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労働基準法における「労働者」に関する研究会 第5回資料 [2026年03月04日(Wed)]
労働基準法における「労働者」に関する研究会 第5回資料(令和8年1月28日)
議題 労働基準法における「労働者」について
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_69481.html
◎資料No.1これまでの議論の整理(案)
労働基準法における「労働者」に関する研究会 これまでの議論の整理(案)
第1 はじめに

第2 これまでの議論の整理
1 国内、諸外国における労働者性判断にかかわる現状

(1) 国内の状況
(2) 諸外国における動向
ア 概要
イ 分析対象国等の状況@ドイツ
→ ドイツにおいては、「労働者」は全ての法律で共通する統一的な概念であると 理解されており、また、労働者と自営業者の中間概念である「労働者類似の者」 が実定法上定められている。 労働法規の一般的な適用対象としての「労働者」は、人的従属性によって特徴 づけられており、業務に対する諾否の自由の有無や時間的・場所的拘束性、具体 的指揮監督の程度、非代替性といった判断要素に基づいて判断されている。2017 年4月に施行された民法典 611a 条では、これまでの判例法理を明文化する形で労 働契約の定義が定められ、具体的な判断基準が明文化されているが、その中で、 「組織への組み入れ」が挙げられており、ドイツにおいては、直接的な指揮命令 がないとしても、その組織の意向に従って動くことが何らかの形でプログラムさ れていることが、人的従属性を示す要素の1つとして理解されている。 「労働者類似の者」は、法律によって異なる相対的な概念であり、保護の観点 から適用される規定は限定的で、個別法の中の個別の条項が適用されるに過ぎない。「労働者類似の者」の要件について、例えば、労働協約法第 12a 条 1 項 1 号 においては、「経済的従属性」及び「労働者と同程度の社会的保護の必要性」が 含まれ、「経済的従属性」とは、「生業からの全収入の半分(マスメディアにおい ては 3 分の 1)を一人の者から得れば足りる」とされている。 プラットフォーム就業者に関する裁判例の状況としては、2020 年 12 月1日の Crowdworker 事件連邦労働裁判所判決で、小売業とガソリンスタンドの商品販売 の管理を行うプラットフォームによって、多数に細分化された顧客の注文のあっ せんを受けるクラウドワーカーの労働者性を肯定する判断が出ており、この中で は、アプリシステムによる事実上の拘束(アプリによる業務割当の仕組みによっ て、事業者のニーズに応じた行動を取るよう誘導がなされていること)を人的従 属性を基礎づける一要素として考慮に入れて判断している。
ウ 分析対象国等の状況 Aフランス→労働法と社会保障法で統一的に労働者概念が定められており、労働契約の当事 者と理解されている。 労働者概念は「法的従属性」を中核とする労働契約概念によって画定され、そ の判断基準として、1996 年の破毀院 Société Générale 判決は、「従属関係は、指 揮命令、労務提供の監督、違反行為の制裁を行う権限をもつ使用者の権威の下で 労務提供が行われることによって位置づけられる。事業組織のなかで労働が行わ れることは、その労務提供の条件を使用者が一方的に決定している場合には、従 属関係を示す一要素となりうる」と述べている。このように、「法的従属性」を 基本的要素としつつ、経済的従属性を示す指標となりうる「事業組織への組み入 れ」や「労働条件の一方的決定」等の事情も、判断要素として部分的に考慮して いる。 一方で、「法的従属性」の基本的要素としていた指揮命令、労務提供の監督、 違反行為の制裁を示す諸事情にカテゴライズせずに、「経済的従属性」を示す指 標となりうる諸要素を考慮して労働者性を判断している判決もある。 判例の動向としては、「法的従属性」を中心とした労働契約概念自体は維持し ているが、20 世紀末から、@契約形態よりも実態を重視する傾向と、A経済的従 属性を示す要素(「事業組織への組み入れ」、「労働条件の一方的決定」)も考慮す る傾向が見られる。 プラットフォーム就業者については、当初はアプリに接続する時間帯を就業者 自身が選択できることを重視して、労働契約性・労働者性を否定する裁判例が多 かったが、2018 年の破毀院 Take Eat Easy 判決と 2020 年の破毀院 Uber 判決は、 これを転換し、プラットフォーム就業者の労働契約性を肯定している。ここでは、 GPS での就業の把握と指示、アクセス停止等の制裁の付与という「法的従属性」 を示す事情に加えて、顧客とのアプリを介さない個別契約の禁止、報酬の一方的 決定などの経済的依存性を示す諸事情が考慮されている。 なお、2025 年 7 月 9 日の破毀院 Uber 判決では、競業制限がなく顧客との関係構 築の可能性が開かれていたこと、運転手はプラットフォームからの乗車提案を拒 否することや運送ルートの決定を自らの判断で行うことができたこと、運転手が 3 回乗車提案を拒否した場合のアプリからの自動的な切断措置については、即時 に再接続できるため、運転手への制裁とまではいえないこと、運転手は乗車提案 があった際に当該運送の(費用控除後の)最低運賃、乗車までの時間・距離、当 該運送の時間・距離を確認できることなど、2019 年移動オリエンテーション法、 2022 年オルドナンスによる運送法典など、立法措置による運用変更等を理由とし て、労働者性が否定された。 また、フランスにおいては、電子的プラットフォームが、それを利用してサービスを提供する独立自営業者が任意で労災保険に加入する場合に一定の保険料負 担を行う等の社会的責任を負うとするもの(2016 年労働改革法)、一部のプラッ トフォーム就業者に対プラットフォームの社会的責任について、就業条件等を記 載した社会憲章を、サービス提供者の意見を聴取した上で作成し、行政官庁に届 け出てその許可を得、インターネットで公表し契約に添付することができるとす るもの(2019 年移動オリエンテーション法)など、プラットフォーム就業者との 関係でプラットフォーム事業者に一定の責務を課す立法措置が試みられている状 況が見られる。
エ 分析対象国等の状況 Bイギリス →イギリスの現行の労働法規制の対象者として、コモン・ロー(判例法)が定義 する雇用契約を締結したものである employee と、制定法が定義する worker の2 つの概念があり、それぞれの法令において適用対象を明記している。employee を 適用対象とする法律によって付与されている権利には、解雇規制など、一定の勤 続(雇用の継続)要件が課されているものがある。 employee については、@契約の成立要件としての義務の相互性、A使用者によ るコントロール(指揮命令)、B契約条項が雇用契約と整合的であることという 3つの要件によって判断されており、@・Aの要件を中心に、Bは補助的なもの とされている。 worker は制定法上の概念で、一定の契約により定義され、例えば雇用権利法に おいて、@契約の成立要件としての義務の相互性、A本人自身による労務提供B契約の他方当事者が事業施行者の顧客の地位にないという顧客要件(自律的な サービス提供の有無を意味し、真に自営業者である者に対する適用を除外するも の)という3つの要件によって判断されている。 両者を比較すると、worker のほうが広い概念となっており、employee の判断で は指揮命令が欠くことのできないものと位置づけられ、worker の判断では労務の 非代替性と自律的なサービス提供の有無が同様に位置づけられる一方で、最高裁 判決は、制定法の文言が第一であることを確認し、経済的従属性などの(制定法 の文言から読み取れない)基準を、解釈で判断要素に加えることについて否定的 な見解が示されている。 プラットフォーム就業者に関する裁判例として、worker 該当性が争われた 2021 年の Uber 事件の最高裁判決があり、そこでは、ライドシェアの運転手に関して、 worker の該当性が肯定されている。この判決では、報酬や就労条件がプラットフ ォーム事業者によって決定されていたこと、アプリへのログイン後に運送リクエ ストに応じて運送業務を受託することに関する制約があったこと、サービス提供 について相当程度の指揮監督を行っていたことなどをコントロール(指揮命令)の要素として認定・評価して、worker の該当性を肯定しているほか、契約書面の 位置づけ・解釈の在り方について、契約書面に縛られず、契約締結以降の労働の 実態を確認するアプローチも整理されている。 一方で、2023 年の Deliveroo 事件においては、レストランの料理を配達する配 達員とアプリの運営会社との関係について、労務提供が非代替性(本人自身によ る労務提供)を欠くとして worker 該当性を否定するという判断がなされるなど、 事例に応じた判断が見られる状況となっている。
  オ 分析対象国等の状況 Cアメリカ合衆国 →アメリカ合衆国については、全体像として、最低賃金規制や割増賃金規制など を内容とする公正労働基準法、団結権等の保障などを行う全国労働関係法、社会 保障法などにおいて、法の適用対象を employee としているが、その概念と判断基 準は各法令の趣旨・目的により異なり得る相対的なものとされている。 労働者概念のうち、全国労働関係法などの労働者性の判断基準として、判例で は管理権テストが採用されており、業務遂行の具体的方法についての管理権限の 有無を重視している。 一方で、公正労働基準法における労働者性については、判例では全国労働関係 法などの労働者よりも広い概念と解されており、判断基準としては、経済的実態 テストが採用されている。経済的実態テストは、一般的には役務を提供する事業 に依存しているか否か、すなわち経済的に依存しているかを検討して労働者性を 判断するものとなっている。 全国労働関係法の下における労働者性の判断に関しては、管理権テストによる ことを前提としつつ、損益についての起業家的機会の有無(昭和 60 年報告におけ る「事業者性の有無」に近い要素)の位置づけなどをめぐり、判断の変遷が見ら れる。 一方で、公正労働基準法の下における労働者性の判断に関しては、経済的実態 テストによることは前提としつつ、その具体的な判断要素に関しては、同法の履 行を担っている連邦労働省賃金時間部による考え方の変遷が見られる。 バイデン政権下では、それまでよりも労働者性を広く解する考え方を連邦規則 として示していたところ、第2次トランプ政権への移行後、これを適用せず、従 前の解釈とすることを決定するなど、行政による判断基準が政権によって大きく 変更される状況となっている。このような解釈の変遷の一方で、ライドシェアの運転手のようなギグワーカー の労働者性について、判例の立場は固まっていない状況にある。 カリフォルニア州などの州法では、プラットフォーム就業者などを対象として、 一定の要件を使用者側が立証しない限り、労働者と判断する基準を立法等で採用 するものがある(いわゆる ABC テスト、AB5)。なお、職種によっては、この基準 をそのまま適用すると真正な独立契約者も労働者と判断されうるため、適用除外 対象の業務を 109 挙げている状況にある。 他方で、カリフォルニア州の Proposition22 など、アプリを通じてライドシェ アやフードデリバリーの業務に従事するギグ・ワーカーを、最低報酬などの一定 の要件を満たす場合、プラットフォーム事業者との関係で、独立契約者と明確に 位置付けることで、労働者ではなく独立した就業者として一定の保護、就業条件 の改善を行うものもある。
カ 分析対象国等の状況 DEU→2024 年 10 月 23 日にプラットフォーム就業における就業条件改善に関する指令 が正式に採択され、EU 加盟国は、2026 年 12 月2日までにこの指令を遵守するために必要な法律等を発効させることが求められている。 本指令は、プラットフォーム作業従事者に対する正しい雇用上の地位と権利の 保障等を目的としており、 ・ 「デジタル労働プラットフォーム」の定義を、「(a) 顧客に対し、Web サイト やモバイルアプリケーションなどの電子的手段を通じて、遠隔地からサービス を提供する事業を行うもの(部分的なものを含む)、(b) サービスが、顧客か らの注文に応じて提供されること、(c) 作業がオンラインで行われるか特定の 場所で行われるかに関係なく、代金と引き換えに人が行う作業を組織化する事 業であること、(d) 作業従事者の組織化に自動化された監視システムまたは意 思決定システムが使用されていることの要件をすべて満たすサービスを提供す る自然人又は法人」、 ・ 「プラットフォーム労働者」の定義を「プラットフォーム作業従事者のう ち、欧州司法裁判所の判例法を考慮して、加盟国で施行されている法律、労働 協約、または慣行によって定義される雇用契約を結んでいるか、または実態上 雇用関係があるとみなされる者」としたうえで、 ・ デジタル労働プラットフォームと、そのプラットフォーム作業を行う者との 間の契約関係は、欧州司法裁判所の判例法を考慮し、各国内法、労働協約、加 盟国で有効な慣行に従って、支配と指揮を含む要素が見いだされる場合、法的 に雇用関係であると推定され、法的推定に異議がある場合、挙証責任はプラッ トフォーム側に課される(第5条(1))としており、加盟国は、プラットフォ ーム作業従事者の利益となる手続の円滑化のため、雇用の法的推定(推定を否 定する場合、プラットフォーム側が反証しなければならない)を確立すること が求められている。 今回の調査対象国においては、現時点では、具体的な法案提出などの動きは見 られておらず、今後、具体的な動きが現れてくるものと考えられる。

2 昭和 60 年報告に示された判断要素の分析
(1)「使用従属性」
ア 「指揮監督下の労働」に関する判断基準
(ア)仕事の依頼、業務従事の指示等に対する諾否の自由の有無
(イ)業務遂行上の指揮監督の有無
(ウ)拘束性の有無
(エ)代替性の有無(指揮監督関係を補強する要素)
イ 報酬の労務対償性に関する判断基準
(2)「労働者性」の判断を補強する要素
  ア 事業者性の有無
イ 専属性の程度
ウ その他
3 本研究会にてこれまでに個別に議論した点
(1)労働者性判断の枠組及び要素の重み付けについて
(2)「通常注文者が行う程度の指示等」及び「業務の性質等から必然的に勤務場所 及び勤務時間が指定される場合」について
(3)「事業組織への組み入れ」、「契約内容の一方的・定型的決定等」などに関する 事情について
ア 「事業組織への組み入れ」等
イ 「契約内容の一方的・定型的決定」
(4)昭和 60 年報告では判断要素として個別に挙げられていない事情(「未分類」の 事情)について
ア 労働契約により働く者との比較に関する事情
イ 契約に至った経緯に関する事情
4 その他論点
(1)行政における労働者性判断
(2)労働者性判断の予見可能性を高めるための取組
ア 労働者性推定規定と立証責任転換
イ その他予見可能性を高める取組
第3 今後の研究について


◎資料No.2 水町構成員提出資料
○この文書は、フランスの労働法と社会保障法の歴史、変容、プラットフォーム型就業の法的評価について論じている。

○労働契約の歴史と概念↓

・フランス革命(1791年)で「職業の自由」が保障され、人的従属性が禁止された。
・1804年の民法典では、「奉公人」と「仕事請負人」の契約が規定された。
・19世紀には、「労働契約」が人的従属性を中心に形成され、支配関係の否定と平等性が重視された。
・1931年のバードゥ判決で、「人的従属性」が労働契約の核心と明確化された。
・近年は、「経済的従属性」の再評価と、実態に基づく判断への移行が進む。

○「人的従属性」と「経済的従属性」の位置づけ↓
・人的従属性は、指揮命令・監督・制裁の存在により判断される。
・経済的従属性は、事業組織への組入れや固有の顧客保持、料金の一方的決定により示される。
・近年の判例では、両者は相互補完的とされ、強い経済的従属性は人的従属性を弱めず、逆も同様。
・2016年のFormacad判決では、経済的従属性も労働契約性の判断要素とされた。
・労働法の存在意義は、人的従属性と経済的従属性の二重性に基づく。

○プラットフォーム型就業の法的評価↓
・プラットフォーム・ビジネスは、独立自営業者と位置づけられながら事業に組み入れられる。
・2018年の破毀院判決は、就業者の雇用労働者性を否定していた判例を破棄し、肯定へと修正。
・判決は、位置情報把握システムや制裁システム、経済的従属性を重視し、人的従属性を実態に基づき判断。
・2019年のウーバー判決では、タクシー運転手の雇用労働者性を肯定し、実態に即した判断を示した。
・2020年の破毀院判決も、指揮命令や制裁、事業組入れを根拠に雇用労働者性を認めた。
・これらの判決は、従来の人的従属性に加え、経済的従属性も重要な判断要素として位置づけている。

○日本への示唆と今後の展望↓
・日本の労働法は人的従属性を中心に判断されているが、社会変化に対応不足。
・フランスの判例は、実態重視と経済的従属性の評価を示し、日本の法体系に新たな視点を提供。
・今後は、プラットフォーム型就業の法的規制や社会保障のあり方について議論が必要となる。

次回は新たに「こども・若者参画及び意見反映専門委員会(第12回)」からです。

「高年齢労働者の労働災害防止対策に関する検討会」の報告書を公表します [2026年02月18日(Wed)]
「高年齢労働者の労働災害防止対策に関する検討会」の報告書を公表します(令和7年12月26日)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_68013.html
 厚生労働省の「高年齢労働者の労働災害防止対策に関する検討会」(座長 榎原毅 産業医科大学 産業生態科学研究所 人間工学研究室 教授)において、報告書を取りまとめましたので公表します。高年齢労働者の労働災害の防止のため、令和7年5月に公布された改正労働安全衛生法では、高年齢者の特性に配慮した作業環境の改善、作業の管理その他の必要な措置を講ずることが事業者による努力義務とされ、令和8年4月1日から施行されることとなっています。
 また、事業者が講ずべき措置に関しては、厚生労働大臣が、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針(以下「大臣指針」という。)を公表することとされました。
 本検討会では、大臣指針に盛り込むべき内容や、当該指針に基づく取組の促進等について検討を行ったところであり、本検討会の報告書の内容を踏まえ、厚生労働省は大臣指針の公表に向けて検討を進めていきます。

【報告書のポイント】
○高年齢者の労働災害をめぐる現状
○ 高年齢者の労働災害防止のための指針(仮称)及び通達に盛り込む事項
・事業者が講ずべき措置
  ○安全管理体制の確立(高年齢者の労働災害防止のためのリスクアセスメントの実施等)
  ○職場環境の改善(ハード・ソフト両面からの対策)
  ○高年齢者の体力の状況の把握
  ○高年齢者の健康や体力の状況に応じた対応
  ○安全衛生教育
・労働者と協力して取り組む事項
・国、関係団体等による支援
○ 高年齢者の労働災害防止のための指針(仮称)に基づく措置の促進等
・周知・広報等
・調査・研究等
 ・その他(国・関係団体による支援等)

◎別添資料1 高年齢労働者の労働災害防止対策に関する検討会報告書の概要
厚生労働省労働基準局 安全衛生部 安全課
○高年齢労働者の労働災害防止対策に関する検討会報告書の概要
1検討会の趣旨
→令和7年5月に公布された改正労働安全衛生法では、高年齢労働者の特性に配慮した作業環境の改善、作業の管理、その他の 必要な措置を講ずることが事業者の努力義務とされ、事業者が講ずべき措置に関し、厚生労働大臣がその適切かつ有効な実施を 図るために必要な指針を公表することとされた。 こうしたことを踏まえ、高年齢労働者の労働災害の分析を行うとともに、厚生労働大臣が公表する指針の内容や、当該指針に 基づく取組の促進等について検討を行った。
2高年齢者をめぐる現状→・雇用者全体に占める60歳以上の高年齢者の割合は19.1%(令和6年)、労働災害による休業4日以上の死傷者数に占める60 歳以上の高年齢労働者の割合は30.0%(同)となっている。 ・休業4日以上の死傷災害の度数率は、加齢に応じ上昇していく傾向がある。また、休業見込期間をみると年齢が上がるにしたがって長期間となっている。 ・高年齢者の災害発生率の増加には、個人によりばらつきはあるが、業務に起因する労働災害リスクに、加齢とともに進む筋力やバランス能力等の身体機能や身体の頑健さの低下による労働災害リスクが付加されていることが大きいと考えられる。 ・高年齢労働者の労働災害に関する調査研究について、@転倒・腰痛の行動災害に関するエビデンス、A身体機能と労働災害 に関するエビデンスと対策、B産業現場で活用可能な身体機能測定、C労働者の体力測定に関わる研究例をレビューするとともに、高年齢労働者の労働災害防止対策の事例を検討した。
3検討結果→厚生労働大臣が公表する指針(大臣指針)等の検討を行った結果は次のとおり。 ・大臣指針及び通達に盛り込まれるべきことについて 大臣指針及び関連する通達に盛り込むべき事項をとりまとめた(詳細は別紙参照)。 ・大臣指針に基づく措置の促進等について 大臣指針の周知のためのリーフレット、パンフレット等を作成するとともに、都道府県労働局、労働基準監督署等を通じた周 知・広報や、関係事業者への指導等を行う等、大臣指針の認知度の向上や定着に積極的に取り組むことが適当。また、調査研究 により科学的知見の集積に努め、調査研究結果や大臣指針に基づく取組の状況等をみつつ、必要な対応について検討を行うこと が適当。

○(別紙)高年齢者の労働災害防止のための指針(案)概要
第1趣旨→労働安全衛生法第62条の2第2項に基づき、高年齢者の特性に配慮した作業環境の改善、作業の管理等、高年齢者の労働災害 の防止を図るために事業者が講ずるよう努めなければならない措置に関し、その適切かつ有効な実施を図るため定めたもの。
第2事業者が講ずべき措置→以下の1〜5に掲げる事項について、各事業場における高年齢者の就労状況や業務の内容等の実情に応じて、国、関係団体等 による支援も活用して、実施可能な対策に積極的に取り組むことが必要である。
⇒1安全衛生管理体制の確立等 2職場環境の改善 3高年齢者の健康や体力の状況の把握 4高年齢者の健康や体力の状況に応じた対応 5安全衛生教育  参照。

第3労働者と協力して取り組む事項事業者は、高年齢者の特性に配慮した作業環境の改善、作業の管理その他の必要な措置を講ずるよう努める必要が あり、個々の労働者は、自らの身体機能等の低下が労働災害リスクにつながり得ることを理解し、労使の協力の下 で取組を進めること。
第4国、関係団体等による支援事業者は、国、関係団体等による支援策を有効に活用すること。

○高年齢労働者の労働災害防止対策に関する検討会→令和7年5月に公布された改正労働安全衛生法第62条の2(令和8年4月1日施行予定)により、高年齢労働者の特性に配慮した必要な措置を 講ずることが事業者による努力義務とされ、事業者が講ずべき措置に関し、厚生労働大臣がその適切かつ有効な実施を図るために必要な指針を公 表することとされた。このため、高年齢労働者の労働災害の分析及びその低減のため必要な方策等、今後の高年齢労働者の労働災害防止対策について検討を行った。⇒労働安全衛生法(抄)(令和7年改正後。令和8年4月1日施行) (高年齢者の労働災害防止のための措置) 第六十二条の二
その他参集者、検討事項、開催状況  参照。


