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第180回市町村セミナー 資料 [2025年08月20日(Wed)]
第180回市町村セミナー 資料(令和7年6月13日)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_58702.html
ひきこもりの経験から いま、考えること  岡本圭太   ひきこもり体験者  社会福祉士、精神保健福祉士
○自己紹介
→ • 神奈川県横浜市出身 • 「父(S21)、母(S24)、自分(S49)」の3人家族 • 不登校経験はなし • 大学での就活失敗を機に社会からひきこもる • 25歳でひきこもり生活終了。 • 30歳で就職。週3日の仕事をふたつ経験。 • 32歳から若者支援の施設で相談員(15年弱) • 本業のかたわら、講演活動など

@ ひきこもり体験談(前編)〜就職失敗から、社会と関わるまで〜↓
○挫折のきっかけ
→ • 直接的には、就職活動の失敗 • 面接で全滅 • 恥ずかしい/自信喪失 • 就職がこわい • 将来への不安と恐怖
○当時の生活→・昼夜逆転 ・睡眠時間が長い ・ひたすら考えごと ・テレビゲーム(ex.ドラクエ、F1等) ・外出は可能。しかし会話はなし。 ・深夜のコンビニ、ブックオフ、TSUTAYA ・友人/親戚づきあい無し ・人間の友達はゼロ(音楽だけが友達)
○当時の気持ち→ • 不甲斐ない。恥ずかしい。 • 誰にも会えない。会いたくない。 • 親への申し訳なさ(罪悪感) • 人が怖い • 「せめてアルバイトぐらいしなければ」と 思ってアルバイト雑誌を買うが、怖くて中を読むこともできない。 • 昼も夜も考えに考える →どうしてこうなってしまったのだろう? →これからどうなるのだろう?
• 悪夢にうなされる。 • 旧友からの電話が怖い(電話は全部無視) • 自分の状態を説明できない。 • 自分を定義する言葉がない。 • 自分には生きている価値がない。 • どこに相談すればよいかわからない。 • 相談したくてもお金がない。 • 時間の経過とともに絶望感だけが強まる。 • 死について考える。 • 諦める……。
○親との関係→将来のことを問い詰められるのが 怖くて、親との接触を極力避けた。「これからどうするんだ?」 「親はいつまでも生きていないぞ」 いまの状態がまずいことはわかる。 でもどうしたらよいかわからない。

≺嫌だったこと 嬉しかったこと ≻
○嫌だったこと
→【親】・「これからどうするんだ?」 ・「親はいつまでも生きていないぞ」 ・「さりげなく」求人誌が置いてある ・ 親戚やいとこの比較。【大学、サークルの友人、親戚】・「いま何してるの?」 ・「どうして働かないの?」 【その他】 ・(床屋さんなどで) 「今日はお休みですか?」
○嬉しかったこと→【親】 ・甘えや怠けではないと 理解してくれた(心理面の支援) ・活動費や交通費の援助(経済面の支援) 【支援者】 ・評価や否定をしない ・ありのままの自分を認めてくれる 【デイケア、当事者グループ等】 ・同じ経験をした人ばかり=根掘り葉掘り訊かれない ・「どうして働かないの?」と訊かれない安心感。
○思い出すこと→ • 働くのが怖い/アルバイトすら怖い • 求人誌を開けない • 100均ショップでも怖い • 学生相談室なんて知らなかった・・・
○ひきこもりの人の思い→・気にすること(一部)⇒ • 履歴書の空白 • 「いま何をなさってるんですか?」が恐怖 • 「順調」に進んだ同世代との比較 • 「人並みの経験をしていない」劣等感

≺ひきこもりから 抜けたきっかけ(1999年) ≻
○@諦めた
・ひとりで解決するのはもう無理…… ・誰かに相談しよう A「ひきこもり」を知った ・「何かヒントが見つかるかも……」
○「ひきこもり」を知ってこう思った。→「これって自分のことかも……」 「自分みたいな人がたくさんいるらしい……」 「そういう人たちと話せば何かヒントが見つかるかも……」
○悩んだ末、僕は助けを求めた。(1999年7月29日:25歳まであと1ヶ月)→僕は「ひきこもり」なんでしょうか……? 症状としては軽いと思うけど、典型的に ひきこもりっぽいことが書いてありますね。 (とてもホッとした) 自分の立っている位置がわかれば、どちらに向かって歩いていけばよいかはおのずとわかる。医者から「ひきこもり」と言われた ことで半分解決。

A ひきこもり体験談(後編)〜社会参加、そして働くまでの道のり〜↓
○25〜29歳
→ @ 精神科受診 A カウンセリング B デイケア参加 ひきこもりの当事者グループ(参加・運営) ひきこもり勉強会(参加・運営) ぼくとDr.の基本スタンスは…… 「いきなり働くのは無理」 「就労<人間関係を作りなおす」
○職歴:その仕事に就いた理由/仕事内容→ @ 神奈川県の公共施設(30歳〜・週3日) →知人の紹介 A NPO団体スタッフ(31歳〜・週3日) →お誘い B 若者向け就労支援施設(32歳〜・週5日) →お誘い・なりゆき
○就職 =「ゴール」?→ ・そうだったらいいんだけどね ・働き始めてからの苦労 ・年齢相応の経験の無さ ・途中、何度か転覆しかける
○Attention →「外に出られるようになったから」 あるいは 「働けるようになったから」 「=ゴール」ではない。 (悩みはその後も続いていきます) (ひきこもりから出たあとの支援があれば)
○就職 = なぜ続けられた?→ ・お金がもらえる ・肩書きや立場が得られる ・できることがだんだん増える/上手くなる喜び ・「ここで辞めたらあとがない」という思いも

Bひきこもりの経験から いま、考えること
○働き始めて感じたこと &考えたこと
• ひきこもり時給2000円 • 世の中みんな不完全、 完璧である必要はない • 「初めての給料」で決めたこと • 最初の社会参加は「就労」ではなく 「消費」
・ひきこもっていた人には、義務感ではなく、 自分の楽しみのために働いてほしい。
○どんなふうに関われば?→@公的な 支援機関へ • 特別なことは必要ない。 • プラスはなくてもいい。 脅かされない、侵襲的にならない。 • メールでの申し込みを可能に • 可能ならば、相談員のプロフィール や、人となりがわかるものを。 • 自分は花を見ないつもりで支援する(耕す、種をまく)。 Aご家族へ • 「これからどうするんだ?」「親は いつまでも生きていないぞ」は×。 • 「自立/働く」よりも、まず居間で 会話ができることを目指そう。 • あいさつ、天気、ニュース、時事問題、ゲーム、スポーツの話題 • 情報は集めておく。でも焦って本人 に押し付けない。
○こんな 「支援」は イヤだ→ •「ひきこもっていてはダメだ」と言う(恫喝・現状の否認) • ひきこもり生活をやめさせようとする • 支援者の考えを押し付ける (Support, Not Controlの逆) • 「可哀想な人」という目線 • 支援して「あげる」(支援臭)
○これまで何に助けられた?→・「ひきこもり100万人」 • 信頼できる支援者 • 家族の理解 • 同じ経験をした仲間たち • 音楽
○「 8050/9060問題」について思うこと→ • 本人の自立だけでなく、親の高齢化や介護、障害や疾患、親亡き後の生活など、複数の分野にまたがる複合的な福祉課題。特定の部署や施設だけで対応することには限界がある。 • 支援者が孤立しない。他の部署や機関とつながる。使える資源をもう一度洗い直す。たくさんの知恵とアイディアを集める。
・私たちは「挫折の経験」を一生引きずっていくのでしょうか? 挫折の経験は人生の「しみ」 のようなもの。薄くなること はあっても、なくなることは ない。 その「しみ」は、大きさも色も、濃さも形も、その落ちにくさも人ぞれぞれ。 長い人生。真っ白ではなくいろいろな色があっても良いの かも。
○野望とか希望 とか→ • 若い人たちには、「そうか、 ああいう人生もアリなんだ な」と思ってもらいたい • 子どもたちが「大人ってなんか楽しそうだな」「自分も早く大人になりたいな……」と 思える社会 • そのためには、まずわれわれ オトナが人生を楽しむこと。 背中を見せられるように。
○最後に宣伝させてください↓
・岡本圭太 『ひきこもり時給2000円』→20代でひきこもった時期の実体験、 当時の生活や心情、親との関係、社 会参加から働くまで、その後の経緯 や社会についての考察などを綴った 当事者エッセイ集。 2023年12月彩流社より発売中 (税込2,530円) 全国の書店およびAmazon等のネット書店 にて購入できます。


◎≺自治体の取組≻ひきこもり支援における本人及び家族との対話交流と支援体制づくりについて  
三重県明和町における本人との対話を通じた支援  社会福祉法人 明和町社会福祉協議会 地域福祉係 山田 奏
○三重県明和町のご紹介
→松阪牛で有名な松阪市と伊勢神宮のある伊勢市に挟まれた人口2万2千人余りのこぢんまりとした町。 令和5年度ひきこもりサポート事業受託 令和7年度ひきこもりステーション事業受託
○初めて出会った当事者の方に教えてもらったこと→ 困窮相談に訪れたお母さん。息子が働いてくれれば何とかなるんだけど…。 今度連れてきます、と毎回お母さんは言ってくれますが、そりゃ来てくれません。 そんな折、自宅洗濯機が壊れてしまう事態が…。買い替えるお金はありません。 そこで、寄付でお預かりしていた洗濯機をお渡しする事を提案。 「私一人では倉庫からご自宅まで運ぶことができないので、息子さん手伝ってもらえたりする可能性ってありますかね?」 「どうだろう……。聞いてみます」→その日のうちにOKのお返事がお母さんより
○出会った時点でのご本人(当時18歳)の 状況(これまでの母親からの話し)→・中学1年生の夏休み明けから完全不登校。自宅から殆ど出ない ・家族はそうなった原因を全く把握していない ・中学3年生時(進学時)、「もう少しこのままでいさせて欲しい」 ・進学はせず、自宅でひきこもり生活 ・家族は部屋で何をしているのかわからない ・時折、夜中ジョギングへ長時間出ていく ・家族での会話はほぼない。働くように言うが 「もう少し待ってくれ」と言うだけ。 ・家族以外との接点は皆無。
・昼夜逆転していて昼前に寝始めるという事で、朝イチで自宅まで迎えに 行きました。 私の第一声 「あーこんにちは。初めまして。一人では運び出せなくて、ホント助かり ます。ありがとうございます」 ご本人、会釈のみ 倉庫へ向かう車中での最初の会話 「結構重いですけど力仕事は大丈夫ですか?」 「…部屋で筋トレして、夜中にジョギングしたりしてるんで…。」 (え…メチャ嬉しいな、トレーニングネタでメチャ時間もつやん)
・車中、筋トレとジョギング話し ジョギング話から派生して 「…なんか…時々ずっと走っていたくなるんです」(キーワード) そして、私からのお願い 「結構、こうやって冷蔵庫とか洗濯機の寄付をいただく事が多いんですけど 運ぶのが大変でして、そういう時はお手伝いお願いできたりします?」 「全然いいっすよ」 ここからご本人さんとの「対話」 が始まりました。
○ご本人との関係を「つないでくれる」 地域からのご寄付→ 何回かお手伝いを依頼する形で関わる中、町外から自宅整理に伴う 大量の寄付のお申し出。 早速、ご本人にお手伝いをお願いしました。 「少し遠いけど一緒に行ってもらえたりします?」 「…全然いいっすよ…。」 その車中での対話 が私を支援者として成長させてくれました。
○対話を通してご本人のSOSが少しずつ形として理解できていく→「けっこう長い時間お付き合いいただく事になりますが大丈夫ですか?」 「…むしろ、その方がありがたいっす。」 (聞きたいけど、まだ聞かない…) 「じゃあ、他のボランティアとか作業なんかも手伝っていただけたりなんてします?」 「どんなんがあるんすか?」 「変わった作業なんですけどね、もみがらを洗うって作業なんですけど」 「やってみたいっす」 「でもお家から結構遠いんですよ」 「全然いいっすよ。歩くんで」「えー、歩きだと1時間くらいかかっちゃいますよ」 「家にいたくないんで、家にいなくて済むなら全然いいっす」

≺ひきこもっていたのに家に居たくない…。 ここに込められたご本人の苦しみに触れて ≻
○ひきこもりハンドブックを読みながら 自らの支援を振り返る
→ ☆丁寧なかかわりを行うことで、少しずつ信頼関係が構築されます。 ・まずは使える洗濯機を届ける福祉のおっさんからの関わりで良かったんだ ☆本人が自分から「ひきこもり」に至った背景などを話してくれるまでには時間がかかるかもしれませんが、焦らず、一人ひとりのペースに合わせてコミュニケーションをはか るようにしましょう。 ・支援者的にひっかかるキーワードを敢えて心に留め置いて良かったんだ ☆他愛のない話題であっても、支援者のことを「安心して相談できる人(本人のひきこもり 状態のことに干渉や否定しない人)であると認識してもらうためのコミュニケーションが 必要です。 ・筋トレ・ジョギング、音楽の話し、楽しんで良かったんだ
○味を占めた私は…→如何にご本人と自然に出会えるツールを多く抱える事ができるか 如何にご本人と自然につながり続ける為のツールを多く抱える事ができるか 如何にご本人が真のニーズを表出させて下さった時、そのニーズに応えられる ツールを多く抱えておく事ができるか そんなことを考えながら日々の業務に向き合うこととなりました。
○私自身の業務範囲→コミュニティソーシャルワーカー、生活支援コーディネーター、 ボランティアコーディネーター、災害ボランティアセンター、 支援対象児童等見守り強化事業、地域未来塾、各種募金業務 赤い羽根共同募金配分事業、福祉団体支援…etc  実はこれらの業務に…。 当事者さんと自然に出会うためのお宝 当事者さんとつながるためのお宝沢山埋もれている! 当事者さんと対話し続けるためのお宝 *ここで三言だけ…。 無理を言っても頑張ってくれる同僚たちに感謝☆ いつも一緒の方向で協働して下さる行政の皆さんに感謝☆ 雇用いただいた農家さん企業さん、作業を出してくれる皆さん、地域での活躍の場を下さる 皆さんに感謝☆

