令和5年第6回経済財政諮問会議 [2023年05月28日(Sun)]
令和5年第6回経済財政諮問会議(令和5年5月15日)
≪議事≫(1) マクロ経済運営(金融政策、物価等に関する集中審議) (2) 特別セッション(マクロ経済運営の在り方) https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2023/0515/agenda.html ◎資料1 植田議員提出資料 ↓ ○わが国の経済・物価情勢→(1)個人消費・伸び悩み、(2)輸出・生産・まあまあ、(3)設備投・上昇傾向、(4)消費者物価・家庭持ち出しが高い。 ○展望レポート(2023年4月)の見通し ・政策委員見通しの中央値→実質GDP、 消費者物価指数⇒いずれも1以上。 ・経済・物価見通しのリスク→【リスク要因】【リスクバランス】あり。 ○「多角的なレビュー」と先行きの金融政策運営方針 <2023年4月28日決定> ・金融政策運営の「多角的なレビュー」→1年から1年半程度の時間をかけて行う。 ・ 先行きの金融政策運営方針→基本方針を新たに記述⇒2%の「物 価安定の目標」。従来の方針を維持⇒必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講 じる。 ◎資料2 金融政策、物価等に関する集中審議資料(内閣府) ↓ ○デフレ脱却の考え⽅:持続性・安定性の確認→デフレ脱却とは、「物価が持続的に下落する状況を脱し、再びそうした状況に戻る見込みがないこと」。足下、消費者物価や賃金、予想物価上昇率に上昇傾向が見られ、価格転嫁も徐々に進んでいるが、その背景や内 外の不確実性を十分踏まえ、物価や賃金の上昇が持続的・安定的なものとなるか各種関連指標(注)をきめ細かく見 ていく必要あり。⇒図1〜図4参照。 ○デフレに関する4指標の動向→消費者物価は、輸入物価の影響を受けやすい財物価の伸び率が高い一方、賃金等の国内要因の影響を受けやす いサービス物価の伸び率は相対的に低めで推移。GDPデフレーターは、価格転嫁の進展と資源価格等の下落によ り、2022年10−12月期にプラスへ転じた。単位労働コストは小幅の上昇が続き、GDPギャップは振れを伴いながらもマイナス幅が縮小傾向。 各指標ともプラス方向の動きが見られるが、デフレ脱却に向けて、デフレに後戻りしないための持続性と安定性を確 認していく必要あり。⇒図5〜図8 参照。 ○物価を取り巻く環境→今年度の賃上げ率は30年ぶりの高い水準となり、近年0%台半ばで推移していたベースアップ率も2%を超える見 込み。価格転嫁を通じたマークアップ率の確保や労働市場の円滑化等を通じた構造的賃上げの実現により、賃金 上昇を伴う物価の持続的・安定的な上昇を目指していく。 企業の設備投資意欲も高く、昨年度の投資計画(実績見込み)は2桁の伸び。国内投資の拡大やイノベーション促 進に取り組み、生産性向上を伴う潜在成長率の引上げ、中長期的な成長期待(期待成長率)の上昇を目指す。 ◎資料3 参考資料(マクロ経済運営の在り方)(柳川議員提出資料) ↓ ○「マクロ経済運営の在り方」に関する論点@A↓ 1.賃⾦と物価、成⻑と分配の好循環について マクロ経済運営の⽬指すべき⽅向性として、以下の点が提⽰された。 ↓ • マクロ経済運営→政府と⽇本銀⾏は緊密に連携し、賃⾦上昇を伴う形で、2%の 物価安定⽬標 と⺠需主導の経済成⻑ が持続的かつ安定的に実現できるよう取り組む。 • 輸⼊物価上昇による外⽣的な物価上昇から、賃⾦上昇やコストの適切な価格転嫁を通じた マークアップの確保を伴う賃⾦と物価の安定的な好循環を⽬指す。このため、政府は中⼩企業の価格転嫁対策、最低賃⾦の引上げパスの提⽰、適切な労働市場改⾰等を⾏う。 • あわせて、政府は、成⻑⼒の持続的な向上と家計所得の幅広い増加に裏打ちされた消費や 国内需要の持続的拡⼤が実現する「成⻑と分配の好循環」をマクロ経済運営の⽬標とし、 賃⾦・物価の好循環に持続性を確保する。 • その実現に向け、⽣産性向上とイノベーション促進に向けた⺠間投資を引き出すとともに、 ⼈への投資、GXなど社会課題の解決にも必要ながら過少投資となりやすい分野への官⺠ 連携した計画的な重点投資を推進する。 • こうした取組を通じ、⼈々の物価観(デフレ予想から緩やかな物価上昇予想)と成⻑期待 (潜在成⻑率の向上)をともに⾼め、デフレに後戻りしないとの確信を広く醸成する。 2.財政政策と⾦融政策のポリシーミックスについて ↓ 具体的なポリシーミックスについては、以下の点が提⽰された。 ↓ (財政政策)→ 財政政策は主として潜在成⻑率の引上げ と社会課題の解決に重点を置いた政策対応をする。 この観点から、⺠需を引き出し、社会課題を解決する中⻑期の計画的な投資を推進するととも に、それを担保するワイズスペンティングを徹底。 緊急時の財政出動においては、その⽀出を必要以上に⻑期化・恒常化させない仕組みを予め取 り⼊れる。特にコロナ禍で拡⼤した財政⽀出を早期正常化して平時の歳出規模に戻していく。 • 内外経済を巡る不確実性が⾼い中、適切なポリシーミックスを実現するためにも、持続可能な 財政構造を確⽴するための取組を着実に推進し、財政に関する信認を確保する。 (⾦融政策)→内外経済や⾦融市場を巡る不確実性が⾼い中にあっては、経済・物価・⾦融情勢に応じた機動的な対応が重要。 ⽇本銀⾏には、⾦融緩和による資産価格や⽣産性への影響にも⽬配りしつつ、賃⾦上昇を伴う 物価安定⽬標の達成を⽬指すことを期待。 そのうえで、賃⾦上昇を伴う形でインフレ率が持続的・安定的に2%程度に定着する下で、適切な⾦融政策の運営を期待する。 (ポリシーミックス)→こうした取組を通じ、政府と⽇本銀⾏は緊密に連携し、⽬標を共有してその実現を⽬指す ○特別セッション・ヒアリングにおける主な御意見↓ (賃⾦と物価、成⻑と分配の好循環)↓ • 賃⾦・物価の好循環の⼆巡⽬以降に向け、物価⾯ではインフレ予想の定着、年⾦給付額・規制価格の物価スライド推進、賃⾦⾯では中⼩企業の価格転嫁、最低賃⾦の引上げ・先⾏きの引上げパス提⽰が課題。 • 賃⾦・物価の好循環実現により、企業の価格⽀配⼒、⾼付加価値商品開発、イノベーション、⾼賃⾦に向けた スキルアップと労働⽣産性上昇が期待。まずは賃⾦・物価の好循環を2025年までに定着できるよう政策資源 を集中。その定着を確認後、成⻑と分配の好循環に向けたミクロ施策への取組を本格化 (ポリシーミックス)↓ • 経済成⻑率=潜在成⻑率+短期・中期ショックによる景気変動。財政政策は主に潜在成⻑率を押し上げる役割、 ⾦融政策は景気変動に対応する⼿段。 • ポストコロナのマクロ政策運営→短期的には財政⽀出の正常化、中⻑期的には、物価上昇圧⼒が持続的であれば、⾦融政策の正常化。正常化についてはコロナ危機の影響を⼤きく受けた⼈々に配慮しつつ進める。 • 当⾯は超低⾦利政策を継続。政府は競争⼒と成⻑⼒を強化、ワイズスペンディングで社会問題を解決。 景気に配慮した財政健全化が重要。不況時に緊縮財政を⾏うリスクを避けるべき。 • 世界的低⾦利、デフレ、⾦余りという環境が変化。この変化を意識したマクロ経済運営をすべき。 (⾦融政策)↓ • 賃⾦・物価の好循環に向け、インフレ予想を定着させることが⼤事な局⾯。物価⽬標の柔軟化は不適切であり、 物価⽬標政策を堅持すべき。 • 量的・質的緩和の副作⽤として、不動産等の資産価格が⾼くなり、新規企業の参⼊や若い世帯の住宅取得が難しくなっている。⻑い⽬で⾒ると、⽣産性や総⽣産の成⻑を停滞させることになってしまう。 • 世界全体で2%以上のインフレが数年続くと予想される。⽇本もインフレ率が2%程度に定着すれば、量的・ 質的緩和は解除するのが望ましい。 • 物価と賃⾦の上昇が続けば、異次元の⾦融緩和政策の⾒直しも視野に⼊れるべき。 ◎資料4 成長と安定のためのマクロ経済運営(清滝信宏氏提出資料) ↓ ○量的•質的金融緩和の目的:デフレを止める 過去10年間にデフレを止めて、1−2%程度のインフレを達成するの に一定程度の効果があった 1−2%のインフレを維持するのは、活発な財•労働市場と効果的な金融 政策のために重要。 しかし現在、世界全体でインフレが進行しており、欧米では政策金利の急上昇にもかかわらず、2%を超えるインフレが数年続くと予想される。 日本でも、円安と輸入物価の急騰から、目標値を超えるインフレが続い ている → 年金と預金に頼る老齢世帯の生活が苦しくなっている ○量的•質的金融緩和の問題点 ↓ 長短金利差やリスクプレミアムが小さくなりすぎる 不動産等の資産価格が高くなりすぎる → 新規企業の参入や若い世帯の住宅取得が難しくなる → 生産性や 総生産の成長が停滞する。 1%以下の金利でなければ採算が取れないような投資をいくらしても、経済は成長しない 。長期金利を低く抑える政策も長く続けると、一方的な投機にさらされ国 が損をする。 インフレ率が1−2%程度に定着すれば、量的•質的緩和は解除す るのが望ましい。 金融政策の判断は日銀が責任をもつべきだが、1990年代末以降のデフレの トラウマのために、政策判断が遅れてはいけない。 過去30年間、日本の労働生産性の上昇は他国に比べて低かった → 実質賃 金と非貿易財価格の上昇が他国より低くなる(バラッサ•サムエルソン効果)→ デフレになりやすい傾向があった。 他国と同程度の労働生産性の上昇を維持することで、デフレになりにくくなる 生産性向上に最も効果的なのは無形資産の蓄積と技術進歩。 ◎資料5 消費者の物価・賃金予想と企業の価格転嫁(渡辺努氏提出資料) ↓ ○消費者のインフレ予想は2022年春から顕著に改 善し、現時点では、欧米の消費者と大差ない ○企業は21年夏以降、コスト増の国内価格への 転嫁を進めている ○賃金は据え置きとの予想が依然として過半を占 めており、欧米との差は縮まっていない ○日銀のフォワードガイダンス (2023 年 4 月28日)→日本銀行は、内外の経済や金融市場を巡る不確実性がきわめて高い中、経済・物 価・金融情勢に応じて機動的に対応しつつ、粘り強く金融緩和を継続していくことで、 賃金の上昇を伴う形で、2%の「物価安定の目標」を持続的・安定的に実現すること を目指していく。↓ • 物価との対比で賃金の改善が遅れている現状にあって、FGに賃金への 言及が追加されたことは適切。 • 金融緩和の解除のタイミングは賃金の動向によって決まる可能性が高い。 以下の工夫によりFGの効果を高めることができる。→誰の賃金(大企業、中小企業、正規、非正規etc)、 どの賃金(所定内、 所定外etc)かを明示する。 物価には「 2%」という数値目標がある。これと同様に、賃金も数値的 な目途を示す。 • 政府による最低賃金の改定は賃金全般に影響を及ぼす。この点で、政 府と日銀の協調が必要。 ◎資料6 物価・賃金とマクロ経済運営の在り方(福田慎一氏提出資料) ↓ ○2000年代以降の日本経済の特徴→名目賃金の低迷は日本固有 の特徴 ○足元の賃上げの動向→他の主要国に比べると、上昇の勢いは十分ではない⇒これまで賃金が低迷してきたことを鑑みれば、持続的な賃上げの 流れを定着させることが重要。 ○コロナ禍でも日本の賃金・物価の低迷 は顕著→日本は、賃上げを行っても、賃金・物 価スパイラルへの懸念は小さい。現状では、賃上げは、デフレ脱却の メリットの方が大きいのではないか。 ○わが国で求められること→持続的な賃上げを実現するには、経済の構造改革が不可避。 政府は、競争力と成長力の強化に向けた取組を積極化すべき。特に、経済の新陳代謝の促進など、構造改革は不可欠。政府・日銀の「共同声明」の考え方は重要!⇒政府と日銀が一体となって取り 組むことが経済再生につながる。 次回も続き「資料7 マクロ経済運営の在り方〜米国で変わる専門家の認識〜」からです。 |