労働安全衛生法に基づく一般健康診断の検査項目等に関する検討会 第8回資料 [2024年12月06日(Fri)]
労働安全衛生法に基づく一般健康診断の検査項目等に関する検討会 第8回資料(令和6年10月18日)
議事 (1)中間とりまとめ(案)について ・女性特有の健康課題に関する項目について ・歯科に関する項目について https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44374.html ◎資料1 労働安全衛生法に基づく一般健康診断の検査項目等に関する検討会 中間とりまとめ(案) T はじめに→労働安全衛生法(昭和 47 年法律第 57 号)に基づく一般健康診断について は、平成 28 年に、「労働安全衛生法に基づく定期健康診断等のあり方に関 する検討会」において各診断項目等の妥当性等について検討されたところだが、近年及び今後の労働者の健康を巡る情勢としては、急速に進む高齢化の中、職業生活が長期化してきているとともに、女性の就業率の増加に伴って、女性特有の健康課題への対応の重要性が一層高まっている。また、 前回の検討以降、健康診断についての医学的知見が集積されてきている。 こうした中、政府の規制改革実施計画(令和5年6月 16 日閣議決定)では、 定期健康診断について、最新の医学的知見や社会情勢の変化等を踏まえ、 医学的知見等に基づく検討の場を設け、検査項目(検査頻度を含む。)及び検査手法について所要の検討を行い、令和6年度に結論を得ることとされ た。 また、「女性活躍・男女共同参画の重点方針 2023(女性版骨太の方針 2023)」(令和5年6月 13 日すべての女性が輝く社会づくり本部・男女共同参画推 進本部決定)では、「事業主健診(労働安全衛生法に基づく一般定期健康診断)に係る問診に、月経困難症、更年期症状等の女性の健康に関連する項 目を追加する」とされ、「経済財政運営と改革の基本方針 2023(骨太の方針 2023)」(令和5年6月 16 日閣議決定)では、「女性版骨太の方針 2023 に 基づき、(中略)事業主健診の充実(中略)等により女性が尊厳と誇りを持って生きられる社会を実現する」とされたところである。 こうした状況を踏まえて、「労働安全衛生法に基づく一般健康診断の検査項 目等に関する検討会」(以下「本検討会」)では、労働安全衛生法 に基づく一般健康診断の検査項目等について検討を行っているところであ る。 今般、これまでの検討結果を中間とりまとめとして報告する。 U 労働安全衛生法に基づく一般健康診断の検査項目等に関する検討 1 健診項目を検討する際の要件、着眼点→健康診断には、労働安全衛生法に基づくもののほか、保険者が、高齢者の医療の確保に関する法律(昭和 57 年法律第 80 号)に基づく義務として、 それぞれの加入者(40 歳から 74 歳の者に限る)を対象に行う特定健康診査、また、自治体の住民という立場では、自治体が健康増進法(平成 14 年 法律第 103 号)に基づく努力義務として住民を対象に実施する健康増進事 業による健診(検診)がある。 こうした中、労働安全衛生法に基づく健康診断では、業務が原因で、労働者が疾病にかかったり、疾病が悪化することを防ぐため、医学的知見を確認の上、健康診断の検査項目等を設定し、常時使用する労働者等に対する 健康診断の実施を事業者に義務づけるとともに、必要があると認めるときは、労働時間の短縮等の就業上の措置を講じることも義務づけており、これらの費用の全額が事業者負担となっている。なお、当該健康診断の対象 となる労働者には、特定健康診査及び健康増進事業による健診(検診)制 度とは異なり、法令により健康診断の受診が義務づけられている。 また、労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱いのために事業者が 講ずべき措置に関する指針(平成 30 年労働者の心身の状態に関する情報の 適正な取扱い指針公示第1号、改正令和4年同第2号)では、労働者の健 康情報について、労働安全衛生法に基づく労働者の健康確保措置の実施や 事業者が負う民事上の安全配慮義務の履行の目的の範囲内で適正に使用さ れ、事業者による健康確保措置が十全に行われるために使用することが示 されている。このため、事業者には、労働者のプライバシーを最大限に配 慮し、労働者の健康情報を把握する範囲を限定的にすることが求められる。 労働者・使用者の代表及び専門家等からなる「労働安全衛生法に基づく定 期健康診断等のあり方に関する検討会」の報告書(平成 28 年公表)では、 定期健康診断等の目的、項目の要件等について、「労働安全衛生法に基づく 定期健康診断等は、その目的が、常時使用する労働者について、その健康 状態を把握し、労働時間の短縮、作業転換などの事後措置を行い、脳・心 臓疾患の発症の防止、生活習慣病等の増悪防止を図ることなどである。ま た、定期健康診断等の診断項目は、当該診断項目単独、又は他の項目と併 せて、義務とされている就業上の措置を行うためのデータとすることが期 待できるものであり、その上で、努力義務である保健指導においても活用 するものであることが必要である。」とされている。 また、労働安全衛生法第 70 条の3においては、健康診断の項目等について 健康増進法第9条第1項に規定する健康診査等指針と調和が保たれたもの でなければならないとしている。 これらを踏まえ、本検討会では、健康診断項目(以下「健診項目」) を検討する際の要件、着眼点を次のように設定した。 ・対象とする健診項目:検討する健診項目(以下、「検査」)で 分かる健康に関連する事象(以下、「健康事象」)は何か。 ※ 対象となる健康事象について原則として無症状であること ・業務起因性又は業務増悪性:検査で分かる健康事象若しくは検出可能 な危険因子が業務に起因する又は業務によって増悪するか。 ・事後措置:検査によって有所見とされた者に対して、事業者が実施できる事後措置(就業上の措置)は何か。過度に就業制限をかけることの不利益可能性はないか。 検査の目的、対象、方法:検査の目的と対象集団、検査方法、検査頻 度が明確か。 ・検査の精度及び有効性、基準値:検査の精度及び有効性、適切な基準 値が示されているか。 ・健診の運用:検査は巡回健診でも実施可能か。対象となる労働者全員 に対して実施可能か。 検査費用:検査の1件あたりに要する費用を事業者が許容できるか。 ・健康情報の把握:結果を事業者が把握することになるが、事業者が把 握する健康情報として許容できるか。 2 女性特有の健康課題に関する項目について (1)検討の前提→近年及び今後の労働者の健康を巡る情勢としては、急速に進む高齢化の中、 職業生活が長期化してきているとともに、女性の就業率の増加に伴って、 女性特有の健康課題への対応の重要性が一層高まっている。 女性特有の健康課題については、「女性活躍・男女共同参画の重点方針 2023(女性版骨太の方針 2023)」中の「V 女性が尊厳と誇りを持って生き られる社会の実現」、「(5)生涯にわたる健康への支援」において、「A事 業主健診の充実等による女性の就業継続等の支援」が盛り込まれ、「働く女 性の月経、妊娠・出産、更年期等、女性特有のライフイベントに起因する 望まない離職を防ぎ、女性が活躍し、健やかで充実した毎日を送り、安心 して安全に働けるよう、事業主健診(労働安全衛生法に基づく一般定期健 康診断)に係る問診に、月経困難症、更年期症状等の女性の健康に関連す る項目を追加するとともに、産業保健体制の充実を図る。」と記載されてい る。 また、「女性活躍・男女共同参画の重点方針 2024(女性版骨太の方針 2024)」 中の「U 女性の所得向上・経済的自立に向けた取組の一層の推進」、「(3) 仕事と健康課題の両立支援」において、「@健康診断の充実等による女性の 就業継続等の支援」が盛り込まれ、「働く女性の月経、妊娠・出産、更年期 等、女性のライフステージごとの健康課題に起因する望まない離職等を防 4 ぎ、女性が活躍し、また、健やかで充実した毎日を送ることができるよう、 プライバシーに十分配慮した上で、事業主健診(労働安全衛生法に基づく 一般定期健康診断)において、月経随伴症状や更年期障害等の早期発見に 資する項目を問診等に加え、その実施を促進する。