○ひきこもりハンドブックに勇気づけられて→ もう1事例ご紹介させてください。 実は去年夏の初任者研修で悩んでいるケース事例として挙げたTさん。 もう、かれこれ5年のお付き合いになります。 ご本人の希望で一度アルバイト就労支援を実施しましたが、3か月後に 無断欠勤が出始め、ご本人、アルバイト就労先と何度も相談を繰り返した上で、一度辞めることに。
○つらい過去を背景に持つTさんから 教えてもらったこと↓
○ハンドブックが和らげてくれた私の焦り
→ 就労=ゴールではない。 頭ではわかっていて、アルバイト就労が続かなかった時も、 「またボランティアで力を貸してよ」と言えた。 でも、 Tさんの人生、本当にこのままでいいのか? もっと出来る事があるんじゃないのか? ぐずぐずしてたら、家族との関係が完全に破綻してしまうんじゃないのか? どこかでそんな事を考えている自分がいた。
○<目指す姿としての「自律」>→・「自律」とは、自己を律すること、社会に適応するといった捉え方ではなく… →Tさんが自己を律し、社会適応する姿を私は知らぬ間に求めていた。 ・本人の尊厳や主体性、自尊感情を回復する意味であり… →つらい過去を背景に持つTさんの回復 を支えながら待つのが私の仕事なんだと再確認。 ・その自律に向けたプロセスを本人と支援者が共有しながら一歩ずつ進むことを目指すものです。 →Tさんの中にある「こうありたい」が見つかる事が自律。地域との相互作用の中でその関わり、 対話を通じて、共に探していくことが所謂「伴走支援」なんだと学ぶ。 これが迷いの中でハンドブックを読み解き、Tさんとの対話を通じて辿り着いた私の思う支援のあり方です。 長谷川先生、岡本さん。この後のパネルディスカッションでもお教えをいただきたいです
○クライエントは支援プロセスの監督者 ストレングスモデル6原則より→近所の一人暮らしのおばあちゃんの ゴミ出しを定期的にして下さるTさん、 ベテランサポーターに植垣の剪定 の仕方を教わって作業するTさん、 当事者さん同士で手に負えなくなった庭木の伐採作業を行うTさん。
○地元明野高校福祉科マイスターハイスクール(文科省指定事業)→「虐待・不登校・ひきこもり」ゼミ生と「対話」をするTさん 次代の福祉を担う若者へ思いを伝え、地域共生社会の実現に向けて お力を発揮していただいています。

次回は新たに「第8回経済財政諮問会議」からです。

第180回市町村セミナー 資料 [2025年08月19日(Tue)]
第180回市町村セミナー 資料(令和7年6月13日)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_58702.html
◎資料1【行政説明】ひきこもり支援施策の動向
1.ひきこもり支援の変遷と背景
○ひきこもり支援の歴史
○こども・若者の意識と生活に関する調査結果
→【目的】こども・若者を取り巻く現状及び課題を的確に把握し、国及び地方公共団体におけるこども・若者育成支援 施策や家庭・学校・地域・職域等におけるこども・若者育成支援の改善・充実に資する基礎資料を得ること
○ひきこもり支援の考え方(「ガイドライン」における定義など)→「ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン」(平成22年5月)による定義 (厚生労働科学研究でとりまとめ、主任研究者:齋藤万比古氏 国立国際医療研究センター国府台病院)⇒ 様々な要因の結果 として 社会的参加(就学、就労、家庭外での交遊など) を回避し、 原則的には 6ヵ月以上 にわたって概ね家庭にとどまり続けている状態 (他者と交わらない形での外出をしていてもよい) を指す現象概念
○ひきこもり支援対象者の考え方(「ひきこもり支援ハンドブック」から)→ ◆「ひきこもり支援」の対象者を広く捉えています 「ひきこもり」に対する考え方、捉え方が一般化され、ガイドラインの定義に当てはま らない対象者が多くいる現状となっています。生活困窮者自立支援制度や、地域共生社会の 実現に向けた地域住民を広く支える仕組み作りも始まっているなか、「ひきこもり状態」に ある人は、多様な分野、年齢、世帯で見られるようになり、その定義化は困難です。
○ひきこもり支援の「指針」の特徴と推移 参照。

2. ひきこもり支援施策の現状と課題
○ひきこもり支援施策の全体像
→より身近な市町村域における相談窓口の設置と支援内容の充実を図り、これを都道府県がバックアップする体制を構築
○身近な基礎自治体におけるひきこもり支援の充実→ 事業イメージ
○ひきこもり地域支援センター ひきこもり地域支援センター等設置運営事業(平成21年度〜)
○ひきこもり支援ステーション事業及びひきこもりサポート事業
○令和6年度ひきこもり支援推進事業実施自治体(生活困窮者自立支援事業補助金)
○令和5,6年度自治体におけるひきこもり支援に関する実施状況(全体総括表)

○ひきこもり支援推進事業 令和7年度当初予算額 16億円(16億円)※()内は前年度当初予算額→ ○本事業では、令和4年度以降、都道府県・指定都市域での取組のみならず、住民に身近な基礎自治体である市区町村においてひきこもり 支援に特化した相談窓口の設置や居場所づくり、関係者間のネットワーク構築、当事者会・家族会の開催など、ひきこもり支援体制の構築 を進めている。 ○内閣府の調査(令和5年3月)の公表では、ひきこもり状態の方が50人に一人(推計)であることが明らかになり、新たな支援ニーズの 掘り起こしが進むことで相談件数の増加が見込まれる。 ○こうした中、各自治体に対して「ひきこもり相談窓口を明確化」するなど依頼しているが、地域の実情によりひきこもり支援推進事業以 外で実施している市区町村もあり、ひきこもり支援体制の地域偏在の解消とともに、令和6年度に策定された「ひきこもり支援ハンドブッ ク」に沿ったひきこもり支援ができる体制の整備を進めていく。
○ひきこもり支援推進事業実施例@北海道北見市の取組→北海道北見市におけるサポート事業(令和4年度)活用その後ステーション事業実施(令和6年度)への展開
○市町村におけるひきこもり支援の取組例(北九州市)→ ○平成21年度に、北九州市ひきこもり地域支援センター「すてっぷ」を開所。「すてっぷ」への相談件数は年々増加しており、困難ケースも増加。 令和2年度から、各区役所等関係機関との連携強化を図るための職員を1名配置。 ○「すてっぷ」では、ひきこもり相談支援コーディネーターによる電話・来所・訪問による相談支援や、フリースペース(居場所)等を実施。居場所は、民間のネットワー ク「縁が輪ネットワーク」と連携し、幅広い世代を対象としたものや、40歳代以上の方に限定したもの等を設け、個々の支援対象者に応じて対応。 ○平成29年度からは、日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)のギラヴァンツ北九州と共同で「ギラヴァンツオープンマインドプログラム(GOP)」を実施し、ひきこもりがち な方を対象に、サッカー観戦や運動体験、ボランティア体験等の社会参加の場づくりを実施。
○ひきこもり支援推進事業 実施例B→ 埼玉県秩父市の取組@ 秩父地域1市4町におけるひきこもり支援ステーション事業の実施までの経過について
○秩父市の取り組みA
○都道府県におけるひきこもり支援の取組例(高知県)
→ ○ひきこもりの背景には様々な要因があることから、福祉の総括部署である地域福祉政策課で業務を担当。 ○令和3年度に県内全市町村にひきこもりの相談窓口が設置され、市町村がひきこもり支援に携わる場面が増えたことから、ひきこもり地 域支援センターでは、地域支援を重点的に実施。 ○県内5カ所にある県福祉保健所にて、ブロック毎に好事例の共有や勉強会を行い、地域資源の活用や近隣自治体との連携を促進。 ○相談窓口の多様化を図りより相談しやすい環境を整えるため、令和2年度から県委託事業「ひきこもりピアサポートセンター」を開設。
○「ひきこもりに関する地域社会に向けた広報事業」の全体像(令和7年6月時点)→ 目的 地域におけるひきこもりに関する理解を深め、ひきこもり当事者やその家族が孤立せず、 相談しやすい環境づくりを促進する。 広報キャラクターの活用 クリエイティブ監修アドバイザーに宮本亞門さんを起用 ※ポータルサイトに加え、X(旧Twitter)、InstagramなどのSNSを積極的に活用し情報発信を行う。
○最新情報はこちらで確認を!→ 厚生労働省 ホームページ https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/hikikomori/index.html
○ひきこもり支援コミュニティ(Slackスラック)の概要→ひきこもり支援コミュニティとは 全国のひきこもり支援従事者同士が気軽に支援に有用な情報交換ができ、 ノウハウ、経験談を蓄積、検索ができる、ひきこもり支援者のためのコミュニケーショ ンの場です。厚生労働省や自治体職員、NPO、臨床心理士会等が参加しています。
○ひきこもり支援コミュニティの画面→ 全国のひきこもり支援従事者とオンラインで繋がることが可能です。様々なチャンネルがあり、情報交換、情報収集が可能です。
○新たな就職氷河期世代等支援プログラムの基本的な枠組み(案)について→ 1.就労・処遇改善に向けた支援2.社会参加に向けた段階的支援3.高齢期を見据えた支援

3. ひきこもり支援ハンドブックの概要
○【令和6年度厚生労働省社会福祉推進事業】ひきこもり支援にかかる支援ハンドブックの策定に向けた調査研究事業 ひきこもり支援ハンドブック〜寄り添うための羅針盤〜概要R7.1.31に自治体宛通知
○ハンドブックの構成について

○ひきこもり支援の目指す姿→ ◆「ひきこもり支援」の目指す姿とは 「ひきこもり支援」におけるこれまでの課題は、支援のゴールが「就労」や「社会参加」 と言われていたことです。しかしヒアリングや調査結果から「就労すること」や「社会参 加」は支援の過程でありプロセス、そのためそれのみが支援のゴールや目指す姿ではないと 整理しました。 ひきこもり支援において目指すべき姿は 一人ひとりの背景や心情を捉えずに社会参加や就労を求めることではなく 本人のペースに合わせながら、本人やその家族が、自らの意思により、自身が目指す生き方や、 社会との関わり方等を決めていくことができるようになること(自律)とした。 自律とは自己を律すること、社会に適応するといった捉え方ではなく、本人の尊厳や主体性、 自尊感情を回復する意味であり、その自律に向けたプロセスを本人と支援者が共有しながら一歩ずつ進むことを目指すもの。自律の形は一人ひとり違うものであり、決まったものはない。 自律に向けた具体的な取組として、社会参加や就労も含まれており、本人の求める支援は多様であるといえる。 家族は本人の自律を支える役割だけではなく、家族も自律することが望ましい。一方で、自分の意思や希望の 表出がうまくできない本人に対しては、支援を進める中で本人が望む未来を具体的に描けるよう、ともに考え、 選択しやすい情報提供に努めながら、意思表出や意思形成、自己決定につながる丁寧なサポートが必要。
○支援の共通基盤としての「価値」や「倫理」→ ◆「ひきこもり支援」における価値や倫理を記載しました 支援において共通的な基盤となる価値や倫理の考え方を明文化しました。これは全ての支 援者に共通する価値観として、人間観、社会観、支援観を記載するとともに、その価値を判断する際の倫理についても記載しました。支援者個人の価値観ではありません。 <人間観> 人権尊重や個人の尊厳、利益優先という考え方に基づき、「人として尊厳ある存在」「主体的・能 動的存在であり、無限の可能性や潜在的能力を有する存在」であるという認識を持つ。 <社会観> ひきこもり状態に至ったありのままを理解するとともに、取り巻く社会がどうあるべきかを考える <支援観> 人として社会との関係性の中で否定的に捉えられることなく、社会の一員として尊重されるべき。 本人の自律の力の醸成を中心におき、社会全体にも働きかける。 <倫理> 支援をおこなう前提となる倫理とは、支援者の価値(人間観・社会観・支援観)を基盤として支援 をより良い方向に向けていく際の判断、行動に関する具体的指針である
○ハンドブック、座談会動画が見られます→ ひきこもり支援ハンドブック〜寄り添うための羅針盤〜 https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/001471237.pdf

4. 生活困窮者自立支援制度の取組
○生活困窮者自立支援法の対象と支援の在り方
→ 生活困窮者の定義 就労の状況、心身の状況、地域社会との関係性その他の事情により、現に経済的に困窮し、 最低限度の生活を維持することができなくなるおそれのある者 支援のポイント 相談に際して資産・収入に関する具体的な要件はない。 複合的な課題を抱える 生活困窮者がいわゆる「制度の狭間」に陥らないよう、できる限り幅広く対応。 生活困窮者の中には、社会とのつながりが薄れ、自らサービスにアクセスできない者も多い。 そのため、アウトリーチも行いながら早期に支援につながるよう配慮 するとともに、 の解消などにも配慮 。 支援に当たっては、法に 孤立状態 定める各種事業、法外の関連事業、インフォーマルな取組などと連携 既存の社会資源では生活困窮者の課題に対応できない場合には。地域における関係者との協議を通じて、新たな社会資源を開発 。
○生活困窮者自立支援制度の体系
○就労準備支援事業
→長期離職者や対人関係の不安等により、すぐに就職活動をすることが難しく、就労に向けた準備が必要な者
○生活困窮者自立支援制度とひきこもり地域支援センター等との連携について→ 両機関がともに支援する場合は、本人の意向も踏まえ、両機関において支援方針の摺り合わせを行った上で、 就労体験やボランティア活動等、多様な参加の場や就労の場を準備し、ひきこもり状態にある者を受け止める 場を充実させることが重要である。

5. 地域共生社会への取組
○地域共生社会とは
→ ◆制度・分野ごとの『 縦割り』や「支え手」「受け手」という関係を超えて、地域住民や地域の多様な 主体が『我が事』として参画し、人と人、人と資源が世代や分野を超えて『丸ごと』つながることで、 住民一人ひとりの暮らしと生きがい、地域をともに創っていく社会
○地域共生社会の実現に向けた取組→(社会福祉法第106条の3) (社会福祉法第106条の4)
○地域共生社会を実現するための施策 包括的な支援体制の整備 社会福祉法(昭和26年3月29日法律第45号)第106条の3→ ・ 市町村は、地域住民等と支援関係機関による地域福祉の推進のため相互の協力が円滑 に行われ、地域生活課題の解決に向けた支援が包括的に提供される体制を整備するよ う努めるものとする。 ・ 包括的な支援体制の整備のために、市町村による実施が期待される施策⇒  @ 地域住民等が主体的に地域生活課題を把握して解決を試みることができる環境の整備 ※ 地域福祉活動への住民参加を促す者への支援、住民の交流の場・活動拠点の整備、住民への研修 A 地域住民等が地域生活課題に関する相談を包括的に受け止め、情報提供や助言を行うとともに、必要に応じて支援関係機関につなぐことのできる体制の整備 ※ 相談を包括的に受け止める場の整備・周知とバックアップ体制の構築、民生委員・保護司等の地域 の関係者との連携による地域生活課題の早期把握 B 地域住民等が相談を包括的に受け止める場等では対応が難しい複合的で複雑な課題、制度の 狭間にある課題等を受け止める相談体制の構築 ※ 支援関係機関によるチーム支援、支援に関する協議・検討の場、支援を必要とする者の早期把握、 地域住民等との連携
○地域共生社会の在り方検討会議概要大丸2地域共生社会の実現に向けた取組については、平成29年の社会福祉法改正により、市町村による包括的な支援体制の整備について努力 義務規定が盛り込まれるとともに、令和2年の同法改正により、重層的支援体制整備事業が新設されたところ。 大丸2令和2年の改正法附則第2条において、施行後5年を目途として施行状況について検討を加えることとされており、地域共生社会の実 現に資する施策の深化・展開について、また、身寄りのない高齢者等が抱える課題等への対応や、総合的な権利擁護支援策の充実等に ついて、検討することを目的として開催する。
○地域共生社会の在り方検討会議→ これまでの資料等を掲載してます 厚生労働省 ホームページ https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_40780.html

