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社会保障審議会児童部会放課後児童対策に関する専門委員会「児童館のあり方に関する検討ワーキンググループ」とりまとめ [2023年01月10日(Tue)]
社会保障審議会児童部会放課後児童対策に関する専門委員会「児童館のあり方に関する検討ワーキンググループ」とりまとめ(令和4年12月20日)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_29783.html
◎社会保障審議会児童部会 放課後児童対策に関する専門委員会 児童館のあり方に関する検討ワーキンググループ とりまとめ
はじめに ↓
○ 児童館は
、「児童の権利に関する条約」(平成6年条約第2号。以下「権利条約」)に掲げられた精神及び児童福祉法(昭和 22 年法律第 164 号。以下「法」)の理念にのっとり、こどもの心身の健やかな成長、発達及びその自立が 図られることを地域社会の中で具現化する児童福祉施設であり、これまで各児童館 の創意工夫の下、こどもの年齢・発達に応じた育成、様々な悩みを抱えた保護者へ の相談支援を行うなど、地域の人々とともに、こどもや子育て家庭の居場所として、 地域における児童福祉の向上の役割を果たしてきた。児童館に求められる基本的な機能・役割は、こどもが自由に利用することができ ることを保障し、且つ、遊びを通じた健全育成活動を行うことにある。これは、児 童福祉施設のなかで唯一無二のものである。
○ 児童館の運営→「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」(昭和 23 年 12 月 29 日厚生省令第 63 号。以下「省令基準」)、「児童館の設置運営要綱」(平成2年8月7日付け厚生省発児第 123 号厚生省事務次官通知。以下「設置運営要綱」)、「児童館の設置運営について」(平成2年8月7日付け児 発第 967 号厚生省児童家庭局長通知。以下「局長通知」という。)に基づき、質の 確保を図りつつ、「児童館ガイドライン」(平成 30 年 10 月1日付け子発 1001 第1号厚生労働省子ども家庭局長通知。以下「ガイドライン」)に規定された 児童館の特性、役割等に留意しながら、各地域の実情に合わせた運営がなされている。
○ 近年、これまで児童館が果たしてきた機能・役割に加え、中・高校生世代への支援、虐待、貧困などの社会を取り巻く福祉課題への対応、SNS 等の活用やオンラインでの交流など、社会情勢の変化に合わせた「児童館の機能・役割」の強化・見直しが必要と。また、児童館がその機能・役割を十分に果たしていくためにも、こども、保護者、学校関係者等への周知や地域における認知度について地域で濃淡があること、 ガイドラインに規定されている内容がわかりづらく、特に「児童館の特性」⇒自治体職員や児童館職員の理解が進んでいないという意見があること、 ガイドラインと設置運営要綱との整合性がとれていないことなど、現在直面して いる課題についても、改めて整理を行うことが必要。
○ この他、児童館の機能・役割を見直していく中で、地域の児童館の中枢的機能を有する大型児童館が果たすべき機能・役割や、こどもの健全育成に係る「遊び」 の位置づけなど、引き続き、検討を要する課題等は多岐に渡るが、令和5年度に 創設される「こども家庭庁」において取り組むこととされている「こどもの居場 所づくり指針(仮称)」の策定に向けて、継続的な議論が行えるよう、今後児童館 が果たすべき機能・役割等について整理を行った。

