児童虐待防止対策部会(第5回) [2025年02月04日(Tue)]
児童虐待防止対策部会(第5回)(令和6年 12 月 26 日)
議題 (1)制度改正を要する事項について (2)児童相談所における児童福祉司等の人材確保等について (3)市町村の機能強化に向けた施策の方向性について https://www.cfa.go.jp/councils/shingikai/gyakutai_boushi/8267a354 ◎資料 9-1 新たな児童虐待防止対策体制総合強化プランについて(児童福祉司の増員につ いて) ○児童福祉司の増員について→・児童福祉司については、児童虐待発生時の迅速・的確な対応を確保する観点から、児童虐待相談対応件数の増加等に応じて、全国的な数値目標を掲げたうえで、計画的な増員を図っているところ。 ・これまでに、平成30年12月に策定した児童虐待防止対策体制強化プランに基づき、平成29年度からR4年度までで、約2,530人の増員目 標に対し、2,540人超の増員(H29:3,240人→R4:5,783人)となり、本プランの目標を達成。 ・その後、令和4年12月に策定した「新たな児童虐待防止対策体制総合強化プラン」(新プラン)において、令和6年度末までに1,060人程 度増員し、6,850人とすることを目標としたが、令和6年度は6,482人となる見込みであり、目標に達していない状況(実績は700人程度の増)。 ・今般、令和7年度及び令和8年度の目標を定めることとするが、依然として児童虐待対応件数が高い状況にあること(R4年度:214,843 件)や、現在の増員状況も踏まえ、令和8年度までに910人程度を増員し、7,390人とすることを目標とする。ただし、令和7年6月より施 行される一時保護開始時の司法審査の導入の状況等も踏まえ、必要に応じて新プラン期間中に目標値の見直しも引き続き検討。 ◎資料 9-2 新たな児童虐待防止対策体制総合強化プランについて(児童相談所の人材確保・ 育成・定着について) ○「新たな児童虐待防止対策体制総合強化プラン」に基づき児童相談所の体制強化を図るため、人材確保の取組とともに、勤務環境の改善や職員のメンタルケア等(組織マネジメント)を通じた職員の定着と資質向上を着実に進めていく。⇒各児童相談所の課題に応じて活用できる国の支援メニューをよりわかりやすく示すとともに、 好事例の積極的な横展開等により自治体の取組を促進。 児童相談所の組織マネジメントを推進するための事業メニュー 参照。 ◎資料 9-3 新たな児童虐待防止対策体制総合強化プランについて(本文) 令和4年 12 月 15 日 (令和5年 12 月 26 日 改定) (令和6年 12 月 23 日 再改定) 児童虐待防止対策に関する関係府省庁連絡会議決定 1.目 的→児童虐待防止対策については、これまで「児童虐待防止対策の強化に向けた緊急総合対策」(平成 30 年7月 20 日児童虐待防止対策に関する関係閣僚会議(以下「関係閣僚会議」)決定)、「児童虐待防止対策体制総合強化プラン」(平成 30 年 12 月 18 日児童虐待防止対策に関する関係府省庁連絡会議(以下「関係府省庁連絡会議」)決定)、 「『児童虐待防止対策の強化に向けた緊急総合対策』の更なる徹底・強 化について」(平成 31 年2月8日関係閣僚会議決定)、「児童虐待防止対 策の抜本的強化」(平成 31 年3月 19 日関係閣僚会議決定)等も踏まえて、取組を進めてきた。 しかしながら、全国の児童相談所における児童虐待相談対応件数は依 然として一貫して増加しており、虐待により死亡する事件は後を絶たない。このような状況を受けて、令和4年6月の通常国会で成立した児童 福祉法等の一部を改正する法律(令和4年法律第 66 号。以下「令和4 年改正児童福祉法」)や令和5年4月からのこども家庭庁創設も踏まえた新たな総合的な対策である「児童虐待防止対策の更なる推進 について」(令和4年9月2日関係閣僚会議決定。以下「更なる推進」)を策定した。 また、昨今いわゆる宗教2世に対し、宗教の信仰を理由とする児童虐待への対応の必要性についても指摘されているところ。 