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労働基準法における「労働者」に関する研究会 第4回資料 [2025年12月02日(Tue)]
労働基準法における「労働者」に関する研究会 第4回資料(令和7年10月29日)
議題 (1)国際動向について (2)労働基準法における「労働者」について
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_65316.html
◎資料No.1 労働者性に関する国際動向 ※第3回研究会資料に追記
○労働者性に関する国際的動向(@ドイツ)↓
・全体像→
労働者概念はすべての法律で統一的な概 念であると解されており、労働者と自営業者の中間概念である労働者類似の者という概念が実定法上定められている。
・労働者概念→・労働法規の一般的な適用対象としての労働者概念は、「人的従属性」によって特徴づけられている。そこでは経済的従属性は考慮されない。 ・労働契約の定義が定められ、労働者の具体的な判断基準が明文化された。(この規定は判例法理を そのまま明文化したもの)このうち「他人決定の労働」は、指揮命令拘束性とともに「人的従属性」を示す要素であり、「他人決定」性 を裏付ける典型的な要素として、「組織への組み入れ」が挙げられる。 ※民法典611a条労働契約(1)労働契約によって、労働者は、他人に使用されて、指揮命令に拘束された、他人決定の労働を、人的従 属性において、提供する義務を負う。
・労働者概念の拡張、類似の概念等→・労働者とは区別される労働者類似の者は、経済的従属性によって特徴づけられている。
・労働者概念の変化、デジタルプラットフォーム就業に関する裁判例→2020年12月1日Crowdworker事件連邦労働裁判所判決は、クラウドワーカー(プラットフォーマーが顧客の注文を細分化しその 斡旋を受けて業務を遂行する者)の労働者性を肯定した。この判決については、アプリシステムによる事実上の拘束を他人決定性として考慮に入れている点などで、プラットフォーム就業 者の労働者性を広く認めることにつながる可能性があるとも論評されている。
・デジタルプラットフォーム就業に関する立法措置等→ドイツの判例は、なお労働者性を限定的に解釈する態度をとっているものと理解されている。

○労働者性に関する国際的動向(Aフランス)↓
・全体像
→労働法と社会保障法(一般制度)の条文で共通して「本巻の規定(「本編の規定」)は私法上の使用者及び労働者に 適用される」と統一的に定めている。この適用対象は、「労働契約の当事者」と理解されている。
・労働者概念 →・2016年Formacad判決は、1996年Société Générale判決が「人的従属性」の基本的要素としていた「指揮命令」、「監督」、「制裁」を示す諸事情について具体的に設定することなく、主に、利益・場所面での事業への組入れ、固有の顧客の不存在、労働条件の一 方的決定、競業行為の禁止、労働力の常時的利用という「経済的従属性」(自営業者としての独立性の欠如)を示す諸要素を考慮して 労働契約性を判断している。 ・近年の多数の判例を踏まえた現行法の解釈としては、「人的従属性」と「経済的従属性」は労働契約性を判断するうえで、いずれかが上位に立つという関係ではなく、相互補完的な関係に立つとの指摘もある
・労働者概念の拡張、類似概念等→一定の要件を満たした場合等の労働契約の推定等が定められている。
・労働者概念の変化、デジタルプラッフォーム就業に関する裁判例@→・判例は人的従属性を中心とした労働契約概念自体は維持しているが、その判断の内容に変化が見られる。 ・20世紀末から、判例の中に@契約形態(主観)よりも実態(客観)を重視する傾向(2000年Labanne判決)、A経済的従属性を示 す要素(事業組織への組入れ、労働条件の一方的決定など)を考慮する傾向(1996年Société Générale判決、2016年Formacad判決など)が見られるようになった。