1.児童館の現状と課題
○ 児童館
は、昭和 40〜50 年代の高度経済成長期に全国的に設置が進められた。その施設数は、平成 18(2006)年度の 4,718 か所をピークに減少傾向に転じ、ここ数 年は横ばいから減少傾向。令和2年 10 月1日現在、4,398 か所設置。民営が増加傾向にある。
○ 児童館を対象とした国の財政補助⇒昭和 38(1963)年度に整備費、運営費が一般会計に計上。その後、昭和 61(1986)年度より児童厚生施設人件費について公営分及び民営分ともに一般財源化し、現在に至っている。
○ 児童館の運営は、省令基準において、基本的な設備、職員である「児童の遊びを 指導する者」(以下「児童厚生員」)等について規定。また、設置 運営要綱、局長通知により、施設種別ごとに機能、対象児童、運営内容等を規定し ている。
○ 児童館の運営や活動の基本的事項を示し、望ましい方向性を目指すものとして、 平成 23(2011)年にガイドラインを初めて発出した。その後、地域のこども・子 育て支援に資する児童福祉施設としての更なる機能強化を目指し、また、大型児童館に求められる基本機能や県内児童館の連絡調整などの役割を明記し、平成 30 (2018)年に改正した。
○ ガイドラインの発出は、設置自治体や児童館職員にとって、それまで児童館が果 たしてきた機能・役割を明確化し、目指すべき方向を理解することにつながった。 ガイドラインの周知状況は児童館活動の充実度と比例していることが指摘されて おり、児童館活動の発展のためにも更なる周知や理解促進が必要。また、今後もこどもや児童館をとりまく状況の変化に応じて、ガイドラインを適宜見直すと 同時に、積極的な活用や普及のための手立てを検討する必要がある。
○ 過去の調査研究⇒全国の約6割の市区町村に児童館が設置、都道府県単位で見ると、9割以上の市町村に設置されている県から、1割程度の県まであり、自治体間の格差が大きく偏在しているため、児童館を利用した経験の有無や利用頻度に差があることから、児童館の認知度にも影響すると思われる。また、別の調査研究においても、人件費等には施設間で大きな差が見られることが分かっており、運営費の一般財源化による地方自治体における予算配分の考え方や、事業委託などの運営方法の違いによる影響も考えられる。
○ 児童館は、他の児童福祉施設と性格を異にする。利用型の施設であり、対象とす るこどもの年齢や発達段階からすると、保護者による送迎あるいは自力で行ける範 囲に当該施設がないと、利用につながりにくい。更に利用への強制性はないため、 児童館を知らないこどもや家庭へのアプローチが十分でない可能性がある。
○ 児童館には定められたカリキュラムがなく、地域のこども・子育てニーズを把握 した上で、実情に応じたプログラムを実施することができる。そのため、活動が想 定以上に付加・拡張されていくことがある。一方で、活動が低調になってしまう可 能性もあり、これが児童館活動の濃淡につながっている。
○ 児童館は放課後児童施策として期待され、その数を増やしてきたこともあり、放課後児童クラブの待機児童等も発生している状況の中では、児童館内の放課後児童 クラブ利用児童が増加し、他の自由来館のこどもが利用しづらい現状も否めない。
○ 令和2年3月頃からの新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、約8割の児 童館は臨時休館を余儀なくされた。臨時休館時において、全ての活動を休止した 施設、公園への出張巡回を通したこどもや子育て家庭の状況を把握した施設、オンラインを活用した遊び等の情報提供や相談活動をおこなった施設など、対応に違い が見られた。
○ 課題はありつつも、児童館の有用性はその位置づけや運営実態から理解できる。 特に、児童館は唯一こどもが自ら選んで行くことができる児童福祉施設であることから、こどもが有する権利を保障する施設。また、遊びを通じた健全育成を行うことで、こどもの福祉増進を目指すという目的そのものが希有であり、児童福祉法に位置づけられたことの意義がある。

2.今後の児童館のあり方
○ 今後、児童館が地域における「こどもの居場所」として
、その機能・役割を十分 に発揮し、こどもや保護者に寄り添い、誰もが安全・安心して利用できる場所(サードプレイス、アジール)を目指すとともに、虐待、貧困、不登校などの福祉的 課題への対応に向けて、ソーシャルワーク機能も含めた機能強化を図ることが必要。 また、大型児童館を中心とした児童館同士のネットワークの構築、児童厚生員等 の育成、地域で活動する団体との連携などにより、地域の児童館全体の機能強化を 図ることも重要であることから、大きく以下の事項について整理を行う必要がある。 (1) こどもの居場所としての児童館機能・役割の強化 (2) ソーシャルワークを含めた福祉的課題への対応強化 (3) 大型児童館を中心とした、地域における児童館全体の機能強化

