第2回今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会(資料) [2025年03月21日(Fri)]
第2回今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会(資料)(令和7年2月27日)
関係者からのヒアリング ・一般財団法人 全日本ろうあ連盟 ・一般社団法人 障害者雇用企業支援協会 ・一般社団法人 日本発達障害ネットワーク ・特定非営利活動法人 全国就業支援ネットワーク https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_53089.html ◎資料1−2(参考資料):一般社団法人 障害者雇用企業支援協会 ○資料1「もにす認定制度」における評価項目の準用について(『(仮称)もにす準拠指標制度』) 25.02.28 ・【提案】「もにす認定制度」における評価項目の一部をそのまま準用する(仮称:『もにす準拠指標制度』→アウトカムの小項目J〜M準用。本制度の適用は、障害者雇用納付金の対象 となる企業(現行は従業員数100人超)に ついては必須とし、それ以外の企業(同100 人以下)については任意とする。評価結果については、毎年のロクイチ報告に 向けた障害者雇用率実績等の申告と同時に 行うものとし、現行の「もにす認定制度」と 異なり、年1回の申請(更新)を必須とする。 ・【Q1】なぜ「もにす認定制度」の成果(アウトカム)の項目のみを使用するのか→定量的な 測定が難しく、企業によって違いの大きい取り組み系項目よりも、定量化しやすく、また共通化しやすい成果系の項目にあえて絞ること。定量化しやすい項目に絞ることで、企業側、審査側(労働局orハローワーク)双方の手間、労力が最小化されること。 全公務部門で 義務化されている 「障害者活躍推進計画」における設定目標(※)項目と内容的に一致しており、関係者間の納得度が高いこと。 ・【Q2】なぜ従業員数規模によって“必須”と“任意”に分けるのか→現行は従業員数100人超の企業が障害者雇用納付金の徴収対象となっているが、これと同じ基準を本制度についても適用することで、 必須となる企業においては、「雇用の量(数)」だけなく「雇用の質」の向上のさらなる動機づけが期待できること(なお、今後障害者雇用 納付金の徴収対象企業の見直しがなされた場合は、本制度の適用対象も同様に見直すべきと考える)。 また、障害者雇用率制度全般にかかる事務作業量の観点からも、対象企業を絞らない方法をとることは非現実的であり、何らかの基準で 仕分けをする必要があると考えること。 ・【Q3】なぜ現行の「もにす認定制度」と異なり、年1回の申請(更新)を“必須”とするのか 本制度は「もにす認定制度」における評価項目の一部をそのまま利活用するものであるが、別紙(資料2)のとおり、その評価結果が障害者 雇用率制度における毎年の経済的なインパクト等(調整金、報奨金、納付金等)に直接影響を及ぼすものであるため、一度認定されれば 余程の事情がない限り取り消されることがない現行の「もにす認定制度」の考え方とは、一線を画す必要があること。 なお、上述の通り現行の「もにす認定制度」には認定取得後の更新審査などPDCAを回す仕組みがセットアップされいないため、いわゆる “認定された者勝ち”のような状態を容認せざるを得ず、制度自体の長期的な品質の担保が十分とは言えない。そこで、本制度の施行と 同時に「もにす認定制度」にも有効期限の考え方を導入することによって、より良い形にブラッシュアップできるのではないかと考える。 ・Appendix(参考資料) 「障害者活躍推進計画の作成手引き」(厚生労働省2023/4)より→「障害者である職員の職業生活における活躍の推進に関する取組の実施により達成しようとする目標」の策定 要領に関する記述(抜粋)⇒@採用に関する目標A定着に関する目標B満足度、ワーク・エンゲージメントに関する目標Cキャリア形成に関する目標 参照。 ○資料2 『(仮称)もにす準拠指標制度』の「障害者雇用率制度」への展開方法について ・【提案】「(仮称)もにす準拠指標制度」の「障害者雇用率制度」への展開方法・2つのイメージ →・〈イメージA付加倍率方式〉⇒もにす準拠指標の反映方法(イメージ)参照。 ・〈イメージB分母調整方式〉⇒一般企業と特例子会社とでは、障害者雇用における様々な側面で特例子会社が 有利になるため、分母調整率に差を設けるべきではないか。 ○資料3 障害者雇用人材移動の構造 ・厚生労働省が公表しているデータを用いて、障害者雇用に関する人材マーケットの構造を想定してみる→2.7%を充足させるために不足する障害者の人数 G−C = ▲12,000人。 法定雇用率2.7%を実現するために雇用可能な障害者はどこにいるだろうか? ○資料4 高齢従業員の福祉的就労へのスムーズな移行実現↓ 1企業等と就労継続支援事業所との間で必要な連携協力方法やそのためのルール→企業と支援事業所が連携する際の具体的な手順やルールを明文化したガイドラインを策定が求められる。このガイドラインには、情報共有の方法、アセスメントの実施手順、緊急時の対応方法などが含まれ、企業と支援事業所の双方がガイドラインを遵守することで、連携の質を向上を期待し得る。 2.雇用、及び福祉分野の関係機関の連携による適切かつ円滑な活用やサポート方法→障害者の福祉的就労への移行を円滑に進めるためには、雇用及び福祉分野の関係機関の連携 が不可欠。⇒以下具体化については参照のこと。 3.併用の期間や併用時の勤務形態等について、必要な条件やルール→一般就労と福祉的就労の併用期間を明確に設定すること。併用期間中は、個別支援計画を策定し、定期的にモニタリングし、併用期間の終了後も、支援を充実させるべく、障害者就業・生活支援センター等の支援機関が 定期的にフォローアップを行い、就労環境の改善や課題解決に取り組むことが望まれる。 また、企業での就労が週5日から減少し、福祉的就労、特にB型事業所で工賃となると、収入 減少への不安が、障害者本人にとって壁となる。この減少分を、一定期間、公費で補助するこ とも検討いただきたい。 ○資料5 障害認定基準の統一化について→【知的障害者の認定基準等が都道府県で異なる現状に関する歴史的経緯に関する認識】 参照のこと。 ◎資料1−3:一般社団法人 日本発達障害ネットワーク ヒアリング報告者:副理事長 大塚 晃 <団体概要> 1.設立年月日:2005年12月3日 2.活動目的及び主な活動内容:(活動目的)発達障害者およびそのご家族の権利と利益の擁護を行うこと (主な活動)発達障害に関する理解啓発・人材育成・政策提言等 3.加盟団体数:61団体(親や本人の会、研究会や学会、職能団体、賛同する企業な ど) 4.会員数:約16万人(加盟団体の会員の総数) 5.法人代表: 市川宏伸(理事長) ○ヒアリング項目⑴ 前回の法改正においても、厚生労働省労働政策審議会障害者雇用分科会等の意見を踏ま え、事業主の責務として職業能力の開発及び向上に関する措置が追加される等、これまで も一定の措置が講じられているが、更なる雇用の質の向上に向けて、どのような対応が求 められるか。 <現状認識、課題等>↓ 障害者雇用の数に加えて、障害者が個々に持てる能力を発揮して活き活きと活躍し、そ の雇用の安定に繋がるよう、障害者本人、事業主、関係機関が協力して障害者雇用の質を向上させることが求められている。発達障害者にとっての障害者雇用の質の向上について 意見を述べる。 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構・障害者職業総合センターの「発達障害者の職業生活への満足度と職場の実態に関する調査研究」(2015年4月)は、発達障害者の就業の現状では、賃金、賞与、就業形態(非正規割合)及び労働時間並びに勤続年数等の雇用形態・待遇等労働条件において、一般労働者と比較すると、厳しい状況に置かれており、離職率も高いことから雇用の安定という観点から様々な問題が生じていると報告している。