令和7年第2回経済財政諮問会議 [2025年03月29日(Sat)]
令和7年第2回経済財政諮問会議(令和7年3月10日)
議事(1)マクロ経済運営(金融政策、物価等に関する集中審議) (2) 賃金向上に関する特別セッションA https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2025/0310/agenda.html ◎資料1植田議員提出資料 ○2025年1月金融政策決定会合での決定内容→経済・物価は、これまで示してきた見通しに概ね沿って推移、先行き、見通しが実現していく確度は高まってきている ○金融市場、預金・貸出金利→短期金利、長期金利、預金・貸出金利、為替・株価 参照。 ○(参考)雇用者所得・物価→雇用者所得、消費者物価 参照。 ◎資料2 マクロ経済基礎資料(内閣府) ○経済の見通し→・日本経済は、プラス成長が継続する見通し。マクロの需給バランスは、供給制約の局面に入っている。 ・ 今後の持続的な経済成長に向けては、潜在成長率の引上げに重点を置いた政策対応を進めることが必要。→<図1・図2> 参照。 ○海外経済の動向→・IMF世界経済見通し(2025年1月)によると、直近の貿易政策の不確実性指数は急上昇。世界経済のリスクの一つとして、相互関税の賦課など保護主義の高まりが、貿易摩擦の悪化、投資の減少、サプライチェーンの混乱等をもたらす点を指摘。 ・海外経済の不確実性や金融資本市場の変動等の影響には、引き続き、細心の注意が必要。 ○物価動向@(消費者物価上昇率)→・足元では、生鮮食品を含む食料品価格が上昇し、消費者物価(総合)を押し上げ。(※)2025年1月 総合4.0%、生鮮食品除く総合3.2%。 ・民間エコノミスト予測では、消費者物価(コア)は、2025年春にかけて、徐々に上昇幅が縮小し、2025年度を通じてみると、2%程度の安定的な物価上昇になると見込まれている。(※)民間エコノミスト予測平均 2025年度:2.18%、2026年度:1.72%。 ・食料品価格の動向をみると、米類、キャベツ等の価格が上昇している。コメの先物取引価格は、昨秋から年末にかけ 上昇傾向で推移。先行きの注視が必要。 ○物価動向A(予想物価上昇率/為替の推移・見通し)→・企業等の中期的な予想物価上昇率は、2%近傍となっている一方、家計の1年後の予想物価上昇率は、5%超の高い水準。 ・為替について、民間エコノミスト予測では、2025年度は、140円台半ばまで、徐々に円高方向で推移すると見込まれている。 ○賃上げ@→・実質賃金は、ゼロ近傍まで上昇していたが、足元では物価上昇の影響もあり低下。 ・民間エコノミスト予測では、昨年度とほぼ同水準となる5%程度(ベア3%程度)の賃上げが継続することが見込まれている。 ・2025年の春季労使交渉では、労働組合側からは、前年と同水準以上の要求が行われている。 ○賃上げA →・民間機関のアンケート調査によると、2025年度に正社員の賃金改善を見込む企業は61.9%、そのうちベースアップの 実施を見込む企業は56.1%(いずれも過去最高)。 ・ 総人件費は、前年比で平均4.50%の増加が見込まれている(過去最高)。 ・ ただし、企業規模別にみると、正社員の賃金改善を見込む小規模企業の割合は小さい。 ○賃上げB→・中小企業を対象とした日商のアンケート調査をみると、2025年度も約半数の企業が賃上げを予定しているが、引き続き、業績が改善していない中での防衛的賃上げと回答する者の割合が高い。・中小企業庁の「価格交渉促進月間フォローアップ調査」では、発注企業からの申し入れによる交渉が浸透しつつある 一方で、受注企業の意に反して交渉が行われなかったと回答する者も残る。・引き続き、生産性向上支援とともに、2次以降の下請を含め、価格転嫁の円滑化に向けた取組を強化することが必要。 ○賃上げC→・取引先との共存共栄を目指すパートナーシップ構築宣言を行う企業は年々増加。直近の1年間では2万社程度増加。 ・多くの取引先を抱える大企業の宣言も増加してきているものの、全体の22%程度に留まっている。また、業界によって、取組の浸透に差がみられる。 ・価格転嫁を更に進める観点から、引き続き、宣言拡大とその実効性確保に向けた取組を強化していくことが必要。 ◎資料3 マクロ経済運営について(有識者議員提出資料) 2025年3月10日 十倉雅和 中空麻奈 新浪剛史 柳川範之 賃上げと投資がけん引する成長型経済への移行に向けた動きが進んでいるが、足元で物価 上昇率が高まり、長期金利も徐々に上昇している。また、通商政策などアメリカの政策動向も刻々 と変化するなど世界経済の不確実性は増しており、急激な変動への備えを万全にする必要があ る。石破総理が「賃上げこそ成長戦略の要」との考え方を示したが、今が、力強い賃上げモメンタ ムの「定着」や国内投資拡大等を通じ、長年にわたり染みついたデフレマインドを払拭し、成長型 経済への移行を進めるチャンスでもあるとの認識のもと、以下、提言する。 