第17回 成年後見制度利用促進専門家会議資料(令和6年10月11日)
議事 中間検証に係る意見交換(地域連携ネットワークづくり、適切な後見人等の選任・交代の推進等、担い手の確保・育成等の推進、市町村長申立ての適切な実施と成年後見制度利用支援事業の推進、権利擁護支援の行政計画等の策定の推進、 都道府県の機能強化)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_43748.html◎参考資料 11 成年後見関係事件の概況(最高裁判所提供資料)
―令和5年1月〜12月― 最高裁判所事務総局家庭局
1 申立件数について(資料1)→○成年後見関係事件(後見開始、保佐開始、補助開始及び任意後見監督人 選任事件)の申立件数は合計で40,951件(前年は39,719件)であり、対前年比約3.1%の増加となっている。 ○後見開始の審判の申立件数は28,358件(前年は27,988件)であり、対前年比約1.3%の増加。 ○保佐開始の審判の申立件数は8,952件(前年は8,200件)であり、対前年比約9.2%の増加となっている。 ○補助開始の審判の申立件数は2,770件(前年は2,652件)であり、対前年比約4.4%の増加となっている。 ○任意後見監督人選任の審判の申立件数は871件(前年は879件)であり、対前年比約0.9%の減少となっている。
2 終局区分について(資料2)→○成年後見関係事件の終局事件合計40,665件のうち、認容で終局したものは約95.3%(前年は約95.4%)である。
3 審理期間について(資料3)→○成年後見関係事件の終局事件合計40,665件のうち、2か月以内に終局したものが全体の約71.8%(前年は約71.9%)、4か月以内に終局したものが全体の約93.7%(前年は約93.7%)である。
4 申立人と本人との関係について(資料4、5)→○申立人については、市区町村長が最も多く全体の約23.6%を占め、次いで本人(約22.2%)、本人の子(約20.0%)の順となっている。 ○市区町村長が申し立てたものは9,607件で、前年の9,231件(前年全体の約23.3%)に比べ、対前年比約4.1%の増加となっている。
5 本人の男女別・年齢別割合について(資料6)→○本人の男女別割合は、男性が約43.8%、女性が約56.2%。 ○男性では、80歳以上が最も多く全体の約35.5%を占め、次いで70歳代の約27.6%。 ○女性では、80歳以上が最も多く全体の約63.7%を占め、次いで70歳代の約18.7%。 ○本人が65歳以上の者は、男性では男性全体の約71.7%を、女性では女性全体の約86.1%を占めている。
6 申立ての動機について(資料7)→○ 主な申立ての動機としては、預貯金等の管理・解約が最も多く、次いで、身上保護となっている。
7 鑑定について(資料8、9)→○ 成年後見関係事件の終局事件のうち、鑑定を実施したものは、全体の約4.5%(前年は約4.9%)であった。 ○ 鑑定の期間については、1か月以内のものが最も多く全体の約53.5%(前年は約53.5%)を占めている。 ○ 鑑定の費用については、5万円以下のものが全体の約42.9%(前年は約45.4%)を占めており、全体の約85.3%の事件において鑑定費用が10万円以下であった(前年は約86.9%であった。)。
8−1 成年後見人等と本人との関係について(資料10−1)→○成年後見人等(成年後見人、保佐人及び補助人)と本人との関係をみると、配偶者、親、子、兄弟姉妹及びその他親族が成年後見人等に選任されたものが全体の約18.1%(前年は約19.1%)。 ○親族以外が成年後見人等に選任されたものは、全体の約81.9%(前年は 約80.9%)であり、親族が成年後見人等に選任されたものを上回っている。
○成年後見人等と本人との関係別件数とその内訳の概略は次のとおりである。
関係別件数(合計) 40,729件(前年39,573件)
親 族 7,381件(前年 7,560件)
親 族 以 外 33,348件(前年32,013件)
うち 弁 護 士 8,925件(前年 8,683件)
司 法 書 士 11,983件(前年11,768件)
社会福祉士 6,132件(前年 5,851件)
市民後見人 344件(前年 271件)
8−2 成年後見監督人等が選任された事件数について(資料10−2)→○認容で終局した後見開始、保佐開始及び補助開始事件(38,002件)のうち、成年後見監督人等(成年後見監督人、保佐監督人及び補助監督人)が選任されたものは1,287件であり、全体の約3.4%(前年は約3.4%)である。
○ 成年後見監督人等が選任された件数とその内訳は次のとおりである。
件 数 (合 計)1,287件(前年 1,256件)
弁 護 士 632件(前年 613件)
司 法 書 士 482件(前年 491件)
社 会 福 祉 士 14件(前年 8件)
社 会 福 祉 協 議 会 120件(前年 100件)
税 理 士 1件(前年 0件)
その 他 38件(前年 44件)
9 成年後見制度の利用者数について(資料11)→○令和5年12月末日時点における、成年後見制度(成年後見・保佐・補助・任意後見)の利用者数は合計で249,484人(前年は245,087人)であり、対前年比約1.8%の増加。 ○成年後見の利用者数は178,759人(前年は178,316人)であり、対前年比約0.2%の増加となっている。 ○保佐の利用者数は52,089人(前年は49,134人)であり、対前年比約6.0%の増加。 ○補助の利用者数は15,863人(前年は14,898人)であり、対 前年比約6.5%の増加。 ○任意後見の利用者数は2,773人(前年は2,739人)であり、対前年比約1.2%の増加となっている。
◎参考資料 12 各委員提出資料
◎第17回専門家会議 中間検証に向けた意見
2024年10月11日 弁護士 青 木 佳 史
第1「3 権利擁護支援の地域連携ネットワークづくり」について
1 専門職参加によるアウトリーチ相談の強化→地域連携ネットワークの支援機能のうち、支援チームに対する相談支援機能として、本人の生活場所への出張相談や専門職が参加する専門相談を全ての中核機関において実施し、権利擁護支援や後見制度利用の必要な人へのアウトリーチ相談によるニーズの掘り起こしをはかるべきである。 権利擁護支援の基本的アプローチとして、本人の特性に照らし、窓口での相談対応だけでは不十分であり、本人や支援チームの現場に赴く出張相談やそこに専門職が参加し て行う専門職相談を実施することで、必要なニーズを掘り起こし、制度利用を含めた適 切な権利擁護支援に繋げていくことができることは言うまでもない。 ところが、R5 取組状況調査結果では、中核機関の整備済み市町村1070市町村の うち、「出張相談の実施」しているのは540市町村であり、「専門職による相談会の開催」しているのは494市町村にとどまっている。こうした相談体制の整備は、制度利 用の必要性や制度の具体的な役割を共有し検討するために不可欠である。 専門職団体の協力のために都道府県の調整機能を活用し、遠隔地へのオンライン相談 の活用を含め、こうした相談体制の整備をはかることが急務である。