(中略)さらに、健康課 題が把握された従業員に対し、事業主が行うことが望ましい対応について、 ガイドラインや指針などを作成することを検討するとともに、女性の健康 に関する取組の好事例等を事業主に周知する。」と記載されているとともに、 「V 個人の尊厳と安心・安全が守られる社会の実現」、「(7)生涯にわた る健康への支援」にも、「A健康診断の充実等による女性の就業継続等(再 掲)」が盛り込まれている。 月経随伴症状や更年期障害等の女性特有の健康課題と業務との関係につい ては、論文検討では、夜勤やセデンタリーワーク(sedentary work。継続的な座位による業務)との関係性を示唆するとの研究報告を確認できた程度であり、業務起因性又は業務増悪性を示す明らかなエビデンスがあると までは言えない。 また、労働者のプライバシーの配慮については、事業者に知られたくない という労働者に配慮する必要があること、全ての健康情報は個人情報として配慮すべき事項であり、それを上回って事業者が責任を果たすべき内容 であった場合に初めて事業者はその情報を取得するという正当性を持つこ とから、健康診断において女性特有の健康課題に関する個人情報を事業者 が知るという意味はあるのかという意見があった。 一方で、本人の希望があれば、産業医をはじめとする産業保健スタッフな どに情報共有されるということが、健康管理や職場環境改善の観点から有 効ではないかという意見があった。この場合、会社に情報提供を希望する かスクリーニングをした上で、会社に情報提供を行う形式であれば、労働 者のプライバシーを保護することができるとする意見や、ストレスチェッ ク制度における長時間労働者への面接指導において同様の仕組みがあるこ とから対応可能ではないかという意見があった。 こうした意見に対して、女性特有の健康課題が業務起因性又は業務増悪性 を示す明らかなエビデンスがあるとまでは言えない以上、事業者として労 働者への支援を検討するに当たっては、労働者が受診した医師の意見と併 せて事業者に申し出ることを出発点とすべきという意見があった。これに 関連して、専門医の受診を経なければ事業者が適切な配慮を行えるのか疑 問という意見や、専門医の受診が引き続き進まなければ、女性労働者の健 康課題の解消につながるか疑問という意見があった。 しかしながら、月経困難症、更年期障害等により仕事上の困難を感じている、あるいは、会社からの支援の必要性を感じている女性労働者は少なくないという研究報告があった。また、女性特有の健康課題、特に月経困難 症等で一番難しいのは、労働者本人が自らの健康上の不具合を疾患だと思 わないことであり、自覚症状がないと捉えてしまうことが非常に問題であるという意見があった。 健康診断の実施方法については、血液検査による更年期障害の判定は難しいという意見や、既存の質問紙については、質問数が多すぎることや質問 紙のスコアは重症度を必ずしも反映しないことからスクリーニングとして は適さない可能性があること、臨床場面では困っていることを重視するこ とや、職場に知られたくない労働者も存在していることに留意が必要との 研究報告があった。 また、健康診断実施後の事業者における対応について、衛生委員会の設置 義務がある事業所においては、衛生委員会におけて論議・決定することや、 設置義務のない事業場においては、労働者代表の意見を聞くなど、労使間 で十分に話し合うことが重要との意見があった。 加えて、事業者が法定外の健診や、一般健康診断問診票1に記載されている 項目以外の問診を行うに際し、衛生委員会等で議論することとされていな いことを踏まえると、画一的に労使の協議事項とすることは、行き過ぎた 対応であるとの意見があった。 (2)検討結果 @ 一般健康診断問診票への女性特有の健康課題に関する質問の追加→上記(1)を踏まえると、一般健康診断の機会を活用し、女性労働者本人への気づきを促し、必要な場合には、産婦人科医等専門医(以下「専門医」)への早期受診、また、女性特有の健康課題に対する配慮について 申し出を行いやすい職場づくりにもつながるよう、一般健康診断問診票に 女性特有の健康課題(月経困難症、月経前症候群、更年期障害等)に係る質問を追加することが適当である。 その場合、次のような質問を設けることが考えられる。 質問:女性特有の健康課題(月経困難症、月経前症候群、更年期障害な ど)で職場において困っていることがありますか。 @ はい、A いいえ ↓ 健康診断を実施する機関(以下「健診機関」)で健康診断を担当する医師(産業医が健康診断を実施する場合も含む。以下、「健診担当医」)は、この質問に「@はい」と回答した労働者に対して、必要に応じて、女性特有の健康課題に関する情報提供や専門医への早期受診を促すことが適当である。 その際、健診担当医が、女性特有の健康課題に関し、必ずしも専門的な知 識を有していないことを前提とすべきであり、健診担当医が情報提供等を行うに際し、活用できるツールの作成や健診担当医に対する研修等が必要である。 A 事業者への情報提供→ 質問に対する労働者の回答は、健診機関から事業者に提供しないこととする。この点については、労働者本人が希望するのであれば、事業者に提供 してもよいのではないかという意見があった。一方、現時点では、一般に 女性特有の健康課題とその業務起因性との関係が明らかにされていないことから、労働者が受診した専門医の意見(適切な配慮の内容等)とともに 事業者に申し出ることを出発点とすべきとの意見があった。 以上を踏まえ、厚生労働省において、女性特有の健康課題を抱える個々の 労働者と事業者をつなぐ観点から、望ましい対応を、健診機関向けガイドラインに示すこととする。 具体的には、労働者が、女性特有の健康課題で職場において困っている場 合、専門医の早期受診を勧奨すること、その上で、専門医の診断書を持って事業者に相談することは可能であること(既に、専門医の診断を受けて いる場合も同様に可能であること)を健診機関向けガイドラインにおいて 明示する。 また、女性特有の健康課題で職場において困っている労働者を対象に、自らが事業者に女性特有の健康課題に関する相談を行うことは現時点であっても可能であるとともに、その場合には、専門医による診断書等を示すことが望ましいことを事業者向けガイドラインにも明示する。なお、これらの取扱いについては、あらかじめ、衛生委員会等にて労使間で十分に話し 合うことが考えられる。 一方で、望ましい職場環境の拡充等の観点から、女性特有の健康課題に配 慮した職場環境を積極的に推進する企業においては、労働者に説明した上 で、女性特有の健康課題に係る質問における労働者の回答を集計した情報(以下「集計情報」)を健診機関より入手し、取組みに活用するこ とが考えられる。なお、労働者のプライバシーに配慮するために、受診で きる健診機関が複数ある場合を含め、1つの健診機関あたりの受診者が例えば 10 人未満の場合など個人が特定されやすい場合は、集計情報を提供しないことが必要である。また、自分の回答を集計情報に使用されたくない 場合は、本人の意思を確認の上、集計情報を使用させないようにすること が必要である。 B 男性の更年期障害について→ 男性の更年期障害についても一般健康診断に含めるべきではないか、問診 項目で特に男女を区別してきく必要はないのではないかという意見もあっ たが、業務起因性等に係る知見が乏しい項目を労働安全衛生法のスキーム に追加することは極めて抑制的であるべきとの意見や、現時点では、男性の更年期障害という疾患概念自体に曖昧さがあることに加え、労働者個人の精神的な状態が前面に出やすく、鑑別の課題もあり、健康診断における 問診でのスクリーニングが困難であるとの意見があった。 