第93回社会保障審議会年金数理部会(オンラインセミナー形式)資料 [2022年12月07日(Wed)]
第93回社会保障審議会年金数理部会(オンラインセミナー形式)資料(令和4年11月28日)
≪議題≫(1)ピアレビューと財政検証 (2)その他 https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000198131_00024.html ◎資料1 小野委員提出資料 公的年金の財政検証とピアレビュー 年金数理人 小野正昭 2022年11月28日 第93回社会保障審議会年金数理部会(オンラインセミナー形式) 1. 社会保障審議会年金数理部会の概要 ・年金数理部会設置の経緯→総理府社会保障制度審議会のもとに設置された部会であったが省庁再 編に伴って厚生労働省社会保障審議会のもとに設置。第2回社会保障審議会(平成13年5月18日)年金数理部会設置が了承された。 ・社会保障審議会年金数理部会について→公的年金制度の一元化の推進に係る閣議決定(平成13(2001)年)の要請を踏まえ、「各被用者年金制度の安定性及び公平性の 確保に関し、財政再計算時における検証及び毎年度の報告を求めること」などを審議内容とする部会として社会保障審議会に設置。 平成27(2015)年10月に被用者年金制度が一元化された後も、制度の安定性の確保の観点から財政検証結果及び各年度の決 算の報告を求め審議。 閣議決定「公的年金制度の一元化の推進について」(平成13(2001)年) 社会保障審議会に年金数理に関する専門的な知識、経験を有する者等から構成される部会を設け、当該部会において被用者年金 制度の安定性、公平性の確保に関し、財政再計算時における検証のほか、毎年度の報告を求めることを要請するものとする。 ・設置当初の審議事項→各被用者年金制度の安定性及び公平性の確保。現在の審議事項⇒平成27(2015)年10月に被用者年金制度が一元化された後も、制度の安定性の確保の観点から財政検証結果及び各 年度の決算の報告を求め審議。↓ ・各被用者年金制度の安定性及び公平性の確保→制度の安定性の確保:平成16年、平成21年、平成26年財政検証・財政再計算に基づく公的年金制度の財政検証(ピアレビュー)(2016年2月8日)と続き令和元(2019)年財政検証に基づく公的年金制度の財政検証(ピアレビュー)(2020年12月25日)⇒公的年金制度の安定性を「持続可能性と給付の十分性が、将来にわたり、ともに保たれている状況にあること」と定義する。持続可能性については、積立水準、各種財政指標、収支項目のGDP比を総合的に考慮して評価。 持続可能性に関連して、厚生年金の各実施機関において、給付費や拠出金などの支出が期限どおり にできることも検証する。 給付の十分性については、所得代替率(基礎年金、報酬比例年金への分解を含む。)と世帯人員1人 当たりでみた賃金水準ごとの給付水準により評価する。公的年金制度の安定性については、「これまでの財政検証との比較」や「財政検証に含まれる不確実性と感 応度分析」での考察も参考にして、将来の不確実性を念頭に置きながら評価を行うこととする。 ○これまでに年金数理部会が公表した報告書→ 参照のこと。 ○年金数理部会が実施したセミナー→目的:数理的な視点を中核としながら、幅広く正確な情報を発信することにより、多くの方々に公的年金財政に関する理解及び年金 数理部会の活動に対する理解を深めていただくこと 2.令和元(2019)年財政検証のポイント ・2019 経済前提(長期)の設定経緯→2019年財政検証 社会保障審議会年金部会年金財政における経済前提に関する専門委員会の報告書をもとに設定。ケースT〜ケースYまで。 ・2019 全要素生産性(TFP)上昇率の仮定と実績の比較→TFP上昇率の推移(1981〜2017年度)参照のこと。 ・2019(令和元)年財政検証の結果→所得代替率50%を確保。 ・人口の前提が変化した場合の影響→「出生率・死亡率の変化」参照。 2. ピアレビュー (2020 年12 月 )のポイント (ピアレビュー:業務の 成果物を別の人が詳細に評価・検証する レビュー の類型の一つで、立場や職種が同じ(または近い)者同士の間で行うもの) ・ピアレビューの意義→制度の安定性の確保の観点から財政検証結果の報告を求め審議。 なお、財政検証の実施主体とは異なる組織による評価・検証は、米国やカナダでも実施⇒アメリカの例あり。 ・報告書の構成→第1章 令和元(2019)年財政検証の結果 第2章 公的年金制度の安定性 第3章将来見通しの作成過程 第4章情報開示の適切性 第5章今後の財政検証に向けて ・令和元(2019)年財政検証にもとづく公的年金制度の財政検証(ピアレビュー)の特徴→平成27(2015)年10月の被用者年金一元化により、各実施主体(3共済)には財政検証の義務がなくなった。 これを受け、令和元(2019)年財政検証は厚生労働省が実施することとなったが、財政見通し等の作成に当たっては、 一元化後の厚生年金の各実施機関及び各所管省で協力して作業が行われている。