(1) こどもの居場所としての児童館機能・役割の強化 ↓
○ 児童館は、18 歳未満のすべてのこどもを対象と
し、その置かれている環境や状 況に関わりなく、こどもが自らの意思で来館することができ、様々な遊びや学習等 を通じ、こども同士や児童館職員との交流を図りながら、こどもの自主性、社会性、 創造性などを育むとともに、こどもが安全・安心して過ごすことができる、家庭、 学校に次ぐ、こどもにとっての日常の安定した生活の場となることが必要である。
○ 近年、学習のオンライン化や SNS 等を活用した相談、交流が一般的になるなど、こどもたちを取り巻く環境は刻一刻と変化しており、児童館の機能・役割を果たし ていく上では、こども目線での見直しが必要。とりわけ、中・高校生世代に 向けた支援を行う上では、SNS 等を活用した相談支援、交流の場の提供や、児童館 内における Wi-Fi 等のネットワーク環境の整備、開館時間の柔軟化(夜間の開館等)の検討を行うことも必要。 また、いじめ、虐待、貧困などの事情を抱えたこどもにとってもSNS 等を活用した相談等は重要、対面、オンラインなどを交えた支援ができる身近なこども居場所になることが求められる。
○ 児童館はすべてのこどもを対象としているため、ユニバーサルなサービス。発達障害をはじめとするさまざまな障害のあるこどもや外国につながるこどもなど、多様なこどもたちが、児童厚生員による支援のもとで過ごすことができる児童 館は、インクルーシブな環境づくりに寄与することが期待される。
○ こどもの居場所の構成要素として重要視されるのは、「こどもの意見」が尊重されること。ガイドラインで示されている「こどもが意見を述べる場の提供」は、権利条約における「参加する権利」であり、こどもの能動的な権利として位置 づけられる。こどもたちが児童館設置や運営に関わる例は全国で増えており、自治 体としてもこどもの意見を聞く体制や機会を大事にしている。
○ こども基本法では国や地方公共団体に「こどもの意見を政策に反映する」 ことを求めている。児童館がこれまで積み上げてきたノウハウ(ファシリテーションスキルや取組等)を横展開していくことが可能であり、更に児童館はこの取組を深めていく必要がある。 児童館は中・高校生世代のユニバーサルな活動の場、支援の場として期待が寄せられている。中・高校生世代のこどもたちが居場所として実感できるような取組、人員体制等が必要とされる。各自治体の児童館のうち1つ以上は中・高校生世代に対応するセンター機能を有する児童館を設置することも考えられる。また、児童館で待つだけではなく、中・高校生世代が集まりやすい場所等へのアウトリーチ(移動児童館等)も効果的と考える。
○ こどもと利害関係のない児童厚生員には、中・高校生世代との信頼関係を構築し た上で、思春期特有の悩みや、深刻化した課題(ヤングケアラー、若年妊娠、非行 等)などを発見することも期待される。また、この役割を発揮するには、年齢の近 い若者、特に児童館を利用して育った若者などと積極的に協働するなど、地域にお いて支え合う仕組みも効果的と考えられる。
○ 合わせて、公的施設として、民間有志によるこども食堂や学習支援等のこどもの 居場所に対して、施設設備を貸し出すことのほか、遊びのプログラムの提供やボラ ンティア等の人材養成、物資仲介等の面で積極的に支援することや、地域のこども の居場所づくりの拠点となることも期待される。
○ 上記のようなこどもの居場所づくりを行う上では、現状、利用が多い乳幼児や小 学生を主な支援対象と捉えることなく、乳幼児から高校生世代までの多様な年齢層 それぞれに適した環境づくりや長期に亘ってこどもとの関わりを持つことで実現 される切れ目のない支援の必要性など、児童館職員が従来の慣例に囚われることな く、あらためてガイドラインに規定されている児童館の機能・役割を認識し、こど 7 もの居場所としての本来の役割を果たしていくとともに、社会情勢の変化にあわせ たこどもの居場所づくりに向けて取り組んでいくことが必要である。

(2) ソーシャルワークを含めた福祉的課題への対応強化 ↓
○ 児童館は、こどもの居場所(拠点性)としての特性のほか、こどもの活動の中で、 こどもが抱える悩みや課題に直接関わることができ、その課題等に対して、こども と一緒に考え、対応し、必要に応じて関係機関に橋渡しすることができる「多機能 性」を有するとともに、こどもの発達に応じて地域全体へ活動を広げ、地域住民と こどもに関わる関係機関等とが連携して、地域におけるこどもの健全育成の環境づ くりを進めることができる「地域性」を有している。

○ そうした児童館の施設特性を発揮するためには、ソーシャルワーク機能の充実が 求められる。児童館に特に求められているソーシャルワーク機能は、コミュニティ ソーシャルワークである。
○ 児童館職員に求められるソーシャルワーク展開の基盤として位置づけるべきは、 児童館における「遊び」である。遊びがあることで、多様なこどもたちを惹きつけ ることができ、こどものなかにあるさまざまな「課題」に出会う機会を増やすこと ができる。それは、こどもが利害関係のない大人(児童館職員やボランティア等) との直接的・間接的な遊びのなかで、身体的・心理的・社会的課題を表現すること ができるからである。
○ さらに、ソーシャルワーク機能を実効的なものとするには、現在、配置されている児童館職員に加え、福祉系専門職を配置することが期待される。その上で、こど もや家庭の課題解決への取組は福祉系専門職だけが行うものではないため、児童厚 生員との役割分担を行うことが肝要。なお、配置までの間については、現在 従事している児童厚生員の資質向上やソーシャルワークの専門性を確保した児童 厚生員の配置が求められる。
○ 一方で、人材確保には課題があると思われるため、大型児童館等中核的な機能を 有する児童館に福祉系専門職を配置し、地域の児童館等を巡回し支援することも考 えられるのではないか。
○ 児童館では、こどもや家庭の抱える課題が深刻化する前に、その課題を発見し、 適切に対応し、必要に応じて関係機関につないでいくことが必要である。記録をは じめとしたシステムが各児童館で確立されることを期待する。