このような状況も踏まえ、児童相談所や市町村の体制強化を計画的に進めるとともに、児童虐待防止対策を更に進めていくため、児童虐待防 止対策体制総合強化プランに代わり新たに「新たな児童虐待防止対策体 制総合強化プラン」を策定する。 児童虐待防止対策の強化に向け、国・自治体・関係機関が一体となっ て必要な取組を引き続き強力に進めていく。 2.対象期間 本プランの対象期間は、令和5年度から令和8年度までとする。 3.児童相談所の体制強化 (1)児童福祉司の増員→児童虐待発生時の迅速・的確な対応を確保するとともに、家庭養育 の推進、市町村の相談支援体制の強化を図るため、児童福祉司の配置 標準のうち、児童虐待相談対応件数に応じた加配について、自治体ご との人口1人あたりの児童虐待相談対応件数の差異が拡大している 状況をより適切に考慮したものに見直す(注)とともに、こども・保護者等への指導等を行う児童福祉司について、令和8年度末までに全 国で 1,610 人程度増員する(令和4年度:5,780 人程度)。 (注)加配の基準となる人口1人あたりの児童虐待相談対応件数について、全国平均 により算出される人口1人あたりの件数から、人口1人あたりの件数が標準的な 自治体の人口1人あたりの件数に改めることとする。 【目標】令和4年度 5,780 人程度 → 令和8年度 7,390 人程度(+1,610 人程度) (2)スーパーバイザーの増員→ 児童福祉司の職務遂行能力の向上等を図るため、他の児童福祉司 の指導・教育を行う児童福祉司(スーパーバイザー)について、児童 福祉司の増員に応じて増員する(児童福祉司の増員の内数)。 【目標】令和4年度 960 人程度 → 令和8年度 1,350 人程度(+390 人程度) (3)児童心理司の増員→ 虐待等により心に傷を負ったこどもへのカウンセリング等の充実 を図るため、心理に関する専門的な知識・技術に基づき指導を行う児 童心理司について、令和8年度までに全国で 950 人程度増員する(令 和4年度:2,350 人程度)。 【目標】令和4年度 2,350 人程度 → 令和8年度 3,300 人程度(+950 人程度) (4)弁護士の配置等→ 令和4年改正児童福祉法に基づく一時保護開始時の司法審査が令 和7年度から導入されることも踏まえ、弁護士の配置や弁護士業務の 補助職員(いわゆるパラリーガル)の活用等により、引き続き児童相談所の法的対応体制の強化を図る。 (5)一時保護の体制強化→ 令和4年改正児童福祉法に基づき定めた一時保護施設の設備・運営に関する基準に基づき、こどもの身体的、精神的及び社会的な発達のために必要な生活水準が確保されたものとなるよう取り組む。 一時保護施設の新設や増改築等の整備について、令和3年度補正予算で積み増した安心こども基金を活用し、自治体が定員超過解消計画を策定し、国が承認した場合に補助率を嵩上げする(1/2→9/10)こと により、一時保護施設の定員超過解消を図る。 (6)児童福祉司等の負担の軽減→ 児童相談所における AI の活用等による児童福祉司等の業務負担の 軽減を図るとともに、業務フローの全体の効率化を行っている先進事例の横展開を図る。 児童相談所の職務の特殊性に鑑みて、職員のメンタルケア等による 職場環境の改善などにより、職員の職場定着を図る。 令和7年度からの一時保護時の司法審査導入においては、児童相談所における具体的な運用方法を示すマニュアルを整備するとともに、 一時保護の対象となる児童や親権者等の特定に必要な戸籍謄本の取 得について、広域交付の公用請求の活用などにより、児童福祉司等の 業務効率化を図る。 (7)人材の採用・育成・定着支援等→ 更なる推進、こども大綱(令和5年 12 月 22 日閣議決定)、こども 未来戦略(令和5年 12 月 22 日閣議決定)等に基づき、人材の採用・ 育成・定着支援、専門人材の活用等を進める。 4.児童相談所の専門性強化→ 児童福祉司や児童心理司など児童相談所の職員について、研修の実施等により専門性の向上を図る。 令和4年改正児童福祉法により創設されたこども家庭福祉の認定 資格が多くの方に取得され、児童福祉司として任用が進むよう取り組む。 