◎別添資料2
高年齢労働者の労働災害防止対策に関する検討会報告書(本文) 令和7年12月26日
第1 検討会の趣旨、参集者等について
→ 1 検討会の趣旨 2 参集者(50 音順、◎座長) 3 検討会開催状況
第2 高年齢者をめぐる現状及び検討結果等について
1 高年齢者をめぐる現状について

(1)高年齢者の労働災害の状況 (関係資料1)
(2)高齢者の身体機能と労働災害 (関係資料1)
(3)高年齢労働者の労働災害防止対策の現状 (関係資料1)
(4)高年齢労働者の労働災害に関する調査研究について (関係資料2〜6)
(5) 高年齢労働者の労働災害防止対策の事例(関係資料6、7)
2 高年齢者の労働災害防止のための指針(仮称)及び通達に盛り込む事項 について
指針(案) 通達に盛り込む事項 ↓ 参照。

第1 趣旨 
第2 事業者が講ずべき措置→1 安全衛生管理体制の確立等 2 職場環境の改善 3 高年齢者の健康や体力の状況の把握 4 高年齢者の健康や体力の状況に応じた対応 5 安全衛生教育 
第3 労働者と協力して取り組む事項
第4 国、関係団体等による支援の活用
3 大臣指針に基づく措置の促進等について→ (1)周知・広報等について (2)調査・研究等について (3)その他(国・関係団体による支援等について)
4 関係資料↓
関係資料1 高年齢労働者の労働災害防止のための指針の策定につい て(第1回資料) 関係資料2 転倒・腰痛の行動災害に係るエビデンス up to date(第 2回資料)  
関係資料3 身体機能と労働災害に関するエビデンスと対策について (第2回資料)
関係資料4 Frailty and occupational falls among older Japanese workers: An Internet-based cross-sectional study 等 (第3回資料)
関係資料5 労働者の体力測定に関わる研究例(第3回資料)
関係資料6 高年齢労働者の安全と健康確保対策好事例(第2回資 料)
関係資料7 高年齢労働者の安全と健康確保対策好事例 交換日誌に よるコミュニケーション・リスクアセスメント(小規模 事業場事例)(第3回)
○以下本文では関係資料1から関係資料7まであり。

次回は新たに「令和7年度 社会的養護における「育ち」「育て」を考える研究発表会 「こどもの育ちをつなぐ」」からです。

ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会 第9回資料 [2026年01月06日(Tue)]
ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会 第9回資料(令和7年11月20日)
議事 (1)小規模事業場ストレスチェック実施マニュアル(案)について
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_66086.html
◎資料1 小規模事業場ストレスチェック実施マニュアル(案)
(目次)のみ↓

はじめに
0 ストレスチェック制度とは
0−1 ストレスチェック制度の趣旨・目的
0−2 ストレスチェック制度の効果
0−3 ストレスチェック制度を実施する意義
0−4 実施義務 1 ストレスチェック制度の実施に向けた準備

1−1 事業者による方針の表明
1−2 関係労働者の意見の聴取
1−3 社内ルールの作成・周知

2 ストレスチェック制度の実施体制・実施方法の決定
2−1 実務担当者の選任
2−2 ストレスチェックの委託先の選定・契約
2−3 医師の面接指導の依頼先の選定
2−4 実施時期及び対象者の決定
2−5 調査票及び高ストレス者の選定方法の決定

3 ストレスチェックの実施
3−1 調査票の配布・回収・受検勧奨
3−2 ストレスチェック結果の通知
3−3 ストレスチェック結果の保存

4 医師の面接指導及び事後措置
4−1 面接指導の申出
4−2 面接指導の実施
4−3 医師からの意見聴取
4−4 就業上の措置
4−5 面接指導以外の相談対応
4−6 面接指導結果の記録と保存

5 集団分析・職場環境改善
5−1 集団ごとの集計・分析(集団分析)
5−2 職場環境の改善

6 労働者のプライバシーの保護
7 不利益取扱の禁止
8 外部委託ではなく自社で実施する場合の留意点

巻末資料
@ ストレスチェック制度実施規程(モデル例)
A サービス内容事前説明書(モデル例)
B 職業性ストレス簡易調査票(57項目)及び簡略版(23項目)
C 関係法令・指針・通達等 ※ストレスチェック関係情報HPへのリンク集

○ストレスチェック制度の流れ 参照のこと。


◎資料2 第8回検討会及び「小規模事業場ストレスチェック実施マニュアル」作成ワーキンググループの主な意見     厚生労働省労働基準局安全衛生部労働衛生課
○小規模事業場マニュアルの基本的な考え方→・現行のストレスチェック実施マニュアルは、現在、ストレスチェックの実施が義務となっている50人以上の 事業場の実施体制等を前提としたもの。 ・今般の改正法を踏まえた、50人未満の事業場に即した、労働者のプライバシーが保護され、現実的で 実効性のある実施体制・実施方法についてのマニュアルの作成に当たっては、現行マニュアルをベースにしつつ、50人未満の事業場で特に留意すべき点や50人未満の事業場独自の留意点等を中心に記載する。 ※必要に応じて現行マニュアルを参照する旨を記載する。⇒小規模事業場マニュアル(イメージ) 参照のこと。
○ワーキンググループの開催状況
→第1回(10/10)〜第4回目(11月10日)まで。
・はじめに→3提案あり。
0ストレスチェック制度とは
0−1ストレスチェック制度の趣旨・目的→4課題あり。
0−4実施義務→2課題あり。
1ストレスチェック制度の実施に向けた準備
1−1事業者による方針の表明→2課題あり。
1−2関係労働者の意見の聴取→5課題あり。
1−3社内ルールの作成・周知→5課題あり。

2ストレスチェック制度の実施体制・実施方法の決定
2−1実務担当者の選任→2課題あり。
2−2ストレスチェックの委託先の選定・契約→8課題あり。
2−3 医師の面接指導の依頼先の選定→2課題あり。
2−5調査票及び高ストレス者の選定方法の決定→8課題あり。

3ストレスチェックの実施
3−1調査票の配布・回収・受検勧奨→2課題あり。
3−3ストレスチェック結果の保存→2課題あり。

4医師の面接指導及び事後措置
4−1面接指導の申出・勧奨→5課題あり。
4−2面接指導の実施→5課題あり。
4−3医師からの意見聴取 →1課題あり。
4−4就業上の措置→3課題あり。
4−5面接指導以外の相談対応→2課題あり。

5集団分析・職場環境改善
5−1集団ごとの集計・分析→4課題あり。
5−2職場環境の改善→3課題あり。
6労働者のプライバシーの保護→7課題あり。

7不利益取扱いの禁止→1課題あり。
8外部委託ではなく自社で実施する場合の留意点→1課題あり。

巻末資料A→1課題あり。
巻末資料➃→3課題あり。
マニュアル全体→9課題あり。

次回は新たに「いじめ防止対策に関する関係省庁連絡会議(第5回)」からです。

ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会 「小規模事業場ストレスチェック実施マニュアル」作成ワーキンググループ 第4回資料 [2025年12月10日(Wed)]
ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会 「小規模事業場ストレスチェック実施マニュアル」作成ワーキンググループ 第4回資料(令和7年11月10日)
議事 ・小規模事業場ストレスチェック実施マニュアル(案)について ・その他
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_65743.html
◎資料1 小規模事業場ストレスチェック実施マニュアル(案)
○ストレスチェック制度の流れ→メンタルス不調の未然防止
○はじめに
→・令和7年の労働安全衛生法の改正により、これまで努力義務とされていた労働者数 50 人未満の事業場におけるストレスチェックの実施が義務とされました。(令和7年5月14 日公布。施行日は「公布の日から政令で定める3年以内の日」。) ・厚生労働省では、労働者数 50 人未満の事業場においてストレスチェックが円滑に実施 されるように、50 人未満の事業場に即した、労働者のプライバシーが保護され、現実的で実効性のある実施体制・実施方法を示したマニュアルを作成しました。 50 人未満の事業場においてストレスチェックを実施する際は、本マニュアルを参照することが望まれます。 ・ なお、本マニュアルのターゲットは、企業規模として 50 人未満の事業場を念頭に置いています。

○0 ストレスチェック制度とは
◆0−1 ストレスチェック制度の趣旨・目的
→・ 労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度の主な目的は、労働者のメンタルヘルス不調の未然防止です。 事業者は、労働者のストレスを把握するための検査(以下「ストレスチェック」)を実施することで、労働者自身のストレスへの気付きを促し、セルフケアを進めるとともに、 ・高ストレスと判定された労働者に、医師の面接指導の機会の提供、 ・医師の意見を踏まえた就業上の措置の実施、 ・集団分析を通じて職場ごとのストレス要因を把握し、職場環境の改善につなげます。 ・ このように、ストレスチェック制度(※)は、集団分析・職場環境改善まで含めた一体的な制度です。 ※ 本マニュアルにおいて「ストレスチェック制度」とは、ストレスチェックそのものの ほか、医師の面接指導、面接指導後の就業上の措置、さらには、集団分析・職場環境改善を含む、労働安全衛生法第66条の10に係る事業場における一連の取組全体を指します。
◆0−2 ストレスチェック制度の効果→ ・ 厚生労働省が行った効果検証事業の結果、ストレスチェックを受けた労働者の約7割から「自身のストレスが分かったこと」が有効であったとする回答が得られたほか、 医師の面接指導を受けた労働者の過半数から「対面で医師から面接を受けたこと」が有効であったとする回答が得られています。 ・ また、学術論文や研究報告書等において、ストレスチェックと職場環境改善によって、心理的ストレスの低下や生産性向上の効果が認められています。
◆0−3 ストレスチェック制度を実施する意義→・労働者のメンタルヘルス不調の未然防止が重要です。ひとたびメンタルヘルス不調にさせてしまうと、その病休期間は平均で約3か月、復職後再び病休になる割合も約半数と、 特に小規模事業場にとっては、大きな人材の損失となるほか、経営上のリスクにつながってしまいます。 ・ また、ストレスチェック制度をはじめとした職場のメンタルヘルス対策に取り組むことで、働きやすい職場の実現を通じて、生産性の向上や人材の確保・定着、企業価値の向上といった、持続的な経営につながります。特に人材不足が課題となっている小規模事業場において、メリットも大きいと考えられます。 ・ こうした視点も踏まえて、事業者は、メンタルヘルス対策を経営課題として位置付け、 ストレスチェック制度にしっかり取り組んでいくことが重要です。
◆0−4 実施義務 →・ストレスチェックの対象者となる「常時使用する労働者」とは、次のいずれの要件をも 満たす者をいいます。(一般定期健康診断の対象者と同様です。契約の名称や国籍に関わりません。)⇒@ 期間の定めのない労働契約により使用される者(期間の定めのある労働契約により使用される者であって、当該契約の契約期間が1年以上である者並びに契約更新により1年以上使用されることが予定されている者及び1年以上引き続き使用されている者を含む。)であること。 A その者の1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の4分の3以上であること。 ※ なお、1週間の労働時間数が通常の労働者の4分の3未満である労働者であっても、 上記の@の要件を満たし、労働時間数が通常の労働者のおおむね2分の1以上である者 に対しても、ストレスチェックを実施することが望まれます。 ・ 派遣労働者に対するストレスチェックは、派遣元に実施義務があります。(一般定期健 康診断と同様です。) ・ 一般定期健康診断と異なり、ストレスチェックでは、労働者に受検義務が課されていま せんが、本制度を効果的なものとするためにも、できるだけ対象者全員が受検することが 望まれます。 ・ 医師の面接指導は、対象者から申出があった場合は実施する義務があります。また、集団分析・職場環境改善は、事業場規模に関わらず、努力義務とされています。 ・ ストレスチェックの実施結果の労働基準監督署への報告は、労働者数 50 人以上の事業場に義務付けられていますが、労働者数50人未満の事業場は不要です。 ※「事業場」は原則として、工場、事務所、店舗など同一場所にあるものを一の事業場 と考え、同一企業であっても、場所的に分散している場合は別個の事業場となります。 【参考】労働基準監督署への報告の要否の基準 労働基準監督署への報告の要否の基準となる「常時使用している労働者が50人以上」 の「常時使用している労働者」とは、ストレスチェックの対象者のように契約期間や週の労働時間によるのではなく、常態として使用されているかどうかで判断します。そのため、労働時間数が短いアルバイトやパートタイム労働者、派遣先の派遣労働者であっても、継続して雇用し常態として使用していれば、カウントに含める必要があります。 「ストレスチェックの対象者」が50人未満であっても、「常時使用している労働者」 が50 人以上となり、労働基準監督署への報告が必要となる場合がありますので、注意しましょう。

○1 ストレスチェック制度の実施に向けた準備
◆1−1 事業者による方針の表明→実施事項
⇒ 事業者は、ストレスチェック制度の実施責任者として、制度の導入方針を決定し、表明します。 留意事項⇒制度の導入に当たっては、労働者に安心して、積極的に活用してもらえるように、事業者としての方針を表明することが重要です。 (後述1−3の「ストレスチェック制度の社内ルールの作成・周知」の中で表明すること でも構いません。)
【参考】事業者による方針の表明(メッセージ)の例 参照。
◆1−2 関係労働者の意見の聴取→ 実施事項⇒ 事業者は、ストレスチェック制度の導入に当たり、労働者が安心してストレスチェック を受検できるように、実施体制、実施方法等について、関係労働者の意見を聴きます。 留意事項⇒・意見聴取の内容としては、後述1−3の事項について意見を聴くことが考えられます。 ・意見聴取の方法としては、労働者数 50 人未満の事業場においては、労働安全衛生規則 第 23 条の2に基づき、安全又は衛生に関して関係労働者の意見を聴く機会を設けること とされていますので、このような機会を活用することが考えられます。 関係労働者の意見を聴く機会は、必ずしも会議体の構成をとる必要はありませんが、それぞれの事業場の実情に応じて、実効性が確保できる方法により、できるだけ様々な現場や立場の労働者から意見を聴くことが重要です。 例えば、事業者としての方針を表明しつつ、後述1−3の社内ルールの案をあらかじめ 作成した上で、事業場内に周知し、労働者に意見を募るといった方法も考えられます。 ・ 関係労働者の意見聴取は、後述2−1の衛生推進者又は安全衛生推進者を中心として実 施することが望まれます。 ・なお、ストレスチェック実施後にも、実施状況やそれを踏まえた実施方法等の改善等に ついて、関係労働者の意見を聴くことが望まれます。
【参考】関係労働者の意見を聴く機会の設置状況(事例)  参照。
◆1−3 社内ルールの作成・周知→ 実施事項⇒ 事業者は、関係労働者の意見聴取の結果を踏まえ、ストレスチェック制度の社内ルール を作成し、周知します。 留意事項⇒・ ストレスチェック制度の社内ルールとして、以下の事項について定めることが望まれます。→・実施体制 ・実施方法 ・記録の保存 ・情報管理 ・情報の開示、訂正等及び苦情処理 ・不利益な取扱いの防止 ※ 社内ルールの作成に当たっては、次頁の「社内ルールの例」を参考にしてください。 ・ 仮に、社内ルールを規程として作成する場合は、巻末資料「ストレスチェック制度実施 規程(モデル例)」を参考にしてください。 ※ この規程例は、定めておくと良いと考えられる事項を詳細にお示ししたものであり、 あくまで一例です。それぞれの事業場の実情に応じてアレンジしてください。 ・ ストレスチェック制度の社内ルールの周知は、事業場内イントラネットへの掲載や規程の配付等により行ってください。
【参考】社内ルールの例  ストレスチェック制度の社内ルール(周知) 参照。

○2 ストレスチェック制度の実施体制
◆2−1 実務担当者の選任
→ 実施事項⇒ 事業者は、委託先の外部機関に依頼して実施者等を選定します。また、事業場において実務担当者を指名します。 留意事項⇒労働者数 50 人未満の事業場においては、原則として、労働者のプライバシー保護の観 点から、ストレスチェックの実施を外部機関に委託することが推奨されます。外部機関に は健診機関も想定されます。 ストレスチェックの実施を外部委託する場合の実施体制は以下のようになります。   ストレスチェックの実施を外部委託する場合の実施体制(イメージ) 参照。
・ストレスチェックの実施を外部委託する場合であっても、ストレスチェック制度は事業 者の責任において実施するものであり、事業者は、実施に当たって、外部委託先との連絡調整等の事務を担当する実務担当者を指名するなど、実施体制を整備する必要があります。 委託先の外部機関においては、実施者を選任し、実施事務従事者を配置します。
・ 労働者数10人以上50人未満の事業場では、労働安全衛生規則第12条の2に基づき、 業種により衛生推進者又は安全衛生推進者を選任することとされています。 実務担当者には、衛生推進者又は安全衛生推進者(メンタルヘルス指針に基づくメンタ ルヘルス推進担当者を選任している場合はその者)を選任することが望まれます。また、 前述1−2の関係労働者の意見聴取は、これらの者を中心に実施することが望まれます。 〇 実務担当者は、個人のストレスチェック結果等の健康情報を取り扱うことがない立場ですが、当然ながら、自身はこうした情報を取り扱わないことを徹底するなど、事業場内の 実務の担当者として個人情報保護への配慮が求められます。
【参考】労働者数10人未満の事業場における実務担当者
◆2−2 ストレスチェックの委託先の選定・契約→実施事項⇒ 事業者は、ストレスチェックの委託先の選定に当たっては、事前に外部機関から「サービス内容事前説明書」を作成・提出してもらい、その内容を確認します。 留意事項⇒ストレスチェックの実施の委託先を適切に選定できるよう、事前に外部機関から以下の 事項について説明を求めることが重要です。→@ 実施体制(実施者、実施事務従事者等) A 実施方法(調査票、調査方法、高ストレス者・面接指導対象者の選定方法、ストレスチェック結果の通知方法、面接指導対象者への通知方法等) B 料金体系(料金体系、基本料金、オプション料金の明示等) C 面接指導(面接指導実施メニューの有無、面接指導医師等) D 情報管理(結果通知等の情報の流れ、結果の保存等)  ・ 説明を求めるに当たっては、巻末資料の「サービス内容事前説明書」を外部機関に作成・提出してもらうようにしてください。
・ 外部機関の提案内容については、以下のようなポイントでの確認が重要です。→ 実施体制について、実施者、実施事務従事者は、委託先で選定されている者を活用することが基本となります。実施者は必要な資格(前述2−1参照)を有する者か 等 実施方法について、調査票の項目、紙/ウェブの選択肢の提案、調査方法(調査 票の配布・回収、未受検者に対する受検勧奨)、高ストレス者・面接指導対象者 の選定方法の妥当性 等 料金体系(※)について、どこまでのサービスを提供しているのか(集団分析、面接指導、相談窓口等)、標準サービスか/追加のオプションサービスか、具体的な額、オプション料金との区別が明確か 等 ※ ストレスチェック実施の受託料金には、実施者及び実施事務に従事する内部スタッフ(実施体制)+実施事務経費+システム提供+データ保管といった実 施に不可分の費用は、原則加味されていることが標準であると考えられることから、これらの費用がオプション(別料金)とされている場合には、その料金 設定について外部機関から十分な説明を受ける必要があります。 面接指導について、地産保(後述2−3参照)の利用か/外部機関のオプション サービスか(実際に面接指導が実施された場合のみ料金が発生するか) 等 情報管理について、個人情報保護の体制(プライバシーマーク等の認証の有無)、 結果の保存方法・セキュリティ 等
・事業者は、外部機関の提案内容をもとに、@ストレスチェック、集団分析を当該外部機関に委託するのか、A面接指導については、地産保を利用するのか外部機関のオプションサービスを利用するのかを決定します。
◆2−3 医師の面接指導の依頼先の選定 ※ 医師の面接指導の実施については後述4を参照 →実施事項⇒ ストレスチェックの委託先の選定・契約に当たっては、面接指導の依頼先について、地産保の利用か/委託先のオプションサービスの利用か、あらかじめ決めておきます。 留意事項⇒労働者数 50 人未満の事業場における医師の面接指導の実施は、最寄りの「地域産業保 健センター」(以下「地産保」といいます。)に依頼して、無料で受けることができます。 ・医師の面接指導の依頼先としては、上記の地産保のほか、ストレスチェックの委託先の外部機関が面接指導もメニューの一つとして提供していることがあり、当該サービスを利用することも考えられます。(この場合、費用は当該外部機関との契約で決まります。)
◆2−4 実施時期及び対象者の決定→ 実施事項⇒ 事業者は、ストレスチェックの実施時期(1年ごとに1回)、対象者(前述0−4参照) を決定します。 留意事項⇒ストレスチェックは集団分析を行うことから、少なくとも集計・分析の単位となる集団 について同時期に行うことが望まれます。このため、ストレスチェックを定期健康診断と 併せて実施することを検討する場合、定期健康診断を一斉に実施していない(例えば誕生 月に実施するなど)事業場では、時期の検討が必要です。
◆2−5 調査票及び高ストレス者の選定方法の決定→実施事項⇒事業者は、ストレスチェックの調査票(項目、調査形態)及び高ストレス者の選定方法 について、実施者の提案等を踏まえ決定します。 留意事項⇒・ストレスチェックの調査票(項目)としては、巻末資料の「職業性ストレス簡易調査票」 (57項目)を利用することが推奨されます。また、これを簡略化した調査票の例(23項 目)も巻末資料に示しますが、集団分析が詳細にできないことに留意が必要です。 ・ 調査形態としては、調査票の用紙を配布し記入してもらう方法、ウェブ上で回答を入力 してもらう方法がありますが、労働者の属性によってこれらを使い分ける方法を含め、それぞれの事業場の状況に適したやり方が考えられます。 ※ 紙での実施は、配布・回収の煩雑さがありますが、1人1台の PC が支給されていな い、個人の社用メールアドレスがない、個人のスマートフォンを業務に用いることを許可していない等の事業場では紙での実施が適している場合があります。 ・ 高ストレス者の選定方法については、上記の「職業性ストレス簡易調査票」を使用する 場合は、厚生労働省が示す基準・方法によることが適当です。実施者(委託先)の提案等 を踏まえて決定してください。