男性の更年期障害については、自分の抱えている不調が更年期の症状であ るという理解促進を促すことについて、問診とは別に検討を進めて欲しい との意見があった。今後、厚生労働省は、更なる医学的知見の集積を踏ま え、必要に応じて検討していくこととする。 3 歯科に関する項目について 一般健康診断の検査項目として、歯科健診を追加する可能性について、公 益社団法人日本歯科医師会からの提案を踏まえ、検討した。 (1)検討の前提→歯周病については、初期の段階では自覚症状がほとんどないまま進行することから、定期的に、歯科健診により口腔の状況を把握することが必要ではないかという意見がある。 健康増進法に基づく健康増進事業により、20、30、40、50、60、70 歳の住民に対し、歯周疾患検診を行うことが市町村の努力義務とされているものの、その受診状況は低調である。 今般、日本歯科医師会は、労働者が高年齢となっても活躍できる社会を実現するためには、一般健康診断の検査項目に、歯周病、歯の喪失、顎関節症(以下「歯科疾患」)に係る検査(以下「歯科健診」) を追加することにより、歯周病やそれに伴う歯の喪失を予防するとともに、 健全な口腔環境の保持に基づく高齢者の転倒防止、情報機器作業従事者の 顎関節症の予防をすることが可能であるとして提案を行った。 現在、職場における歯科医師による健康診断として、事業者には、塩酸、 硝酸、硫酸等の有害物を取り扱う労働者を対象に、労働安全衛生法第 66 条第3項に基づく歯科医師による健康診断を実施することが義務づけられて おり、有害物による歯牙酸蝕等に係る検査が行われている。 また、令和6年度より、リスクアセスメント対象物へのばく露による健康 障害リスクが許容される範囲を超えると判断された労働者を対象に、医師 又は歯科医師によるリスクアセスメント対象物健康診断を行うことが義務 づけられ、リスクアセスメント対象物の有害性を踏まえ、必要な検査を行 うこととされている。 なお、一般健康診断を行う際には、特定健康診査の検査も同時に実施され ており、特定健康診査の「標準的な質問票」の歯科に関する質問項目は、 一般健康診断問診票にも含まれている。 (2)検討結果 @ 健診項目を検討する際の要件、着眼点を踏まえた検討結果→業務起因性又は業務増悪性、就業上の措置 歯周病については、成人の8割程度が罹患しているとするデータもあり、 平時からの歯のブラッシング等のほか、症状があった場合は重症化する前 に、早期に歯科を受診することが有効であると考えられる。 顎関節症については、職場の労働者の発症率が、住民より高いことが示唆 される研究論文はあったものの、研究論文中で使用されている有所見者の 定義を確認すると、質問票の「どちらともいえない」という回答を「有所 見」と判断しており、業務起因性又は業務増悪性を判断するエビデンスと しては乏しい。 また、ストレスと顎関節症の関連が示唆されているが、ストレスと顎関節 症における定量的なエビデンスは存在しないことから、事業者が講ずべき 事後措置について明確な基準を設けることは困難であるという意見があっ た。 なお、心理社会的要因を「有所見」の判断項目としているが、労働者のストレス状態はストレスチェック制度を通じて把握すべきとの意見があった。 歯科疾患について、これまでの労災疾病臨床研究、厚生労働科学研究にお いて、業務起因性又は業務増悪性を示す明らかな知見は得られていないこ とから、労働安全衛生法に基づく一般健康診断を実施する意義は乏しいの ではないかという意見があった。 健診の運用等 仮に、歯科疾患に業務起因性又は業務増悪性があるとされると、歯科医師 による歯科健診を実施する体制を確保する必要があるが、歯科医師が口腔 の歯周組織まで検査する場合には、受診者1人当たり 20 分以上の時間を要することから、全国で歯科医師が事業場に赴いて歯科健診を行うことが現 実的かという課題がある。 また、歯科医師による歯科健診の代替手法として、検査キット等を活用することも考えられるが、目的に応じた代替手法の確立が課題となっている。 その他 歯の喪失によって転倒が生じやすくなる可能性があるとしたエビデンスについては、根拠とした調査の対象が 65 歳以上であり、このデータだけで健康診断の有用性があるとまでは言えないとの意見があった。 日本歯科医師会より、かかりつけ歯科の受診を含む「過去1年間に歯科検 診を受診した者」の割合は6割弱であり、国民の約半数しか受診していないとの説明があった。 新たな歯科に関する質問項目を追加するよりも、既にある特定健康診査の 質問項目を有効に活用することが効率的ではないかとの意見があった。 A 今後の方向性等→労働者の口腔の健康の保持・増進は重要であることから、事業者が行う健康保持増進措置において、口腔保健指導をより一層推進していくことは重要であるものの、業務起因性又は業務増悪性、就業上の措置等のエビデン スが乏しいことを踏まえると、問診を含め、労働安全衛生法に基づく一般 健康診断に歯科健診を追加することは困難である。 一方で、歯周病と全身疾患との関連が示唆されていることから、口腔内の健康を保つことの意義があると考えられる。現在、事業場における労働者の健康保持増進のための指針(昭和 63 年指針公示第1号)に「歯と口の健康づくりに向けた口腔保健指導」が盛り込まれているが、現状では十分に実施されているとは言えないことから、今後、好事例を展開する等普及啓 発を強化することにより、歯科受診に繋げる方策を検討することとしてはどうか。 また、歯と口の健康づくりに向けた口腔保健指導については、職場の健康 診断実施強化月間、全国労働衛生週間の周知等の機会をとらえて、改めて、周知を強化することが可能ではないか。 ○本検討会の構成員及びこれまでの開催状況↓ 【開催状況】→第1回(令和5(2023)年12月5日)〜第7回(令和6(2024)年9月20日) 【構成員】→21名。 ◎参考資料1労働安全衛生法に基づく一般健康診断の検査項目等に関する検討会開催要綱 1 目的→労働安全衛生法に基づく一般健康診断については、平成 28 年に、「労働安全衛生法に基づく定期健康診断等のあり方に関する検討会」において各診断項目等の妥当性等について検討されたところだが、近年及び今後の労働者の健康を巡る情勢としては、急速 に進む高齢化の中、職業⽣活が⻑期化してきているとともに、女性の就業率の増加に伴って、女性の健康課題への対応の重要性が一層高まっている。また、前回の検討以降、 健康診断についての医学的知見が集積されてきている。 こうした中、政府の規制改革実施計画(令和5年6月 16 日閣議決定)では、定期健康診断について、最新の医学的知見や社会情勢の変化等を踏まえ、医学的知見等に基づく検討の場を設け、検査項目及び検査手法について所要の検討を行い、令和6年度に結論を得ることとされた。 また、「女性活躍・男女共同参画の重点方針 2023(女性版骨太の方針 2023)」(令 和5年6月 13 日すべての女性が輝く社会づくり本部・男女共同参画推進本部決定)では、「事業主健診(労働安全衛生法に基づく一般定期健康診断)に係る問診に、月経困難症、更年期症状等の女性の健康に関連する項目を追加する」とされ、「経済財政運営 と改革の基本方針 2023(骨太の方針 2023)」(令和5年6月 16 日閣議決定)では、 「女性版骨太の方針 2023 に基づき、(中略)事業主健診の充実(中略)等により女性 が尊厳と誇りを持って生きられる社会を実現する」とされたところである。 こうした状況を踏まえて、労働安全衛生法に基づく一般健康診断の検査項目等につい て、検討することとする。 2 検討内容→(1)最新の医学的エビデンスに基づく現行の一般健康診断の検査項目等の妥当性について (2)労働者の健康課題の変化を踏まえた一般健康診断の検査項目等について (3)その他関連する事項について 3 構成→(1)本検討会は、厚⽣労働省労働基準局安全衛⽣部⻑が、別紙の構成員の参集を求めて 開催する。 (2)本検討会には座⻑を置き、議事を整理する。 (3)座⻑は、座⻑代理を指名することができる。 (4)本検討会には、必要に応じて別紙に掲げる構成員以外の関係者の出席を求めること ができる。 4 検討会の運営→(1)本検討会、会議資料及び議事録については、原則として公開するものとする。ただ し、個別事案を取り扱う場合においては、個人・法人情報の保護の観点等から、公開 することにより、特定の者に不当な利益を与え又は不利益を及ぼすおそれがある場合 等において、座⻑が⾮公開が妥当であると判断したときは、非公開で実施することが できるものとする。なお、非公開とする場合には、その理由を明示するとともに、議 事要旨を公開する。 (2)本検討会の庶務は、厚生労働省労働基準局安全衛生部労働衛生課産業保健支援室に おいて行う。 (3)この要綱に定めるもののほか、本検討会の運営に関し必要な事項は、会議において 定める。 ◎参考資料2 第7回労働安全衛生法に基づく一般健康診断の検査項目等に関る検討会 議事録 ○大野中央労働衛生専門官→開会挨拶、出欠確認、リモート参加、資料確認。 ○田座長→本日の議題、「労働者の健康確保に必要な健診項目について」進める。事務局から、資料 1、2 の説明を願う。 ○大村産業保健支援室長(事務局)→資料 1、労働者の健康確保に必要な健診項目につ いて説明(スライド3まで)。資料 2はスライド4から27まで。 ○田座長 御説明ありがとうございました。まず事務局から資料 1 に基づき、労働者の 健康確保に必要な健診項目として説明いただいた通り、学会等から寄せられた要望が資料 1 の最後に載っておりますが、本日はその中から歯科健診の追加について議論を頂くとい うことになります。そのほかの項目については、また次回以降の議論の際に御意見を頂け ればと思います。 それから、資料 2 については、労働安全衛生における歯科口腔保健対策ということで、 労働安全衛生法に基づく歯科に関する健康診断、事業場における労働者の健康保持増進について、ストレスと歯科口腔保健対策について、それから歯科口腔保健に関する調査研究 の現状について報告いただきました。 ただいまの説明に関して御質問や御意見のある構成員は御発言をお願いいたします。まず、会場の構成員から御発言御希望の方は挙手をお願いいたします。鈴木委員、お願いい たします。 ○鈴木構成員資料 2 の 26 ページについて、1 点質問さ せていただきます。歯科口腔保健と作業関連疾患、労働環境に関する研究をご紹介いただ きました。4 つの研究課題を通じて、通常の業務・働き方と歯科疾患との間に何か明確な 業務起因・業務増悪が確認できたかどうか、そうした研究があったかどうか、お尋ねいた します。 ○大村産業保健支援室長 事務局→1 つは、いわゆる政策について の御提案ということで、事業場における、いわゆる歯科部分での健康教育の推進を図るべ きというような御提案。もう 1 つは、いわゆる作業と歯科口腔との関係について調査 研究がなされたものと、大きく 2 つのものがあると認識しております。 後者の作業と歯科口腔の関係については、いろいろ多角的な業務等について調査研究が なされておりますが、そこの調査研究の末尾にも含まれておりましたが、基礎的な部分についてはいろいろなデータの収集等がなされておりますが、まだまだ引き続きエビデンスの収集が必要であるという旨の記載がありました。その部分については、更なるエビデン スの集積が必要ではないかと認識をしております。 ○及川構成員 及川です。御説明いただきありがとうございます。労働安全衛生における 歯科口腔保健対策について、俯瞰的、総合的に御説明を頂き、今やっていることをしっか りと継続することが重要ではないかと、改めて実感したところです。意見は今申し上げた とおりなのですが、2 点ほど少し教えていただきたいことがあります。7 ページに電子申 請について可能になっていますが、こういった電子申請によるものは、どのぐらい活用さ れているのか、もしお分かりになれば教えていただきたいです。 また、8 ページのほうは、施行されてまだ半年に満たないのですが、この新しい化学物 質における健康管理の仕組みが施行されて、何か新しいことが起こっているのか、想定ど おりに進んでいるのか、これからなのかという、スタートダッシュの状況をお聞かせいた だければ幸いです。以上です。○大村産業保健支援室長 まず、スライド 7 の電子申請の部分ですが、こちらの制度が始 まったのが本年 2 月ということで、まだ結果の実績等について集計はできておりません。 この辺りについては、折を見て、必要な情報の公表等を考えてまいりたいと思います。 続いて、スライド 8 のリスクアセスメント対象物健康診断については、本年 4 月から施 行されたこともあり、更なる周知を進めているところです。リスクアセスメント対象物健 康診断の実績については、従来からの特殊健康診断と異なり、行政への報告義務がありま せん。そういったことから、健康診断実施機関等の皆さんの御協力を得て、今後、実態を 確認し、把握してまいりたいと考えております ○田座長 そのほか、何かありますか。オンライン参加の構成員の方で御発言を御希望 の方はいらっしゃいますか。よろしいでしょうか。ありがとうございました。それでは、 資料 1、2 についての議論は、ここまでといたします。 続いて、本日は労働者の健康確保に必要な健診項目についてのヒアリングとして、日本 歯科医師会常務理事の山本様にお越しいただいております。それでは、御説明をお願いい たします。 ○山本参考人 先生方、こんにちは。ただいま御紹介いただきました日本歯科医師会の山本でございます。本日は、労働安全衛生法に基づく一般健康診断の検査項目に関する検討 会にお招きいただきました。私からは、一般健康診断に歯科を盛り込む必要性ということ で、少しお話をさせていただきたいと思います。それでは、2 ページを御覧いただきたいと思います。 なぜ、一般健康診断に歯科の項目を追加していただきたいかということですが、1 つは、 高齢になっても、やはり活躍することができるように、事業場における労働者の健康保持増進を目指すということ。もう 1 つは、歯周病と全身の健康との関連性、これについては 様々な研究報告が集積してきているということになります。3 つ目は、健全な口腔環境が あれば転倒防止につながるような可能性があるということになります。それから 4 つ目と して、VDT、現在では、情報作業機器の作業増加によりまして、やはり顎関節の症状が課 題となっているという部分がございます。 続きまして、3 ページを御覧ください。こちらは日本歯科医師会が 2 年に 1 度、15〜79 歳の男女 1 万人を対象として、インターネットを使った調査で、「歯科医療に関する一般 生活者意識調査」を実施しております。最新の 2022 年 8 月に実施した調査ですが、その 中で特に、職業が会社員という回答のあった 3,297 名についての特徴をまとめたものにな ります。「これまでの人生を振り返って、もっと早くから、歯の健診・治療をしたほうが よかったと思うか」という質問に対して、「そう思う・ややそう思う」と回答された方が 71.7%となっております。 4 ページを御覧ください。こちらも同じ調査です。あなたは、この 1 年間に、歯や口の 中の問題、例えば、痛くなる、はれる、詰めものがとれる、ものがはさまるといったよう な症状で、以下のような経験をしたことがありますかという質問です。そのうち、「この 1 年で仕事をしているときに歯や口の中の問題が気になった」という割合では、「よくあ る・たまにある」と回答された方が 28.9%、あるいは、「この 1 年間で歯や口の中の問 題が仕事など日常生活に支障をきたしたことがあるか」ということについては、「よくあ る・たまにある」と回答された方が、合計で 18.4%になっております。このように歯や 口の中の症状といったことが、やはりプレゼンティズムに関連するということが示唆され ているのではないかというように考えているところです。 