第7回「強度行動障害を有する者の地域支援体制に関する検討会(オンライン開催)」資料 [2023年03月24日(Fri)]
第7回「強度行動障害を有する者の地域支援体制に関する検討会(オンライン開催)」資料(令和5年3月13日)
≪議事≫・強度行動障害を有する者の地域支援体制に関する検討会報告書(案)について https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_31703.html 3. 強度行動障害を有する者の地域における支援体制の在り方 ↓ (3)日常的な支援体制の整備と支援や受入の拡充方策 【在宅での暮らしを支える支援】→強度行動障害を有する者の在宅生活を支えるためには、通所系サービス、短期入所、訪問系サービスが地域で安定的に提供されるよう体制の整備を進めていくことが重要。強度行動障害を有する者の通所先として主な受け皿となる生活介護⇒強度行動障害を有する者以外にも幅広い支援が必要な障害者が利用しており、その中で強度行動障害を有する者の受入れを進めるための取組を進めていくことが必要。短期入所⇒強度行動障害を有する者を受け入れる体制が十分でなく利用 したくても利用できないという実情もある。短期入所での受入れを進めるための方策を講じていくことが必要。 行動援護⇒本人の特性を理解して、適切な関わりをしながら、本人の楽しみと なる外出を支援する、暮らしを支える上で欠かせないサービスであるが、ヘルパー 不足が非常に深刻なことや、利用ニーズが平日の通所サービス終了後の数時間と土日祝日に集中すること等もあり、支援の提供が限られている地域も多い。市町村 において支援ニーズを適切に把握し、そのサービス確保に努め、必要な人が行動 援護を利用できるための取組を進めていくことが必要である。 行動援護や重度訪問介護は、他のサービスと組み合わせて支援を組み立てることが有効であるが、一部の自治体において、行動援護や重度訪問介護を使うと他 のサービスが使えないという判断を示されている実態がある。市町村の支給決定 において、在宅の強度行動障害を有する者とその家族を支えることを十分に配慮し、適切なサービス提供が図られるように周知していくことが必要。 重度障害者等包括支援⇒強度行動障害で状態が安定しない場合に本人の状 態に応じて柔軟に個別支援が可能なサービスであり、有効な活用事例も見られる が、全国的に利用が少ない現状があることを踏まえ、事業に取り組みやすくするた めの方策を講じていくことが必要。強度行動障害の状態によって、通所系サービスに通えない状況となった場合には、必要な期間において、行動援護や重度訪問介護、重度障害者包括支援による 個別支援の活用が有効と考えられる。また、これらの支援を活用しながら、通所サービス等の利用につなげていくなど、具体的なサービス利用や支援方法について 周知していくことが必要である。 【グループホーム(共同生活援助)】→少人数の生活であることから、生活環境や支援内容を個別化しやすく、一人一人の特性に合わせやすいという利点、通所系サービスや行動援護を利用して個別の外出ができるなど、一人一人に合った生活を組み 立てやすいという利点もある。強度行動障害を有する者の居住の場として、受入れ の体制整備を進めて行く必要がある。 一方で、共同生活援助は少ないスタッフで支援するため行動障害の状態が悪化した場合に応援体制が取りにくいこと、心理面も含めたスタッフの負担が大きい課題がある。強度行動障害を有する者を支援する上では、専門的知識を持った中核的人材を含めたチームで支援にあたることが重要であることも踏まえ、共同生活援助で安定的に強度行動障害を有する者を支えるための取組を進めていくことが必要である。 【障害者支援施設】→強度行動障害を有する者への支援⇒環境調整が非常に重要であるが、障害者支援施設は、それぞれの障害特性に見合った環境を提供することが難 しい場合がある。現状、障害者支援施設で多くの強度行動障害を有する者が生活する中で、これらの者の地域移行に向けた取組を進めつつ、障害者支援施設における強度行動障害を有する者への障害特性のアセスメントと環境の調整等の標準 的な支援を進め、支援スキルを一層向上すること。 