○3 ストレスチェックの実施
◆3−1 調査票の配布・回収・受検勧奨→実施事項
⇒ストレスチェックの調査票は、委託先の外部機関が配布し、回収します。 未受検者への受検勧奨は、委託先の外部機関または事業者が行う方法があります。 留意事項⇒ストレスチェックの実施に当たっては、労働者が戸惑うことのないように、あらかじめ、 実務担当者から社内に実施の予告(実施時期、委託先の外部機関名、調査票の配布・回収 の方法、受検勧奨の方法等)を行っておく必要があります。 ・ 全ての労働者がストレスチェックを受けることが望ましいため、事業者は、以下のよう な方法で、未受検者に対して受検勧奨を行うことができます。その際、業務命令のような 形で強要するようなことのないように十分に留意する必要があります。 ・委託先の外部機関が、未受検者に対して受検を勧奨する方法 ・事業者が、委託先の外部機関からストレスチェックを受けた労働者リストを入手する等 により受検の有無を把握した上で、未受検者に対して受検を勧奨する方法  ・ ストレスチェックは業務時間中に実施するものとし、管理者には、労働者が業務時間中 にストレスチェックを受けることができるよう配慮することが望まれます。
【参考】外国人労働者のストレスチェック受検への配慮  参照。
◆3−2 ストレスチェック結果の通知→実施事項⇒事業者は、個人のストレスチェック結果について、実施者(委託先)から、他者に内容 が分からない形で労働者本人に通知されるようにしなければなりません。 面接指導対象者に対しては、実施者(委託先)から、申出の勧奨を行います。 留意事項⇒事業者は、実施者(委託先)から、労働者本人に以下の事項を通知させます。  必ず通知させなければならない事項→ ア 個人のストレスチェック結果 @ 個人のストレスプロフィール A 高ストレス者に該当するか否かの評価結果 B 面接指導を受ける必要があるかどうかの評価結果(面接指導対象者に対しては、事業者への申出の勧奨(併せて、申出窓口及び申出方法)) 通知させることが望ましい事項 イ セルフケアのためのアドバイス(※) ウ 面接指導の申出窓口以外の相談可能な窓口(詳細は後述の4―6を参照。) ※ ストレスチェック結果を活用して、各自において、自身のストレスに気づき、また、 これに対処するための知識・方法を身につけ、それを実施すること(セルフケア)が重要であり、事業者はあらかじめ必要な助言(個人結果を受けて各自セルフケアに取り組むことの奨励及びそのための情報提供等。巻末資料Cを参考。)を行います。 ・ 事業者が個人結果の提供を受けることは、基本的には想定されていません。 ・ 個人結果の通知方法として、内容が分からないように密封された封筒(封書)に入れて 事業場に提供され、事務担当者等から個人に配布することは差し支えありません。 ・ 面接指導対象者に対象者であることを伝える場合、対象者だけに職場で封書を配布する と、面接指導対象者であると他の者に類推される可能性があることから、電子メールで通知する、全員にストレスチェック結果を封書で通知する際に併せて面接指導対象者である旨の通知文も同封して通知するなどの配慮が必要となります。 ・ 面接指導の申出を行ったことや面接指導の結果は事業者に伝わることになりますので、 面接指導対象者に対してはあらかじめその旨を通知しておくことが必要です。
◆3−3 ストレスチェック結果の保存→実施事項⇒事業者は、個人のストレスチェック結果について、委託先の外部機関において保存させることが望まれますようにします。 留意事項⇒・ 個人のストレスチェック結果は、法令上、労働者の同意なく事業者が提供を受けること はできないため、結果の保存については、委託先の外部機関における実施者又は実施事務 従事者が行うことになります。 保存場所は、外部機関の保管場所やサーバ内(結果がシステム上のデータの場合)で保管することが考えられます。 保存期間は、実施者において保存する場合は、5年間とすることが望まれます。 ※委託先との契約に際しては、ストレスチェック結果の記録の保存についても委託内容に含めるようにしましょう。 ・ ストレスチェック結果の保存を自社で行おうとする場合は、後述8を参照。

○4 医師の面接指導及び事後措置
◆4−1 面接指導の申出→実施事項
⇒事業者は、面接指導対象者から申出があった場合は、遅滞なく面接指導を実施しなければなりません。 事業者は、面接指導を担当する医師と、面接指導の日程調整を行います。 留意事項⇒・面接指導を受けることを希望する申出は、事業者に対して行われることになりますが、 以下のように、労働者が安心して申出できるための環境の整備が重要です。→【直接事業者に申し出る場合】基本的には事業者が個人のストレスチェック結果の提供を受けることは想定されていま せん。 【委託先の外部機関を経由して申し出る場合】面接指導の申出先を、直接事業者にではなく、外部機関を経由して申出ができるように することが考えられます。この場合、申出が行われたことは事業者に報告されることになるので、このことについて、労働者に予め(面接指導の申出勧奨の機会等に)伝えておく必要があります。    面接指導の申出先別・手続きの流れ 参照。
・ 面接指導を実施する日時は、就業時間内に設定することが望まれます。就業時間内に面 接指導を受ける際には、労働者の職場の管理者の理解を得ておくことも重要です。 ・ 面接指導を実施する場所は、(ヒアリングをもとに、シフト活用等、面接指導を受けていることが特定されない方法を例示)
◆4−2 面接指導の実施→実施事項⇒事業者は、面接指導の実施に際し、面接指導を担当する医師に、面接指導に必要な情報を提供します。 留意事項⇒面接指導を地産保に依頼する場合、必要事項を記入して申し込む必要があります。(地 産保への申込方法等は巻末資料Cを参照) ・面接指導を担当する医師に、面接指導に必要な例えば以下のような情報を提供すること になります。@〜Dまで。
・ 事業者は、上記の@〜Dの情報をとりまとめ、面接指導を担当する医師(地産保等)に 事前に送付することが望まれます。 ※Aの個人のストレスチェック結果については、委託先の外部機関から密封された封筒に 入れた状態で取り寄せ、他の情報と合わせて送付する、又は、本人が面接指導時に自ら 持参する等、労働者のプライバシーが確保される方法で面接指導を担当する医師(地産 保等)に情報提供する必要があります。 ※上記の面接指導を依頼するために必要な情報について、面接指導を担当する医師(地産 保等)に提供することは、法令に基づく対応であり、本人の同意を得なくても第三者提 供の制限は受けませんが、情報提供することは予め本人に伝えておくことが望まれます。
◆4−3 医師からの意見聴取→実施事項⇒事業者は、面接指導結果に基づき、就業上の措置の必要性の有無や講ずべき措置の内容 について、医師(面接指導を実施した医師等)から意見を聴取しなければなりません。 留意事項⇒・ 法令においては、面接指導を実施した後、遅くとも1月以内には医師から意見を聴取する必要があります。 ・ 面接指導を実施した医師から意見を聴取することが適当です。 ・地産保において面接指導を実施した場合は、面接指導結果とセットで医師の意見書が提 供されます。 ・ ストレスチェック指針が示す、医師の意見書に含めるべき事項は以下のとおりです。→ ア 就業区分及び就業上の措置の内容 イ 職場環境の改善に関する意見    ・ 職場環境の改善に関する意見は、人事労務管理に関わるものが多いため、人事労務担当 者や管理監督者とも連携して対応することが重要です。また、上司のパワーハラスメントなど、職場の人間関係に問題があることも考えられますので、情報管理も含め人事労務担当者と連携した慎重な対応が必要になります。
◆4−4 就業上の措置→ 実施事項⇒事業者は、医師の意見聴取の結果を踏まえ、必要があると認められる場合は、当該労働 者の実情を考慮して、対応可能な就業上の措置を講じなければなりません。 留意事項⇒・ 就業上の措置を決定する場合には、あらかじめ当該措置対象の労働者の意見を聴き、十分な話し合いを通じてその労働者の了解が得られるよう努め、労働者に対する不利益な取 扱いにつながらないように留意しなければなりません。 ・ 就業上の措置の実施に当たっては、当該労働者の職場の管理監督者の理解を得ることが 不可欠であり、プライバシーに配慮しつつ、管理監督者に対し、就業上の措置の目的・内 容等について理解が得られるよう必要な説明を行うことが適当です。 なお、管理監督者がいない場合は、業務量の調整、業務分担等のために必要な範囲で、 プライバシーに配慮しつつ、当該労働者の職場の同僚等に対し、就業上の措置の目的・内 容等について必要な説明を行うことが考えられます。 ・ 就業上の措置を講じた後、医師の意見書の措置期間をめどに、ストレス状態の改善の状 況に応じて、順次通常の勤務に戻す等適切な措置を講ずる必要があります。(意見聴取を行った医師等に意見を聴く必要がある場合、当該医師に再度相談することが望まれます。) ・ 面接指導結果に基づく医師の意見書を踏まえた対応は、個別の労働者への措置にとどまらず、それをきっかけに、経営改善に向けた組織のボトルネックへの気づきとして捉えることが重要です。
◆4−5 面接指導以外の相談対応→ 実施事項⇒事業者は、面接指導の申出窓口以外の相談できる窓口について、労働者に情報提供して おくことが望まれます。 留意事項⇒ストレスチェックの結果、高ストレスであるとされ、面接指導の対象となった労働者は、できるだけ面接指導を受けることが望ましいと考えられますが、面接指導を受けるかどうかはあくまで本人の選択によります。 ・ 面接指導を受けることを選択しなかった労働者も、高ストレスの状態で放置されること がないように、高ストレスであるとされた労働者には、以下のような、面接指導以外の相 談できる窓口について案内することが重要です。 また、高ストレスではない人も相談できる窓口があれば、併せて案内することが望まれます。 ・ このような相談窓口の案内について、委託先の外部機関からストレスチェック受検者に 適切に提供されるか、委託先の選定に当たって、よく確認することが重要です。→・「働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト こころの耳」の相談窓口 ・ 厚生労働省が運営 ・ 電話、SNS、メールによる相談に対応(無料) ・ 高ストレスではない人も含め、どなたでも利用可能 ※ 詳細は巻末資料Cを参照・委託先の外部機関が提供する相談サービス ・ 自社内にカウンセラー等による健康相談の体制がある場合はその窓口 等 ※相談窓口の案内に当たっては、相談内容が会社に知られず匿名性が担保されている ことを確認してください。
◆4−6 面接指導結果の記録と保存→実施事項⇒事業者は、面接指導結果の記録を5年間保存しなければなりません。 留意事項⇒・保存する記録としては、面接指導結果に基づき、次の事項を記載しなければなりません。→@ 面接指導の実施年月日 A 当該労働者の氏名 B 面接指導を行った医師の氏名 C 当該労働者の勤務の状況 D 当該労働者の心理的な負担の状況 E その他の当該労働者の心身の状況 F 当該労働者の健康を保持するために必要な措置についての医師の意見
・ 面接指導を実施した医師は、当該労働者の健康を確保するための就業上の措置を実施す るため必要最小限の情報に限定して事業者に情報を提供する必要があり、診断名、検査値、 具体的な愁訴の内容等の生データや詳細な医学的な情報は事業者に提供してはいけないこ とになっています。事業者としても、このような情報の提供を求めてはいけません。

○5 集団分析・職場環境改善
◆5−1 集団ごとの集計・分析(集団分析)実施事項
→事業者は、委託先の外部機関(実施者)に、個人のストレスチェック結果を集団ごとに 集計・分析させるよう努めなければなりません。 留意事項⇒ストレスチェック制度が、メンタルヘルス不調の未然防止を目的としていることを踏まえれば、個人のセルフケアとともに、ストレスチェックの結果を集団ごとに分析し、職場 環境を改善することが重要です。 ・ 集団分析の具体的な方法は、使用する調査票により異なりますが、国が標準的な項目として示す「職業性ストレス簡易調査票」(57 項目)又は簡略版(23 項目)を使用する場合には、これに関して公開されている「仕事のストレス判定図」によることが適当です。 ・ 集団での集計や分析は個人のストレスチェック結果を基にすることから、特に小規模事 業場においては、労働者のプライバシーの保護の観点から、個人が特定されない方法で実施するよう十分に留意する必要があります。 ・ 集団分析結果については、集計・分析の単位が 10 人を下回る場合には、個人が特定されるおそれがあることから、原則として集団分析結果の提供を受けてはいけません。 ※ 集団分析の下限人数の「10人」は、在籍労働者数ではなく、実際の受検者数(有効なデータ数)でカウントする必要があります。 ・ 集団ごとの集計・分析を自社で行おうとする場合は、後述8を参照。
◆5−2 職場環境改善→ 実施事項⇒事業者は、集団分析結果を活用し、職場環境のストレス要因の軽減に取り組むよう努めなければなりません。 留意事項⇒ 職場環境改善については、集団分析結果だけでなく、外部機関から提供された参考デー タやアドバイス、管理監督者による日常の職場管理で得られた情報、労働者(労働組合等) への意見聴取から得られた情報等も勘案して、勤務形態又は職場組織の見直し等の様々な 観点から職場環境を改善するための必要な措置を講じることが望まれます。 その取組内容は極めて多様ですが、例えば以下のような取組例があります。→ 事例A(技術サービス業・労働者数115名)、事例B(鉱業,採石業,砂利採取業・労働者86名)、 事例C(建設業)、事例D(製造業)、 事例E(製造業)   参照。

○6 労働者のプライバシーの保護→ 留意事項⇒・事業者は、ストレスチェック制度の実施に当たり、労働安全衛生法によりストレスチェックや高ストレス者の面接指導の実施の事務に従事した者には罰則付きで守秘義務が課せられているといった、労働者のプライバシーへの配慮を求めた法律の趣旨を十分踏まえる必要があります。 ・ 事業者は、個人のストレスチェック結果等について、当該情報を保有している実施者等に対して、不正に入手したり、提供を強要したりしてはいけません。 個人のストレスチェック結果については、事業者が提供を受ける必要があるのは限られた場合であり、原則として、事業者は入手すべきではありません。仮に合理的な理由があり、労働者の事前の同意を経て提供を受けた場合であっても、情報は適切に管理し、社内で共有する場合も必要最小限の範囲に止める必要があります。 ・ ストレスチェック制度を実施する中では、個々のストレスチェック結果をはじめとした労働者の個人情報が取り扱われることとなりますが、特に個人のストレスチェック結果については、健康情報であり、個人情報保護法第2条第3項に規定する「要配慮個人情報」に含まれる機微な情報となります。 こうした情報については、労働者のプライバシー保護の観点から、その入手や提供において極めて慎重な取り扱いが求められます。
・なお、商工会や協同組合など業界団体に所属している企業(業界団体所属型)や、工業 団地・商店街・卸団地など地域的にまとまっている企業(地域集積型)が、ストレスチェックの実施や集団分析等についても共同で行う場合にあっても、当該団体等の事務局は、 プライバシー保護に留意する必要があります。

○7 不利益取扱の禁止→留意事項⇒ ・事業者が、ストレスチェック及び面接指導において把握した労働者の健康情報等に基づき、 当該労働者の健康の確保に必要な範囲を超えて、当該労働者に対して不利益な取扱いを行うことはあってはなりません。 ・ 法律により、@ 労働者が面接指導の申出をしたことを理由とした不利益な取扱いは禁 止されています。 また、A ストレスチェック結果のみを理由とした不利益な取扱いについても、これを行ってはなりません。 ・ 指針により、次に掲げる事業者による不利益な取扱いについては、一般的に合理的なものとはいえないため、これを行ってはなりません。 B 労働者がストレスチェックを受けないこと等を理由とした不利益な取扱い→● ストレスチェックを受けない労働者に対して、これを理由とした不利益な取扱いを行うこと。例えば、就業規則においてストレスチェックの受検を義務付け、受検しない労働者に対して懲戒処分を行うことは、労働者に受検を義務付けていない法の趣旨 に照らして行ってはならないこと。 ● ストレスチェック結果を事業者に提供することに同意しない労働者に対して、これ を理由とした不利益な取扱いを行うこと。 ● 面接指導の要件を満たしているにもかかわらず、面接指導の申出を行わない労働者 に対して、これを理由とした不利益な取扱いを行うこと。 C 面接指導結果を理由とした不利益な取扱い→● 措置の実施に当たり、医師による面接指導を行うこと又は面接指導結果に基づく必要な措置について医師の意見を聴取すること等の法令上求められる手順に従わず、不利益な取扱いを行うこと。 ● 面接指導結果に基づく措置の実施に当たり、医師の意見とはその内容・程度が著しく異なる等医師の意見を勘案し必要と認められる範囲内となっていないもの又は労働者の実情が考慮されていないもの等の法令上求められる要件を満たさない内容の不利益な取扱いを行うこと。 ● 面接指導の結果を理由として、次に掲げる措置を行うこと。→(a)解雇すること。 (b)期間を定めて雇用される者について契約の更新をしないこと。 (c)退職勧奨を行うこと。 (d)不当な動機・目的をもってなされたと判断されるような配置転換又は職位(役 職)の変更を命じること。 (e)その他の労働契約法等の労働関係法令に違反する措置を講じること。

○8 外部委託ではなく自社で実施する場合の留意点→留意事項⇒ストレスチェックの実施については、外部委託せず、自社で実施することも可能ですが、 その場合には、個人のストレスチェック結果の取扱いが生じること等から、以下のような点に十分留意する必要があります。 そのため、自社でストレスチェックの実施を行う場合は、プライバシー保護の観点から、 事業場内の厳格な体制整備のほか、極めて慎重な運用が求められます。
@ 実施体制の整備→・ストレスチェックの実施を外部委託せず、自社で実施する場合は、実施者(医師・保健師等)、実施事務従事者を自社内で選定する必要があります。人事に関して直接の権限を持つ監督的地位にある者(社長、人事部長等)はストレスチェックの実施の事務には従事できない等の制限が課されます。 ・ また、実施者、実施事務従事者は、労働者のストレスチェック結果等の健康情報を取り扱うこととなるため、守秘義務が課されます(違反した場合の罰則あり)。
A ストレスチェックの実施→・特に小規模の事業場において、自社内で実施事務従事者を選任し、個人のストレスチェック結果等の健康情報を取り扱おうとする場合、守秘義務が課されることを含め役割の周知、運用の徹底がなされない限り、事業者に個人情報が容易に把握されてしまうの ではないかという不安が生じやすく、ストレスチェック制度への労働者の協力が得られず、適切な実施が難しくなります。
B 結果の通知→・結果の通知に関しては、外部委託と比較してプライバシー保護上のリスク(誤送信・誤配布・人間関係から生じる情報漏洩等の可能性)及びその防止を含めた運用負担(封入・確認・結果通知記録の管理等の事務負担、人的負担)がともに大きくなります。
C 面接指導の申出勧奨→・面接指導の申出勧奨に当たり、面接指導対象者だけに職場で封書を配布すると、面接指導対象者であると他の者に類推される可能性があることから、電子メールで通知する、 自宅に封書で郵送する、全員にストレスチェック結果を封書で通知する際に併せて面接指導対象者である旨の通知文も同封して通知するなどの配慮が必要となります。 ・ストレスチェックの実施を外部委託する場合、当該通知は外部機関から面接指導対象者に直接行われますが、自社で実施する場合は、実施事務従事者を自社内で選定し、これらの通知の事務を行わせる必要があります。
D 面接指導の実施→・面接指導を地産保等の外部機関に依頼して実施する場合、面接指導が社外で完結し、 面接指導結果の提供範囲(※)が明確になりますが、自社内で面接指導を実施する場合には、医師を確保した上で、事業者への報告内容の線引きについて整理が必要です(個人情報と就業上の措置に必要な情報が曖昧になりやすいので留意が必要です)。 ※ 面接指導結果の記録の作成に当たっては、面接指導を実施した医師は、当該労働者の健康を確保するための就業上の措置を実施するため必要最小限の情報に限定して事業者に情報を提供する必要があり、診断名、検査値、具体的な愁訴の内容等の生デ ータや詳細な医学的な情報は事業者に提供してはいけません。
➅ 集団分析の実施→・部機関が集計・分析を実施して事業場に提供する場合は、個人を特定できない措置 (10 人未満は非表示など)が自動的に講じられますが、自社内で集計・分析する場合には、実施事務従事者を自社内で選定し、個人を特定できない方法による実施を厳守するとともに、守秘義務の徹底が必要となります。もとより、小規模事業場では社内の人 間関係が近いことから、個人特定のリスクが高く、社内で管理していること自体への労 働者の不安が生じやすいことに留意が必要です。 ・ 労働者数10人未満の事業場や10人以上の事業場における10人未満の集団単位では、 プライバシー保護の観点から、原則として集団分析を実施しないでください。
F 結果の保存→・ストレスチェックの実施を外部委託せず、自社で実施する場合は、実施者(医師・保健師等)、実施事務従事者がストレスチェック結果を保存することとなりますが、この場合、事業場内のネットワークのサーバ、保管庫等に保存するとともに、パスワード設定等により、事業者等が閲覧できないようにする等の厳格な情報管理が求められます。 ※ 厚生労働省の所管する法令の規定に基づく民間事業者等が行う書面の保存等における 情報通信の技術の利用に関する省令(平成17年厚生労働省令第44号)に基づき適切な保存を行う必要があります。

≪巻末資料≫
○巻末資料@
→ ストレスチェック制度実施規程(モデル例) ※ この規程(モデル例)は、定めておくと良いと考えられる事項を詳細にお示ししたもの であり、あくまで一例です。それぞれの事業場の実情に応じてアレンジしてください。
○巻末資料A→ サービス内容事前説明書(モデル例) 厚生労働省「小規模事業場ストレスチェック実施マニュアル」に基づく「サービス内容事 前説明書」は、ストレスチェック実施サービスを提供する事業者が、その委託契約に先立ち、 サービス内容・料金等について適切に把握できるよう、重要事項を分かりやすく明示するも のです。
○巻末資料B→ 職業性ストレス簡易調査票 職業性ストレス簡易調査票(57項目)
・簡略版(23項目)

○巻末資料C 関係法令・各種情報等
1.法令・指針・通達等
→ストレスチェック制度関係法令等(厚労省HP) 関係法令や指針、マニュアル、通達、Q&A等を掲載しています。社内ルー ル例、ストレスチェック制度実施規程(モデル例)、サービス内容事前説明 書(モデル例)の編集可能媒体も掲載しています。 → https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000181838.html

2.事業者向け各種情報 →・産保センター・地産保の利用案内(労働者健康安全機構HP) 都道府県の産業保健総合支援センター(産保センター)及び全国350か所 の地域産業保健センター(地産保)で提供している支援サービスの内容や利 用方法、最寄りの産保センター・地産保の連絡先等を掲載しています。↓
https://www.johas.go.jp/Portals/0/sanpocenter/service.html
・ストレスチェック等のメンタルヘルス対策(厚労省HP) ストレスチェック・メンタルヘルス対策の手引きや取組事例集などの各種 支援ツールを掲載しています。
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/
・ストレスチェック制度の情報提供(こころの耳HP) ストレスチェック制度の実施に役立つ情報を広く掲載しています。(スト レスチェックの調査票(57項目、80項目)、職場環境改善ツール等) → https://kokoro.mhlw.go.jp/etc/kaiseianeihou/
・はじめてのメンタルヘルス対策(こころの耳HP) 中小企業におけるストレスチェック・メンタルヘルス対策の取組事例や、 職場のメンタルヘルス研修ツール等を掲載しています。 → https://kokoro.mhlw.go.jp/employer/ ○外国人労働者のストレスチェック受検支援ツール(厚労省HP) 外国語版の調査票や受検案内の文書例等を掲載しています。↓
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/index̲00022.html