雇用の質の指標である職業への満足度は必ずしも高くはない。職場への要望では、「分かりやすい指示をしてほしい」36.8%、「仕事が変更になる時は、前もって伝えて ほしい」35.8%、「仕事の優先順位を示してほしい」32.8%などとなっている。このような 記述は、改善策への要望とも捉えられ、発達障害の特性を理解し合理定配慮が適切に提供 されていない現状を示唆しているとも言える。 職業生活の満足度を構成する主要な要素として@ 「周囲の人たちの理解」、A 「仕事のやりがい」、B 「否定的な対応が少ない」の3因子が抽出されており、これらの要素を個々の 発達障害者の支援において、適切に配慮できるかが課題となっている。 <とるべき対応、対応の方向性等> ↓ 上記の調査結果から今後の対応の方向性は、以下の事柄が考えられる。 1.より満足度を高める雇用の質を向上させていくために、発達障害の特性や配慮の内容を職場の人に適切に伝えていくことが重要である。事業所のどのような立場の人に伝えるか、伝える者の専門性などにより、受入れる職場の対応や配慮に異りが生じている状況がある。そのため支援機関は、発達障害者の特性として課題を整理して捉えることが苦手で 言葉で表現しづらい当事者に替わって、困っていることや自身の特性や配慮してほしいことを事業所の雇用管理責任者に適確に伝える役割がある。職場適応援助者(「ジョブコーチ」)の活用を促進していくことが考えられる。その際、発達障害という障害種別に対応 できるジョブコーチの育成が急務であると考える。 2.事業主及び支援者は個々の発達障害者の特性について事前に把握し、職務遂行の指示や職場環境に関し、当該特性に応じた配慮を行うことが望まれる。アセスメントの機能強化が指摘されているが、発達障害に関しては、本人の就労能力や適性の客観的な評価のみならず、人間関係も含めた環境のアセスメントが重要である。本人と共同して就労に関するニーズ、強みを中心にしたストレングスの観点からのアセスメントが必要。その際、本人の就労に関する意思決定支援は、その後の定着の観点からも重要なものとなっている。 3.上記の調査研究によれば、「職場定着の促進のためには、職場内での配慮等受入体制 整備に向け、発達障害の特性に関する正しい知識習得や理解の促進等啓発、職場における 相談・援助者の配置や当該者の専門知識・支援技術の付与、向上が必要であり、専門支援 機関の支援を得ながら、個々の発達障害者の特性に合わせて配慮することが望まれる。」 とされている。専門支援機関のそれぞれの発達障害者に適切に配慮できる体制整備は喫緊の課題である。 また、「これら配慮等は、多様性かつ個別性が高いものであることから、発達障害者の個々の事情と事業主との相互理解の中で提供されることが重要で、事業主は発達障害者等との相談・話合いを踏まえ、発達障害者の特性、ニーズや意向を十分に尊重しつつ具体的な措置を検討し、講ずることが望まれる。」とも報告されている。多様で、かつ個別性が高い合理的配慮を適切に提供できる人材の育成が急務である。 4.発達障害者本人を中心とした多職種連携の支援体制の構築が重要である。行政機関、 専門支援機関、教育機関、医療機関等の関係機関、雇用主等が、発達障害者本人及びその 家庭に対し一層きめ細く、本人を真ん中に置き適時適確な支援により対応できる体制を構 築していく重要である。 ○ヒアリング項目⑵ 障害者雇用率制度等について、合理的配慮等の障害者雇用の促進のための施策と併せ て、どのようにあるべきと考えるか。特に、労働政策審議会障害者雇用分科会等におい ては、以下の論点について、引き続き検討とされているが、どのように考えるか。 @ 手帳を所持していない難病患者や、精神・発達障害者の位置づけについて A 就労継続支援A型事業所やその利用者の位置づけについて B 精神障害者において雇用率制度における「重度」区分を設けることについて C 障害者雇用納付金の納付義務の適用範囲を、常用労働者数が 100 人以下の事業主 へ拡大することについて <現状認識、課題等>↓ 知的障害のある発達障害者であれば、療育手帳の取得ができる。現在、「療育手帳の全国的統一」にむけた動きは、療育手帳の範囲(特に知能指数70以上の取り扱い)の変更による影響を危惧するものである。障害者基本法の精神障害(発達障害を含む)にあるように、発達障害者も精神障害者保健福祉手帳の取得を促し、雇用に結びつく人も増えている。 一方、障害者雇用促進法における障害者の範囲、雇用義務の対象が、身体障害、知的障害又は精神障害(発達障害を含む)があるため、長期にわたり、職業生活に相当な制限を受け、又は所職業生活を営むことが著しく困難なものとされ、実雇用率算定の対象が 手帳所持者となっている。発達障害者の場合、療育手帳か精神障害者保健福祉手帳となるが、必ずしも手帳と結びつかない場合も多い。独立行政法人高齢・障害・求職者雇用 支援機構・障害者職業総合センターの「発達障害者の職業生活への満足度と職場の実態に関する調査研究」2015年4月は、正社員の22.2%は障害者手帳等を所持していない者であり、手帳の取得や就職先への提示にためらいがあり、その背景には一般社会での理 解度・認識度が十分でないことが指摘されている。それまでに診断等に繋がらず、障害者本人の障害認識が無いまま就職後に職場での具体的な状況から困難が生じ、障害を理解・認知する必要性のある事例も報告されている。 <とるべき対応、対応の方向性等>↓ 発達障害については、精神障害が発達障害を含むという規定から、発達障害者にも精神障害者保健福祉手帳を積極的に取得していくことを促進していく必要がある。そのためには精神障害者保健福祉手帳への認知を高めていることが想定されるが、それと同時に、その他の雇用への道を確保していく必要がある。その一つは、医師による診断(書)の取得である。医師の判断には、診断できる医師の数、その信頼性等さまざまな 課題が指摘されてきたが、発達障害者支援法が施行されて 20 年が経過し、地域の医師が、発達障がいの診療や治療や適切な対応などの専門的な研修である「発達障害かかりつけ医研修」が全国で行われている。このような成果から、発達障害の診断の信頼度は高まってきている。手帳を所持していない発達障害者に関して、医師による診断(書)の取得により、雇用制度に結びつく方策を検討すべきである。 また、早期から障害を理解・認知し、発達障害者本人の特性を本人や支援者が理解するための契機とするためにも、就職に当たっても可能な限り手帳の取得を促す支援が重 要であると考える。 ○ヒアリング項目⑶ その他、障害者雇用を更に促進するため、どのような課題や対応が求められると考えるか。 <現状認識、課題等>↓ 近年、高学歴発達障害の就労先が増えてきているのは喜ばしい。しかし、その多くは事務職です。理系の高学歴の人の専門職の障害者雇用はほとんどない。経済産業省はニューロダイバーシティの活用を企業に呼びかけている。高学歴で発達障害のある方の専門職の雇用が増えて欲しいと思う。手帳をもっている方で専門的な知識や技術を持っていても、障害者雇用でその知識等を生かせる職種がない、あるいは非常に少ないということである。 職種の幅がもっと広がるとよいと思う。 <とるべき対応、対応の方向性等>↓ 発達障害者それぞれには、専門知識・技能等を持ちそれを活かせる、専門知識等はなく ても特定の分野であれば力を発揮できるなど、働くことにおいてはさまざまな可能性があ る。本人の努力や企業等からの配慮・サポートによってさらに技能が向上したり、従事で きる職務内容の幅が広がる可能性もある。職務内容は、障害の種類や程度を限定すること を前提に考えるのではなく、専門知障害者の持っているストレングス(強み)を活かせる 職務、企業にも貢献できる職務を新たに創出して選定するなど、柔軟に考えていただきた い。