障害者支援施設⇒地域の支援体制の中で、行動障害の状態が悪化した者を 集中的に支援する必要がある場合の受入れ(3(4)参照)や、緊急の短期入所など、重要な役割・機能を果たすことが期待される。 受入れた者の生活の支援を行うとともに、移行先の確保を含めた移行 支援を行うことも重要である。 【地域生活支援拠点等による緊急対応】→地域で暮らす障害者の緊急時の支援や、障害者支援施設や病院からの地域生活への移行支援を行うことが求められており、強度行動 障害を有する者とその家族が地域で安心して生活する上で重要な役割・機能を担 っている。各市町村において地域生活支援拠点等の整備を進めるとともに、その 機能の充実に取り組んでいくことが必要。 地域生活支援拠点等において強度行動障害を有する者の緊急時の対応を行う 上では、予め支援の対象となる者とその特性や支援ニーズを把握しておくことが重 要。強度行動障害を有する者の中には、様々な理由によりサービス提供に つながっていない者もいることから、自治体や関係機関と連携してその把握を進めることが重要。 強度行動障害を有する者は、地域生活支援拠点等の緊急短期入所の登録をしている場合であっても、実際には支援が難しいということで緊急時に受け入れられ ないという場合もある。強度行動障害を有する者が利用できる短期入所の整備を 含め、実効性のある支援体制の整備を進めていく必要がある。 在宅で家族と同居しており、サービスは生活介護だけというケースも考えられるが、日中の支援を行う生活介護事業所には、慣れた支援者がおり、本人への支援 環境も整えられているという状況もあり、地域生活支援拠点等の整備や緊急時等 の支援にあたっては、入所施設や居住系の事業所だけではなく、そういった事業所 や職員の活用も進めていくことが重要である。 【強度行動障害が特に強い状態にある者の評価の在り方と支援や受入の拡充方策】→サービスの支給内容(行動援護や 重度訪問介護)や報酬上の評価(加算)を決定する仕組みとして、客観的な指標、 基準を用いて点数化し、それを基に決定する現行の仕組みは、手続きの透明性・ 公平性を図る観点から重要である。 行動関連項目の評価は、行動上の障害が生じないように行っている支援や配慮、投薬等の頻度を含め判断することとされており、「行動上の障害が現れた場合」と「行動上の障害が現れないように支援している場合」は同等の評価となるが、 この取扱いについて、市町村の認定調査員の理解が不足しているケースも見受けられるため、改めて周知徹底を図ることが必要。 認定調査員のスキルとして、行動関連項目から現状の支援につなげられる調査員はいない。調査対象に強度行動障害を有する者がいることを想定し、行動障害 について一定の専門性を持った調査員を育成していくことも重要。 強度行動障害の状態が現れる状況は、多面的に評価する必要がある。例えば、 あるところで抑制的な対応をしていると、そこでは行動障害が出ないが、それ以外 のところで非常に強く出てしまうということがあることを踏まえ、家庭と日中活動場面等の複数の場面での状況について聞き取りを行う等の対応を進めることが重要。 現在の行動関連項目は、制度化の経緯として行動援護の判定基準として設定さ れたという背景があるが、現在は制度が変遷して、暮らしの場面での評価にも利用 されている。また、支援の頻度が重視されているが、頻度が少なくても、重大な自傷他害行為等の影響は大きいため、行為の内容や強度の評価も重要と考えられ る。評価方法の変更は現在の支援対象者への支援に影響することにも十分留意しつつ、このような点も継続的に検討していく必要がある。 ○ 現状は行動関連項目の合計点が 10 点以上で重度障害者加算の対象、10 点の者と点数の非常に高い者(最大で 24 点)では、必要な支援の度合い が大きく変わってくる。このような支援が困難な状態像の者がサービスの受入れに つながっていない状況も踏まえ、受入拡大や支援の充実の観点から、10 点という 区切りだけではなく、より高い段階を設定して、報酬面に反映していくことが必要。 点数の非常に高い者を支援するには、十分な人員体制とともに、専門性のある 職員の配置や職員育成のための研修費、外部からのコンサルテーションの費用や 施設設備の改修費等、様々なコストが必要になることを踏まえ、報酬の在り方を検 討すること。 