2 適切な後見人等の選任・交代の推進等
(1)適切な選任のための体制整備(受任(者)調整会議)→地域連携ネットワークの支援機能のうち、チームの形成支援機能として、後見制 度の申立にあたり、本人の課題やニーズ、特性に相応しい「適切な後見人等の選任」に向けた受任調整を的確に実施する体制作りを、以下の5項目を柱とし、都道府県・市町村、中核機関と家裁、専門職団体が連携、協働して整備する取組を、全ての地域で強化すべきある。 R5取組状況調査結果では、中核機関の整備済み市町村のうち、「受任者調整を含むチーム体制づくり(受任調整会議の開催、一時的な支援の調整等を含む)」の 取組を実施しているのは 655 市町村であり、全体の 1000 以上の市町村で受任調整会議が未整備である。特に、過疎地、島しょ部など設置が困難な地域がある。一方、都道府県の圏域単位の協議会で受任調整を行うところはわずか2県に留まっている。また、設置していている中核機関でも、市民後見人選任の受任調整に限定している地域も多い。このように受任調整のための会議体が設置されているとはいいがたい状況にある。 後見制度を必要とする本人の課題、ニーズ、特性を十分に評価した上で、それに 相応しい担い手を選任し、チーム支援の一員として、従来の支援チームとともに、 あるいは、新たな支援チームの中で職務を行うことは、本人中心の権利擁護の支援 が実施されるために極めて重要である。 相談支援によって制度利用に繋げるだけではなく、適切な選任に繋げることは、 家裁や専門職団体だけに委ねられるものではなく、市町村・中核機関の役割である。そしてこれは後見人等と本人や支援チームとの不適合による相談・苦情を未然に防ぐことからも重要である。 さらに今後、成年後見制度が、本人の意思を重視し、制度利用の個別の必要性を柱として、適切な時機・期間で利用する制度へ見直される中では、制度利用の必要性の有無や終了の適否、必要性に応じた担い手の選任の評価検討が一層求められる ものであり、これに関する市町村・中核機関による情報の集約と評価、家裁へ情報 提供できる体制の整備が重要となる。 これまで各地で実施されている受任調整の取組は、何らの指針もなく、各現場関係者の模索の中で行われてきているが、それだけに内容のバラツキや問題点も多い。そこで、今後の計画期間において、次の5点を基本的な柱として、全国的な体制整備のための運営指針や体制整備のノウハウ提供、人材確保のための財源確保な どにつき、国が中心となって進めることが求められる。
《適切な選任に必要な5項目》 ↓
ア 中核機関における受任調整のための会議体の設置→適切な受任調整のため、複数の構成員が参加して情報を収集、アセスメントし、 後見実務を踏まえたマッチングを行うための受任調整を行う会議体が市町村・中核 機関に設置され、専門職団体の参加(家裁のオブザーバー参加)により、定期、随 時に開催されること。
イ 選任基準(目安)の作成と家庭裁判所・専門職団体との共通認識の醸成→受任調整会議の判断にばらつきが生じないよう、市町村・中核機関において選任 基準もしくは選任目安を作成し、選任する家庭裁判所や候補者推薦する専門職団体と共通認識を醸成すること。
ウ 集約すべき必要な情報(本人情報、候補者情報等)の標準化→ 会議体で適切な受任調整のためのアセスメントができるよう、必要な情報 を適 切に集約し、家裁や専門職団体に提供するには、どのような本人情報、候補者情報 等が必要かを予め整理し、関係機関の間で共通認識となるよう、個人情報保護の観 点も踏まえ、帳票(シート)作成等により標準化すること。
エ 各地域に質の担保された多様な後見人候補者(担い手)の選択肢の確保→ 会議体のアセスメントにより本人に適切な後見人像に対応した候補者を用意でき るように、各地域に質の担保された多様な担い手の選択肢が確保されること(特に、後述の市民後見人や法人後見の育成と専門職への報酬助成の拡充)。
オ 受任調整によって選任された後見人等の理解・協力の確保 →選任された候補者が、受任調整によって選任された趣旨(求められる課題と職 務)を理解し、チーム支援の一員として役割を果たしていく(場合によってはリレ ーの見通しも含め)姿勢を確保すること。
(2)家裁における適切な選任に向けた運用整備→ 以上のような市町村・中核機関における体制整備とは別に、市町村・中核機関が申立に関与しない事案について、適切な選任を図るための運用を整備することも重要である。 本人申立の一部や親族申立の多くは、市町村・中核機関が申立に関与していない。 その場合、市町村・中核機関による受任調整が行われる場合に比べ、申立書類に記載 される本人情報、候補者情報は限定的なものであり、家裁において、本人や事案の特性を十分に反映した適切な選任に繋げることは容易ではないし、これについて中核機 関の受任調整に付すことも現実的ではない。 そこで、市町村や中核機関が関与しない事案では、家裁において適切な受任調整を 行うことができるよう、@すでに本人の支援チームが形成されていれば、その中でのアセスメントを踏まえた候補者についての意見を求めるように申立書式を改訂したり、A家裁が選任にあたり必要とする情報の項目を記載した「選任のための情報シー ト」の提出を求めるなる工夫したり、B家裁の受理面接で受任調整に必要な情報や観 点を確認して申立人に検討を促す等、申立段階における運用を整備することが重要で ある。
(3)柔軟な交代のための体制整備→さらに、チームの自立支援機能として、本人の意向や状況に応じた柔軟な交代についても、体制整備をはかることが求められている。 現状では、後見人等の交代が検討される場面においては、一部の地域と家裁で、専門職後見人から市民後見人へのリレー検討の仕組みが作られている他は、各地で場当たり的な対応になっているところである。 定期報告などによる後見人等側からの情報提供を待つだけでなく、適時に交代に関 係するさまざまな情報を把握し、柔軟で適切な交代に結びつけるためには、市町村・ 中核機関や専門職団体においてチーム支援における後見人等の職務の評価を適切に家裁に提供する体制、家裁との連携の体制を各地で整備することが求められる。