≺【参考資料1】 市町村におけるひきこもり支援の取組例 (令和6年度作成) ≻
○茨城県古河市 若年層のひきこもり当事者へ対し、複数の関連事業を活用しながら支援を行っているケース
○三重県 明和町 ひきこもり当事者の希望で就労や社会参画につながったケース
○神奈川県 海老名市 アウトリーチ支援を行い、福祉や医療と連携しながら、精神障害のあるひきこもり当事者へ支援を行ったケース

○大阪府 守口市 支援者とともに当事者会を発足させ、居場所として機能しているケース 支援のポイント • 当事者会の企画・運営に当事者が主体的に関わることができる ような体制を構築した。 • 当事者会は他者とかかわり、自分が役に立つ、感謝する・される等の社会経験を積むことができる 支援の概要 場所である。
○山梨県 甲府市 メタバースを活用した広報・相談支援を行っている事例 支援のポイント→ • メタバース空間を活用した広報と個別の相談支援を実施 している。⇒・ 広報:誰でもアクセス可能なメタバース上の空間にひきこもり支援の情報を掲載している。 ・ 相談支援:アバター(メタバース空間上の分身)となり、メタバース空間で専門職と個別相談を行うことができるほか、当事者と 家族、支援者を対象とした交流会のイベントを開催している。
○東京都 墨田区 ひきこもり専用ウェブサイトを活用しひきこもりに関する周知・啓発の広報を行っている事例→ 支援のポイント • 委託先や関係機関と連携して、ひきこもり支援専用の ウェブサイトを開設し、様々な方法での広報支援を実施している。 • ウェブサイトはひきこもり当事者の目線を重要視し、制作にあたっては当事者やひきこもり支援の専門家等からの意見を反映した。 支援内容紹介動画、ひきこもり経験者によるコラム、支援者紹介などを掲載している。
○厚生労働省ホームページに支援事例を掲載。 厚生労働省 ホームページ https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/hikikomori/index.html

≺【参考資料2】 ひきこもり状態にある方や その家族に対する支援のヒント集 ≻
○ひきこもり状態にある方やその家族に対する支援のヒント 2021年4月1日 令和2年度厚生労働省委託事業「ひきこもり状態にある方の社会参加に係る調査・研究事業」報告書から抜粋
○目的
→ ひきこもり状態の方やそのご家族に対する支援の選択の幅が広がることの助けになることを目指して作成しました 「支援の型」や「正解」をお示しするものではありません 作成にあたって
○支援のヒント〜本人を中心にした支援や伴走型支援〜 支援において大切にしていること や、人材育成・引き継ぎ等で工夫している 本人を中心にした支援や伴走型支援 こと(ソフト面) 家族へのアプローチに重点を置いた支援、支援者のエンパワメント、職場内サポートなど、ピアサポーターの活用
○よく出会う場面での対応のヒント 〜場面1〜ひきこもり状態にある本人に繋がるのが難しい→・親と話す、部屋の前で何でもないこと(天気など)を話すといったことを繰り返し、手紙を差し入れたりし ながら訪問を継続し、1〜2年がかりで会えるようになった。外出を促す、気持ちを聞くなど、本人の安全を 脅かすような会話はしないほうが良い。 ・家庭での暮らしを安心安全なものにし、家族や支援者が信じて待つことが大切。 ・1回の訪問で諦めず、電話連絡や定期訪問など家族とのつながりを継続し続ける。 信じて長期的に支援する ・手紙のやりとりから出向くようになったケースがある。 ・本人の興味関心のあるものに関しての手紙を送り、いつでも相談に乗ると継続して伝え続けた。 ・会えなくても、手紙で支援者において知ってもらう。 会えない場合は手紙で伝える 【具体例】・家族との接点はあるものの、ひきこもり状態の本人が部屋から出ない。訪問を重ねても会えない ・ひきこもり状態にあると聞いているが、どのように支援して良いか分からない


◎資料2【基調講演】 ひきこもり支援における価値と倫理 〜「ハンドブック」にもとづいた支援をつくる〜
T. 『ハンドブック』に学ぶ 〜新たなひきこもりの捉え方と自律の考え方〜
○ひきこもり支援の「指針」の特徴と推移

・10 代・20 代を中心とした「ひきこもり」を めぐる地域精神保健活動のガイドライン (2001)※@→ひきこもりの評価・支援に関するガイドライ ン(2010)※A→【2つのガイドラインの共通点と特徴、そして課題】 当時の社会状況および時代背景の影響を受けて、「ひきこもり」は現象概念であるとともに、精神保健・福祉・医療の支援対象であるという理解が行われていることである。@Aの対象に当てはまらない多くの本人の存在。いわゆる「医療モデル」に加えて、および共通することとして「社会モデル」による理解と支援の必要性がある。 『ハンドブック』(2025.4.1〜)
○「ガイドライン」と「ハンドブック」の考え方の関係性→・「ガイドライン」2010 病気や障害を背景としたひきこもりを対象とした考え方 ⇒医療の必要性と有効性。・「ハンドブック」2025病気や障害を背景としない、あるいは 背景が明確ではないことを含むひきこもり全般を対象とした考え方 ⇒支援の必要性と有効性
○「ひきこもり」の問題認識の変化 〜個人問題から社会問題へ〜→本人の参加と意思尊重にもとづいて決定した目標へ向けた協働作業の重要性 ⇒ Social Inclusionの実現へ
○「ひきこもり」状態における背景の多様性と共通性への視点の大切さ 〜ラベリングを超えて「個別化」して受けとめる・理解することから始める〜→「ひきこもり」概念は多義性 を帯びているため、既存の標 準的な理解と支援は有効性を 失っていると言えないだろう か。「その人」という個別化 視点(個別最適化)に立ち返ることが大切になると考えている。
○「ひきこもりの定義」と「ひきこもり支援の対象者」→「ひきこもり」は多様性と多義性があることから、個別化して捉えることが求められている。定義により多様性と多義性が尊重されないとき、パッケージ化された汎用性の高いルーティン支援になる可能性もある。個別最適化(個別化されたwell-being 志向)の支援と本人の尊厳を守るために、家族(親、兄弟姉 妹)を含んだ緩やかな位置づけとなっている。
○ひきこもりの対象規定である定義がないことの積極的意義 〜「包摂モデル」は支援から取り残す人をつくらない〜→《包摂モデル》 ひきこもり状態にある人とその家族を対象とする。しかし、そのことを認識しない人(認めない人)とその家族を除くといった自由意志は尊重する。
○「自立」と「自律」→・「自立」と 「孤立」との親和性が高いこともあり、ひきこもりの場合は「自立」の強調 がひきこもりを長期化や深化につながる可能性がある。・「自律」は、その人の尊厳そのものを尊重しようとする考え方。ひとりの人間として尊重されたい、自分の感じていることや考えていることを表明したい、自分のことは自分で決定したい等の価値が意味されている。当事者主義や当事者本位の考え方が含まれている。また、援助職(支援者)との 相互関係性が父権主義的ではなく対等性のある支援を志向することが求められる。 ・「個別最適化」「自己決定尊重」「対話」を柱とした考え方と言えるだろう。
○「自立」をめぐる本人の声 〜メール相談の本人へ投げかけてみました〜→・親が思い浮かべるゴールは、世間の常識や多数派の生き方をモデルにしている。 ひきこもりをしていることが、そうした常識や多数派と同じように生きたくても生きられない事実をまったく理解してもらえていない。 ・社会に役に立つ、社会に出て稼ぐ。社会的有用性や有力感を持てといつも言われているように思う。親だって、そのことに苦労して悩んできているのに、話しかけるときは、そうしたことの光の当たることばかりで、光の当たらないことは見せないでキラキラだけを言ってくる。これって詐欺ですよ。 ・働くことを否定しているのではなくて、働くことができなくて困っていること をわかってもらえない。働くことは、社会参画することではなく、就労先参加 しているだけである。市民になることだけでは評価されない社会の価値観の問題だと思う。 ・その人の苦手なことを、例えば社交的にふるまえない、話すことが苦手、多くの人がいるところでは緊張してしまう、周りの視線や評価を気にしてがんばりすぎてしまう。そうしたことを解消する環境があれば、こういう自分だって参 加や働くことだってできるかもしれない。ゴールが硬く狭いので、誰であっても、特徴を持っていても、ゴールではなくてトライすることが、柔らかく広くすることは、自分の問題ではなく社会の課題だと思う。
○「自立」を脱構築する→就労や社会参加等の可視的な「結果・実態」の重視から、自己決定と自発的・了解的 受容による他者との共生と制度・資源を活用しながら生きていくという「主体・過 程」を重視することへの転換
○自立支援と自律支援のちがい(概念図)→1.「自立」を強要する支援 2.「自律」を尊重する支援 参照。

U. 『ハンドブック』を実践する 〜価値と倫理を基盤に置いた支援へ〜
○援助・支援が効果的でないときは、他の「理解」を考えてみる 〜価値と倫理から捉え直してみる〜↓
〈ひきこもり状態の理解〉
→・社会に出ることに慎重な態度から生まれる苦悩を表現している人 ・他者と社会とのあいだに一線を引いて自分を守っている人 ・自死しないで生き延びることを選択した人
・このようにひきこもり状態の理解を変えることができたら…→新たな理解⇒・無理しないで自分を大切にする環境をどう作るのかいっしょに考える ・ひきこもる場所とひきこもる程度を少し変えてみる
○生活問題の理解・判断から生活課題を導き、 そして、支援課題を明らかにして取り組む 〜常に仮説的な理解・判断にもとづいた支援〜→・多様な理解と判断から生活課題を仮説的に考える ・生活課題から仮説的な支援方針を導く ・支援は生活問題を直接的に解決しない ・生活課題は支援課題の取り組みにより解決される ・その結果、生活問題の軽減や緩和や解消する
○「医療モデル」から「社会モデル」へ 〜多様性と多義性を持つひきこもり支援という視点〜→その人とその人を取り巻く環境・社会との関係性上に「問題」があり、環境・社会の調整によってその「問題」 を改善するという考え方と方法
○親・援助職のニードを充足する働きかけは「ひきこもりの深まり」を生み出す→図の参照。
○「本人・親 VS 援助職」という考え方がつくる関係性と世界→☆一方的な解決、理解・共感のない支援、支配・被支配、暴力の危険性 参照。
○「みんな当事者」という考え方がつくる関係性と拓く世界→共通項の多さ ⇒ 共感・理解 ⇒ わかちあい・共生 ☆「困難」の軽減・緩和・解消へ向けた共同(性)の可能性
○「かかわること」が生み出す意味と価値 〜指導・指示ではなく、対話交流の必要性〜→原人間関係(原存在の肯定的承認関係) ⇒人間としての関係性 ⇒対話交流が必要。
○援助職に求められていること 〜個人的特徴と共通する基盤を十分に機能させる援助・支援〜→ 日々の援助は、理解と判断と支援に際して、私たちに「専門性」を求めている。 また、そのことの前提に「人間性・人間力(生き方の魅力性)」が裏打ちされて 相互関係性が存在しないと“血の通ったかかわり”にならない。
○援助・支援で陥りやすいことへの提案→1.信頼関係が築かれていない:関係性の構築の不十分さ 2. 情報が不足している:アセスメント視点の点検と把握された情報の偏在の自己覚知 3. 情報(事実)の解釈:・理解の画一化と不十分さ リフレイミングとストレングス視点の活用。 ※社会構成主義の考え方:事実はさまざまな解釈が可能である(リフレイミングによる解釈・理解の変更、ストレングス視点による新たな事実の発見 → dominant story(支配的な物語)を alternative story(もうひとつの物語)へ  4. ディスコースによるパッケージ化されたルーティン支援(画一的支援) 「問題」ではなく「ひと」に着目する、 個人・関係性・集団への視点。 ※「障害者」「母子世帯」「不登校」というディスコース(言説)と捉えると一面的で 固定的な捉え方となってしまう。「ひと」が○○○と言う特徴を手にしていることで △△△という困難に直面していると捉える。 家族支援は、各家族構成員である個人・家族間における関係性(ダイナミクス)・集団 (家族)といった要素に着目する。
○ソーシャルワーク実践における価値と倫理の関係→価値とは「何を大切にするのか」「何を信じるか」ですが、その「価値」が 正しいかどうかは、倫理に基づいて判断されます。 倫理とは、人に対して関わる際の原理原則であり、不変的なものです。支援 者は、支援にあたってその実践を、価値や倫理に基づき支援者同士で相互に 確認することで、支援の正当性を担保することができます。
○倫理的葛藤(ジレンマ)を紐解くことの重要性→事実に対する解釈・理解 目標をめぐる考え方⇒倫理的判断による軽減・解消へ。
○倫理的ジレンマの実際〈課題提起〉 〜本人を真ん中に置いて、あるいは推察して考える〜 《本人と親の考え方が違うとき》 ・親は働いてほしいと考えている ・本人はその準備ができていないと考えている(あるいは本人の考え方が不明) 《本人がアンビバレント(両価的)なとき》 ・本人からAかBかと迷い決断できないために親や援助職に判断を委ねる 《本人と援助職の考え方が違うとき》 ・本人は不安や焦りが強く準備が整わない状態でチャレンジしようとする ・援助職は準備が整っていないので無謀なチャレンジになるので止めたい 《関係機関のあいだで考え方が違うとき》 ・A機関はそろそろ次の段階へ進めたいと考えている ・B機関は現在の状況の継続が適切だと考えている ・C機関は援助そのものが必要ないと考えている
○Message 〜わたしたちが日常でできること・大切にしたいこと〜 『ハンドブック』におけるひきこもり支援で大切していることを個人的見解として お話をさせていただきました。 わたしたちのひきこもり支援および他の支援を振り返ってみると、往々にして「そ の人の問題」という捉え方と、「その問題の克服・解決」という方法と、その人と 家族が第一義的に取り組むという考え方を持っていることも多くあるのではないで しょうか。当事者本位、当事者決定、対等な関係性、多様なゴール、その人の well-beingの向上といった考え方で支援することは難しいことです。「状態」を 指し示す「ひきこもり」だからこそ、新たな考え方と支援のあり方を模索して実践 することが大切だと考えます。 『ハンドブック』を活用して日常の支援に取り組んでいただき、 そこで得られた知見を新たに加えて、いっそう充実した内容に ブラッシュアップさせていただきたいと願っています。 市町村職員のみなさまが、ひきこもり支援の最前線に立って、本 人・家族の最善の利益の実現へ向けて、いっしょに考え、知恵を 出し合い、ともに歩んでいただけることを期待しております。 ご清聴、ありがとうございました。

