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社会保障審議会障害者部会(第131回) [2022年06月29日(Wed)]
社会保障審議会障害者部会(第131回)(令和4年6月2日)
《議事》(1)報告書(案) (2)その他
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000195428_00058.html
◎資料 障害者総合支援法改正法施行後3年の見直しについて
〜社会保障審議会 障害者部会 報告書〜(案)
V 各論点について
4.精神障害者等に対する支援について(→今後変更があり得るもの?)
4―1 基本的な考え方 ↓
(精神疾患の現状)
→近年、増加傾向、平成 29 年には約 420 万人。令和2年9月調査⇒約6割の方が様々な不安を感じており、メンタルヘルスの不調 や精神疾患は、誰もが経験しうる身近な疾患となっている。 自殺者数⇒平成 22 年以降は 10 年連続で減少していたが、令和2年には 11 年ぶ りに増加に転じている。
(「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」の構築)→令和3年3月「精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築に 係る検討会」報告書がとりまとめられた。 精神保健医療福祉上のニーズを有する方が地域で希望する生活を実現し、継続するこ とができるよう、国は、保健、医療、福祉、居住、就労等、経済的な基盤の確保 にも資する包括的な支援を進めることはもとより、そうした基盤の充実を図っていくこ とが求められる。
(患者の権利擁護)→措置入院、医療保護入院等を規定する精神保健福祉法等の撤廃のために講じた措置 ・ 隔離・身体的拘束等を廃止するためにとった法律上・実践上の措置。
(地域の精神科医療機関の役割)→自治体が実施する精神保健相談の協力、協議の場への参画、多様な精神疾患 に対する医療の実現、精神科以外の診療科との連携等、・・。
(医療機関や福祉サービス事業者等の優れた実践的な取組の普及定着)→質の高いサービスを提供している医療機関や福祉サービス事業者等の優れた実 践的な取組を法令上の仕組みとして位置付け、普及定着を図ること、誰もが安心して自分らしく暮らせるようにするための基盤の整備を図っていく観点から。
(地域で安心して暮らせる精神保健医療福祉体制の実現に向けた検討会)→令和3年 10 月に「地域で安心して暮らせる精 神保健医療福祉体制の実現に向けた検討会」が設置。

4−2 精神保健に関する市町村等における相談支援体制について↓
(1) 現状・課題→
市町村⇒福祉分野に加え、精神保健も含めた相談支援に取り組むこと。8割以上の市町村が、自殺対策、虐待(児童、高齢者、障害者)、生活困窮者支援・生活保護、母子保健・子育て支援、高齢・ 介護、認知症対策、配偶者等からの暴力(DV)等の地域住民の身近な相談窓口として、精神障害者に限らず広く分野を超えて精神保健上の課題を抱えた住民を対象に精神保健に関する相談に対応している状況。まずは国⇒以下の措置を講じることにより、市町村の実施体制の整備を進めていくべき。
(2) 今後の取組↓
@ 法制度に関し検討すべき事項 精神保健福祉法に関し、以下の措置を講じることが必要。
→(@) 都道府県及び市町村が実施する精神保健に関する相談支援について、精神保健福 祉法に基づく相談支援を受けている精神障害者に加え、精神保健に関する課題を抱える者(注1・2)に対しても、相談支援を行うことができる旨を法令上規定するべ き。(注1・2)→P38に。(A)「国及び都道府県の責務」⇒(@)の市町村による相談支援の体制の整備が 適正かつ円滑に行われるよう、必要な助言、情報の提供その他の援助を行わなければ ならないこととするべき。 (B) 障害者総合支援法に基づき地方公共団体が単独又は共同して設置する、関係機関、関係団体、当事者その他の関係者により構成される協議会を活用し、精神保健に関する課題を抱える者を含めた地域の支援のあり方について協議を進めるべき(注 1・2→P39参照。)。 また、協議関係者の守秘義務を前提に、関係機関等に対し情報提供等を求めること ができることについても検討を進めるべき。(C) これらの取組には、担い手の確保・資質向上が不可欠となるため、現在「配置が 任意」とされている精神保健福祉相談員について、その配置状況を把握し、課題を分 析した上で、配置を促進する方策を検討するべきである。

