で相対的に若年者人口比率が高まった自治体の中には、高齢者数の減少に伴って老人福祉費を減少させる一方、 児童福祉費を増加させた自治体がある。 割る 自治体が、若年者や子育て世帯を積極的に受け入れるための施策に特徴がある。現時点でこうした自治体の数は多くないが、 今後増えていく可能性もある。
○持続可能な地域社会・経済の構築に向けた防災力強化・国土強靱化→・気候変動等による災害の高頻度化・激甚化や、首都直下地震や南海トラフ地震等の大規模災害のリスク。・インフラの老朽化や人的リソースが限られる中、ハザードマップの周知やまちづくり等への活用も含む平時における事前防災 の取組や、緊急時における防災体制や避難所の整備など、ソフト・ハード両面での取組が必要。
○地方創生の取組と効果の検証→・地方創生推進交付金は2016年度より実施。各自治体での様々な取組を後押しし、優良事例を創出。一方で、東京一極集中の 流れを留めるには至っていない。 ・ 各自治体における効果検証は相当割合で実施しているものの、その多くは現状把握にとどまり、分析や改善のプロセス、分析 結果の公表といった取組は一定割合にとどまる。


◎資料4 持続可能性の確保に向けた地方行財政改革(有識者議員提出資料)
今後本格化する人口減少の下、経済・行政機能の維持が困難になる自治体が増加するなど、 地域の持続可能性への懸念がみられる中、安心・安全で心豊かに暮らせる持続可能な地域社会 としていくことが求められる。人口動態の変化の現れ方は自治体や地域毎に異なるため、各地域 の特性に応じたきめ細かい対応や広域連携の強化等により、地域の持続可能性の向上を図って いく必要がある。
○人口減少と自然災害の激甚化の下での強靱な地方行財政の構築
(人口構造変化への対応)
→一般的に、小規模自治体においては、高齢者も含め人口全体が縮小し、収入基盤が弱体化する 中で、固定的な総務費等の一人当たりの経費が拡大する可能性。大規模自治体においては、高齢者人口が大幅に増大し、社会保障の供給制約や経費拡大が見込まれる。なお、今後高齢層の人口減少が相対的に早く、人口ピラミッドの逆三角形が長方形に近づく一部の自治体では、高齢 者に係る費用(老人福祉費等)は相対的に低下する可能性がある。 こうした地域の特性に応じた具体的な課題認識や将来像の構築に係る取組を推進するために、 政府は中長期的な経済・財政のグランドデザインの議論の中で、自治体・地域のタイプに即した 長期的な経済・財政の推計を示しながら、タイプ毎の課題(ヒト、モノ、カネ、情報など)に対するきめ細かな支援を強化すべき。また、各自治体の財政基盤が縮小していくなかで、行政サービスの 効率化に資する以下の取組を徹底していくべき。→・行政の効率化:広域連携・多分野連携、複数自治体も含めたコンパクト化・ネットワーク化、イ ンフラのトリアージ、PPP/PFIなどの民間活力の活用の推進。
・ DXの徹底:デジタル人材の確保、国・地方デジタル基盤の整備と行政手続きのデジタル化・ 標準化、スマートシティ、i-Constructionの推進。
(災害等のショックへの対応)→気候変動等による災害の高頻度化・激甚化や、首都直下地震や南海トラフ地震等の大規模災害 のリスクに対し、ハザードマップの周知やまちづくり等への活用も含む平時における事前防災の 取組や、緊急時における防災体制や避難所の整備など、ソフト・ハード両面が適切に組み合わさ った取組を進めることで、リスク軽減、持続可能性向上を図るべき。限られたリソースでより効果の 高い政策を生み出していく、ワイズスペンディングを徹底するためEBPMを強化すべき。

○地方発の活力創生・生活環境改善→地域の持続可能性確保にとどまらず「地方を成長の主役」とするには、地域に眠る資源をフルに 活用して、地方に“しごと”を創出するとともに、若者や女性に選ばれる「暮らしたい、働きたい」地 域としていくことが重要。地方創生交付金を梃子とし、特区含む規制改革や税制等によるトータ ルパッケージで以下の取組を進めることが重要。地方創生2.0を進めるに当たっては「政策目標」(例えば、「稼げる地方の具体的な姿」)を明確にすることが重要であり、これまでの交付金事業に ついて、自治体からの報告のみならず事業全体としての適切な運用や経済効果の創出等の検 証を行い、成果を事業採択のメリハリ付けに活用するとともに、伴走型の支援を強化すべき。→・地域資源に根差した活力創生:文化・自然などの無形資産を活用した地方文化都市の創出、 空き家、休耕地などの休眠資産の活用やNFT1 を含むWeb3.0等の新技術の有効活用による 付加価値創出、農林水産業、観光などの高付加価値化。 ・地域資源の強化:地域の公教育の充実、大学・高専の研究開発力の強化、地域内外の企業の連携や域内直接投資の促進。 ・ 新しい生活スタイルの構築:自動運転やドローン物流、テレワークや遠隔医療・教育などの 新技術の社会実装、多地域生活を促進するための規制改革。 ・ 地域の特性に応じたエネルギーシステムの構築:小水力発電、地熱発電、バイオマス等の 活用。地方発でカーボンニュートラル、サーキュラーエコノミー(循環経済)、ネイチャーポジ ティブ(自然再興)を実現し、国全体の持続可能性向上に資する。


◎資料5 持続可能な地域社会の実現に向けて(村上議員提出資料)
○持続可能な地域社会の実現に向けた総務省の取組@A
→・我が国は、人口減少や少子高齢化、災害の激甚化・頻発化など、様々な分野で課題に直面している。 ・ こうした中、持続可能な地域社会の実現に向け、総務省の総力をあげて、「地方創生2.0」を推進するとともに、 令和6年能登半島地震等の教訓も踏まえた住民の安全・安心なくらしの実現を図ることが重要。 ・ また、行政効率化や住民の利便性向上を図る自治体DXの推進や、地域や組織の枠を越えた連携の推進に取り組む。
⇒地方創生2.0の推進(地域経済の好循環による付加価値の創造、人の流れの創出・拡大、デジタル技術を活用した地域課題解決(地域社会DX))、住民の安全・安心なくらしの実現(消防防災力の強化、通信・放送インフラの整備・強靱化、信頼できる健全な情報空間の実現)、 自治体DXの推進(システム標準化・共通化など7つの推進)、地域や組織の枠を越えた連携の推進(事務の共同実施の推進、地域の多様な主体との連携・協働の推進)      ⇒EBPMの推進で住民の利便性向上・人的資源の最適配分など、質の高い行政経営を実現、あわせて、将来にわたり行政サービスを持続可能な形で提供していくことができる環境を整備      参照。

○安定的な地方税財源の確保と健全な財政運営→持続可能な地域社会を実現するためには、安定的な地方税財源の確保とワイズスペンディング(効果的・効率的な支出)に 努め、健全な財政運営を目指すとともに、住民の安全・安心なくらしの実現に取り組むことが必要。
⇒安定的な地方税財源の確保、健全な財政運営、ワイズスペンディングの徹底、住民の安全・安心なくらしの実現。
上記の取組を進めるため、適切に財政措置を講ずる


◎資料6 国土強靱化の取組及び災害対応体制の強化について (坂井臨時議員提出資料) ○国土強靱化の取組の推進→・近年、大規模自然災害が激甚化・頻発化し、大規模地震の発生も懸念される中、事前防災対策の取組の推進を図ることが重要。 ・ 政府においては、国土強靱化基本計画に基づき、5か年加速化対策をはじめとする防災・減災、国土強靱化の取組により、災害に 屈しない国土づくりを推進。 ・全国各地で被害を抑制する効果が確実に積み上がっているところであり、引き続き事前防災対策の計画的な推進を図る必要がある。  今後の取組(実施中期計画の策定、事前防災対策の推進)⇒「5か年加速化対策」後も、ハード・ソフト一体となった取組を推進していくこととし、中長期的かつ明確な見通しの下、継続的・安定的に切 れ目なくこれまで以上に必要な事業が着実に進められるよう、令和6年能登半島地震の経験も踏まえつつ、「実施中期計画」策定に係る検 討を最大限加速し、早急に策定する。これにより、事前防災対策を計画的に推進する。

○避難所の生活環境の抜本的改善を含む災害対応体制の強化→南海トラフ地震や首都直下地震などの次なる大規模災害も見据え、令和6年能登半島地震の教訓 も踏まえつつ、避難所の生活環境改善をはじめとした災害対応体制の強化を進める。⇒経済対策での取組→→→令和7年度以降の取組: 令和8年度中を予定している防災庁の設置を見据え、内閣府防災担当の機能を予算・人員の両面で抜本的に 強化し、避難生活環境の整備、地域防災力の強化、防災DXの推進等の重要課題への対応を強化していく。


◎資料7 経済・財政一体改革(社会保障) 参考資料(内閣府)
○社会保障の持続可能性
→・社会保障給付費対GDP比は、歳出改革と名目GDPの拡大等により2010年代は概ね横ばいで安定的に推移。コロナ禍では拡大したが、社会保障の持続可能性確保には、こうした給付費対GDP比の上昇を抑制する取組が重要。 ・ 人口減少が加速する2030年代以降も実質1%を上回る成長の下、これまでと同様に医療・介護給付費対GDP比の上昇基調に対する改革に取り組むことで、保険料負担の上昇が抑制され、持続可能性が確保される姿が視野に入る。

○働き方に中立な制度の構築→・社会保険の扶養から外れたくないことを理由に就業調整するパートタイム労働者は多く、労働供給増につなげるため、 106万円、130万円の壁への対応は重要。 ・在職老齢年金受給者の構成割合は、支給停止基準額の前後で崖が確認できる等、高齢者の就業に影響を及ぼしている とみられる。少子高齢化・人口減少の下で、高齢者の活躍を引き出すべく、働き方に中立的な年金制度の構築が重要。
○医療費適正化と給付と負担の見直し→一人当たり医療費の地域差は依然として大きく存在。医療費適正化や持続可能な保険制度の運営に向けて、保険者の機能強化を図る必要。国保については、医療費適正化へのインセンティブ向上を図るため、普通調整交付金や保険者 努力支援制度その他の財政支援制度の在り方を検討。
○医療・介護提供体制→・地域で健康で安心した暮らしを送ることができる医療・介護提供体制の構築に向け、限られた資源の最適配分が必要。 ・ 入院・外来・在宅医療・介護の連携を新たな地域医療構想の下で進めると同時に、医師の偏在について経済的インセ ンティブや規制的手法を組み合わせた是正策が求められる。 ・ 介護分野では人手不足の懸念に対し、ロボット・AI活用、経営大規模化等に取り組み、持続可能な体制の構築が必要。


◎資料8 持続可能性の確保に向けた社会保障改革(有識者議員提出資料)
2024年12月3日  十倉雅和 中空麻奈 新浪 剛史 柳川範之

社会保障改革は、健康で生涯活躍できる社会の実現、セーフティネット機能による暮らしの安心確保を通じた消費の押し上げ、保険料負担の上昇の抑制による可処分所得の拡大への寄与など、成長型経済への移行と国民の安心・安全の確保を支える上で重要な役割を果たす。 骨太方針2024で示されたとおり、経済・財政・社会保障の持続可能性確保に向けて、人口減少が加速する2030年代以降も実質1%を上回る成長の下、足下から給付費対GDP比の上昇基調に対する給付と負担の改革を継続していく必要がある。このためには、社会保障が経済を支える機能の向上と、経済・物価動向等を踏まえながら、社会保障費の実質的な増加を高齢化による増 加分に相当する伸びにおさめていくことが求められる。 こうした考え方に基づき、次の重点事項を踏まえた上で、能力に応じ全世代が支え合う全世代型社会保障の「改革工程」の内容を始めとした取組(別紙)を、年内に取りまとめる「経済・財政新 生計画」の工程の具体化に反映し、着実に実行すべき。

