第5回経済財政諮問会議 [2025年05月24日(Sat)]
第5回経済財政諮問会議(令和7年4月21日)
議事 1.グローバル対応 2.地方創生2.0及び持続可能な地方行財政の重要課題 https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2025/0421agenda.html ◎資料1グローバル対応 ○我が国の輸出入の推移(2014年〜2024年)→・我が国の輸出入は、米・欧・アジアともに取引額が大きく増加。各国との貿易を通じた連結性が高まっている。 ・この10年間では、輸出入ともに、米国との取引額の伸びが最も大きくなっている。 貿易収支図 参照。 ○我が国の貿易総額の変化→・我が国の貿易総額(輸出入計)は、10年間で大きく増加(2014年159.0兆円⇒2024年219.6兆円(+38%増))。 ・ 2018年12月に発効したCPTPP加盟国(*)との貿易総額は、2014年の25兆円から2024年の39兆円へと、より大きく増加(+56% 増)、割合は16%から18%へ上昇)。経済連携の枠組みが増加に寄与した可能性。 (*)環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定。 ・経済連携の枠組み対象国との貿易総額は、コロナ禍の影響はあったものの、増加傾向。・発効済・署名済の枠組みの国との貿易が総額に占める割合は、2014年22%⇒23年79%へと高まってきている。 ○我が国の対外・対内直接投資残高の推移(2014年〜2023年)→・我が国の対外・対内直接投資は、米・欧・アジアとの関係において、いずれも残高が増加。各国との投資を通じた連結性も高まっている。 ・2023年末時点において、対外・対内直接投資は、いずれも米国との間の投資残高が最も大きくなっている。 ○地域別に見た我が国の対外・対内直接投資残高→・対外直接投資残高は、2014年の142.0兆円から2023年の307.7兆円へと増加(+116.7%増)。米国向けが最も増加(+58.9兆 円、+128.8%増)。 ・ 対内直接投資残高は、2014年の23.7兆円から2023年の50.5兆円へと増加(+112.7%増)。アジア及びその他からの投資の増加が顕著。 ○我が国の対外直接投資の増加の効果→・我が国企業の海外で投資収益は大きく増加。・国内投資、雇用者報酬は、伸び悩む。株式等の保有が限定的な家計は、増加する海外収益を十分に享受できていない可能性。 ○実質賃金上昇率の国際比較→・実質賃金の変化について国際比較を行うと、我が国は、労働生産性の上昇が限定的であることに加え、交易条件が悪化し、実 質賃金を押下げ。実質賃金を増加させるためには、生産性向上に加え、交易条件の改善に向けた取組も必要。 ・近年は、輸入物価の上昇により、交易損失が拡大している一方で、海外からの受取(海外直接投資の再投資収益等)が増加。 ◎資料2グローバル対応について 2025年4月21日 十倉雅和 中空麻奈 新浪剛史 柳川範之 米国による関税措置の発動を受け、世界経済の不確実性は急速に高まっている。戦後国際社 会が築き上げてきた自由貿易体制を守るべく、我が国としては、米国に対して措置の見直しを強く 求めていくとともに、自由で開かれた貿易・投資体制の維持・強化に向け、国際社会においてリー ダーシップを発揮すべき。また、こうした状況が成長型経済への移行の妨げとならないよう、適切 なマクロ経済運営を行うべき。以下、提言する。 ↓ 1.安定的なマクロ経済環境の構築→ ・ 米国との貿易・投資関係を深化させてきた我が国経済にとって、今回の関税措置は、米国における日本製品の需要への影響や、米中間の通商摩擦激化等による世界経済の成長鈍化を通じて、下押し圧力となりかねない。また、金融資本市場の変動、サプライチェーンの毀損によるインフレ圧力、欧州の歳出拡大による金利上昇圧力等にも留意が必要である。 ・ こうした状況は、現在、成長型経済への移行の分岐点にある我が国経済にとって、リスクとなり得る。民需主導の持続的な経済成長を実現する基盤として、安定的なマクロ経済環境は極めて重要であり、引き続き、2%の物価安定目標の実現と物価上昇を上回る賃上げの普及・ 定着に向け、適切な経済財政運営を行う。 ・当面の対応として、国内産業・経済や内外の金融資本市場への影響を注視しつつ、関税措置 の影響を受ける事業者に対し、資金繰り支援など適切に政策対応を行うべき。 