次回も続き「ひきこもりの経験から いま、考えること ひきこもり体験者」からです。

第179回市町村セミナー 資料 [2025年03月17日(Mon)]
第179回市町村セミナー 資料(令和7年2月28日)
共生社会の実現を推進するための認知症基本法における認知症施策推進計画等に関するセミナー
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_52854.html
◎【事例共有:北海道庁】北海道の認知症施策 について
令和7年2月28日 北海道保健福祉部福祉局高齢者保健福祉課
○北海道について
→・面積:83,422㎢(国土の約22%) ・人口:5,039,100人(R6.1現在) ・65歳以上の人口:1,666,280人(R6.1現在) ・高齢化率:33.1%(R6.1現在) ・市町村数:179
○認知症基本法・基本計画と北海道介護保険事業支援計画について→第9期北海道介護保険事業支援計画策定に当たって、「共生社会の実現を推進するための認知症基 本法」の目的を盛り込むとともに、法で定められた基本的施策に沿って北海道が実施する認知症施 策の方向性を整理した。
○第9期北海道高齢者保健福祉計画・介護保険事業支援計画→第2節 計画の基本目標 ・・・基本目標の一つに 「認知症施策の推進 」を掲げ。 第5節 認知症施策の推進 ・・・(1)共生と予防を推進するための取組 ・・・(2)若年性認知症施策の推進。
○第9期北海道高齢者保健福祉計画・介護保険事業支援計画 第4章計画の方向性→第2節計画の基本目標⇒高齢者を取り巻く状況と令和22年(2040年)の本道の姿を踏まえ、第9期 計画の基本目標を次のとおり設定します。→5認知症施策の推進⇒認知症の人を含めた一人一人がその個性と能力を十分に 発揮し、相互に人格と個性を尊重しつつ、支え合いながら 共生する活力のある社会の実現を目指します。
○認知症基本法の基本的施策と第9期北海道計画における認知症施策の関連→認知症基本法の基本的施策(7施策あり)⇒7施策について第9期北海道計画の認知症施策の方向性については 参照のこと。
○北海道の認知症施策→当事者を中心とした身近な支援についての施策整備。 参照。
○北海道における認知症疾患医療センターの設置状況
→第二次医療圏:21圏域 設置済⇒ 14圏域 □未設置⇒ 7圏域  設置率約66.6%。 (令和6年4月現在)
○北海道認知症疾患医療センター設置方針(抜粋)→1 圏域の決定⇒広域な面積に精神科医療資源が偏在している本道において、認知症患者の方々がどこに住んでいて も認知症に係る鑑別診断、急性期治療、専門医療相談等の専門医療の提供を受けられる体制が確保さ れるよう、センターの適正な配置を図るための基本的な単位として「圏域」を設定する。 センターを設置する圏域は、「第二次医療圏域」を基本とし、医療資源の少ない地域での完結が難 しいことを考慮し、「連携圏域」を設定する。 なお、連携圏域については、「第三次医療圏域」を基本として「道央圏」を3分割した8圏域とする。8圏域の参照。

○若年性認知症支援に関する市町村ニーズ調査(R3)の結果→各市町村における若年性認知症者への認識は、多くが「存在を一定程度は認識している」という 程度に留まっており、その特性を踏まえた支援の視点が十分わからず、体系的に学ぶ研修の場が得 られていないといったことが主な課題として挙げられていた。 こうした課題を解決するために北海道へ求める支援策としては、以下の3点が多数意見⇒・広域的な相談窓口の設置  ・若年性認知症支援コーディネーター等の専門的知見を有した職員による研修  ・普及啓発のパンフレットや支援に役立つハンドブック等の作成・配布
○若年性認知症支援関連事業→若年性認知症の特性を踏まえ、若年性認知症に関する普及啓発や、理解の促進を図るとともに、市町村において適切な相談対応を行うことができる体制の整備を推進するため、広域的な総合相談支援を実施⇒委託先:(特非)北海道若年認知症の人と家族の会 通称:北海道ひまわりの会→ ■個別相談支援・連携調整 ■研修・事例検討等 ■普及啓発・理解促進
・若年性認知症支援コーディネーター→20名 ※R7.1現在  配置先:(特非)北海道若年認知症の人と家族の会A、北海道認知症の人を支える家族の会  疾患C:12クリニック
○若年性認知症支援コーディネーターの配置状況(R7.1現在)→参照のこと。
○ほっかいどう希望大使(認知症本人大使)↓
・希望大使とは→認知症ご本人が自らの言葉で語り、認知症になっても希望を持って暮らす姿を発信す る方々。 認知症当事者の方々やご家族などに希望をもたらし、広く認知症に対する正しい知識 や理解を深めるための活動を行う。
・要件→認知症に関する普及啓発活動に意欲があり、次の要件を満たす者。 (1)北海道内に在住。 (2)認知症の診断を受けている。 (3)北海道と協力・連携ができる。 (4)氏名・所在市町村・疾患名・顔写真等を公表できる。
・任期→委嘱日から2年間(任期途中の退任及び任期満了後の再任は妨げない)
・活動内容→希望大使本人の希望や体調に合わせ、参加・協力が可能な活動 (1)道が行う認知症の普及啓発活動への参加・協力 道が開催するイベント等での講演、広報誌等への寄稿、広報映像等への出演 など (2)道の認知症施策への意見の提案 (3)道が行う本人や家族への支援活動への協力 ピアサポート活動、本人ミーティング、本人交流会、認知症カフェでの講演 など
・任命式→ 令和6年(2024年)8月23日(金)3名。 参照のこと。
○希望大使任命後の活動→普及啓発活動への参加・協力、認知症施策への意見の提案、本人や家族への支援活動への協力  参照のこと。


◎【事例共有:高知市】高知市の認知症施策の取組
○高知市の認知症施策の取組
→〜本人(認知症)の叶えたいことが実現できる笑顔いっぱいの高知へ〜 高知市健康福祉部基幹型地域包括支援センター
○高知市の概要→総人口312,228人 高齢者人口 97,285人 高齢化率 31.2% 面積309.00ku 日常生活圏域 14圏域 (令和7年1月1日時点)⇒少子高齢化の進展に伴い,高知市の認知 症高齢者数と高齢独居世帯の割合が増加 しています。
○高知市の認知症支援体制→認知症地域支援推進員地域包括支援センター兼務配置14名。 認知症初期集中支援チーム地域包括支援センター兼務配置14チーム。 認知症カフェ市内32か所。ミーティングセンター市内1か所。⇒現在の地域包括支援センターの体制参照。
◆認知症初期集中支援チーム会議の様子あり。
○高知市の認知症施策推進計画→高知市は,第9期高知市高齢者保健福祉計画に認知症施策推進 計画を内包する形で策定⇒ 認知症になっても安心して暮らし続けられる支援1〜4。
○高知市の認知症支援体制イメージ→地域ネットワークオレンジ体制。

○高知市の認知症施策推進計画→高知市は,第9期高知市高齢者保健福祉計画に認知症施策推進 計画を内包する形で策定。1 認知症に対する理解促進⇒ ・ 認知症サポーター養成講座 ・ 認知症サポーターステップアップ研修 ・ 認知症ケアパスの普及促進 ・ 認知症当事者による本人発信支援
○認知症に対する理解促進→大丸1 認知症の本人やその家族に,高知市が開催する認知症サポーター養成講座や 認知症カフェのミニ講和等に登壇・参加していただいた。 大丸1 本人(認知症)が毎回参加することはできないため,認知症サポーター養成講 座の最後に山中氏のメッセージ動画を観てもらった。
○高知市の認知症施策推進計画→2 認知症の人と家族の支援⇒・ 認知症地域支援推進員の配置 ・ 認知症初期集中支援の充実 ・ 認知症初期集中チーム検討委員会の開催 ・ 認知症の人と家族への一体的支援事業
○認知症の人と家族の支援→ミーティングセンターKOCHI 大丸1 令和5年10月に,山中氏・矢吹氏・若年性認知症支援コーディネーターと一緒 に立ち上げ,認知症の人と家族を一体的に支援している。 大丸1 現在は,10組程度が参加しており,認知症の本人やその家族と一緒に「叶えた いこと」や「やりたいこと」を話し合いながら,取り組んでいる。⇒参加者の様子→回数を重ねるごとに,認知症の本人やその家族の表情が明るくなり,たくさ んのことにチャレンジできている。
○高知市の認知症施策推進計画→3 認知症の人を支えるネットワークの拡充⇒ ・ 気軽に集い交流する場づくりの推進 ・ チームオレンジの形成 ・ 認知症の人や家族を支援する ・ SOSネットワークの体制の充実 ・ 希望をかなえるヘルプカードの利用促進
○気軽に集い交流する場づくりの推進→認知症カフェ大丸1 認知症の人や家族・地域住民が住み慣れた地域の中で気軽に集え,専門職に 相談できる場として認知症カフェを市内32か所開設。(令和7年1月末時点) 大丸1 令和元年度より全国的にも認知症カフェの推進に取り組んでおられる矢吹氏を 講師にお招きして,地域を変える認知症カフェ研修会を毎年開催。→参加者の様子⇒居心地がよく,ミニ講和も楽しみにしている。 ・ 認知症について安心して話し合うことができる。
○認知症の人を支えるネットワークの拡充→SOSネットワークづくり 大丸1認知症による行方不明者を早期に発見できる仕組みをつくるために,令和5年 度から「認知症になっても安心して外出できる街づくりを考える会」を開催 大丸1警察や消防,認知症専門医,民生員,ケアマネジャー,認知症と家族の会などに 加え,認知症の本人にも参加していただき意見をいただいている。⇒地域で協力して,行方不明になった人を捜索するための情報共有ツール の導入に向けて取り組んでいる
○新しい認知症観を浸透させる取組→方向性⇒国の認知症施策推進計画に係る策定準備支援事業を活用し,さらに認知症 の本人やその家族の声を聞く機会をつくり,新しい認知症観を次の認知症施 策推進計画に反映させていく。
○認知症の人や家族等の意見を施策に反映させるための会
・認知症になっても安心して暮らし続けられる街づくりを考える会→新しい認知症観を浸透させるための現状課題と今後の取組について,行政だ けでなく,認知症の本人を含む様々な方に参加していただき協議している。
・参加者→認知症の本人,認知症の人と家族の会,認知症専門医, 若年性認知症支援コーディネーター,学識者,民生委 員児童委員協議会,居宅介護支援事業所協議会など
・得られた主な意見→5意見あり。◆認知症の本人やその家族の意見を丁寧に聞き,施策へ反映させることが大事

○今後の取組(予定)↓
・今年度
大丸1認知症診断直後の方や認知症に対して不安を感じている方が必要とする支 援やサービスにつながるように,認知症の本人の意見を反映させた認知症ケ アパスを見直す。 大丸1新しい認知症観を広く市民に浸透させるため,ヘルプカードやポスターなど, 認知症の本人の意見を反映させた普及啓発ツールを作成する。 大丸1地域の認知症カフェの立ち上げ支援や認知症の本人が情報発信する機会を つくる。
・来年度以降大丸1「認知症になっても安心して暮らし続けられる街づくりを考える会」を引き続き 開催し,新しい認知症観を浸透させるため方法等について意見交換する。 大丸1今年度作成する啓発ツールを活用し,新しい認知症観の普及啓発を強化する。 大丸1ピアサポートの場や認知症カフェを創出する。 大丸1認知症の本人やその家族が情報発信する機会をつくる。 大丸1認知症施策推進計画に,新しい認知症観の考え方や認知症の本人の意見を 踏まえた施策を反映させる。
○認知症の本人の声を聞く工夫→高知市が行っている工夫⇒ 大丸1フラットな関係をきずく。 大丸1様々な活動を共にする。 大丸1納得いくまで話し合う。 大丸1共に過ごす中で気づいた課題を一緒に解決する。
○高知市の認知症施策の取組 →高知市健康福祉部基幹型地域包括支援センターの写真あり。   ご清聴ありがとうございました。

次回は新たに「第194回労働政策審議会労働条件分科会(資料)」からです。

第179回市町村セミナー 資料 [2025年03月14日(Fri)]
第179回市町村セミナー 資料(令和7年2月28日)
共生社会の実現を推進するための認知症基本法における認知症施策推進計画等に関するセミナー
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_52854.html
◎【行政説明】共生社会の実現へ向けた認知症施策の推進について
○認知症は誰もがなり得る
→• 2022年に認知症の地域悉皆調査を実施した4地域(福岡県久山町、石川県中島町、愛媛 県中山町、島根県海士町)において推計(認知症:12.3%)。 • MCI/認知症の有病率は約3割。85−89歳の約6割、90歳以上の約7割はMCI/認知症になると見込まれる(MCI:15.5%)。• 2022年の認知症およびMCIの性年齢階級別有病率が今後も一定と仮定した場合、 2060年の認知症者高齢者数は645万人、MCI高齢者数は632万人と推計される(有病率 参照)。

○共生社会の実現を推進するための認知症基本法 概要↓
1.目的→認知症の人が尊厳を保持しつつ希望を持って暮らすことができるよう、認知症施策を総合的かつ計画的に推進 ⇒認知症の人を含めた国民一人一人がその個性と能力を十分に発揮し、相互に人格と個性を尊重しつつ支え合いながら共生する活力 ある社会(=共生社会)の実現を推進
2.基本理念→@〜Fまで。@全ての認知症の人が、基本的人権を享有する個人として、自らの意思によって日常生活及び社会生活を営むことができる。
3.国・地方公共団体等の責務等→国民は、共生社会の実現を推進するために必要な認知症に関する正しい知識及び認知症の人に関する正しい理解を深め、共生社会の実 現に寄与するよう努める。政府は、認知症施策を実施するため必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講ずる。
4.認知症施策推進基本計画等→政府は、認知症施策推進基本計画を策定(認知症の人及び家族等により構成される関係者会議の意見を聴く。) 都道府県・市町村は、それぞれ都道府県計画・市町村計画を策定(認知症の人及び家族等の意見を聴く。)(努力義務)
5.基本的施策→@国民の理解、Aバリアフリー、B社会参加、C意思決定・権利擁護、D保健医療・福祉、E相談体制、F研究、G予防、H調査、 I多様な主体の連携、J地方公共団体への支援、K国際協力
6.認知症施策推進本部→内閣に内閣総理大臣を本部長とする認知症施策推進本部を設置。基本計画の案の作成・実施の推進等をつかさどる。 ※基本計画の策定に当たっては、本部に、認知症の人及び家族等により構成される関係者会議を設置し、意見を聴く。
○国の認知症施策の会議に認知症本人が参画→【認知症と向き合う「幸齢社会」実現会議】【認知症施策推進関係者会議】 参照。

○認知症施策推進基本計画の概要
【位置付け】共生社会の実現を推進するための認知症基本法に基づく国の認知症施策の基本計画。これに基づき、地方自治体は推進計画を策定(努力義務)。

・前文/T 認知症施策推進基本計画について/U 基本的な方向性→• 基本法に明記された共生社会の実現を目指す。 @ • 認知症の人本人の声を尊重し、「新しい認知症観」※に基づき施策を推進する。※ 誰もが認知症になり得ることを前提に、国民一人一人が自分ごととして理解する。A個人としてできること・やりたいことがあり 、住み慣れた地域で仲間と共に、希望を持って自分らしく暮らすことができる⇒ @「新しい認知症観」に立つ、A自分ごととして考える、B認知症の人等の参画・対話、C多様な主体の連携・協働。
・V 基本的施策→• 施策は、認知症の人の声を起点とし、認知症の人の視点に立って、認知症の人や家族等と共に推進する。 ⇒ 以下の12項目を設定:@国民の理解、Aバリアフリー、B社会参加、C意思決定支援・権利擁護、D保健医療・福 祉、E相談体制、F研究、G予防、H調査、I多様な主体の連携、J地方公共団体への支援、K国際協力
・W 第1期基本計画中に達成すべき重点目標等 • 次の4つの重点目標に即した評価指標を設定:@「新しい認知症観」の理解、A認知症の人の意思の尊重、 B認知症の人・家族等の地域での安心な暮らし、C新たな知見や技術の活用 • 評価指標は、重点目標に即して、プロセス指標、アウトプット指標、アウトカム指標を設定
・X 推進体制等→• 地方自治体において、地域の実情や特性に即した取組を創意工夫しながら実施 • 地方自治体の計画策定に際しての柔軟な運用(既存の介護保険事業計画等との一体的な策定など) • @行政職員が、認知症カフェ等様々な接点を通じて、認知症の人や家族等と出会い・対話する、Aピアサポート活動や本人ミーティング等の当事者活動を支援する、B認知症の人や家族等の意見を起点として、施策を立案、 実施、評価する。