・労働者概念の変化、デジタルプラッフォーム就業に関する裁判例➁→・破毀院の2025年7月9日Uber判決(上記2020年判決とは別の事案)では、プラットフォーム就業者(タクシー運転手)の労働契約性が否定さ れた。そこでは、@競業制限がなく顧客との関係構築の可能性が開かれていたこと、A運転手はプラットフォームからの乗車提案を拒否するこ とや運送ルートの決定を自らの判断で行うことができたこと、B3回乗車拒否後のアプリからの切断措置についても、(2022年オルドナンスに よる運送法典L.1326-2条に基づき)プラットフォームからの通知により即時に接続できることとされ、運転手への制裁とまではいえないこと、 C(2019年移動オリエンテーション法の新規定に基づき)運転手は乗車提案があった際に当該運送の(費用控除後の)最低運賃、乗車までの時 間・距離、当該運送の時間・距離を確認できることなど、下述する立法措置により運用変更があったこと等が理由として述べられている。
・デジタルプラットフォーム就業に関する立法措置等→就業条件(非専属性、諾否の自由等を含む)等を記載した「社会憲章」を、サービス提供者の 意見を聴取したうえで作成し、行政官庁に届け出てその許可を得、インターネットで公表し契約に添付することができることを定めた。

○労働者性に関する国際的動向(Bイギリス)↓
・全体像
→・イギリスの現行の労働法規制は、コモン・ロー(判例法)が定義する「contractof service」(雇用契約)を締結した者であ る「employee」を適用対象としているものと、制定法が定義する「worker」を適用対象としているものがある。 ・どちらも一定の契約の類型によって定義される。(Employment Rights Act 1996:ERA 1996, s. 230(1)(2)(3)) ・「employee」を適用対象とする法律により付与されている権利には一定の勤続要件(continuous employment: ERA 1996, s. 210)が課されているものがある(解雇規制など)
・労働者 等概念→employee =雇用契約の定義⇒・「employee」の判断要素は、@義務の相互性:約因(契約の成立要件)、Aコントロール(指揮命令)、Bその他契約条項が 雇用契約と整合的であること(雇用契約との整合性)、である(Ready Mixed Concrete事件高等法院女王座部判決(1968年))。 @、Aが雇用契約と判断するにあたって必要な要素とされており、Bは消極的な要素とされている。
Worker の定義⇒・「worker」は制定法上の概念である。例として、雇用権利法(Employment Rights Act)230(3)において、「Workerとは、 次の契約の下で働いているまたは契約を締結した個人である。(a)雇用契約(b)個人が、契約の他方当事者のために労務やサービ スを本人自身が行うことを引き受ける契約で、契約の他方当事者が事業遂行者の顧客の地位になく、あるいは高度専門職の顧客の 地位にないこと」とされている。このうち(b)の契約を、本資料においては「労働者契約」と呼ぶ。 ・労働者契約の要素は、制定されているとおり、@義務の相互性:約因(契約の成立要件)(契約で定義されているため当然に問 われる)、A労務の非代替的遂行(本人自身による労務提供)、B顧客要件(230(3)(b)後段、非事業者性を確認するための要 素)である。
・労働者等概念→両定義の比較分析⇒・コモンロー上の概念である雇用契約と、制定法上の概念である労働者契約は全く違うものであることが出発点。制定法に定められるところにより、workerの定義はemployeeよりも広い。 ・判断要素のうち、義務の相互性:約因は、契約の成立要件であることから、雇用契約、労働者契約の共通の要素である。・雇用契約の判断要素A指揮命令及びB雇用契約との整合性と、労働者契約の要素B顧客要件は、要素として異なる。事業統合性 は両方の概念について現れているが、 employee判断では指揮命令が特に重視され、worker判断では(労務の非代替性と)自律 的サービス提供の有無がより重要な要素となる傾向がある。 ・経済的従属性などの基準を解釈で判断要素に加えるものではないことが、最高裁のレベルで確認されている