1.賃金・物価上昇への対応→・2024年度3報酬改定の賃金への反映状況に関するレビューを継続する。また、来年度予算 編成においては、歳出改革努力を継続する。骨太方針2024に沿って賃金や調達価格の上 昇に対応するとともに、DX、予防・健康づくり、制度改革等を徹底し、給付費全体の伸びを抑 制する。
2.改革全体を俯瞰した政策立案と推進→・社会保障改革が全体として調和のとれた形で立案・推進がなされるよう、最新の将来推計人口や働き方の変化、少子化対策等の政策変更を踏まえた、社会保障全体の給付と負担及び社会保障分野での労働需要の新たな将来見通しを早期に提示して、議論を進める。
3.「改革工程」の着実な実行→・全世代型社会保障の構築に当たり、子育て世代への支援強化は重要。「改革工程」にある歳 出改革は、その財源の捻出につなげるものでもあり、確実に実現するとともに、成果を定量的 に把握する。 ・ 特に、次の課題は、下記の考え方に沿って、年内に確実に結論を得る。⇒・年金制度改革:少子高齢化、人口減少の加速が見込まれる我が国において、年齢・性別 を問わず誰もが活躍できるよう、年収の壁や在職老齢年金の課題に対し、働き方に中立 な制度の構築を進める(具体策は別紙)。・医療・介護提供体制:年齢を重ねても各地域で健康で安心した暮らしを送ることができるよう、医療・介護を一体として、限られた資源の最適配分を実現すべき。医師偏在是正対策は規制的手法を含め実効性を確保するとともに、新たな地域医療構想は、入院・外来・在宅医療に、介護との連携を含めて、2040年に向けた計画をまとめる(具体策は別紙)。・高額療養費制度:物価・賃金が上昇する中で上限が維持されてきた高額療養費の自己負担限度額は、セーフティネットの役割を維持しつつ引上げ。↓
○(別紙) 経済・財政と一体的な社会保障改革の推進に関する具体策
(1)生涯活躍社会の実現に向けた働き方に中立的な制度の確立
→・被用者保険の適用拡大:労働者の勤め先に中立的な制度を構築する観点から、企業規模要件と個人事業所の非適用業種を速やかに撤廃。制度改正後も、引き続き、要件見直しを検討。 ・ 年収の壁・支援強化パッケージ:手続きの簡素化、広報・啓発等各般の措置を実施。制度改正後も、適用拡大の進展、労働市場の動向を踏まえ、改めて在り方を検討。 ・ 在職老齢年金:高齢者の就労促進に向け、支給停止の収入基準額を引上げ。制度改正後も、 引き続き、基準の更なる見直しを検討。
(2)給付と負担のバランスの確保→・給付と負担の不断の見直し:現役世代の保険料負担の上昇を抑制するため、「改革工程」に ある給付・サービスの見直しとともに、年齢ではなく所得・資産に即した応能負担を強化。スイッチOTC拡大などセルフメディケーションを推進し、それと歩調を合わせて保険給付範囲を見直し。介護の給付と負担の見直しについては、定められた期限内に確実に結論を得る。 ・ 国保の保険者機能強化:保険者である都道府県が医療費適正化に向けて主導的な役割を 担うよう、都道府県内の保険料水準を統一、普通調整交付金や保険者努力支援制度等の財 政支援制度の在り方を検討。
(3)健康と安心を支える効率的な医療・介護提供体制の構築→・地域医療構想:地方への国の支援実績を踏まえた2025年目標までの課題分析に基づき、年内に、2040年に向けた地域類型別の実効性ある方針を示すべき。特に地域ごとの医療機関 機能や各医療機関の経営状況やサービスの質の見える化を徹底、医療機関の連携・集約・ 再編を促進。あわせて2040年に向けた中間目標を設定。 ・ 医師偏在是正:医師多数の区域や診療科等における実効性のある規制的手法による新規参入規制や新陳代謝の促進、診療報酬等のメリハリ付けによる経済的インセンティブを組み合わせて実施。 ・ 介護提供体制:ロボット・AIの活用による省人化・生産性向上、経営の協働化・大規模化、保 険外サービス事業者との連携を推進。必要な介護サービスを確保するため、介護サービス提 供体制の中長期ビジョンを検討。ビジネスケアラー増加に対し、企業向けガイドライン等による 介護と仕事の両立に係る取組を推進。
(4)医療・介護分野におけるイノベーション創出→ ・ 医療・介護DX:マイナ保険証の円滑な運用、電子カルテの標準化・普及、全国医療情報プラットフォーム構築等を推進。同プラットフォーム上の情報を医療技術の開発や創薬等のため に二次利用する環境を整備。 ・ HX(Healthcare Transformation):PHRを活用した民間サービスや保険者のデータヘルス推進等により、予防・健康づくりを強化。生活関連産業、保険者、医療機関等が連携するユースケース創出、データ標準化等の環境整備を実施。 ・ 創薬力強化:アカデミア・スタートアップのシーズを実用化につなげるべく、ベンチャーキャピタルとのマッチング、迅速な治験のための環境整備等により創薬エコシステムを強化。


◎資料9 社会保障分野における今後の対応(福岡臨時議員提出資料)
○社会保障分野における今後の対応→・我が国は、2025年には団塊の世代が全て後期高齢者となり、2030年以降には生産年齢人口が急激に減少、2040年には高齢者人口がピークを迎え、以降、急激な人口減少社会に入っていく。こうした少子高齢化・人口減少時代といった時代の大きな変革期にあっても、国民一人 一人が安心して生活できる社会保障制度を構築し、しっかりと次の世代に引き継いでいく。

・働き方に中立的な年金制度の構築→• 年金制度について、働き方に中立的な制度を目指すとともに、ライフスタイル等の多様化を年金制度に反映しつつ、高齢期の経済基盤の安定や所得保障・再分配機能の強化を図るべく、年末の取りまとめに向けて以下の見直 しを検討する(以下、現在社会保障審議会年金部会において検討を進めている事項)。⇒ ・ 被用者保険の適用に関して、企業規模要件(現行従業員51人以上)の撤廃や、常時5人以上を使用する個人事業所の非適用業種の解消等。 ・ マクロ経済スライド(財源の範囲内で年金額を自動調整する仕組み)について、基礎年金(1階)と報酬比 例部分(2階)の調整期間を一致させ、基礎年金(1階)の給付調整の期間を短縮することで、物価や賃金 に連動した年金額の伸びを早期に実現(調整終了後は厚生年金受給者を含めたほぼ全ての受給者の年金の給 付水準を改善)※ 。 ・在職老齢年金(毎月の賃金と厚生年金額の合計が50万円を超える場合に年金の一部又は全部を支給停止する 仕組み)の見直し。 ・ 保険料や年金額の計算に用いる標準報酬月額の上限(65万円)について、負担能力に応じた負担を求めるとともに、将来の給付も増やすことが出来るようにする。 ・ 高齢期より前の遺族年金について、女性の就業参加等を踏まえて男女差を解消 等 ※ 現行制度と比べて、将来的な国庫負担の増加が見込まれることから、安定財源の確保が必要。
・医療制度改革、医療・介護 D X→• これまで、2025年に向けて、地域医療構想により病床の機能分化と連携を進めてきたところ、2040年頃を視野に入れ、 地域医療構想の対象範囲について、入院医療だけでなく、在宅医療、医療・介護連携、人材確保等を含めた地域の医療 提供体制全体に拡大するとともに、病床機能の分化・連携に加えて、医療機関機能の明確化等について、法制上の措置 を含めて検討を行い、2024年末までにとりまとめ、2025年度にガイドラインを策定する。 • 医師偏在の更なる是正を図るため、経済的インセンティブ、規制的手法等の総合的な対策のパッケージを2024年末まで の策定に向けて検討中。 • かかりつけ医機能が発揮される制度については、令和7年度の施行に向けた準備を着実に進めていく。
• 社会保障給付の水準が増大し、所得に占める社会保険料負担の割合が中長期的に増加傾向にあるなかで、現役世代の負 担にも配慮し、社会保険料等の負担上昇を抑制することが重要な課題となっており、高額療養費の見直しの検討など、 能力に応じて皆が支え合う、全世代型社会保障の構築に向けた取組を進めていく。
• より質の高い医療やケアを効率的に提供する体制を構築するため、医療DXの基盤であるマイナ保険証の利用促進を図りつつ、「医療DXの推進に関する工程表」に基づき、以下の医療・介護DXの各取組をより実効的かつ一体的に進めるとともに、速やかに必要な関係法令の整備を行う。⇒ ・ 全国医療情報プラットフォームの構築等(電子カルテ情報共有サービス、診療報酬改定DX、介護情報基盤、自治体 と医療機関・薬局をつなぐ情報連携基盤(PMH:Public Medical Hub)の構築、電子処方箋の普及促進等)。 ・ 医療情報の二次利用の推進(医療・介護等の公的DBの利用促進(仮名化情報の利用、電子カルテ情報の二次利用 等)、クラウド環境の情報連携基盤の構築、利用手続のワンストップ化等)。 ・ 医療DXの実施主体の整備(社会保険診療報酬支払基金の改組、国による医療DXの総合的な方針の策定等)。 ・ スマホ搭載などマイナ保険証の利用を促進するとともに、マイナ保険証を持たない者に対しては資格確認書を速やか に交付する
・創薬力の強化・後発医薬品の安定供給→• 以下に掲げる取組等を通じて、我が国の創薬基盤の再構築・再強化を図る。⇒ ・ 創薬エコシステムの構築(官民協議会の設置、創薬クラスターの強化等)。 ・ アカデミアシーズ等の実用化支援。 ・ 革新的モダリティの臨床試験実施体制等の整備・製造支援(FIH(First In Human:ヒト初回投与)試験体制等の整備等)。
• 少量多品目生産による非効率的な製造等を要因とした後発医薬品の供給不安が発生していることを踏まえ、以下 に掲げる取組等を通じて、 5年程度の集中改革期間の中で後発医薬品業界の産業構造改革を強力に進めていく。⇒ ・ 企業間の連携・協力・再編を強力に後押しするために国が企業の取組を認定する枠組みの設置。 ・ 少量多品目生産の非効率な生産体制の解消に向けて計画的に生産性向上に取り組む企業に対する支援。 ・ 品目統合のための情報交換や協業、企業統合等について、独占禁止法との関係整理。 ・ 安定供給確保に係るマネジメントシステムについて法的枠組みを整備。

次回は新たに「基本政策部会(第15回)」からです。

令和6年第14回経済財政諮問会議 [2025年01月14日(Tue)]
令和6年第14回経済財政諮問会議(令和6年11月26日)
議事(1)令和7年度予算編成の基本方針(原案)(2)賃金向上に関する特別セッション@
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2024/1126/agenda.html
◎資料5 労働供給制約経済と賃金 〜賃金上昇圧力を持続的賃金上昇に結実させるために〜 (冨山和彦氏提出資料)
○労働供給制約の時代は付加価値労働生産性一本勝負↓

