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第180回市町村セミナー 資料 [2025年08月20日(Wed)]
第180回市町村セミナー 資料(令和7年6月13日)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_58702.html
ひきこもりの経験から いま、考えること  岡本圭太   ひきこもり体験者  社会福祉士、精神保健福祉士
○自己紹介
→ • 神奈川県横浜市出身 • 「父(S21)、母(S24)、自分(S49)」の3人家族 • 不登校経験はなし • 大学での就活失敗を機に社会からひきこもる • 25歳でひきこもり生活終了。 • 30歳で就職。週3日の仕事をふたつ経験。 • 32歳から若者支援の施設で相談員(15年弱) • 本業のかたわら、講演活動など

@ ひきこもり体験談(前編)〜就職失敗から、社会と関わるまで〜↓
○挫折のきっかけ
→ • 直接的には、就職活動の失敗 • 面接で全滅 • 恥ずかしい/自信喪失 • 就職がこわい • 将来への不安と恐怖
○当時の生活→・昼夜逆転 ・睡眠時間が長い ・ひたすら考えごと ・テレビゲーム(ex.ドラクエ、F1等) ・外出は可能。しかし会話はなし。 ・深夜のコンビニ、ブックオフ、TSUTAYA ・友人/親戚づきあい無し ・人間の友達はゼロ(音楽だけが友達)
○当時の気持ち→ • 不甲斐ない。恥ずかしい。 • 誰にも会えない。会いたくない。 • 親への申し訳なさ(罪悪感) • 人が怖い • 「せめてアルバイトぐらいしなければ」と 思ってアルバイト雑誌を買うが、怖くて中を読むこともできない。 • 昼も夜も考えに考える →どうしてこうなってしまったのだろう? →これからどうなるのだろう?
• 悪夢にうなされる。 • 旧友からの電話が怖い(電話は全部無視) • 自分の状態を説明できない。 • 自分を定義する言葉がない。 • 自分には生きている価値がない。 • どこに相談すればよいかわからない。 • 相談したくてもお金がない。 • 時間の経過とともに絶望感だけが強まる。 • 死について考える。 • 諦める……。
○親との関係→将来のことを問い詰められるのが 怖くて、親との接触を極力避けた。「これからどうするんだ?」 「親はいつまでも生きていないぞ」 いまの状態がまずいことはわかる。 でもどうしたらよいかわからない。

≺嫌だったこと 嬉しかったこと ≻
○嫌だったこと
→【親】・「これからどうするんだ?」 ・「親はいつまでも生きていないぞ」 ・「さりげなく」求人誌が置いてある ・ 親戚やいとこの比較。【大学、サークルの友人、親戚】・「いま何してるの?」 ・「どうして働かないの?」 【その他】 ・(床屋さんなどで) 「今日はお休みですか?」
○嬉しかったこと→【親】 ・甘えや怠けではないと 理解してくれた(心理面の支援) ・活動費や交通費の援助(経済面の支援) 【支援者】 ・評価や否定をしない ・ありのままの自分を認めてくれる 【デイケア、当事者グループ等】 ・同じ経験をした人ばかり=根掘り葉掘り訊かれない ・「どうして働かないの?」と訊かれない安心感。
○思い出すこと→ • 働くのが怖い/アルバイトすら怖い • 求人誌を開けない • 100均ショップでも怖い • 学生相談室なんて知らなかった・・・
○ひきこもりの人の思い→・気にすること(一部)⇒ • 履歴書の空白 • 「いま何をなさってるんですか?」が恐怖 • 「順調」に進んだ同世代との比較 • 「人並みの経験をしていない」劣等感

≺ひきこもりから 抜けたきっかけ(1999年) ≻
○@諦めた
・ひとりで解決するのはもう無理…… ・誰かに相談しよう A「ひきこもり」を知った ・「何かヒントが見つかるかも……」
○「ひきこもり」を知ってこう思った。→「これって自分のことかも……」 「自分みたいな人がたくさんいるらしい……」 「そういう人たちと話せば何かヒントが見つかるかも……」
○悩んだ末、僕は助けを求めた。(1999年7月29日:25歳まであと1ヶ月)→僕は「ひきこもり」なんでしょうか……? 症状としては軽いと思うけど、典型的に ひきこもりっぽいことが書いてありますね。 (とてもホッとした) 自分の立っている位置がわかれば、どちらに向かって歩いていけばよいかはおのずとわかる。医者から「ひきこもり」と言われた ことで半分解決。