また、市町村、中核機関におけるチームの自立支援機能として、選任された後見人 に対しても相談に応じ、専門外の課題や地域の実情に応じた情報提供を行う等、後見 人自体への支援を行う役割も求められる。 当面の運用としても、選任時の交代の可能性についての説明と同意、定期報告時の 交代の相当性の確認、交代を検討するケースカンファレンスの開催などの取組を市町村・中核機関と家裁、専門職団体の間で進めることが期待される。
3 苦情対応スキームの整備→地域連携ネットワークのチームの自立支援機能の一つとして、後見人等の職務についての苦情対応を明確に位置づけるべきである。 後見人等への苦情等には様々なものが含まれるが、その中には、後見人等が行うべき職務に反しているものや本人や支援者との信頼関係が不全になっているものがあり、本人に必要な職務が果たされず本人の権利・利益に反するものがある。これを改善するためには、裁判所や各専門職団体だけでなく、市町村や中核機関においてこうした事態への対応窓口と体制を設けることは、チームの自立支援機能の一つとして重要であり、現場の支援チームの大きなニーズになっている。 現在でも、事実上、中核機関等へ苦情等が寄せられることもあるが、窓口を含めた対応スキームを整えて、事案に応じた調整対応を行い、必要に応じて家裁や専門職団体と連携・調整を行う体制が取れているところは少ない。 そこで、昨年実施した全国 5 カ所での試行による成果も踏まえ、残りの計画期間において、各中核機関が、家裁や専門職団体と連携した苦情対応スキームの体制整備を行うこととし、そのためモデル事業等の実施を通じて、下記の諸課題を検討し、各地域の特性に合わせて、苦情の受付から関係機関の連携も含めた終結までのフローを見通した対応スキームを整備すべきである。 ・市町村・中核機関、家裁、各専門職団体が、それぞれの苦情対応の体制や実情につい て相互理解をする場を設けること。 ・中核機関は、チーム自立支援機能として、後見人に関する相談・苦情を受ける窓口の 一つとしての対応体制や周知方法を、規模に応じ、順次、整えること。 ・この中核機関による対応について、事実確認の手順、事案の評価、連携の可否・適否などの対応スキームを、規模に応じ、家裁や各専門職団体と協働して、整えること。 併せて、受任調整や選任後のフォローを行う取組を整備して事前防止につなげるこ と。 ・各専門職団体は、中核機関から期待される対応のあり方のイメージを共有し、それを 担える窓口と体制を団体ごとの特質や規模に応じて整えること。 ・家裁は、中核機関と各専門職団体による対応では困難な場合に、家裁の監督機関として果たせる役割や対応のあり方を、具体的事案を通じて、積極的かつ柔軟に検討すること。 ・国や都道府県は、上記の各取組のため、先行する中核機関等の取組や過去の事例対応の分析などを通じて、対応スキームのモデル案の開発や研修などを実施すること。
4 中核機関の位置づけと役割の制度化→以上のように、チーム形成支援機能及び自立支援機能において、本人のために適切な選任と柔軟な交代を確保し、本人中心の権利擁護の支援を確保していくためには、市町村及び中核機関による受任調整や後見人を含めたチーム自立支援機能が十分に実施され ることが重要である。そのためには、中核機関において、本人情報や候補者情報等を調査、取得する法的権限を与え、国や地方自治体、関係諸機関、医療機関や介護・福祉事業者の保有する個人情報等を共有できるような法的手当が必要。また、受任調整 等に必要となる会議を主宰する権限や、家裁や専門職団体と各種情報を相互に提供、意 見交換等することができるための守秘義務も規定する必要がある。このように、後見人の適切な選任や交代や適切な苦情の対応のために、中核機関を法律上の機関として位置づけ、その目的、権限、義務等を明確にすることが重要であり、その制度化は運用改善 の実現の上で必要不可欠なものとして検討されるべきである。
第2「4 ⑵ 担い手の確保・育成等の推進」
1 市民後見人育成をはじめとした担い手育成・確保の具体的施策を→上述のように、本人の課題やニーズに応じた適切な選任を可能にする重要な項目として、地域に後見人等として多様な選択肢がある必要があるところ、日本の世帯状況等に照らし、今後も親族後見人の増大は見込みにくいことを踏まえると、弁護士、司法書士、社会福祉士等の専門職後見人だけでなく、市民後見人や法人後見など質の担保された担い手の育成が求められる。特に、市民後見人については、地域共生社会の実現や身寄りのない人の増加から、ますますニーズは高まるものと予測される。また、新たな総 合的な権利擁護支援策においても、意思決定支援の視点から市民後見人名簿登録者の活躍支援が求められる。 しかし、R5取組状況調査結果では、市民後見人を育成する市町村は全国で418市 町村(24%)に留まり、
第二期計画以降もほとんど増加していない。老人福祉法や知的障害者福祉法等において、市町村の努力義務として担い手整備が位置づけられている にもかかわらず
、国として、都道府県や市町村における体制整備を推進するための具体的な対応策が研修プログラム見直し以外には特に進展がない状況である。市民後見人の 養成研修だけではなく、市民後見人の支援に関する体制整備や養成修了者の活躍支援について都道府県や市町村が実施できるための具体的促進策を国として早急に実施すべきである。 法人後見についても、地域には実施法人がなかったり、社会福祉協議会だけであるな どまだまだ担い手としての数は少ない状況にある。法人後見には、本人が若くて支援が 長期になるケースや多くの課題を抱える家族のケース、専門職後見人が個人で対応困難な特性をもつ事案において法人後見の特性が期待される事案が年々増加している。 地域の権利擁護支援策のひとつとして、市民後見人、法人後見が果たすべき役割を、市町村あるいは圏域単位で整理し、担い手の養成を計画的に行うことができるように、 国として財源の手当を含めた具体的施策を実施することが求められる。
2 専門職後見人の受任環境の整備を→専門職後見人についても、地方では数が足りず、これ以上の受任は困難との声も聞かれる。そのため、専門職の特性と無関係に選任せざるをえない事案もあり、苦情にもつながっている。さらに無報酬事案や対応が困難な事案について、担い手を確保できない事案も増加しており、家裁としても大きな関心事となっている。これを打開するためには、後述するように、国において、市町村の実施する報酬助成制度(成年後見制度利用支援事業)を抜本的に見直し、国負担による財源確保を行い、助成対象や助成金額を拡充させること、また、対応困難事案については、チーム支援体制を充実させてチームで後見人をバックアップする、さらに事案に応じて対応困難事案を担える(公的後見としての)法人後見の整備をはかるなど、専門職が受任しやすい環境整備が不可欠である。