A @以外に検討すべき市町村の体制整備に関する事項→ (@) 下位法令等の改正等(下位法令等を改正し、市町村が実施する精神保健に関する相談支援の位置付けを 明確にするべき。市町村保健センター等の保健師増員等、必要な体制整備のための対応を検討するべき)。 (A) 精神科の医師・他科の医師との連携(地域の精神科医療機関は、多職種チームを持ち、患者一人一人のケースマネジメントを行うノウハウ・人材を有することから、例えば、市町村から精神保健に関する相談業務の一部を公的な地域保健活動の一環として、こうした精神科医療機関に 委託し、協働して業務を行うことが考えられる。また、市町村が、地域の精神科医療機関の精神科医等の協力を得て、自宅等への 訪問支援を行う専門職、当事者、ピアサポーター等から構成されるチームを編成し訪問支援の充実に取り組むとともに、「包括的支援マネジメント」の基盤構築を図っ ていくことも重要。さらに、「かかりつけ医うつ病対応力向上研修」の活用等を通じ他科の医師と精 神科の医師との連携を強化するべき。令和4年度診療報酬改定⇒他科の 医師と精神科の医師等が連携して診療を行った場合の評価として「こころの連携指導料」が新設されており、他科の医師と精神科の医師が連携するともに、自治体とも協力して精神保健医療福祉上のニーズに対応することが求められる。自殺で亡くなった方⇒精神疾患を経験している場合が多く、特に自殺未 遂者は再企図のリスクも高いことから、精神科医療や生活支援を適切に受けられる よう支援体制の整備を図ることが必要。) (B) 市町村への単なる好事例の周知に留まらないノウハウの共有 ・ 精神保健の相談支援に関し、市町村が利用可能な国の事業について、制度横断で分かりやすく周知していくべき。
B 市町村のバックアップ体制の充実に向けて検討すべき事項
(保健所・精神保健福祉センター等の業務の明確化、診療報酬改定)
→令和4年度診療報酬改定⇒行政機関等の保健師等による家庭訪問の対象であって精神疾患の未治療者、医療中断者等に対する訪問診療・精神科訪問看護を実施した 場合の評価の仕組みを創設。今後、こうした取組による知見を踏まえつつ、 令和6年度の診療報酬改定での評価を含め、さらに検討を進めるべきである。
C 普及啓発の充実
(メンタルヘルス・ファーストエイドの考え方の活用)→「精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築に係る検討会」報告書(令和 3年3月)⇒精神保健医療福祉上のニーズを有する方が必要な保健医療サービス 及び福祉サービスの提供を受け、その疾患について周囲の理解を得ながら地域の一員として安心して生活することができるよう、精神疾患や精神障害に関する普及啓発を 推進することは、最も重要な要素の一つ、メンタルヘルス・ファーストエイド の考え方を活用する等、普及啓発の方法を見直し、態度や行動の変動までつながるこ とを意識した普及啓発の設計が必要。 こうした観点から、令和3年度より、心のサポーター(精神疾患への正しい知識と 理解を持ち、メンタルヘルスの問題を抱える家族や同僚等に対する傾聴を中心とした 支援者)の養成に向けた研修を開始している。 (学校教育等における普及啓発の充実)→検討会では、支援提供者側や制度・政策決定側の立場からの考察だけではなく、受 け手である立場からの思いや知見もきちんと反映されたものという趣旨で、入院制度 等について適切な在り方を形成していくためには、広く国民や当事者自身が精神保健 医療福祉などに関連する総論的知見を高められる機会の充実が、地域での実際の支えの充実とともに両輪で必要との意見があった。学校教育における普及啓発⇒学習指導要領の改訂により、本年4月から は、高等学校の保健体育の「現代社会と健康」に、新たに「精神疾患の予防と回復」 の項目が追加されており、効果的に普及啓発を推進するためには、教職員に対する普 及啓発が重要となる。