A ひきこもり体験談(後編)〜社会参加、そして働くまでの道のり〜↓
○25〜29歳
→ @ 精神科受診 A カウンセリング B デイケア参加 ひきこもりの当事者グループ(参加・運営) ひきこもり勉強会(参加・運営) ぼくとDr.の基本スタンスは…… 「いきなり働くのは無理」 「就労<人間関係を作りなおす」
○職歴:その仕事に就いた理由/仕事内容→ @ 神奈川県の公共施設(30歳〜・週3日) →知人の紹介 A NPO団体スタッフ(31歳〜・週3日) →お誘い B 若者向け就労支援施設(32歳〜・週5日) →お誘い・なりゆき
○就職 =「ゴール」?→ ・そうだったらいいんだけどね ・働き始めてからの苦労 ・年齢相応の経験の無さ ・途中、何度か転覆しかける
○Attention →「外に出られるようになったから」 あるいは 「働けるようになったから」 「=ゴール」ではない。 (悩みはその後も続いていきます) (ひきこもりから出たあとの支援があれば)
○就職 = なぜ続けられた?→ ・お金がもらえる ・肩書きや立場が得られる ・できることがだんだん増える/上手くなる喜び ・「ここで辞めたらあとがない」という思いも

Bひきこもりの経験から いま、考えること
○働き始めて感じたこと &考えたこと
• ひきこもり時給2000円 • 世の中みんな不完全、 完璧である必要はない • 「初めての給料」で決めたこと • 最初の社会参加は「就労」ではなく 「消費」
・ひきこもっていた人には、義務感ではなく、 自分の楽しみのために働いてほしい。
○どんなふうに関われば?→@公的な 支援機関へ • 特別なことは必要ない。 • プラスはなくてもいい。 脅かされない、侵襲的にならない。 • メールでの申し込みを可能に • 可能ならば、相談員のプロフィール や、人となりがわかるものを。 • 自分は花を見ないつもりで支援する(耕す、種をまく)。 Aご家族へ • 「これからどうするんだ?」「親は いつまでも生きていないぞ」は×。 • 「自立/働く」よりも、まず居間で 会話ができることを目指そう。 • あいさつ、天気、ニュース、時事問題、ゲーム、スポーツの話題 • 情報は集めておく。でも焦って本人 に押し付けない。
○こんな 「支援」は イヤだ→ •「ひきこもっていてはダメだ」と言う(恫喝・現状の否認) • ひきこもり生活をやめさせようとする • 支援者の考えを押し付ける (Support, Not Controlの逆) • 「可哀想な人」という目線 • 支援して「あげる」(支援臭)
○これまで何に助けられた?→・「ひきこもり100万人」 • 信頼できる支援者 • 家族の理解 • 同じ経験をした仲間たち • 音楽
○「 8050/9060問題」について思うこと→ • 本人の自立だけでなく、親の高齢化や介護、障害や疾患、親亡き後の生活など、複数の分野にまたがる複合的な福祉課題。特定の部署や施設だけで対応することには限界がある。 • 支援者が孤立しない。他の部署や機関とつながる。使える資源をもう一度洗い直す。たくさんの知恵とアイディアを集める。
・私たちは「挫折の経験」を一生引きずっていくのでしょうか? 挫折の経験は人生の「しみ」 のようなもの。薄くなること はあっても、なくなることは ない。 その「しみ」は、大きさも色も、濃さも形も、その落ちにくさも人ぞれぞれ。 長い人生。真っ白ではなくいろいろな色があっても良いの かも。
○野望とか希望 とか→ • 若い人たちには、「そうか、 ああいう人生もアリなんだ な」と思ってもらいたい • 子どもたちが「大人ってなんか楽しそうだな」「自分も早く大人になりたいな……」と 思える社会 • そのためには、まずわれわれ オトナが人生を楽しむこと。 背中を見せられるように。
○最後に宣伝させてください↓
・岡本圭太 『ひきこもり時給2000円』→20代でひきこもった時期の実体験、 当時の生活や心情、親との関係、社 会参加から働くまで、その後の経緯 や社会についての考察などを綴った 当事者エッセイ集。 2023年12月彩流社より発売中 (税込2,530円) 全国の書店およびAmazon等のネット書店 にて購入できます。