3.労働者がセルフケアに活用できる各種情報
・セルフケアツール(こころの耳HP) 労働者がセルフケアに活用できる動画やストレスセルフチェック等の様々 なコンテンツを掲載しています。↓
https://kokoro.mhlw.go.jp/worker/
・こころの耳相談窓口(こころの耳HP) 高ストレス者等の方が、メンタルヘルス不調等に関する相談ができる相談 窓口(電話・メール・SNS)を設置しています。無料でご利用いただけます。 → https://kokoro.mhlw.go.jp/soudan/

次回は新たに「社会保障審議会障害者部会(第152回)の資料について」からです。

第3回「高年齢労働者の労働災害防止対策に関する検討会」資料 [2025年12月05日(Fri)]
第3回「高年齢労働者の労働災害防止対策に関する検討会」資料(令和7年11月5日)
議題 (1)高年齢労働者の労働災害について (2)高年齢者の労働災害防止のための指針について (3)その他
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_65614.html
◎資料1 松尾構成員提出資料 資料一覧
(情報提供) 労働者の体力測定に関わる研究例
○マッチングの方法について、現ガイドラインでは事業者任せの書き方になっている 判断材料となる資料(エビデンス)の提供が必要
◆エイジフレンドリーガイドライン
→4.高年齢労働者の健康や体力の状況に応じた対応⇒ 高年齢労働者の状況に応じた業務の提供。 ・個々の労働者の健康や体力の状況に応じて、安全と健康の点で適合する業務を高年齢労働者と マッチングさせるよう努めること
転倒(つまずき)の要因:一位「何もないところでつまずいた」 「足のもつれ」
○「 疲れやすさ」の指標となる体力 全身持久性体力cardiorespiratory fitness:CRF
◆疾病発症との関連を示した多数の先行研究がある代表的な体力項目→「多くの重要なリスクファクターの中で唯一定期検査の項目に入って ないのはCRF」
○労働者のCRFをいかに評価するか
ゴールドスタンダード 最大酸素摂取量測定VO2max
→踏み台昇降テスト
○簡易体力測定(J-NIOSH step test)開発→JNIOSH step test:JST(心拍数を測定)
○簡易体力測定(J-NIOSH step test)によるCRF評価 →労働者⇒+10%(SEE 4.05 ml/kg/min)アップ
○質問票(WLAQ)の開発→Q1〜Q7まで。
○質問票(WLAQ)によるCRF評価⇒ ウェブサイトで(個人で)評価可能→労働者⇒CRF 1MET増加⇒ 疾病リスク10〜30%低下

○マッチングの方法について、現ガイドラインでは事業者任せの書き方になっている 判断材料となる資料(エビデンス)の提供が必要→体力レベルが「低い」ゾーン(5〜8 METs)の労働者にとっては、 高強度(6 METs以上)の作業を含むこの職業に従事することは、 労働災害のリスクを高める可能性がある。⇒労働者個人がウェブサイトで簡単に「マッチング」できる仕組みづくりへ。
○JST(簡易体力検査)によるCRF評価⇒ ウェブサイトで(個人で)評価可能に
◆心拍(脈拍)を手首装着デバイスを 用いて参加者自身が測定できる
○CRF向上策も提示すべき→近年、アスリートではなく、疾患者など体力低位者に適用した研究成果が多数⇒CRF(VO2max)の改善には所要時間より運動強度の影響が(すごく)大きい→末梢(筋)の酸素利用能の改善、中枢(心肺)の呼吸循環能(心機能)の改善へ。
○CRF向上策も提示すべき いかに安全に実践するか⇒日本発のHIITプログラム→運動プログラムツール(安衛研)、インターバル速歩(信州大学)が必要。

≪体力測定・運動実践を考える上での留意すべきこと≫↓
○ただし、どの体力測定にも課題がある
…→運動トレーニングによるVO2max実測値の増減に推定値は連動するか?
○補正は可能 体力測定にはそれぞれ課題がある→転倒等リスクチェックなど・・・。
○東京圏の労働者(9,406人)を分析対象とした疫学調査
◆多くの人が「運動は健康に良い」と認識 92.7%
◆運動習慣あり:全体の約33%
◆運動習慣がない人の73%が 「できれば運動習慣を身につけたい」と回答 72.5%

○運動の必要性を頭では分かっていてもやらない、やれない。これこそ体力科学研究におけるコンセンサスであり、 最大の未解決テーマ。事業者や労働者に求めるにしてもそのあたりへの配慮も必要。→運動習慣がない人が掲げた 運動を習慣化するための条件上位2つは、 「時間的余裕(40%)」と 「経済的余裕(16%)」⇒自身のCRFを知りたいか?
○実験室から社会実装へ(健康経営企業での職場介入
◆ポジティブ→ • 15分の運動で離席は25分くらい。ちょうどいい。 • 会社が言ってくれるならやってみようかとハードルが下がる。 • 業務中に運動することに対して周囲の理解は得られた。
◆ネガティブ→ • 汗かくとその後の仕事がやりにくい。 • 運動する姿を人に見られたくない。 • 運動ができる人の隣ではやりたくない。 • 戦闘モードの仕事中は運動の気持ちになれない。 • 職場だと知っている人が多いので気になる(イヤ)。

○私たちの行動指針→体力科学の立場から労働者の健康リスクを軽減するための研究を推進させ、科学的心理に依拠した情報を公開することで、社会に貢献いたします。
ご清聴ありがとうございました


◎資料2 高年齢者の労働災害防止のための指針案について
○論点1 趣旨
◆これまでの御意見
→・ゼロ災に向けて・・・・。4意見あり。
◆対応方針→・検討会における御議論を踏まえ、改正労働安全法の条文との整合性を図り、労働災害の防止を図るための措置であることを指針に明確 に記載する。 ・ゼロ災の趣旨を踏まえた文言を通達に盛り込む。⇒指針案、高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン (エイジフレンドリーガイドライン)あり。
◆通達に盛り込む事項→・一人の被災者も出さないとの基本理念の実現に向け、高年齢者の労働災害を少しでも減らし、労働者一人一人が安全で健康に働くこと ができる職場環境の実現に向けて取り組むこと、請負の形式による契約により業務を行う者についても、この指針を参考にすることを 記載する。

○第2 事業者が講ずべき措置
◆これまでの御意見
◆対応方針
→・別紙を参照している箇所(黄色網掛け部)は、通達に記載する。・事業者を主体とした指針であるため、事業者が「講ずべき措置」に修正する。
◆通達に盛り込む事項→・事業場における安全衛生管理の基本的体制及び具体的取組の体系について図解して記載する。

○論点2 安全衛生管理体制の確立等(1)経営トップによる方針表明及び体制整備
◆これまでの御意見
→ 2意見あり。
◆対応方針→・現行ガイドラインのアからエについて、「経営トップによる方針表明及び体制整備」(ア、イ)と「安全衛生委員会等における調査審 議等」(ウ、エ)の2項目に分割して指針に記載する。 ・安衛則第 23 条の2に基づき小規模事業場に求められている関係労働者の意見聴取の機会を活用すべきことを指針に記載する。【1 (1)イA】

○論点2 安全衛生管理体制の確立等(2)危険源の特定等のリスクアセスメントの実施
◆これまでの御意見
→5意見あり。
◆対応方針→・リスク低減措置の基本的な考え方を指針に明示する。 ○別紙を参照している箇所(黄色網掛け部)は通達により示す。併せて、エイジアクション100のチェックリストには、業種別に優先して取り組むべき事項が示されていることを補足して、通達に記載する。 ・リスクアセスメントやヒヤリハットに関しては、厚生労働省HP(職場のあんぜんサイト)の各事例を参考にする旨を通達に記載し、理解向上を促す。 ・フレイル、ロコモティブシンドロームの定義については、通達に記載する。
◆通達に盛り込む事項→・ 社会福祉施設等で利用者の事故防止に関するヒヤリハッ ト事例の収集に取り組んでいる場合、こうした仕組みを労働災害の防止に活用することが有効であること。 ・ 労働安全衛生マネジメントシステムを導入している事業場においては、労働安全衛生方針の中に、例えば「年齢に かかわらず健康に安心して働ける」等の内容を盛り込んで 取り組むこと。 ・リスクアセスメントにより職場の改善を進めた事例として、厚生労働省HP(職場のあんぜんサイト)の事例でわかる職場のリスクア セスメントを参考にすること等を記載する。また、危険源の洗い出しに際し、厚生労働省HP(職場のあんぜんサイト)の労働災害事 例集やヒヤリ・ハット事例集を参考にすること等。 ・リスクアセスメントの実施に際しては、「エイジアクション100」のチェックリスト(2020年中央労働災害防止協会)を活用することも有効であること等、当該チェックリストを添付して解説する。また、チェックリストでは業種別に優先的に取り組む事項も示されており、これらも踏まえてチェックリストの活用を促すこと。 ・フレイルとは、加齢とともに筋力や認知機能等の心身の活力が低下し、生活機能障害や要介護状態等の危険性が高くなった状態であり、ロコモティブシンドロームとは、年齢とともに骨や関節、筋肉等運動器の衰えが原因で「立つ」、「歩く」といった機能(移動機 能)が低下している状態をいうこと。

○論点3 職場環境改善の事項(1)身体機能の低下を補う設備・装置
◆これまでの御意見
→ 2意見あり。
◆対応方針→・暑熱な環境への対応について、特に高齢者に対して必要である旨を指針に記載する。 ・感覚器の老化については、年齢によらず聞き取りやすい中低音域の音を採用すること等が記載されており引き続き指針に記載する。 ・通達を参照している箇所(黄色網掛け部)は、通達により示す。
◆通達に盛り込む事項→パソコン等を用いた情報機器作業に関して、「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」(令和元年7月 12 日付け 基発 0712 第3号厚生労働省労働基準局長通知)を参照すること。

○論点3 職場環境改善の事項(2)高年齢労働者の特性を考慮した作業管理
◆これまでの御意見
◆対応方針
→・職場における熱中症対策の強化に係る労働安全衛生規則の一部を改正する省令(令和7年厚生労働省令第57号)の施行(令和7年6月1日施行)を踏まえて修正する。

○論点4 高年齢労働者の体力の把握方法(1)健康状況の把握
◆これまでの御意見
◆対応方針
→健康診断等の取組については「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」(平成8年10月1日 健康診断結果措置指 針公示第1号)に記載されていることから、本指針においては、高年齢者について特に留意すべき項目を示すこととし、取組の参考と なる取組例(紫色網掛け部)は通達に記載する。なお、分かりやすさの観点から取組例の一部を指針に例示する。
◆通達に盛り込む事項→以下に掲げる例を参考に、高年齢者が自らの健康状況を把握できるような取組を実施することが望ましいこと。⇒ ・ 労働安全衛生法で定める健康診断の対象にならない者が、地域の健康診断等(特定健康診査等)の受診を希望する場合は、必要な勤務時間の変更や休暇の取得について柔軟な対応をすること。 ・ 労働安全衛生法で定める健康診断の対象にならない者に対して、事業場の実情に応じて、健康診断を実施するよう努めること。 ・ 健康診断の結果について、産業医、保健師等に相談できる環境を整備すること。 ・ 健康診断の結果を高年齢労働者に通知するに当たり、産業保健スタッフから健康診断項目毎の結果の意味を丁寧に説明する等、高年齢者が自らの健康状況を理解できるようにすること。 ・ 日常的なかかわりの中で、高年齢者の健康状況等に気を配ること。

○論点4 高年齢労働者の体力の把握方法(2)体力の状況の把握
◆これまでの御意見
→1 体力チェックの実施に関すること(5意見)  2 体力の範囲に関すること(3意見) 3 体力チェックの対象に関すること(3意見) 4 体力チェックの方法に関すること(5意見)
◆対応方針→・指針案の1(2)に、リスクアセスメントの結果を踏まえ、体力チェックを含めた(指針案の2から5に示す)事項を優先順位の高いものから実施することが記載されている。 ・体力の範囲の考え方は通達に記載する。 ・体力チェックの対象について、事業場の実情に応じて高年齢者だけでなく身体機能の低下が始まりかけている若年期も含めて実施する ことが望ましいことを通達に記載する。 ・体力チェックについて、国が標準的手法や基準値を設けることについては、指針、通達には記載せず、引き続き、検討することとして 報告書に記載する。 ・体力チェックに評価基準を設ける場合、高年齢者が従事する職務の内容等に照らして、合理的な水準に設定するべきであることを明確化するため、従事する職務の内容に照らす旨を指針に記載する。併せて、職場環境の改善や高年齢者の体力の向上に取り組むことが重 要であること、また評価に当たっては、仕事内容に対して必要な能力等が有るかという観点にも留意する必要があることを通達に記載。 ・体力チェックを行う場合には、対象者の状況に応じて高負荷にならないように安全に十分配慮することを通達に記載する。 ・体力チェックについて、転倒等リスク評価セルフチェック票に限らず、労働者が自ら体力の状況を把握できるオンラインツール、質問紙による推定等の様々な手法を活用できることを明確化するため指針に記載する。併せて、それらの手法に係る解説を通達に記載する。
◆通達に盛り込む事項→・体力の範囲は、歩行能力等の筋力、バランス能力、敏捷性等の労働災害に直接的に関与するものとし、事業場の実情に応じて感覚機能 や認知機能等を含めて差し支えないこと。 ・体力チェックに際して、事業場の実情に応じて高年齢者だけでなく身体機能の低下が始まりかけている若年期も含めて実施することが 望ましいこと。 ・体力チェックに評価基準を設ける場合、高年齢者が従事する職務の内容等に照らして合理的な水準に設定し、職場環境の改善や高年齢 者の体力の向上に取り組むことが重要であること、また評価に当たっては、仕事内容に対して必要な能力等が有るかという観点にも留意する必要があること。 ・体力チェックを行う場合には、対象者の状況に応じて高負荷にならないように安全に十分配慮する必要があること。 ・体力チェックとして活用する、転倒等リスク評価セルフチェック票、労働者が自ら体力の状況を把握できるオンラインツール、質問紙 による推定等の解説。

○論点4 高年齢労働者の体力の把握方法(3)健康や体力の状況に関する情報の取扱い
◆これまでの御意見   ◆対応方針

○論点5 高年齢労働者の体力に応じた対応(1)個々の高年齢労働者の健康や体力の状況を踏まえた措置    ◆これまでの御意見   ◆対応方針  ◆通達に盛り込む事項

○論点5 高年齢労働者の体力に応じた対応(2)高年齢労働者の状況に応じた業務の提供 ◆これまでの御意見→・高齢者の体力の低下に伴って、配慮が重要であり、当該労働者を排除しないことを含めて、指針に書き込みをしていただきたい。 ・高齢者は体力がないから仕事から排除するということにならないようにすべき。 ・高齢者の場合、定年退職後、それまでやっていた仕事とは別の内容の仕事に就くことが多い。しかもその内容としては、倉庫業務やビ ル管理、清掃、介護業務など肉体労働的なものが多くなる。このことが職務内容の違いと相互に作用して、労働災害につながっている 可能性がある。この視点での調査と、それを踏まえた対策が必要ではないか。 ・在宅勤務者は1日の歩数が、在宅勤務をしていない人より少なく身体活動が低い集団であり、在宅勤務者が久々に出勤したら、階段で 転倒して骨折したなどの事例があり、在宅勤務が長期に及ぶと、筋力等の身体機能が低下することにも配慮が必要。
◆対応方針→・高年齢者の業務内容の決定に当たっては、健康や体力の状況に応じて、適合する業務をマッチングさせること、さらに個々の労働者の 状況に応じた対応を行う際には、業務内容に応じ、健康や体力の状況のほか、職場環境の改善状況も含め検討すること等を指針に記載 する。 ・在宅勤務が長期間に及ぶと筋力等の身体機能が低下する場合があることに留意することを通達に記載する。
◆通達に盛り込む事項→・在宅勤務が長期間に及ぶと筋力等の身体機能が低下する場合があることに留意すること。

○論点5 高年齢労働者の体力に応じた対応(3)心身両面にわたる健康保持増進措置
◆これまでの御意見
→8意見。・THPを外すとなると、メンタルヘルス、両立支援の指針も外すということか。こういった指針は、高齢者が多く適用になる。
◆対応方針→・「事業場における労働者の健康保持増進のための指針」及び「労働者の心の健康の保持増進のための指針」に基づき取り組むべきである旨は指針に残し、対策例については、通達で記載する。 ・身体機能の維持向上については労使が協力して取り組むべき旨を通達で記載する。
◆通達に盛り込む事項→・「事業場における労働者の健康保持増進のための指針」及び「労働者の心の健康の保持増進のための指針」等に基づき、労働者の健康 保持増進対策やメンタルヘルスケアに取り組むこと。その実施に当たっては、以下に掲げる対策例があること。⇒・ 健康診断や体力チェックの結果等に基づき、必要に応じて運動指導や栄養指導、保健指導、メンタルヘルスケアを実施すること。 ・ フレイルやロコモティブシンドロームの予防を意識した健康づくり活動を実施すること。 ・ 身体機能の低下が認められる高年齢労働者については、身体機能の維持向上のための支援を行うことが望ましいこと。例えば、運動する時間や場所への配慮、トレーニング機器の配置等の支援が考えられる。 ・ 保健師や専門的な知識を有するトレーナー等の指導の下で高年齢労働者が身体機能の維持向上に継続的に取り組むことを支援する こと。 ・ 労働者の健康管理を経営的視点から考え、戦略的に実践する健康経営の観点から企業が労働者の健康づくり等に取り組むこと。 ・ 保険者と企業が連携して労働者の健康づくりを効果的・効率的に実行するコラボヘルスの観点から職域単位の健康保険組合が健康づくりを実施する場合には、連携・共同して取り組むこと。 ・身体機能の維持向上については労使が協力して取り組むこと。

○論点6 安全衛生教育(1)高年齢労働者に対する教育
◆これまでの御意見 5意見あり。
◆対応方針
→・高年齢者の労働災害防止の取組として教育を含む複合介入を行うことで労働災害が減少し(抑制され)ていることを踏まえ、安全衛生教育の重要性について通達で記載する。 ・安全衛生教育の年間計画を立案する際には、単一の災害にのみ焦点を当てるのではなく、行動災害一般に共通する教育も行うことが望ましいことを通達に記載。 ・転倒につながるような医薬品を服薬している場合に転倒につながる恐れがあることを通達に記載する。
◆通達に盛り込む事項→・高年齢者の労働災害防止の取組として教育を含む複合介入を行うことで労働災害が減少し(抑制され)ていることを踏まえると、安全 衛生教育を含む複数の対策を講じることが望ましいこと。 安全衛生教育の年間計画を立案する際には、単一の災害にのみ焦点を当てるのではなく、腰痛、転倒のような複数の災害を対象としつ つ、行動災害一般に共通する教育や、腰痛や転倒に焦点を当てた教育の両方を行うようにすることが望ましいこと。 ・転倒につながるような医薬品を服薬している場合に転倒につながる恐れがあること。

○論点6 安全衛生教育(2)管理監督者等に対する教育
◆これまでの御意見   ◆対応方針  ◆通達に盛り込む事項

○論点7 労働者と協力して取り組む事項
◆これまでの御意見
→・若い世代に対し、20〜30年後は自分たちの問題になるという観点で、将来的な環境作り、体力、健康作りをしましょうというアプローチを盛り込めたらよい。 ・ここの部分だけ、健康という言葉がとても頻出しており、労働者自ら健康作りをしていく内容になっている。今までの流れと少し違う印象を持ったため、ここの書き方を全体の流れと合わせていただきたい。 ・ヒヤリハットの事例を持ってきて、その複合原因をわかりやすく見えやすく提示できたら現場の方々には受け入れられていくのでは。 職場のあんぜんサイトにある事例も積極的に見に行きたくなるような仕組みが有ると良い。ある企業では、KYTのイラストをやった り、ヒヤリハットがあるとすぐ全店舗に情報共有する仕組みがあるようで、現場の方々から怖いよね、分かるよね、といった声が聞こえてくる。その「怖い」の背景にこんなことがありますというエビデンスを載せて紹介できたら。・企業だけの責任、従業員だけの責任ということではなく、労使共に取り組むべき点もある。
◆対応方針→・事業者が講じる措置に係る指針であることから、具体的取組については通達に記載する。 ・ヒヤリハットに関しては、厚生労働省HP(職場のあんぜんサイト)の各事例を参考にする旨を通達に記載し、理解向上を促す。
◆通達に盛り込む事項→・労使の協力の下、以下の取組を実情に応じて進めることが必要であること。⇒・ 高年齢労働者が自らの身体機能や健康状況を客観的に把握し、健康や体力の維持管理に努めること。なお、高齢になってから始めるのではなく、青年、壮年期から取り組むことが重要であること。 ・ 事業者が行う労働安全衛生法で定める定期健康診断を必ず受けるとともに、短時間勤務等で当該健康診断の対象とならない場合 には、地域保健や保険者が行う特定健康診査等を受けるよう努めること。 ・ 事業者が体力チェック等を行う場合には、これに参加し、自身の体力の水準について確認し、気付きを得ること。 ・ 日ごろから足腰を中心とした柔軟性や筋力を高めるためのストレッチや軽いスクワット運動等を取り入れ、基礎的な体力の維持 と生活習慣の改善に取り組むこと。 ・ 各事業所の目的に応じて実施されているラジオ体操や転倒予防体操等の職場体操には積極的に参加すること。また、通勤時間や 休憩時間にも、簡単な運動を小まめに実施したり、自ら効果的と考える運動等を積極的に取り入れること。 ・ 適正体重を維持する、栄養バランスの良い食事をとる等、食習慣や食行動の改善に取り組むこと。 ・ 青年、壮年期から健康に関する情報に関心を持ち、健康や医療に関する情報を入手、理解、評価、活用できる能力(ヘルスリテ ラシー)の向上に努めること。
○ヒヤリハットに関して、厚生労働省HP(職場のあんぜんサイト)のヒヤリ・ハット事例集を参考にすること。

○論点8 国、関係団体等による支援
◆これまでの御意見
 ◆対応方針 予算事業に係る事項については、通達に記載する。
◆通達に盛り込む事項→・具体的には、保険者による事業者に対する支援策等の情報 提供や、保健所等の保健師や管理栄養士等の専門職が、事業 場と協働して、事業協同組合等が実施する研修やセミナー で、地域の中小事業者に対して職場における健康づくりや生 活習慣改善について講話や保健指導を実施するといった取組 が行われており、これらの支援を活用すること。 ・(3)について、厚生労働省で実施する補助制度としてエイジフレンドリー補助金があること。 ・(4)について、厚生労働省所管の制度・事業として、優良企業公表制度、SAFEアワード等があること。