報酬は、単に点数の非常に高い者を受け入れていることや研修を受け ている人材を配置していることを評価するのではなく、状態の改善に有効な支援の 要素を設定し、それを実施しているかどうかを要件とするような仕組みを検討する こと。 また、強度行動障害を有する者は虐待の被害や身体拘束等を受けることが多い ことを踏まえ、支援体制が十分でない中で安易に受け入れることによる権利侵害を 防止するための方策についても検討する必要がある。 強度行動障害が特に強い状態にある者への支援は、小集団での支援も難しく、訪問系サービスを活用した個別対応のさらなる活用の検討が必要である。 (4)状態が悪化した者に対する「集中的支援」の在り方 【基本的な考え方】→状態が悪化することでサービスにつながらない、在宅で家族と一緒に暮らさざるを得ない事例がある。グループホームなど障害福祉サービスを利用していても非常に行動が激しくなり、生活が難しくなった者、支援現場でも強度行動障害を有する者の状態が悪化し課題となる行動 が頻発するような状態になった場合に、目の前の対応に追われて支援を振り返る 余裕がなくなり、職員が疲弊し支援力が落ちていくという状況もある。状態が悪化する前から中核的な人 材を中心とするチームによる支援が適切に行われることが重要であるが、状態が 悪化した場合には、担当する支援者に任せるのではなく、地域全体で本人や家族、 事業所を支え、状態の安定につなげていくことが重要。 強度行動障害を有する者が状態の悪化により在宅やグループホームにおいて生活が難しくなった場合⇒障害特性や行動の要因分析等の適切なアセスメントを 行い有効な支援方法を整理した上で環境調整を集中的に実施し、状態の安定を図 ることが有効、障害者の権利擁護の観点からも、こうした集中的支援の取組を進める必要がある。 集中的支援⇒強度行動障害支援者養成研修で示された標準的な支援 の手法に基づくアセスメントや環境調整を実施することが重要であり、アセスメント によって整理した関わり方を基に今後の支援や障害福祉サービスの利用調整を行うことが重要である。 【広域的支援人材(仮称)のコンサルテーションによる集中的支援】→集中的支援の具体的な方策⇒まず、広域的支援人材が事業所等を集中的 に訪問等してコンサルテーションを実施し、適切なアセスメントと有効な支援方法の 整理を共に行い環境調整を進めていく方策が考えられる。 広域的支援人材のコンサルテーションによる集中的支援⇒広域的支援人材の派遣に対してインセンティブ等を設定し人材を派遣することに積極的に協 力してもらうための工夫が必要になる。 【居住支援等を活用した集中的支援】→在宅の場合や、グループホーム等に入居したまま対応することが困難な場合、グループホーム、施設入所や短期入所を活用して、一時的に環境を変えた上で、適切なアセスメントを行い、有効な支援方法を整理した上で元の住まいや新たな住ま いに移行する方策も考えられる。 集中的支援を行う居住支援や短期入所⇒中核的人材が中心となりチームで支援を行うとともに、アセスメントと支援方法の整理を進めることが求められる。地域の広域的支援人材が、集中的支援を行う事業所を支援するととも に、送り出した事業所に対して人材育成や環境調整を行うなど、集中的支援後の 受入体制を整備することが求められる。その際、集中的支援における標準的な支 援に基づく支援方法を受入先でも着実に引継ぎ、一貫した支援を継続すること。 また、相談支援事業所等が、集中的支援のニーズ把握や、集中的支援後に利用する障害福祉サービスの調整や関係機関との連携の調整を行うなど、集中的支援の前後をフォローできる体制を構築すること。 居住支援等を活用した集中的支援⇒集中的支援後の移行先の確保 が課題であり、地域の中で受入先を確保する仕組みを構築しておくことが必要。例えば、送り出した事業所が地域の広域的支援人材による集中的支援後の受 入体制整備のためのコンサルテーションを受けることを、集中的支援を受けるため の条件として設定する工夫も考えられる。 【集中的支援の推進に向けて】→集中的支援の実施のためには、適切なアセスメントを行い有効な支援方法を整 理した上で、環境調整を集中的に実施できる広域的支援人材や、現場の中核的人 材を確保する必要があり、国はその育成を進めることが重要である。