• ほとんど全ての経済政策課題(経済成長、賃金、格差)は付加価 値労働生産性の底上げに収れんする→−伝統的なマクロ政策は基本的に不完全雇用が前提 −少子高齢化による労働供給制約は構造的、恒常的 −経済は循環であり成長は循環の制約要因で規定される
・付加価値労働生産性↑×総労働時間≒GDP↑ −低生産性・低賃金セクターは現場系、非製造業系、中小企業系 ・勤労者の7割を占める増加セクターであり人手不足が深刻
・付加価値労働生産性↑×労働分配率≒賃金↑⇒格差縮小
○人手不足は長期的、構造的に続く→2040年まで。 参照。
○付加価値労働生産性ランキング 出所:日本生産性本部労働生産性の国際比較2023 ↓
https://www.jpc-net.jp/research/assets/pdf/summary2023.pdf
OECD加盟諸国の時間当たり労働生産性(2022年/38カ国比較)
→労働需給シミュレーション⇒30 日本 52.3USドル参照。

○勤労者の8割を占める非製造業セクターの押上げが重要 参照。
○AI革命:ジョブシフトと現場系の生産性向上に追い風 ↓

筋肉の代替(動力革命)→知覚の代替(情報革命)→脳の代替(AI革命)
○付加価値労働生産性の規定要因は本質的に経営要因→ • 構造的、恒久的人手不足の時代、労働生産性向上と失業問題のトレードオフはない • 我が国の労働生産性の低さは伸びしろの大きさ(ロー・ハンギング・フルーツの宝庫)
○政策課題↓
• イノベーション(マネジメントとテクノロジー)と的確な投資(無形、有形)
• 制約要因、規定要因は圧倒的に人材(経営レベル、現場レベル)
• 経営人材は数の多さ(有能な経営者は希少)、高齢化、昭和モデルと平成モデルの呪縛
−新陳代謝により高生産性企業へ事業を集約化→好機到来!事業再編、M&A、事業承継が極めて重要
−「若者、よそ者、ばか者」への世代交代→新たなヒトの流れを作るムーブメントを支援
• 現場人材は学校教育、リスキリング、労働移動(外部労働市場)の問題
−高等教育における技能教育・職業教育軽視(L型大学シフト)→なぜ一流の観光MBAがないのか?
−リスキリングの脆弱性(特にoff-JT及び企業横断型リスキリング強化)
−外部労働市場の脆弱性(生産性の高い企業、産業への移動促進のための市場機能整備、M&Aも重要)
• 金を使うなら人材への投資的分配を最優先すべき
−人的乗数効果を狙うべき(知識集約産業と労働供給制約の時代) 「列島改造」は設備集約産業と人口増の時代であり物的乗数効果を狙った投資的分配政策は有効だった

○世界の観光ビジネススクールランキング↓
出所: QS World University Rankings by Subject 2024: Hospitality & Leisure Management https://www.topuniversities.com/university-subject-rankings/hospitality-leisure-management

○最低賃金について
• 最低賃金の本旨は憲法25条の生存権 −健康で文化的な最低限度の生活を保障する賃金 • 最低賃金は、@労働者の生計費、A労働者の賃金相場、B通常の事業の支払い能力を考
慮して決定(最 低賃金法9条2項)
• なぜBがあるのか?対賃金中央値の比率が主要国の中で顕著に低いのはなぜか?
−主要国では52%〜60%程度。日本は計算方法によるが46%から50%くらい
• 最低賃金がBを大きく上回ると倒産が多発し、低賃金層で長期失業が増え、労働者の生存権がかえって 脅かされる?
−今や労働供給制約国である我が国は主要国の中で圧倒的にこのリスクが小さい
−最低賃金を上げた方が労働供給も増える可能性
−スキル不足で仕事があっても生産性と賃金が持続的に上がらないことの方が現実のリスク
• 労働供給制約時代の最低賃金は@が圧倒的な決定要素であるべき→二元構成で引き上
げを考えるべき
−相対的貧困からの脱却目線では東京の1163円は厳しい(単身でも食べるだけで精一杯) −年収の壁問題も@の観点からは問題
−現場系、非製造業系、中小企業系の労働者の賃金水準底上げにも影響大 ⇒@基本水準
を対中央値で60%に引き上げること(段階的でもいいが可及的早期に) A並行して従来のような物価上昇、賃金上昇スライドを毎年反映すること


◎資料6 賃上げと人手不足解消の好循環に向けた政策対応(山田久氏提出資料)
1.賃金・物価・生産性の関係
→◆実質生産性は上昇しているが、実質賃金は伸び悩んでいる。 ◆実質賃金=実質生産性×労働分配率×物価比率(≒交易条件) →実質労働生産性の引き上げは大前提として重要だが、それだけでは不十分で、労働分配率の低下と交易条件の悪化が問題。 ◆背景にはデフレの影響。 デフレ下では流動性選好が高まり、内部留保を優先して労働分配率を押し下げ
・デフレ下で定着したコスト削減・低価格戦略が輸出物価押し下げ要因になり交易条件が悪化。→ ◆適度な物価上昇は生産性向上を促し、賃上げも促す⇒物価上昇下では付加価値創造力が値上げ(価格転嫁)につながりやすく、競争力の ある企業の成長を促し、そうした企業の賃上げも促す。背後で新陳代謝が進む。 ◆適度な賃上げは生産性向上を促し、適度な物価上昇にもつながる
2.賃上げへの課題 →◆大企業の賃上げ率は望ましい水準まで引き上げ⇒生産性上昇トレンド1%強+望ましいインフレ率2%弱+定期昇給2%弱=5%程度。ただし、シニア(60歳代)の賃金水準維持・活躍促進が課題。 ◆中小企業の引き上げは不十分。生産性向上とともに価格転嫁が重要(大手の 労働分配率の大幅低下分の一部を中小企業に配分)。◆遅れる公共部門の賃上げ…エネルギー・医療福祉・教育の賃金低迷。 背景に公共サービス物価の停滞。
3.AI(人工知能)時代の生産性向上策 →◆AIによるホワイトカラー労働の縮小+高齢化・高学歴化等による現場労働の不足⇒米国では、かつてオフィス専門職の賃金伸び率が高かったが、近年は鈍化し、むしろ 現場系職種の賃金の伸び率の方が高い。 ◆ホワイトカラーの余剰と現場労働の不足のミスマッチ拡大で、ミクロの生産性向上はみられても、ミスマッチ失業が増加してマクロ経済が低迷する恐れ。◆ミスマッチ失業増大によるマクロ経済の低迷を避けるには、現場労働に魅力的な受け皿を作る必要。 ◆アドバンスト・エッセンシャルワーカー(高賃金な高度現場人材)の創出→日本の 強みである現場力・品質力の維持とAIによる余剰労働力の受け皿
4.賃上げ・人手不足解消に求められる政策対応↓
@中小企業の賃上げ促進策…価格転嫁促進、地方版政労使会議の定期 開催の後押し(地方の独自施策への財政支援、労務費100%価格転嫁推 進支援、面的生産性向上策)
A公共部門の賃上げ ▽公共料金の見直し ▽生活基盤を効率的に支えるアドバンスト・エッセンシャルワーカーの創出 ・エッセンシャル部門のAI等新技術の徹底活用 ・エッセンシャル部門の賃上げを支える職業能力資格の整備 ・エッセンシャル部門支援基金の創設
B特定最賃への注目と「面」での生産性向上策 特定最賃(産業別最賃)を設定した特定地域の特定産業に面的支援 (例)特定最賃で大幅賃上げを目指す場合、内外を見据えたブランディング・デジタル 投資・人材育成策等とセットに地場産業の面的生産性向上策で支援。


◎配付資料1 国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策(概要)
〜全ての世代の現在・将来の賃⾦・所得を増やす〜
○経済の現状・課題
→・600兆円の名⽬GDP、33年ぶりの⾼⽔準の賃上げが実現するなど、成⻑と分配の好循環は、動き始めている。・国⺠⼀⼈⼀⼈が、こうした前向きな動きを賃⾦・所得の増加という形で実感できるよう、更に政策を前進させる必要。・賃⾦上昇が物価上昇を安定的に上回る経済の実現、「賃上げと投資が牽引する成⻑型経済」への移⾏を確実なものとする。
○経済対策の基本的考え⽅→@賃⾦・所得の増加に向けた経済の成⻑、A物価⾼への対応、B安⼼・安全の確保の重要課題に対し、 速やかに万全の措置を講ずる。
○3本の柱→第1の柱⇒全ての世代の 現在・将来の賃⾦・所得を増やす(⽇本経済・地⽅経済の成⻑)。 第2の柱⇒誰⼀⼈取り残されない 成⻑型経済への移⾏に道筋をつける(物価⾼の克服)。 第3の柱⇒成⻑型経済への移⾏の礎を築く(国⺠の安⼼・安全の確保)。
○経済対策のねらい→デフレを脱却し、新たな経済ステージに移⾏することを⽬指して、 「経済あっての財政」との考え⽅に⽴ち、「賃上げと投資が牽引する成⻑型経済」を実現しつつ、 財政状況の改善を進め、⼒強く発展する、危機に強靱な経済・財政を作っていく。
⇒⇒⽇本を守り、国⺠を守り、地⽅を守り、若者・⼥性の機会を守り、全ての国⺠が安⼼と安全を感じられる未来を創る。


◎配付資料2 国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策(令和6年 11 月 22 日閣議決定)
○目 次のみ↓
第1章 経済の現状・課題及び経済対策の基本的考え方

1.経済の現状・課題及び対応の方向性
2.経済対策の基本的考え方
第2章 国民の安心・安全と持続的な成長に向けた具体的施策〜
第1節 日本経済・地方経済の成長日本経済・地方経済の成長
〜全ての世代の現在・将来の賃金・所得を増やす〜

1.賃上げ環境の整備 〜足元の賃上げに向けて〜
(1)最低賃金の引上げ
(2)持続的・構造的賃上げに向けた価格転嫁等の取引適正化の推進
(3)省力化・デジタル化投資の促進
(4)人への投資の促進及び多様な人材が安心して働ける環境の整備
(5)中堅・中小企業の経営基盤の強化・成長の支援
2.新たな地方創生施策(「地方創生2.0」)の展開
〜全国津々浦々の賃金・所得の増加に向けて〜
(1)「新しい地方経済・生活環境創生本部」による新たな地方創生の起動
(2)農林水産業の持続可能な成長及び食料安全保障の強化
(3)地域の生活環境を支える基幹産業等の活性化
(4)文化芸術・スポーツ及びコンテンツ産業の振興
(5)大阪・関西万博の推進
3.「投資立国」及び「資産運用立国」の実現 〜将来の賃金・所得の増加に向けて〜
(1)潜在成長率を高める国内投資の拡大
(2)イノベーションを牽引するスタートアップへの支援
(3)「資産運用立国」の実現に向けた取組の加速

第2節 物価高の克服 〜誰一人取り残されない成長型経済への移行に道筋をつける〜
1.足元の物価高に対するきめ細かい対応
(1)物価高の影響を受ける低所得者世帯への支援
(2)地域の実情等に応じた物価高対策の推進
(3)物価高の影響を受ける業種の支援
2.エネルギーコスト上昇に強い経済社会の実現
第3節 国民の安心・安全の確保 〜成長型経済への移行の礎を築く〜
1.自然災害からの復旧・復興
2.防災・減災及び国土強靱化の推進
3.外交・安全保障環境の変化への対応
(1)外交・安全保障
(2)防衛力の強化
4.「誰一人取り残されない社会」の実現
(1)防犯対策の強化 (2)こども・子育て支援の推進
(3)公教育の再生を始めとする学びの支援 (4)女性・高齢者の活躍・参画の推進
(5)困難に直面する者・世帯への支援等による安心・安全の確保