○大臣指針に基づく措置の促進等について 周知・広報等について
◆これまでの御意見
→・周知の観点から、現状のガイドラインは長すぎる。できるだけシンプルにしたほうが周知はしやすいのではないか。 ・ガイドラインの認知度が低いことが大きな問題で、周知をどのようにしていくかが大きな課題。使用者、労働者ともに、自分事として とらえることが大事。 ・この検討会は 12 月にまとめるというが、4ヶ月で周知をはからなければならないので、いまあるガイドラインを前提として、指針化 を速やかに行っていただきたい。 ・ガイドライン自体の認知度が非常に低い。実施すれば効果があることが書かれているので、指針をいかに周知していくかについてはこの後の論点になってくると思うので、しっかり議論していただくことが重要ではないか。
◆対応方針→・ご意見の内容を報告書に記載することとし取組を進めていく。 ・指針をわかりやすく解説したリーフレットやパンフレットを作成し、周知・広報等に努めていく。

○大臣指針に基づく措置の促進等について 調査・研究・その他について
◆これまでの御意見
→・国際的にも高齢化が問題となっているので、世界に参考となるようなエビデンスをそろえていただけるとありがたい。 ・転倒の研究はあるが、75歳以上で、寝たきりにならない事を目的とした調査で、職域の調査はほとんど行われていないのが実情。年齢としても、60歳以上、70歳前後を対象としたものはあまりない。 ・高年齢労働者を雇用する企業のグッドプラクティスはあり、現行のガイドラインに沿ったような展開で事業場を動かしている企業もある。 ・海外のエビデンスはいくつかあるので紹介できる。国内でも1年間のフレイルがあると1年後には仕事中に転倒しやすいというエビデ ンスがある。 ・労働災害のデータと労働者の身体機能や体力のデータが紐付いているコホート集団が国内にはない。大きな企業は体力測定もやっていて労災データも持っているため、そういう企業に厚労省からお声掛けいただけないか。 ・職務内容と労災、感覚器の老化と労災との関係についての調査と、その結果を踏まえた対策が必要ではないか。 ・高齢者用の体力測定について簡便な自記式の調査票のようなものがあるとよいのではないか。 ・報告書の取りまとめまでに整理できるものと、引き続き積み残しの課題となるものがあるのではないかと理解している。積み残しとなる課題についても、どのような場で継続検討するのかということも含めて、検討結果の所に記載いただきたい。
◆対応方針→・ご意見の内容を報告書に記載することとし取組を進めていく。 ・本検討会で紹介された文献等については、報告書に盛り込んでいく。 ・引き続き検討することとされた積み残しの課題については、調査研究や指針に基づく取組の状況等を見つつ、検討を行う旨を報告書に 記載する。

○資料2 筋肉減弱(サルコペニア)に対する診断アルゴリズム 【AWGS 2019】
【簡易評価】
@ 下腿周囲長(もしくは「指輪っかテスト」) A 握力(カットオフ:男性28s、女性18s) B 5回椅子立ち上がりテスト(12秒以上時間を要する) ⇒@の基準を下回り、さらにAもしくはBが下回った場合、筋肉 減弱(サルコペニア)の可能性が高いとして疑う
※2019年以降、さらに豊富なエビデンス蓄積があり、2025年11月5日に【AWGS2025】がリリースされる予定


◎資料3 石ア構成員提出資料
高年齢者の労働災害防止のための指針について 石ア由希子
○@論点2
(2)のリスク低減措置の中で「身体負荷を軽減する個人用の装備の使用」を挙 げて頂いているかと思いますが、具体例について、通達等で記載頂けたら良いように思いました。
○A論点3(1)の暑熱な環境への対応で「一般に、年齢とともに暑い環境に対処しにくく なることを考慮し」という点を追記頂いていますが、高齢者は年齢とともに、暑さを認識しにくくなるということがあるように聞いております。この点、私は専門外ですが、 専門の先生のご意見を踏まえ、加筆修正等ご検討頂ければ幸いです。
○B体力が労働能力と直結しないにも関わらず、労働者本人が望まない中で体力チェックを 強制されるケースやそれが雇用の継続や人事評価に直接影響するのではないかという不 安を抱くケースが生じるおそれも完全には否定できないように思うので、論点4(2) に記載のあるように、体力チェックの目的・位置づけについて労働者に説明し、理解を 得た上で実施するという点や、論点5(2)以降に記載頂いているように、体力を踏まえて配慮につなげていくという点についての周知をお願いできればと思いました。
○C論点7の労働者と協力して取り組む事項の、取り組み例のうち、ヘルスリテラシーの向 上については、重要な点と思いますので、通達だけでなく、指針にもこの表現を残して 頂く方が良いように感じました。 以上ご検討頂ければ幸いです。


◎資料4 飯島構成員提出資料
○資料1
→・ 日本全国の60〜75歳の就業高齢者約5,000名を対象に、Frailty Screening Index(FSI)を用いてフレイル状 態を評価  ・ FSIには「過去6か月で2kg以上の体重減少があったか」、「過去2週間に理由なく疲れを感じたか」などの 項目が含まれている
・ その結果、プレフレイルおよびフレイル状態の労働者は、非フレイル者に比べて過去1年間の職場内転倒リ スクが有意に高い  ・ また、年齢・性別・職務関連要因をすべて調整した後であっても、「体重減少」および「疲労感」は就業中 転倒リスクを約1.7〜1.9倍に上昇させる
⇒⇒したがって、これらの2項目は職場におけるフレイル早期兆候として、転倒や 労働災害の予防に 資するスクリーニング指標として有効であると考えられる


◎参考資料1 開催要綱、構成員名簿
○高年齢労働者の労働災害防止対策に関する検討会 開催要綱
1 趣旨・目的
→ 高齢化の進展に伴い、労働者全体に占める60歳以上の割合が約2割を占めるまでになっている中で、労働災害による休業4日以上の死傷者に占める60 歳以上の割合は約3割に達している。高年齢労働者は若年世代と比べて労働災害の発生率が高く、災害が起きた際の休業期間も長い傾向にあるが、これは、作業による労働災害リスクに、加齢による身体機能の低下等の高年齢労働者の特性に起因するリスクが付加されることによるものと考えられる。 このような高年齢労働者の労働災害防止対策を推進するため、令和7年に 改正された労働安全衛生法により、高年齢労働者の特性に配慮した作業環境の改善、作業の管理その他の必要な措置を講ずることが事業者による努力義務とされ、事業者が講ずべき措置に関し、厚生労働大臣が措置の適切かつ有効な実施を図るために必要な指針を公表することとされたところである。 このような状況を踏まえ、本検討会においては学識経験者の参画を得て、高年齢労働者の労働災害の分析及びその低減のため必要な方策等、今後の高 年齢労働者の労働災害防止対策のあり方について検討する。

2 検討事項 (1)高年齢労働者の労働災害の分析及びその低減のため必要な方策について (2)事業者が講ずべき高年齢労働者の労働災害防止措置のあり方について (3)その他

3 構成 (1)本検討会は、厚生労働省労働基準局安全衛生部長が、別紙の構成員の参集を求めて開催する。 (2)本検討会には座長を置き、座長は検討会の議事を整理する。 (3)本検討会の構成員は、必要に応じ追加することができる。 (4)本検討会は、構成員以外の者に出席を求めることができる。

4 その他 (1)検討会、会議資料及び議事録については、原則として公開する。ただ し、個別企業へのヒアリングや個別事案を取り扱う場合等で個人・企業情 報の保護の観点等から、公開することにより、特定の者に不当な利益を与 え、又は不利益を及ぼすおそれがある場合等において、座長が、非公開が 妥当であると判断した際には、非公開で実施することができる。なお、非 公開とする場合には、その理由を明示するとともに、議事要旨を公開する。 (2)本検討会の事務は、厚生労働省労働基準局安全衛生部安全課において行 う。

○高年齢労働者の労働災害防止対策に関する検討会構成員令和7年10月24日現在→12名。

◎参考資料2 第2回高年齢労働者の労働災害防止対策に関する検討会議事録
○複合介入とその教育が大事。転倒する原因を体の中に見つける。

次回は新たに「第86回労働政策審議会雇用環境・均等分科会」からです。

労働基準法における「労働者」に関する研究会 第4回資料 [2025年12月04日(Thu)]
労働基準法における「労働者」に関する研究会 第4回資料(令和7年10月29日)
議題 (1)国際動向について (2)労働基準法における「労働者」について
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_65316.html
◎参考資料No.1 労働基準法上の労働者に関する主要な裁判例集
・1〜50半例集あり。  参照。

◎参考資料No.2 主要裁判例における「その他」一覧
1. 採用、委託等の際の選考過程が正規従業員の採用の場合とほとんど同様であること
<労働者性肯定事例>1例あり。
<労働者性否定事例>1例あり。
2. 報酬について給与所得としての源泉徴収を行っていること
<労働者性肯定事例>7例あり。
<労働者性否定事例>3例あり。
3. 労働保険の適用対象としていること@
<労働者性肯定事例>3例あり。
<労働者性否定事例>11例あり。
4. 服務規律を適用していること@
<労働者性肯定事例>5例あり。
<労働者性否定事例>5例あり。
5. 退職金制度、福利厚生を適用していること
<労働者性肯定事例>1例あり。
<労働者性否定事例>2例あり。
6. 1〜5以外の事情(使用者の言動に関する事情)
<労働者性肯定事例>5例あり。
<労働者性否定事例>3例あり。
6. 1〜5以外の事情(働く者の言動に関する事情)
<労働者性肯定事例>2例あり。
<労働者性否定事例>6例あり。


◎参考資料No.3 主要裁判例における「未分類」一覧
○労働契約により働く者との比較に関する事情
<労働者性肯定事例>6例あり。
<労働者性否定事例>1例あり。
○契約に至った経緯に関する事情
<労働者性肯定事例>1例あり。
<労働者性否定事例>1例あり。
○契約内容の一方的・定型的決定に関する事情
<労働者性肯定事例>2例あり。
○それ以外の事情@
<労働者性肯定事例>8例あり。
○それ以外の事情A
<労働者性否定事例>5例あり。


◎参考資料No.4 主要裁判例における「業務の性質」一覧
1.諾否の自由の有無→・該当無し
2.指揮監督の有無@
<労働者性肯定事例>5例あり。
<労働者性否定事例>11例あり。
3.拘束性の有無@
<労働者性肯定事例>3例あり。
<労働者性否定事例>6例あり。
4.代替性の有無
<労働者性否定事例>9例あり。
5.報酬の労務対償性→・該当無し
6.事業者性の有無
<労働者性肯定事例>1例あり。
<労働者性否定事例>2例あり。


◎参考資料No.5 主要裁判例における「契約内容の一方的・定型的決定、 事業組織への組み入れ」一覧
1. 契約内容の一方的・定型的に決定@→(肯定)2例あり。
2. 組織への組み入れ→(否定) 1例あり。(肯定)3例あり。

次回は新たに「第3回「高年齢労働者の労働災害防止対策に関する検討会」資料」からです。

労働基準法における「労働者」に関する研究会 第4回資料 [2025年12月03日(Wed)]
労働基準法における「労働者」に関する研究会 第4回資料(令和7年10月29日)
議題 (1)国際動向について (2)労働基準法における「労働者」について
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_65316.html
◎資料No.2-1 「裁判例を事例単位で分析した資料」の作成方法
1 本資料作成の目的
→ 裁判例について、事例単位の全体的な文脈の中で、昭和60年報告で示す労働者性の判断要素がどのように参考とされていて、どの要素が重視されているか分析を行う。 労働者性の判断枠組や、判断要素の重み付けに関連する部分の分析を行うとともに、これまでの研究会で特に意見のあった以下については、どのように考慮・評価されているか分析を行う。⇒3例あり。
2 裁判例の抽出方法→第3回研究会資料2−2掲載の50の裁判例から、以下の基準により裁判例を抽出した。 @ 最高裁判例 A 最高裁判例以外で、上記の目的と整合的である裁判例
3 具体的な抽出条件と抽出した裁判例→・第3回研究会資料2−2掲載の50の裁判例のうち、労基法上の労働者性を判断した最高裁判例は以下の3件であり、いずれも抽出した。
・最高裁判例以外の裁判例については、昭和60年報告の各要素を幅広く考慮・評価 している裁判例のうち、上記1の目的に基づく検討に資する裁判例を抽出した。 以上の条件のもと、以下の裁判例を抽出した。⇒7事件あり。
4 本資料作成の方法→抽出した裁判例について、判断枠組みに関する部分、要素の重みづけに関連する部分及び上記1の各項目に関連する部分にマーキングをしたものが資料2−3、マーキング箇所を抜粋したものが資料2−4である。 なお、資料2−3及び資料2−4においては、以下のとおり分類し、色分けした。 ・@判断枠組みに関する部分、要素の重みづけに関する部分⇒青色 ・A「通常注文者が行う程度の指示」「業務の性質」等に関する部分⇒黄色 ・B「組織への組み入れ」「組織への組み込み」等の記載またはこれらの記載と類 似すると考えられる事実に関して言及がなされている部分、報酬の一方的決 定に関する部分⇒緑色


◎資料No.2-2 「裁判例を事例単位で分析した資料」の見方 →「裁判例を事例単位で分析した資料」 (資料2-3) 、「裁判例を事例単位で分析した資料(抜粋))」(資料2-4)に おける色分けの趣旨は、以下のとおり。 また、@〜Bの事項に関して、昭和60年報告における関連部分を示している。↓
@労働者性の判断枠組や、判断要素の重み付けに関する部分 ⇒青色
A「通常注文者が行う程度の指示」「業務の性質」等に関する部分 ⇒黄色
B「組織への組み入れ」「組織への組み込み」等の記載または使用者の具体的な指揮命令になじまない業務についての 一般的な指揮監督に関する事実について言及がなされている部分、報酬の一方的決定に関する部分 ⇒緑色


◎資料No.2-3 裁判例を事例単位で分析した資料
○【最高裁判例】 【 職 種 】傭車運転手 【労働者性】最高裁:否定/高裁:否定/地裁:肯定 【 争 点 】労災保険法上の労働者性 (労災保険給付) 【 判 示 】

(上告審)→・・・・右事実関係の下においては、Xは、業務用機材であるトラックを所有し、自己の危険と 計算の下に運送業務に従事していたものである上、Yは、運送という業務の性質上当然に 必要とされる運送物品、運送先及び納入時刻の指示をしていた以外には、Xの業務の遂行 に関し、特段の指揮監督を行っていたとはいえず、時間的、場所的な拘束の程度も、一般 の従業員と比較してはるかに緩やかであり、XがYの指揮監督の下で労務を提供していた と評価するには足りないものといわざるを得ない。そして、報酬の支払方法、公租公課の 負担等についてみても、Xが労働基準法上の労働者に該当すると解するのを相当とする事 情はない。そうであれば、Xは、専属的にYの製品の運送業務に携わっており、Yの運送 係の指示を拒否する自由はなかったこと、毎日の始業時刻及び就業時刻は、右運送係の指 示内容のいかんによって事実上決定されることになること、右運賃表に定められた運賃は、 トラック協会が定める運賃表による運送料よりも一割五分低い額とされていたことなど原 審が適法に確定したその余の事実関係を考慮しても、Xは、労働基準法上の労働者ということはできず、労働者災害補償保険法上の労働者にも該当しないものというべきである。
○【 職 種 】研修医 【労働者性】最高裁:肯定/高裁:肯定/地裁:肯定 【 争 点 】労基法・最賃法上の労働者性 (賃金未払等) 【 判 示 】
(上告審
)・・・・・→これを本件についてみると、前記事実関係によれば、本件病院の耳鼻咽喉科における臨 床研修のプログラムは、研修医が医療行為等に従事することを予定しており、X は、本件 病院の休診日等を除き、Yが定めた時間及び場所において、指導医の指示に従って、Yが 本件病院の患者に対して提供する医療行為等に従事していたというのであり、これに加えて、Yは、X に対して奨学金等として金員を支払い、これらの金員につき給与等に当たる ものとして源泉徴収まで行っていたというのである。 そうすると、X は、Yの指揮監督の下で労務の提供をしたものとして労働基準法9条所 定の労働者に当たり、最低賃金法2条所定の労働者に当たるというべきであるから、Yは、 同法5条2項により、X に対し、最低賃金と同額の賃金を支払うべき義務を負っていたものというべきである。
○【 職 種 】大工 【労働者性】最高裁:否定/高裁:否定/地裁:否定 【 争 点 】労災保険法上の労働者性 (労災保険給付) 【 判 示 】
(上告審)
→・・・・・(2)Xは、Yからの求めに応じて上記工事に従事していたものであるが、仕事の内容 について、仕上がりの画一性、均質性が求められることから、Yから寸法、仕様等につきある程度細かな指示を受けていたものの、具体的な工法や作業手順の指定を受けることは なく、自分の判断で工法や作業手順を選択することができた。 (3)Xは、作業の安全確保や近隣住民に対する騒音、振動等への配慮から所定の作業 時間に従って作業することを求められていたものの、事前にYの現場監督に連絡すれば、 工期に遅れない限り、仕事を休んだり、所定の時刻より後に作業を開始したり所定の時刻 前に作業を切り上げたりすることも自由であった。

○【最高裁判例以外の裁判例】 【 職 種 】映画撮影技師 【労働者性】高裁:肯定/地裁:否定 【 争 点 】労災保険法上の労働者性(労災保険給付) 【 判 示 】 (控訴審) 第四 当裁判所の判断 ……三 労災保険法上の「労働者」の意義について 労災保険法の保険給付の対象となる労働者の意義については、同法にこれを定義した規 定はないが、同法が労基法第八章「災害補償」に定める各規定の使用者の労災補償義務を コメントの追加 [A16]: 判断枠組みに関連する部分 補填する制度として制定されたものであることにかんがみると、労災保険法上の「労働者」 は、労基法上の「労働者」と同一のものであると解するのが相当である。そして、労基法 九条は、「労働者」とは、「職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金 を支払われる者をいう。」と規定しており、その意とするところは、使用者との使用従属 関係の下に労務を提供し、その対価として使用者から賃金の支払を受ける者をいうと解されるから、「労働者」に当たるか否かは、雇用、請負等の法形式にかかわらず、その実態 が使用従属関係の下における労務の提供と評価するにふさわしいものであるかどうかによって判断すべきものであり、以上の点は原判決も説示するところである。 そして、実際の使用従属関係の有無については、業務遂行上の指揮監督関係の存否・内 容、支払われる報酬の性格・額、使用者とされる者と労働者とされる者との間における具 体的な仕事の依頼、業務指示等に対する諾否の自由の有無、時間的及び場所的拘束性の有 無・程度、労務提供の代替性の有無、業務用機材等機械・器具の負担関係、専属性の程度、 使用者の服務規律の適用の有無、公租などの公的負担関係、その他諸般の事情を総合的に 考慮して判断するのが相当である。
○【 職 種 】引越等業務従事者 【労働者性】肯定 【 争 点 】労働契約法上の労働者性(解雇) 【 判 示 】
第4 当裁判所の判断
→・・・・→・・・チャーター業務をみると、運送業務の性質上、運送物品、運送先及び納入時刻の指定は、 当然に必要となるものであり、また、Y の所有車両を使用して運送する場合、その性質上、 コメントの追加 [A27]: 「業務の性質」を業種、職種単 位で評価している部分 Y が使用車両を指示することは必要な行為といえる。しかし、チャーター業務においても、 Y が委託契約者に対し、横乗りの指示をすることがあり、また、Y は、委託契約者に割り 振る業務を一方的に定めていたことが認められる。

○【 職 種 】オペラ歌手 【労働者性】高裁:否定/地裁:否定 【 争 点 】労働契約法上の労働者性(更新拒否) 【 判 示 】
(控訴審) 第2 事案の概要   参照。
○【 職 種 】オペラ歌手 【労働者性】高裁:否定/地裁:否定 【 争 点 】労働契約法上の労働者性(更新拒否) 【 判 示 】
(控訴審) 第2 事案の概要
→・・・・契約メンバーは、個別契約を締結した公演については、Y から提示された確定スケジュールに従って、公演本番のみならず、種々の稽古に参加することが義務づけられ、その場所も新国立劇場内の舞台やリハーサル室という所定の場所であり、また、公演や稽古では、指揮者や音楽監督の指示に従って業務を遂行することになる(弁論の全趣旨)。 しかし、これは Y が主張するように、そもそもオペラ公演というものが多人数の演奏・ 歌唱・演舞等により構築される集団的舞台芸術であり、オペラの合唱団パートとしてその 一翼を担うという、契約メンバーの業務の特性から必然的に生じるものであって、そのような集団性から生じる指揮監督関係をもって直ちに、労働者性の判断指標となる労務提供 における指揮監督と同視することはできない。公演、稽古における場所的・時間的拘束性 も、同様に、オペラという舞台芸術の集団性から必然的に生じることがらであって、このことから直ちに指揮監督下の労務提供であることの根拠とすることはできない。
○【 職 種 】保険契約勧誘等の営業 【労働者性】肯定 【 争 点 】労働基準法上の労働者性(賃金未払等) 【 判 示 】
第3 当裁判所の判断
→・・・・@本件社員契約において、Xに対する報酬は完全歩合制となっており、所得税等の源泉徴 収や社会保険・雇用保険への加入もされていなかったこと、AXは、保険契約の勧誘業務 に必要な物品(自動車、パソコン、携帯電話、チラシ等)を自らの費用で準備し、その使 用に必要な費用も負担していたこと、BYは、本件解約後、Xが保険契約を勧誘した保険 契約者に係る保険代理店契約のうち、B生命との間の保険代理店契約をXの移籍先代理店に移管したことが認められ、上記各事実は、Xの使用従属性を弱める事情であるとはいえるものの、Xの使用従属性を直ちに否定するものとまではいえない。
○【 職 種 】バイシクルメッセンジャー 【労働者性】高裁:否定/地裁:否定 【 争 点 】労働契約法上の労働者性(解雇) 【 判 示 】
(第一審) 第三 当裁判所の判断
→・・・・以上によれば、本件業務委託契約書の規定内容は、被告の配送業務の請負に関する約定であると認められるところ、その使用従属性については、メッセンジャーが稼働日・稼働 時間を自ら決定することができ、配送依頼を拒否することも妨げられておらず、その自由度は比較的高いこと、被告がメッセンジャーに対し、一定の指示をしていることは認められるが、これらは受託業務の性質によるところが大きく、使用従属関係を肯認する事情として積極的に評価すべきものがあるとはいえないこと、拘束性の程度も強いものとはいえないことを指摘することができ、これをたやすく肯認することはできない。そして、メッセンジャーの報酬の労務対償性についても、労働契約関係に特有なほどにこれがあると認めることは困難である。もとより、メッセンジャーの事業者性が高いとまで評価することができないことは上記説示のとおりであるが、さりとてメッセンジャーの事業者性がないともいえず、また、専属性があるともいえず、むしろ、上記のとおり稼働時間を含めてメッセンジャーが比較的自由にこれを決定し、労働力を処分できたと評価し得ることに照らせば、少なくとも本件契約A締結後の原告らメッセンジャーについて、労基法上の労働者に該当すると評価することは相当ではないというべきである
○【 職 種 】英会話講師 【労働者性】高裁:肯定/地裁:肯定 【 争 点 】労働基準法上の労働者性(年休権・健康保険被保険者資格) 【 判 示 】
(控訴審) 第3 当裁判所の判断
→・・・・レッスンの時間、レッスンを行う校舎は、予め契約によって決められており、その意味で勤務場所・時間の拘束が認められる。この点については、Yが指摘するように、業務の性質によるものとも解され得るが、レッスンがなくなった場合でも、その時間、当該校舎の販促業務や清掃業務等に従事しなければならなかったことも加味すると、やはり指揮監督関係を肯定する方向に働く一事情とみるのが相当である。
○【 職 種 】大学の非常勤講師 【労働者性】否定 【 争 点 】労働契約法上の労働者性(更新拒否) 【 判 示 】
第3 当裁判所の判断
→・・・・以上によれば、上記アの事情をXに有利に考慮しても、Xが本件契約に基づき Y の指揮監督の下で労務を提供していたとまでは認め難いといわざるを得ないから、本件契約に関し、X が労契法2条1項所定の「労働者」に該当するとは認められず、 本件契約は労契法19条が適用される労働契約には該当しないものというべきである。