集中的支援⇒支援ニーズや専門性のある人材の実情を踏まえれば、 各都道府県・指定都市や圏域単位といった広域で実施体制を整備していくことを基 本とすることが考えられる。この場合であっても、各市町村における地域の強度行 動障害を有する者への支援体制と連動させて、全ての地域を漏れなく支援できるよう、体制を構築することが必要。 一旦状態が改善しても、本人の状況や家族など周囲の環境の変化の中で再度 状態が悪化することもあるため、地域の中で市町村が中心となって継続的に フォローする体制を整備することが必要。 集中的支援の実施⇒(自立支援)協議会等において実践報告を行うなど、取組の共有や PDCA サイクルを回しながら改善を図っていくことが重要。 地域に強度行動障害に対応できる事業所数が十分ではなく、かつ、対応できる 事業所においても、人員など支援体制に余裕がない中で、職員、事業所共に疲弊 してしまうという現状がある。状態が悪化した場合の集中的支援と合わせて、平時から、強度行動障害者を有する者への支援に係る知識や技術を地域の事業所に 広げ、そのスキルを向上するための取組を進めることが必要である。 (5)こども期からの予防的支援・教育との連携→幼児期からの個々のこどもの特性と家族の状況に応じた適切な関わりが、将来の強度行動障害の状態の予防につながると考えられる。幼児期からこどもの強度 行動障害のリスクを把握し、家族を含めてライフステージを通して地域生活を支え ていく体制づくりが必要。 3歳までに強度行動障害の状態となる高リスクのこどもを把握し対応していくこと 。強度行動障害を有する児者の保護者へのインタビュー調査の結果⇒3歳児健診までに睡眠の問題、多動性、こだわりが非常に強かった児が一 定数おり、小学校時代(10 歳以降)に強度行動障害の諸症状が悪化し、思春期で かなり顕著になっていくというパターンがみられた。 強度行動障害の状態を予防するためには、3歳児健診等で、重度の知的障害を 伴う自閉症のあるこどもの中で特に睡眠の問題があり、こだわりが強く衝動性があ るこどもを把握して、早期にこどもと家族への支援を開始することが重要。 幼児期・学童期・思春期の支援⇒知的障害と自閉スペクトラム症を はじめとする発達障害の特性に応じた一貫した支援を福祉と教育が連携して行 い、障害特性のアセスメントや環境の調整に取り組むなどの、行動上の課題を誘 発させない支援を提供していくことが必要である。 強度行動障害が重篤化する前にアプローチすることが重要であり、特別支援学校 と児童発達支援センターや放課後等デイサービス等が連携して支援にあたる体制 づくりを進めることが必要。 強度行動障害の状態を予防する観点から、児童発達支援や放課後デイサービス の支援の専門性を上げることが重要。地域の児童発達支援の中核となる児 童発達支援センターの機能強化を進め、強度行動障害の状態を予防する観点も 含めて、児童発達支援事業所や放課後等デイサービス等に対してスーパーバイ ズ・コンサルテーションを行う取組を進めることが必要。 中学生・高校生年代の強度行動障害を有する児の実態把握を進めるとともに、 学校を卒業した後の成人期における地域での生活も見据えて、強度行動障害の状 態を予防するという観点から支援を進めること。 在宅の強度行動障害を有する児を支援するため、専門性を有する人材が、家庭 や事業所、医療機関等を訪問して調整を行ったり、複数の事業者の定期的な連携会議に参加して情報共有する等、ライフステージや関係機関の支援を隙間のないような形でつないでいく取組を進めることも重要。 強度行動障害の状態となるリスクの高いこどもへの対応を行う上では、母子保健施策や子育て支援施策と連携しながら、家族を孤立させずに支えるための方策を 講じていくことも必要。例えば、家族がこどもの障害特性を理解して障害特性に応じて子育てができるようにする支援や、育児の困り感に対する心理的な支 援、他の家族とのつながりをつくる支援、必要に応じて障害児通所を含む障害福祉サービスの利用等を個々の家族の状況に応じて組みたてることなどが考えられる。 