・デジタルプラットフォーム就業に関する裁判例→・ギグ・エコノミーで働くクラウドワーカーが、独立自営業者か「worker」かが問題となってきており、この点につき、ライド シェアの運転手に関する労働者契約の成立(義務の相互性:約因)が争点となっていた前述のUber事件の最高裁判決では、@運 転手に支払われる報酬がUberによって決定されていたこと、A運転手が提供する労務に関する契約条件がUberによって規定され ていたこと、Bアプリにログイン後は、運送リクエストの受託に関する運転手の選択がUberによって制約されていたこと、C Uberは、運転手によるサービス提供方法について相当程度の指揮監督を行っていたこと、DUberが乗客と運転手のコミュニケー ションを制限していたこと、などをコントロールの要素として認定・評価をしたうえで、「worker」該当性を肯定した(ログイ ン後個別で契約が成立するとした)。※争点が限定的で、worker概念についての先例として、どこまで意義が認められるのか、 現段階では判然としない部分がある。 ・同最高裁判決においては、契約書面の位置づけ・解釈のあり方として、商事契約(commercial contract)の場合と異なって、 契約書面(契約名称や書面化されている契約内容〔条項〕)に羈束されずに、特に契約締結時以後の事情も含めた労働の実態を確 認するアプローチが整理・肯定された。 その他あり。  参照。
・デジタルプラットフォーム就業に関する立法措置等→・労働党政権となった後、2025年3月14日、ゼロ時間契約(労働時間数が確定されていない就業形態)などのworkerについて、 新たな権利義務を多数創設するEmployment Rights Billが議会に提出され、議論されている。その中では、employee、 worker概念についての修正はない。

○労働者性に関する国際的動向(Cアメリカ)↓
・全体像
→公正労働基準法(FLSA、最低賃金規制、割増賃金規制等を行う立法)、全国労働関係法(NLRA、団結権、団 体交渉権及び団体行動権の保障等を行う立法)、社会保障法(SSA)などにおいて、法の適用対象を「被用者(employee)」として おり(以下、被用者を単に労働者という。)、独立契約者(independent contractor)は保護対象者ではないと解されている。労働 者の概念ないし判断基準は相対的(各法令の趣旨・目的により異なりうる。)。
・労働者概念→・公正労働基準法における労働者について、判例は、全国労働関係法などの労働者よりも広い概念と解し、その判断基準として 「経済的実態テスト」を採用している。経済的実態テストは、一般的に、以下の考慮要素を、就業にかかる活動の全体にかかる状況に 照らして吟味し、「役務を提供する事業に依存しているか否か」(すなわち、経済的に依存しているか)を検討して労働者性を判断するという形で形式化されている。
・労働者概念の拡張、類似の概念等→・制定法上、「労働者」を拡張する例は基本的に見られない。
・労働者概念の変化、デジタルプラットフォーム就業に関する裁判例@→・全国労働関係法のもとにおける労働者性の判断に関しては、NLRB命令及び同命令を審査する裁判例で、管理権テストによることは前 提としつつ、「損益についての起業家的機会」の有無の位置づけなどをめぐり、判断の変遷がみられる。 ・公正労働基準法のもとにおける労働者性の判断に関しては、経済的実態テストによることは前提としつつ、その具体的な判断要素等 に関して、同法の履行を担う連邦労働省賃金時間部による考え方の変遷がみられる。
・労働者概念の変化、デジタルプラットフォーム就業に関する裁判例➁→・翌2025年5月2日には、上記2019 年の意見書簡(2021年2月19日から2025年5月1日までは賃金時間部の政策についての公式な見解を示すも のとして依拠しえないとされていた)を 、2025年の意見書簡(FLSA2025-2)として、改めて、 賃金時間部の政策についての公式な見解を示す ものとして復活させた 。同書簡は、ある「仮想市場会社(Virtual Marketplace Company, VMC)」(プラットフォーム事業を営む会社といえ る。なお、具体的にどの会社かは明らかにされていない。)との関係で、同市場において顧客に役務を提供する者が公正労働基準法のもとにお ける労働者か否かについての個別の意見照会に回答したものであり、判例が示してきたとする6つの要素に照らして判断すると、当該個別の照 会に関しては、役務提供者は独立契約者であり、仮想市場会社の労働者ではない (また、そもそも同会社は紹介サービスを提供しているにすぎ ず、就業に係る関係は役務提供者と同会社との間ではなく、むしろ顧客との間にあるにすぎない)と判断したもの である。