5.市町村の体制強化 (1)こども家庭センターの全国展開→ 令和4年改正児童福祉法により創設されたこども家庭センターに ついて、全市町村が令和8年度までに全ての妊産婦、子育て世帯、こどもへ一体的に相談支援を行う体制を整備できるよう取り組む。 (2)要保護児童対策地域協議会の強化→ 民間団体との協働を進めるなど地域ネットワークの更なる強化を図る。 サポートプランの活用や関係機関との連携強化を通じ、こどもや 家庭への支援に当たっての適切なアセスメントの実施を推進する。 6.市町村の専門性強化→ 統括支援員やこども家庭支援員などこども家庭相談に対応する職員について、研修の実施等により専門性の向上を図る。 市区町村においてこども家庭相談に対応する職員の専門性向上を 図るため、令和4年改正児童福祉法により創設されたこども家庭福祉 の認定資格の取得が進むよう支援する。 7.その他児童虐待防止に向けた必要な取組→ 1〜6に掲げるもののほか、更なる推進等に基づき、必要な取組を 着実かつ強力に進める。 8.本プランの見直しの検討→ 令和4年改正児童福祉法による一時保護開始時の司法審査の令和 7年度からの導入の状況を含め、更なる推進等を踏まえ、必要に応じ、 本プランの見直しを検討する。 ◎参考資料1 令和6年度補正予算の概要(虐待防止対策課関係) ○児童相談所等におけるICT化推進事業→児童相談所等におけるICT化を推進し、業務におけるビデオ通話やテレビ会議、タブレット端末等の活用が全国的に展開されるよう促進する とともに、業務負担の軽減を図る。⇒事業の概要、実施主体等 参照。 ○児童相談所のシステム情報連携基盤構築事業→児童相談業務に関して国が構築等を行っているシステムと児童相談所が導入している独自システム間の連携を行い、効果的かつ効 率的なシステム運用を行うととともに、現場職員の業務負担軽減に資する情報連携の仕組みを全国的に構築する。⇒事業の概要、実施主体等 参照。 ○児童相談所と警察との児童虐待に係る情報共有システム構築事業→児童虐待事案への迅速・的確な対応のため、児童相談所・警察間において、児童虐待に関する事案等について速やかに情報共有を行うほか、警察 本部及び各警察署(以下「警察署等」という。)に児童相談所システムに対応する端末を設置することで、児童相談所と警察がリアルタイムに情 報共有できるシステムを構築する。⇒事業の概要、実施主体等 参照。 ○こども家庭センター設置・機能強化促進事業→令和4年改正児童福祉法により設置が努力義務となった「こども家庭センター」について、未設置の市町村(全体の約5割)での設置を促すととも に、設置済み市町村においても、母子保健と児童福祉の一体的支援、サポートプランの活用、家庭支援事業等の構築・活用などの機能の充実を促し、 市町村における妊産婦・こども・子育て家庭への包括的・計画的な支援の円滑な実施を推進する。 これらの取組を通じ、令和8年度末までにこども家庭センターの全国展開等を図る。⇒事業の概要、実施主体等 参照。 ○ヤングケアラー支援体制強化事業 (ヤングケアラー実態調査・研修推進事業(実態調査・把握、実態調査スタートアップ加算分))→子ども・若者育成支援推進法の改正により、「家族の介護その他の日常生活上の世話を過度に行っていると認められる子ども・若者」として、国・地方 公共団体等が各種支援に努めるべき対象にヤングケアラーが明記された(令和6年6月5日成立、令和6年6月12日施行)。 ・ また、施行通知※1では、特に市区町村においては、支援を必要とするヤングケアラーを早期に把握し、個別具体的な支援につなげるために、記名式など 個人が把握できる方法による実態調査を定期的に(少なくとも年に1回程度)行うことが重要としている。 ・ 実態調査・把握の実施自治体数は412自治体に留まる(令和6年2月29日現在)ところ、ヤングケアラーの早期把握を目的とした定期的な「実態調査・ 把握」が全国で実施されるよう、従来の補助に加え必要な経費の補助を行う。⇒事業の概要、実施主体等 参照。 ○ヤングケアラー支援体制強化事業(ヤングケアラー支援体制構築事業(都道府県における18歳以上のヤングケアラー支援分))→地方自治体におけるヤングケアラーの支援体制の構築を支援するため、地方自治体に必要な経費の補助を行う。 ・ 子ども・若者育成支援推進法改正により、ヤングケアラー支援の対象年齢はおおむね30歳未満(状況により40歳未満)とされ、18 歳前後での切れ目ない支援が重要であるが、活動圏域が広域になる若者世代は、主に都道府県において、オンライン相談を含む個別 支援や市区町村へのつなぎ、ピアサポートの体制整備等が望まれることから、全国で18歳以上のヤングケアラーへの支援が展開さ れるよう、都道府県にヤングケアラー・コーディネーターを配置するための補助を創設する。⇒事業の概要、実施主体等 参照。 ○児童相談所におけるSNSを活用した全国一元的な相談支援体制の構築に係るシステム→児童虐待防止の観点から、こどもや家庭がより相談しやすくなるよう、SNSによるアカウントを開設し、相談内容を各自治体(又は各児童相談 所)に自動的に転送した上、相談に対応する仕組みを構築する。(令和5年2月より順次、運用を開始)⇒事業の概要、実施主体等 参照。 ○児童相談所におけるAIを活用した全国統一のツールの開発 (音声マイニング機能の構築等)→・増え続ける児童虐待相談への対応により児童相談所の業務負担が大きくなる中で、AIやICT技術を活用し、職員の負担を軽減していくことが重要。 ・ 業務負担軽減効果の高い全国統一のツールを作成することで、児相職員が保護者やこどものケースワークに専念できる環境づくりを構築する⇒事業の概要、実施主体等 参照。 ◎参考資料2 委員等名簿 ○こども家庭審議会児童虐待防止対策部会 委員等名簿→19名。 ◎委員等提出資料 ○2024.12.26 第 5 回部会 意見書 倉石哲也(武庫川女子大学) 児童虐待対応を巡る諸課題と児童福祉行政の推進に向けた方向性について取りまとめを いただき感謝いたします。 1.資料1 一時保護の委託(緊急時等)先の認定→ 里親に類する委託先として、「登録を考えている者」、「民生委員・児童委員」、「主任児童 員」、「ファミリー・サポート事業登録者」、「地域における子育て支援事業等従事者」他、子ども及びその家庭支援に関する経験を一定期間経験有する者として、児童相談所長が認め る者としてはどうか。 2.資料2(P3 青色「討議事項」への意見) (1)児童福祉司による書類作成等事務業務→ 行政職員として事務業務のスキルを向上させることキャリアラダーに含めるべき必須項目と考えるが、向上されるには教育や支援が必要となる。 2 年目以上の児童福祉司は特に書類作成業務に負担が高くなる。またSVクラスは裁判所、 措置審査部会等への提出書類作成に膨大な時間を要し、肝心のケース対応に十分な時間を確保することに支障を来す怖れがある。 平日はケース対応に追われるため、書類作成が 18 時以降、或いは週末に行っている職員も少なくない。 このような喫緊の課題を解決し、児童福祉司の離職を防ぐ書類作成等を助言・指導し、時 には代行する事務職員の配置が必要。児童福祉司の数により配置目安を示す等を検討してはどうか。 (2)児童福祉司研修→ ケース対応、虐待等困難ケースの理解と対応、市町村との連携、面接技術等と同様に、「困 難と向き合う際の心構え」(新任〜5 年未満)、「人材管理(リーダーシップ)」「チームワーク」「職場環境の在り方」(5 年以上)を検討してはどうか? 研修スタイル(内容)は自治体の状況により固有性を尊重すべきだが、「座学」「演習」に 加え「プレゼンテーション」を行う等の様々な工夫を取り入れてはどうか。(自治体研修の 好事例の収集) 3.資料3 (1)統括支援員研修の実施 現在子どもの虹あかし研修センター等で統括支援員基礎研修(オンデマンド)で実施されており、内容的にも充実し基礎的な考え方が理解できる仕組みとなっている。 一方で、多くの統括支援員が知りたいことは「他市・隣接自治体の状況」である。例えば サポートプランの作成や手交の在り方などである。オンデマンドによる研修も重要である が、対面による情報交換は立ち上げ期には極めて重要な意味を持つ。 