⇒従来から公表している感応度分析(経済前提T〜Y、出生、死亡による差異)に加え、ピアレビューでは、より きめ細かい変動要因分析・感応度分析を実施している。 ・変動要因分析〜厚生年金被保険者数の見通しの前回財政検証からの変化の要因分析→近い将来では「雇用者に占める厚生年金被保険者数の割合・国民年金第2号被保険者数に対する国民年金第3号 被保険者数の比率等の変更」の影響が大きく、遠い将来では、「人口の前提の変更及び実績との相違」の影響が大 きい。 ・変動要因分析〜国民年金第1号・第3号被保険者数の見通しの前回財政検証からの変化の要因分析→第1号:当初は「雇用者に占める厚生年金被保険者数の割合・国民年金第2号被保険者数に対する国民年金第3号被保険者数 の比率等の変更」が下方シフトの大きな要因となっているが、2070年代半ば以降では「人口の前提の変更及び実績との相違」が それを上回る上方シフトの要因となっている。 第3号:当初「労働参加の前提の変更及び実績との相違」が下方シフトの大きな要因であるが、2070年代半ば以降では「人口の前 提の変更及び実績との相違」がそれを上回る上方シフトの要因となっている。 ・変動要因分析〜厚生年金の給付費の見通しの前回財政検証からの変化の要因分析【2004年度価格】→(p21参照) ・変動要因分析〜基礎年金の給付費の見通しの前回財政検証からの変化の要因分析【2004年度価格】→(p22参照) ・賃金との対比でみた相対的な年金額の水準の変化−基礎年金→賃金との対比でみた相対的な年金額の水準の見通し⇒高まる方向に変化しており、2004年度から2020年度前後にかけてそれ が拡大している。 その要因⇒3つの分析要因いずれからも一定の寄与が認められるが、新規裁定では「マクロ経済スライドの効果の変化」 によるところが比較的大きく、既裁定では「既裁定者の年金額を物価上昇率で改定する効果の変化」が比較的大きい。 ・賃金との対比でみた相対的な年金額の水準の変化−厚生年金→2004年度から2020年度前後にかけての変化は基礎年金と同様。厚生年金では、基礎年金とは異なり、マクロ経済スライドの効果が最終的にプラスのままであるが、これは、年金額の水準以外の 要素も作用した結果、マクロ経済スライドによる調整が緩和していることを意味する。 ・所得代替率の見通しの前回財政検証からの変化の要因分析→所得代替率50.8% ・感応度分析〜物価上昇率、賃金上昇率、運用利回り ・感応度分析〜足下の積立金 ・感応度分析〜被保険者数→厚生年金被保険者数を1%増加(国民年金第1号被保険者数を減少)させた場合、所得代替率は0.6%ポイント上昇、マクロ経済 スライドの終了年度は2年短縮、厚生年金被保険者数を1%減少(国民年金第1号被保険者数を増加)させた場合、所得代替率 は0.6%ポイント低下、マクロ経済スライドの終了年度は1年延長される結果となった。 ・公的年金制度の安定性の要旨→「公的年金制度の安定性の評価の視点」「公的年金制度の安定性の評価結果」参照。 ・今後の財政検証への提言(第5章 第1節からの抜粋)→公的年金の財政検証を巡る課題や留意点を整理し、今後の財政検証に向けた提言を行う⇒@〜Kまで。 ・確率的将来見通しについて→部会合同作業班における演者のコメント⇒米国の社会保障庁の数理レポートには確率的シミュレーションが掲載されているが、あくまで「付録」であり、かつ多くの留意点が 述べられている。中心的シナリオの周りの確率分布を示すとして、中心的シナリオは誰がどのような責任で選択するのか?前回 ピアレビューまで、ある意味惰性で続けてきたこの提案は、取り下げを含めて見直す必要があると考える。 令和元(2019)年財政検証に基づく公的年金制度の財政検証(ピアレビュー)(令和2(2020)年12月25日) 第5章:今後の財政検証に向けて→これまでのピアレビューでは、確率的将来見通しの検討が提言されてきた。これに対して令和元(2019)年財政検証の実施担当者からは「実施するためには課題が多いと認識している」との見解が示された。公的年金の超長期推計では、社会経済情勢に関する前 提は、将来予想される趨勢を織り込んでフォワードルッキングに設定することが不可欠であるが、こうした将来の趨勢を確率変動さ せる実用的な方法は見当たらない。また、仮に結果の確率分布が何らか算出できたとしても、超長期にわたり推計の不確実性が 高いなかで、その妥当性を評価又は判断することは難しいと考えられる。こうした点を踏まえれば、現状の技術の下での確率的将 来見通しを財政検証で作成・公表することを前提とした提言を引き続き行うことに対して現時点では慎重にならざるを得ないとの結 論に至った。 しかしながら、確率モデルの技術に関して、将来的な技術進歩の可能性もあることから、諸外国や他の諸分野の動向を継続的に 調査し、研究する必要はあると考えられる。 4. おわりに 年金数理部会は「年金数理に関する専門的な知識、経験を有する者等」から構成される部会であり、その設置主旨からも政策を 立案する機能からは距離があると考えます。政策立案は、内閣官房の全世代型社会保障構築会議、社会保障審議会年金部会 等の会議で議論されるものと考えます。 ![]() 次回も続き「資料2 事務局資料」からです。 |