第3 「4 ⑶ 市町村長申立の適切な実施と成年後見制度利用支援事業の推進」
1 市町村長申立の適切な実施に向けた市町村格差是正→市町村長申立の適切な実施については、年間の申立件数に占める市町村長申立の割 合は年々増加傾向にあるものの、都道府県別の割合に大きな格差(全体の44%から 10%まで)があるが、この差は高齢者人口比や専門職の確保状況等との関連性は認 められず、市町村長申立が必要な事案で適切に申立られていないことを伺わせる。市 町村により、担当課の制度利用の必要性への無理解、申立手続への未習熟、申立事務の人員配置不足(概ね兼務)と報酬助成事務の増加、親族調査事務の停滞など様々な要因が重なっている。そのため支援チームの現場からは、市長申立の受理がなかなかなされず、受理してから申立まで長期間かかることなどから、市長申立による利用の諦めが生じ、強引な本人申立や制度利用を回避する事態も生じている。身寄りのない 高齢者や親亡き後の障害者が急増していくことも踏まえると、中核機関や地域包括支 援センターや基幹相談支援センターなどがチーム支援の検討に基づき必要性を確認した事案については速やかな市町村長申立がなされ、受理から標準期間で適切に申立に至る事務遂行のための人員の確保や事務の集約等による効率化をはかることで、必要な事案が迅速に申立される体制を整備することが求められる。 そのために、国や都道府県による各市町村の申立事務の点検評価を行い、改善策の提案や体制整備のための財源確保を図ることが求められる。
2 成年後見制度利用支援事業の枠内に留まらず報酬助成制度自体の抜本的見直しを→成年後見制度利用支援事業の推進等については、R5 年の事務連絡等により任意的な取組みが促されたが、その効果は希薄であり、対象者を市町村長申立事案に限定している市町村が未だに500以上残されており、助成対象も要綱上は生活保護受給者以外の低所得者にも拡大しているものの実際には生活保護受給者に限定する扱いがなされている実情であり(R5取組状況調査結果でも6割以上が生活保護受給者)、また要綱上の報酬助成額を大幅に下回る助成額となっている市町村もある。これにより、市町村長申立や本人申立という福祉的ニーズに基づく利用であるにもかかわらず、無報酬で担わざるをえない事案が一向に減らない状況にあり、各地で専門職団体の担い手の疲弊や不足が進行している。成年後見制度が国の制度であるにもかかわらず、居住市町村により、 助成対象にも助成額にも大きな格差がある事態の是正は喫緊の課題である(なお、国の毎年の取組状況調査は、こうした実態を把握するための項目に全くなっていない)。このように市町村において助成対象や助成額が拡充されない要因は、市町村の財政負担割 合の高さにあることは明らかであり、現在の地域支援事業等の立てつけによる任意的制 度としての制度的限界であり、国が義務的経費として負担することを基本とし、介護保 険制度や障害者総合支援法、生活保護法の個別給付としての位置づけを含め、必要な者がどの地域でも制度利用をできる権利を保障するための報酬助成制度への抜本的見直し が必要である。第二期基本計画の「市町村が行う同事業に国が助成を行う地域支援事業及び地域生活支援事業についても、必要な見直しを含めた対応を早期に検討する。」(1 7頁、3行目)について、残された計画期間での具体的な見直しの方針につき、老健局、社会援護局は明確に示されたい。 また、法的紛争や権利侵害対応の後見職務についての付加報酬についての報酬助成は、厚労省による現在の報酬助成制度の見直しとは別に、法律事務に対する助成制度として、現在の総合法律支援法を改正し、現在の代理援助基準に準じて、同様の資力要件を満たす場合には、後見人の付加報酬につき報酬の立替もしくは給付を行う制度の創設 を法務省において行うべきである。 以 上
◎第 17 回成年後見制度利用促進専門家会議意見書 北海道社会福祉協議会 中村健治
≪中核機関の整備について≫ →・ 中核機関の整備状況については、国の取組状況調査(令和5年4月時点)では、 1,070 市町村(61.5%)が整備済みとなっている。・ 社協による中核機関受託は、社協の取組状況調査(令和 5 年 9 月末時点)では、 広域設置で他社協等による受託を含めて 500 か所(30.8%)となっている。 ・ なお、中核機関ではないが権利擁護センター等を設置及び、広域で他社協等に よる設置を含めて 145 か所(8.9%)となっている。 ・ 成年後見制度利用促進に関する協議会への関りについては、協議会の設置の ない地域が約半数の中、235 か所の社協が事務局を担っており、435 か所が協 議会への構成員として参画している。 ・ 社協における中核機関の運営上の課題については、「中核機関の職員体制の 充実」が最も多く 46.1%で、次いで、「職員の専門性の向上(44.5%)」、「市民後 見人の養成・受任調整、活動支援(30.8%)」、「中核機関の財源(委託費)確保 (28.2%)」であり、小さく産んで大きく育てるという進め方はよいと思うが、職員配 置や予算確保が十分でないことなどが大きな課題となっている。 ・ 特に、市町村が取り組みの必要性を十分理解せず、委託先の社協などに任せっ ぱなしになっているケースも見られ、KPI の数値上の達成のみにとらわれ過ぎることなく、きちんと機能を発揮できる中核機関を設置し育てていくことが必要。 ・ あわせて、中核機関は、成年後見制度に関する相談や対応だけでなく、日常生 活自立支援事業の利用者等も含めて、困難ケースへのバックアップができる総合的な権利擁護支援体制の推進機関として発展させていくことが求められる。 ・ また、連携については、「市町村(行政)との連携(25.2%)」、「家庭裁判所との連携(15.5%)」、「専門職(団体)との連携(12.1%)」となっており、取組状況調査に おいて、中核機関の機能について把握されているが、職員配置や専門職との連 携状況、予算なども含めて、中核機関の実態把握が必要と考える。
≪法人後見の受任体制について≫ →・7法人後見の受任状況については、令和 5 年 9 月末時点で 624 か所(38.4%)とな っているが、「過去に受任実績がある」「受任実績はないが、受任体制はある」を 合わせると 719 か所(44.2%)が受任体制を有している。