◎≺自治体の取組≻ひきこもり支援における本人及び家族との対話交流と支援体制づくりについて  
三重県明和町における本人との対話を通じた支援  社会福祉法人 明和町社会福祉協議会 地域福祉係 山田 奏
○三重県明和町のご紹介
→松阪牛で有名な松阪市と伊勢神宮のある伊勢市に挟まれた人口2万2千人余りのこぢんまりとした町。 令和5年度ひきこもりサポート事業受託 令和7年度ひきこもりステーション事業受託
○初めて出会った当事者の方に教えてもらったこと→ 困窮相談に訪れたお母さん。息子が働いてくれれば何とかなるんだけど…。 今度連れてきます、と毎回お母さんは言ってくれますが、そりゃ来てくれません。 そんな折、自宅洗濯機が壊れてしまう事態が…。買い替えるお金はありません。 そこで、寄付でお預かりしていた洗濯機をお渡しする事を提案。 「私一人では倉庫からご自宅まで運ぶことができないので、息子さん手伝ってもらえたりする可能性ってありますかね?」 「どうだろう……。聞いてみます」→その日のうちにOKのお返事がお母さんより
○出会った時点でのご本人(当時18歳)の 状況(これまでの母親からの話し)→・中学1年生の夏休み明けから完全不登校。自宅から殆ど出ない ・家族はそうなった原因を全く把握していない ・中学3年生時(進学時)、「もう少しこのままでいさせて欲しい」 ・進学はせず、自宅でひきこもり生活 ・家族は部屋で何をしているのかわからない ・時折、夜中ジョギングへ長時間出ていく ・家族での会話はほぼない。働くように言うが 「もう少し待ってくれ」と言うだけ。 ・家族以外との接点は皆無。
・昼夜逆転していて昼前に寝始めるという事で、朝イチで自宅まで迎えに 行きました。 私の第一声 「あーこんにちは。初めまして。一人では運び出せなくて、ホント助かり ます。ありがとうございます」 ご本人、会釈のみ 倉庫へ向かう車中での最初の会話 「結構重いですけど力仕事は大丈夫ですか?」 「…部屋で筋トレして、夜中にジョギングしたりしてるんで…。」 (え…メチャ嬉しいな、トレーニングネタでメチャ時間もつやん)
・車中、筋トレとジョギング話し ジョギング話から派生して 「…なんか…時々ずっと走っていたくなるんです」(キーワード) そして、私からのお願い 「結構、こうやって冷蔵庫とか洗濯機の寄付をいただく事が多いんですけど 運ぶのが大変でして、そういう時はお手伝いお願いできたりします?」 「全然いいっすよ」 ここからご本人さんとの「対話」 が始まりました。
○ご本人との関係を「つないでくれる」 地域からのご寄付→ 何回かお手伝いを依頼する形で関わる中、町外から自宅整理に伴う 大量の寄付のお申し出。 早速、ご本人にお手伝いをお願いしました。 「少し遠いけど一緒に行ってもらえたりします?」 「…全然いいっすよ…。」 その車中での対話 が私を支援者として成長させてくれました。
○対話を通してご本人のSOSが少しずつ形として理解できていく→「けっこう長い時間お付き合いいただく事になりますが大丈夫ですか?」 「…むしろ、その方がありがたいっす。」 (聞きたいけど、まだ聞かない…) 「じゃあ、他のボランティアとか作業なんかも手伝っていただけたりなんてします?」 「どんなんがあるんすか?」 「変わった作業なんですけどね、もみがらを洗うって作業なんですけど」 「やってみたいっす」 「でもお家から結構遠いんですよ」 「全然いいっすよ。歩くんで」「えー、歩きだと1時間くらいかかっちゃいますよ」 「家にいたくないんで、家にいなくて済むなら全然いいっす」