◎配付資料3「国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策」の経済効果
• 総合経済対策全体としては、実質GDPを1.2%程度(年成⻑率換算)押し上げる効果が⾒込まれる。
• 物価⾼対策による直接的な国⺠負担の軽減策として、3.8兆円程度の財政⽀出を⾏う。
<総合経済対策の柱> <財政⽀出>
第1の柱︓⽇本経済・地⽅経済の成⻑ 10.4 兆円程度
〜全ての世代の現在・将来の賃⾦・所得を増やす〜
第2の柱︓物価⾼の克服 4.6 兆円程度
〜誰⼀⼈取り残されない成⻑型経済への移⾏に道筋をつける〜
第3の柱︓国⺠の安⼼・安全の確保 6.9 兆円程度
〜成⻑型経済への移⾏の礎を築く〜
合計 21.9 兆円程度

○経済押上げ効果→• 実質GDP換算額 21兆円程度
• 年成⻑率換算(実質) 1.2%程度(今後3年程度で上記効果が発現すると仮定した場合の単純平均)
○物価高対策による直接的な国民負担の軽減→• 物価⾼の影響を受ける低所得者世帯への⽀援 • 地域の実情等に応じた物価⾼対策の推進 等⇒3.8兆円程度
• 消費者物価の抑制 ▲0.3%pt程度(燃料油、電気・ガス料⾦の激変緩和措置による2025年2〜4⽉消費者物価(総合)前年同⽉⽐の押し下げ効果)


◎配付資料4 国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策 全体像 (経済財政政策担当大臣提出資料)
・第1の柱〜第3の柱→将来、デフレに後戻りしない、賃上げと投資が牽引する 成長型経済へ。



◎配付資料5 国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策 政策ファイル (経済財政政策担当大臣提出資料)
≪日本経済・地方経済の成長 〜全ての世代の現在・将来の賃金・所得を増やす〜≫↓
1.物価上昇を上回る賃上げ支援
→価格転嫁の円滑化や省力化及び経営基盤の強化・成長に向けた支援を充実。⇒「現状」「主な取組」→→賃上げの普及・定着に向けてあらゆる施策を総動員(2020年代に最賃の全国平均1,500円という高い目標の達成に向け、たゆまぬ努力を継続)
2.価格転嫁 →・コスト(特に労務費)の価格転嫁は不十分。 ・サプライチェーン全体で適切な価格転嫁を定着させるため、下請法の執行強化等に取り組む。⇒「現状」「主な取組」→→賃金上昇が物価上昇を安定的に上回る経済の実現を目指す
3.省力化・デジタル投資→ITツール導入、省力化のためのシステム構築及び設備投資について、最低賃金近傍の従業員を 抱える企業に対し、支援を強化。
・目指す将来像→・中小企業が賃上げの原資を確保することを支援し、賃上げの普及・拡大を促進。 ・ 省力化による生産性向上により、中小企業の稼ぐ力を強化。
4.地方創生2.0 →地域の産官学金労言※の関係者が知恵を出し合い、希望・熱量・一体感を取り戻す形で、 新たな地方創生施策(「地方創生2.0」)を展開。⇒取り組み 参照。
・目指す将来像→地域の可能性が最大限に引き出され、すべての人が 希望と幸せを実感する社会の実現
5.特区制度の活用による地域の取組支援 →全国一律の制度・規制が、地域の実情及び技術の進展やビジネスの実態に合っていない 弊害を打破するため、制度・規制の特例を創設・活用。⇒取組(2024年度内をめどに所要の措置)
・目指す将来像→地域課題の解決、新たな事業の創出により、地方の生活環境の改善・地方経済の活性化を実現
6.食料安全保障の観点を踏まえた農林水産業の振興 →・ 農林漁業者の所得向上につなげるため、高付加価値な農林水産物・食品の輸出を促進。 ・人口減少下でも国内生産を維持するため、農地の大区画化、スマート農業への転換を推進。⇒現状・課題 取組・目指す将来像→輸出を増加(2023年 1.5兆円 → 2030年 5兆円)。 ・農地の大区画化、スマート農業への転換。 参照。
7.高付加価値型観光の推進 →・インバウンド需要の拡大は、地方創生の観点からも重要。 ・地域の創意工夫あふれる取組を支援し、地域の魅力を向上させ、観光立国の実現につなげる。
・目指す将来像→・訪日外国人旅行者数 2023年 2,500万人 → 2030年 6,000万人。・訪日外国人消費額 2023年 5.3兆円 → 2030年 15兆円 観光立国及び地域活性化の実現
8.海洋政策 →・海洋資源の開発や監視に資するAUV(自律型無人探査機)の利用を促進。・南鳥島周辺の深海底からのレアアース揚泥を実現し、我が国独自の資源確保を目指す。
・目指す将来像→・2030年までに、AUVの国産化、海外展開。 ・南鳥島周辺海域のレアアース泥(※)の揚泥、海 底ケーブル等の保守点検を実施。・レアアース資源の国産化による、安定した供給 体制の確保と海外への資源依存度低減。
9.宇宙政策 →JAXAに設置した宇宙戦略基金(10年で総額1兆円規模)を活用し、民間企業等の技術開発、 実証、商業化への支援を加速し、宇宙分野を成長産業化。
・目指す将来像→我が国の宇宙産業の市場規模 2020年 4兆円 → 2030年代早期 8兆円
10.フュージョン(核融合)エネルギー →・エネルギー問題と地球環境問題を同時解決する次世代エネルギーとして期待。 ・ 早期実現と実用化に向け、研究開発を加速。
・目指す将来像→・海水等から、無尽蔵で安定的なエネルギーを確保。 石油等の輸入依存から脱却し、エネルギー保有国としての日本へ。・核融合発電、船・飛行機の動力源として活用。
11.防災DXの推進 →・「防災デジタルプラットフォーム」を構築し、人命救助や復旧作業等の災害対応を強化する。 ・ 防災アプリを通じ、住民に対する災害情報の迅速かつ円滑な提供を可能にする。
12.地熱発電と中小水力発電→・豊富な水資源と地熱資源を活かし、脱炭素エネルギーの導入を拡大。 ・発電による収益の一部について、地域への還元を行うことも想定。

≪物価高の克服 〜誰一人取り残されない成長型経済への移行に道筋をつける〜≫
13.低所得者世帯支援
→住民税非課税世帯には、 一世帯当たり 3万円 を目安に給付 バツ1 子育て世帯には、 子ども一人当たり 2万円 を加算して給付
14.重点支援地方交付金 →・物価高が継続する中、地方公共団体が地域の実情に応じた生活者・事業者の支援を行えるよう、重点支援地方交付金の更なる追加を行う。 ・ これから厳冬期を迎えることを念頭に、推奨事業メニューに灯油支援を追加。⇒推奨事業メニュー 参照。
15.エネルギー価格に対する措置 →物価高が継続する中、燃料油・電気・ガスの価格に対する支援を実施。⇒燃料油価格の激変緩和措置・電気・ガス料金の負担軽減  参照。
16.家庭等の省エネ支援→・断熱窓への改修、高効率給湯器の導入、省エネ性能の高い住宅の新築等を支援。 ・ 光熱費を節約しつつ、地球に優しい暮らしを実現する。

≪国民の安心・安全の確保 〜成長型経済への移行の礎を築く〜≫
17.能登半島の復旧・創造的復興
→令和6年能登半島地震やその後の豪雨により、度重なる被害を受けた能登半島の 復旧及び創造的復興を一層加速。
18.避難所の生活環境の抜本的改善を含む災害対応体制の強化→発災時における被災者の良好な生活環境を確保。
19. 防犯対策→「闇バイト」による強盗・詐欺への対策を始め、防犯対策を強化し、安心・安全 なまちづくりを推進。⇒全ての国民が 安心して暮らせる 社会へ。
20.こども・若者への支援 →全てのこどもや若者が、健やかに成長でき、将来にわたって幸せに生活できる「こどもまんなか社会」を実現する。⇒主な取組 参照。
21.女性活躍・参画の推進→女性の所得向上・経済的自立、活躍できる環境づくりに取り組み、女性活躍・参画を推進。 参照。

次回は新たに「第1回今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会(資料)」からです。

令和6年第14回経済財政諮問会議 [2025年01月11日(Sat)]
令和6年第14回経済財政諮問会議(令和6年11月26日)
議事(1)令和7年度予算編成の基本方針(原案)(2)賃金向上に関する特別セッション@
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2024/1126/agenda.html
◎資料1 財政制度等審議会の建議の方向(加藤議員提出資料)
T:総論↓
1.経済の新たなステージへの移行に向けて ↓
我が国の経済は
、→ • 個人消費は力強い回復には至っていないものの、春闘の賃上げ率は過去30年で最大、企業収益は過去最高を更新、物価上昇 はコストプッシュ型から基調的なものへと変化。 • 名目・実質GDPは過去最高水準、GDPギャップは改善するなど、もはやコロナ禍とは異なり、新たなステージに向けた芽吹きが見 られる。他方、人口減少が進む中、デフレ脱却を確実にするためにも、潜在成長率の引上げが急務であり、労働生産性の向上や 資本投入の増加を通じて、民需主導の持続的な経済成長を実現していくことが不可欠。
2.新たなステージにおける課題→ 経済の新たなステージへの移行が進む中、 • 他の先進国と同様、歳出構造の平時化に取り組む必要。 • 物価上昇局面では、予算面においても経済・物価動向等に一定の配慮が必要。他方で、これに伴う社会保険料等の国民負担増 や金融政策の調整度合いとの整合性に留意が必要。 • 金利上昇局面では、利払費の増加が懸念されることに加え、企業・政府の資金調達コストが上昇することもあり、企業の投資効率向上や政府の投資効果も見据えた政策運営が必要。また、銀行の国債消化余力の度合いや海外投資家の国債保有割合の上昇等を踏まえ、国債を安定的に消化できる環境維持のための政策努力が不可欠。 • これまで金融危機や自然災害等の有事が一定の頻度で発生。今後想定外の有事が発生した場合にも、十分な財政措置を講じ ることができるよう、財政余力の確保が重要。
3.今後の財政運営 • 骨太方針→2024等を踏まえ、2025年度のプライマリーバランス黒字化目標の達成に向けて取り組むのみならず、それを一里塚として、これまでの取組の進捗・成果を後戻りさせることなく、債務残高対GDP比の安定的な引下げを目指し、経済再生と財政健 全化を両立させる歩みを前進させる必要。 • EBPMによる予算の中身の重点化や施策の優先順位付けを徹底することで、予算の質を高めていくことが重要。 • 今後財政健全化に取り組んでいくに当たっては、財政の現状や課題に対する国民の理解を醸成し、議論を喚起していくことが重要。