5 ページです。歯周病についてです。歯周病は、初期の段階では自覚症状がほとんどない、そのために気付かないうちに進行しています。そのために「サイレント・ディジーズ」というように呼ばれています。成人の 8 割が歯周病になっているにもかかわらず、御 自身で自覚している方は少ないということが特徴だと思っております。 6 ページです。歯周病と全身の疾患、あるいは生活習慣との関連ということになるわけ ですが、歯周病は、単に口腔内の疾患だけにとどまらず、全身疾患に波及し、時には重篤 な疾患につながることが確認されております。全身疾患となりますと、例えば糖尿病ある いは関節リウマチ、脳梗塞、動脈硬化に伴うような狭心症や心筋梗塞、あるいは呼吸器系 の疾患、そして慢性腎臓病、あるいは妊娠・出産といったような問題、それから、内臓脂 肪型の肥満といったこととの関連が報告されております。このために、歯科健診により口 の中の状況を把握する、適切な歯科口腔保健指導を実施していただく、更には必要に応じ て歯科の医療機関につなげていただくよう受診勧奨をする。あるいは、かかりつけの先生方との医科歯科連携につなげていくことが大変重要と考えているところです。 7 ページです。歯周病と全身疾患、生活習慣等の様々な関連性についてです。こちらに ついては、先生方には、特に御説明する必要性もないかと思いますので、お読み取りいた だければと思います。 8 ページです。ここで、現在の日本における歯科健診の体制について御説明させていた だきます。1 歳半、それから 3 歳児を対象とした乳幼児の歯科健診、これは、いわゆる母子保健法に基づきまして義務化されています。また、幼稚園から高等学校卒業までは、学校歯科健診という形で、「学校保健安全法」を基に義務化されております。 ところが、高等学校を卒業しますと、歯科の健診は、基本的には自己責任という形になっています。唯一、「歯周疾患検診」という形で、健康増進法ということで行われておりますが、これは努力義務ということになりますので、各自治体によっては実施されていな い場合もあります。また、これを行われているのが、40 歳、50 歳、60 歳、70 歳といった 10 歳刻みの形で実施されていましたが、令和 6 年度からは、20 歳、30 歳が追加されて少し拡大してきたところです。 先ほど御紹介がありましたように、一部の労働者、いわゆる塩酸、硫酸、硝酸といった ものを取り扱う労働者に関しましては、労働安全衛生法に基づく歯科特殊健康診断という形で歯科医師による健康診断が実施されているということです。したがいまして、いわゆる国民皆歯科健診という議論が始まっているところではありますけれども、就労世代の歯 科健診制度というのは、今後、どのように構築したらいいかということが非常に大きな課題と捉えております。 9 ページです。こちらは令和 5 年度の生涯を通じた歯科健診、いわゆる国民皆歯科健診推進事業ということで、「歯周病等スクリーニングツール開発支援事業」というものになります。簡易な歯科検査ということで、5 社の事業者が検査として選ばれまして、様々な 事業所等での歯科健診で検証がなされたところです。 10、11 ページです。この事業所での健診の検証結果ですが、1 つは、歯科医師による歯 科健診・歯科衛生士による歯科保健指導を実施した場合、それから、いわゆる簡易な検査 ・歯科健診・歯科保健指導を一般健康診断と同時に実施した場合、11 ページになります が、簡易な検査だけを一般健診と同時に実施した場合という 3 つのパターンで比較・検討 しているところです。 12 ページです。こうした歯科健診、あるいは簡易な検査、歯科保健指導の成果と課題ということです。まず、成果としては、歯科健診あるいは簡易な歯科検査のいずれも、一 般健診の既存の事業と同時に実施すると効率的かつ高い参加率での実施が見込めました。 2 つ目として、歯科健診では、若年層あるいは過去未受診の方々の無関心層にも実施率が 高いということが分かったこと。3 つ目として、簡易な検査でも歯科健診・歯科保健指導と同様に、受診あるいはセルフケアといったことに一定の効果が認められた。また、簡易 な検査では多くの従業員あるいは被保険者に対して公平に機会提供を行うことができたというような結果が得られたところです。 一方、課題ですが、やはり実施後の受診行動として、歯科の受診への意識変化、これは「受診するつもり」というところにとどまる方が多く、なかなか直接的な歯科の受診行動に結び付けられることがなかったということから、何らかの対策が必要ではないかと考えられています。 13 ページです。更に、歯科健診・歯科保健指導と簡易な歯科検査の検査結果の構成比 を見ていただきますと、歯科健診の場合は、要精密検査者が非常に多くなりましたが、い わゆる簡易な歯科検査の場合には、低リスク者が非常に多いという結果でした。やはり歯科健診の場合は、歯科医師により、歯の状態とか、歯周組織の状況、歯石、清掃状況あるいは顎関節の状態、口腔粘膜など、多岐にわたる検査を通じて口腔内の状態を全般的に把握しますが、簡易な検査の場合には、唾液等から得られる情報から歯周病等のリスクだけを判定するということですので、一概に比較するのは少し難しいということです。 14 ページです。そこで、労働者に対する歯科健診として、どのようなことが必要かという必須事項ということですが、事業場(会議室等)を使う場合、あるいは歯科医療機関等で歯科医師による歯科健診及び質問票による問診を行うということが、まずは一義的ではないかと思います。ただ、それが非常に難しいといった場合には、簡易な歯科検査でもよいというように考えております。ただ、必ず歯や口の中の状況、あるいは生活習慣等に関 する項目を含めた質問を行って、必要に応じて歯科の医療機関への受診勧奨を行うことが 望ましいのではないかと考えております。 15 ページです。こちらは令和 8 年度から実施予定の歯周疾患で活用される標準的な質 問項目 16 問になります。歯や口の中の状況に関する質問、それから、日常の生活習慣に 関する質問、歯科の健(検)診や治療の状況等に関する質問、その他の質問という形になっ ております。簡易な歯科検査を実施する場合には、こうした質問票を同時に活用していた だくのが重要ではないかと考えております。 16 ページです。こちらは歯の数、それから義歯使用の有無と「転倒」との関係です。 自分の歯が 20 本以上ある者を 1 とした場合のオッズ比を比べたものになります。自分の 歯が 19 本以下で義歯を使って咬合を回復しているような場合には、そのオッズ比が 1.36 倍、それに対して、自分の歯が 19 本以下で義歯を使わないで咬合の回復を行わないといった場合には、2.5 倍も「転倒」しやすいという結果が出されております。 17 ページです 。 VDT(いわゆる現在の情報作業機器の作業)と TCH(Tooth Contacting Habit)の関連性についてです。やはり、こうした情報作業機器の作業時間が長くなること により集中あるいは緊張が続く、眼精疲労あるいは首や肩、腰の痛みやメンタルストレス、 肥満や2 型糖尿病といった健康影響が考えられているわけですけれども、口腔の周囲では 咀嚼筋の緊張ということから TCH が起こりまして、これが顎関節の症状といったことの健 康影響が考えられています。 次に、18〜21 ページまでですが、「企業就労者の顎関節症状に影響を及ぼす寄与因子の検討」の論文の趣旨ということになります。こちらは都内と近県に本社、工場を持つ企業の従業員への質問票に回答された 2,423 名からの結果です。顎関節の有病率が 16.4% と、一般の集団より、やや高い値であった。それから、顎関節症群の方は非顎関節症群に比べまして、心理社会的要因の総点あるいは習癖行動の総点が高くなる傾向が認められました。あるいは顎関節症の発症に影響を及ぼす因子としては、男性の場合は、不安感、疲労持続感、TCH 及び起床時の症状、女性の場合には、疲労持続感と起床時症状が抽出されています。 