≺ひきこもっていたのに家に居たくない…。 ここに込められたご本人の苦しみに触れて ≻
○ひきこもりハンドブックを読みながら 自らの支援を振り返る
→ ☆丁寧なかかわりを行うことで、少しずつ信頼関係が構築されます。 ・まずは使える洗濯機を届ける福祉のおっさんからの関わりで良かったんだ ☆本人が自分から「ひきこもり」に至った背景などを話してくれるまでには時間がかかるかもしれませんが、焦らず、一人ひとりのペースに合わせてコミュニケーションをはか るようにしましょう。 ・支援者的にひっかかるキーワードを敢えて心に留め置いて良かったんだ ☆他愛のない話題であっても、支援者のことを「安心して相談できる人(本人のひきこもり 状態のことに干渉や否定しない人)であると認識してもらうためのコミュニケーションが 必要です。 ・筋トレ・ジョギング、音楽の話し、楽しんで良かったんだ
○味を占めた私は…→如何にご本人と自然に出会えるツールを多く抱える事ができるか 如何にご本人と自然につながり続ける為のツールを多く抱える事ができるか 如何にご本人が真のニーズを表出させて下さった時、そのニーズに応えられる ツールを多く抱えておく事ができるか そんなことを考えながら日々の業務に向き合うこととなりました。
○私自身の業務範囲→コミュニティソーシャルワーカー、生活支援コーディネーター、 ボランティアコーディネーター、災害ボランティアセンター、 支援対象児童等見守り強化事業、地域未来塾、各種募金業務 赤い羽根共同募金配分事業、福祉団体支援…etc  実はこれらの業務に…。 当事者さんと自然に出会うためのお宝 当事者さんとつながるためのお宝沢山埋もれている! 当事者さんと対話し続けるためのお宝 *ここで三言だけ…。 無理を言っても頑張ってくれる同僚たちに感謝☆ いつも一緒の方向で協働して下さる行政の皆さんに感謝☆ 雇用いただいた農家さん企業さん、作業を出してくれる皆さん、地域での活躍の場を下さる 皆さんに感謝☆

○ひきこもりハンドブックに勇気づけられて→ もう1事例ご紹介させてください。 実は去年夏の初任者研修で悩んでいるケース事例として挙げたTさん。 もう、かれこれ5年のお付き合いになります。 ご本人の希望で一度アルバイト就労支援を実施しましたが、3か月後に 無断欠勤が出始め、ご本人、アルバイト就労先と何度も相談を繰り返した上で、一度辞めることに。
○つらい過去を背景に持つTさんから 教えてもらったこと↓
○ハンドブックが和らげてくれた私の焦り
→ 就労=ゴールではない。 頭ではわかっていて、アルバイト就労が続かなかった時も、 「またボランティアで力を貸してよ」と言えた。 でも、 Tさんの人生、本当にこのままでいいのか? もっと出来る事があるんじゃないのか? ぐずぐずしてたら、家族との関係が完全に破綻してしまうんじゃないのか? どこかでそんな事を考えている自分がいた。
○<目指す姿としての「自律」>→・「自律」とは、自己を律すること、社会に適応するといった捉え方ではなく… →Tさんが自己を律し、社会適応する姿を私は知らぬ間に求めていた。 ・本人の尊厳や主体性、自尊感情を回復する意味であり… →つらい過去を背景に持つTさんの回復 を支えながら待つのが私の仕事なんだと再確認。 ・その自律に向けたプロセスを本人と支援者が共有しながら一歩ずつ進むことを目指すものです。 →Tさんの中にある「こうありたい」が見つかる事が自律。地域との相互作用の中でその関わり、 対話を通じて、共に探していくことが所謂「伴走支援」なんだと学ぶ。 これが迷いの中でハンドブックを読み解き、Tさんとの対話を通じて辿り着いた私の思う支援のあり方です。 長谷川先生、岡本さん。この後のパネルディスカッションでもお教えをいただきたいです
○クライエントは支援プロセスの監督者 ストレングスモデル6原則より→近所の一人暮らしのおばあちゃんの ゴミ出しを定期的にして下さるTさん、 ベテランサポーターに植垣の剪定 の仕方を教わって作業するTさん、 当事者さん同士で手に負えなくなった庭木の伐採作業を行うTさん。
○地元明野高校福祉科マイスターハイスクール(文科省指定事業)→「虐待・不登校・ひきこもり」ゼミ生と「対話」をするTさん 次代の福祉を担う若者へ思いを伝え、地域共生社会の実現に向けて お力を発揮していただいています。

次回は新たに「第8回経済財政諮問会議」からです。

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