U:各論↓
1.社会保障
→・ 全世代型社会保障に向けた医療・介護の改革をより一層推進する。現役世代の負担を抑制する観点から、毎年薬価改定を着実に 実施するとともに、年齢ではなく能力に応じた負担に向けた改革に取り組むべき。さらに実効性のある医師偏在対策を実現すべき。 ・ 年金制度改革について、働き方に中立的な制度の構築を目指すとともに、高齢期の経済基盤の安定や所得保障・再分配機能の強化を図るため、被用者保険の適用拡大、基礎年金の給付水準の低下への対応等の改革に取り組むべき。
2.地方財政→ ・ 一般財源総額実質同水準ルールの下、臨時財政対策債の発行額の縮減を図るなど、地方財政の健全化を更に推進していく必要。 また、交付税特会の借入金について、償還計画を前倒しするなど、残高の縮減に向けた努力を強化・継続していくべき。
3.防衛→・ 防衛力整備の一層の効率化・合理化を図りながら、防衛力の抜本強化を図りつつ、計画で定められた経費の総額を堅持する必要。
4.文教・科学技術→・ 義務教育について、児童生徒あたり教員数は増加しているが、教員の時間外在校等時間は減少しておらず、負担感の大きい業務の抜 本的縮減が必要。そのため、教職調整額を、「働き方改革」の進捗と財源確保を前提に、段階的に引き上げつつ、時間外在校等時間 が月20時間(調整額10%相当)に達する際に教員ごとの所定外の勤務時間に見合う手当への移行等を検討することが考えられる。
5.社会資本整備→・ 国土強靭化の推進に向けて、これまでの取組を検証するとともに、事業の更なる重点化やハード・ソフト両面の取組等により、緊急に 実施すべき事業を確実に実施する必要。整備新幹線の着工判断や貸付料設定の見直し等についても、検討を深める必要。
6.農林水産→・ 法人経営や大規模化等により、農業を自立した産業へと「構造転換」し、その中で、足腰の強い水田農業への転換を進めるべき。また 食料安全保障は、輸入や備蓄の確保等により強固な食料安全保障を実現すべき。米の備蓄水準を見直し、財政負担を削減すべき。
7.国内投資・中小企業等→・ 半導体関連投資等について、支援の基本原則を定め、第三者の外部有識者等による評価の下で検証・改善を加えることが重要。 中小企業対策は、経営改善のための支援体制整備や、価格転嫁対策など、中小企業の公正な競争環境の整備に軸足を置くべき。
※ 上記のほか、「外交」「デジタル」についても、各分野において取り組むべき事項を記載予定。


◎資料2 令和7年度予算編成の基本方針(案)
1. 基本的考え方
(1)経済の現状及び課題

@ 我が国経済は、600 兆円超の名目GDP、33 年ぶりの高い水準となった賃上げを実現した。成長と分配の好循環は、動き始めている。現在は、長きにわ 11 たったコストカット型経済から脱却し、デフレに後戻りせず、「賃上げと投資 12 が牽引する成長型経済」に移行できるかどうかの分岐点にある。
A こうした前向きな動きを、国民一人一人が実際の賃金・所得の増加という形で、手取りが増え、豊かさが実感できるよう、更に政策を前進させなければならない。賃金・所得が力強く増加していく状況が定着するまでの間、家計を 温め、生活者が豊かさを実感できるよう、幅広い方策を検討することも必要である。
B 最重要課題は、全ての世代の現在・将来の賃金・所得の増加であり、賃金上昇が物価上昇を安定的に上回る経済を実現し、新たなステージとなる「賃上げと投資が牽引する成長型経済」への移行を確実にすることである。
C 我が国経済が緩やかな回復を続けると見込まれる中、経済全体の需給バランスは、今後、需要不足から供給制約の局面に入ると見られる。官民が連携する形で成長分野における投資を促進するとともに、地方の中堅・中小企業の人手不足対策を含めた生産性向上の取組を支援するなど、日本経済及び地方経済の中長期的な成長力を強化することが必要となる。それらの取組と人への投資及び労働市場改革を合わせ、賃上げの流れを構造的・持続的なものとする。 同時に、現下の物価高の下、誰一人取り残されない形で成長型経済に移行するためには、特に物価高の影響を受ける低所得者世帯への支援や地域の実情に応じたきめ細かい物価高対策など、当面の措置を講ずる必要がある。 東日本大震災や令和6年能登半島地震を始めとする自然災害からの復旧・復興、外交・安全保障環境の変化への適切な対応、防犯・治安対策の強化、公教育の再生、女性や高齢者の活躍・参画の推進を含め、「誰一人取り残されない社会」の実現に向けた取組を推進し、成長型経済への移行の礎となる国民の安心・安全の確保に万全を期すことも必要である。

(2)経済財政運営の基本的考え方
@ 政府は、こうした重要課題に迅速に対応するため、日本経済・地方経済の成長、物価高の克服及び国民の安心・安全の確保を3つの柱とする「国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策」(令和6年 11 月 22 日閣議決定)を策定した。経済対策の裏付けとなる令和6年度補正予算の早期成立を図り、その成立後には、できる限り速やかに関連する施策を実行する。その上で、令和7年度の予算編成に取り組み、切れ目のない経済財政運営を行う。
A 経済財政運営に当たっては、デフレを脱却し、新たな経済のステージに移行することを目指して、「経済あっての財政」との考え方に立ち、「賃上げと投資が牽引する成長型経済」を実現しつつ、財政状況の改善を進め、力強く発展する、危機に強靱な経済・財政を作っていく。

(3)施策の方向性
@ 物価上昇を上回る賃金上昇の普及・定着に向け、地域の中堅・中小企業及び小規模事業者を含め、最低賃金の引上げを始めとする賃上げの環境を整備する。国民一人一人の生産性と所得を向上させる全世代のリ・スキリング支援など、三位一体の労働市場改革を推進する。建設・物流、医療・介護等の現場におけるロボット・ICT機器の活用を通じた生産性向上・職場環境改善等による更なる賃上げ等を支援する。公正取引委員会の下請代金支払遅延等防止法(昭和 31 年法律第 120 号)の執行強化、「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」(令和5年 11 月 29 日公表)に基づく取組の徹底、国等及び地方公共団体の官公需における入札制度の適切な運用を含め、中小企業等の価格転嫁の円滑化を進めるとともに、資金繰り、経営改善・再生・成長に向けた取組等を支援する。
A 地方こそ成長の主役である。ICT技術も活用しながら、新たな地方創生施策(「地方創生2.0」)を展開する。「新しい地方経済・生活環境創生本部」(令和6年 10 月 11 日設置)において、今後 10 年間集中的に取り組む基本構想を策定する。地域の産官学金労言が連携し、それぞれの知恵と情熱を活かして地域の可能性を引き出そうとする取組を後押しする中で、買物、医療、交通など日常生活に不可欠なサービスの維持向上やデジタルトランスフォーメーション(DX)・グリーントランスフォーメーション(GX)の面的展開等の取組を進め、新たな需要創出や生産性向上につなげる。地方創生の交付金を当初予算ベースで倍増することを目指して取り組む。
B 賃上げの原資となる企業の稼ぐ力や地方経済の潜在力を引き出すための国内投資を促進する。科学技術の振興及びイノベーションの促進、GX・DX及びAI・半導体の分野における官民連携での投資の促進、宇宙・海洋のフロンティアの開拓、スタートアップへの支援等に取り組むことによって、成長力を強化するとともに、新たな需要を創出する。半導体を始めとする重要な物資のサプライチェーンの強靱化や先端的な重要技術の育成など、経済安全保障の確保に向けた取組を推進する。併せて、食料安全保障及びエネルギー安全保障に係る政策対応を強化する。
C 農林水産業の持続可能な成長、文化芸術・スポーツ及びコンテンツ産業の振興、交通・物流インフラの整備、観光立国に向けた取組を推進する。2050 年カーボンニュートラルを目指したグリーン社会、地域・くらしの脱炭素化やサーキュラーエコノミーの実現、2025 年大阪・関西万博に向けた着実な準備等に取り組む。
D 令和6年能登半島地震等の自然災害からの復旧・復興に取り組む。今後も想定される災害への備えに万全を期すため、令和8年度中の防災庁の設置に向けた検討と並行して、まず、内閣府防災担当の機能を予算・人員の両面で抜本的に強化するとともに、避難所環境の整備など、防災・減災及び国土強靱化の取組を着実に推進する。「5か年加速化対策」後も、中長期的かつ明確な見通しの下、継続的・安定的に切れ目なくこれまで以上に必要な事業が着実に進められるよう、「国土強靱化実施中期計画」の策定に係る検討を最大限加速し、早急に策定する。東日本大震災からの復興・創生に取り組む。ALPS処理水に関し、一部の国・地域による日本産水産物の輸入停止に対し、即時撤廃を強く求めるとともに、安全性の確保と風評対策・なりわい継続支援に万全を期す。
E 日米同盟を基軸に、自由で開かれたインド太平洋というビジョンの下、法の支配に基づく国際秩序を堅持するため、各国・地域との協力連携を深めるとともに、ルールに基づく自由貿易体制を推進する。戦後最も厳しく複雑な状況となっている安全保障環境を踏まえ、国家及び国民を守り抜くため、令和5年度から令和9年度までの5年間で 43 兆円程度の防衛力整備の水準を確保し、防衛力の抜本的強化を速やかに実現する。「自衛官の処遇・勤務環境の改善及び新たな生涯設計の確立に関する関係閣僚会議」における検討を踏まえた人的基盤の強化に係る施策に取り組む。
F 全てのこども・子育て世帯に対し切れ目のない支援を行う観点から、「こど 5 も未来戦略」(令和5年 12 月 22 日閣議決定)で示された「こども・子育て支 6 援加速化プラン」を着実に実施する。
G 誰一人取り残されない安心・安全な社会の実現を目指し、都市部を含む社会全体での防犯・治安対策の強化、厳格かつ円滑な出入国在留管理、全世代型社会保障の構築、健康寿命の延伸による生涯活躍社会の実現、公教育の再生、女性や高齢者の活躍・参画の推進、障害者の社会参加や地域移行の推進、孤 12 独・孤立対策・就職氷河期世代のリ・スキリングの支援等に取り組む。

2.予算編成についての考え方
@ 令和7年度予算は、令和6年度補正予算と一体として、1.の基本的考え方及び「経済財政運営と改革の基本方針 2024」(令和6年6月 21 日閣議決定。以下「骨太方針 2024」という。)に沿って編成する。足元の物価高に対応しつつ、デフレを脱却し、新たなステージとなる「賃上げと投資が牽引する成長型経済」への移行を実現することを目指して、物価上昇を上回る賃金上昇の普及・定着、地方創生2.0の起動、官民連携による投資の拡大、防災・減災及び国土強靱化、防衛力の抜本的強化を始めとする我が国を取り巻く外交・安全保障環境の変化への対応、充実した少子化・こども政策の着実な実施など、重要政策課題に必要な予算措置を講ずることによって、メリハリの効いた予算編成を行う。
A その際、骨太方針 2024 に基づき、経済・物価動向等に配慮しながら、「中期的な経済財政の枠組みに沿った予算編成を行う。ただし、重要な政策の選択 29 肢をせばめることがあってはならない」との方針を踏まえる。
B 骨太方針 2024を踏まえ、経済・財政一体改革の工程を具体化するとともに、EBPM1 やPDCA2 の取組を推進し、効果的・効率的な支出(ワイズスペン 33 ディング)を徹底する。


◎資料3 賃金向上特別セッションの主な論点(柳川議員提出資料)
○賃上げとマクロ経済に関する主な論点
1.賃上げを起点とした成長と分配の好循環

@ 原油高・円安を起点としたコストプッシュ圧力が、賃金やサービス価格上昇として波及し、「賃 金と物価の好循環」が回りつつある。この流れを「物価上昇を上回る賃金上昇の定着」に結 び付けていくためには、どのような経済運営が求められるか。
A賃上げを起点として、A)就労促進による人手不足緩和、 B)消費拡大による収益改善、 C)省 力化投資による生産性向上などがもたらされる「賃上げを起点とした成長と分配の好循環」 の実現に向けては、どのような環境整備が必要か。