市町村⇒基幹相談支援センターや障害児相談支援事業所、児童発達 支援センター等と連携し、また、地域の(自立支援)協議会(こども部会)や、要保護 児童対策地域協議会等も活用しながら、地域の強度行動障害を有する児を把握し、その支援ニーズを踏まえた地域の支援体制づくりを進めていくことが必要。 関係機関が連携して支援にあたることが重要であり、行政、福祉、教育、医療等の関係機関によるネットワークづくりを進めていくことも重要。 こども期にどういう支援が行われ、どのような環境において本人が落ち着けるの かといった情報も含め、こどもと家族の情報を整理・蓄積し、18 歳前後の移行期において、大人の支援体制に引き継いでいくことが重要である。 (6)医療との連携体制の構築 【地域の支援ネットワークの中での精神科医療】→ 医療で強度行動障害を有する者を完全に治すことは難しく(医学モデルでの治療は難しく)、対応の仕方や環境によって状態が良くなったり悪化したりすることを前提に、環境との相互作用であることを認識して、医療の充実と併せて、福祉や教育 と連携した支援を進めていくことが必要。 強度行動障害を有する者への精神科医療⇒薬物による鎮静だけでは なく、医療・福祉で相互に乗り入れて支援を行っていくことが重要。入院⇒移行先を見据えた介入を行い、退院後に自宅やグループホーム等 で生活できるように、入院中から福祉との連携を行うことが重要。さらに、入院の長期化を防止する観点からも、標準的支援の実践を進めていくこと。 精神科医療が障害福祉サービスと連携して、地域の中で必要な支援の一部を担っていくこと。 強度行動障害を有する者の状態が悪化している等により、グループホーム等の 障害福祉サービスで支えきれない場合に、必要な精神科医療を受けられるよう連携を推進していくことも重要。 強度行動障害を有する者に対する精神科医療の技術・知識を高めるとともに、福祉等との連携を推進することが重要であり、精神科の救急病棟、一般病棟、国立 病院機構の専門病棟、公立病院の専門病棟等、それぞれの状況を踏まえた福祉 等との連携のあり方を整理していく必要がある。 患者数や専門性の高さ等により、多くの一般精神科では知的障害・発達障害の入院患者に対して、標準的支援を導入することが困難な状況がある。 強度行動障害を有する者を地域で支える中で、各精神科医療機関がその機能を果たしていく ためには、一般精神科での知的障害・発達障害者への支援の専門性を担保していくことが重要であり、一般精神科の医療従事者が強度行動障害を有する者の障害 特性や支援手法の理解を深める取組を進めていくことが重要である。 強度行動障害を有する者への医療面での支援⇒日常生活の場で必 要な支援が提供され、家族支援にもつながることから、主治医と相談し、訪問看護 を活用していくことも考えられるが、より重度な対象者に個別的な質の高い支援を 提供するためには、訪問看護事業所の看護師等へ強度行動障害を有する者の障 害特性や支援手法の理解を深める取組を進めていくことが重要である。 【身体疾患の治療】→身体疾患の治療は、「急性期治療」「治療後の管理」「検診」「予防接種」等多岐に わたっているが、強度行動障害を有する者に対応できる体制を有する地域は限られている。強度行動障害を有する者が身体疾患の治療を受けられる体制づくりを 進めていくことが必要であり、治療に係る負担も踏まえた報酬上の評価について検討を進めることが必要。 また、福祉側から日頃の標準的支援の情報を医療側に提供したり、医療側からも福祉側の情報を求めていくなど相互の連携を強化していくことが重要。内科的、外科的な入院治療を受ける必要があるときに、重度訪問介護を利用することで、入院時の意思疎通の支援やその他の必要な支援を受けることができる。 必要な場合にサービスを利用できるよう、重度訪問介護の事業所の拡大等を進め ていくこと。 強度行動障害を有する者は、過去の嫌悪体験、未経験のことへの抵抗、新規場 面への負荷等から、身体疾患への治療等の際に病院を受診・通院することが難しい 場合がある。こうした場合に診療が可能となるよう、強度行動障害を有する者 に対応できる訪問診療の体制を強化していくことが必要。