19 ページです。こちらが今回使った質問票の内容です。1〜4 番までが顎関節症要因、5 〜8 番までが心理社会的要因、9、10 番が習癖行動の要因となります。 20 ページです。顎関節症要因の質問は 1〜4 ですが、その評価としては、合計が 20 ポ イント、このうち 8.5 ポイント以上が顎関節症と評価されています。下のほうになります が、一般の集団では、約 5〜12%の方に顎関節症が見られるという報告の内容です。21 ペ ージは、寄与因子の合計点数、ロジスティック回帰分析の結果です。 最後に、22 ページを御覧ください。従来、産業保健の分野では、やはり転落事故とか、 腰痛、熱中症あるいはメンタルヘルスといったような様々な職業性疾患の予防管理が大変重要ということです。近年では、やはり生活習慣病対策といったような健康づくりも、その課題の 1 つではないかと考えております。日本歯科医師会では、労働保健の分野に、歯科からの健康づくりを進めるということによって、労働者の健康管理が進められるように なればと考えているところです。以上でございます。ありがとうございました。 ○田座長 御説明ありがとうございました。ただいま一般健康診断に歯科を盛り込む必 要性について御説明いただきました。御説明の内容につきまして、御質問や御意見等があ る方は、会場の構成員につきましては挙手をお願いできればと思います。オンラインの構 成員につきましては、御発言がある旨、挙手をお願いできればと思います。まず会場から、 森構成員、お願いいたします。 ○森構成員 山本先生、ありがとうございました。以前、先ほど説明があった THP の指針 の改正のときも、山本先生と一緒に議論させていただきました。歯科健診の予防的な取組 というのは非常に重要であるということは認識しています。 一方で、リスクの評価では、その後の受診行動になかなか結び付かないという趣旨のお 話がありました。一般健康診断の中で、歯科健診を行うことになれば、巡回でもできると いうことが前提になってくると思いますが、そのような制約の中で、歯科健診の標準的な プロセスとはどのようなもので、どのくらいの時間が掛かるものなのかというイメージが 統一できていないと議論が進まないように思います。その辺りは、どのようにお考えでし ょうか。 ○山本参考人 御質問ありがとうございます。歯科健診をフルに歯科医師が行うといった 場合には、かなり時間が掛かることは十分承知しております。通常、簡単な検査であれば10 分程度のものもありますが、例えば歯周組織までしっかり診るということになると、 場合によっては 20 分以上掛かってしまうこともあるかと思いますので、なかなか事業場 において、こうした形での歯科健診をするのは非常に難しいということは、我々も認識し ているところでございます。 ○森構成員 となると、もし、歯科を一般健診で取り上げようとすると、問診とか、簡易 な検査が現実的という理解でよろしいのでしょうか。 ○山本参考人 事業場等で行う場合には、そういった形のほうが、よりリーズナブルな方 法ではないかと考えております。 ○田座長 ありがとうございます。森先生、大丈夫ですか。 ○森構成員 はい。 ○田座長 鈴木構成員、お願いいたします。 ○鈴木構成員 山本様、御説明いただき、誠にありがとうございます。経団連の鈴木と申 します。日本歯科医師会において、日頃より歯科口腔保健の増進のために御尽力されてい ることに対し、まずもって敬意を表します。 私は、一般健康診断の項目追加を議論するに当たり、冒頭で事務局から御説明いただい た資料1の「健診項目を検討する際の要件、着眼点」の中で、とりわけ、業務起因・業務 増悪を重視すべきとの立場から、検討会に参加してきたものでございます。本日はそうし た観点から、幾つか御質問させていただければと思います。 はじめに、16 ページです。歯の喪失と「転倒」との間に関係性があるという御説明を いただきました。歯が少ない状態で転倒が起こりやすいことは理解いたしましたが、こち らの調査は、労働者に限定して行われたのか、確認させていただきたいと思います。 続きまして、18 ページです。企業の従業員を対象とした調査の結論として、顎関節症 有病率が 16.4%と一般集団よりやや高い値を示した等々の結果を御披露いただきました。 その結論を導く調査についての御質問です。20 ページで、質問票 1〜4 の評価値の合計が 8.5 以上を顎関節症と判断したとの御説明がありました。細かい点で恐縮ですが、質問票 1〜4 のいずれも「どちらとも言えない」と仮に回答した場合、合計 12 点となり顎関節症 に該当するという理解で合っているかどうかについてお伺いします。 最後に、19 ページです。心理社会的要因や習癖行動は、質問票 5〜10 で判断すること になると思いますが、設問を拝見しますと、「仕事、学校、家庭あるいは人間関係でのストレスはありますか」などとなっております。従業員を対象とした調査ではありますが、 仕事に限定した形で顎関節症の発症に影響する因子を調べたものとは、言い切れないので はないかと理解していますが、こうした理解で合っているかどうか。以上 3 点を教えてい ただければと思います。よろしくお願いします。 ○田座長 山本先生、お願いいたします。 ○山本参考人→ありがとうございます。一番初めの御質問で、歯の数と転倒との関係16 ページの調査ですが、これは会社員に限定したというわけではない調査だと思います。その次の御質問ですが、顎関節症の問題ですけれども、この中で顎関節症要因での「3」が全部だと 12 点になるので、8.5 以上ではないかという御質問ですが、こちらにつ いては先生のおっしゃるとおりですけれども、ただ、やはり顎関節症の場合は、ストレス との関連性が非常に強いということが言われておりますので、どちらとも言えないという 質問をどうしても作らざるを得ない部分があります。 もう 1 つは、心理社会的要因ということで、学校あるいは家庭ということが入っている ので、これは労働起因性ではないかという御質問だと思いますけれども、こちらは本研究 の実施以前の先行研究において、この調査票が多分有効であろうという調査結果がありま したので、それを利用しているということだと思っております。 ○田座長 ありがとうございます。鈴木構成員、いかがでしょうか。 ○鈴木構成員 ありがとうございます。専門家の先生方の御意見も是非お伺いしたいと思 いますが、素人的には、「どちらともいえない」という回答だけで顎関節症と判断される ということや、必ずしも仕事に限定した形での調査ではないことからすると、ご紹介いた だいた調査を見る限りでは、「業務起因性・業務増悪性あり」と判断するのは、慎重に考 えるべきと感じたところです。ありがとうございました ○山本参考人 実は、歯科疾患実態調査が、以前は6年に1度、現在は4年に1度実施さ れていますが、その中で、平成 17 年に顎関節に関連するような質問がございます。これ を見てみますと、顎の痛みとか、あるいは顎関節のクリック音といった雑音に対する評価 があるのですけれども、その中で、特に痛みに関しては、どの年代も 5〜10%ぐらいの数 字で、やはり症状があるということですので、年齢にかかわらず、労働者の方でも非常に 顎関節の症状が多いということは、ある程度分かっております。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(略)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ○山本参考人 中等症以上になると、確かに骨の吸収が早くなってきますので、その辺は 適切な処置が必要だと思うのですが、やはり一番重要なのは、先ほど先生もおっしゃった ように、例えば歯垢を取るという基本的なことができているかどうかです。それがしっか りとできている場合には、歯を支えている骨が非常に少なくなっても、ある程度まではし っかりと噛むことができる状態に持っていくことができます。