2.高付加価値創出型経済による賃上げの定着
@ 構造的・持続的な賃上げを実現するためには、経済構造をコストカット型から高付加価値創 出型に転換する必要。そのカギとなる戦略は何か。(ex 企業経営を「守り」(雇用維持)から「攻め」 (投資)重視へ、下請けの価格転嫁を含めた適切なマークアップの確保、地域資源のデジタル化・収益化)
A人手不足の下で、経済全体の生産性を高め、需要を創出し、それを賃上げにつなげるため には、どのような対応が求められるか。 (ex 労働移動の円滑化、M&Aや事業承継の円滑化など のダイナミズムの向上)

3.賃上げの普及・拡大・人手不足対応
@賃上げの流れを更に拡大し、非正規、中小企業、地方などを含めて普及するためには、ど のような取組を進めるべきか。(ex 最低賃金の在り方)
➁人手不足の中で、エッセンシャルワーカーや公的分野の賃上げに向け、官民でどのような対 応が求められるか。(ex 予算・制度面での対応、AI等の現場への導入)
B人手不足の緩和に向け、労働供給を拡大するため、どのような取組を進めるべきか。(ex 働 き方に中立的な制度の構築、その周知広報)


◎資料4 賃金向上特別セッション 基礎資料集(内閣府)
○賃上げを起点とした「成長と分配の好循環」(イメージ)
→@賃上げ・最低賃金の引上げ(人への投資や設備投資による生産性向上の支援) A 家計部門では、賃金上昇による女性・高齢者を中心とした就労促進、それに伴う所得・消費の増加 B 企業部門では、労働供給の増加による人手不足の緩和、 所得・消費の増加による売上・収益の増加 C 家計部門の所得増や企業部門の売上・収益増により、更なるリスキリング・設備投資が可能となる。生産性の向上や価格転 嫁の進展によって、付加価値が増加し、更なる賃上げ・最低賃金の引上げにつながる。

○労働生産性と実質賃金の関係→労働生産性と実質賃金の関係について、「製造業」と「非製造業」に分けてみると、⇒ @ 製造業は、労働生産性は伸びている一方で、交易条件の悪化が賃金を下押ししている。コストを転嫁できるよう、ものづくりの 高付加価値化を進めることが重要。 A 非製造業は、労働生産性の伸びが限定的となる中、労働分配率の低下が賃金を下押ししている。生産性向上に向けた取組 と合わせ、雇用者の処遇改善を進めることが重要。

○交易条件・非正規雇用比率・収入分布→・交易条件は、長期的に悪化してきている。 ・ 非正規雇用比率は、非製造業中心に上昇。相対的に低い賃金の非正規へのシフトが、労働生産性と実質賃金の乖離の要因 となっている可能性。

○企業規模別にみた労働分配率→・労働分配率は、大企業・中堅企業を中心に低下傾向。中小・小規模企業の労働分配率は、相対的に高い水準で推移。 ・大企業の労働分配率の構成要素の変化をみると、営業利益が増加する一方で、人件費の伸びは限定的となっている。

○賃上げの環境整備→・コスト(原材料・労務費)増加分の4割以上を価格転嫁ができた企業は52.2%。業種別にみるとサービス業、規模別 にみると小規模な事業者において、転嫁が十分に進んでいない。 ・ 労務費の増加分の4割以上を価格転嫁できた企業は36.8%。原材料費と比較すると、労務費の転嫁は十分に進んでい ない。その傾向は、業種別にみると小売業とサービス業、規模別にみると小規模な事業者で顕著。

○最低賃金@→・本年の最低賃金の全国加重平均は過去最大の引上げとなったが、諸外国と比較すると、低水準かつ伸びが緩やか。 ・ 他の都道府県からの雇用充足率でみると、最低賃金水準が高い地域へ雇用の流入が進む傾向がみられる。 ・ 最低賃金の地域差は、高卒初任給の地域差と比べて大きい。低水準の最低賃金は、それに近い賃金体系で働く者にとって、 大都市圏で就業することのインセンティブとして作用する可能性。 ・ 引き続き、最低賃金の引上げを進めるとともに、地方創生の観点から、地域差を縮小していくことが期待される。

○最低賃金A→・物価高が継続する中、2020年度から2023年度にかけて最低賃金が引き上げられ、最低賃金の月収換算(※週40時間程度働いた と仮定した場合)は増加。 ・ 最低賃金の月収換算が、年収100万円〜200万円の単身勤労世帯の平均的な支出(試算値)を下回っている可能性がある地 域もある。⇒<図1:最低賃金で働いた場合の月収換算想定額(2023年度)> 参照。

○人手不足と賃金→・サービス・販売・保安分野(いずれも、エッセンシャル・ワーカーと呼ばれる分野)は、人手不足で賃金が低い。省力化投資等に よる生産性向上が重要。・人員に余裕がある事務・軽作業等の求職者(※)・従業員に対し、リスキリング等の支援を行うなど、労働需給のミスマッチ解消 に向けた取組が期待される。(※)事務の求職者の約7割が女性、軽作業の求職者の約8割が40歳以上、といった特徴がある。 ・地域ごとに労働需給の状況は異なるため、地域の実情に応じた取組も期待される。

○看護・介護・保育士・幼稚園教員の賃金→・看護師の賃金は、水準は相対的に高い一方で、伸びは限定的。 介護職員、保育士及び幼稚園教員は、伸びは相対的に高い一方で、水準は総じて低い。

○政府による賃上げ・処遇改善の取組状況
<看護職員等>
→・2024年度診療報酬改定において看護職員、病院薬剤師その他の医療関係職種のベースアップを実施して いくための特例的な対応として+0.61%の改定。 また、40歳未満の勤務医師・勤務歯科医師・薬局の勤務薬剤師、事務職員、歯科技工所等で従事する の賃上げに資する対応(改定率+0.28%程度を活用した初再診料、入院基本料等の引上げ)。
<介護職員>→・2024年度介護報酬改定において介護現場で働く方々の処遇改善を着実に行うものとして、+1.59%の改定。さらに、既存の3種類の加算を「介護職員等処遇改善加算」に一本化するとともに加算率を引き上 げ。 ⇒ 足元の人材確保の課題に対応する観点から、2024年度報酬改定において講じた医療・介護分野の職員 の処遇を改善するための措置(2024年度+2.5%、2025年度+2.0%のベア)を確実に届け、賃上げを 実現するとともに、生産性向上・職場環境改善等による更なる賃上げ等を支援する。
<保育【こども家庭庁】>→・2024年度の保育士等の人件費(公定価格)について、2024年人事院勧告に準拠し、+10.7%引き上げ。 ・ 事業者や地方公共団体の手続・事務負担の軽減を図るため、処遇改善等加算T〜Vの一本化等を検討。
<建設業【国土交通省】>→ ・ 2024年3月から適用の公共工事設計労務単価を+5.9%引き上げ。 ・2024年6月に建設業法等を改正・公布。国に労務費の基準の作成・勧告権限を付与(2024年9月施行)。 労働者の処遇確保を建設業者に努力義務化予定。 ・ 建設キャリアアップシステム(技能者の資格や就業履歴等を業界横断的に登録・蓄積し、技能・経験に 応じた適切な処遇につなげる仕組み)の利用拡大。 ・ 今般の経済対策を踏まえ、重層下請構造の適正化に向けた実態調査、適正な見積りの普及、建設Gメン を活用した事業者間の取引に係る調査・改善指導を強化する予定。

次回も続き「資料5 労働供給制約経済と賃金 〜賃金上昇圧力を持続的賃金上昇に結実させるために〜 (冨山和彦氏提出資料)」からです。

令和6年第13回経済財政諮問会議 [2025年01月02日(Thu)]
令和6年第13回経済財政諮問会議(令和6年11月1日)
議事 (1) 新内閣・諮問会議における重点課題 (2) マクロ経済運営(金融政策、物価等に関する集中審議)
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2024/1101/agenda.html
◎資料1 足下の経済状況と今後の課題(内閣府)
1.GDPと物価→・2024年4-6月期は2期ぶりのプラス成長。先行きについても、賃上げを始めとする所得の増加、堅調な設備投資を背景に、緩やかな成長が見込まれ、マクロでみた需給の改善が進むことが期待される。 ・消費者物価は、輸入物価の上昇が緩やかになる中で、2025年度には前年比2%程度の上昇となる見通し。

2.家計部門(消費)→・個人消費は、このところ持ち直しの動きがみられる一方で、依然として、力強い回復には至っていない。 ・ 先行きについては、雇用・所得環境が改善する下で、持ち直していくことが期待される。 ・低所得者を中心として、消費者マインドの改善に足踏みが残ることに留意。収入に対して生活必需品への支出シェアが高く、 物価上昇の影響を大きく受ける低所得者へのきめ細かい配慮が求められる。
3.企業部門@→・設備投資は、名目では過去最高を更新しているが、物価上昇の影響もあり、実質ベースの伸びは緩やか。 ・直近10年間のストックの伸びをみると、無形資産の伸び率は鈍化。 ・ 中小企業では、人手不足感が顕著となっており、特に、省力化投資の取組が期待される。
3.企業部門A→・20年間でみると、経常利益が増加する中、配当及び内部留保は、それを上回るペースで大きく増加。一方、設備投資 及び人件費は、概ね横ばい。労働分配率は、緩やかに低下する傾向。 ・ 経常利益の増加が、賃上げや設備投資の増加にも繋がるよう、経営マインドの更なる変革が期待される。
4.賃金の動向と課題@(実質賃金)→・1990年代以降、消費者物価上昇率が落ち込んでいる時期を除いて、それを上回るベースアップは実現していなかったが、 今年の春季労使交渉では、33年ぶりの高い賃上げとなる中、物価上昇率を上回るベースアップも実現する見込み。・ 足下(2024年8月)で、実質賃金は前年比でマイナスとなったが、今後、高水準の賃上げが浸透していく中で、プラスに転ずる ことが期待される。 ・ 我が国の実質賃金の伸びは、長年にわたり、労働生産性の上昇よりも低い水準で推移してきている。労働生産性の上昇に応じ、物価上昇率を上回る賃上げを継続することが期待される。
4.賃金の動向と課題A(最低賃金)→・本年の最低賃金の全国加重平均は過去最大の引上げとなり、地域差も縮小。 ・ 他方、我が国の最低賃金は、諸外国と比較すると、フルタイム労働者の賃金中央値に比べて低水準。また、若い世代では、 最低賃金水準が高い地域への流入が進む傾向がみられる。・引き続き、最低賃金の引上げを進めるとともに、地方創生の観点から、地域差を縮小していくことが期待される。
4.賃金の動向と課題B(賃上げの環境整備)→・賃上げを行う中小企業は増えているが、その約6割以上は防衛的賃上げ(業績の改善がみられない中での賃上げ)。 ・ 価格転嫁については、発注企業からの交渉申し入れも浸透しつつある。その流れを継続・拡大させ、サプライチェー ン全体で適切な価格転嫁を定着させることによって、中小企業の賃上げ環境を整備していくこと求められる。
5.潜在成長力→・我が国の潜在成長率は0.6%程度と、他のG7諸国に比べて低い。 ・ 我が国の潜在成長率の先行きは、労働力人口の減少に伴い労働投入のマイナス寄与が見込まれている。潜在成長率を 高めていくためには、生産性を向上させることが必要。 ・ 我が国の労働生産性は、国際的にみて低い水準。資本の老朽化も進んでいる。人への投資、設備の更新、業務オペ レーションの改善などにより、労働と資本の効率性を高めていくことも期待される。
6.地方経済→・地域ごとの特色を活かし、地域産業の高付加価値化を進めることによって、労働生産性を高め、我が国全体の成長力の底上げにつなげていくことが期待される。
・2050年までの人口推計をみると、都市部では高齢者人口が増加する一方、地方部では生産年齢人口・高齢者人口ともに 減少する見通し。それぞれが直面する課題に応じた取組を計画的に進めていくことが求められる。
7.金融資本市場→・金融資本市場は、8月上旬に世界の株式市場における株価が変動する中、日本の株価も大きく変動。引き続き、 株式・為替市場の動向やそれらが実体経済に与える影響を注視していく必要。 ・「賃上げと投資が牽引する成長型経済」の実現に向け重要となる経済・金融環境の安定に向け、市場との丁寧な 対話が期待される。