・ なお、社協としては法人後見受任体制の整備を推進しているが、人口規模別に みると
、人口 10 万人以上の自治体では 73.4%の社協が受任しているが、人口 5 万人未満の自治体では 27.5%にとどまっている。 ・ 受任体制の整備を進めていない理由として、最も多いのは「財源が確保できないため」(54.7%)となっている。次いで、「必要な知識を持った職員がいないため」 が 41.2%となっており、人材と財源が大きな理由となっている。 ・また、「組織内部の監督体制が整っていないため(46.2%)」、「法人後見の実施 体制をどのように整えたらよいかわからない(37.9%)」、「法律や福祉の専門職 の助言を得られる体制が整っていないため(36.4%)」などの体制整備に関わる 問題も多く、各地域における法人後見の安全で継続的な受任体制の整備につい て、
行政(市町村や都道府県)においての理解とバックアップが不可欠と言える。 ・なお、町村部での法人後見の受け皿づくりとして、県社協が受任して町村社協に 日常的な支援を委託するスキームがモデル事業として実施されているが、後見 報酬だけでは必要な経費を賄うことは難しく、社協による法人後見をさらに広げ ていこうとするのであれば、財源確保を含めた体制構築が必要である。
≪市民後見人の養成について≫→ ・社協の取組状況調査では、328 か所で社協が実施しており、養成延べ受講者数は合計 22,382 人で、養成後に実際に受任した市 民後見人は 2,905 人となっている。 ・しかし、市民後見人養成の実施個所数があまり増えていない(令和 3 年度 309 か 所→令和 5 年度 328 か所)のが現状である。
・ その理由で最も多いのは「養成した後の支援を行うバックアップ体制が確保でき ないため」(37.2%)となっている。都道府県による市民後見人養成研修も行われ ているが、活動のバックアップ体制も含めて環境を整備することが必要である。
◎司法書士・リーガルサポートから見た第2期計画の今後の課題(意見) 〔令和6年10月11日(金)第17回成年後見制度利用促進専門家会議提出〕 司法書士 西川浩之
1 「権利擁護支援チームの形成支援」機能の充実が求められている
(1)後見人候補者の推薦依頼に対応し切れない現状→第2期成年後見制度利用促進基本計画(以下「第2期計画」)の折返し地点を経過した現在における司法書士界(リーガルサポート)の最大の課題は、 家庭裁判所、中核機関(成年後見支援センター)・行政等からの後見人候補者の 推薦依頼に応じられない状況が広がっていることへの対応である。地域によっ て程度の差はあるが、概ね全国どの地域においても後見人候補者の推薦依頼に 十分に応じられない状況になっており、この傾向は、第1期成年後見制度利用促 進基本計画(以下「第1期計画」)の計画期間中に権利擁護支援の地域 連携ネットワークと中核機関の機能の整備に先進的に取り組み、真っ先に広報・ 相談機能(第2期計画における権利擁護の相談支援機能)を備え、次いで受任者 調整の仕組みの構築にも積極的に取り組んできた地域において顕著である。
(2)中核機関の機能の整備が進みつつある地域において特に対応が困難に→このような地域では、中核機関の機能の整備が進むことによって、いわば事案 の掘り起こしが進み、これまでケアマネジャー、地域包括支援センター、相談支 援事業所、退院支援に関わっているソーシャルワーカー等の支援者の下で滞留 していた権利擁護支援を必要とする事案が、中核機関の事例検討会議、支援方針 検討会議等の場で議論されるようになり、権利擁護支援の必要性が確認され、受 任者調整会議において協議されるようになったことにより、後見人候補者の推 薦が求められる事案として顕在化したものである。
こういった事案のうち、特に対応困難事案については、現場で本人を支えてき たケアマネジャー等の支援者がこれまでの支援に行き詰まりを感じて後見人に よる支援を求め、その結果、受任者調整会議において、包括的な代理権のある後 見人でなければ支援が難しい事案であると整理され、「成年後見制度の利用が相 当」「課題は契約等の法的な対応(あるいは債務整理)」「後見人候補者は法律専 門職が適当」との判断がされ、弁護士会やリーガルサポートに推薦依頼がされて いるものと思われる。
(3)後見人(成年後見制度)だけで全ての課題を解決できるわけではない→しかし、現在、専門職団体が推薦依頼を受けている事案の多くは、当該専門職 が有している専門性を発揮するだけでは、本人の支援が十分にできないケース が少なくない。
(ア)虐待対応の事例→ 例えば、虐待事案において、緊急対応後にやむを得ない事由による措置を契約 に切り替えることを目的に、虐待対応の具体的な方針の検討がされる前に(場合 によっては市町村による虐待の有無の判断さえされていない段階で)、受任者調 整会議において、成年後見制度の利用が相当と判断され、法律専門職を後見人候 補者とすること(法律専門職団体に候補者の推薦依頼をすること)が決定される ことがある。 しかし、虐待対応は、後見人1人でできるものではないし、後見人1人ですべ きことでもない。専門職が、虐待を受けている被後見人の後見人(代理人)とな っても、同時に養護者の支援を担当する者がいなければ、虐待対応の終結やその 先の再統合は見通せない。 多くの虐待事案では、8050問題、ダブルケア等の複合的な課題が背後にあ るため、そういった課題を抱えている家庭全体を受け止め、多機関が連携・協働して、課題の解決と同時に継続的に関わる伴走型支援を検討する必要があり、そ のためには既存の地域資源を最大限に活用することが求められる。また、それ以 前に、虐待を受けていた被後見人は、虐待対応(分離)後も介護等のサービスを 継続して利用する必要があるところ、虐待対応(分離)によって被後見人の状態 が日に日に改善され変化していくようなときには、その時々の被後見人の状態 に応じて被後見人が利用する介護等のサービスの変更等を検討しなければなら ないが、そのような対応は、後見事務の経験の少ない法律専門職にとっては、必 ずしも容易にできるものではない。 しかし、中核機関の支援方針検討会議、受任者調整会議等において、成年後見 制度を利用することと法律専門職を後見人等候補者とすることが決まると、そ ういった対応の全てが、選任された法律専門職の後見人に委ねられてしまうこ とが、各地で生じている。