○重点目標・評価指標→4つの重点、その目標プロセス指標、 アウトプット指標、アウトカム指標あり。
○認知症施策推進基本計画における【当事者参画】→認知症の人とその家族その他認知症の人と日常生活において密接な関係を有する者(以下「家族等」)の参画を得て、意見を聴き、対話しながら、共に認知症施策の立案等を行っていくことが求められる。@〜B参照。
○認知症カフェ→【実施状況】令和5(2023)年度実績調査 ・47都道府県1,593市町村(91.4%)にて、8,558 カフェが運営 ・設置主体は、介護サービス施設・事業者、地域包括支援センターが多く見られた。
○ピアサポーターによる本人支援の推進→• 認知症の方やその家族は、診断直後等は認知症の受容や今後の見通しなど大きな不安を抱えている。このため、 前向きな一歩を踏み出せるよう、心理面、生活面の早期からの支援として、認知症の方の悩みや家族の身近な生 活支援ニーズ等を把握し、認知症の方による相談支援(ピアサポート活動支援事業)を実施。 • 認知症の人の心理的な負担の軽減を図るとともに、認知症の人が地域を支える一員として活躍し、社会参加する ことを後押ししていく。
【都道府県の実施状況】【市町村の実施状況】令和5(2023)年度実績調査 参照。
○本人ミーティング→•認知症の本人が集い、本人同士が主になって、自らの体験や希望、必要としていることを語り合い、 自分たちのこれからのよりよい暮らし、暮らしやすい地域のあり方を一緒に話し合う場。 •本人だからこその気づきや意見を本人同士で語り合い、それらを本人同士、そして地域に伝えてい くための集まり。
○認知症の人と家族への一体的支援事業→• 認知症の人とその家族が、より良い関係性を保ちつつ、希望する在宅生活を継続できるよう 、公共スペースや既存施設等を活用して本 人と家族が共に活動する時間と場所を設け、本人支援、家族支援及び一体的支援からなる一連のプログラムを実施することにより、 人の意欲向上及び家族の介護負担感の軽減と、家族関係の再構築等を図る 。令和4年度は293自治体が実施。(令和4年度創設)⇒【実 績】令和5年度は370自治体が実施。
○認知症の人本人からの発信の支援 (認知症本人大使の任命)→• 国において、7名の「希望大使」(令和2年〜丹野智文さん、藤田和子さん、柿下秋男 さん、春原治子さん、渡邊康平さん、令和6年〜鈴木貴美江さん、戸上守さん)を任命 • 都道府県において、令和2年度以降、25都道府県、89名の地域版の希望大使を任命 (令和7年2月7日時点)
○認知症の人の社会参加活動の体制整備→•認知症を有する高齢者や若年性認知症の中には、これまでの経験等を生かして活躍したいとの声が少なくない。 •地域において「生きがい」をもった生活や認知症予防等の介護予防に資するよう、認知症地域支援推進員の取組として、 令和元年度より社会参加活動のための体制整備を地域支援事業に位置づけ、その取組を支援。
○認知症バリアフリー社会実現のための手引き→• 認知症バリアフリーを推進し、認知症の人の社会参加やチャレンジを後押しする機運 を社会全体で高めるため、日本認知症官民協議会(行政のみならず経済団体、医療・ 福祉その他業界団体、自治体、学会等から約100団体が参画)にて、認知症の本人・ 家族の意見を踏まえつつ策定。⇒【令和7年度〜】 認知症の本人・家族の希望を踏まえ、関係省庁と連携して策定する「工程表」に基づき、幅広く、かつ、 個別の業界・業種ごとの手引きを作成予定。
○容態に応じた適時・適切な医療・介護等の提供→認知症ケアパス:認知症予防から人生の最終段階まで、認知症の容態に応じ、相談先や、いつ、 どこで、どのような医療・介護サービスを受ければいいのか、流れをあらかじめ標準的に示した もの。
○認知症の早期発見・早期介入・診断後支援の取組→• 認知症本人及び家族の視点を重視した、認知症の早期発見から診断後支援を含む早期介入までの一貫した支援モデルを構築し、 自治体における実証的な研究を推進する。 • 本事業に参加する自治体において、希望者が認知症診断のためのスクリーニング検査等を受け、診断後はかかりつけ医や認知症 疾患医療センター、地域包括支援センター等と協力し、本人・家族支援につなげる体制を構築するとともに、これを全国に普及 啓発するための手引きを作成する。また、認知症診断後のウェアラブル端末等の活用に係る実証的な研究を実施する。 • 認知症の兆候の早期発見後、地域における認知症の医療・介護システムの連携によるシームレスな支援が提供されるよう、早期 発見から早期介入までの一貫した支援モデルが確立されることにより、認知症になっても地域で安心して自分らしく暮らすことができる社会の実現に資することができる。
○認知症伴走型支援事業→・高齢者支援に関するニーズが多様化・複雑化する中で、本人に専門的な助言を行うとともに、家族の負担軽減により介護離職防止 にも資するような支援を行うことが重要。 ・このため、地域包括支援センターによる従来からの対応に加えて、認知症対応型グループホームなど地域の既存資源を活用して、 @本人の生きがいにつながるような支援や専門職ならではの日常生活上の工夫等の助言、 A家族の精神的・身体的負担軽減につながるような効果的な介護方法や介護に対する不安解消に係る助言 などを継続的に行う 『伴走型の支援拠点』を市町村が整備する事業を実施(令和3年度創設) ○ 令和5年度は、10箇所で実施⇒施策の概要、参照。
○認知症サポーターの養成→【認知症サポーター】 認知症に関する正しい知識と理解を持ち、地域や職域で認知症の人や家族に対して、できる範囲での手助けをする人 (2024年6月末実績 1,549万人)
○認知症総合支援事業:認知症地域支援推進員による支援など→・認知症初期集中支援推進事業⇒・「認知症初期集中支援チーム」を地域包括支援センター、認知症疾患医療センター等に配置し、認知症専門医の指導の下、保健師、介護福祉士等 の専門職が、認知症が疑われる人、認知症の人やその家族に対して、初期の支援を包括的・集中的に行い、自立生活のサポートを実施する。 ・認知症地域支援・ケア向上事業⇒認知症の人ができる限り住み慣れた地域で暮らし続けることができるよう、医療機関・介護サービス事業所や地域の支援機関の連携支援や、認知 症の人やその家族を支援する相談業務、地域において「生きがい」をもった生活を送れるよう社会活動参加のための体制整備等を行う「認知症地 域支援推進員」を配置する。(推進員の業務内容)(補助対象)参照。 ・認知症サポーター活動促進⇒・地域づくり推進事業 • 市町村がチームオレンジコーディネーターを配置し、地域の認知症の人や家族の支援ニーズと認知症サポーターを中心とした支援を繋ぐ仕組みと して「チームオレンジ」を整備し、その運営を支援する。
○認知症総合戦略推進事業:若年性認知症支援コーディネーターによる支援など大丸1 先駆的な取組の共有や、広域での連携体制の構築 (都道府県)大丸1 若年性認知症の人の状態やライフステージに応じた適切な支援 (都道府県、 指定都市)大丸1 認知症の人や家族が気軽に相談できる体制の構築、認知症の 理解の促進構築 (都道府県、指定都市) 大丸1 認知症本人のピア活動の促進 (都道府県、指定都市)大丸1 認知症伴走型支援拠点の整備の推進 (市町村)。
【実 績】若年性認知症支援コーディネーターは、全国で170人(令和6年11月時点)

○都道府県・市町村の認知症施策推進計画の策定支援事業→国民一人一人が自分ごととして認知症を理解し、認知症の人が希望を持って自分らしく暮らすことが出来るという考え方(「新しい 認知症観」)に基づき施策を推進するために、多くの自治体で、地域住民に対して「新しい認知症観」に関する普及啓発等を実施し、 認知症施策推進計画が策定されることを目的⇒施策の概要、施策のスキーム図、実施要件(対象、補助率等)等 参照。
○共生社会の実現を推進するための認知症基本法に基づく認知症施策のあり方に関する調査研究事業 〜令和6年度老人保健健康増進等事業〜→1. 都道府県・自治体向け 計画策定の手引きの作成 2. 基本計画の KPIの整理方法の検討。検討委員会委員名簿13名。参照。
○take-home message→認知症施策推進計画の策定に向けた取組のポイント⇒【計画策定】【本人参画】【住民の理解】【バリアフリー】【社会参加】【医療との連携】 参照。


◎【基調講演】自治体の認知症施策推進計画策定への期待
社会福祉法人浴風会 認知症介護研究・研修東京センター センター長  粟田 主一
1. 認知症基本法について

○認知症基本法の制定とそれに基づく政策づくりに向けた今日の動き→• 2023.6:「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」衆参両議院で可決・成立 • 2024.1: 同法施行
• 2024.12: 認知症施策推進基本計画が閣議決定  • 2024.11-2025.3:都道府県・市町村向け計画策定の手引きに関する検討(老健事業)

○共生社会の実現を推進するための認知症基本法 (2023年成立,2024年施行)
・ビジョン(1条)→認知症の人を含めた国民一人一人がその個性と能力を十分に発揮し、相互に人格と個性を尊重しつつ支え合いながら共生する活力ある社会(=共生社会)
・目的(1条)→認知症の人が尊厳を保持しつつ希望を持って暮らすことができるよう、認知症施策を総 合的かつ計画的に推進する
・定義(2条)アルツハイマー病等の疾患により日常生活に支障が生じる程度にまで認知機能が低下した状況
・基本理念 (3条) 「全ての認知症の人が、基本的人権を享有する個人として、自らの意思によって日常生 活及び社会生活を営むことができるようにすること」等、7項目
・責務 (4条〜8条) 国、地方公共団体、保健医療サービス・福祉サービス提供者、日常生活及び社会生活 を営む基盤となるサービス提供者(公共交通事業者,金融機関,小売業者など)、
・国民 認知症の日・月(9条)認知症の日=9月21日、認知症月間=9月
・法制上措置等(10条)法制上・財政上の措置・その他の措置を講じること
・基本計画 (11条〜13条) 認知症施策推進基本計画(義務)、都道府県認知症施策推進計画(努力義務)、市町村 認知症施策推進計画(努力義務)
・基本的政策 (14条〜25条)12項目の基本的政策→@〜K
・認知症施策推進本部等(26条〜37条)→設置(26条)、所掌事務(27条)、組織(28条)、認知症施策推進本部長(29条)、 認知症施策推進副本部長(30条)、認知症施策推進本部員(31条)、資料の 提出その他の協力(32条)、認知症施策推進関係者会議(33-34条)、事務 (35条)、主任の大臣(36条)、政令への委任(37条)、附則

○認知症施策推進大綱と認知症基本法はビジョンが異なります!→• 認知症施策推進大綱のビジョン⇒「認知症の発症を遅らせ,認知症になっても希望を持って日常生活を過ごせる社会(=個人)」 • 認知症基本法のビジョン: 「認知症の人を含めた国民一人一人がその個性と能力を十分 に発揮し,相互に人格と個性を尊重しつつ支え合いながら共生 する活力ある社会(=共生社会)
○これまでに「共生社会」という言葉はさまざまに定義されてきた!→・障害者基本法 (2011改正)・ニッポン一億総活躍プラン(2016閣議決定)・認知症基本法(2023成立)
○障害者基本法や認知症基本法に掲げられている 「共生社会」というビジョンの背景には,ノーマライ ゼーションという考え方がある.→• 北欧発祥の概念。障害がある人を排除することなく、障害がある人 もない人も同等に生活できる社会が正常な社会。 • 障害者には、あたりまえの、普通の生活をおくる権利があり、国家 にはそのような社会をつくる責務がある。 • バリアフリーはそのような社会をつくるための方法。
○2006年 国連の障害者権利条約→障害者の権利を実現するために各国が行うべきことを定めた条約⇒私たち抜きで、私たちのことを決めないで!
○権利ベースのアプローチ Rights-Based Approach, RBA→国際的な法体系の「基準」や「原則」を開発援助の「計画」や「過程」の中に取り入 れようとする考え方.その特徴は・・・@ ニーズが充足されていないことに注目するばかりではなく,ニーズが充足さ れていないことを権利が実現されない状況と捉え A その構造を徹底的に分析し B 権利保有者と責務履行者の関係にフォーカスをあて C 権利保有者が権利を行使できるように,責務履行者が責務を履行する能力 を発揮できるように,包括的な戦略を練り,開発援助の計画を進める 点にある.認知症の場合,権利保有者は認知症の当事者であり,責務履行者は 国家,地方公共団体,その他の関係するステークホルダーということになる.
○スコットランド認知症ワーキンググループ(2002)→Nothing about us without us!
○診断後支援の5本柱モデル→将来の意思決定に関する計画・病気の理解と症状のマネジメント・将来のケアの計画・地域とのつながり・ピアサポートの5つ。
○日本認知症ワーキンググループが発足 (2014年10月11日)
→「認知症になってからも希望と尊厳をもって暮らし続けることがで き,よりよく生きていける社会を創り出していくこと」
○認知症サミット日本後継イベント (2014年11月5日〜7日)→「空白の期間」に絶望してしまう人 が数多くいます。これは私のようにまだ年齢が若い人だけではなく、高齢になった人も同じです。「空白の期間」の解消は、これから認知症になる可能性のある、すべて の人にとって現実のものであり深刻かつ切実な問題です。
○本人ミーティング→認知症の本人が集い,本人同士が 主体となって,自らの体験や希望, 必要としていることを語り合い,自 分たちのこれからのよりよい暮らし, 暮らしやすい地域のあり方を一緒 に話し合う場
○2019年 認知症施策推進大綱 共生と予防を車の両輪として施策を推進すること!→全国版の希望大使、 地域版の希望大使の写真あり。
○認知症と向き合う「幸齢社会」実現会議 (2023年9月〜12月)
○認知症施策推進関係者会議 (2024年3月〜10月)
→関係者会議のメンバーである 3人の認知症当事者あり。