その際には、すでに実践されているメンタルヘルス・ファーストエイドの考え方を用いた取組についても参考とすることが望ましい。 こうした観点からは⇒上述の心のサポーターの養成に向けた研修について、教職員に対して情報共有を行 う等の取組を関係省庁と連携して検討すること。 特に養護教諭については、「現在の生徒児童は、肥満・痩身、生活習慣の乱れ、メンタルへルスの問題等、多様・複雑化する課題を抱えており、養護教諭には健康診断、 保健指導、救急処置などの従来の職務に加えて、専門性を生かしつつこれらの課題に 対し中心的な役割を果たすことが期待されている」(文部科学省「現代的健康課題を 抱える子供たちへの支援〜養護教諭の役割を中心として〜」(平成 29 年3月))こと を踏まえ、子供達を支援していくことが重要。
(精神障害、精神疾患の理解促進に向けて)→地域で医療・福祉等の必要なサービスを受け、地域の一員として安心して生活するこ とができる体制の整備を進めるためには、精神障害、精神疾患についての理解を促進し、 スティグマを解消するための取組を充実させることが必要、例えば、当事者、ピアサポーター、家族等と協働し、地域住民との交流の場を設置する取組を促進すること。また、精神疾患が身近な疾患となる中、地域の精神科医療機関の役割についても、理解を深められるようにすることが重要。 市町村における協議の場は、自立支援協議会を活用していることが多く、精神科病院協会や医師会等の関係団体、精神科医療機関、保健関係者の参加が少ないとの指摘もある。精神科医療機関の役割⇒地域において理解が深められるよう、市町村は、積極的にこうした関係団体等の参加を求め、地域の精神保健福祉行政を支える 行政、福祉・介護サービス事業者、当事者、ピアサポーター、家族等との間で信頼関係の醸成を図るとともに、国においても、市町村における好事例の収集や横展開等を通じ た後押しを図ることが求められる。

4―3 精神科病院に入院する患者への訪問相談について↓
(1) 現状・課題
→入院中の患者について、第三者がその権利を擁護する仕組みの構築に向けてモデル事業や調査研究等を通じて、支援のノウハウの蓄積が進められてきた経緯⇒ 現在、厚生労働科学研究において、課題の整理・検討が進められている。
(2) 今後の取組 ↓
【基本的な考え方】
→精神科医療の日々の臨床では、患者のこころに関わる中で、患者の話を丁寧に聴き、 患者との共感を試みる診療が実践されている。また、精神科病院では、退院後生活環境 相談員による支援、退院支援委員会の開催等、法令の規定に基づき、患者の権利擁護を 図る取組が行われている。 他方で、精神疾患により、本人の意思によらず入院が必要とされる場合、こうした非自発的入院による患者は、閉鎖処遇に置かれており、外部との面会交流が 難しくなる。家族との音信がない市町村長同意による医療保護入院者⇒医療 機関外の者との面会交流が、特に途絶えやすくなる。 このため、医療機関から入院に関する十分な説明や支援が行われた場合であっても、 患者本人の孤独感や、これによる自尊心の低下が顕著な場合がある。 外部との面会交流を実質的に遮断する状況は、本人の意思によらず入院を強制される者 への処遇として、人権擁護の観点からも望ましくない。 したがって、市町村長同意による医療保護入院者を対象に、精神科病院の理解のもと、 精神科病院に入院する患者を訪問し、相談に応じることで、医療機関外の者との面会交 流を確保することが必要となる。  
【支援の内容】↓
@ 実施主体・枠組み
→精神科病院を訪問し、患者からの相談に応じる点を踏まえ、精神科病院を所掌し、かつ、精神科病院から患者の入院届等を受理する都道府県等 とすることが考えられる。 こうした支援に取り組む都道府県等は、現時点、必ずしも一般的とまではいえない。 そこで、都道府県等が行う任意の事業として位置付けた上で、全国の都道府県等での事 業実施を目指し、課題の整理を進めることが必要。 A 支援者→実施主体である都道府県等が、経歴等を踏まえて選任することが適当。 更に、国で標準化された研修の内容を示した上、都道府県等が実施する研修の受講を必須とするべき。 研修は、精神保健医療福祉に関する制度や現状、精神科医療における障害者の権利擁 護に関する内容、傾聴を中心とする支援の趣旨を含むものとするとともに、研修内容・ 期間等の検討⇒入院の初期段階は、患者・医師双方にとって信頼関係を構 築する重要な時期である点を考慮することが必要。 