◎資料No.2-4 裁判例を事例単位で分析した資料(抜粋)
○横浜南労基署長(旭紙業)事件(最判平8.11.28)
→事案の概要 自己の所有するトラックを持ち込んで特定の会社の製品の運送業務に従事していた運転手(傭車運転手)である原告が、 作業中に傷害を負う事故を起こしたため、労働基準監督署に療養補償給付等の支給を請求したところ、労災保険法上の労 働者には該当しないとして不支給処分を受けたため、その処分の取消しを求めた事案。
<最高裁(最判平8.11.28)労働者性否定> (要素の重みづけに関連する部分)→「専属的にYの製品の運送業務に携わっており、Yの運送係の指示を拒否する自由はなかったこと」、「毎日の始業時 刻及び就業時刻は、右運送係の指示内容のいかんによって事実上決定されることになること」、「右運賃表に定められた 運賃は、トラック協会が定める運賃表による運送料よりも一割五分低い額とされていた」ことなどの事情にかかわらず、 労働者性を否定している。   (「業務の性質」を業種、職種単位で評価している部分)参照。
<控訴審(東京高判平6.11.24)労働者性否定> (判断枠組みに関連する部分)(要素の重みづけに関連する部分)→「Yから一定の指示を受け」ていたこと、「場所的時間的にもある程度拘束」があったこと、「報酬も、業務の履行に 対し払われ、毎月さほど大きな差のない額が支払われていたこと」などから、労働者としての側面を有するといえるとしながらも、「場所的時間的拘束も一般の従業員よりは弱」いこと、「報酬も出来高払いであ」ること、「業務用器材を所 有して業務の遂行につき危険を負担し」ていること等を理由に労働者性を否定している
<第一審(横浜地判平5.6.17)労働者性肯定> (判断枠組みに関連する部分)(要素の重みづけに関連する部分)→「YのXに対する業務遂行に関する指示や時間的場所的拘束は、請負契約に基づく発注者の請負人に対する指図やその 契約の性質から生ずる拘束の範疇を超えるものであって」あったこと、「Y以外の事業所と運送契約をしたり、第三者に 運送業務を代替させることは不可能であった」こと、「報酬額が一般の運転手の賃金と比較して、労働者性を否定するほ どに特に高額であると」いえないこと、「報酬は労務の対価の要素を多分に含むものである」ことを理由に労働者性を肯定している

○関西医科大学研修医(未払賃金)事件(最判平17.6.3)
→事案の概要 大学付属病院の臨床研修医であった者が、労務の対価として最低賃金法所定の最低賃金額を下回る金額(の「奨学金」 等)しか支払を受けなかったとして、その両親である原告らが、最低賃金額と実際に受給した金額の差額及びこれに対する遅延損害金の支払を請求した事案。
<最高裁(最判平17.6.3)労働者性肯定> (判断枠組みに関連する部分)(要素の重みづけに関連する部分)→「Yが定めた時間及び場所において、指導医の指示に従って、Yが本件病院の患者に対して提供する医療行為等に従事 していた」という事情、「Yは、Xに対して奨学金等として金員を支払い、これらの金員につき給与等に当たるものとして 4 源泉徴収まで行っていた」という事情を理由に労働者性を肯定している
<第一審(大阪地堺支判平13.8.29)労働者性肯定>(判断枠組みに関連する部分) 参照。

○藤沢労基署長(大工負傷)事件(最判平19.6.28)→事案の概要 工事業者と請負契約を締結して内装工事に従事していた大工である原告が、マンションの内装工事に従事中負傷したため、 労働基準監督署に療養補償等の支給を請求したところ、労災保険法上の労働者には該当しないとして不支給処分を受けた ため,その処分の取消しを求めた事案。
<最高裁(最判平19.6.28)労働者性否定>(「業務の性質」を業種、職種単位で評価している部分)(要素の重みづけに関連する部分)→「Xが職長の業務を行い、職長手当の支払を別途受けることとされていたこと」については、労働者性の判断を左右しないと判断している  参照。
<第一審(横浜地判平16.3.31)労働者性否定> (判断枠組みに関連する部分)(要素の重みづけに関連する部分)→使用従属性が認められないことから、労働者性が否定されるとした上で、事業者性の有無、専属性の程度等判断を覆す 事情は認められないと判断している

○新宿労基署長(映画撮影技師)事件(東京高判平14.7.11)→事案の概要 映画撮影技師(カメラマン)であった者が、映画撮影に従事中、宿泊していた旅館で脳梗塞を発症して死亡したことについて、その子である原告が、労働基準監督署に遺族補償給付等の支給を請求したところ、労災保険法上の労働者には該当しないとして不支給処分を受けたため,その処分の取消しを求めた事案。
<控訴審(東京高判平14.7.11)労働者性肯定>(判断枠組みに関連する部分)(業務の性質や特殊性を重視せずに判断している部分)(要素の重みづけに関連する部分)→「Xへの専属性は低」いこと、「Yの就業規則等の服務規律が適用されていないこと」、「Xの本件報酬が所得申告上事業所 得として申告され、Yも事業報酬である芸能人報酬として源泉徴収を行っていること」などの事情があるものの、「撮影 技師は監督の指示に従う義務があること」、「報酬も労務提供期間を基準にして算定して支払われていること」、「個々 の仕事についての諾否の自由が制約されていること」、「時間的・場所的拘束性が高いこと」、「労務提供の代替性がないこと」、「撮影機材はほとんどがYのものであること」、「YがXの本件報酬を労災保険料の算定基礎としていること」等を理由に労働者性を肯定している
<第一審(東京地判平13.1.25)労働者性否定> (判断枠組みに関連する部分)(「業務の性質」や特殊性を重視して判断している部分)(要素の重みづけに関連する部分)→「個々の仕事についての諾否の自由が制約されていること」、「時間的・場所的拘束性が高いこと」については業務の性 質上当然の制約として指揮監督とは認めがたいとしたうえで、「撮影機材はYのものであること」、「YがXの本件酬を労災 保険料の算定基礎としていること」などの事情にかかわらず、労働者性を否定している

○アサヒ急配(運送委託契約解除)事件(大阪地判平18.10.12)→事案の概要 運送委託契約により、車両での荷物の運送・集配、引越業務等に従事していた原告らが、解雇されたとして、労働契約 上の地位確認と契約終了通告以降の賃金の支払等を請求した事案。
<労働者性肯定> (「業務の性質」を業種、職種単位で評価している部分)(報酬の一方的決定を「事業者性の有無」で評価している部分)(判断枠組みに関連する部分) 参照。

○新国立劇場運営財団事件(東京高判平19.5.16)→事案の概要 被告との間で期間を1年とする出演基本契約を締結・更新し、合唱団のメンバーとして被告の主宰するオペラ公演等に出演していた原告が、次シーズンの出演基本契約を締結しないとの通知を受けたため、出演基本契約は労働契約であり、その更新拒絶は労働基準法18条の2(現労働契約法第16条)、労働組合法7条1号に違反し無効であると主張して、労働契約上の地位確認と契約期間満了後の賃金の支払を請求した事案。
<第一審(東京地判平18.3.30)労働者性否定>(判断枠組みに関連する部分)(「業務の性質」を業種、職種単位で評価している部分)(「代替性の有無」の判断において、「業務の性質」の考えを用いている部分)(要素の重みづけに関連する部分)  参照。

○株式会社MID事件(大阪地判25.10.25)→事案の概要 保険代理業等を営む株式会社である被告との間で業務委託契約を締結し、保険契約勧誘の営業に従事していた原告が、 当該契約の解約の意思表示を受けたところ、当該契約は労働契約に該当するため、無効な解雇であるとして、当該契約 に基づき、未払の基本給等の支払を請求した事案。
<労働者性肯定> (要素の重みづけに関連する部分)→「本件社員契約において、Xに対する報酬は完全歩合制となっており、所得税等の源泉徴収や社会保険・雇用保険へ の加入もされていなかったこと」、「Xは、保険契約の勧誘業務に必要な物品(自動車、パソコン、携帯電話、チラシ 等)を自らの費用で準備し、その使用に必要な費用も負担していたこと」、「Yは、本件解約後、Xが保険契約を勧誘 した保険契約者に係る保険代理店契約のうち、B生命との間の保険代理店契約をXの移籍先代理店に移管したこと」という事情は使用従属性を弱める事情であるとしつつも、@XがYからの指示を拒絶することはできなかったこと、A業 務の遂行についてYの指揮監督を受けていたこと、B勤務時間及び勤務場所について管理されていたこと等を理由に労働者性を肯定している

○ソクハイ(契約更新拒絶)事件(東京高判平26.5.21)→事案の概要 バイシクルメッセンジャーとして稼働していた原告らが、業務委託契約を終了する旨の告知を受けたところ、被告との契 約が労働契約に該当するため、上記契約を終了する旨の告知は無効な解雇であるとして、労働契約上の地位確認と契約終 了告知以降の賃金の支払等を請求した事案。
<第一審(東京地判平25.9.26)労働者性否定>(判断枠組みに関連する部分)(「業務の性質」を業種、職種単位または個々の事業の契約(サービス)内容によって評価している部分)(「代替性の有無」の判断において、「業務の性質」の考えを用いている部分)(「事業者性の有無」の判断において、「業務の性質」の考えを用いている部分)(報酬の一方的決定を「事業者性の有無」で評価している部分)(要素の重みづけに関連する部分)→使用従属性について、諾否の自由度が比較的高いこと、一定の指示はあるものの受託業務によるところが大きく、使用 従属関係を肯認する事情として積極的に評価すべきものがあるとはいえないこと、拘束性の程度も強いとはいえないこと から肯定することができないとした上で、報酬の労務対償性、事業者性、専属性等も考慮して、労働者性を否定している

○NOVA事件(名古屋高判令2.10.23)→事案の概要 語学スクールにおいて英会話講師として稼働していた原告らが、業務委託契約が実質上労働契約であり、年次有給休暇請 求権の行使を違法に妨げた上、健康保険加入義務を懈怠したとして、不法行為責任に基づく損害賠償の支払等を請求した 事案。
<控訴審(名古屋高判令2.10.23)労働者性肯定> (業務の性質上具体的な指揮命令になじまない業務について、指揮監督の有無を判断した部分)→業務の性質上具体的な指揮命令になじまない業務であっても、指揮監督を受けていると判断している。
(「業務の性質」を業種、職種単位で評価している部分)(「業務の性質」を業種、職種単位で評価している部分)  参照。

○国立大学法人東京芸術大学事件(東京地判令4.3.28)→事案の概要 大学の非常勤講師を務めていた原告が、被告との間で締結していた期間を1年間とする有期の委嘱契約が更新されなかったことにつき、労働契約法19条により従前と同一の労働条件で労働契約が更新されたとみなされるとして、労働契約上 の地位確認と更新拒否後の賃金の支払を請求した事案。
<労働者性否定>(判断枠組みに関連する部分)(「業務の性質」を業種、職種単位で評価している部分)(「組織への組み入れ」「組織への組み込み」等の記載またはこれらの記載と類似すると考えられる事実に関して言及がなされている部分)
(要素の重みづけに関連する部分)→各講義の共通テーマはYによって決定されて授業計画書にも記載され、予定された講義日程に従い、指定された内容の 授業を行うことを指示されていたこと、講義の運営を主導していたD1講師の業務の補佐を指示されており、その一環と して、他の外部講師が担当していた授業にもオブザーバーとして出席していたこと、という事情があるものの、「Y大学 における講義の実施という業務の性質上当然に確定されることになる授業日程及び場所、講義内容の大綱を指示する以外 に本件契約に係る委嘱業務の遂行に関し特段の指揮命令を行っていたとはいい難」いこと、「Xに対する時間的・場所的 な拘束の程度もY大学の他の専任講師等に比べ相当に緩やかなものであった」こと等を理由に労働者性を否定している

次回も続き「参考資料No.1 労働基準法上の労働者に関する主要な裁判例集」からです。

労働基準法における「労働者」に関する研究会 第4回資料 [2025年12月02日(Tue)]
労働基準法における「労働者」に関する研究会 第4回資料(令和7年10月29日)
議題 (1)国際動向について (2)労働基準法における「労働者」について
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_65316.html
◎資料No.1 労働者性に関する国際動向 ※第3回研究会資料に追記
○労働者性に関する国際的動向(@ドイツ)↓
・全体像→
労働者概念はすべての法律で統一的な概 念であると解されており、労働者と自営業者の中間概念である労働者類似の者という概念が実定法上定められている。
・労働者概念→・労働法規の一般的な適用対象としての労働者概念は、「人的従属性」によって特徴づけられている。そこでは経済的従属性は考慮されない。 ・労働契約の定義が定められ、労働者の具体的な判断基準が明文化された。(この規定は判例法理を そのまま明文化したもの)このうち「他人決定の労働」は、指揮命令拘束性とともに「人的従属性」を示す要素であり、「他人決定」性 を裏付ける典型的な要素として、「組織への組み入れ」が挙げられる。 ※民法典611a条労働契約(1)労働契約によって、労働者は、他人に使用されて、指揮命令に拘束された、他人決定の労働を、人的従 属性において、提供する義務を負う。
・労働者概念の拡張、類似の概念等→・労働者とは区別される労働者類似の者は、経済的従属性によって特徴づけられている。
・労働者概念の変化、デジタルプラットフォーム就業に関する裁判例→2020年12月1日Crowdworker事件連邦労働裁判所判決は、クラウドワーカー(プラットフォーマーが顧客の注文を細分化しその 斡旋を受けて業務を遂行する者)の労働者性を肯定した。この判決については、アプリシステムによる事実上の拘束を他人決定性として考慮に入れている点などで、プラットフォーム就業 者の労働者性を広く認めることにつながる可能性があるとも論評されている。
・デジタルプラットフォーム就業に関する立法措置等→ドイツの判例は、なお労働者性を限定的に解釈する態度をとっているものと理解されている。

○労働者性に関する国際的動向(Aフランス)↓
・全体像
→労働法と社会保障法(一般制度)の条文で共通して「本巻の規定(「本編の規定」)は私法上の使用者及び労働者に 適用される」と統一的に定めている。この適用対象は、「労働契約の当事者」と理解されている。
・労働者概念 →・2016年Formacad判決は、1996年Société Générale判決が「人的従属性」の基本的要素としていた「指揮命令」、「監督」、「制裁」を示す諸事情について具体的に設定することなく、主に、利益・場所面での事業への組入れ、固有の顧客の不存在、労働条件の一 方的決定、競業行為の禁止、労働力の常時的利用という「経済的従属性」(自営業者としての独立性の欠如)を示す諸要素を考慮して 労働契約性を判断している。 ・近年の多数の判例を踏まえた現行法の解釈としては、「人的従属性」と「経済的従属性」は労働契約性を判断するうえで、いずれかが上位に立つという関係ではなく、相互補完的な関係に立つとの指摘もある
・労働者概念の拡張、類似概念等→一定の要件を満たした場合等の労働契約の推定等が定められている。
・労働者概念の変化、デジタルプラッフォーム就業に関する裁判例@→・判例は人的従属性を中心とした労働契約概念自体は維持しているが、その判断の内容に変化が見られる。 ・20世紀末から、判例の中に@契約形態(主観)よりも実態(客観)を重視する傾向(2000年Labanne判決)、A経済的従属性を示 す要素(事業組織への組入れ、労働条件の一方的決定など)を考慮する傾向(1996年Société Générale判決、2016年Formacad判決など)が見られるようになった。
・労働者概念の変化、デジタルプラッフォーム就業に関する裁判例➁→・破毀院の2025年7月9日Uber判決(上記2020年判決とは別の事案)では、プラットフォーム就業者(タクシー運転手)の労働契約性が否定さ れた。そこでは、@競業制限がなく顧客との関係構築の可能性が開かれていたこと、A運転手はプラットフォームからの乗車提案を拒否するこ とや運送ルートの決定を自らの判断で行うことができたこと、B3回乗車拒否後のアプリからの切断措置についても、(2022年オルドナンスに よる運送法典L.1326-2条に基づき)プラットフォームからの通知により即時に接続できることとされ、運転手への制裁とまではいえないこと、 C(2019年移動オリエンテーション法の新規定に基づき)運転手は乗車提案があった際に当該運送の(費用控除後の)最低運賃、乗車までの時 間・距離、当該運送の時間・距離を確認できることなど、下述する立法措置により運用変更があったこと等が理由として述べられている。
・デジタルプラットフォーム就業に関する立法措置等→就業条件(非専属性、諾否の自由等を含む)等を記載した「社会憲章」を、サービス提供者の 意見を聴取したうえで作成し、行政官庁に届け出てその許可を得、インターネットで公表し契約に添付することができることを定めた。

○労働者性に関する国際的動向(Bイギリス)↓
・全体像
→・イギリスの現行の労働法規制は、コモン・ロー(判例法)が定義する「contractof service」(雇用契約)を締結した者であ る「employee」を適用対象としているものと、制定法が定義する「worker」を適用対象としているものがある。 ・どちらも一定の契約の類型によって定義される。(Employment Rights Act 1996:ERA 1996, s. 230(1)(2)(3)) ・「employee」を適用対象とする法律により付与されている権利には一定の勤続要件(continuous employment: ERA 1996, s. 210)が課されているものがある(解雇規制など)
・労働者 等概念→employee =雇用契約の定義⇒・「employee」の判断要素は、@義務の相互性:約因(契約の成立要件)、Aコントロール(指揮命令)、Bその他契約条項が 雇用契約と整合的であること(雇用契約との整合性)、である(Ready Mixed Concrete事件高等法院女王座部判決(1968年))。 @、Aが雇用契約と判断するにあたって必要な要素とされており、Bは消極的な要素とされている。
Worker の定義⇒・「worker」は制定法上の概念である。例として、雇用権利法(Employment Rights Act)230(3)において、「Workerとは、 次の契約の下で働いているまたは契約を締結した個人である。(a)雇用契約(b)個人が、契約の他方当事者のために労務やサービ スを本人自身が行うことを引き受ける契約で、契約の他方当事者が事業遂行者の顧客の地位になく、あるいは高度専門職の顧客の 地位にないこと」とされている。このうち(b)の契約を、本資料においては「労働者契約」と呼ぶ。 ・労働者契約の要素は、制定されているとおり、@義務の相互性:約因(契約の成立要件)(契約で定義されているため当然に問 われる)、A労務の非代替的遂行(本人自身による労務提供)、B顧客要件(230(3)(b)後段、非事業者性を確認するための要 素)である。
・労働者等概念→両定義の比較分析⇒・コモンロー上の概念である雇用契約と、制定法上の概念である労働者契約は全く違うものであることが出発点。制定法に定められるところにより、workerの定義はemployeeよりも広い。 ・判断要素のうち、義務の相互性:約因は、契約の成立要件であることから、雇用契約、労働者契約の共通の要素である。・雇用契約の判断要素A指揮命令及びB雇用契約との整合性と、労働者契約の要素B顧客要件は、要素として異なる。事業統合性 は両方の概念について現れているが、 employee判断では指揮命令が特に重視され、worker判断では(労務の非代替性と)自律 的サービス提供の有無がより重要な要素となる傾向がある。 ・経済的従属性などの基準を解釈で判断要素に加えるものではないことが、最高裁のレベルで確認されている
・デジタルプラットフォーム就業に関する裁判例→・ギグ・エコノミーで働くクラウドワーカーが、独立自営業者か「worker」かが問題となってきており、この点につき、ライド シェアの運転手に関する労働者契約の成立(義務の相互性:約因)が争点となっていた前述のUber事件の最高裁判決では、@運 転手に支払われる報酬がUberによって決定されていたこと、A運転手が提供する労務に関する契約条件がUberによって規定され ていたこと、Bアプリにログイン後は、運送リクエストの受託に関する運転手の選択がUberによって制約されていたこと、C Uberは、運転手によるサービス提供方法について相当程度の指揮監督を行っていたこと、DUberが乗客と運転手のコミュニケー ションを制限していたこと、などをコントロールの要素として認定・評価をしたうえで、「worker」該当性を肯定した(ログイ ン後個別で契約が成立するとした)。※争点が限定的で、worker概念についての先例として、どこまで意義が認められるのか、 現段階では判然としない部分がある。 ・同最高裁判決においては、契約書面の位置づけ・解釈のあり方として、商事契約(commercial contract)の場合と異なって、 契約書面(契約名称や書面化されている契約内容〔条項〕)に羈束されずに、特に契約締結時以後の事情も含めた労働の実態を確 認するアプローチが整理・肯定された。 その他あり。  参照。
・デジタルプラットフォーム就業に関する立法措置等→・労働党政権となった後、2025年3月14日、ゼロ時間契約(労働時間数が確定されていない就業形態)などのworkerについて、 新たな権利義務を多数創設するEmployment Rights Billが議会に提出され、議論されている。その中では、employee、 worker概念についての修正はない。