2. 認知症施策推進基本計画のポイント
○基本計画の構成
→前文、 I. 認知症施策推進基本計画について II. 基本的な方向性 III. 基本的施策 IV. 第1期基本計画中に達成すべき重点目標等 V. 推進体制等
○基本計画策定にあたって留意されたこと→• 基本的施策に関する各項目では,冒頭に,「施策の目標」を平易な言葉で“わかり やすく”記述し,その目標に向けて各自治体が柔軟かつ創造的に施策を展開できる ようにすること. • 「施策の目標」は,基本理念を踏まえ,「共生社会の実現」という大目標に収斂する ように記述すること. • 用語の使い方にも注意を払い,特に,従来使用されてきた用語であったとしても, 認知症の本人が違和感を覚える用語や表現については,細心の注意を払い,必要 に応じて修正を検討すること.
1. 認知症の人に関する国民の理解の増進等(14条)→【施策の目標】 共生社会の実現を推進するための基盤である基本的人権及びその尊重について の理解を推進する.そのうえで,「新しい認知症観」の普及が促進されるよう,認知症の人が発信することにより,国民一人一人が認知症に関する知識及び認 知症の人に関する理解を深めることを目標として,以下の施策を実施.⇒ (1)学校教育における認知症に関する知識及び認知症の人に関する理解を深める教育の推進. (2)社会教育における認知症に関する知識及び認知症の人に関する理解を深める教育の推進. (3)認知症の人に関する正しい理解を深めるための,本人発信を含めた運動の展開.
○「新しい認知症観」について→• 「新しい認知症観」の実感的理解が,共生社会の実現を推進するための基盤である. • 基本計画の前文に,「新しい認知症観」とは何か,ということをわかりやすい言葉で明確に記述しておく必要がある.
○「新しい認知症観」とは何か?→認知症になったら何もできなくなるの ではなく,認知症になってからも,一人一人が個人としてできる こと・やりたいことがあり,住み慣れた地域で仲間等とつながり ながら,希望をもって自分らしく暮らし続けることができるという 考え方である.⇒・認知症になったからと言って,私が私でなくなるわけではない. 私たちは,客体ではなく,主体として生きる人間である. (すべての人がそうであるように) 「人と人とのつながり」が, 希望と尊厳をもって生きるための源泉である. 認知症があっても,それがどんなに進行したとしても, そのことは決して失われない. ・認知症は人権の問題である.なぜなら,認知症と診断された人は,不平等,不正,社会的無視,排除を経験するリスク が高まるからである. ・すべての人間は,生まれながらにして自由であり,かつ, 尊厳および権利において平等である. 人間は,理性および良心を授けられており,たがいに同胞愛の精神をもって行動しなければならない.(世界人権宣言(1948年) 第1条)
○基本法第3条第1項→1. 全ての認知症の人が,基本的人権を享有する個 人として,自らの意思によって日常生活及び社会生 活を営むことができるようにすること.
2. 認知症の人の生活におけるバリアフリー化の増進(15条)→【施策の目標】 認知症の人の声を聞きながら,その日常生活や社会生活等を営む上で障壁とな るもの(ハード・ソフト両面にわたる社会的障壁)を除去することによって, 認知症の人が尊厳を保持しつつ希望をもって暮らせる社会環境を確保していく ことを目標として⇒(1)認知症の人が自立して,かつ,安心して暮らすための,地域における生活 支援体制の整備等 (2)移動のための交通手段の確保 (3)交通の安全の確保 (4)利用しやすい製品・サービスの開発・普及の促進 (5)事業者が認知症の人に適切に対応するために必要な指針の策定 (6)民間における自主的な取組の促進
○「バリアフリー」について 参照。
○地域の中の居場所づくり→参照。
○マンション管理員向けの手引き→参照。
○認知症フレンドリー社会の実現に向けたパートナーシップ形成→認知症バリアフリーの取り組みや認知症分野での イノベーション創出を官民一体となって進めることを 目的に,経済界,産業界,医療・介護業界,学会や 関係省庁など101団体が参加して創設。
○認知症フレンドリー社会の実現に向けた パートナーシップ形成への動き↓
• 高齢者の特性を踏まえたサービスのあり方検討会(東京都)↓

https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/kiban/shisaku/koureikentou/index.html • 認知症にやさしい異業種連携協議会(京都府)↓
http://www.pref.kyoto.jp/kourei-engo/181210.html
• 認知症フレンドリーシティプロジェクト(福岡市)↓
https://www.city.fukuoka.lg.jp/hofuku/dementia/health/00/04/ninchisyoufriendlycity/ninchisyoufriendlycity.html
○高齢者の認知機能の特性 に配慮したサービス提供 認知症になっても安心して暮らせる社会をつくるために ↓
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/kiban/shisaku/ko ureikentou/index.htm
○板橋区認知症フレンドリー協議会 (2023年11月2日〜)→参照。
3. 認知症の人の社会参加の機会の確保等(16条)→【施策の目標】 認知症の人が孤立することなく,必要な社会的支援につながるとともに,多様な社会 参加の機会を確保することによって,生きがいや希望をもって暮らすことができるよう にすることを目標として,以下の施策を実施する。 (1)認知症の人自らの経験等の共有機会の確保 (2)認知症の人の社会参加の機会の確保 (3)多様な主体の連携・協働の推進による若年性認知症の人等の就労に関する 事業主に対する啓発・普及等
○「社会参加」とは何か?→• 社会参加と対極を為す用語は,排除または孤立.認知機能障害のある人は平時より,必要な情報や社会的支援につながりにくく,さまざまな活動への参加や,自分自身に提供されるサービスの決定,自分自身に関わる施策づくりなどへの関与を阻まれやすい.このことは,本人の生きがいや希望の喪失につながるだけではなく,生存の危機を高める重大なリスクになることもある(例:災害時). •社会参加とは,社会から排除されることなく,社会の中で孤立させられることなく,社会を構成する大切な一員として,意味のある人と人とのつながり(社会的ネットワーク)が確保され,多様な活動に参加し,自らの生活に関わること(利用するサービスの決定,地域づくり,施策づくりなど)に関与していることを意味している. • それは,すべての国民が享有する市民としての権利,そのような権利を確保できる社会をつくることが国及び地方公共団体の責務.
○認知症とともに生きる本人の社会参加を促進する→本人ミーティングの定例会で。働く場をつくる、仲間らと活動する。写真あり。
4. 認知症の人の意思決定の支援及び権利利益の保護(17条)→【施策の目標】 認知症の人が,基本的人権を享有する個人として,自らの意思によって日常生活及 び社会生活を営むことができるように,認知症の人への意思決定の適切な支援と権 利利益の保護を図ることを目標として,以下の施策を実施する. (1)認知症の人の意思決定支援に関する指針の策定 (2)認知症の人に対するわかりやすい形での意思決定支援等に関する情報提供 の促進 (3)消費生活における被害を防止するための啓発 (4)その他(虐待防止の推進,成年後見制度の見直し等)
○「意思決定支援及び権利利益の保護」について→•「認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン」が策定されているが,保健医療福祉の現場ではそれが実践されるような教育は十分になされていない.支援される当事者にもそのことがわかりやすい形で伝わっていない. • 近年,繰り返し報道されているように,認知症高齢者を標的とする特殊詐欺や強引な訪問販売等の不適切な取引の被害がクローズアップされている.実態調査を踏まえて具体的な対策を講じる必要がある. • 軽度の認知機能障害では,日常的金銭管理に支障が見られやすく,独居の場合はそれが地域生活の継続を阻む要因になりやすい.今日の公的な権利擁護支援制度(日常生活自立支援事業,成年後見制度)は,軽度の認知機能障害がある人の日常的金銭管理支援のサービスとしては使い勝手が悪い.軽度の認知機能障害をもつ一人暮らしの高齢者にとって使い勝手のよい新たな権利擁護支援サービ スをつくりだすことは喫緊の課題.
○性・年齢階級別に見た認知機能低下のある単身世帯高齢者数の将来推計(認知機能低下=MCIまたは認知症)→男性も女性も85歳以上が圧倒的に多い。
○令和5年度「高齢者虐待の防止,高齢者の養護者に対する支援等に 関する法律」に基づく対応状況等に関する調査結果(厚生労働省)→令和5年養介護施設従事者等による 高齢者虐待判断事例における被虐待者の92%が認知症高齢者(認知症jの日常生活自立度U以上)、令和5年養介護者による高齢者虐待 判断事例における被虐待者の73% が認知症高齢者(認知症jの日 常生活自立度U以上)
○過去1年間の独居認知症高齢者に対する強引な訪問販売やリフォーム詐欺の経験 (東京都内の居宅介護支援専門員が勤務する事業所:N=3,711; 回答数=1,294,回答率=35%)→実際に被害があった事例の経験の有無、被害を回避できた事例の経験の有無 参照。
○過去1年間の独居認知症高齢者に対する特殊詐欺の経験 (東京都内の居宅介護支援専門員が勤務する事業所:N=3,711; 回答数=1,294, 回答率=35%)→実際に被害があった事例の経験の有無、被害を回避できた事例の経験の有無 参照。
5. 保健医療サービス及び福祉サービスの提供体制の整備等(18条)→【施策の目標】 認知症の人が、居住する地域に関わらず、自らの意向が十分に尊重され、望む場で 質の高い保健医療及び福祉サービスを適時にかつ切れ目なく利用できるように、地 域の実情に応じたサービス提供体制と連携体制を整備し、人材育成を進めることを 目標として、以下の施策を実施する。 (1)専門的又は良質かつ適切な医療提供体制の整備 (2)保健医療福祉の有機的な連携の確保 (3)人材の確保、養成、資質向上
○「保健医療サービス及び福祉サービスの提供体制の整備」について→•2次医療圏や市町村を単位にして,認知症疾患医療センター,認知症サポート医,かかりつけ医,地域包括支援センター,居宅介護支援及び介護保険サービス事業所等との連携による認知症の医療・介護連携体制が整備されているが,実際には,地域の人口規模や 現存する社会資源の状況等によって,それぞれの地域の実情に応じたサービス提供体制を創り出していかなければならない状況. •認知症であるということを理由に併存する身体疾患や精神疾患に対する適切な医療が受けられない場合があることや,本人不在でサービスの利用が決定されたり,医療・介護の現場での虐待が行われることがあるなど,権利侵害の問題に着目し,国及び地方公共団 体の責務としてその構造を変化させる必要がある. •認知症の本人や家族の声を起点にして,「相談支援」と「地域づくり」の要の役割を果たす認知症地域支援推進員や若年性認知症支援コーディネーター等の機能を強化していく必要がある.
○地域における認知症医療介護の連携体制→参照。
○認知症疾患医療センターで診断される認知症関連疾患の診断名別割合→参照。
○認知症関連疾患の診断名別割合→参照。
○抗Aβ抗体薬の最適使用推進ガイドライン→参照

○診断後支援とは何か?→診断後支援とは、認知症と診断された後の認知症の本人と家族の身体 的・社会的・心理的なウエルビーイングの促進を目的とする、さまざまな 公的及び非公的なサービスや情報を網羅する包括的な用語である。
○地域に暮らす認知症高齢者で認知症疾患が診断されているのは約3割であり, 独居である場合にはさらに認知症疾患の診断率が低下する. (認知症の状態にある高齢者:N=76, 世帯類型欠損値:N=2)→認知症疾患が診断されているか、訪問調査員(看護師)のメモ参照。
○コーディネーションとネットワーキング→個人レベルの社会的ネットワークと地域レベルの社会的ネットワーク。
○社会的孤立→• 社会的孤立とは,社会的支援の利用を可能とする 個人レベルの社会 的ネットワークが欠如しているということ. • その背景には,しばしば地域レベルの社会的ネットワーク に構造的な 欠陥がある(例:排除の構造をつくりだしていることすらある)
6. 相談体制の整備等(19条)→【施策の目標】 認知症の人や家族等が必要な社会的支援につながれるように、相談体制を整備し、 地域づくりを推進していくことを目標として、以下の施策を実施する。 (1)個々の認知症の人の状況又は家族等の状況にそれぞれ配慮しつつ総合的に 応ずることができるようにするための体制の整備 (2)認知症の人又は家族等が互いに支え合うための相談・交流の活動に対する 支援、関係機関の紹介、その他の必要な情報の提供及び助言
○「相談体制の整備」について→• 認知症初期集中支援チームはそのような「相談支援」を起点にして, ネットワーク をつくりだす多職種協働チームである.• 一方,企業も労働安全衛生の一環で「相談支援」の機能をになっている.さらに,本 人ミーティング,ピアサポート,家族会,認知症カフェ,サロン,通いの場などもイン フォーマルな「相談支援」機能をもち,それと連動しながら“交流の場”という社会資 源をつくりだしている. • このようなさまざまな「相談支援」の機能を強化するとともに,そのような「相談支 援」へのアクセシビリティを高め,かつ,継続的にパーソナルな社会的ネットワーク の構築を可能にする「地域づくり」を進めていく必要がある. • 認知症地域支援推進員とは,認知症の本人や家族の声を起点にして市町村の認 知症施策を推進する役割を担う人であり,このような「相談支援」と「地域づくり」の 要としての役割を果たすことが期待されている.
○住宅地の空き店舗を利用してつくられた地域の居場所とインフォーマルな相談の場→参照のこと。
7. 研究等の推進等(20条)→【施策の目標】 共生社会の実現に資する認知症の研究を推進し、認知症の人をはじめとする国民が その成果を享受できるようにすることを目標として、以下の施策を実施する。 (1)予防・診断・治療、リハビリテーション・介護方法等の研究の推進・成果 の普及 (2)社会参加のあり方、共生のための社会環境整備その他の調査研究、検証、 成果の活用 (3)官民連携、全国規模調査の推進、治験実施の環境整備、認知症の人及び家 族等の参加促進、成果実用化環境整備、情報の蓄積・管理・活用の基盤整 備
○「研究の推進」についてフロッピー2 共生社会の実現に資する認知症研究の領域は広範である. フロッピー2 基本法第20条には,「認知症の本態解明,認知症及び軽度の認知機能障害に係 る予防,診断及び治療並びにリハビリテーション及び介護方法,認知症の人が尊 厳を保持しつつ希望を持って暮らすための社会参加の在り方,認知症の人が他の 人々と支え合いながら共生することができる社会環境の整備等に関する研究と, そのための基盤構築を進めること」と記されている. フロッピー2 これに加えて,地方公共団体では,その地域の実情に応じて,地域が直面してい る課題の把握とその解決に向けた調査研究を行うことが推奨されよう.
8. 認知症の予防等(21条)→【施策の目標】 認知症の人を含むすべての国民が、その人の希望に応じて、「新しい認知症観」に 立った科学的知見に基づく予防に取り組むことができるようにすること、また、認知症 及び軽度の認知機能障害がある人が、どこに暮らしていても早期に必要な対応につ ながることができるようにすることを目標として、以下の施策を実施する。 (1)予防に関する啓発・知識の普及・地域活動の推進・情報収集 (2)地域包括支援センター、医療機関、民間団体等の連携協力体制の整備、認 知症及び軽度の認知機能の障害に関する情報提供
○「認知症の予防」について→・「予防」という用語については大綱においても慎重な説明がなされてきたが,それ は,過去の歴史において「古い認知症観」に基づく「認知症予防」キャンペーンが認 知症の人に対する偏見・差別を助長し,分断を深め,権利侵害を促進してきたとい う経緯があるからである. ・WHOのガイドラインにおいても「認知症予防」という用語は使用されず,「認知症の リスク低減」という用語が使用されている.また,WHOの「認知症の公衆衛生対策 に関する世界的アクションプラン」では,認知症の修正可能なリスクファクターの多 くは高齢者の非感染性疾患のそれと共通であることから,リスク低減の活動はプラ イマリ・ヘルス・ケアの文脈で行うべきであるとされている. ・「新しい認知症観」に立った「認知症予防」は,認知症の有無に関わらずすべての 人が参加できる健康づくり(リスク低減)として実践されるべきであろう.そこでは 「認知症予防」という用語よりも,尊厳ある自立生活を促進するための「健康づくり」 や「備え」という用語の方が適切かもしれない.
○プライマリ・ヘルス・ケア(PHC)→• 1978年にWHOとユニセフが共催で開催した国際会議(143か国/67機関が参加)で採択さ れた「アルマ・アタ宣言」において,「21世紀までにすべての人に健康を」(Health for All)という世界共通の目標を掲げられ,健康が基本的人権であることを明言.この目標を達成するための理念・戦略・方法として提唱されたもの. • PHCは,国家保健システムと個人・家族・地域社会とが最初に接するレベルにあり,人々が生活する場所や労働する場所に近接して,以下の5原則を踏まえて保健サービスを提供すること:@住民ニーズに基づくこと,A地域資源の有効活用,B住民参加,C多分野協働,D適正技術の使用。  • SDGsの目標3「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ:普遍的医療保障」=”人権としての保健・医療”という意味でのPHCの理念の達成を示す.認知症や障害とともに生きる人,途上国住民,在日外国人,ホームレス等,社会的差別に遭遇しやすい人々の生命と健康を保障するという観点からもPHCの重要性が指摘されている.