医療的なケアが必要な強度行動障害を有する児者⇒医療型短期入所を利用することが可能であるが、その受入れを一層進める観点からも、同サービスの従事者等が標準的支援を行うための知識や技術を習得するための取組を進めることが重要である。 (7)まとめ〜強度行動障害を有する者の地域における支援体制の構築に向けて〜 【基本的な方向性】→強度行動障害を有する者に対しては、障害特性を踏まえて機能的なアセスメントを行い、強度行動障害を引き起こしている環境要因を調整することを標準に、行動上の課題を引き起こさないための予防的な観点も含めて標準的な支援を行うこと。また、家庭の状況等を含めてアセスメントを行い、家族も含めて支 援を進めていくこと。 強度行動障害を有する者の支援⇒特定の事業所、特定の支援者だけで支えるには限界があり、地域の中で複数の事業所、関係機関が連携して支援を行う体制を構築していくこと。 現場の事業所⇒チーム支援の要となり、適切な支援の実施をマネジメ ントする中核的人材を中心に、強度行動障害支援者養成研修(基礎・実践)の修了者を含めたチームによる支援を進めていくことが必要。 また、各地域において、高い専門性を有する広域的支援人材等が事業所へのコンサルテーション等による指導・助言等を行い、事業所の支援力の向上や集中的支援による困難事案への対応が行われる体制を整備していくことが必要。 地域の中では、相談支援事業所や基幹相談支援センターのコーディネート・マネジメントの下、強度行動障害を有する者の暮らしに応じて、各障害福祉サービス事業所がそれぞれの役割を果たしながら連携して支援にあたる体制を整備していくこと。地域生活支援拠点等による緊急時の対応体制についても 整備を進めていくことが必要であり、障害福祉分野のみならず、教育、母子保健・子育て支援、医療等の分野 の関係機関が連携した支援体制を整備していくことが必要。 強度行動障害の状態は一時的なものでなく、こども期から高齢期に至るまで、不適切な関わりによって、どの時期にでも引き起こされる。関係機関が連携し本人 や家族の情報を適切に引き継ぎながら、ライフステージごとに切れ目なく支援が提供される体制を整備していくことが必要。 全国どの地域でも、強度行動障害を有する者とその家族が適切な支援を受けて 安心して暮らすことができるよう、市町村・都道府県・国は、それぞれの役割を果たしながら、地域の支援体制づくりや人材育成を進めていくことが必要。 【市町村・都道府県・国の役割】→市町村⇒地域の実情に応じて近隣市町村と連携・協働して(この場合は圏域で)、地域の強度行動障害を有する者とその支援ニーズを把握し、それを踏まえて 地域における支援体制の整備を計画的に進めていくことが求められる。 基幹相談支援センターや地域生活支援拠点等の整備、相談支援事業所や障害福祉サービス事業所の確保を進め、それぞれが連携して支援にあたる体制の整備を進めていくこと。教育や母子保健・子育て支援分野の関係 機関との連携体制を構築していくことが必要である。 (自立支援)協議会や要保護児童対策地域協議会等を活用しつつ、また、障害福祉計画や事業者指定(指定更新)に関する意見・条件の仕組みを活用した地域の事業者の参画に向けた取組等により、地域の支援体制の整備を進めるとともに、その改善や充実を図っていくことも重要。 都道府県⇒専門的・広域的な見地からの支援体制の整備や市町村支援を計 画的に進めることが求められる。 特に、都道府県が設置する発達障害者支援センター等も活用しながら、高い専門 性を有する広域的支援人材等を配置し、事業所の支援力の向上や集中的支援による困難事案への対応が行われる体制の整備を進めていくこと。また、医療分野の関係機関との連携体制を構築していくことが必要。 強度行動障害支援者養成研修(基礎・実践)を実施し、人材育成を進めるととも に、管内市町村の支援体制整備を財政面・ノウハウ面から支援していくことも求められる。 (自立支援)協議会や発達障害者支援地域協議会を活用して、支援体制の整備 を進めるとともに、その改善や充実を図っていくことも重要。 国⇒中核的人材・広域的支援人材の育成を進める、市町村や都道府 県による地域の支援体制整備を財政面・ノウハウ面から支援していくことが求めら れる。 