2.自由で開かれた貿易・投資システムの維持/米国を含めた関係国との関係強化→ ・ 米国による関税措置の動向及びその我が国経済への影響を注視するとともに、引き続き、米 国に対して、措置の見直しを強く求めるべき。 ・ CPTPPを始めとする経済連携協定等により、我が国の貿易取引・投資は増加・多角化してきた。引き続き、こうした経済連携の取組を強化する中で、米国はもとより、グローバルサウスを含めた関係国との経済的連結性を高め、サプライチェーンの強靱化を進めるべき。また、自由で開かれた貿易・投資体制の維持・強化に向け、CPTPPの更なる拡充など、我が国としてリーダーシップを発揮すべき。 3.国内投資・対内直接投資拡大による強靱な経済基盤の構築→・外的ショックに強靱な経済構造を構築するため、国内投資を拡大させ、サプライチェーンの維持・強靱化を図るべき。また、我が国は、対外直接投資に比して対内直接投資の水準が低い。 対内直接投資を促進するため、新地方創生交付金や現行の特区の活用・見直しを含め、海外の高度人材の確保やビジネス・生活環境整備等これまでの延長線上にない取組を実行し、持続的な成長のけん引役としていくべき。 ・ 国内投資・対内直接投資を促進するためには、我が国経済の成長力を底上げし、成長期待を高めることが欠かせない。また、生産性向上と交易条件の改善により、実質賃金を増加させていくことが必要。そのため、物価上昇を上回る賃上げの普及・定着や生産性向上に繋がる省力化・DX投資、更に人への投資や研究開発投資を促す具体的な政策対応について、本年6 月頃に策定予定の骨太方針において示すべき。 ・ 長期・積立・分散投資の重要性の周知広報など金融教育の充実を図りながら、NISAや iDeCoの活用を促すなど、「資産運用立国」に向けた取組を着実に推進することも必要。 ◎資料3参考資料 (地方創生2.0及び持続可能な地方行財政 の重要課題) ○若者や女性にも選ばれる地域の特性に関する特別調査の概要↓ 【調査対象】→@全国約20,000人に、アンケート調査を実施(令和7年3月)。 ※性別、年齢別、地域別のほか、出身地を離れた方か否か、今後の定住意向の有無等でも比較できるよう設計。 Aうち約10,000人は、人口20万人未満で以下の特徴を持つ自治体を重点的に調査⇒・若者・女性にも選ばれている自治体(楽しい地方)→140自治体 @転入超過であり、 ➁平均年齢が低下あるいは全国平均より上昇が緩やか、または、15-64歳人口の女性比率が上昇した自 治体。 ・対照的な状況の自治体 →140自治体 @転出超過であり、 ➁平均年齢が全国平均より上昇した、または、15-64 歳人口の女性比率が低下した自治体。 【調査項目】→生活満足度、生活の楽しさ・面白さ、生きがい・自己実現、人と人とのつながり・自由さ、仕事のやりがい、働きやすさなどの項目について、居住地域の環境や自らの現状、意識を調査。 質問例)↓ ・「楽しさ、面白さ」に関する満足度を判断する際に重視する事項は何ですか。 ・あなたの周りやお住まいの地域には若者(/女性)が活躍しやすい環境が整っていますか。 ・自分の成長に対して積極的に取り組んでいる・取り組めていると感じますか。 ・お住まいの地域や社会の活性化、発展に貢献したいと思いますか。 ・お住まいの地域に住み続けたい理由は何ですか。/・出身地にとどまらなかった理由は何ですか ○「楽しい地方」:若者や女性にも選ばれる自治体の特徴について→•若者や女性にも選ばれる自治体では、自治体の人口規模によらず、生活満足度が平均的に高い。小規模自治 体であっても、創意工夫により、満足度を高められる可能性。 •分野別の満足度のうち、「住宅・住環境」「子育てのしやすさ」「生活の楽しさ・面白さ」で差が大きく、次いで、「教育環境」「家計と資産」「雇用環境と賃金」となっている。 ○多様な一人一人が自己実現ができる環境→•若者や女性にも選ばれる自治体では、自治体の人口規模によらず、他の自治体と比較して、住んでいる地域への愛着がある、自ら選択したやりたいこと(自己選択)ができていると思うと回答する傾向。 •若者や女性にも選ばれる自治体では、「新たなことに挑戦・成長の機会がある」「希望する仕事が見つけやすい」「学びたいことを学べる」といった機会に関する項目のほか、「若者が活躍できる環境が整っている」など、自己実現を後押しする項目のスコアが高い傾向。 ○都市出身の移住者の生活満足度と生活の楽しさ・面白さに影響する要因→・定住者(出身地と居住地が同じ都道府県)と都市出身の移住者の生活満足度を比較すると、都市出身の移住者の生活満足度が高い傾向。また、生活の楽しさ面白さの満足度についても同様の傾向。 ・都市出身の移住者における生活の楽しさ・面白さに影響する要因についてみると、何度でもチャレンジでき、 多様な働き方ができることが強く影響する傾向。 ○若年女性が地域の10年後に明るい見通しを持つ自治体の例→・若者や女性にも選ばれる自治体では、自治体の人口規模別にみても対照群の自治体と比較して、自身が現 在住んでいる地域の10年後の未来が明るいとする傾向。 ・若年女性の「地域の10年後の見通し」が、比較的高い自治体の例は以下の通り。 ・特徴的な取組を推進している市町村を増やすような施策や支援を強化・拡充するべき。⇒埼玉県 滑川町などの自治体名特徴あり。参照。 ○質の高い産業・雇用の創出→・若者や女性にも選ばれる自治体では、就業率、開業率が高く、経済・財政が安定している傾向。 ・就業率、共働き家事時間などについて、若者や女性にも選ばれる自治体の方が、男女間の格差 が相対的に小さい傾向。 ○(参考)仕事のやりがいとWell-beingに関連するKPI→・若年層(39歳以下)及び女性ともに、「やりがいを感じて」働いている者は、「やりがいを感じずに」働い ている者と比べて、生活満足度が高い傾向。 ・Well-beingを向上させていくためには、就業率などの量的指標だけではなく、やりがいを持って働くなどの 質的指標をKPIとして設定・推進していく必要。⇒Well-being関連の基本計画等 (Well-beingに関係するKPI・参考指標を設定)。 ○(参考)国民が抱える不安について→•日常生活で悩みや不安を感じている人の割合は、過去と比べて高い水準。国民の不安や悩みの内容については、「自分の健康について」「老後の生活設計について」「今後の収入や資産の見通しについて」などが上位。 •自然災害に対して不安を感じる国民は7〜8割にのぼる。 •5割以上の多数の人が「備え」を行っている項目はゼロ。東日本大震災以降、防災意識が高まるものの、近年はやや 低下傾向。 ◎資料4持続可能な地方行財政の構築の検討に向けて 〜市町村類型別の経済・財政に関する簡易推計〜 •「経済・財政・社会保障に関する長期推計」(2024年4月)において、長期にわたり 実質成長率1%を上回る成長の確保と、社会保障の給付と負担の改革を継続することで、マクロで経済・財政・社会保障が長期的に安定的に推移する姿が示された。 • その後、自治体毎の人口推計も更新された中で、2024年12月3日の経済財政諮問会議において、「自治体・地域のタイプに即した長期的な経済・財政の推計を示しながら、タイプ毎の課題に対するきめ細かな支援を強化すべき」と民間議員から提言されたところ、議論の素材として本推計を示す。(対象期間:〜2050年度)。 • 個別の自治体の詳細な将来推計はそれぞれの自治体の事情に即して行われるべきもの である。 本推計は個別の自治体に関する経済・財政の姿を詳細にみるという趣旨ではなく、 議論の素材として自治体の類型別の傾向を見る趣旨で、経済成長、歳入・歳出の推計を一定の仮定の下で機械的に行っており、個々の数値については相当の幅をもって理解する必要がある点に留意が必要である。 2025年4月21日 内閣府 ○市町村類型別の経済・財政に関する簡易推計 概要 ○手法→・ 経済・財政・社会保障に関する長期推計(以下「マクロ推計」)における経済・財政の姿と整合的になるよう、自治体別の人口推計(〜2050年度まで)に基づき、簡易的な想定を置くことで、 自治体毎の仮想的な経済成長率 を求める。 ・ マクロ推計における財政の推計と整合的な方法で、自治体毎の仮想的な経済成長率等を基に、 物価・経済動向に連動して機械的に推計し、自治体の規模別※に平均をとり、歳入・歳出を財政の姿を確認する。 (※個別の自治体の詳細な将来推計はそれぞれの自治体の事情に即して行われるべきである。 本推計は個別の自治体に関する経済・財政の姿を詳細にみるという趣旨ではなく 、議論の素材として 自治体の類型別の傾向を見る趣旨で、経済成長、歳入・歳出の推計を一定の仮定の下で機械的に行っており、個々の数値については相当の幅をもって理解する必要がある点に留意が必要)。 ○推計結果概要→・ 将来にわたり実質成長率が 0%近傍の「過去投影シナリオ」において、現行の財政調整の制度等を前提に簡 易的に延伸した場合、規模別平均では、主に以下の要因により、東京23区以外は追加調整額が生じる(基礎的財政収支(PB)赤字に相当し、追加的な財政調整が必要になる)。⇒・ 小規模自治体:人口減少に伴う固定的な経費の歳出に占める割合の増加と税収等の伸びの弱さ、・ 大規模自治体:高齢化に伴う民生費(老人福祉費等)の増加、・東京23区:人口増加による歳入の伸びが高齢化に伴う民生費の増加を上回り歳出余力(PB黒字に相当)が拡大。 ・長期にわたり実質成長率が 1%を上回る「成長移行シナリオ」と、国の社会保障改革を組み合わせた 場合、 全自治体平均では追加調整額は解消し、規模別平均でも、小規模自治体以外は追加調整額が生じない姿。 追加調整額が解消されない小規模自治体においては、例えば、人口動態に即した歳出効率化(本推計では 人口変化割合の1/4程度)を行うことで追加調整額が解消される。 ・いずれのシナリオでも、東京 23区の歳出余力は拡大。東京23区のPB黒字(歳出余力)の総和は、 過去投影シナリオでは、他の全ての市町村のPB赤字(追加調整額)の総和と同規模になり、 成長移行シナリオでは、他の全ての市町村のPB黒字(歳出余力)の総和を上回る。 ○人口前提とPB収支の概要→人口変化率・寄与度(2020年→2050年)、PB収支(現状及び2050年度値)※東京23区はいずれのシナリオでも黒字が拡大 参照のこと。 ○現状(2022年度)と推計結果(2050年度)過去投影シナリオ・改革なし→•現状では、規模別平均で、基礎的財政収支に準ずる歳入(PB歳入)が、同歳出(PB歳出)を上回る姿。 •将来にわたり実質成長率が0%近傍の「過去投影シナリオ」において、現行の財政調整の制度等を前提に簡易的に延伸した場合、2050年度における規模別の平均では、 主に以下の要因により、東京23区以外は追加調整額が生じる(PB赤字に相当し、追加的な財政調整が必要になる)。⇒ ・小規模自治体:人口減少に伴う固定的な経費の歳出に占める割合の増加と税収等の伸びの弱さ、・大規模自治体:高齢化に伴う民生費(老人福祉費等)の増加、 ・東京23区:人口増加による歳入の伸びが高齢化に伴う民生費の増加を上回り歳出余力(PB黒字に相当)が拡大。 ○推計結果(2050年度)成長移行+社会保障改革(+歳出効率化)→・長期にわたり実質成長率が1%を上回る「成長移行シナリオ」と、国の社会保障改革を組み合わせた場合、全 自治体平均では追加調整額は解消し、規模別平均でも、小規模自治体以外は追加調整額が生じない姿。 追加調整額が解消されない小規模自治体においては、例えば、人口動態に即した歳出効率化(ここでは人口変化割合の1/4程度)を行うことで追加調整額が解消される姿となる。 ○歳入/歳出比率分布の推計(※)→※機械的な推計であり、個別の自治体の推計結果は前提や推計手法に大きく依存するため、留意が必要。 •現状投影シナリオでは、財政調整前歳入比率は東京23区以外で低下傾向で、各自治体規模で標準偏差は拡大。 PB歳入比率でも、PB歳出比95%以上の自治体割合は低下し、財政調整機能の強化が必要となる見込み。 •成長移行シナリオ+社会保障改革により、歳入/歳出比率は上昇。 (参考) 市町村推計の前提等↓ ○経済の姿の前提→生産性、労働参加、出生率について、次の想定をおいて試算を実施。 ・TFP上昇率の前提 〜過去の実績を踏まえ、3つのシナリオを想定〜 ・労働参加率の前提 〜高齢層の労働参加率は過去20年間で5歳分若返り。 今後も20年かけて、こうした若返りが継続するケースを想定〜 ・出生率上昇による総人口への影響 〜出生率も3パターンを想定、後年度にかけて影響が大きくなる〜 ・出生率と労働参加率の上昇による潜在成長率押上げ効果 〜中期的には労働参加率上昇が、長期的には出生率上昇が成長を下支え〜 ○長期試算の全体像→・経済の前提は、生産性の向上、労働参加の拡大、出生率の上昇の発現の程度の違いにより、3つのシナリオ を想定。(経済財政諮問会議(2024年2月29日)資料4と整合的な内容)。 ・その経済前提の下で、将来の人口動態を考慮し、2060年度までの財政・社会保障(医療・介護)の姿を試算。⇒<経済の姿><財政・社会保障の姿>参照。 ○社会保障(医療・介護)の姿→・医療・介護費の伸びは、自然体では経済の伸びを上回る見込み。 ・ 医療費について、高齢化や人口要因による伸びは、今後、縮小傾向となる一方、医療の高度化等のその他要因 による伸び(現状では年率1%程度)は、高額医療へのシフト等により、更に高まる可能性も。 ・ 介護費については、高齢化等の要因により、一貫して増加。 ○財政の姿→・経済財政政策については、官民連携による投資拡大やEBPMによるワイズスペンディングの徹底等により、 成長力強化を図り、成長実現シナリオや成長移行シナリオの実現に貢献していくことが重要。 ・ 他方、高い成長の下でも、長期的には社会保障費の増加によりPBの黒字幅は縮小(赤字となる可能性も)。 金利>成長率の下では、PBの黒字幅が一定水準を切ると、公債等残高対GDP比は上昇。 ○社会保障(医療・介護)の給付と負担の改革→・経済の伸びを上回って給付が増加する医療・介護については、毎年の医療の高度化等のその他要因による増加を相殺する改革効果を実現できれば、成長移行シナリオの下で制度の長期的安定性の確保が見通せる結果。・そのためには、DX活用等による給付の適正化・効率化、地域の実情に応じた医療・介護提供体制の構築、 応能負担の徹底を通じた現役・高齢世代にわたる給付・負担構造の見直し等、様々な努力の積み重ねが必要。 ○給付と負担の改革を反映した財政の姿→上記の改革効果が実現できれば、成長移行シナリオの下でも、PBの黒字が維持され、公債等残高対GDP 比の安定的な低下につながる結果。 ○自治体規模別の人口推計について→・社人研「日本の地域別将来推計」によると、人口規模がより小さい自治体において、人口の減少及び高齢化率(65歳 以上人口/15−64歳人口)の上昇がより大きい姿。 •東京23区では、65歳未満の減少は小さく、65歳以上の増加により総人口は増加する見込み。 •生産年齢を20−74歳とし、高齢化率を75歳以上人口と生産年齢人口の比とすると、高齢化率は大幅に低下し、地域差が縮まり、高齢化率の上昇幅は小さくなる。 ○自治体規模別の財政状況:歳入・歳出構造(2022年度)→・平均的には、基礎的財政収支に準ずる歳入(「PB歳入」)は同歳出(「PB歳出」)を上回り、総体としては財政は健全。 •歳出面:小規模自治体においては、総務費・土木費・農林水産費等の割合が大きい。大規模になると、歳出に占める 民生費(老人福祉費・児童福祉費等)の割合が高まる傾向※。 ※自治体の区分(政令指定都市等)によって行政権能が異なることによる影響も考慮する必要。 •歳入面:小規模になるほど、地方交付税交付金への依存度が高く、大規模になると地方税等の収入が増加する傾向。 ○市町村の類型別の経済・財政の推計方法(概要)→・本推計では、マクロの経済・財政と整合的となり、かつ自治体の類型別の財政の状況を簡易的に推計するために、経済・財政について以下のような簡素な仮定を置き、「経済・財政・社会保障に関する長期推計」(以下「マクロ推計」)の経済前提や財政の推計方法を用いて計算する(更なる詳細は次項以降を参照)。 • 各自治体についてそれぞれ推計したのちに、類型毎で平均をとることにより、自治体の規模に応じた特性をとらえつつ、強い特徴を持つ自治体の影響が出にくい推計となっている。個々の数字は幅をもって理解する必要がある。 ○自治体別の仮想的な実質経済の動向について→・労働生産性に係る簡易的な仮定の下、マクロ推計の実質成長率及び自治体別の将来人口推計による各地域の労働力のウェイトを用いて、自治体別の仮想的な実質GDPを求めると、その分布は広がる。 ・ 0%近傍の成長である過去投影シナリオでは、小規模自治体において、将来の実質GDPの平均値は2020年度値を下回る。一方、長期にわたり実質1%を上回る成長移行シナリオでは、将来の実質GDPの平均値は2020年度値を上回る。 ○自治体毎の歳入の推計方法→地方税・地方譲与税・ 地方特例交付金等外6分野説明。 ○自治体毎の歳出の推計方法→児童福祉費(民生費の一部)等9分野説明。 ○(参考)目的別歳出と人口動態との相関について→2022年度と2012年度の目的別歳出と人口の増加率の変化について自治体毎に確認すると、個別の自治体では増減の幅 があるものの、総じてみると、民生費以外の目的別歳出の増減と人口の動向との相関は確認されなかった。 次回も続き「資料5地方創生2.0及び持続可能な地方行財政の重要課題 〜 「楽しい日本」・「楽しいふるさと」の実現に向けて〜」からです。 |