◎資料2 「日本創生」に向けた新政権の課題(有識者議員提出資料)
2024年11月1日 十倉雅和 中空麻奈 新浪剛史 柳川範之
石破総理は、岸田前政権の経済財政政策を踏襲し、「経済あっての財政」との考え方の下、デフレ脱却最優先の経済・財政運営を行い、「賃上げと投資が牽引する成長型経済」を実現するとともに、イノベーション、スタートアップ支援の強化と生産性向上を通じて、コストカット型経済から 高付加価値創出型経済へ移行する方針を示された。


政策運営の基本方針と重要政策への取組 ↓
この移行に向けて、国民の安心・安全の確保を基盤としつつ、資料5で提言する適切なマクロ経済財政運営、地域資源を中心とした新たな価値の創造、物価上昇を上回る賃金向上、投資立国実現による付加価値生産性の向上を一体的に推進する必要がある。
以下の重要政策に取り組むことで、健康で文化的な生活を営める水準を全国で確実に実現し、 国民の暮らしを守りながら、経済成長を実現していくべき。
(地方創生)→地方創生なくして成長型経済・高付加価値創出型経済の実現はあり得ない。これまでの成果と 反省を活かし、地方創生の取組を再活性化すべき。諮問会議では、持続可能な地方経済の構築 の観点から議論すべき。 ⇒・本年中に取りまとめる「基本的考え方」に基づく全国各地の独自の取組を一層強力に支援するため、国は、地方創生交付金を梃子とすることに加え、特区制度、企業版ふるさと納税、企 業の地方移転、二地域居住の促進等をトータルパッケージで取り組むことが重要。これによ り地方に“しごと”を創出し、若者・女性に選ばれる地方の創出につなげるべき。 ・ 特に、デジタル技術を最大活用し、自治体情報システムの標準化や共通化を徹底しつつ、 地域資源のアナログ価値をデジタル化・マネタイズする「地方創生×デジタル」の好事例を 発掘し、国・地方で一体となって横展開に取り組むべき。また、地方文化都市の創出、海外 活力の取り込み(投資誘致の促進、インバウンド活性化、コンテンツツーリズム)など地域の 特色を踏まえた取組を講じることで地方の魅力を引き出し、付加価値を生むべき。・各地域の多様なステークホルダーの参画による地方の自主的・主体的取組を促すため、広域連携の推進や土地利用規制の見直しなど、地方自ら提案・実現していける環境を整える べき。
(賃金向上、人手不足対応)→我が国の生産年齢人口は、2040年までの20年間で約2割減少。2030年代に減少が加速し、地方で減少が著しい見込み。安定的な物価上昇とそれを上回る賃金の上昇、人手不足解消に向け、 人への投資、成長分野への人の移動、働きたい人が働けるための環境整備等が必要。⇒・リ・スキリングなど就職氷河期世代も対象とした人への投資強化、女性活躍にもつながる年収の壁等の制度改革、高齢者や外国人等多様な人材の更なる活躍拡大に取り組むとともに、 適切な価格転嫁と生産性向上支援等により、賃上げ・最低賃金引上げの定着に向けた環境 整備を図るべき。諮問会議として、賃金向上に向けて、マクロ経済の観点から集中的に議論 すべき。 ・ NISAの活用等、貯蓄から投資への流れを進め、「資産運用立国」に向け取組を加速させる。 特に、年金制度改革の議論に合わせて、iDeCo(個人型確定拠出年金)の見直しについて 結論を得るべき。
(投資立国・安定的エネルギー供給)→成長型経済の実現に向け、「資産運用立国」の政策を引き継ぐとともに、投資立国の実現、持続 可能なエネルギー政策の確立、イノベーションとスタートアップ支援の強化に取り組むべき。⇒ ・科学技術・イノベーション、GX、DX、AI・半導体、バイオ等、産業に思い切った投資が行わ れる「投資立国」に向けた官民連携の取組を加速していくべき。 ・安全性の確保を大前提に、エネルギーの安定的な供給、経済効率性、環境性のバランス (S+3E)を確保した、最適なエネルギーミックスの実現。・イノベーション創出や生産性向上の牽引役になりうるスタートアップが絶え間なく生み出され、 多数のユニコーン企業を創出する仕組みを構築するべき。
(ハード・ソフト両面での防災・減災)→近年災害が頻発化・激甚化し、国民生活や経済活動の大きなリスクとなっている。防災・減災に 向けて、災害リスクの低い地域に都市・居住機能を集中するコンパクトシティは、平常時にこそ形 成すべき。インフラ整備、備蓄体制整備、避難所環境の整備、ボランティア育成・連携、防災DX などハード・ソフト両面で防災機能の抜本的な拡充を図り、災害に強いレジリエントな国土の形成 とその推進体制の整備を行うべき。

政策運営の基盤としてのEBPM→ 石破内閣における経済財政諮問会議の使命は、関係する会議と連携しながら、経済財政運営 全般の「司令塔」の役割を果たすことである。国全体の成長に加え、Well-beingを重視し、全国 津々浦々まで一人一人が豊かで幸せな社会の構築を目指すべきである。そうした社会の実現に 向けて、データに基づき財政支出を見直し、ワイズ・スペンディングを徹底すべき。⇒・これまでの成長戦略の検証を踏まえた具体化を行っていくべき。 ・ 地方創生10年のレビューを踏まえた政策運営を行っていくべき。 ・ 持続可能な全世代型社会保障の構築に向けて、全世代型社会保障の改革工程の着実な実 現と社会保障の給付と負担の見通しについて関係府省が連携して示すべき。


◎資料3 植田議員提出資料   令和6年11月1日
○展望レポートの見通し(経済動向@➁)
→「政策委員見通しの中央値」「企業収益」「設備投資」「賃金」「個人消費」 参照。
○展望レポートの見通し(物価動向)→「政策委員見通しの中央値」「消費者物価の推移」参照。
○消費者物価の推移<展望レポート(2024/10月)からの抜粋>→・金融政策運営については、先行きの経済・物価・金融情勢次第であるが、現在の実質金利がきわめて低い水準にあることを踏まえると、 以上のような経済・物価の見通しが実現していくとすれば、それに応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになると考えている。 ・そのうえで、米国をはじめとする海外経済の今後の展開や金融資本 市場の動向を十分注視し、わが国の経済・物価の見通しやリスク、 見通しが実現する確度に及ぼす影響を見極めていく必要がある。 ・日本銀行は、2%の「物価安定の目標」のもとで、その持続的・安定的な実現という観点から、経済・物価・金融情勢に応じて適切に 金融政策を運営していく。


◎資料4 経済の先行きと必要な政策対応(内閣府)
○経済の見通し試算(内閣府年央試算アップデート)

・試算の主な前提→試算結果へ。↓
⇒マクロ経済の⾒通し 〜経済回復と物価安定の両⽴〜
⇒経済成⻑の内訳 〜⺠需が主導する経済成⻑へ〜

○経済の先行きを踏まえた政策対応→試算結果と政策インプリケーション@➁↓
1.⽇本経済は、⺠需主導の回復過程をたどると⾒られる⼀⽅、マクロ的には、需要不⾜から供給制約の局⾯に⼊る(図 1)。⼈⼿不⾜対策を始め、経済の供給⼒向上が今後の成⻑のカギであり、それは、更なる賃上げの原資となる。地⽅の 中堅・中⼩企業を含め、供給⼒と⽣産性向上に向けた戦略的な国内投資の促進が必要。
2.為替や原油価格等に⼤きな変動がなければ、物価上昇率は徐々に落ち着いてくる⾒込み(図2)。実質賃⾦の上昇に は、賃上げと物価安定の両⽅が不可⽋であり、政府として、最低賃⾦の引上げを含めた賃上げ環境の整備、リ・スキリング ⽀援など⼈への投資や労働市場改⾰を進め、実質賃⾦のプラスを定着させることが重要。これにより、個⼈消費は徐々に回 復⼒を増してくると⾒込まれる。
3.ただし、これまでの物価⾼によって、特に所得の低い⽅々は厳しい⽣活を余儀なくされており(図3)、そうした⽅々への当 ⾯の⽣活⽀援を迅速に⾏うとともに地域の実情に応じたきめ細かな物価対策が必要。⺠需の当⾯の下⽀えにもなる。
4.新たな総合経済対策は、総理指⽰の3つの柱(下記)に沿って必要な施策を積み上げるとともに、マクロ経済の視点か ら、「賃上げと投資が牽引する成⻑型経済」、「個⼈消費の回復」、「物価上昇を上回る賃⾦上昇の定着」に道筋をつける 経済対策を⽬指す。
5.その際、財政⽀出において、 財政の崖をつくらないよう⼀定の規模は確保しつつ、⺠需の回復と物価安定を⽀え、持続的 な成⻑の基盤をつくる財政⽀出とする。併せて、財政状況の改善をこれまで同様に進め、危機に強靱な経済・財政をつくる。



◎資料5 当面のマクロ経済財政運営と経済対策の方向性(有識者議員提出資料)
2024年11月1日  十倉雅和 中空麻奈 新浪剛史 柳川範之
これまでの経済再生に向けた取組によって、日本経済は、企業収益や国内投資は過去最高を記録し、33年ぶりの賃上げを実現するなど、コストカット型経済から高付加価値創出型経済に移 行する大きなチャンスを迎えている。このチャンスを活かし、内閣府の経済見通しで示された経済の姿を実現するため、以下のとおり取り組むべき。 ↓
1.マクロ経済財政運営の基本的な考え方
→ ・日本経済は緩やかに回復しており、マクロの総需要は名目値では伸びているものの、実質 GDP は昨年から概ね横ばい。特に、原油高・円安など海外発のコストプッシュインフレによる 実質所得の下押しの中で、個人消費は実質ベースで昨年を下回る水準にあるなど、力強さを欠いている。こうした中で、実体経済の回復の足取りをより力強いものにしていくことが必要。 ・ 今後、コストプッシュによる食料・エネルギーの物価上昇圧力は減衰すると見込まれており、 デフレに後戻りしないよう経済の回復を図り、2%の物価安定目標を持続的・安定的に実現 することが重要。デフレ経済から完全に脱却し、「賃金と物価の好循環」を定着させる上で、 今、極めて重要な時期を迎えている。 ・今後、成長型経済への移行が進む中で、マクロ的には需要不足から供給制約の局面へと 変化していくと考えられる。こうした中で、当面の物価高対策だけでなく、人手不足対策をはじめとする経済の供給力向上によって、中長期的な生産性向上・成長力強化が重要。 ・ 以上の観点から経済効果を有する必要かつ十分な経済対策を講じることで、個人消費に力強さを取り戻し、賃上げと投資がけん引する成長型経済を実現することが重要。その際、以下のように経済対策をメリハリの効いたものとすべき。↓
−物価高に対して、厳しい状況にある方々への重点的な支援
−民間投資を引き出し、生産性向上効果の高い分野への重点的な投資促進
−能登の災害を踏まえた復旧・復興、防災力の強化等、真に必要な対策への重点化