○ 児童館は、こどものみならず、子育て中の保護者、妊婦に対してのソーシャルワ ーク機能を発揮できる。敷居の低い児童館は、相談を目的とせずに訪れることがで きる。心理的安全性を確保した場づくりを心がけ、就学前、特に就園前のこどもの 保護者に寄り添った支援が求められる。
○ 児童館は、すべてのこどもを対象としていることから、就学後のこどもの保護者 の相談にも対応できる場となるべき。そのためには、就学前後で切れ目が発 生しないよう、保護者との関係性を維持できるような機会づくりが必要。こどもの発達段階に応じて、抱える課題や保護者の悩みは異なる。生活の拠点である 地域で支え合えるよう、関係機関や主任児童委員等との連携は欠かせない。
○ こどもの遊びや生活の場面でのコミュニケーションを通じて、こどもや保護者の 課題発見機能、早期対応を行うと共に、こどもや保護者が主体的に課題を解決して いけるよう、寄り添いながら支援をし続けることが求められていることを考えると、 自治体における予防的・包括的・伴走的支援体制に組み込まれることが肝要であり、 改正児童福祉法で位置づけられる地域子育て相談機関8として、十分に機能できる ことが必要である。
○ なお、児童館の居場所機能、ソーシャルワーク機能の議論を深めていく際には、 実施状況について詳細を把握することが求められる。

(3) 大型児童館を中心とした、地域における児童館全体の機能強化
○ 大型児童館は全国に 18 館設置
されている。固有の施設特性や設置背景を有し、 こどもの健全育成活動の象徴的な拠点として機能してきた。特に、文化・芸術・科 学・自然環境等の分野に関連するダイナミックな遊びを展開してきた。これは、民 間遊戯施設とは趣旨が異なり、自治体の健全育成施策の一環として行われ、「遊び」 の専門性を有する児童厚生員の支援のもとで、様々な体験ができる施設として、独自の存在価値を示している。なお、このような取組は、権利条約第 31 条9における休息、余暇及び文化的生活並びに芸術への参加に関する権利を保障しているものと 捉えることもできる。
○ 合わせて、地域の児童館の牽引役として、人材育成研修の実施や協議の場を設け てきた施設もある。今後もこれらの役割は変わることなく求められる。
○ 大型児童館は、小型児童館・児童センター以上に偏在している。また、その立地 場所は、こどもが自ら足を運ぶには難しい場所が多く、家族単位などで利用するこ とが想定されている施設が多い。生活圏から離れているからこその非日常性があり、 こどもの心身を解放することもできる。また、地方の濃密な人間関係から離れて、 大型児童館に遊びに行くという理由を得て、気軽な子育て相談の場として活用する 保護者も少なくない。
○ 国立総合児童センターこどもの城が有していた機能のうち、遊びのプログラムの 開発・普及は、大型児童館に期待されるところであり、厚生労働省と連携した事業 などを複数年に亘り実施し、一定の成果を得てきた。こどもたちのニーズに応じて、 今後もプログラム開発や小型児童館等への普及啓発を続けていく必要がある。
○ 日常的な利用が想定しづらい大型児童館は「こどもの居場所」としての役割を発 揮することには困難であることが想像される。その代わりに、大型児童館を中心と して、県内の児童館をはじめとしたこどもの居場所とのネットワークを形成できる 可能性が有り、中間支援機能(情報発信や人材育成等)を発揮することも期待される。
○ 大型児童館同士のネットワーク、県内児童館とのネットワークは重要な資源であ る。広域災害時のこども支援(遊びの提供、こどもの居場所の確保、保養等)や、 プログラム開発や普及の観点で、コーディネーション機能、支援者支援の役割を発 揮することが求められる。これは、大型児童館が現場を持って、こどもと関わる経 験を有しているからこそ効果的にできることである。 利用者は所在県に留まらず、近県在住者も含まれている。今後は、所在県を中心 としながらも、広域なエリアを想定した小型児童館支援も視野に入れていくことが 期待される。
○ 上述のとおり、大型児童館は、多様な役割が期待されていることから、人材確保 や人材育成が今後の課題として挙げられる。また、大型児童館は、個別の施設が持 つ特性(設置背景、立地、設備等)によって、活動状況に幅がある。これらを加味しつつ、次のガイドライン改正までに大型児童館に関する議論が行われることを期 待する。