都道府県が市町村支援として「統括支援員実践研修」ができるよう、研修実施方法(ロール プレイ等含む)のモデル案を提示できるようにしていただきたい。 (2)サポートプランの作成と手交→ サポートプランの作成基準(ケースによる)、項目、手交の判断等は市町村によりばらつ きが極めて大きい。センター内でも母子保健分野は手交に対象者の抵抗が少なく、児童福祉 分野は抵抗が強いといった意見も聞き及んでいる。(「担当する 1 ケースについて記載」から試行する自治体がある) 国としてサポートプラン作成及び手交判断の基準について、市町村が活用できるようよ り具体的な手続き(モデル例等)を示すことを検討してはどうか? 以上となります。 ○第5回こども家庭審議会児童虐待防止対策部会 意見 増沢 高(子どもの虹情報研修センター) 1.一時保護中の児童の面会通信等制限→・第12条の改正案について、「児童の心身に有害な影響を及ぼす恐れが大きいと認 めるとき」という条件が付与されたことについて、基本的に賛成ですが、有害な影響 を及ぼす恐れについては、科学的な知見に基づいて判断すべきであり、児童相談所等 がこれらの知見について十分な認識と理解を有していることが前提となります。これ らについてのガイドラインの作成と既存の研修の見直し、充実を図るべきと思いま す。 2.保育所における虐待対応の強化→ 保育所等の職員も施設職員同様に施設内での不適切対応について、通告義務等を設けることに異論はございませんが、それだけでなく、保育所に通う要保護・要支援児童等を保育する上での保育士の専門性の向上が必要で、そのために保育士の養成や資格 取得後の研修等の見直し、改訂、強化を図るべきと考えます。虐待を受けた子どもたちは、アタッチメント形成の問題、トラウマ、誤学習等により、通常の保育場面での適応を難しくさせ、これらのことが保育士の不適切な対応の契機となる可能性があります。しかし、保育士の養成や研修等において、これらのテーマが十分に扱われていないのが現状です。保育士がこうした専門性を獲得することは、虐待等不適切保育の 予防につながるとともに、保育の場が虐待等の影響を受けた子どもの回復の場とな り、健全育成へとつなげる重要な役割を担うことにつながります。 3.児童相談所の人材確保・育成・定着について→ 基礎データにある「業務内容・量等に対する悩み・不満等」について、さらに精査が 必要と考えます。児童相談所職員の疲弊の背景に、支援対象となる子どもや保護者対 応における困難さがあります。支援対象の多くは、トラウマや精神的課題を抱えてお り、このことが、支援関係の構築の困難さ、支援者に向けられる不信感、恐怖、怒り となって職員のメンタルヘルスを脅かします。さらに児童相談所に対しては社会から 厳しいまなざしが向けられており、それを恐れる職員の緊張感は増大しています。こうした状況に、業務量の増加等の負荷がさらに重くのしかかった極めて過度なストレス職場となっています。そのため、職場定着の課題として挙げられている相談しやすい職場環境の整備、職員への精神的ケア、モチベーションの維持は極めて重要な視点と思いますが、これらの課題解決に向けては、さらに児童相談所に対する社会的認識への働きかけ、支援者とのトラブルへの組織的対処、失敗も含めて話せる心理的安全 性が保障された職員関係、リーダーシップの在り方など健康な組織文化の在り方につ いて研究、検討を深めていくことが必要と思います。 4.市町村の機能強化に向けた施策の方向性について (1)サポートプランが形骸化しないこと→ 市町村の機能強化の柱は、児童保護の強化ではなく、早期からの予防的支援にあります。しかし、この点が十分に認識されずに、虐待の通告のあった家庭への安全確認と 注意勧告が主となっているような市町村も少なくありません。重要なのは子どもと家庭との関係構築、ニーズを踏まえた具体的かつ有益な支援の提供のはずです。こうした市町村の向かうべき方向性について、全市区町村への共通理解を促すことが重要と思います。特に都道府県政令市はこうした市区町村の役割を正しく認識し、支援することが重要です。こうした認識が基盤になければ、サポートプランは形式的、形骸化 されることになり、当事者に役立つ支援プランから遠のいてしまうことを危惧しま す。