1. 経済動向に対応したマクロ経済運営→消費者物価は今年1月に前年比4.0%増と高い伸びとなり、また、長期金利は15年ぶりの水準まで上昇している。食料品の価格高騰等によるコストプッシュの物価高が消費を下押しするリスクや、金利が今後急激に上昇した場合に企業・家計の投資マインドを悪化させるリスクなど、景気回復が後戻りする可能性に十分注意すべき。また、国債利払い増加などが財政に影響を及ぼす影響にも注意が必要。⇒・物価高対策については、物価動向を注視するとともに、閣僚懇談会(物価高への当面の対応、2月4日)において整理された取組をしっかりと検証すべき。 ・金利上昇下にあっても財政への信認を維持し、長期金利の急激な上昇など不測の事態 が生じないよう、政府は来年度予算修正案に関わる安定的な財源確保に取り組むととも に、早期のプライマリーバランス黒字化実現を含む今後の財政健全化に向けた道筋を提 示すべき。また、全世代型社会保障構築の改革工程に沿って取り組み、社会保障の持続 可能性を確保し中長期的な財政への信認が維持されるようにすべき。その下で、国債の 安定的な発行に向け、市場参加者と丁寧に対話すべき。 2.力強い賃上げと生産性向上による好循環拡大→消費マインドの改善に向けて、賃上げが一時的でなく今後も続くと見通せることが重要。一昨 年・昨年に続き、本年も力強い賃上げを実現し、我が国に賃上げモメンタムを定着させるととも に、それに見合った生産性の向上等を実現することにより、消費の活性化、経済の好循環につな げる。物価、賃金、金利といった動き始めている価格を活用した資源配分を行い、人手不足の程 度に沿った賃金上昇を実現させるなど、成長型経済への移行を実現すべき。⇒・ 力強い賃上げモメンタムを定着させるためにも、我が国が中長期的に目指す経済の姿の 全体像(成長率、生産性2、物価上昇率、賃金上昇率等)を分かりやすく提示し、関係者が 納得できるようにすべき。また、政府の最低賃金引き上げ目標3について、目標到達まで の道筋と生産性向上を含めた政策対応を明確化し、丁寧な議論を行い、多様なステーク スホルダーが取り組める環境を整備すべき。力強い賃上げモメンタムの定着に向けて、労 務費を含む適正な価格転嫁が重要であり、民間での転嫁対策に加え、エッセンシャルワーカーが多い公共調達においても予定価格の算定等に労務費上昇を適切に反映すべ き。 ・ 賃上げを起点に経済のダイナミズムを回復させるためには、賃金を通じて適切な資源配 分が促されることが重要。今後、賃上げの原資を活用しながら、人手不足が深刻な職種に は手厚く配分するなど需給を反映してメリハリある賃上げ4が期待されるが、合わせてリスキ リングと労働移動の円滑化によって労働供給のボトルネックを解消し、賃上げと雇用増が 同時に進む経済を構築すべき。また、賃上げを起点とした成長型経済への構造変化をデ ータで確認するため、行政保有データの活用5を推進すべき。 ・ これまでは女性・高齢者などの労働参加が進み、非正規雇用の割合が上昇してきたが、その過程で労働分配率が低下した。今後は労働参加のペースが鈍化すると見込まれることから、多様な働き方を促進して正規化を進めるとともに、リスキリングの支援など非正規 労働者の賃上げ・処遇改善・能力開発を後押しし、現在、非正規で働いている方の意欲と能力を最大限発揮できるようにすることが重要。・こうした賃上げ・処遇改善に合わせて、省力化投資等の投資拡大による生産性向上が極 めて重要。特に今後我が国経済の成長に大きく寄与する可能性のあるサービス業は人手不足が深刻であり、DX活用による生産性向上のポテンシャルは高い。中小企業の後継者 不足もあって事業継承・M&Aが重要であり、中堅企業は今後の成長のけん引役として期 待されている中で、経営の大規模化を図りながらDX投資を推進するとともに、労働者のAI 実装等のリスキリングを推進すべき。 ◎資料4 マクロ経済運営について(参考資料)(有識者議員提出資料) ○経済動向に対応したマクロ経済運営→・消費者物価は今年1月に前年比4.0%増と高水準となり、食料品の価格高騰等によるコストプッシュの物価高が消 費を下押しするリスクに留意が必要。物価高対策については、物価動向を注視するとともに、政府の取組をしっ かりと検証すべき。 ・金利上昇下にあっても財政への信認を維持し、長期金利の急激な上昇など不測の事態が生じないよう、政府は 来年度予算修正案に関わる安定的な財源確保に取り組むべき。また、全世代型社会保障構築の改革工程に 沿って取り組み、社会保障の持続可能性を確保すべき。 ○力強い賃上げによる好循環拡大・成長力強化→・一昨年・昨年に続き、本年も力強い賃上げを実現し、我が国に賃上げモメンタムを定着させるとともに、それに見合った生産性の向上等を実現することにより、消費の活性化、経済の好循環につなげることが重要。