3. 重点目標とKPIの考え方
○「重点目標と関連指標(KPI)」を設定するにあたって→• 「重点目標」は「共生社会の実現の推進」という大目標に収斂するものとして妥当 なものであり,かつ理解しやすいものでなければならない. • 「関連指標(KPI)」が設定されると,その外形的な達成が地方公共団体の認知症 施策の目的とされてしまい,地方自治を抑制してしまったり,「共生社会の実現の 推進」という大目標が忘れ去られたりする危険がある.このことを十分に考慮し, 設定にあたっては慎重を期し,その数は限定すべきである. • KPIは,@「重点目標」とリンクしていること,A基本的施策に紐づけることができる こと,B誰もが大切なことだと納得できること,Cわかりやすいこと,D測定可能で あること,が重要である.
○4つの重点目標について→1. 国民一人一人が「新しい認知症観」を理解していること 2. 認知症の人の生活においてその意思等が尊重されていること 3. 認知症の人・家族等が他の人々と支え合いながら地域で安心して暮らすことができること 4. 国民が認知症に関する新たな知見や技術を活用できること
○重点目標と基本的施策との関係   参照のこと。
○関連指標(KPI)の基本的な考え方→@プロセス指標:認知症施策の立案・実施・評価におけるプロセスを把握する指標 Aアウトプット指標:重点目標に資する認知症施策の実施状況を把握する指標 Bアウトカム指標 :認知症の人や家族等,国民の認識を確認することによって,共生 社会の実現状況を把握する指標
○重点目標1:国民一人一人が「新しい認知症観」を理解していること→:「認知症の人と出会い」,「当事者活動の支援」,「普及啓発活動への当事者参画」というプロセ スを通して,「本人発信支援」,「認知症サポーター養成」,「チームオレンジの設置」の実施というアウトプッ トが出されることによって,「認知症や認知症の人に関する国民の理解」と「『新しい認知症観』の理解とそ れに基づく振る舞い」の普及というアウトカムが達成される.
○重点目標2:認知症の人の生活においてその意思等が尊重されていること→:「ピアサポート活動の支援」,「行政職員の本人ミーティングへの参加」,「意思決定支援の研修」 というプロセスを通して「認知症施策に認知症の本人と家族の意見を反映させる」の実践というアウトプットが出されることによって,「認知症の人の意思が尊重され,本人が望む生活が継続できていると考える認 知症の人及び国民が増える」というアウトカムが達成される.
○重点目標3:認知症の人・家族等が他の人々支え合いながら地域で安心して暮らすことができること→:「部署横断的認知症施策の検討」,「本人・家族等が参加した計画策定」,「KPIの設定」,「専門職研修」というプロセスを通して,「相談支援を 実施している認知症地域支援推進員・若年性認知症支援コーディネーターの設置」,「認知症バリアフリー宣言を行っている事業者」,「製品・サービス開 発への当事者参画」,「認知症ケアパスの作成・更新・周知」,「認知症疾患医療センターでの診断確保」の実施というアウトプットが出されることによって, 「自分の思いを伝えられると認知症の人が感じること」,「役割を果たしていると認知症の人が感じること」,「認知症の人が自分らしく暮らせると認知症の 本人及び国民が感じること」,「希望に沿ったサービスを受けていると認知症の本にんが考えること」というというアウトカムが達成される.
○重点目標4: 国民が認知症に関する新たな知見や技術を活用できること→「認知症の本人・家族の意見を研究計画に反映させる」というプロセスを通して,「当事者の意見を反 映させた研究」の実施というアウトプットが出されることによって,「認知症に関する研究事業の成果の社会実装 化」というアウトカムが達成される.

4. 自治体の認知症施策推進計画策定への期待
○自治体の認知症施策推進計画の策定に期待されること
→1. 「共生社会」という共通ビジョンの下で,自治体の多様な事業がよ り統合的・分野横断的に稼働できるようになること. 2. 「新しい認知症観」の普及を通して,「認知症とともに生きる人々の 人権の確保が『共生社会』の基盤である」という認識が広まること. 3. 「人権が実現していない状況を把握し,その構造を分析して変え ていくこと」が政策の目標であることが認識され,認知症施策推進 計画に反映されること.
○地域支援事業の変遷→<2005改正><2011改正><2014改正>まで。
○認知症総合支援事業→• 認知症初期集中支援推進事業 認知症になっても本人の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域のよい環境で暮らし続 けられるよう、認知症の人やその家族に早期に関わる認知症初期集中支援チームを配置し、 早期診断・早期対応に向けた支援体制を構築する。 • 認知症地域支援ケア向上事業 地域の支援機関の間の連携を図るための支援、認知症の人やその家族を支援する相談業 務、地域において「生きがい」をもった生活を送れるよう社会参加活動のための体制整備等を 行う認知症地域支援推進員を配置し、医療・介護等の連携強化等による地域における支援体 制の構築と認知症ケアの向上を図る。 • 認知症サポーター活動促進事業 認知症の人やその家族の支援ニーズと認知症サポーターを中心とした支援を繋ぐ仕組みを 地域ごとに整備することを目的にチームオレンジコーディネーターを配置し、チームオレンジの 支援・運営の助言を行う。
○市町村において共生社会の実現に必要とされていることは何か→相談支援 個別支援、地域づくり、政策の デザイン⇒⇒認知症や障害とともに生きる人を含むすべての人が, 基本的人権を享有する個人として認識され, 相互に人格と個性が尊重され,支え合うことができる, 活力ある共生社会という共通ビジョンの実現をめざして, 当事者とともに, 分野横断的に, それぞれの地域の特性に応じて, さまざまな関係機関・組織・住民が協働して, 既存の事業が統合的・一体的に稼働できるように 事業全体を再構築していくことが求められる.

次回も続き「【事例共有:北海道庁】北海道の認知症施策 について」からです。

第177回市町村セミナー 資料 [2025年02月12日(Wed)]
第177回市町村セミナー 資料(令和7年1月17日)
一般用医薬品の濫用の現状と拡大防止の取組について
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_49072.html
◎資料1行政説明1濫用等のおそれのある医薬品の販売について
厚生労働省 医薬局 総務課 亀井 健太郎

○濫用等のおそれのある医薬品について→濫用等のおそれのある医薬品に係る規制の導入⇒平成26年に規定定された。
○一般用医薬品のリスク分類→分類⇒第1類医薬品 第2類医薬品 第3類医薬品 参照。
○濫用等のおそれのある医薬品の取扱い→《平成26年厚生労働省告示第252号》 参照。
○濫用等のおそれのある医薬品の取扱いA→具体的には、@〜➃の事項を確認し、適正と判断した場合に限り販売等すること。
○一般用医薬品による救急搬送事例調査→一般用医薬品(第1類、第2類)のインターネット販売を可能とするとともに、指定薬物の所持・使用等を禁止する等の見直しを行った 改正薬事法の施行(平成26年(2014年))以降、一般用医薬品による搬送事例に増加傾向がある旨の報告がされている。
○青少年による一般用医薬品の濫用→改正薬事法の施行(平成26年(2014年))以降、精神科で治療を受けた10代患者において、市販薬を「主たる薬物」とする患者の割合が 増加している。 (2014年 0% → 2016年 25.0% → 2018年 41.2% → 2020年 56.4%)
○一般用医薬品の過量摂取事例について(日本中毒情報センターへの相談事例)→若年者、女性による一般用医薬品の過量摂取に関する相談事例は増加傾向
○救急医療における薬物関連中毒症例に関する実態調査→市販の薬物による救急搬送事例について若年者、女性の事例が多い。
○「濫用等のおそれのある医薬品」の依存症患者調査と販売実態調査→薬局、店舗販売業を対象とした調査において、頻回購入や複数個購入に遭遇した経験があるとする報告が多かった製品⇒・頻回購入(経験あり:784件)  ・複数個購入(経験あり:689件)
・「一般用医薬品の適正使用の一層の推進に向けた依存性の実態把握と適切な販売のための研究」⇒・一般用医薬品による依存が疑われる症例の特徴。・一般用医薬品の販売に関する実態把握調査  参照。
○医薬品の過剰摂取が原因と疑われる救急搬送人員の調査結果→20代、次に10台多い。
※調査概要 参照。
○濫用等のおそれのある医薬品の包装単位について→濫用等のおそれのある医薬品の販売において、原則1包装単位を超える場合は購入理由の確認が必要となるところ、 1包装の量には差異がある。
○濫用等のおそれのある医薬品のネット販売の流れ(一例)→・若年者かどうか確認できていない場合がある(虚偽申告を確認することができない) ・適正な使用目的かどうか確認できていない場合がある(「適正使用」が何を意味するか理解できるか?) ・他店での購入状況を確認できていない場合がある(「他の濫用等のおそれのある医薬品」を理解できるか?) ・個々の確認事項を適切に確認できていない場合がある (「1つでも該当しないと購入できない」と明示されている状況で個々の確認事項まで消費者が確認するか?) ・患者の身体の状況や病状、様子がまったくわからない
○濫用等のおそれのある医薬品を複数個購入しようとした時の対応状況→販売方法が適切であった店舗の割合⇒店舗よりもインターネット注文の方が多い。
○濫用等のおそれのある一般用医薬品の適正使用に向けた取組み→厚生労働省が毎年実施している「医薬品販売制度実態把握調査」において、濫用等のお それのある医薬品を複数購入しようとした場合の対応が適切でなかった店舗等があったことか ら、適正な販売が行われるよう呼びかけてきたところ。1.適正使用のための情報提供等について 参照。
○厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会とりまとめ 概要@→令和元年改正医薬品医療機器等法の検討規定に基づき、改正法の施行状況を踏まえた更なる制度改善に加え、人口構造の変化や技術革新等によ り新たに求められる対応を実現する観点から、令和6年4月以降、関係業界へのヒアリングを含め計10回にわたり検討を行い、令和7年1月10日にと りまとめを公表。⇒具体的な方策 参照。
○厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会とりまとめ 概要B→5. 医薬品の販売区分及び販売方法の見直し⇒B 濫用等のおそれのある医薬品の販売方法の厳格化 参照。

○ご静聴ありがとうございました↓
●医薬品の販売制度に関する情報 ↓
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000082514.html
厚生労働省から発出された薬局・薬剤師に関する法令・通知等の情報が入手できます。
●おくすりe情報 http://www.mhlw.go.jp/bunya/iyakuhin/okusuri/index.html
普及啓発、法令検索、統計、最近の話題、薬剤師・薬学教育等の情報が入手できます。
●医薬品医療機器情報配信サービス(PMDAメディナビ)↓
http://www.pmda.go.jp/safety/info-services/medi-navi/0007.html
無料登録で、医薬品・医療機器の安全性情報、医薬品の承認情報がタイムリーにメールで配信されます。


◎資料2行政説明2「行政における市販薬乱用に対する取組について」
厚生労働省 医薬局 医薬安全対策課 大泉 博文
○医薬安全対策課について→厚生労働省組織図での位置関係あり。
1.濫用等のおそれのある医薬品について↓
○濫用等のおそれのある医薬品の取扱い
→濫用等のおそれのある医薬品⇒エフェドリン コデイン ジヒドロコデイン ブロモバレリル尿素 プソイドエフェドリン メチルエフェドリン。
《医薬品医療機器等法施行規則》
(濫用等のおそれのある医薬品の販売等)
→第十五条の二 薬局開設者は、薬局製造販売医薬品又は一般用医薬品のうち、濫用等のおそれがあるものとして厚生労働大臣が指定するもの(以下「濫用等のおそれのある医薬品」)を販売し、又は授与するときは、次に掲げる方法により行わなければならない。
一 当該薬局において医薬品の販売又は授与に従事する薬剤師又は登録販売者に、次に掲げる事項
を確認させること。 イ 当該医薬品を購入し、又は譲り受けようとする者が若年者である場合に
あつては、当該者の氏名及び年齢 ロ 当該医薬品を購入し、又は譲り受けようとする者及び当該
医薬品を使用しようとする者の他の薬局開設者、店 舗販売業者又は配置販売業者からの当該医
薬品及び当該医薬品以外の濫用等のおそれのある医薬品の購入又は譲 受けの状況 ハ 当該医薬品
を購入し、又は譲り受けようとする者が、適正な使用のために必要と認められる数量を超えて当
該 医薬品を購入し、又は譲り受けようとする場合は、その理由 ニ その他当該医薬品の適正な使
用を目的とする購入又は譲受けであることを確認するために必要な事項
二 当該薬局において医薬品の販売又は授与に従事する薬剤師又は登録販売者に、前号の規定により
確認した事項を 勘案し、適正な使用のために必要と認められる数量に限り、販売し、又は授与さ
せること。

○業界自主規制から省令での規制まで→・鎮咳去痰薬については、約40年ほど前から不適正な使用について報告があり、通知にて行政指導していた。 ・一般用医薬品を原料とした覚せい剤の密造防止の観点での行政指導もしていた。
○一般用医薬品の乱用による薬物依存の実態について→・総合感冒薬による依存症例が報告された。 ・一般用医薬品の「入手しやすさ」や「合法性」が、高い再使用率につながっていると考察されている。
○一般用医薬品による救急搬送事例調査→一般用医薬品(第1類、第2類)のインターネット販売を可能とするとともに、指定薬物の所持・使用等を禁止する等の見直しを行った 改正薬事法の施行(平成26年以降、一般用医薬品による搬送事例に増加傾向がある旨の報告がされている。⇒一般用医薬品による救急搬送事例調査(藤田医科大学)  参照。
○濫用等のおそれのある医薬品の改正について→1.濫用等のおそれのある医薬品の指定について  参照。
○規制成分追加について→現行では6成分が指定されているが、他成分でも乱用されているとの報告がある。⇒全国の精神科医療施設における薬物関連精神疾患の実態調査から。