国はこうした認識が定着するようさらなる啓発、後押しが必要と考えます (2)精神保健分野との協働→ 第 4 回の部会でも述べさせていただきましたが、周産期における早期支援の強化を視 野に入れたときに、親の精神的問題への対応が重要となります。虐待による死亡事例の検証報告で 0 歳児死亡において保護者(母親)に精神疾患等の問題が認められる率が高いことは、検証の始まった早い段階から指摘され続けています。新たなこども家庭センターでは、母子保健と児童福祉部門との一体的な対応システムが打ち出されたことは大きな意義があると思いますが、そこに精神保健福祉センターや加害者が通院する医療機関とが加わった周産期支援システムの構築が必要で、こども家庭センターの機能にどのように位置づけていくかの検討と対策が必要と考えます。 ○こども家庭庁 こども家庭審議会児童虐待防対策部会 御中 令和6年12月26日 SBS/AHTを考える家族の会 代表 菅家 英昭 意見書(時保護中の児童の会通信制限等について) 私たちは、身に覚えのない虐待を疑われ、児童相談所による過剰な一時保護を経験した家族が集う団体です。 第4回こども家庭審議会児童虐待防対策部会において、一時保護中の会通信制限等における児童相談所の権限を強化する法改正案が提示されています。そこでだされた法改正案は、これまで行政指導で対応してきた会通信制限等を強制処分でうことができるようにすることで、従来からいわれている違法・不当な児童相談所での対応を「適法化」するための改正ではないかとも感じられ、今回の法改正案がこのまま進むことに強く反対します。 私たちは、虐待を疑われる具体的、合理的な根拠を児童相談所から示されず、また分な調査 がなされることもないまま、「こどもの安全のため」等の抽象的で曖昧な理由でもって、一時保護中の会通信制限等を「長期間」にわたって強いられた経験をしています。昨年には高裁で児童 相談所による長期分離、面会制限が違法であるとの判決も出て、確定しました(阪裁令和5 年830判決)。同判決では「児童の安全や福祉が具体的に侵害される具体的なおそれが あったとはいえない」等として、面会制限の違法性を認めています。これまで過剰で不当な面会通信制限等が常態化してきたことは明らかであり、今回の法改正も前記判決を受けた実務対応の見直しが理由になっているものと思われます。 ところが、今回の改正案は、前記判決でも確認されたような過剰で不当な面会通信制限が行なわれている実態調査や原因の検証がなされないまま、面会通信制限等の判断を児童相談所にのみ 委ね、その権限を強化しようというものです。法事実の調査が分になされずに拙速に議論が 進められていると判断せざるを得ず、強い憂慮を覚えています。 ここで申し上げるまでもなく、親の会通信は、こどもにとっても親権者にとっても重要な 権利(権)です。こどもの権利条約第9条の趣旨から考えても、第三者のチェックをともなった 慎重な判断が求められるところであり、本来は面会通信制限等も司法審査の対象とすべきものです。明市のように面会通信制限等の妥当性を判断する第三者機関を設置している自治体もあります。 法改正案では、強制処分として面会通信制限等ができる要件として「児童相談所が児童の心身に有害な影響を及ぼすおそれがきいと認めるとき」とする案が提示されていますが、こうした抽象的で曖昧な要件を定めて、その該当性の判断をもっぱら児童相談所の判断に委ねるというのでは、従来われてきた過剰で不当な面会通信制限等を防ぐことができるとは思えません。 前回(第4回)においても、複数の委員から慎重な議論を求める意見が出ています。なかに は、過去に不当な面会制限により児童が施設内で亡くなった事例についての及もありました。 こどもの安全のためとされてきた面会通信制限等が、実際にはこどもの権利を違法・不当に侵害 し、不幸にもこどもの命を奪ってもいます。 児童相談所の要望により児童相談所の権限強化を行うといった今回の一方的で拙速な議論の 進め方には、強く反対せざるを得ません。 次回は新たに「一時保護時の司法審査に関する児童相談所の対応マニュアル」からです。 |