4) 児童館の制度について
○ 以上(1)〜 (3)の3つの視点が、総合的に展開されていくこと
が、児童館の今 後のあり方としてふさわしく、これらを実現するための制度が整備されていくこと が肝要である。 法制定当時とは社会情勢もこどもを取り巻く環境も大きく変わっており、利用す るこどもの姿から必要に迫られて「遊びを与える」ことを超えた活動を児童館は実 践してきたと言える。そのため、現行法令において規定されている機能以上に、多 くのことが期待されていることから、現状に合わせた制度の見直しも将来的には見 据えてはどうか。
○ 短期的には、児童館を規定する「法、省令基準、設置運営要綱、局長通知、ガイ ドライン」の整合を図ることによって、自治体に対して児童館を積極的に活用する ことへの先鞭をつけることが期待される。本ワーキンググループにおいては、設置 運営要綱、局長通知に関する具体的指摘や、ガイドラインの解釈等に対する意見が あった。
○ 児童館が果たす機能・役割は拡張傾向にある。すべての児童館が果たすべき基本 的機能・役割と、発展的な機能・役割とを整理することが求められる。これにより、 児童館の種別を「基本型」「機能強化型」など類型で再編することも今後の検討課 題と思われる。「機能強化型」には、福祉系専門職の配置等によるソーシャルワー ク機能や支援が求められるこどもたちの居場所機能などを付加することが想定さ れる。ただし類型によって、こどもにとって児童館の利用に対する心理的、物理的 な障壁が生じることがないような配慮が求められる。
○ 「(3)大型児童館を中心とした、地域における児童館全体の機能強化」の部分で 述べたとおり、多様な役割への期待があることや、児童福祉施設であることの位置 づけを明確にするためにも、合わせて、大型児童館の類型についても、整理が期待 される。
○ こども家庭庁においては、「こどもの居場所づくり」を推進するとしている。児 童館は地域において公的な性格を有するこどもの居場所として確立してきた。すべ てのこどもを対象とする児童福祉施設は他にないことにくれぐれも留意した上で、 更に推し進めることは、各自治体においてこどもたちに安定した居場所を多く提供 することにつながると考える。その際には、今後政府で検討される「こどもの居場 所づくり指針(仮称)」とガイドラインとの整合を検討する場面も必要と考えられ る。
○ なお、「こどもの居場所づくり」において、児童館が果たす役割や期待は大きく、 今後の児童館のあり方を考えていく上では、こどもの発達過程や成育環境など、 様々なこどもの特性に応じた居場所として整理されることが重要であり、「こども の居場所づくり指針(仮称)」と児童館の関係を議論するに当たっては、ガイドラ インの内容を参照しつつ、こども、保護者や地域の関係者等からの意見を反映して いくことが必要である。

おわりに
○ 本ワーキンググループでは
、児童館のあるべき姿を念頭に、現状と課題を分析 し、今後のあり方について議論を進めてきた。法第 40 条に位置づけられ誕生した 児童館は、これまで時代の要請やこども・子育て家庭のニーズに合わせて、その 活動を変化させてきた。 ○ 地方財政も厳しい折、ユニバーサルなこどもの居場所として機能してきたはず の児童館はターゲットサービスの陰に隠れがちである。こども自身が自分の居場 所を選べることが「こどもまんなか社会」に求められると考えられる。 とするならば、改めて児童館の果たすべき役割を明確化し、その質を高める方 策を検討する必要があるだろう。すべての「こどもの居場所づくり」に対するこども家庭庁の今後の役割に大いに期待する。また、今後の児童館のあり方につい ては、この提言を踏まえて、議論を継続いただきたい。
○ 議論においては、こどもの意見が重視されるべきである。こどもの意見反映の 機会は児童館運営のみならず、設置や改廃、運営者選定等のこどもに影響がある 場合が考えられる。こどもの意見の代表性に配慮しつつ、当事者であるこどもと 共に児童館のことを考える機会づくりが期待される。
○ なお、本ワーキンググループでは、今後求められる可能性のある論点についても 委員から意見があった。こども家庭庁がこども政策の司令塔機能を発揮する中で、 議論の機会があることを期待する。
・児童厚生施設類型における、児童遊園のあり方について
・社会教育施設等を含むこどもが利用する施設のあり方について 等

○関連資料
・「児童館のあり方検討ワーキンググループ」委員名簿→5名。
・「児童館のあり方検討ワーキンググループ」開催経過→3回。

次回は新たに報道「令和4年度「ヤングケアラー認知度向上のための広報啓発」について」からです。

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