2.経済再生と財政健全化の両立→・ 経済対策の策定・実行にあたってはワイズスペンディングを徹底し、盛り込むべき施策を吟味し、政策効果を高めるよう工夫することが重要。更に、経済対策について、早期執行や進 捗管理の徹底などにより、政策効果がしっかりと発現されるようフォローアップ体制を構築すべき。 ・「経済あっての財政」との考え方に立って、高付加価値創出型経済へと移行しつつ、財政状況の改善を進め、財政の信認を確保することが重要。このため、現下の経済動向に合わせた必要かつ十分な経済対策を講じる一方で、来年度予算は、骨太方針 2024 に基づく歳出効率化を継続し、防衛財源など多年度の財政フレームを着実に実行に移すなど、財政健全化の流れを止めず、持続可能な財政構造を確保すべき。


◎資料6 供給力の強化及び AI・半導体支援について(武藤議員提出資料)
○日本の潜在成長率は他国に比べて劣後。資本の寄与の差も大。 国内投資により潜在成長率を高める供給力の強化が重要。
→「潜在成長率の各項目寄与度の比較」「 資本ストックの推移」 参照。

○AI・半導体関連支援策の方針→・AI・半導体への投資は、他のあらゆる産業の発展やGX等の社会課題解決に不可欠であり、地域の中小企業も含め幅広く波及。 ・このため、生成AI・半導体支援に対し、必要な財源を確保しながら、複数年度に渡り大規模かつ戦略的に支援を行う。 ・これを通じ、2030年15兆円の売上高目標を上回るよう、官民合計約50兆円の関連設備投資を誘発し、また、半 導体生産等に伴う約160兆円の経済波及効果を実現していく。 ・加えて、AI・半導体の国内供給力強化を通じた産業全般の競争力強化を図る。 政府の支援により動き出している。
「大規模な国内投資案件」「国内の半導体関連売上の推移と目標(半導体関係)」 参照。

○(参考資料)AI・半導体支援の必要性@→・生成AIは、人手不足やGX等の社会課題解決や革新的な製品・サービス創出に寄与する。 ・各国が政策支援に注力する中、我が国はデジタル投資で劣後。デジタル赤字も拡大。 ・ 生成AIの競争力は、「AIの機能」に加え、電力需要の抑制に必要な「消費電力の低さ」。 ・ これを最適化するハード(半導体・DC)と、ソフト(生成AI)が、相互円滑に機能するエコシステムを国内に 構築することが、産業の国際競争力強化に不可欠。
出所:McKinsey&Company「生成AIがもたらす潜在的な経済効果」(2023年6月)※1ドル=145円で計算 「生成AIによる労働生産性向上に基づく経済効果 885兆円〜1,146兆円」「【AI・半導体エコシステム】」 参照。

○(参考資料)AI・半導体支援の必要性➁→半導体の世界需要は10年で3倍に増大。地域経済への波及効果も極めて大きく、賃上げが期待される。 ・ 半導体は、産業活動・国民生活に不可欠な重要物資。しかし、我が国は、その供給を台湾等に大きく依存しており、供給が途絶した場合のGDP損失は甚大。 ・世界各国は大規模な産業政策を展開中。
「九州地域の設備投資増減率(%)」「経済波及効果(九州フィナンシャルグループによる試算)」「ロジックI.C.のノード別生産能力比率 (200nmウエハ換算)」 参照。

○(参考資料)TSMCの誘致に伴って中小企業が投資した実例 合計38件472億円超 (金額は公表企業分等の合計額)→九州全県に該当(5県)。

次回は新たに「第19回社会保障審議会年金部会」からです。

令和6年第12回経済財政諮問会議 [2024年10月26日(Sat)]
令和6年第12回経済財政諮問会議(令和6年9月3日)
議事 ・マクロ経済運営(金融政策、物価等に関する集中審議)
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2024/0903/agenda.html
◎資料1 植田議員提出資料  令和6年9月3日
○2024年7月金融政策決定会合での決定内容

(1)金融市場調節方針の変更→見通しに概ね沿って推移、物価が上振れするリスクには注意。⇒実質金利の大幅なマイナスが経済活動をしっかりとサポート→見通しが実現していくとすれば、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整。
(2)長期国債買入れの減額計画(2026年3月まで)→月間の買入れ予定額、 日本銀行の保有国債残高 参照。
○金融市場、預金・貸出金利
○(参考)展望レポート(2024年7月)の見通し
・政策委員見通しの中央値
・ 消費者物価の推移


◎資料2 マクロ経済参考資料(内閣府)   2024年9月3日 内閣府
1.GDPと物価の動向

○2024年4-6月期は2期ぶりのプラス成長。先行きについても、賃上げを始めとする所得の増加や、堅調な設備投資 を背景に、緩やかな成長が見込まれ、マクロ的な需給の改善が進むことが期待される。
○ 消費者物価は、足下で円安が是正され、輸入物価の伸びが今後落ち着くことが見込まれる中で、2%程度の伸びが継 続する見通し。
(参考)物価関連指標の動向(デフレ関連)→図1〜図4 参照。

2.賃上げの状況@➁
○今年の春季労使交渉では33年ぶりの高い賃上げ、夏季のボーナスも2018年に次ぐ史上2番目の高水準。
○実質賃金は27カ月ぶり、実質雇用者報酬も11四半期ぶりにプラスと明るい兆し。物価上昇を上回る賃金上昇が実現・ 定着する中で、個人消費が回復していくことが期待される。
○最低賃金の全国加重平均は過去最大の引上げ。B・Cランクの県では50円を上回る引上げとなり、地域差も縮小。
○医療・福祉分野では、賃上げのための加算措置が講じられた診療報酬改定が6月から開始。人事院勧告は、32年ぶりのベースアップの水準。今後、公的分野においても、賃上げが普及することが期待される。

3.家計部門の動向
○個人消費は、このところ持ち直しの動きがみられる。マクロの家計消費は、実質ではコロナ禍前の水準には戻っていないが、名目の金額でみれば過去最大。
○先行きについては、雇用・所得環境が改善する下で、持ち直していくことが期待される。ただし、低所得者中心に消費者マインドの改善に足踏みが残ることに留意。物価上昇の影響を大きく受ける年金受給者や低所得者等へのきめ細かい配慮が求められる。

4.企業部門の動向@➁
○企業収益・設備投資は、過去最高を更新するなど、企業部門は好調。
○設備投資計画も堅調。特に、中小企業は人手不足感が顕著であり、省力化投資の取組が期待される。
○企業の内部留保(利益剰余金)は、過去最高の水準。こうした資金が、賃上げや設備投資の原資として活用されるよ う、経営マインドの更なる変革が期待される。
○賃上げの環境整備としての価格転嫁については、発注企業からの交渉申し入れも浸透し始めており、こうした流れを 継続・拡大していくことが必要。

5.潜在成長力の強化
○足下の日本の潜在成長率は0.6%程度。他のG7諸国に比べて低い。
○実質1%を安定的に上回る成長率を確保し、更に高い成長率の実現を目指すためには、人への投資、科学技術・イノベーション等の重点分野における投資を拡大していくことが必要。

6.金融資本市場の動向
○金融資本市場は、8月に入ってから世界の株式市場が変動する中、日本の株価は大きく変動。株式・為替市場の動 向やそれらが実体経済に与える影響を注視していく必要。
○市場関係者には、様々な見方が存在。「新たな経済ステージ」への移行にとって重要となる経済・金融環境の安定 に向け、市場との丁寧な対話が期待される。
○図3:民間エコノミストの見方 参照。


◎資料3 主要な経済指標の推移(内閣府)
・1〜9までの経済指標の推移
→「岸田内閣発足時(2021年10月)」と「2024年 現在(直近)」までの推移。 備考欄はその評価コメント。

◎資料4 岸田内閣のマクロ経済運営の成果と今後の課題(有識者議員提出資料)
2024年9月3日    十倉 雅和・中空 麻奈・新浪 剛史・柳川 範之
1.当面のマクロ経済運営: 賃上げの定着による消費回復・好循環拡大

○これまでのマクロ経済運営によって、我が国経済は、「新たなステージ」への移行が進みつつある。賃上げは33年ぶりの高水準となるなど、賃金と物価の好循環が回り始めている。この前向きな動きを後戻りさせてはならない。8月上旬には株価や為替等が短期的に大きく変動したが、 日々の市場動向に一喜一憂せず、「骨太方針2024」で示された方針に基づき、「新たなステージ」 への移行に向け、揺るぎないマクロ経済運営を行う必要がある。
○力強さを欠く消費の回復に向け、プラスの実質賃金の定着が重要。足下では実質賃金の27か月ぶりのプラス、過去最高の引上げとなり地域差も縮小した最低賃金等、明るい動きが見られる。 価格転嫁対策、医療・介護、建設・物流等の業種別の賃上げ施策のフォローアップなど、「賃上げの定着」に向けた取組を更に強化すべき。併せて、物価高支援を時限的措置として講じつつ、 家計の所得を引上げ、消費を力強く回復させ、回り始めた経済の好循環を大きく拡大すべき。
○今後とも、「経済あっての財政」という基本的考え方の下、政府・日銀が連携し、市場と丁寧に対話しながら、安定的なマクロ経済運営に万全を期すべき。経済状況に応じた機動的なマクロ経済運営が重要であり、今後の政策対応に当たっては、下記の成長力強化に軸足をおき、人口減少下で成長を実現するための具体策を検討し、予算・税制・財政投融資・規制改革等を合わせ て総合的に取り組むことが求められる。

2. 2030年度を見据えた経済構造の変革: 成長力強化と持続可能性の確保
○生産年齢人口の減少が本格化する2030年度までが、経済構造の変革のラストチャンスである。 各経済主体において「日本が成長型経済に移行しつつある」ことを共通理解とし、以下の取組を進め、賃上げや投資拡大等の前向きな行動を全国的なムーブメントとすることで、2030年代以降も実質成長率1%以上を実現し、経済・財政・社会保障の持続可能性を確保すべき。
○賃上げが定着しつつある今こそ、構造的な賃上げが実現する労働市場の構築に向け、攻めの労働政策として、全世代型リスキリングやジョブ型人事の導入等を推進し、「生産性が高い仕事は高い賃金で報われ、高い賃金が実現するキャリアアップや労働移動が行われる」活力ある労働市場とすべき。また、同一労働同一賃金の徹底、男女間賃金格差の是正等が重要。
○同時に、老朽化が進む我が国の「資本」の刷新も重要。攻めの投資促進策として、GX・DXなどの分野における新技術の社会実装、宇宙・海洋を始め新たなフロンティアの開拓など、官民を挙げて、社会課題の解決に向けた積極果敢な国内投資を推進することが重要。
○「成長と分配の好循環」の実現を目指すには可処分所得の増加が重要であり、国民の将来の安心の確保を通じた消費の拡大につなげるためにも、年収の壁対策、被用者保険の適用拡大を含め全世代型社会保障構築に向けた取組を進めるべき。
○財政の持続可能性の確保に向けては、2025年度PB黒字化を目指すとともに、その取組の進捗・成果を後戻りさせることなく、債務残高対GDP比の安定的な引下げを目指し、経済再生と財政健全化の両立を更に前進させるべき。その際、歳出構造を平時に戻しつつ、政策立案段階からのEBPMにより、政策効果の発現に向けたプロセス管理を徹底することが重要。

◆令和6年会議情報一覧↓
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2024/index.html#tab0903

次回は新たに「労働基準関係法制研究会 第12回資料」からです。

| 次へ