B 支援内容→支援者が精神科病院を訪問し、入院患者との面会交流を行う。 生活に関する一般的な相談に応じ、患者の体験や気持ちを丁寧に聴くとともに、必要な情報提供を行うことを基本とする。 こうした支援の導入を図るに当たり、支援の対象者は精神科病院に入院する市町村 長同意による医療保護入院者を中心とする。 C その他 →支援者には守秘義務を求める。 制度の対象となる患者→医療機関の管理者から入院時に書面等で案内するとともに、例えば、患者の立場に立った説明文を添付する、支援の申込先や相談先等を病院内に掲示する等、患者にとって分かりや すい方法で周知するべきである。特に、指定医には、患者に分かりやすい方法で説明する役割があるものと考えられる。 都道府県等→支援者の支援のあり方や課題について、関係者が意見交換を行う場を 設けることが望ましい。 事業を円滑に実施できるよう、面会を行う精神科病院の理解を得ながら進めること が必要である。 今後の検討課題→こうした支援を望む入院患者に支援がより広く普及するよう、調査研究等を活用し、実施体制の構築を進めていくことが必要である。
・ 研究班の報告→支援者は、以下の点に留意することが適切であるとされている。⇒独立性:当事者への意思決定機関やサービス提供機関から独立していて利害関係を 持たない。 エンパワメント:自身や自尊心を取り戻す過程でもある。 当事者主義:本人の希望や意思に基づいて行動。 秘密を守る(守秘):プライバシーの尊重、当事者から聞いたことを他人に伝えない、信頼関係の前提。 平等:すべての当事者が平等にアクセスできること。 当事者参画:常に当事者の参画を得て進める。

4−4 医療保護入院 ↓
4−4−1 医療保護入院の見直しについて
(1) 現状・課題
→平成 25 年の精神保健福祉法改正⇒保護者制度の廃止、医療保護入院における入院手続等の見直し、精神科病院の管理者に対する退院促進措置の義務付けが行われ、現在の医療保護入院制度が整備された。 精神科医療機関⇒医療保護入院者の退院に向けた相談支援等の業務を行う「退院 後生活環境相談員」の選任、退院後に利用可能な障害福祉サービス等の利用に向けた相 談等を行う「地域援助事業者」の紹介、医療従事者や患者、家族等が出席し患者の退院 に向けた取組等を審議する「医療保護入院者退院支援委員会」の設置等、法令の規定に 基づき、患者の権利擁護を図りながら、入院医療が提供されている。 医療保護入院制度の必要性⇒「これからの精神保健医療福祉のあり方に関 する検討会」報告書(平成 29 年2月)→精神障害者に対する医療の提供については、できる限り入院治療に頼らない治療的 な介入を行うことが原則であり、その上で、入院治療が必要な場合についても、できる限り本人の意思を尊重する形で任意入院を行うことが極めて重要である。ただし、病気の自覚を持てない場合があり、症状の悪化により判断能力そのものが 低下するという特性を持つ精神疾患については、本人が病気を受け止めきれないこと もある中で、自傷他害のおそれがある場合以外にも、入院治療へのアクセスを確保する仕組みが必要と考えられる。 その上で、医療保護入院は、指定医の判断により入院治療が必要とされる場合であって、任意入院につなげるよう最大限努力をしても本人の同意が得られない場合に選 択される手段であるということを再度明確にするべきである。 今夏目途で障害者の人権及び基本的自由の享有を確保すること等を目的とする障害者 権利条約に基づく初回の対日審査が予定されており、障害者権利委員会からは、医療保 護入院等の強制入院の撤廃等に関する事項について、事前の情報提供が求められている。 患者の権利を確保するための取組をより一層推進させていくことが重要。 諸外国においても、患者の同意を得ずに入院を行う制度は存在しており、権利擁護の仕組みとともに運用されている。 こうした点を踏まえ、医療保護入院→誰もが安心して信頼できる入院医療 が実現されるよう、課題の整理に取り組み、具体的かつ実効的な方策を検討することが 必要。検討に当たっては、(1)医療その他福祉等のサービスを患者本人の病状に応じ、地域で切れ目なく受けられるようにするためのアクセス確保の観点から、患者の症状によっては、その同意によらない入院を行えないとすると、患者の不利益につながることがある という視点、(2)患者の権利擁護の視点の両面について、十分に勘案することが必要。具体的な検討に当たっては、以下の3つの視点を基本とすべき。⇒視点1:入院医療を必要最小限にするための予防的取組の充実。視点2:医療保護入院から任意入院への移行、退院促進に向けた制度・支援の充実 。 視点3:より一層の権利擁護策の充実。