また、発達障害者の障害特性を考慮するとともに、職場環境の改善や就労支援機器の 導入、適切な教育訓練により、発達障害者も、職域を広げていくことができるのではないか。 ◎資料1−4:特定非営利活動法人 全国就業支援ネットワーク ヒアリング報告者:代表理事 藤尾 健二 <団体概要> 1.設立年月日:平成19年6月11日 2.活動目的及び主な活動内容 活動目的:運営理念を「地域で」「連携して」「実践に基づいて」「政策に関与して」とし、「能力開発施設」「障害者職業・生活支援センター」「就労移行」部会ごとに望ましい 職業指導や就業支援のあり方について研究・研鑽しています。また全国における就業支援 機関・組織運営の健全化などについて相互に意見や情報を交換し、わが国の障害のある人 が自立した生活を送れる環境の形成に寄与することを目的としています。 主な活動内容:・定例研究・研修会の開催 ・障害者職業能力開発施設連絡会の開催 ・就労系事業所からの一般就労への在り方を学ぶ研修会の開催 ・障害者就業・生活支援センター事業をより深く考えるための 全国フォーラムの開催 ・就業生活支援講座の開催 ・訪問型職場適応援助者養成研修の開催 ・国の機関の職員に対する障害者の職場適応支援者養成事業 ・地域における就業支援ネットワーク形成事業 3.加盟団体数(又は支部数等):なし 4. 会員数:270(障害者就業・生活支援センター186、能力開発施設 11、就労移行支援事業所41、就労継続支援A型事業所4、就労継続支援B型事業所 7、企業3、個人5、その他13)令和6年5月31日現在 5.法人代表: 代表理事 藤尾 健二 ○ヒアリング項目⑴ <現状認識、課題等> 昨年度、民間企業において雇用率制度がスタートして以来、初めて雇用率を達成したこ とに象徴されるように、企業における障害者雇用の動きはかつてないレベルで進んでいる と言える。特に納付金の対象となる従業員数が100人を超える企業において雇用の動き が顕著である。一方、納付金の対象となっていない従業員数が100人に満たない企業に おける雇用は、十分に進んでいるとは言えない。特に全く障害者を雇用していないいわゆ る「障害者雇用者数0人企業」においては、企業規模および業務内容の選定等、雇用に向 けた困難が多く取り組むべき課題が山積していると感じる。今年度からスタートした「障 害者雇用相談援助助成金」の活用状況および効果の分析が重要になると思われる。 障害者雇用が進んでいる企業においても多くの課題があると考える。知的障害者の雇用 義務化に伴い、障害者雇用のノウハウが蓄積されてきた。しかしながら、その目的は第一 に「雇用率達成」となっている場合が多く、結果として「人を活かす」「その人のやり甲斐や生きがいに直結する労働」と言った人間尊重の雇用という視点が二の次になってしまったのではと感じる。そのため、キャリアアップの視点の欠落や、経済活動に組み込まれていない業務での雇用等が散見される。更には障害者雇用代行ビジネスの台頭や、企業による安易なA型事業所の整備等、雇用促進法の改正によって追加された企業の責務である「能力開発」とはほど遠い「雇用の在り方」が拡がっていることについて、大いに課題を感じる。障害者雇用を「コスト」として捉えているこれらの雇用に従事する障害者は、やり甲斐や生きがい感じることが難しくなり、結果として本来の意味での「働く力」を失ってしまう可能性がある。 <とるべき対応、対応の方向性等> ↓ 障害者雇用率達成を目的に進めて来た現在の施策の「良かった点」「課題となった点」を精査し、今後の方向性を検討することが重要だと考える。その際に「法的には問題がない」「こちらの方がまだ良い」と言った消極的な姿勢ではなく、国として目指すべき方向性を明確に示す必要があるのではないだろうか。 上記のような姿勢で、先ず取り組むべきは「雇用の質」の見える化であると考える。中 小企業においては「もにす認定」があるが、大企業においても「雇用の質」を図る指標が 必要だと考える。