(イ)退院・地域生活への移行の事例→本人が急性期の治療を終え、又は精神疾患等の寛解により、病院を退院して地 域生活に移行することを検討する事案においても、「介護(入所・入居)契約が 必要となるから」「アパート等の賃貸借契約の支援が必要だから」との理由で「成 年後見制度の利用が相当」「後見人候補者は法律専門職が適当」との判断がされ ることがある。 このような事案においてよく見られるのは、高齢者等終身サポート事業者に つないで終わりにしてしまうという対応であり、それと比べれば、成年後見制度 につなげる方向性は、本人の権利擁護支援(特に意思決定支援)の観点からは望 ましい。しかし、ここで支援者に求められていることも、課題の解決(契約の締 結といった形式的な事務)だけでない、継続的に関わる伴走型支援であり、本人 の地域生活への移行を支援するために、介護保険や障害福祉の様々なサービス のほか、制度外のインフォーマルなサービスも含め、地域の社会資源をフルに活用することであるところ、経験豊富な法律専門職でない限り、単独ではそのよう な支援ができない(後見人として権限は付与されても、実質的な支援のコーディ ネートができるわけではない)。 そのため、このような事案では、後見人候補者を決める(専門職団体に推薦依 頼をする)前に(遅くとも同時に)、本人が高齢者であれば介護保険サービス、 障害者であれば障害福祉サービスの利用のコーディネートをする担当者を配置 しておいていただく必要があるし、できれば、退院後の生活を見通して必要とな る各種サービス(インフォーマルなものも含む)の依頼先等との多機関連携・協 働の仕組みを、あらかじめ構築しておいていただくことが望まれる。
(4)「権利擁護支援チームの形成支援」機能の充実のための方策が必要→第1期計画では「広報機能」「相談機能」「成年後見制度利用促進機能(受任者 調整等の支援、担い手の育成・支援、関連制度からのスムーズな移行)」及び「後 見人支援機能」の4つの機能として位置付けていた権利擁護支援の地域連携ネ ットワークと中核機関の機能について、第2期計画では、「本人中心の権利擁護支援チームを支えるための機能」と「その機能を強化するための地域の体制づく りに関する取組」に大別し、併せて、地域連携ネットワークが担う機能には、福祉・行政・法律専門職などの連携による「支援」機能と、家庭裁判所による成年後見制度の「運用・監督」機能があることを、権利擁護支援を行う3つの場面に 対応した形で整理した。 司法書士・リーガルサポートから見た第2期計画の課題は、上記3つの場面中の2つ目、
すなわち「成年後見制度の利用の開始までの場面(申立ての準備から 後見人等の選任まで)」における「支援」機能(本人中心の権利擁護支援チームを支えるための機能)が、現状では、「受任者調整」の名の下で、多くの場合、「後見人候補者の選定」にとどまっていることが多いことが原因となって生じている状況であるように思われる。 「受任(者)調整」で求められていることは、本人が抱えている課題を分析し、 これを後見人の交代も見据えて短期的なもの・中長期的なものに分類した上で、 さらに、「成年後見制度の利用(後見人による代理権の行使)によって解決できるもの」と「成年後見制度の利用だけでは解決できないもの」とに分けて整理し、「成年後見制度の利用によって解決できる課題」への対応をするのに適任の後見人候補者を選定するとともに、「成年後見制度の利用だけでは解決できない課題」への対応の方針や具体的な対応方法を含め、後見開始後のチーム支援の方向 性・方針を検討し、後見人にとっての連携先、後見人以外の支援者の適正配置を 考えて、「権利擁護支援チームの形成支援」さらには「自立支援」の調整をすることである。 第2期計画の計画期間の後半においては、「権利擁護支援チームの形成支援」さらには「権利擁護支援チームの自立支援」機能を充実させるための施策が強く 求められる。
2 「地域支援事業及び地域生活支援事業についての必要な見直し を含めた対応の検討」と「報酬助成制度の在り方の検討」を早期に 行う必要性
(1)報酬助成制度の在り方に関する検討等に関する第2期計画の記載→低所得の高齢者・障害者に対して申立費用や報酬を助成する成年後見制度利 用支援事業に関して、第2期計画は、「U 成年後見制度の利用促進に向けて総合 的かつ計画的に講ずべき施策」「2 尊厳のある本人らしい生活を継続するため の成年後見制度の運用改善等」「(2)適切な後見人等の選任・交代の推進等」「B 適切な報酬の算定に向けた検討及び報酬助成の推進等」の項目において、「ア 適切な報酬の算定に向けた検討」に続けて
「イ 成年後見制度利用支援事業の推進 等」(16ページ)及び「ウ 成年後見制度の見直しに向けた検討に併せた検討等」 (17ページ)という項目を掲げて記載している。 このうち、「イ 成年後見制度利用支援事業の推進等」においては、「国は、(中 略)市町村の成年後見制度利用支援事業の取扱いの実態把握に努め、(中略)適 切な報酬の算定に向けた検討と併せて、市町村が行う同事業に国が助成を行 う地域支援事業及び地域生活支援事業についても、必要な見直しを含めた 対応を早期に検討する。」と記載しており(16ページ 下から2行目〜17ペ ージ 5行目)、また、「ウ 成年後見制度の見直しに向けた検討に併せた検討等」 においては、「国は、後見人等の報酬の決定についてできるだけ予測可能性の高 い制度にすべきなどといった指摘があること等を踏まえ、成年後見制度の見直 しに向けた検討の際、報酬のあり方についても検討を行う。関係省庁は、成年 後見制度を必要とする人が適切に制度を利用できるよう、報酬のあり方の 検討と併せて、報酬助成等の関連する制度のあり方について検討する。」 と記載している(17ページ 12行目〜17行目)。 (2)現状の確認→このうち、ウの前段部分は、法制審議会 民法(成年後見等関係)部会 第4回 会議(令和6年7月2日開催)において議論がされているが、
イの「市町村が行う成年後見制度利用支援事業に国が助成を行う地域支援事業及び地域生活支援 事業についての必要な見直しを含めた対応の早期の検討」、そして、ウの後段の 「報酬助成等の関連する制度のあり方についての検討」は、この2年半の期間、 何ら進展がない(検討の着手さえされていない)ように思われる。 (3)決して「時期尚早」ではない→第2期計画では、これらの検討について、「(アの)『適切な報酬の算定に向け た検討と併せて、』(市町村が行う成年後見制度利用支援事業に国が助成を行う 地域支援事業及び地域生活支援事業についても、必要な見直しを含めた対応を 早期に)検討する。」、「(ウの前段の)『報酬のあり方の検討と併せて、』(報酬助 成等の関連する制度のあり方について)検討する。」と記載しているところ、(ア の)裁判所による『適切な報酬の算定に向けた検討』は、既に終わり、現在、新 しい仕組みの実現に向けて調整中という段階であり、(ウの前段の)法制審議会 における『成年後見制度の見直しに向けた検討の際に行われる報酬のあり方に ついての検討』も、今まさに進められているところである。 これらの検討と併せて行う(検討する)とされている「地域支援事業及び地域 生活支援事業についての必要な見直しを含めた対応の早期の検討」と「報酬助成 制度の在り方の検討」が、第2期計画の折返し地点を経過した現時点で全く手つ かずの状態にとどまっているのであれば、由々しき事態だと言わざるを得ない。