・賃上げを起点に経済のダイナミズムを回復させるには、賃金を通じた適切な資源配分の促進が重要。今後、賃上げの原資を活用しながら、人手不足が深刻な職種には手厚く配分するなど需給を反映してメリハリある賃上げが期 待されるが、合わせてリスキリングと労働移動の円滑化を進め、賃上げと雇用増が同時に進む経済を構築すべき。・これまでは女性・高齢者などの労働参加が進んでいたが、今後は労働参加のペースが鈍化すると見込まれる中で、 リスキリングの支援など非正規労働者の賃上げ・処遇改善を後押しすべき。・賃上げ・処遇改善に合わせて、省力化投資等の投資拡大による生産性向上が極めて重要。経営の大規模化を図 りながらDX投資を推進するとともに、労働者のAI実装等のリスキリングを推進すべき。 ○(参考)中長期試算等に基づいた実質GDP成長率の産業別分解(イメージ)→・過去10年(2012→22年度)と将来期間(2022→34年度成長移行ケース)の実質GDP成長率を産業別に寄与度分解。 ※2034年度の産業別GDPについては、過去のトレンド及びGX、DX、科学技術・イノベーション等の投資の効果を踏まえた 産業別の需要推計(JILPT)をもとに、2025年1月の中長期試算における実質GDPを分割して算出。 ・ 将来期間は、製造業、医療・福祉、研究開発、専門・技術サービス業等、情報通信業がGDPの伸びを牽引(図1)。 ・ 製造業の内訳をみると、一般機械器具・電気機械器具・その他の製造業が成長を牽引する見込み(図2)。 ○(参考)産業別成長率の要因分解(イメージ)→・製造業、医療・福祉、研究開発、専門・技術サービス業等、情報通信業を中心に経済成長が高まっていくものの、 ・製造業、研究開発、専門・技術サービス業等は、労働生産性の上昇が大きく寄与する一方で、 ・医療・福祉、情報通信業は、就業者数の増加が大きく寄与している。 ・ 医療・福祉等、就業者数が大きく増加する産業の労働生産性を高めていくことが課題。 GX、DX、科学技術・イノベーション等への投資を通じて、経済全体のより一層の生産性向上、賃金向上を目指していくことが重要。 ◎資料5賃金・物価・金利の正常化〜第1ステージから第2ステージへ〜 (渡辺努氏提出資料)東京大学大学院経済学研究科経済理論専攻 株式会社ナウキャスト創業者・技術顧問 https://sites.google.com/site/twatanabelab/ 2025年3月10日 ○日米のモノ価格、サービス価格、賃金→日米の格差違いあり。 ○健全な循環への移行→日本版は成長に関する目標は? Q1:正常化はなぜ始まったのか? Q2:正常化の過程で政府が果たしてきた役割、今後果たすべき役割は何か? Q3:正常化の仕上げに向けて今後何が必要か? Q4:正常化の実現で何が得られるのか?→PDCAサイクルを視野に。 ○民間予測機関によるCPI予測(2023年1月時点) ○This Time Is Different! 消費者のインフレ予想→1年後の物価は現在と比べてどうなると思いますか? 参照。 ○This Time Is Different! 春闘での賃上げ→図の参照。 ○経済財政諮問会議・特別セッション(2023年4月18日)議事要旨→最賃の計画化必要。 ○正常化の仕上げに向けて今後何が必要か?→• 消費者のインフレ予想を2%程度の水準でアン カーさせる • 春闘での賃上げ要求のindexation • 政府の管理する価格・賃金のindexation ○賃金・物価・金利の正常化→第1ステージ:2022年春から現在まで⇒「名目」賃金、「名目」金利、物価という、3つの重要な「名目」変数の変調が修復される過程。 第2ステージ:先行き10年またはそれ以上⇒名目変数の修復が生産性など「実質」の変数へと波及する過程。 ・ 慢性デフレ期に機能不全に陥った「価格メカニズム」 が修復される過程。 ○日米の労働生産性と実質賃金→日本では開差あり、アメリカでは開差なし。 ○賃金・物価・金利の正常化が 財政に及ぼす影響↓ • 前提 – 政府債務は1100兆円ですべて名目債務 – 残存期間は9年 – 物価・賃金の上昇率がゼロ%から2%に上昇 – 金利は2%ポイント上昇、新発債の利払いも同じだけ増加。 – 政府の歳出と歳入は2%だけ増加。 • 政府債務の実質減額の計算 – 物価・賃金の上昇率がゼロ%のときの残高は1100×1/(1+r)^9であり、物価・賃金の 上昇率が2%のときの残高は1100×1/[(1+r)^9×(1.02)^9] となる。したがって、政 府債務は両者の比である16%だけ減少(金額にして180兆円)。 – インフレ率ゼロ%の異常な経済では政府債務が過大になっていた。イ ンフレ率2%の 正常な経済への移行により、本来のあるべき水準まで 減ったと解釈すべき。 ○インフレ税のタックスベース→7か国中0.215で最も高い。 次回は新たに「第4回労災保険制度の在り方に関する研究会 資料」からです。 |