ただし、企業において「障害者雇用」は必ずしも優先順位が高いとは限らないので、他の指標とリンクするような動きが必要ではないだろうか。企業規模が大きければ大きいほど、採用活動を左右するのはトップであり、方向性に影響を与えるのは株主や投資家の評価になるのではと考える。例えば近年企業においても意識が高まっている「ビジネスと人権」の視点から、障害者雇用の在るべき方向性を示す等、新たな動きが求められるのではないかと考える。その際に、企業におけるメリットが「障害者雇用率達 成」に直結しないような仕掛けが必要だと考える。「雇用率達成」がメリットになってし まえば、結局現状の打開にはつながらないと考える。 また、障害者就業・生活支援センターの支援対象として妥当か否か等の判断材料に出来 ると有難い。現状障害者就業・生活支援センターの登録者は増加し続けており、マンパワ ー不足が指摘されている。一方で支援機関への登録を必須としているような企業も増加傾 向にあり、本来支援が必要な対象者に十分な支援が行えていないのではと懸念される。 少なくとも雇用場面においては、「能力を発揮するため」「戦力として活躍するため」とい う前提のもとでの支援があるべきではないだろうか。 今年度スタートした「障害者雇用相談援助助成金」の認定事業者の選定および支援方針 にも今後精査が必要であると考える。現在、本事業の目的は「0人雇用企業から雇用企業 へ」という一点にあると考える。そのため、場合によって雇用後に「雇用の在り方の改 善」が必要になることが想定されるが、雇用後の対応は現実的に難しい。障害者雇用にお いては「入口」が重要であることを考えると、認定事業所のサポート内容はかなりの影響 力を持ち、支援企業の「障害者雇用の在り方」を決定すると言っても過言ではないと言え るのではないだろうか。 雇用率が今後も段階的に引き上げられるという事であれば、根本的な課題の整理が必要である。現状、都市部においては企業が障害者雇用を進めようと活動しても求職者からの応募がなかなか得られ無い、いわゆる「売り手市場」の状況にある。障害福祉サービスとの兼ね合いもあるが、引き上げられる雇用率に対して、実際に「働ける(現時点で)」とされる求職者が確保できるのか疑問が残る。生活困窮者、難病患者等「働きづらさがある方」を想定し、障害者雇用率の対象を検討するか、もしくはより重度の障害者の雇用促進 を図るか等の検討が必要であると考える。 ○ヒアリング項目⑵ <現状認識、課題等> <とるべき対応、対応の方向性等>↓ @ 手帳を所持していない難病患者や、精神・発達障害者の位置づけについて 前段として、どのような社会を目指すのかという大きなテーマがあり、このことに対 する国としての方向性(ビジョン)が必要だと考える。そのうえで、目指す社会に向け た手段が現時点では「障害者雇用率」であり、これを活用するか、あるいは新たな制度 によって進めるかという選択になるのではないだろうか。 前者である「障害者雇用率」を活用することを想定するのであれば、何をもってして 対象とするかという課題がある。医療機関の診断をもとに対応するという事であれば、 イメージを持ちやすい。また、目的を細分化した際に「雇用継続」と「新規雇用」によ っても若干アプローチが異なるのではと考える。雇用継続を考える際には、医療と就労 の連携が未だできていないことが多く、この連携強化が必要であると考える。配慮があ れば働き続けることが可能であるのに、「治療に専念」と言うことで離職されることが散 見され、医療機関(医師や MSW 等)との連携で、離職しない支援が必要ではないだと うか。就職支援においては、雇用率算定に含めると促進はすると思うが、明確な基準をどのように設けるか、しっかりとした議論が必要であると考える。 これらの取組みは、あくまでも「目指すべき社会」への過程であり、支援対象である か否かをジャッジするためのものではない。誰もが支援を受けて働くことが出来るよう になり、結果として、あえて手帳を取らなくても良い、社会モデルの移行につながるの ことが望まれる。 