(4)適切な報酬が確保されることの重要性→報酬助成制度の在り方を含む後見人の報酬の在り方は、適切な後見人の選任・ 交代の在り方にも影響を及ぼす事項である。また、利用者から見れば、成年後見 制度(による保護・支援)の必要性の考慮にも影響を与える要素であり、そして、 後見人候補者を推薦する専門職団体(事件を受託する専門職後見人)から見れば、 報酬助成制度の在り方が改善されれば、上記1で指摘したような、後見人候補者の推薦依頼に応じられない状況の改善にもつながることが期待できる。 そのよう観点からも、至急、「地域支援事業及び地域生活支援事業についての 必要な見直しを含めた対応の早期の検討」と「報酬助成制度の在り方の検討」を行う場を設けて、報酬助成制度の見直し・在り方の検討について議論を進める必 要がある。
3 成年後見制度利用支援事業の適切な実施の推進に向けた実態の 把握の在り方について
(1)成年後見制度利用支援事業の適切な実施の推進に関する第2期計画の 記載→成年後見制度利用支援事業の適切な実施の推進に関して、第2期計画(16〜 17ページ)には次のような記述がある。⇒・ 低所得の高齢者・障害者に対して申立費用や報酬を助成する成年後見制度利 用支援事業については、市町村により実施状況が異なり、後見人等が報酬を受 け取ることができない事案が相当数あるとの指摘がされている。 ・ そのため、全国どの地域においても成年後見制度を必要とする人が制度を利 用できるよう、市町村には、同事業の対象として、広く低所得者を含めること や、市町村長申立て以外の本人や親族による申立ての場合の申立費用及び報 酬並びに後見監督人等が選任される場合の報酬も含めることなど、同事業の 実施内容を早期に検討することが期待される。 ・ 国は、上記の観点から、市町村の成年後見制度利用支援事業の取扱いの実態 把握に努め、同事業を全国で適切に実施するために参考となる留意点を示す など、全国的に同事業が適切に実施される方策を早期に検討する。
(2)統計データと実態との乖離→この点に関して、資料1−1(31ページ)に示されている統計データによれ ば、少しずつではあるが、全国の自治体における成年後見制度利用支援事業の形 式的な実施率(実施要綱の整備率)が増加しており、各自治体における成年後見 制度利用支援事業の実施内容についても、徐々にではあるが改善されている(申立人別・類型別・資力別の実施状況を見ると、市町村長申立て、後見類型、生活 保護の各事案に限定することなく実施されるようになっており、助成対象が拡大されている)ようである。 しかし、現場で後見事務を行っている専門職の立場から見れば、以下に記載す るとおり、成年後見制度利用支援事業(報酬助成)は、依然として使いづらい部 分が少なくなく、第2期計画開始後の2年半の期間中も、その使いづらさはほと んど改善されていない(むしろ使いづらさが増している)というのが実感である。
【成年後見制度利用支援事業が使いづらいままとなっている理由・原因】→ア 実施要綱を改正(変更)して助成対象を拡大する際に、あわせて助成金額(上限)を引き下げ、更には助成要件(保有資産に関する要件)を絞り込む変更を行った自治体が少なからずあり、助成を必要とする案件の多くを占める市町村長申立て・後見類型の案件では、むしろ従前よりも実際の助成額が減少して いる。 イ 実施要綱等上、助成の要件(可否)及び助成される金額に関する記載が必ずしも明瞭ではないため、実施要綱を読んでも、更には自治体の担当者に個別に照会しても、実際に助成の対象となるかどうか、また、どの程度の助成を受けられるのかが、分からない(後見事務の開始時点で分からないのはやむを得ないとしても、報酬付与の審判の申立てをする時点でも正確には分からないと 自治体の担当者に言われてしまう)ことが少なくない。 ウ 家庭裁判所からは、報酬付与の審判の申立てに当たって、報酬助成を受けられる場合には、その旨を上申するよう言われているが、上記イのような実情が あるため、実際にはその旨の上申ができないことがあり、その結果、家庭裁判所も報酬助成を受けられることを前提とした報酬付与の審判をしにくい(事実上できない)ため、結局、審判によって付与される報酬額が、後見人が実際に行った事務に見合ったものとは言えない、著しく低額な金額にとどまってしまう。 なお、上記1に記載したとおり、現在、リーガルサポートでは、家庭裁判所、中核機関・行政等からの後見人候補者の推薦依頼に応じ切れない状況が広がっているが、実際に最後の最後まで候補者を推薦する(担い手を確保する)ことができない事案の多くは、市町村の成年後見制度利用支援事業が使えない(同事業 が制度化されていない、又は制度化はされているが、実質的に使えないケースが多い、若しくは働きに見合った報酬が助成されない市町村の)事案である。
(3)実態の把握に資する調査を→上記(2)記載のとおり、現場の感覚としては、成年後見制度利用支援事業は、 依然として使いづらく、必ずしも十分な役割を果たしていない。 成年後見制度利用支援事業が、真の意味で「全国どの地域においても成年後見制度を必要とする人が制度を利用できるようにする」という目的を果たすもの となるためには、上記(2)に記載したような使いづらさを解消するための施策を重ねる必要があり、そのためには、実態把握のための調査の方法にも工夫が求められるのではないか。
◎第17回成年後見制度利用促進専門家会議への意見書
公益社団法人 日本社会福祉士会 理事 星野 美子
3月22日に開催された第15回成年後見制度利用促進専門家会議においても、意見書 を提出させていただいておりますが、その趣旨に沿い、今回のテーマについて改めて意見と して提出いたします。
1.研修等の効果に関する検証→これまでの5年間実施された成年後見制度利用促進体制整備研修等において、研修効果 についての検証を行う必要があると考えます。すなわち、受講者の地域分布や、受講後地域 でどのように還元されているか、受講が進まない地域に対して国としてどのような取組み を考えているか、といったことを把握し、未受講・受講者数が増加しない地域への受講促進 の方策を行う必要があると考えます。 これまでの取組状況の検証のうえ、今後の対応を検討する必要があると考えます。