2. 市販薬乱用に特化した資材の作成について
○これまでの薬物乱用対策資材
→・大麻、覚せい剤などの違法薬物が中心。 ・「ダメ。ゼッタイ。」といった使用の禁止を促す強い文言。
○直近の薬物乱用の現状→・若年者による薬物乱用の中心は違法薬物から市販薬へ。 ・市販薬は正しく使用すれば症状改善等に有効であり、一律に使用を禁止するべきものではない。医薬品のリテラ シー向上も必要。
・若年者の乱用実態を踏まえて、市販薬に特化した啓発資材が必要
○施策名:学校薬剤師・地区薬剤師を活用したOTC乱用防止対策事業 あり。 参照。

3. 周知・啓発活動について
○一般用医薬品(市販薬)の使い方
→・政府インターネットテレビで「医薬品の正しい使い方」に関する動画を公開しており、その 中で市販薬の濫用に関する注意喚起を実施している。https://nettv.gov-online.go.jp/prg/prg24649.html (令和4年7月1日より公開)
○一般用医薬品の乱用ホームページの作成↓
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/index_00010.html
・ホームページ上では、相談窓口も紹介している。 参照。
○広報誌「厚生労働」を用いた周知活動→・厚生労働省の広報誌「厚生労働」にて「薬の適正使用」について記事を掲載。 ・厚生労働省のホームページからも記事の内容は確認可能。
○政府広報を用いた周知活動→・政府広報ラジオ番組「杉浦太陽・村上佳菜子 日曜まなびより」にて放送。 ・その他様々な媒体にて、啓発活動を実施予定。
○ご清聴ありがとうございました ↓
昨日より今日、今日より明日、 より安全・安心な医薬品を目指し


◎資料3基調講演1生きづらさを抱えた若年女性の現状
特定非営利活動法人BONDプロジェクト
≪BONDプロジェクト活動紹介  
10代20代の生きづらさを抱える女の子のための女性による支援≫
○2006年「VOICES MAGAZINE」始動、2009年NPO設立
・聴く
→ありのままの声を聴き表現できる場を作る。 LINE、メール、電話、面談、出張面談 ネットパトロール、街頭パトロール、アンケート実態調査で。
・伝える→女の子の声を知ってもらう。フリーペーパー 「VOICES MAGAZINE」発行、webサイト「 VOICES」運営 講演会・啓発活動、渋谷のラジオパーソナリテイ「渋谷の漂流少女たち」 10代20代女性を対象としたイベントで。
・繋げる→一人ひとりに見合った支援・大人に繋ぐ。全国の支援団体・公的機関等と連携して相談者を支援に繋ぐ 一時保護、同行支援、中長期保護、自立生活支援 昼間の居場所「MELT」の運営

○BONDプロジェクトの支援の流れ→<ネットの繋がりからリアルな繋がりへ>⇒・・・・
・・「BONDの家」にて中長期保護 (自立生活支援) ・シェルター ・シェアハウス                      

○傾向と問題意識→・低年齢化、小中学生にも広がっている ・ODが関わる事件(誘拐、性的暴行、死亡等) ・トー横やグリ下の問題 子供達を搾取する大人の存在 ・SNSにOD関連の投稿が溢れている ODレポートやSNS上での情報交換、どれだけ飲んだかを競い合う投稿 ・ネットに居場所を求めており、仲間意識からODをする子 ODしていないと仲間外れにされる等 ・錠剤が飲みにくいと砕いて飲み物に混ぜて飲んでいる ・安易に処方してもらえる病院を巡って薬を入手している ・まとめて多量に処方され、処方薬をODしている
○薬物乱用から守るために↓
・購入時の規制で抑止効果があると思われる対策→・一度に買える数の上限を設ける ・立て続けに同じ薬や濫用に使用される薬を購入した場合、アカウント停止 ・交通系ICのIDや顔認証などを利用した繰り返し購入できない仕組み、 他店舗での購入履歴もわかるもの ・薬剤師、店舗スタッフによる声掛け
・病院巡りの対策を→・医療機関間でも処方の履歴を共有するなど多量処方防止の対策を。 ・簡単に処方してもらえる病院の情報が共有されていることもある。
・各支援機関との連携体制の構築を ・医療、福祉、警察、民間支援団体等 ・規制だけではこぼれ落ちてしまう層への対策
⇒⇒子どもたちを巻き込んでいく大人への対策を

○依存症の対策を同時に→ODがやめられない女の子と支える家族の声↓
・ODがとにかくやめられず、本人も家族も悩んでいる。 薬を飲んでいないときは穏やかに話もできるが、薬を飲むと暴れてしまったり、トラブルに巻き込まれる。 ・依存症専門の病院に繋がることのハードルの高さがある。 精神科に20回以上入院していても繋いでもらうことができない。 ・役所や精神保健センターでは病院の紹介をされるだけで、実際に繋いでもらうことができない。 ・ODを繰り返したり、薬物への依存があるため、受け入れ先がなくなる。 グループホームや施設から「うちでは無理です」と言われ、居場所や暮らす場所を失うことにもなる。 ・「市販薬の薬物依存」について相談でき、支援を受けられる場があると良い。 違法薬物をやってる人たちとの繋がりができてしまう怖さがある。


◎資料4基調講演
新宿・歌舞伎町に集まる “トー横キッズ”のODの現状 新宿・歌舞伎町 日本駆け込み寺の活動について  公益社団法人 日本駆け込み寺 事務局長 田中芳秀
≪「公益社団法⼈ ⽇本駆け込み寺」とは≫
→新宿・歌舞伎町で24年間、 5万件以上のあらゆる問題を解決してきた。⇒・ 2002年、玄秀盛(代表理事)が、新宿・歌舞伎町で開設。 あらゆる悩みやトラブルを解決するために開設した。 「たった⼀⼈のあなたを救う」をモットーに23年以上活動 している。 ・ 近年では、悪質ホスト問題、闇バイト、歌舞伎町でさまよう若年者の相談、⽀援をする中で、若年者の⼀般用医薬品らん用が進んでいる。(歌舞伎町アウトリーチ、こども⾷堂)。 ・これまでの23年間の活動の中で、覚醒剤、⼤⿇などの違法 ドラッグなどの相談を受けることも増加。増加した⼀般用 医薬品らん用の相談にも対応している。

≪最近の取り組みについて≫
○新宿・歌舞伎町での活動
→• 4年前からこども⾷堂を開始。現在、毎週土曜日13時から18時。 • 毎回30名前後が来所。近隣に住む親子も来所する • 毎日2回(15時、18時)、歌舞伎町⼀帯の清掃活動 • 午後から未成年限定の居場所づくり • 東京都“きみまも”との連携 • 相談事業。
○深夜食堂を開始→ • 昨年8月から、毎週木〜土曜日の22時から24時で、「深夜⾷堂」を開始。 • ⾷事づくりは、元路上売春をしていた女性を中心に、ボランティアとともに調理。毎回30名以上が来所する。 • ⼤久保公園周辺で路上売春している女性たちや“トー横“の女性たちが来所する • スマホ充電やトイレなどの提供もしている。
○相談対応 若年層からの相談者の声 (一部)→・男性から恋愛感情を利用して売春を強要されている(20歳女性) ・⼈間関係が理由でODが辞められない(20代女性) ・親のDVで居場所がない(10代女性) ・ 精神病院に入れられるから嫌だ(10代女性) ・ 捜索願が出ているどうしたらいいか(10代女性) 親・保護者からの相談者の声 (一部) ・ 娘が不登校になって、家出を繰り返す(40代女性) ・ メンコンやホストに出入りしている(40代男性) ・ SNSで写っていた娘を探してほしい(40代男性・女性)。

≪一般用医薬品のらん用について≫
○一般用医薬品らん用者の特徴
→• 10代〜20代(特に中高生)が多い(一般用医薬品のらん用は特に) • 女性が大半である • らん用は10代から開始する⼈が多い • 繁華街に来て覚えるパターンもあるが、多くは地元(地方)ですでに経験 済みの場合が多い。
○一般用医薬品らん用の動機→ 一般用医薬品らん用は意図的なものである • 友達がやっているから。仲間外れになりたくない。 • ファッション感覚で行う。オシャレなイメージがある。 • 犯罪行為ではない • 気軽に簡単に入手できる • 多幸感を味わいたい。楽しい気持ちになりたい。現実逃避したい。 • 身体的外傷がない。 • 興味本位(SNSなどでODの投稿を見て興味を持った)

○一般用医薬品の入手経路
(購⼊経路は、実店舗での購⼊割合が多い)
→ • 歌舞伎町に訪れている若年者の多くは、歌 舞伎町内のディスカウントストアで市販薬 を購入している。しかし、購入数量の制限 がある場合は友⼈らに代理購入を依頼する 者もいる。また、渋⾕、池袋など近隣の地 域へも購入のために⾜を運ぶこともある。 何よりすぐに入手できるため実店舗での購 入割合が多い。 • 常習的に⼀般用医薬品らん用を行っており、 そのための市販薬を常備しているような若 年者はネット通販を利用して⼤量の市販薬 を⼀度に購入している。⼀部では⼀般用医 薬品の転売をしている者もいる。
(違法な⼊手方法も多い)→ ・万引き  ・ネット売買、SNS  ・生活保護受給者から処方薬を購入  ・売春の対価としてもらう  ・路上売買  など
○一般用医薬品らん用に使用される主な薬→一般用医薬品、処方薬 参照。
地方で一般用医薬品でODしたり、 上京して歌舞伎町で処方薬でODする⼈が多い。
「OD(overdose)」とは「オーバードーズ」→医薬品を、決められた量を超えてたくさん飲んでしまうことを指して、「オーバードーズ」
○一般用医薬品らん用の方法→ • それぞれの薬で効果や現れる現象に差があるため、気分に よって種類を変えたりする。 • また、複数の薬を混ぜ合わせることで効果の違いを比した りしている。⼀部では薬について勉強している者もおり、 成分を確認して自分に効果のあるものを選択する。 • 友⼈からのODの相談に乗り薬の紹介をしている者もいる。 • 誰でも出入り可能なホテルにたむろしてODしている者が多 い。このような場所は医薬品の売春や自殺(飛び降り自 殺)とも深く関係。 • ⼈目のつかない路上でODしている者もいる。
○⾝体的特徴が表れないため⾒抜くことが困難→ • ⼀般用医薬品らん用をしても、身体的な特徴や外傷がない ためらん用者を見抜くことが困難である。 • 身体的特徴や外傷が無いことから販売者もらん用目的の購 入なのかの判断が難しい。 • また、若年者も気軽にらん用をすることができる。この気 軽さが⼀般用医薬品らん用者が増加している理由の⼀つで ある。

○一般用医薬品らん用者のインタビュー
(ODしたくなる時はどんな時?)
→・ バットに入った時。 ・ 気分が落ち込んだ時。 ・ 気分を変えたい時。 ・ 寂しい時。 ・ みんながしている時、⾃分も一緒にしたくなる。
(ODは一⼈で⾏うの?)→ ・一⼈でする時もあるけど、みんなで一緒にすることが多い。みんなで一緒 にODすることが楽しい。みんなでODしてカラオケに⾏くパキカラが楽し い。 ・ ホテルでみんな集まって飲むと安⼼する。仲間意識が強まる気がする。
(ODってどんな感覚でするのか?)→・ 大⼈はお酒飲んで楽しんでいる、私たちにとっては大⼈がお酒飲むような 感覚。 ・ ODは酒とタバコと同じような感じ。
(ODを始めたきっかけは?)→・友達がやっているから。 ・お酒、タバコの未成年者の購入が難しくなってきたから、ODをするよう になった。 ・ SNSでODをしている⼈の投稿を⾒て⾃分もやってみようと思った。
(薬の成分について調べたことある?)→・ めちゃ調べた。 ・アッパー系の成分とダウン系の成分が入った薬を同時に飲んで、⾃分の体 内で両方の薬が戦っている感覚が楽しい。調べて勉強して、を繰り返して いる。
(どうしたらODしなくなる?)→・ 飲みにくい薬の形状にしたほうがいいと思う。星型や四⾓形のように⾓が あったら飲みにくい。 ・ 本当に薬が必要な⼈は飲みにくいかもしれないけど、OD⽬的で使っている⼈がほとんどだと思う。
(ODを辞めたきっかけは?)→・ これ以上やったら死ぬって思った。あとは、友達がODでパキっている時 の様⼦を⾒た時に⾃分もこうなっているんだと思って辞めた。 ・ 家族にパキっている姿を⾒られた時。
(違法薬物には手を出さないの?)→・ 出さない。 ・ もちろんやってる⼈もいるけど、私はしない。やっぱり違法っていうとこ ろに抵抗がある。

≪日本駆け込み寺の取り組み体制と 考える対策≫↓
○らん用⽬的の購入をさせない
→・メジコン、ブロン、ウット、レスタミンコーワなど濫用されている市販 薬に重点を置いた対策の実施。 ・⼀般用医薬品らん用の手軽さかららん用する若年者が後をたたない状態。 販売者がらん用に使用される可能性を見抜くのは困難であるが、明らか に適切な使用をしていないと思われる⼈に対して、症状のヒアリングで あったり、声かけなどを行う。 ※ 適切な対応をしていないと思われる⼈の例 頻繁に⼤量の市販薬を購入する(用法、容量を守った場合2週間分ある薬品を3日に⼀回購入するなど)。 ・これまでの相談⽀援の経験より若年者には「使用上の注意、用法、容量 の読み合わせを行った上で、らん用により危険性を伝える。」ことでら ん用を防ぐことができると考える。医薬品の購入に負荷をかけることで らん用目的の購入を減らす。コンビニで酒類やタバコ類を購入した際に 20歳以上ですか?との問いがあるように、適切に摂取するかの確認をす る。身分証提⽰、会員限定なども有効と考える。

○一般用医薬品らん用の危険性を伝える→・ 歌舞伎町など⼀般用医薬品らん用者が多く集まると思われる地域では、街頭広告などで市販薬濫用の危険性を伝える啓発を行う。また、TikTokやXなどのSNSを活用した広告などで訴求すると若年者にリーチしやすい。これを各市区町村が行い、全国的 に危険性を発信することで浸透しやすい状況をつくる。学校で の教育も行う(保健体育や健康診断の際などに勉強の機会を 提供する)。 ・実際に歌舞伎町に訪れていた若年者の数名は⼀般用医薬品らん 用が原因で死亡しているケースがあり、⾮常に危険であること を当事者らも認識しているがやめられない状態である。

○一般用医薬品らん用を求める若者を狙う大⼈ を止める→・若年層の欲望を利用する⼤⼈たちへの監視 ・行政、地域の無関心をやめる ・若者への啓発・啓蒙と同時に、若者たちを利用する⼤ ⼈たちの取り締まり ・⼤⼈への啓発・啓蒙活動
○居場所の提供→・ 若年者に対して安心して過ごせる居場所を提供する。 ⼀定期間の保護を行う。保護期間の中で、⼀般用医薬 品らん用の危険性の教育を行うほかに、対⼈、家族関 係で悩んでいることや自分の将来について悩んでいる 事など、相談、カウンセリングを行う。 ・ 児童相談所、行政、警察などの情報共有と、若年者の 接触方法の構築。 ・ 地域、自治会などとの連携強化。

次回は新たに「第4回 精神保健医療福祉の今後の施策推進に関する検討会 資料」からです。