A 就労継続支援A型事業所やその利用者の位置づけについて 就労継続支援 A 型事業所においては、様々な課題があると感じる。福祉サービスとし の課題、障害者雇用企業における課題と、検討すべき点は山積しているが、ここでは障害者雇用企業における課題について提示したい。 例えば、A 型事業所を含む事業協同組合により、障害者雇用をせずとも雇用率を達成する仕組みとなっているものもあることを把握している。国としてはLLPによる障害者雇用のグループ算定を認めているが、この例についても何ら問題無しというスタンスな のか問うてみたい。今後対象となる企業の事業規模が100人以下になることにより、 企業単体での障害者雇用は難しいという前提に立ち、LLP による障害者雇用のメリットを挙げる意見があることは承知している。しかしながら、これは「障害者は働けない」という前提に立ってのことであり、そのこと自体を認めることは望ましくないのではと考える。 福祉サービスの視点で考えると、就労継続支援A型事業は障害福祉サービスの中の一 つであり、就労が現時点では難しいという判断の中で選択されるものである。そこから一般就労を目指しステップアップしていくものであるので、晴れて一般就労に繋がった際に雇用率の対象とするのが良いと考える。雇用率算定が利用者の方の固定化を促し、 一般就労を希望する利用者の就労支援が停滞することが懸念される。訓練等給付事業で あることも雇用率の対象とすべきでは無いと考える要因である。 B 精神障害者において雇用率制度における「重度」区分を設けることについて 精神障害者の雇用においては、今年度から「特定短時間労働者」の雇用率へのカウントがスタートし、障害特性に応じた制度が設けられたと感じる。そのうえで「重度」の取り扱いについて検討するということであれば、基本的には賛同する。雇用促進法における「職業重度」の考え方は、働くうえでより困難性が高いという視点であると理解しているので、精神障害者の働きづらさを考えれば、検討されることが自然であると考える。ただし、懸念されることとして、企業における精神障害者への理解の度合いにおいては、「重度=難しい」という誤った認識になる恐れがあるので、発信の仕方には留意が 必要だと考える。また、その判定基準および他の障害者の重度の在り方との整合性については検討が必要だろう。特に知的障害者においては「職業重度判定」そのもののあり様について再考が必要だと考える。現状では本当の意味での重度障害者の雇用は促進されていないと感じる。精神障害者の「重度」の取り扱いを検討する際には、「真に雇用に際して判定が必要な対象者」をしっかりと検証することが必須であると考える。 C 障害者雇用納付金の納付義務の適用範囲を、常用労働者数が 100 人以下の事業主 へ拡大することについて これまでの議論の中で、納付義務の適応範囲となることで、対象となる規模の企業において障害者雇用が促進されてきたことが確認出来ている。そのうえで、現在強化して いる「0人雇用企業」の対応としては、納付義務を課すことが最も有効な手立てである と考える。しかしながら、これは単に「雇用率達成」のみを念頭においた施策であり、 本来目指すべき障害者雇用の在り方には寄与しないのではという危惧がある。 今年度スタートした「障害者雇用相談援助助成金」は、先ずは支援策を講じて取り組む企業を支援することを優先した事業であり、本事業の検証が最優先になると考える。 また、これまで雇用が伸びて来た大企業等においても、雇用率達成至上主義の結果 様々な課題が生まれていることを鑑みると、単に「雇用率未達成=納付金納付義務」という制度の限界を感じる。 例えば、障害者雇用に向けてどのような取り組みをしたか等、別な評価軸も用意したうえで、全く何も着手しなかった場合のみ納付義務の対象とする等、新たな施策が必要ではと考える。 また、拡大し続ける雇用代行ビジネスやA型事業所を利用したグループ算定等への対応についてもしっかりと協議することが先ずは必要なのではないだろうか。 ○ヒアリング項目⑶ <現状認識、課題等>→ ○働ける人材の供給 現在障害者雇用は求職者が不足している状況であると感じる。(地域差はあると認識している)今後の障害者雇用促進においては、働き手をいかに増やすかが課題になる。 ○多様な働き方および生活保障 今年度からスタートした「特定短時間労働者」にも当てはまるが、働くことと生活保障が一体になっていないことが大きな課題であると考える。生活困窮者のうち障害が窺われる方への支援においては、週10時間以上の労働もハードルが高い方が少なくな い。しかし、短時間になればなるほど生活保障の観点から選択がむずかしく、結果とし て生活保護の申請に至るケースが散見される。 ○社会の理解促進 障害者雇用の促進には障害者に対する社会の理解が必須であるが、現状十分かという とそうとは言えない。 <とるべき対応、対応の方向性等>→○働ける人材の供給 現在福祉サービスを利用している障害者の一般就労に向けた支援が重要だと考える。 令和7年10月にスタートする新たな福祉サービス「就労選択支援事業」は、この点に おいて大きな役割を持つと考える。特に令和9年以降の役割は、長く障害福祉サービス を利用している障害者にとって、就職の機会を生む可能性があり、その事業実施には注 目している。 また、雇用する企業がこれまでの「雇用対象者像」を拡げることが求められる。これ までは雇用対象と考えていなかった配慮が必要な障害者の雇用を検討することが必要に なる。その際には、送り出す側である就労移行支援事業所を筆頭とした障害福祉サービ スの支援力向上がセットで必要になるので、一体となって進めることが求められる。○多様な働き方および生活保障「短時間であれば働ける」「ゆっくりで良ければ働ける」という対象者が働くことが出来る社会が求められる。そのためには、企業の努力のみではなく、公的な支援が必要だと考える。仮に「就業時間」「就業日数」「効率が著しく低い労働」によって、収入が生活を維持するに至らない場合、公的な援助が得られる仕組みになれば、より多くの方が 働けるのではないだろうか。 この場合、短時間や限られた就業日数に関しては取り扱いに大きな課題は無いと考えるが、効率が基準を満たさない方の取り扱いには大きな課題がある。現行法における 「最低賃金」である。現在、福祉サービスである就労継続支援B型事業所においても、 最低賃金が適応されていないことが「労働者性」を欠いているとの指摘があり、国際的にも問題視されている。これが企業就労となると、問題は更に深刻になると考える。 しかしながら、現在は効率が上がらないと働けないという状況にあり、何らかの対策を講じなければならないことも事実である。以前、積極的に重度の障害者を雇用する企業の経営者から、不足分を企業に預けて本人に給与として支払うという構想を聞いたこ とがあったが、今となると論外とは言いきれない感がある。 ○社会の理解促進 障害者雇用の促進において、最も有効なのは障害者に対する企業の理解だと考える。 そして、企業の理解促進に大きな影響を与えるのが、個々が受けて来た教育だと感じ る。現在、日本における児童生徒数は減少傾向にあるが、「特別支援学校」「特別支援学 級」「通級学級」等はいずれも増加傾向にある。それぞれに応じた学びの場をという方針 であると聞くが、結果としては「分離」を促進することになるのではないだろうか。 「何でも共に学ぶことが必ずしも正解ではない」という意見を耳にする。もちろんその ような側面もあるが、こと特別支援教育を受ける方以外に関しては、関わりの機会の喪失であることは間違いがない。「障害者=出来ない人」というメッセージを意図せず伝える機会になっていないか危惧するところである。 ◎参考資料1:今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会参集者→14名。 次回は新たに「第9回 子ども・子育て支援等分科会」からです。 |