2.中核機関の役割・機能に関する検討体制→厚生労働省の資料にある、イメージ@、Aは、地域共生社会の在り方検討会議でも提示さ れたものですが、このようなイメージで、中核機関の役割・位置付けを検討することについては、意見を申し上げます。
イメージ@については、ケース A,B.C として3つのパターンが例示されていますが、身寄 りの有無や、社会資源として想定されているのが地域住民によるゆるやかな見守りやこれ までのモデル事業で活躍が期待される市民後見人の担い手等の姿がみえず、日常生活自立 支援事業オンリーのようにみえてしまっていること、また、後見制度の継続の必要性につい て法的課題の有無のみで判断されるような誤解を招く図になっていると感じます。
イメージAについても、「必要となる判断能力の程度」を個別の対象者の状況や支援状況 ではなく、生じている課題によって求められる判断能力の程度の高低を判断するような図 に見えます。令和2年に本会が厚生労働省の調査研究事業として受託した『日常生活自立支 援事業等関連諸制度と成年後見制度との連携の在り方等についての調査研究事業』におい ては、生じている課題だけではなく、本人の状況(判断能力についての課題、支援者の有無 や関わり方、社会資源の活用状況など)を丁寧にアセスメントして、対応方法を検討するチ ェックシートを開発しております。その流れから考えますと、違和感を覚えます。
イメージを共有しながら協議検討することは重要ではありますが、そもそもの情報が異 なっていることで議論が進んでいくことについて、これまで専門家会議で積み上げてきたものが、地域共生社会の在り方検討会議で継承されるのか、危惧を感じます。それぞれの会 議体の独立性は理解しておりますが、中核機関の役割機能については大変重要なテーマで あることから、本専門家会議と地域共生社会の在り方検討会議、法制審議会も含めた合同プ ロジェクトのような形で集中的に協議検討する必要もあるのではないでしょうか。法制審 議会では障害者権利条約を踏まえた意思決定支援の在り方、代理代行から支援へどのよう に法制度が変わることができるのかといった議論が進んでいると理解しています。成年後 見制度が他者決定のための、本人ができないから第三者に決めてもらうための制度である という誤った認識に基づく議論が進まないよう強く希望します。権利擁護には保護的対応 だけではなく、本人が主体的に権利行使できることへ向けた支援も当然に含まれます。さら にいえば、その支援自体が本人への大きな介入になっているのだということも大事な視点だと考えます。 繰り返しの意見になりますが、専門家会議におけるワーキングの設置で意見や考え方をとりまとめ、地域共生社会の在り方検討会議にて取り上げていただくなどの、現状で可能で はないかと思われる工夫を検討していただけますようお願いいたします。
3.担い手の確保・育成等の推進について→ これまでの議論のなかでも、市民の活躍は、後見人の担い手としてだけではなく、地域で の幅広い権利擁護支援への関与が想定されているところです。「市民後見人」とひとくくり に表現することが、こういった理解の促進を阻害していないでしょうか。 法人後見への取組については、取組を推進する施策だけではなく、法人後見を実施する機 関がその運営を安定的に継続できる仕組みや、実務についてのチェックを受けることがで きる専門的機関を都道府県単位で設ける取り組みも同時に進めることを提案します。この ような専門機関に、これまで後見業務に携わってきた専門職(法律・福祉)が助言やサポー トができる体制が求められます。また、法人後見事業に対する助成事業は、社会福祉協議会 以外の団体に対しても、こういったチェック・サポート機関を設けることで、広く対象とす ることを検討すべきと考えます。法人後見の選任について、家庭裁判所の判断のみに委ねる のではなく、地域連携の考え方からも地域で実践を把握し、サポートや連携ネットワークに 関与する団体が選任されるという流れも必要と考えます。
4.成年後見制度利用支援事業の見直し→「成年後見制度利用支援事業の推進」は第二期成年後見制度利用促進基本計画で優先して 取り組む事項の一つとして KPI が設定され、要綱等の見直しの取組状況には一定の進展が見られます。しかし、
市町村による実施状況のばらつきは未だ解消されず、引き続き詳細な 実態把握が必要です。第二期計画では「国が助成を行う地域支援事業及び地域生活支援事業 についても、必要な見直しを含めた対応を早期に検討する」とあり(第二期計画 16〜17 頁)、 計画期間後半では、これに取り組む必要があります。成年後見制度利用支援事業は、高齢者関係は介護保険の地域支援事業の任意事業、障害者 関係は障害者総合支援法の地域生活支援事業の必須事業に位置づけられています。両事業 とも、市町村が地域の実状に応じて実施するものとされているため、事業自体が市町村によ るばらつきが生じる建付けになっています。また、高齢者と障害者が別々の事業であるため、 事業の全体像が分かりにくく、縦割りの弊害が市町村にも生じていると思われます。 本会は第 15 回成年後見制度利用促進専門家会議(2024 年 3 月 22 日)で、「市町村の取組 みに委ねるような対応は見直すべきであり、国が成年後見制度利用支援事業のあるべき水 準を示し、市町村が実施できるような財源の確保をすべきである」(参考資料9、47〜48 頁) と意見を提出しました。成年後見制度を利用する権利を全国どこでも等しく保障するとい う視点に立ち、住んでいる市町村によって支援内容に差が生じることがないよう、成年後見 制度利用支援事業の見直しに取り組むことを強く求めます。
5.福祉・行政等と家庭裁判所の連携について→今回、最高裁判所から提出された資料では、昨年度、地域連携ネットワーキンググループで実施された試行事業についての振り返り、検証がなされています。件数は決して多くはなかったものの、試行された連絡シートを活用することで、福祉・行政等と家庭裁判所、専門 職団体が相互理解を深めるための一助となり、それぞれの立場・役割を踏まえた対応を行っていくことが課題の解決に非常に役立つ、という整理がなされています。 本会としても、このような取組を既に実施している地域もあることを把握しており、単なる試行事業として終わることなく、全国的にこの取組をそれぞれの地域実態に合わせて進 めていくことが必要であると考えます。 以上
次回は新たに
「第7回 子ども・子育て支援等分科会」からです。