歯周外科も最近はかなり進 んできて、その中にエムドゲインという薬を塗って、歯槽骨を再生するという治療も開発 されております。そういったところは、やはり専門医の先生方が非常に得意な部分ですの で、中等度以上になったら、もうお手挙げだからどうでもいいとは、我々も考えておりま せん。 ○山本参考人 自治体で行っている歯周疾患健診は、全国平均で受診率が 5%という低調 な形になっております。これについても、香川県が一番高くて 13.7%台だと思います。 低い所が高知県という形で、非常にばらばらではありますが、全国平均でいくと 5%ぐら いしか受診していないということになります。やはり自治体の健診の場合は、労働者の方 はお休みのときに来なければいけないという事情がありますので、受診機会として自治体 の健診を受けるのは非常に難しいという事情があるのかなと思っております。以上です。 ○森構成員 今までの話をお聞きしていると、基本的に歯科予防 というのは、定期的に歯科医を受診してチェックをして、歯石を取ってというのが本来の 在り方で、日本の場合、その行動を取る人たちがすごく少なく、その行動に出るためには、 きっかけを職場でどうするかというのがとても重要だという話だと認識しました。 私たちの関係の論文で、大企業製造業 5 社の歯科予防受診の受診率のデータがあったの - - 23 で見てみたのですが、3 か月に 1 回行かれている方は、男性が 9.3%、女性が 13.9%です。 年に 1 回は行っているという方が、大企業でも男性が 23.9%、女性が 31.8%しか、まだ 行っていないという状態です。中小企業の場合、これとはかなり異なることも分かってい ます。 したがって、このような定期受診をどのように上げていくかがとても重要だということ ですね。そうすると、教育などのいろいろな方法があるから、多分、健診をやるとしても、 どうしたら受診につなげられるかというエビデンスを今後作っていかないと思います。ま ずは、スクリーニングしてみようだと、無駄になってしまうおそれがあるのかと思ってい ます。 我々の研究では、長時間労働で労働時間が長くなると、特に男性の年齢が高い人は予防 受診が抑制されるという結果が出ています。交替勤務も含めて、働いている人の中には、 仕事の影響で受診行動が抑制される集団があるから、法律というより、そういう状況にあ る事業者においては、やはりそこの部分を少し配慮するような取組をしていただく必要が あるのではないかと、お話を聞きながら、我々のデータもみながら考えていたところです。 1 つ、質問なのですが、今、大企業のデータと言いましたが、そもそも予防歯科受診は、 どのぐらいの就労年齢の人たちが受診しているのかというデータはあるのでしょうか。 ○山本参考人 この辺は国民健康・栄養調査等のアンケート調査などを見ても、ほぼ半数、 大体 50%は歯科の受診あるいは健診を受けているのだけれども、半数の方は全く歯科検 診を受けていないというのが現状でございますので、日本人 2 人に 1 人しか歯科等の受診 はないという感じだと思います ○星野構成員 関東労災病院で「働く女性専門外来」というものを担当している者なのですが、貴重ないろいろな情報をありがとうございました。先ほど、「歯科のトラブルによ り就労をあきらめる、あるいは何らかの影響がないか」という御質問に対して、「エビデ ンスはありません」というお話があったことについて、うちの外来に、たまたまだとは思 うのですが、ストレスがすごく大きいお仕事をなさっている中で顎関節症を発症なさって、 その職場を本人の判断で辞めたら顎関節症もよくなったという方がいましたので、恐らく いろいろなケースがあると思うので、蓄積していただけるといいかと思いました。 あと、先ほどいろいろな質問の中で、歯周外科というのが進んでいて、その専門医がい ますという御説明がありましたが、何人ぐらいおられるのでしょうか。 ○山本参考人 すみません。歯周外来の専門医の数自体は分かりませんが、日本には臨床歯周病学会と歯周病学会の 2 つがありまして、多分、そちらでそれぞれ認定医を作っていると思いますので、そこのデータを見ていただければ多分あるのではないかと思います。 ○中野構成員 御発表、ありがとうございました。歯周病も国民病だと認識し、受診の重 要性も感じているところです。私が少し気になりましたのは、有所見率が 8 割弱というこ とで、歯周病や顎関節症を考えたときに、全員が医療機関受診するというのは難しいと思 っております。先ほど、顎関節症で、お仕事を辞めると治ったという可逆性のお話もあっ たのですが、イメージとしては、重症者は手術というイメージが顎関節症に対してあるの ですが、治療の段階のようなものがあれば教えていただきたいと思います。 あと、15 ページ、19 ページの質問票ですが、特に医療を必ず受けなければいけない重 症者に対して、カットオフできる感度や特異度的の検討されたバリディティのある質問票 は、現在あるのかどうか教えていただけたらと思います。 ○山本参考人 顎関節症の治療ガイドというのは、一般社団法人の顎関節症学会というの がありまして、そちらのほうに確かあったかと思います。その中では、まずは、かかりつ けの先生が診るということで、それで 3 か月ぐらいたっても症状が改善しない場合には、 やはりそれぞれの専門医の先生方に診ていただくほうがいいと思います。それから、手術 という対応は、多分ないと思います。あくまでも、まずはカウンセリングをしながら口の 開き具合を確認する。それから雑音が減るのを見るという形で、観察をしながらやってい くというのが、ごく一般的な方法かと思います。それと、もう 1 つは、マウスピースなど をして矯正的に口の開く位置関係を変えていく、そういった装置を作りながら様子を見て いくという方法を行っているかと思います。 ○田座長 ありがとうございます。中野先生、いかがでしょうか。 ○中野構成員 治療方法を教えていただきましてありがとうございます。重症の、医療を 受けなければいけないような方を抽出できる、皆さんが認識された質問票というのはあり ますでしょうか。 ○田座長 山本先生、お願いいたします。 ○山本参考人 こちらに書いてある論文のようなものはあるのですが、標準的な方法での ものは見てないです。 ○中野構成員 ありがとうございます。そういうものも学会で作っていただけたら有り難 いなと思って聞いておりました。よろしくお願いいたします。 ○田座長 ありがとうございました。そのほかにございますか。星野構成員、お願いい たします。 ○星野構成員 いろいろな御説明をありがとうございました。私の理解が及ばなかったの かなと思ったのですが、国民生活基礎調査だと、予防的歯科受診が 50%ということですか ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(略)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ○山本参考人 予防的な歯科受診ではありません。あくまでも歯科の受診なり、あるいは 健診をそれぞれ合わせた形での数字になっていますので、予防的な健診がどれぐらいある かというのは、かなり少ない数字になると考えております。 ○星野構成員 御回答、ありがとうございます。治療にしろ、予防にしろ、それを合わせ たのが 50%で、ただ、住民健診で受けてらっしゃる方は 5%という。この数字のギャップ が何なのだろうと思いながら聞いていたのですが。変な話をすれば、国民の 50%は何ら かの歯科にはかかっていますよということで、いろいろな健診の受診率は低いけれども、 ある程度カバーされつつあるという理解でいいのでしょうか。 ○田座長 山本先生、お願いいたします。 ○山本参考人 逆に言うと、50%の方は全く関わりをしない、過去 1 年間に歯科健診も歯 科診療所への受診もないということになっていますし、他のどの調査を見ても同様の結果 がみられます。 ○星野構成員 ありがとうございます。そうすると、今回、このように健診に歯科の項目 をという話にはなりましたが、ただ、現状でも半数は対応できているという理解でいいわ けですか。 ○山本参考人 国民全体で見ると、そうです。労働者の方がどれくらいかというところに なると、そこは少し、また疑問があると思います。 ○星野構成員 ありがとうございます。 ○田座長 ありがとうございました。構成員の先生から、大体御意見、御質問が出尽く していると思いますが、まだ少しお時間がありますので、この健診項目を検討する際の要 件や着眼点というのは、先ほど鈴木構成員からもお話が出ておりましたが、資料 1 の 3 ペ ージに出ております。こちらに挙げてある項目に関して、構成員の先生方から、更に確認 が必要なことなどがございましたら、是非御質問いただければと思います。 健診項目について、業務起因・業務増悪についてもお話が出ておりました。事後措置に ついては、就業上の措置というよりも、受診行動につなげていくという形のお話が出てお りました。検査の目的、対象、方法について、検査の方法は簡易の検査なども出ておりま した。あと、検査の精度、有効性、基準値については、検査キットの問題のお話が出てお りました。その他、巡回健診のこと、労働者全員に対して実施可能であるのか、費用面の こと、健康情報の把握についてありますが、今のところ御質問が出ていない点について、 何か構成員の皆様から御意見等はありますか。立石構成員、お願いいたします。 ○立石構成員 どこに入るのか分からないのですが、事後措置について、健診の結果だけ で事後措置することは一般的には余りなくて、精密検査をした上で、その結果、何らかの 事後措置をするということが基本になるかと思います。今日の議論でも出てきたのですが、 健診に入れるということは、必ずその精密検査を受けられる受け皿があるかどうかが大事 な項目で、特に健康診断を法律に入れるということになりますと、日本全国津々浦々の全 ての所で精密検査が受けられる環境があることが恐らく大前提になるのではないかと思い ます。場合によっては、この事後措置の所にそういう項目もあったほうがいいのではない かということを、今までの議論を聞いていて思いました。 というのは、女性の健康管理の問題などでも、健診の会場だけで判断するのはやはり容 易ではないのではないかと。その後の精密検査の受診等も必要になって、そこから事後措 置にどうつなげるかということが少し整理されたところがありますので、事後措置をする に向けて、精密検査を受けられるような医療体制がきちんと整備されているかどうかとい うところも、項目として一つ挙げたほうがいいのではないかということを思っている次第 です。以上です。 ○田座長 武藤構成員、お願い いたします。 ○武藤構成員 1 つ追加で、問診に関することなのですが。もともと特定健診の項目にも あります「何でも噛むことができる」という質問があります。こちらは特定健診でもそう なのですが、問診で聞いただけで、有効活用されていないのではないかと思います。新た な問診項目をいろいろ追加するよりも、今ある問診項目をもっと有効活用するほうが、手 間などを考えると効率的なのではないかと思います。 ○田座長 ありがとうございます。山本先生、いかがでしょうか。 ○山本参考人 ありがとうございます。多分、一番考えられるのは、令和 8 年度から始ま る歯周疾患健診が新しくなるので、その問診項目をこのまま、こちらでも適用するという 形になると、かなり詳細なデータが様々な所で取れるのではないかと思います。自治体の 健診については、これから医療 DX の形で自治体のデジタルデータとして入って行く可能 性がありますので、そういったことを考えると、それが医療費の削減にも、かなりつなが ってくるのではないかと期待をしているところでございます。 ○田座長 ありがとうございます。武藤先生、いかがでしょうか。 ○武藤構成員 大丈夫です。ありがとうございます。 ○宮本構成員 宮本です。実は、自分の所では、この健診の問診の中に、例えば、「歯みがきは、いつしていますか」、「歯間ブラシはフロスを使っていますか」、「歯医者さんに最後にかかってから、どのくらいたっていますか」などと入れているのですが、それを何かに使うというよりは、この問診を入れることで啓発しているというつもりがありまして、それで医者に行けというと、それだけでは分からないので、そういうふうにしないと いけないのだろうと思ってもらうという生活改善につなげられればと思っております。問診をそういうふうに使うのもあるのかなと思った次第なので、先ほどの 8 割の人に医者に 行けというのだと、実際上少し苦しいかなと思うので、何か現実的な方法があればなと思っているところです。 もう 1 つは、今、立石構成員が言われました事後措置です。先ほどもありましたが、例えば、この状態になったら暑熱作業は駄目だとか、何か就業制限にかかる、何か、かなりの確率でやめたほうがいいというリコメンドするような、病態なり疾患というのがあるのかというところを教えていただければと思います。 ○田座長 山本先生、お願いいたします。 ○山本参考人 例えば、先ほど御紹介があったように、顎関節症は、非常にストレス等が 強い方の場合には就業制限といったものがあったほうがいいのではないかと思いますが、歯周疾患に関しては、すぐに就業制限があったほうがいいと考えるのは非常に難しいかと思います。ただ、急性症状があるといったようなときに、それでも仕事に出なければいけないというのは問題だと考えますので、そういったときには、やはり就業制限があっても いいのではないかとは感じています。 ○田座長 ありがとうございます。宮本先生、よろしいでしょうか。 ○宮本構成員 ありがとうございました。急性症状があったら、多分、健診ではないと思 うので、無症状の人を拾うというところだと思っております。ありがとうございました。 例えば、問診をそういうふうに啓発に使うということについてのお考えも教えていただ ければと思います。 ○山本参考人 先ほど先生から御紹介のあった所は非常に重要で、例えば、フロスや歯間ブラシといったものは、我々は使ったほうがいいと教育はしていますけれども、実際問題 としては、ほぼ使われていないというのが現状でございます。そういったところでは非常に大きな効果があるのではないかと思っています。 ○宮本構成員 ありがとうございます。 ○鈴木構成員 宮本先生の御発言を正しく理解できていなければ御指摘いただきたいので すが、問診項目もやはり業務起因・業務増悪の視点で検討すべきと考えております。他の 方策、本日も自治体の歯周疾患検診の受診率が低いというお話がありましたが、自治体検 診の受診率の向上に取り組むことが本来の姿であり、私傷病が幅広くある中で、問診に入 れて気付きを促せばよいという考え方には、私自身は慎重な立場ですので、一言申し上げ たいと思います。○山本参考人 先ほど、鈴木先生から、自治体健診の受診率を上げればいいのではないか という御指摘がございました。確かに先生がおっしゃるとおりですが、地域職域の連携と いうことが掲げられているわけですが、事業場のほうから、そういった問合せがなかなか ないという現状がございますので、その辺については、経団連さんのほうでも少し考えて いただければと思っております。以上です。 ○大野中央労働衛生専門官 ありがとうございます。次回の検討会の日程につきましては、 事務局から改めて御連絡さし上げたく思います。以上です。 ○田座長 ありがとうございます。それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきま す。お忙しい中、御参集いただきましてありがとうございました。また、山本先生、お忙 しい中、ありがとうございました。 次回は新たに「第374回労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会 資料」からです。 |