令和5年第6回経済財政諮問会議 [2023年05月29日(Mon)]
令和5年第6回経済財政諮問会議(令和5年5月15日)
≪議事≫(1) マクロ経済運営(金融政策、物価等に関する集中審議) (2) 特別セッション(マクロ経済運営の在り方) https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2023/0515/agenda.html ◎資料7 マクロ経済運営の在り方〜米国で変わる専門家の認識〜(永濱利廣氏提出資料) 1.全米経済学会調査(高まる財政の役割) 〜良い赤字と悪い赤字の見分けが重要〜→「⼤きな財政⾚字は経済に悪影響を及ぼす」「景気循環のマネジメントはFRBに任せるべきで あり、積極的な財政政策は避けるべき」⇒賛成・反対の比較あり。 2.世界標準ではない単年度の税収中立〜「新しい資本主義」に必要な長期間の税収中立〜→日本は、単年度の税収中立に縛られ、減税 が使いにくく、補助金や給付金などの政府 の裁量的な支出に手段が限られやすい。 減税を実施すれば、需要が存在する分野 に資金が回り、企業のより生産的な支出を 誘発し、需要喚起の効果が高まる。 3.多年度中立に何を担保するか 〜参考になる米国の財政健全化目標〜↓ ・サマーズハーバード大教授・ファーマン元 CEA委員長(2020 年12月):低金利で償還費 は低下するため、それを考慮しない「政府債務/GDP」はミスリーディング。予算均衡を目指すのではなく、利払をGDP比で抑える運営を行い、利払費が急騰またはGDP比2%以 上になるのを避けつつ、成長を促進する分野 に焦点を当てた財政政策を行うべき。 • イエレン財務長官(2021 年 3月):支出の余地 がどの程度残されているかを把握する最善 の指針は政府の利払い費のサイズであり、 債務残高は増えたものの、経済全体とし比 較した利払い費は多くない。 • ラウズCEA委員長(2021 年 5月):財政の健全性を図る上で最も重要なのは債務に対する実質的な利払いであり、債務が経済に負担 をかけ、他の投資を締め出しているかどうか はこれによって判断される ◎資料8 ポストコロナのマクロ経済政策運営(仲田泰祐氏提出資料) ○ポストコロナのマクロ経済政策運営→短期的には財政支出の正常化。中・長期的には、(物 価上昇圧力が持続的であれば)金融政策の 正常化⇒これらの二つの正常化を、過去三年間 に新型コロナ危機の影響を 特に大きく受けた人々に配慮しつつ進めることが理想的。 ・コロナ禍の財政:コロナ危機時の政府支出の恒常化の懸念 ・コロナ禍の社会経済:少子化加速・若者の人的資本形成の阻害の懸念 ・コロナ禍の社会経済:女性・低所得層により大きな負の影響 ・ポストコロナの物価上昇圧力→現在のインフレ率上昇とそれに伴うインフレ率期待上昇は持続的な2%目標達成の一助となり得る。現在のインフレ率上昇が需給ギャップの改善よりもコストプッシュ要因に依存しているのであれば、名目賃金が 上昇しても実質賃金は低下する可能。 ◎資料9 マクロ経済運営の在り方(滝澤美帆氏提出資料) ○中長期展望→過去の経済計画や中長期展 望で掲げられている目的や目 標は、現在の経済環境にお いても重要⇒環境問題、経済安全保 障、少子高齢・人口減少、 財政(歳出・歳入改革)など。 中長期的視野に基づく成長政策(長期的な経済成長経路 を望ましい方向へ誘導する政 策)の重要性の認識。 ○深尾教授らによる実質賃金変動の要因分解→賃金の持続的上昇 実現のために⇒生産性向上 • 交易条件改善が必要。 ○マクロ経済運営の在り方→様々な指標に注目する必要。 生産性⇒ • 参入・退出率 • 労働市場の流動化指標(生産性の高い企業に人が移 動しているかどうか)、労働市場の供給制約の状況 • 市場の競争度 • 無形資産投資(情報化資産、革新的資産、経済的競争 能力(組織資本、人的資本など)) • 働き方関連の指標 など。 交易条件⇒ エネルギー政策、立地政策の効果 などの必要性。 ◎資料10 新しい資本主義のマクロ経済運営の在り方(マルティン・シュルツ氏提出資料) ・ 新しい資本主義 – 構造的課題から社会的課題の解決能力構築まで→成熟した経済では、家計が痛みを伴う構造改革を拒否するようになり、社会サービスへの 依存度が高まったため、資本主義はある程度の限界に達しました。伝統的なマクロ政策が 社会的要請のギャップをうめることに失敗し、新しい供給側の社会的課題解決能力の構築 のための政策が必要になっているようです。 ただし、市場メカニズムによる従来の政策とは 異なり、これらの政策には、共通したパーパス、課題の政策目標、および社会的な富の創 出に対する測定可能な成果が必要です。 ・新しい資本主義 – 持続可能な所得成長という共通したパーパス→新しい資本主義のパーパスは、家計の持続可能な所得創出能力をサポートし、成長と分配 の好循環をもたらすことです。 既存の市場的政策は引き続き有効ですが、新しい政策は、 グリーン (GX)、デジタル (DX)、学習 (LX)、持続可能な変革 (SX) の目標を達成するため に、従来の産業政策から社会政策まで、政策横断的に取り組む必要があります ・新しい資本主義 – 社会変革のためのミッション志向の政策→効果的で持続可能な所得成長政策は、持続可能な政策目標を官民のパートナーシップの 共有ミッションにしていく必要があります。GX は、製品の設計から使用までのサプライ チェーン全体を改善して、ゼロ カーボン エミッション効率を達成します。 DX は、地域や中 小企業全体に革新的なテクノロジーを普及させます。 LX は、会社の職場を超えて労働者 の成人学習と専門化をサポートします。 SX は、女性のキャリア機会を増やして、社会的公 平性を高めます。 ○新しい資本主義 パーパスとミッション志向の政策→GDP 成長(政府主導)中心。公平性。 ○伝統的な資本主義 課題と方針→競争による個人の所得増加 の課題。貧富の格差。 ◎資料11 経済財政諮問会議特別セッション提出資料(佐藤主光氏提出資料) ○景気対策と成長戦略→「経済成長なくして財政再建なし」とは経済成長すれば財政再建できるではなく、経済成長しなければ財政再建も覚束ないということ・・・。 ・前提としての経済成長(経済実現ケース)から 目標としての経済成長へ ![]() ・財政政策の目標を当面の景気対策としてのマ クロ需要の喚起から持続的成長力の向上に向 けた生産性向上(イノベーションの創出等)に転 換する ○財政赤字の帰結→安全保障・子育て支援など中長期的支出には恒久的な財源が必要。 ・課税権を永遠に先延ばしすることはできない(国債への市場からの信認の源泉は課税権)。 ・長期的には財政再建(増税・歳出カット等)・インフレで辻褄合わせ(面は金利上昇への 備えが必要(財政・経済への波及効果の推計と対策)ではないか?) ○将来のリスクに備える→将来世代が将来に生じうる新たなリスク(自然 災害、感染症、地政学的リスク)に対処できるだ けの財政余力の確保が必要 ・現在の財政赤字は現在のリスク(コロナ禍・物 価高等)を一方的に将来世代に転嫁→(金利を超過した)成長だけで帳尻を合わせる のは楽観的(財政ギャンブル) ○人口減少に備える→• 「次元の異なる」少子化対策で人口減少のト レンドが劇的に変わるわけではない・ ・日本の総人口は令和2(2020)年1億 2,615 万人から2070 年には 8,700 万人 (2020 年 時点の 約7割)国立社会保障・人口問題研究所「日本の将 来推計人口 (令和5年)」。 • 少子化対策とは別に人口減少に対応した経 済・(年金等)社会保障制度の再構築が必要。 ◆令和5年会議情報一覧 https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2023/index.htm#tab0518 次回は新たに「第28回「障害福祉サービス等報酬改定検討チーム(オンライン)」資料」からです。 |