労働基準関係法制研究会 第13回資料 [2024年11月06日(Wed)]
労働基準関係法制研究会 第13回資料(令和6年9月11日)
議題 労働時間、休憩、休日及び年次有給休暇について https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_43475.html ◎資料1 労働時間、休憩、休日及び年次有給休休暇 ○最長労働時間規制について ・問題の所在→@ 法定労働時間(1日8時間・週40時間)、時間外労働時間の原則的上限(月45時間・年360時間)、時間外・休日労働時間の上限 (年720時間・月100時間未満・複数月平均80時間)について、過労死防止・健康確保、ワークライフバランスの確保、労働者のキャリアアップなど重層的な意義があると考えられる中で、時間外・休日労働の上限規制の導入後の状況等を踏まえ、上限規制の在り方についてどのように考えるか。また、法定労働時間週44時間の特例措置について、特例対象業種の実態も踏まえどのように考えるか。 A 時間外・休日労働の上限規制以外の手法として、時間外・休日労働時間等の企業外部への情報開示など市場誘導的な手法により短縮 を図ることや、企業内部への情報開示により自主的な短縮を促すことなど、ソフトローでその短縮等を図ることについてどのように考えるか。 B 管理監督者等の規制の適用除外や、みなし労働時間制、裁量労働制、高度プロフェッショナル制度といった特別規制について、相互の関係を含め、その在り方についてどのように考えるか。各制度の健康・福祉確保措置等について見直しを行う必要があるか。特に、 管理監督者について、適用要件をより明確化することや、裁量労働制、高度プロフェッショナル制度のような健康・福祉確保措置を導 入する必要性について、どのように考えるか。 C テレワークの普及により、相当程度自宅で働いたり、日によって事業場で働いたり自宅で働いたりといった働き方も広くみられるようになってきた中で、こうした働き方によりふさわしい労働時間制度としてどのようなものが考えられるか。フレックスタイム制度や みなし労働時間制など緩やかな時間管理の下でテレワークを行えるようにすることについて、どのように考えるか。 ・前回(第10回・第11回)の議論↓ <時間外・休日労働時間の上限規制>→3論点あり。・ もう少しマイルドな手法として「多様な正社員」の議論のように、契約で対応する形は今はあり得ると思う。 <法定労働時間週44時間の特例措置>→法定労働時間週44時間の特例措置は、基本的に週40時間にしていくべきであると考えるが、支障のある業種についてどう考えるか。 <企業による労働時間の情報開示>→9論点あり。・情報開示については、積極的に義務化していくべき。現在、いくつかの法律で求めている情報開示の仕組みがあるが、見やすさ・わか りやすさの観点からは、統一した基準を作って一つの表にまとまったものがあると良いと思う。 <実労働時間規制が適用されない労働者に対する措置>→2論点あり。・例えば、管理監督者に対して特別の長期休暇を取れるようにするとか、そのような処遇が可能になるくらいの時間的裁量を持っている 人を管理監督者として認める要件にする等の方向性もある。管理監督者自身の健康確保やワーク・ライフ・バランスへの懸念だけでは なく、現在では若い人が管理職になりたがらないという社会問題もある。管理監督者の規制・中身の見直しは必要。 <テレワーク等の柔軟な働き方>→6論点あり。・テレワークのみなし労働時間制の本人同意の撤回について、実際に撤回したときに、厳格な実労働時間の把握がなされプライバシーが 侵害されるとか、在宅勤務を望んでいたのに、在宅勤務を認められず出社を求められるようになるとか、実質的には撤回を選択できな いということになりかねないということで、実効性がある仕組みをどう考えるか。 ○労働からの解放の規制について ・問題の所在→@ 法定休日制度について、現行の変形週休制においては相当長期間にわたって勤務させることが可能であることや、36協定の休日労働 について日数の上限規制が設けられていないことについて、どのように考えるか。 A 休日の特定について、現行法令上定めはないが、時間外労働の上限(月45時間・年360時間・年720時間)には休日労働時間が含ま れないこと、時間外労働と休日労働とでは割増賃金率が異なること、週休2日制が普及していること等を踏まえ、どのように考えるか。 B 勤務間インターバル制度について、現在は努力義務であり、導入企業割合も6% (※)に留まっている中で、制度の導入促進のため にどのような手法が考えられるか。諸外国のインターバル制度はどのような形になっているか。また、つながらない権利の在り方等に ついて、どのように考えるか。(※)導入割合等については第10回・第11回資料p.32〜34を参照。 