○労働者性に関する国際的動向(Cアメリカ)↓
・全体像
→公正労働基準法(FLSA、最低賃金規制、割増賃金規制等を行う立法)、全国労働関係法(NLRA、団結権、団 体交渉権及び団体行動権の保障等を行う立法)、社会保障法(SSA)などにおいて、法の適用対象を「被用者(employee)」として おり(以下、被用者を単に労働者という。)、独立契約者(independent contractor)は保護対象者ではないと解されている。労働 者の概念ないし判断基準は相対的(各法令の趣旨・目的により異なりうる。)。
・労働者概念→・公正労働基準法における労働者について、判例は、全国労働関係法などの労働者よりも広い概念と解し、その判断基準として 「経済的実態テスト」を採用している。経済的実態テストは、一般的に、以下の考慮要素を、就業にかかる活動の全体にかかる状況に 照らして吟味し、「役務を提供する事業に依存しているか否か」(すなわち、経済的に依存しているか)を検討して労働者性を判断するという形で形式化されている。
・労働者概念の拡張、類似の概念等→・制定法上、「労働者」を拡張する例は基本的に見られない。
・労働者概念の変化、デジタルプラットフォーム就業に関する裁判例@→・全国労働関係法のもとにおける労働者性の判断に関しては、NLRB命令及び同命令を審査する裁判例で、管理権テストによることは前 提としつつ、「損益についての起業家的機会」の有無の位置づけなどをめぐり、判断の変遷がみられる。 ・公正労働基準法のもとにおける労働者性の判断に関しては、経済的実態テストによることは前提としつつ、その具体的な判断要素等 に関して、同法の履行を担う連邦労働省賃金時間部による考え方の変遷がみられる。
・労働者概念の変化、デジタルプラットフォーム就業に関する裁判例➁→・翌2025年5月2日には、上記2019 年の意見書簡(2021年2月19日から2025年5月1日までは賃金時間部の政策についての公式な見解を示すも のとして依拠しえないとされていた)を 、2025年の意見書簡(FLSA2025-2)として、改めて、 賃金時間部の政策についての公式な見解を示す ものとして復活させた 。同書簡は、ある「仮想市場会社(Virtual Marketplace Company, VMC)」(プラットフォーム事業を営む会社といえ る。なお、具体的にどの会社かは明らかにされていない。)との関係で、同市場において顧客に役務を提供する者が公正労働基準法のもとにお ける労働者か否かについての個別の意見照会に回答したものであり、判例が示してきたとする6つの要素に照らして判断すると、当該個別の照 会に関しては、役務提供者は独立契約者であり、仮想市場会社の労働者ではない (また、そもそも同会社は紹介サービスを提供しているにすぎ ず、就業に係る関係は役務提供者と同会社との間ではなく、むしろ顧客との間にあるにすぎない)と判断したもの である。
・デジタルプラットフォーム就業に関する立法措置等→・ABC デジタルプラット フォーム就業に関 する立法措置等 テストとは、使用主体が、以下のABCの要件の全てを立証しないかぎり、労働者と判断する(この意味で労働者性を推定する)判断基準である。 A:契約上も実際も、業務遂行に関して使用主体から管理や指示を受けていない。 B:使用主体の通常の事業外の業務を遂行している。 C:遂行する業務と同じ性質の、独立した事業等に、習慣的に従事している。 ・カリフォルニア州では、カリフォルニア州最高裁判所が 2018年4月に下したダイナメックス事件判決におけるABCテストを 2019 年に立法化した(AB5)。なお、同テストが労働者性を広く認め真正な独立契約者も含みうることを考慮し、AB5にはABC テストの適用除外規定が設けられており、適用除外対象の業務は109に上るとされている(Samantha J.Prince の2022年の論文による)。 ・他方で、カリフォルニア州においては、AB5の立法後、2020 Proposition22 年11月にProposition22が賛成多数で承認されている。 は、アプリを通じてライドシェアやフードデリバリーの業務に従事するギグ・ワーカーを、一定の要件を満たす 場合、プラットフォーマーとの関係で独立契約者と明確に位置付けると同時に、最低報酬保障など、一定の保護も行うもの 。

○労働者性に関する国際的動向(DEU)↓
・全体像
→・EU司法裁判所は、労働者概念を広く解する傾向にある。 ・指揮命令拘束性を緩やかに解するEU法上の独自の労働者概念が広いことについては広く見解が一致しており、EU司法裁判所は、指 揮命令拘束性の判断において、市場で取引しているとはいえずもっぱら専属しているという経済的従属性を考慮していることが指摘されている。
・労働者概念→・EU司法裁判所の判例では、「労働関係の本質的な要素は、ある者が、一定期間、他者のために、その指揮命令に服して給付を行い、 反対給付として報酬が支払われる点に存在する」という定義に基づいて労働者性が判断されている。
・労働者概念の拡張、類似の概念等
・労働者概念の変化
→・EU司法裁判所2020年4月22日決定は、宅配運転手が労働時間指令2003/88号にいう労働者にあたるか争われた事件において、契約上、 自ら役務を提供しなければならないのか、個々の委託を断ることができたのか、専属義務が課されていたか、および働く時間を自ら決めることができるかという、付託裁判所が示した判断要素が労働者性の判断基準になり得ることを認めたうえで、独立性が見せかけであり、 委託者との間に従属性が認められる場合には労働者性が認められるとしたうえで、最終的な判断を国内裁判所に委ねた。(本決定に関し ては、契約上、可能であったかだけではなく、実際に、他人労働力を活用していたのか、個々の委託を断ることができたのか等の「事実 上の拘束」を重視すべきであるという批判も行われている。)
・デジタルプラットフォーム就業に関する立法措置等→・欧州委員会は2021年12月、プラットフォーム労働における労働条件を改善し、EUのデジタル労働プラットフォームの持続可能な成長を支援するため、新たな指令案を提案。2024年10月23日に「プラットフォーム労働における労働条件改善に関する指令」が正式に採択された。加盟国は、2026年12月2日までに、この指令を遵守するために必要な法律等を発効させることが求められている。

次回も続き「資料No.2-1 「裁判例を事例単位で分析した資料」の作成方法」からです。

第6回労災保険制度の在り方に関する研究会 資料 [2025年07月22日(Tue)]
第6回労災保険制度の在り方に関する研究会 資料(令和7年5月30日)
議題 労災保険制度の在り方について(給付・適用・徴収等関係)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_58411.html
◎参考資料 第5回研究会における委員ご発言の概要
1.メリット制
【論点@】メリット制は今日でも意義・効果があるといえるか。
・メリット保険料率の変化が労災の抑止に一定効果があることを可視化できているものと思料。
なお、全体的にメリット制の効果があるのではないかということは分かったが、様々な側面があることに留意が必要。
・労災保険制度は無過失責任主義で、使用者に過失があって災害防止行動を取りやすい災害と、使用者に過失はなく災害防止行動を取りにくい災害があることに留意が必要。使用者の過失によって生じる 災害については、メリット制による災害防止効果が出ているとしてメリット制を維持するのが良いと思う。
・問題と なっているのが労働者の生命や身体という重大な法益であることを鑑みると、個別事業主が予防可能な労災かどうかに関わらず、同種の他の事業場よりも業務災害発生が著しい事業場は、そうでない事業場よりも高コストで競争の観点から不利な事業運営を強いられてしかるべき。現行、メリット制を 通じて競争原理に晒され事業の妥当性が試される形になっている。
・メリット増減率の遷移 について、発生状況のばらつきが年度毎の偶然の変動ではなく、個々の事業場に固有の状況を一定程 度反映しているものと思われる。同種の事業では、災害防止できている企業から災害防止できていない企業への利益の再分配(経済的な利益の移転) となってしまう。それは労災保険に内在する論理からは正当化されないし、産業施策の観点からもこ のような再分配は要請されていない。個々の事業主の負担の具体的な公平性を図るという趣旨の関係ではメリット制の果たす役割は未だ軽視すべきではない。
・前年+40%から 翌年+40%の事業所は6割強あり、プラスでメリット制が適用されていても増減率が変わらない事業場もある。これらの事業場はどのような状況にあるのか、長期的には検証が必要ではないか。
・メリット制の目的は事業主の負担の公平性、災害防止努力の推進があるが、それぞれ一定程度達成されていると思われる。

・事業場内で 生じた災害については完全に無過失であるものを切り出すことは不可能であり、また切り出す必要もないのではないか。メリット制で災害防止努力の目的が達成されているか、災害防止に効果あるかについては、メリット制を維持する限度で一定言えれば良いのではないか。
・今回の検証で、プラスのメリットが適用されている事業場について一定効果が示され、メリッ ト制の適用事業場数は少ないが、労働者数で言えば広い範囲をカバーできている点も重要。その上で 以下4点留保が必要と考える。→・現状8割の事業場にマイナスのメリットが適用されている状況が、必ずしもメリットの効果であるとは言えない。 ・メリット制が有する効果は、業種や疾病の類型や事業場の規模で様々と思われる(事業場の規模は今回の検証結果から小規模事業場が除かれている趣旨からも言える。)。災害予防の意識や努力が効果を 上げやすいケースとそうでないケースがあり、メリット制が効果を持ちやすい業種や災害類型がある ものと思料。 ・事業主が努力をしていても避けられない労災については、努力しても大きな災害が起きた場合には大きな保険料負担が発生するので、使用者の努力に影響は及ぼさない。 ・メリット制は労災隠しを誘引すると指摘があるが、こうした弊害はデータで示しにくく、費用対効果 など政策決定に使われるデータで考慮されにくい。メリット制に伴う事実上の負担、被災労働者遺族へのネガティブな負担には配慮が必要。
・今回色々と示してもらったが、事業主の行動に与えるプラスの影響がどれだけのものか評価することは難しい。
・過去のメリット制には災害防止効果があったかもしれないが、現代においては企業の災害防止努力は既に頂点に達していて今日のメリット制の役割は終わっているのではないか。
今は脳心・ 精神など労働者側の問題もあり、そこまでメリット制の対象とすることは疑問もある。メリット制は 今日においては役割を終えたものとして廃止し、労災発生防止については労災保険の外の社復事業とか監督行政の徹底とかの役割で対応するのも選択肢としてあるのではないか。
≪現時点における議論の確認≫→ ◎複数の留保はつくが、メリット制が災害防止に関して一定効果があるという意見が多い一方で、その評価は難しいという意見もあった。 ◎メリット制の適用対象を広げてもいいという意見と維持すべきという意見の両方が出た。

【論点A】メリット制の算定対象は妥当か。
【高齢者や外国人への給付の取扱いに関するご意見】

・外国人については、国籍でひとくくりに区別してしまうことは様々な外国人がいることを踏まえると 適切でないと思われる。・外国人、高齢者は言語面や体力面で脆弱性があるが、これらの従業員を就労させるのであれば、事業 主はこれらの従業員の特性に適した災害防止努力をとるべきなので、これらのグループを適用対象から除く理由はないものと思われる。
・一方で、事業主が外国人を雇うことは任意だが、高齢者や障害者は国で雇用促進している。障害者については、労災が認められやすいのに、事業主は重い負担を負う可能性があるし、精神障害者が基礎疾病を悪化させて精神障害を生じたときにも同じ懸念がある。 雇用政策との整合性を取ってメリット制で何らかの対応は取れるのではないか。 ・メリット制から、特定の疾病や特定の対象者を除くのは、事業主の災害防止行動から漏れることから 慎重になるべき。 ・脆弱性のある対象者について雇い控えが起きかねないという点については、問題となっているのは労 働者の生命や身体という重大な法益であり、同じレベルでは論じられないのではないか。メリット制 が無ければ、災害予防行動をとらない方が良いとう歪んだインセンティブが生じかねない。
・災害防止行動に対する弊害を取り除ける方に制度設計をすべきではないか。これらの者を雇っても保険料率に影響がないというアプローチをするよりは、業務災害を発生させないというアプローチが重要(安全衛生の向上、労働条件の改善を図る制度設計、被災率の高い主体に適した仕事を選択できるマッチングなど)。これらの雇用の問題をメリット制に持ち込んで良いのかは疑問。
・高齢者・外国人はダイバーシティマネジメントの観点から、メリット制の算定の対象外とすべきではないと考えている。これらの人達について、 労災保険料の負担軽減を図るのではなく、使用者責任をしっかり果たして、活躍してもらうことが適切。
・雇い控えの問題は、労災保険が対象とするところではなく、雇用政策の問題であって、雇用保険や、 社復事業などを活用する話ではないか。
・高齢者や障害者などの脆弱性の強い労働者をメリット制の算定対象から外すことは検討すべき。災害が生じた場合には 可能な限り労災保険給付が行われることが望ましいが、これらの者を雇用した使用者に結果的に重い 保険料負担をさせることは公平性を欠くように思われる。他方、外国人は、外国籍であるということ をもって特別な脆弱性は考えにくく、障害者や高齢者とは違って特別な取り扱いは不要と思料。
・メリット制はあくまで一部の一定規模の事業を対象にしたものであり、これら事業場について、災害 防止の一定の効果が得られやすいという観点から、多くの予防促進政策的手段の一つとして行われているもの。したがってメリット制がなくなったからと言って予防努力が必要ではないということにはならない。高齢者や障害者については、ガイドラインの策定や各種事業を通じて対応などは既に対応 しており、これらを強化していくことが、メリット制の適用から外すこととは理論的には矛盾しない。 日本では過失責任については、労災認定と同時に民事の賠償もできる。使用者の安全配慮義務は近年 厳格に捉えられることにも配慮が必要。
・高齢者は加齢にともない労災が増えるが、外国人については在留資格等も様々で一律に議論できない。 特定疾病を対象外とする論理は、ある面では高齢者にも当てはまり、ある面では当てはまらない。高 齢者に対する安全配慮は重要で、インセンティブとなるメリット制を外してもいいのかという点はありつつ、高齢者の脆弱性をふまえると、政府で高齢者雇用を推し進めているのに政策的な整合性の説 明が付くのかという疑問はある。
・メリット制があるからといってどれだけ高齢者の雇い控えが起こっているかは定かではないが、その上で雇う側にとってどう見えるのかという観点は重要であることから、高齢者をメリット制の算定対 象から外すことは課題があると思うが、災害リスクが高くなる高齢者を他の労働者と同じように算定するのは適切かという問題はあるため、折衷案として高齢者についてはメリット制の算定についていくらか割り引いて計算してもよいのではないか。なお、障害者の話もあったが、これ以上メリット制を厳しくすべきではない。

【脳心・精神疾患に係る給付の取扱いに関するご意見】
・メリット制に効果があって、
これを維持すべきという前提に立つのであるなら、事業主が従事させた業務との相当因果関係があるものについては適用を外す理由はないと考える。
疾病と特定の事業場の業務との間 で相当因果関係があるときには算定対象から除くことは正当化できない。
・メリット制から、特定の疾病や特定の対象者を除くのは、事業主の災害防止行動から漏れることから 慎重になるべき。 ・脆弱性のある対象者について雇い控えが起きかねないという点については、問題となっているのは労 働者の生命や身体という重大な法益であり、同じレベルでは論じられないのではないか。メリット制が無ければ、災害予防行動をとらない方が良いという歪んだインセンティブが生じかねない。
・結論としては脳心・精神をメリットの算定対象から外すべきではない。個体要因、私生活事情が発症に寄与しているというものはメリット制の関係で重視すべきではない。脳心・精神疾患以外の典型的な職業病でも業務外の要因との競合はあり得る。その上で業務起因性が肯定される傷病の範囲を確定して、災害補償に関する使用者の責任を基礎とした事業主の負担による保険給付を行っている。このように理解すると、特に個体要因や私生活の影響があるからといって脳心・精神疾患だけをメリット制の算定対象から除くことの理由にはならないと思われる。 ・メリット制の効果については多くの留保を設けて理解すべきことや、メリット制の弊害も踏まえると、メリット制の算定対象は予防効果を上げやすいもの、公平性の観点から問題が小さいものに限定して 議論していくべきと考える。これは今までの特定疾病のような事業場の業務起因性の特定とはまた異なった観点からの議論をしていくべきものと考えている。事業主が予防努力をし ていても、結果として労災として認定される疾病は生じ得るし、メリット制の適用が必ずしも公平性 や、災害の予防促進に資さないケースも生じているのではないか。推察に過ぎないが、これらの疾患 へのメリット制の適用が、紛争の対象になりやすいのではないか。
・脳心・精神疾患の労災認定については、業務上外の線引きや認定にかけることができるコストにも限 界がある。業務上と行政で判断しても、ある程度微妙なものも含まれてしまうことがあり、これは制 度として許容されているものと思料。そういったものは個別の事業主ではなく、事業主全体でコストを引き受け、メリット制の算定対象から外すのが公平にかなうと思われる。 ・脳心・精神疾患をメリット制の算定対象から外すことにより災害防止努力への影響があるという指摘 があるが、精神障害の判断は民事訴訟と近接している。たとえメリット制が外れたからといって、この民事訴訟を考えれば、急に過重労働を避けるための行動をとらなくなるとは考えづらい。業務上の 判断は微妙な部分もあり既に行政訴訟・民事訴訟ともに多くの訴訟が出ている。保険給付が行われた 結果、保険料の認定決定の段階で保健給付の支給決定が妥当ではないと争うことが増えることを想定すれば、紛争防止の観点から算定除外としても良いのではないか。 ・業務遂行に関して高度な裁量を持つ労働者が増えると、事業主が加重労働の防止に関与する余地が縮小する。メリット制の趣旨からすると、これらの疾患をメリット制に反映させることは自主的な災害 防止の努力を促進しようというメリット制の趣旨とは整合しないという主張に結びつく。「災害補償 の責任に関する理解・立場によっては」という留保はつくが、個々の事業主の負担の具体的公平性を図るためには算定対象にすべきではないという主張もあると考える。もっとも、過重労働の予防に対する事業主の役割は未だに大きいものがあると思料するので、これらの疾患をメリット制の算定対象から外すべきではないと思料。他方で中長期的視課題としては、働き方の多様化の進展を注視しつつ、 このような観点からメリット制と脳心・精神の関係は検討していく意義はあるものと思料。 ・メリット制について、労災の種類によっては抑止努力ができるものとそうでないものがあるのではという指摘はその通りと考える。一方で抑止しやすい労災と、そうでない労災があるというのは、事業 所が直面する労災リスクの観点からすれば業種毎に異なる。したがって、大前提として、保険料率が業種毎に適切に定められていることが重要。メリット制の在り方の議論をする際には、業種毎の保険料率が適切かという議論と合わせて検討すべき。

≪現時点における議論の確認≫ ◎メリット制の算定対象の扱いについては、多くの留保をつけつつもメリット制に災害防止の効果があるという出発点、あるいは評価が難しいという出発点によってスタンスが異なる。また、留保の内容も様々で、多くの違った立場が表明された。 ◎災害防止努力、公平性の二つのキーワードを前提として、雇用促進の問題、疾病の特性の問題、紛争防止の問題、保険料率の問題などの観点を加味して整理していただく。

2.労災保険給付が及ぼす徴収手続の課題
【論点@】メリット制の適用を受ける事業主に対して、労災保険率の算定の基礎となった 労災保険給付に関する情報を提供すべきか。

・論点@については、保険料の申告・納付をした後ではなく、もっと早い段階で情報提供をすべき。事業主が被災労働者の保険給付の情報を得ることによる懸念は聞くが、保険の原則として保険料を負担 する事業主には情報を提供すべきで、懸念されるような問題が出ないような制度設計をすべき。責任の確実な履行を担保する労災保険の保険料を負担する使用者にとって、保険料の前提となる事実を知ることは重要。保険料額のベースとなる「労働者」、「災害」、「傷病」、「給付額」などの情報については使用者への提供が正当化されるのではないか。・あんしん財団の最高裁判決は、使用者の原告適格を否定するに当たって、保険料 認定処分を巡る使用者の手続保障が図られることを明示的に言及しているところ、個人情報保護はあるが、メリット制の適用を受ける事業主への十分な手続保障の担保として情報を提供することは重要。あんしん財団事件はメリットの算定根拠となった支給決定の支給要件非該当性を主 張できるとしているが、そのためには算定の根拠となった支給決定が特定できないといけない。遅くとも労災保険率決定通知書の送付の時点で保険料がなぜ増減したのかがわかる情報が事業主に提供されるべき。事業主は元々労災申請時に請求書の作成や監督署の調査に協力しており、申請自体は把握している。保険給付の額についても、支払う賃金に基づいて算定されている、被災労 働者に心理的なハードルはあるかもしれないが、こうした情報を事業主に知らせることに自体は問題ないのではないか。
・論点@については、事業主にとっての手続保障という観点から一定の情報を開示すべきだが、業務災 害の情報は、病歴、障害、犯罪の被害を受けた事実など含む可能性があるので慎重に扱うべき。労働 者にとっては意図的に労災の情報を隠している場合もある。事業主につまびらかになってしまうと労 災申請への忌避行動が出かねない。 なお、手続き上、事業主に労災申請の事実が知られるタイミングはあるという指摘があったが、事業 主の証明は簡便なものになっており、また労働者のプライバシーに配慮している面もあるのではない か。

【論点A】支給決定(不支給決定)の事実を事業主に伝えることについてどのように考えるか。 ・論点Aも、保険の仕組みからすれば保険料を負担する事業主に保険給付の情報を伝えるべきであり、 また、早期の災害防止という重要な観点からもできるだけ早く事業主に伝えるべき。・論点Aについては、使用者の災害補償責任を基礎として、保険料負担が根拠付けられている前提から すれば、保険給付の支給・不支給決定についても使用者に教えることは合理性が認められる。
○論点Aについても、労災予防という観点から、事業主に支給・不支給の情報が行くのは重要。メリッ ト制の適用を争うときには、支給決定から時間が空いてしまうので、支給決定のタイミングで使用者 に情報提供がされることは手続保障の観点からも適切。一方で、使用者に情報提供がされ、将来のメ リット制の不服申立を見据えて事業主から被災労働者や遺族にコンタクトをとったり、被災労働者に 協力する資料提供者や証言者などに接触したり、関係者にとって追加的な負担が生じる懸念はある。 一般的に、使用者への手続保障の充実は重要でありつつも、不服申立が増えていき、それに向けて使 用者が様々なアクションを起こすことにより、これから生じる被災者や関係者などへの事実上の負担 は別途考慮すべき。 ○論点Aについて、現行、支給決定が保険料率に反映されるのは2年後であり、不服申立をするまでに 支給決定からタイムラグがある。これが支給決定時に事業主に情報提供されれば、事業主にとっては 必要な準備ができる。一方で不服申し立てを見据えた事業主からの労働者や遺族にかかるプレッシャーについては配慮が必要と思料。災害防止のインセンティブとしても事業主に早めに知らされること には意味がある。 ・メリット制の適用事業であるか否かにかかわらず、事業主の全体に支給決定があったかどうかくらいの事実については情報提供すべきではないか。事業の種類別に異なる保険料率は、 かつて業種別メリット制と呼ばれ、公平と予防の観点から導入された。同種事業の業務災害を抑制すべく、各事業は災害防止の努力を求められている。どのような予防を取るかは、業災害の内容を知る ことが出発点、個人情報配慮の限界がありつつも、災害発生の有無程度は事業主に承知してもらうべき。