【支援体制の構築を進めるために】→人材や地域資源の不足等により、市町村において支援のために必要な機能の全部又は一部が確保できない場合には、近隣の市町村、もしくは都道府県と連携・協働し、その機能を確保して必要な支援が提供されるようにすることが重要であり、 広域で階層的な調整機能が働くように、地域の支援体制の整備を進めていくこと。 自治体において、強度行動障害を有する者の地域の支援体制の整備が着実に 進められるよう、支援ニーズを適切に把握し、障害福祉計画や障害児福祉計画で 道筋を定めて取組を進めていくようにすることが重要。 強度行動障害の状態を起こさなくても良い支援を日常的に行うことが重要であり、支援者や家族、教育等の生活に関わる関係者が、標準的な支援の知識を共有し、そうした共通した支援の考え方を地域の中に拡げていくこと。 強度行動障害を有する者とその家族の支援にあたる関係者が、地域単位、さらには全国単位のネットワークを構築し、連携・協働して支援にあたるとともに、知見や好事例の共有等により支援力の向上や支援体制の充実を図っていくことが重要。 強度行動障害を有する者への支援に関して、支援者がどの程度アセスメントを行 い、それに基づいて標準的な支援を行っているか、また支援の専門性向上のため の研修を受講している等の観点を含め、支援実施に関する評価を行い、取組を改善していく仕組み⇒検討することも考えられる。 4.おわりに →本報告書⇒強度行動障害を有する者と支援の現状を整理するとともに、支援人材、支援ニーズの把握と相談・調整機能、日常的な支援体制、状態が悪化した 場合の集中的支援、こども期からの予防的支援、医療との連携体制といった各論 についての整理を前提に、地域における支援体制の在り方の全体像を示し、その 構築に向けた今後の道筋を示した。 強度行動障害を有する者とその家族への支援の体制づくり⇒支援人材の育成や報酬上の評価などは講じられてきたものの、各地域、各支援者の個別の取組に委ねられていた部分が大きかったともいえる。本報告書を踏まえて、全国 の自治体において、地域の実情に応じて、行政、様々な事業者、関係機関、支援 者が同じ方向感をもって個別の支援や地域の支援体制の構築を進め、困難を抱える当事者やその家族に適切な支援が確実に届くようになることを期待する。 強度行動障害を有する者の地域支援⇒各地域における支援体制の構 築の状況や現場における支援の状況等を注視し、支援体制や支援の取組の更な る充実に向けて、今後も引き続き検討を行っていくことが重要である。 なお、今回の検討会では、これまで行政や現場で用いられてきた「強度 行動障害」という用語を使用して議論を行い、本報告書においても使用しているが、複数の委員から、障害ではなく状態を表すものであり不正確な理解につながること、悪 い印象を与えるおそれがあることなどから、用語の変更を検討すべきとの意見があった、教育や医療など関係分野において共通の概念となるように留意しつ つ、検討していくことが求められる。 令和6年4月からは新たな障害福祉計画・障害児福祉計画期間がスタート。 それに向けて、各自治体において計画の策定が進められるとともに、国において は、障害福祉サービス等報酬改定の検討が進められることとなる。国及び自治体⇒本報告書を踏まえて、これらの対応を進めることを期待する。 強度行動障害を有する者への支援は高い支援スキルが求められるが、状態の 改善が順調に進むとは限らないという意味でも難しい支援である。 一方、全国には、支援者、法人、地域の関係者の適切な支援により、不安定な 状態から改善し、穏やかな表情を取り戻して暮らしている当事者もいる。 全国各地域で支援体制の構築が進み、強度行動障害を有する者とその家族が、安心して暮らすことができる社会が実現することを強く望む。 ◎参考資料1 強度行動障害を有する者の地域支援体制イメージ(案) ・強度行動障害を有する者(家族)中心に、国、国立のぞみの園、都道府県/政令市、市町村が「状態像」の変化を目指して、地域支援体制イメージを描けるような俯瞰図になっています。 ◆体制整備が、令和6年度からになっていますが、一刻も早く政府主導で着手してもらいたいと願っています。アタッチメントをどのように実践するのかが課題になりますね。 次回は新たに「第53回社会保障審議会児童部会 資料」からです。 |