・デジタルプラットフォーム就業に関する立法措置等→・ABC デジタルプラット フォーム就業に関 する立法措置等 テストとは、使用主体が、以下のABCの要件の全てを立証しないかぎり、労働者と判断する(この意味で労働者性を推定する)判断基準である。 A:契約上も実際も、業務遂行に関して使用主体から管理や指示を受けていない。 B:使用主体の通常の事業外の業務を遂行している。 C:遂行する業務と同じ性質の、独立した事業等に、習慣的に従事している。 ・カリフォルニア州では、カリフォルニア州最高裁判所が 2018年4月に下したダイナメックス事件判決におけるABCテストを 2019 年に立法化した(AB5)。なお、同テストが労働者性を広く認め真正な独立契約者も含みうることを考慮し、AB5にはABC テストの適用除外規定が設けられており、適用除外対象の業務は109に上るとされている(Samantha J.Prince の2022年の論文による)。 ・他方で、カリフォルニア州においては、AB5の立法後、2020 Proposition22 年11月にProposition22が賛成多数で承認されている。 は、アプリを通じてライドシェアやフードデリバリーの業務に従事するギグ・ワーカーを、一定の要件を満たす 場合、プラットフォーマーとの関係で独立契約者と明確に位置付けると同時に、最低報酬保障など、一定の保護も行うもの 。

○労働者性に関する国際的動向(DEU)↓
・全体像
→・EU司法裁判所は、労働者概念を広く解する傾向にある。 ・指揮命令拘束性を緩やかに解するEU法上の独自の労働者概念が広いことについては広く見解が一致しており、EU司法裁判所は、指 揮命令拘束性の判断において、市場で取引しているとはいえずもっぱら専属しているという経済的従属性を考慮していることが指摘されている。
・労働者概念→・EU司法裁判所の判例では、「労働関係の本質的な要素は、ある者が、一定期間、他者のために、その指揮命令に服して給付を行い、 反対給付として報酬が支払われる点に存在する」という定義に基づいて労働者性が判断されている。
・労働者概念の拡張、類似の概念等
・労働者概念の変化
→・EU司法裁判所2020年4月22日決定は、宅配運転手が労働時間指令2003/88号にいう労働者にあたるか争われた事件において、契約上、 自ら役務を提供しなければならないのか、個々の委託を断ることができたのか、専属義務が課されていたか、および働く時間を自ら決めることができるかという、付託裁判所が示した判断要素が労働者性の判断基準になり得ることを認めたうえで、独立性が見せかけであり、 委託者との間に従属性が認められる場合には労働者性が認められるとしたうえで、最終的な判断を国内裁判所に委ねた。(本決定に関し ては、契約上、可能であったかだけではなく、実際に、他人労働力を活用していたのか、個々の委託を断ることができたのか等の「事実 上の拘束」を重視すべきであるという批判も行われている。)
・デジタルプラットフォーム就業に関する立法措置等→・欧州委員会は2021年12月、プラットフォーム労働における労働条件を改善し、EUのデジタル労働プラットフォームの持続可能な成長を支援するため、新たな指令案を提案。2024年10月23日に「プラットフォーム労働における労働条件改善に関する指令」が正式に採択された。加盟国は、2026年12月2日までに、この指令を遵守するために必要な法律等を発効させることが求められている。

次回も続き「資料No.2-1 「裁判例を事例単位で分析した資料」の作成方法」からです。

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