≪現時点における議論の確認≫ ◎論点@も論点Aも、使用者にとっての手続保障としての重要性が強調されると情報提供すべきという のはある一方で、障害など微妙な病歴、障害を隠している場合には配慮が必要。 ◎論点Aについては、災害防止努力をいち早く始めるためにも、支給決定不支給決定を早く伝えること は重要だが、これが不服申立に関係して、事業主からの被災労働者や遺族への接触など事実上の負担をかけかねない可能性がある点については要検討。

次回は新たに「「2040年に向けたサービス提供体制等のあり方」検討会(第7回)の資料について」からです。

第6回労災保険制度の在り方に関する研究会 資料 [2025年07月19日(Sat)]
第6回労災保険制度の在り方に関する研究会 資料(令和7年5月30日)
議題 労災保険制度の在り方について(給付・適用・徴収等関係)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_58411.html
◎資 料 労災保険制度の在り方について(給付・適用・徴収等の個別論点のうち議論を深めて いただきたい点)
○【論点1】遺族(補償)等年金の支給要件について@A ー夫と妻の要件の差を具体的にどう解消するかー
・現行
→妻の受給権には年齢要件がないのに対して、夫については、労働者たる妻の死亡時に55歳以上又は一定の障害の状態でなければ 受給権が生じない。⇒遺族(補償)等年金、一時年金 参照のこと。
・研究会における御意見の要旨→【遺族(補償)等年金の趣旨・目的】【生計維持要件の考え方】【支給対象の範囲の在り方】
・更に御議論いただきたい論点→これまでの御議論では、制度の趣旨、生計維持要件の考え方については様々な御意見をいただいたが、上記御意見のいずれを採った場合でも、支給要件について夫と妻で区別する理由は見当たらないと考えてよいか。 夫と妻とで支給要件が明確に異なるのは、年齢要件のみであり、どのような年齢要件を設定するのが適当か。

○【論点2】遺族(補償)等年金の特別加算の在り方について
・現行
→遺族(補償)等年金の受給権者たる妻が、@55歳以上又はA一定の障害の状態にある場合に、生計を同じくする 他の受給資格者がないときには、給付基礎日額の22日分の特別加算を行う(法第16条の3及び別表第1)。
・研究会における御意見の要旨→昭和45年創設当時から平均寿命はかなり変わっており、創設から50年くらい経っているので、特別加算でどれくらいのニーズがカバーできるのか。受給権者の高齢化、給付の長期化が与える影響についても考えてもよいのではないか。
・御議論を踏まえた新たな論点→・遺族が妻のみだった場合、妻以外の遺族が1人だった場合と異なり特別加算を行うことについて、制度創設時の考え 方(※)は現在でも妥当と言えるのか。 ・遺族が一人だった場合、実態として9割以上が女性でありかつそのほとんどが55歳以上であることから、特別加算されないケース(夫、子ども等)はむしろ極めて少数。あえて給付水準を低く設定する合理的理由はあるのか。(※)特別加算創設当時(昭和45年)の考え方 これは、若年の妻は単身の場合には身軽なため就労が可能であって年金以外にも相当程度の所得が期待されるのに対し、高齢・廃疾の妻は、就労の機会が困 難の度を高めるので、その妻という特別の身分に着目し、その生活の安定に資するためにとくにこのような加算を行うこととしたもので、諸外国においても同様の制 度を認めている例がかなりみうけられる・・・(略)・・・。

○【論点3】災害補償請求権、労災保険給付請求権に係る消滅時効の見直しについて@A
・現行
→•労働基準法における災害補償請求権は、行使できるときから2年間で消滅する(労基法第115条)。 •労災保険法上の給付請求権は、行使できるときから、短期給付については2年間、長期給付については5 年間で消滅する(労災保険法第42条第1項)。
・研究会における御意見の要旨→・一律に消滅時効期間を延長するのではなく、手続自体が精神的負荷になるという事例について特例を設けることも考 えられるのではないか。・他の措置でも対応が可能に思われ、具体的なケースに即した広報や周知などが大事ではないか。
(参考)労働政策審議会の建議(令和元年12月27日)(抄)→早期に権利を確定させて労働者救済を図ることが制度の本質的な要請であること。に早期に災害補償の請求を行うことにより、企業に対して労災事故を踏まえた安全衛生措置を早期に講じることを促すこと。
早期の負傷の治癒等によって迅速に職場復帰を果たすことが可能となるといった効果が見込まれること。仮に見直しを検討する場合には、使用者の災害補償責任を免除する労災保険制度は当然のこと、他の労働保険・社会保険も含めた一体的な見 直しの検討が必要である。注)雇用保険や健康保険の給付請求権の消滅時効期間は2年。
(参考)令和2年改正法における附帯決議→災害補償請求権の消滅時効期間については、労働者の災害補償という観点から十分であるのか、施行後5年を経過した際に、労働者災害補償保険法 における消滅時効期間と併せ、速やかに専門的見地からの検討に着手すること。(令和2年3月24日参・厚労委)

(参考)労働者災害補償保険法第42条について、労災保険法コンメンタール(抄)→民法は、一般債権は債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき又は権利を行使することができる時から10年間行使しないときに消滅するとし(民法第166条)、会計法は、金銭の給付を目的とする国の権利及び金銭の給付を目的とする国に対する権利は時効に関し 他の法律に規定がないものは、これを行使することができる時から5年間で消滅するとしている(会計法第30条)。 本法における保険給付を受ける権利等は、その行使が容易であり、またこれらの権利関係をいたずらに長期にわたって不安定な状態の下に置くこと は・・・(略)・・・2年の短期消滅時効にかからせることとなっていたが、保険給付の年金化が広い範囲において達成されたので、昭和40年改正法により障 害補償給付及び遺族補償給付については時効期間が5年に改められ(以下略) また、平成29年に・・・(略)・・・民法が改正され(以下略) これに伴い、労基法上の賃金請求権の時効についても、改正後民法の原則と合わせて5年間(激変緩和措置として、当分の間暫定的に3年間)に延長 されている。しかし、労災保険法上の保険給付請求権については、 大丸1一般に業務上の負傷又は疾病が発生した場合には、労働者は当然にそれを認知できる状態にあり、早期に災害補償の請求がなされることが想定されることに加え、仮に長期に渡る消滅時効期間とした場合、使用者の労務管理に負担を与え、取引の安全を図る観点から望ましくないこと 大丸1災害補償の仕組みは、被災当時の労働者の稼得能力の損失又は遺族の被扶養利益の喪失の塡補を目的としていることから、業務上の負傷又は疾病 の発生等から長期間経過してしまうと、労働者救済という法の目的が達成されないこと 大丸1労災事故が発生した際に早期に災害補償の請求を行うことにより、事業主に対して労災事故を踏まえた安全衛生措置を早期に講じることを促すことにつながり、労働者にとっても早期の負傷の治ゆ等によって迅速に職場復帰を果たすことが可能となるといった効果が見込まれる ことから、短期給付については2年間、長期給付については5年間とされている。 労基法上の災害補償請求権についても、同様の趣旨で労基法改正前と同様に2年間とされている・・・(略)・・・。

・御議論を踏まえた新たな論点→・時間の経過による証拠の散逸のおそれや被災者の早期の社会復帰等の要請について、時効の規定のみに「背負わせる」必要はないのではないか。 ○一定の疾病等については、必ずしも労災事故として「当然に認知」できるものではないのではないか。また、労災給付を請求する権限行使が常に「容易」であると言えるのか。・請求手続き自体が負荷になるケース等について、仮に何らかの手当を行う場合、具体的にどのような方法が考え得るのか。 ・同様の消滅時効期間(2年)を定める他の労働保険・社会保険制度との関係をどう考えるのか。労災保険・災害補償に特有の理由がある場合には、異なる取り扱いをしてはならないのか。


○【論点4】遅発性疾病等に係る給付基礎日額の算定方法について
・現行
→給付基礎日額(平均賃金)は、労働者が疾病の発生のおそれのある作業に従事した事業場を離職している場合には「疾病の発生のおそれのある作業に従事した最後の事業場」を離職した日以前の3か月間の賃金を基礎に算定する。(昭和50年9月23日付け基発第556号)
・研究会における御意見の要旨→・労災保険法8条2項は、労働基準法の平均賃金だと労働者に不利益になることを「適当でない」としていると解釈でき、556号通知は疾病発生時の平均賃金を用いると労働者が不利益になる場合に適用するものと考えるべき。 ・社会保障的性格を強調すれば、ケース@では、発症直前の生活水準を補償する趣旨で発症時賃金をもとに給付基礎日額を算定し得る。発症時賃金が最終曝露事業場の離職時賃金よりも低い場合は、労働基準法の災害補償責任に戻って最低保障をする。ケースA等、参考とする賃金水準がない場合は、最終曝露事業場の離職賃金によるしかない。 ・法令の規定は「疾病の発生が確定した日」としており、危険因子へのばく露から発症までの一定の時間的経過は法の想定内であり、原則(法律の規定)に戻るのが妥当。ケース@は、発症時の賃金水準を元に給付基礎日額を算定することが適当。その理由・趣旨は、生活保障の役割という社会保障的なものを重視していくべき。 ・給付基礎日額の例外(556号通知)は、労働基準法に基づく事業主の災害補償責任の考え方が基本にあるのではないか。 労災保険の補償は、原因となる有害業務に従事させたことに対する事業主の補償と考えられ、有害業務への従事に着目すべき。その後の働き方の違いや退職時期・発症時期等で給付基礎日額の扱いが異なるのは公平ではない。 ・一つの可能性として、年齢別の賃金水準を考慮したスライドであれば、若年労働者には賃金水準の上昇を考慮し、高年 齢被災労働者には本来の賃金水準が反映され、損害の填補という制度趣旨により沿ったものとなり得る。【その他のご意見】→・有害業務に従事した事業場へのメリット制の適用は、当時(ばく露時)の賃金水準の限度とする方法もある。 ・障害補償年金が稼得能力の減退喪失に着目して損害の填補を図る給付であることを踏まえ、稼得能力の喪失を前提とす る老齢厚生年金や老齢基礎年金との間で併給調整することも合理的ではないか。
・更に御議論いただきたい論点→【ケース@の場合】 労災保険法第8条第1項に規定する「疾病の発生が確定した日」を算定の原則とすることについてどう考えるか。 ただし、発症した日を基準日として算定した平均賃金に相当する額が、最終ばく露事業場(C)を離職した日を基 準日として算定した平均賃金に相当する額に満たない場合は、最終ばく露事業場(C)を離職した日を基準日として算定した平均賃金に相当する金額とすることについて、どう考えるか。


○【論点5】特別加入団体について@➁
・現行
→特別加入団体は、特別加入対象者で構成される団体と規定されている(労災保険法第35条第1項)。 また、特別加入団体は災害防止に関して自らが構ずる措置を定めることとされている。(労災則第46条の23第2項)⇒<労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)><労働者災害補償保険法施行規則(昭和30年労働省令第22号)> 参照。
・研究会における御意見の要旨→・特別加入団体を介在させなければならないのかの議論をしても良いのではないか。特別加入団体に災害防止の義務 を課すのは団体を作るハードルが上がり、加入促進の妨げになるのではないか。義務や要件の設定ではなく、イン センティブの付与(社復の安全衛生確保等事業の利用を通じた災害防止措置などの推進)が適切ではないか。 ・特定フリーランスの特別加入団体は、災害防止教育の実施の厚労省への報告が要件になっているが、既存の特別加 入団体にも同様の要件を課す必要があるのではないか。 ・特別加入団体について、特別加入に際して団体の介在が必要なのかという意見や、加入者の災害防止等に貢献し得るとの意見もあった。 ・予防措置について、安衛法における注文者の安全管理の責任に注目されている状況も踏まえ、労災保険法でも注文者 に何らかの安全管理の責任を求められないか検討の余地はある。 ・特別加入団体の役割は特別加入の有無にかかわらず、特定の業種・職域で接点をもっている自営業者に、職業上のリ スクの理解を深めてもらい、その上で保険加入の対象を促し、その際の選択肢として特別加入を示すような周知広報 への貢献は求められないか。
・更に御議論いただきたい論点→・これまでの御議論では、特別加入団体の役割等について様々な御意見をいただいたところであるが、そもそも特 別加入団体の承認に当たり満たすべき要件については下記のものが通知で定められているのみであり、法令上、団体の性質が明らかとなっていないが適切なのか。また、団体の承認取消要件についても定められていないが、問題ないのか。⇒「労働者災害補償保険法の一部を改正する法律第2条の規定の施行について」昭和40年11月1日付け基発第1454号(ア〜オ) 参照のこと。
・また、労働安全衛生法の改正も踏まえ、特別加入団体についても災害防止努力を促進する必要はないのか。

○(参考)特別加入団体の災害防止に関する取組事例→特別加入団体の取組には、研修会やメールマガジン等により、労災保険の案内のほか、労災事故や不安全行動の事例紹介、事故 防止対策の事例・規定の共有により加入者の意識啓発を図る等の取組が見られる。⇒業務災害防止措置に関する研修会の研修内容、業務災害防止に資する内容のメールマガジン等の内容 参照。

○【改正労働安全衛生法】個人事業者等に対する安全衛生対策の推進→・個人事業者等(注)の業務上災害の防止、ひいては同じ場で働く労働者の災害防止のため、個人事業者等を労働安全衛生法による保護対象・義務の主体として位置づけ、次の見直しを行う。(注)個人事業者のほか中小事業者の代表者又は役員も対象
@注文者(建設業におけるゼネコン等)が講じるべき措置の義務付け(次ページ)→・ 建設業、造船業、製造業の注文者には、その労働者及び関係請負人の労働者の作業が同一の場所で行われる場合には、混在作業による労働災害防止のため、作業間の連絡調整等の必要な措置を講じることが義務付けられているところ、この統括管理の対象に個人事業者等を含む作業従事者を追加する
A個人事業者等自身が講じるべき措置の義務付け→・ 構造規格や安全装置を具備しない機械等の使用禁止 ・ 特定の機械等に対する定期自主検査の実施 ・ 危険・有害な業務に就く際の安全衛生教育の受講 等 等
B個人事業者等を含む作業従事者の業務上災害を労働基準監督署に報告する仕組みを整備 (注)個人事業者に作業を請け負わせる「事業者」に対する保護措置の義務づけは省令改正により対応済み。
・ また、業種を問わず、労働者や個人事業者が混在する作業場所を管理する者(※1)に対して、自らと請負人が行う作業間の連絡調整等の必要な措置を義務付けることで、日本が未批准のILO基本条約である第155号条約(職業上の安全及び健康並びに作 業環境に関する条約)(※2)の批准につながる。 (※1)例えば、卸売業の事業者が、倉庫で作業する店員と、フォークリフトで商品の搬出をする運送業者が混在することによる事故を防止する ため、連絡調整を行う。 (※2)条約第17条に規定されている「二以上の企業が同一の作業場において同時に活動に従事する場合の協力義務」が批准に当たっての課題と なっている。
○(参考)注文者等が講じるべき措置(作業間の連絡調整)のイメージ→≪現行≫と≪見直し後≫個人事業者等による混在作業の位置付けを明確化あり。

○【論点6@】メリット増減率が+40%の事業場で、翌年度も+40%である事業場が全体の3分の2 であることについて
・現行
→労災保険率は、業種間の負担の公平を期するため「事業の種類」ごとに災害率等に応じて決められているが、事業の種類が同一であっても、作業工程、機械設備あるいは作業環境の良否、災害防止努力の如何等によって個々の 事業ごとの災害率には差が生じる。 ・このため、事業主の負担の具体的公平を図るとともに、事業主の災害防止努力を促進するため、個別の事業場の 災害の多寡に応じ、労災保険率又は保険料を増減するメリット制を適用している。 ・具体的には、保険収支率の多寡に応じて、保険料率(非業務災害率を除く。)を+40%〜−40%で設定する。 ○適用される事業の範囲は一定規模以上の継続事業、一括有期事業及び単独有期事業となっており、継続事業及び一括有期事業については連続する3保険年度の最後の年度の翌々保険年度の労災保険料に、単独有期事業については事業終了(建設工事などの終了)後、確定保険料に、それぞれメリット保険料率が適用される。 ・なお、メリット制が適用される事業場は全適用事業場の4%、対象労働者は59%、となっている(令和5年 度)。

・研究会における御意見の要旨↓
【メリット制の効果について】
→・メリット保険料率の変化が労災の抑止に一定効果があると分かったが、様々な側面があることに留意が必要。 ・使用者の過失によって生じる災害については、メリット制による災害防止効果が出ているとしてメリット制を維持するのが良い。 ・メリット増減率が前年+40%から翌年+40%の事業場が6割強あり、プラスでメリット制が適用されていても増減率が変わらない事業場もある。これらの事業場はどのような状況にあるのか、長期的には検証が必要ではないか。 ・メリット制を無くしてしまうと、同種の事業で、災害防止できている企業から災害防止できていない企業への利益の再分配となり、それは労災保険に内在する論理からは正当化されないし、産業施策の観点からも要請されていない。 ・プラスのメリットが適用されている事業場について一定効果が示されたが、メリット制が効果を持ちやすい業種や災 害類型があること、事業主が努力しても避けられない労災があること、労災隠しを誘因している等の弊害はデータで 示しにくいこと等に留意が必要。 ・過去のメリット制には災害防止効果があったかもしれないが、今日のメリット制の役割は終わっているのではないか。
【特定の疾患に係る給付の取扱いについて】→・メリット制から、特定の疾病や特定の対象者を除くのは、事業主の災害防止行動から漏れることから慎重になるべき。 ・災害補償に関する使用者の責任を基礎とした事業主の負担による保険給付を行っていると理解すると、個体要因や私生活の影響があるからといって脳心・精神疾患だけをメリット制の算定対象から除くことの理由にはならない。 ・事業主が予防努力をしても、労災認定される疾病は生じうるし、必ずしも公平性や災害の予防促進に資さないケースも生じているのではないか。これらの疾患へのメリット制適用が紛争の対象になりやすいのでは。 ・メリット制が外れたからといって、民事訴訟を考えれば、事業主が過重労働を避けるための行動を取らなくなるとは考えづらい。紛争防止の観点から算定除外としてもいいのではないか。 【特定の労働者群への給付の取扱いについて】→・言語面や体力面で脆弱性があるが、それに適した災害防止努力を取るべきなのであり、メリット制の算定対象から除く理由はない。 ・雇用政策との整合性を取ってメリット制で何らかの対応は取れるのではないか。・雇い控えの問題は、労災保険が対象とするところでなく、雇用政策の問題である。
・更に御議論いただきたい論点→@メリット増減率が+40%の状態が続く事業に対して、どう対応していくのか。 Aいわゆる「労災かくし」につながっているとの意見があるが、どう評価するべきか。 B特定の疾病や労働者群の取扱いについて御議論があったが、他に検討すべきものはあるか。

○【論点6@】メリット増減率が+40%の事業場で、翌年度も+40%である事業場が全体の3分の2 であることについて→・令和4年度にメリット増減率が+40%の事業場(10,215)のうち、約66%に当たる6,719事業場が令和5年度も+40%である(第5回研究会資料2のP7)。 ・メリット増減率は、適用する年度の前々年度までの3年間における保険収支を基礎とすることから、例えば、死亡災害を起 こして多額の保険給付を行った場合、3年間に亘ってメリット増減率に影響を及ぼす。 ※例えば、令和2年度に死亡災害を起こし、遺族一時金を支給した場合、その給付額は、令和4年度から令和6年度までのメリット増減率に影響する。 ・このため、ある年度(ここでは平成29年度)のメリット増減率の基礎となった災害が影響を及ぼさなくなる3年後(令和2年 度)、またその3年後(令和5年度)のメリット増減率を分析してみると、平成29年度に+40%であった事業場のうち、令和 2年度も+40%であった事業場は21.7%、さらに令和5年度も+40%であった事業場は6.9%であった。
○メリット増減率の遷移→令和4年度、令和5年度ともメリット制が適用された継続・一括有期事業場で、メリット増減率の遷移を見ると、 ・メリット増減率が変わらない(左上から右下にかけての対角線にある)事業場が55% ・メリット増減率が上がる(対角線の上三角)事業場が22% ・メリット増減率が下がる(対角線の下三角)事業場が23%
○メリット増減率が+40%の事業場における業種別構成比→平成29年度にメリット増減率が+40%であった事業場の業種別構成比を以下@、Aの条件で比較した。 @令和2年度、令和5年度もメリット増減率が+40%である事業場 A @以外の事業場 @、Aを比較すると、@ではAに比べ「卸売業・小売業、飲食店又は宿泊業」の構成比が大きく、「建設事業」の構成比が小さい。
○参考:H29年度のメリット増減率が▲40%である事業場のメリット増減率推移→ある年度(ここでは平成29年度)のメリット増減率の基礎となった災害が影響を及ぼさなくなる3年後(令和2年 度)、またその3年後(令和5年度)のメリット増減率を分析してみると、平成29年度に▲40%であった事業場のう ち、令和2年度も▲40%であった事業場は56.4%、さらに令和5年度も▲40%であった事業場は37.7%であった。
○参考:メリット増減率が▲40%の事業場における業種別構成比→平成29年度にメリット増減率が▲40%であった事業場の業種別構成比を以下@、Aの条件で比較した。 @令和2年度、令和5年度もメリット増減率が▲40%である事業場 A @以外の事業場 @、Aを比較すると、@ではAに比べ「建設事業」の構成比が比較的小さい。
○【論点6A】労災かくしの動機に係る調査→・令和5年(1月1日〜12月31日)にいわゆる労災かくし(労働安全衛生法第100条違反)で送検した事業者(103事業者) について、労災かくしを行った動機を都道府県労働局に対して調査した。 ・結果、元請けへの影響や企業イメージの低下を懸念したものが多く挙げられた一方、メリット制を理由とした事例はなかった。

次回も続き「参考資料 第5回研究会における委員ご発言の概要」からです。

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