C 年次有給休暇制度について、取得促進のための取組や、時季指定義務、時間単位取得の在り方、法定労働時間との関係等についてど のように考えるか。 D 休憩について、8時間を大幅に超えて長時間労働をする場合であっても労働基準法上の休憩は1時間であることや、一斉付与の原則 の在り方について、どのように考えるか。 ・前回(第10回・第11回)の議論↓ <休日制度>→4議論点あり。・13日を超える連続勤務というのは、疲労回復がかなり難しくなってくる。予防という観点では、週に1回の休日というのが理想である と思うが、せめて2週間に1回というのが、妥当なところではないか。 <休日制度(法定休日の特定)>→5議論点あり。・法定休日を特定した場合の振替えの議論は、法定休日の変更という問題でもあり、それについてどのような要件で認めるか等も法規律の在り方としては検討が必要。 <勤務間インターバル制度>→6議論点あり。・理想として11時間という考え方がある一方、現実論は別途考える必要がある。どのような設定にすれば受け入れやすい形となるか、検 討する余地がある。 <つながらない権利>→2議論点あり。・つながらない権利について、フランス等で先進的な事例があるものの、会社が違えばつながらない権利の具体的な形もそれぞれ違うと いうくらいに、非常に多様。このため、労使できちんと協議することを義務付けている。基本的には労使で、労働実態を踏まえてきち んと協議をし、ルールを定めて具体的に実現するようにすることとするしかないのではないか。 <年次有給休暇制度>→8議論点あり。・1年間にどのくらい休んでいるかという実態を見たときに、例えば日本は諸外国と比べて祝祭日が多いとか、実際に休んでいる日数で 比較することが有益ではないか。 <休憩>→7議論点あり。・常識的な範囲における使用者の休憩配慮義務のようなものは、労働契約法上、想定しても良いかもしれない。 ○割増賃金規制について ・問題の所在→@ 割増賃金規制の在り方について、労働者への補償と長時間労働の抑制の趣旨を踏まえ、どのように考えるか。 A 副業・兼業の場合の割増賃金について、企業側の負担や労働者への補償、諸外国の状況などを踏まえ、通算管理の在り方をどのよう に考えるか。 ・前回(第10回・第11回)の議論↓ <割増賃金>→6議論点あり。・割増賃金の計算の基礎となる「通常の労働時間又は労働日の賃金」の考え方がはっきりしていない部分がある。立法による対処ではな いかもしれないが解釈の整理は必要 。 <割増賃金(副業・兼業の場合の通算管理)>→8議論点あり。・兼業副業の場合の健康管理のための実労働時間の通算は重要で、各企業が働きかけるべきだということはそのとおりであるが、労働時 間の情報を集める仕組みもなく、労働者本人の自発的な範囲で減らしてくださいと言ったことをもって安全配慮義務を満たせるのかということについては疑問であり、整理が必要。 ○(参考)「これまでの議論の整理」(第6回労働基準関係法制研究会資料)(抄) 1 労働時間、休憩、休日及び年次有給休暇→本研究会では、労働基準法における労働時間の規制を以下の3つに大別し、それぞれについて趣旨目的と、どのように管理 (規制)すべきか検討してきた。 @ 最長労働時間規制⇒労働時間規制は、法定労働時間を超える労働を制限し、法違反に対しては罰則を科す強行法規となっている。現行法では、法 定労働時間、36協定による時間外・休日労働、36協定の特別条項により認められる上限までの時間外・休日労働と段階を持っ て設けられている。 A 労働時間からの解放の規制(労働解放時間)⇒これは、休憩・休日・年次有給休暇・勤務間インターバルといった「労働から解放された時間」の考え方である。労働者の健 康確保、心身の疲労回復や気分転換、仕事と生活との両立のために必要なものとなる。 B 割増賃金規制⇒これは、時間外・休日・深夜の労働の抑制と、それらの労働をした場合の補償のため、使用者に通常の賃金に割増を設け、負 担を求めるものとなる。 1−1 最長労働時間規制 (1)時間外・休日労働時間の上限規制 【働き方改革関連法の施行後の評価に関する意見】→2意見あり。・働き方改革で導入した時間外・休日労働時間の上限規制は、全体の労働時間の縮減に一定の効果を示しているという意見があった。 【今後の議論の方向性に関する意見】→5意見あり。・労働基準法による強行法規での規制のみならず、企業による情報公表など市場誘導的な手法も含めて議論すべきという意見があっ た。 (2)労働時間の意義等 【今後の議論の方向性に関する意見】→10意見あり。具体的な規制を考える際は、罰則付きの強行法規である労働基準法に馴染むもの、労働契約の中で定め、民事上義務関係を構築す るもの、指針やガイドライン等を示し、企業の自主改善を促すものなど、ハードローとソフトローの役割分担や、シンプルで理解し やすいものにすることについても留意する必要があるという意見があった。 (3)裁量労働制・高度プロフェッショナル制度・管理監督者等 【今後の議論の方向性に関する意見】→6意見あり。健康確保に関して、企業が内部の労働者に対して積極的に情報開示を行う仕組みや、労使が労働者の健康確保に向けた改善案を自 発的に議論する場作りを後押しすることを検討すべきという意見があった。 (4)テレワーク等の柔軟な働き方 【働き方改革関連法の施行後の評価に関する意見】→2意見あり。テレワーク中の労働時間管理は、厳格にやっているところもあれば緩やかなところもあるところであり、緩やかな管理は労働者に とって利益がある場合もあり得るため、始業・終業時間の把握や、中抜け時間や始業が遅れた場合の取り扱いなどを、より実態に合 わせやすいものとしていくことが求められるという意見があった。 【今後の議論の方向性に関する意見】→4意見あり。緩やかな時間管理の中でテレワークを行い、中抜け等もある中で、客観的な労働時間がどこまで測定できるかという意見があった。 また、一定の健康確保措置を設けた上で、労使合意で労働時間を定めていくことも考え得るのではないかという意見もあった。 (5)法定労働時間週44時間の特例措置 【今後の議論の方向性に関する意見】→2意見あり。・理美容業界など、業種に特徴的な労働時間の実態もあることから、業種による状況の違いを把握しつつ、一般原則を適用する方向で検討すべきという意見があった。 1−2 労働時間からの解放の規制↓ (1)法定休日制度 【今後の議論の方向性に関する意見】→4意見あり。・疲労回復の程度は休養のタイミングと量に依存するため、週に1回は休日が必要という目安としてのルールは必要という意見が あった。 (2)勤務間インターバル制度 【働き方改革関連法の施行後の評価に関する意見】→2意見あり。・インターバルの時間は科学的にみて11時間を基本に考える方向ではないかという意見があった。また、勤務間インターバルの本来の形は、休息時間が確保されるような終業時刻を維持する(時間外労働を減らす)ことであり、始業時刻を動かすことではないことに留意するべきという意見もあった。 【今後の議論の方向性に関する意見】→5意見あり。・深夜勤務は、常態的に行う場合も不規則に行う場合も健康に影響がある。不規則勤務労働者の健康を確保するため、インターバル を保つ規制をすべきではないかという意見があった。 (3)年次有給休暇制度について 【働き方改革関連法の施行後の評価に関する意見】→2意見あり。・年次有給休暇の時間単位取得については、労使双方にニーズはあるが、制度の本来の趣旨や、労働者の心身の疲労回復効果の面か らは疑問があるという意見があった。また、時間外労働時間の計算との関係も整理が必要であり、拡大には慎重な議論が必要という 意見があった。 【今後の議論の方向性に関する意見】→5意見あり。・時間単位年休では、法定休日・法定労働時間との関係を整理した上でその取り扱いを検討してはどうかという意見があった。 (4)休憩について 【今後の議論の方向性に関する意見】→3意見あり。・休憩時間は、6時間労働につき45分、8時間労働につき1時間という規定があるのみであるため、もっと労働時間が長い場合にこ のままで良いかという意見があった。勤務間インターバルがあれば良いが、義務化が難しい中で休憩時間をどうするかも検討すべき という意見があった。 1−3 割増賃金規制↓ (1)割増賃金の趣旨・目的 【働き方改革関連法の施行後の評価に関する意見】→1意見あり。・割増賃金は、時間外・休日・深夜の労働の抑制と、それらの労働をした場合の補償をその趣旨とするものであるが、実情として時 間外・休日・深夜の労働は広く行われ、割増賃金による抑制効果が十分に発揮されていなかったため、上限規制が設けられるに至っ たと考え得るという意見があった。また、深夜労働の割増賃金は、労働強度が高いものに対して補償的な性質があるが、健康管理の 観点からは、危険手当のような位置づけではないかという意見もあった。 【今後の議論の方向性に関する意見】→3意見あり。・割増賃金の過重労働への補償という趣旨に着目するならば、処遇の問題でもあり、ある程度労使自治に任せても良いのではないか という意見があった。 (2)副業・兼業の場合の割増賃金 【働き方改革関連法の施行後の評価に関する意見】→2意見あり。・労働者の保護の観点からも請負ではなく雇用での副業・兼業をやりやすくする検討をすべきという意見があった。 【今後の議論の方向性に関する意見】→4意見あり。・ヨーロッパの主要国でも、割増賃金について労働時間通算を行う例はないことからも、見直しが必要という意見があった。 次回は新たに「第71回労働政策審議会雇用環境・均等分科会」からです。 |