(2) 今後の取組
@ 入院医療を必要最小限にするための予防的取組の充実(視点1)
(基本的な考え方)
→医療、障害福祉・介護、住まい、就労等の社会参加、地域の助け合い、教育・普及啓発が包括的に確保された「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」の構築を推進し医療その他福祉等の各サービスを地域の関係機関・関係者の協働・連携のもと、切れ目なく受けられるようにすること、これにより、「支える側」・「支えられる側」 という従来の関係を超えて、相互に助け合いながら暮らせる地域づくりを目指すこと が必要である。
(具体的な方策)→ (@) 患者本人のニーズの実現に向けた「包括的支援マネジメント」の推進(訪問診療・ 訪問看護の充実、外来患者に対する相談体制の充実、医療・福祉等の地域の多職種・ 多機関連携の推進等)。 精神障害の特性として、疾病と障害とが併存しており、その時々の病状が障害の程 度に大きく影響するため、医療、障害福祉、介護その他のサービスを切れ目なく受け られる体制を整備する必要がある。「包括的支援マネジメント」とは、こうした観点から、本人を中心として、医療・ 精神保健・障害福祉等の多職種・多機関が相互に連携することにより、訪問診療や訪問看護、障害福祉サービス等のサービスを継続的かつ包括的に受けることができる 体制の整備を進めるもの。 以下の方策等を通じ、こうした「包括的支援マネジメント」の推進をより一層図っ ていく必要。⇒現在、モデル事業として、精神科医療機関と地域生活支援拠点等に配置され、両者の連携を支援するコーディネーターを中心に、医療・福祉分野の多職種・多機関 の関係者が連携し、精神障害者の地域生活の実現に向けた支援内容を明確にする ための事業を進めている。また、令和4年度診療報酬改定→行政機関等の保健師等による家庭訪問の対 象であって精神疾患の未治療者、医療中断者等に対する訪問診療・精神科訪問看護 を実施した場合の評価の仕組みを創設するとともに、医療機関の精神科外来に通 院する重点的な支援を要する患者に対し、多職種による包括的支援マネジメント に基づいた相談・支援等を実施した場合の診療報酬上の評価の仕組みを創設している。今後、こうした取組による知見を踏まえつつ、令和6年度の診療報酬・障害報酬 の同時改定での評価を含めて検討を進めるべき。
(A) 患者の緊急のニーズに対する受診前相談及び入院外医療等の充実→精神症状の急性増悪、精神疾患の急性発症等、患者の緊急のニーズに対する精神科 救急医療体制は、精神保健医療福祉上のニーズを有する方の地域生活を支える重要 な基盤であり、重層的な支援体制のもとでの平時の対応並びに受診前相談及び入院 外医療(夜間・休日診療、電話対応、往診、訪問看護等)の体制整備とあわせ、入院 治療(急性期)へのアクセスを 24 時間 365 日確保することが必要となる。 受診前相談⇒精神医療相談窓口や精神科救急情報センターの体制整備 に向けた支援が進められており、地域の実情を把握しながら、より一層の充実を図ることが重要。 昼夜を問わず、患者の緊急のニーズに対応できるよう、今後、地域の実情に応じた 受診前相談の体制整備、時間外診療への対応や入院の要否に関する判断の診察、往診、 訪問看護等の入院外医療の更なる充実について、診療報酬等の評価を含めて検討を 進めるべきである。

A 医療保護入院から任意入院への移行、退院促進に向けた制度・支援の充実(視点2)
(具体的な方策)↓
(@) 入院期間について
→精神科病院においては、退院支援委員会や定期病状報告の仕組みを通じ、入院中の 患者の任意入院への移行や退院促進に向けた支援のほか、急性期のチーム医療では、クリニカルパス(院内標準診療計画書)を活用した早期退院の取組等が進められている。 他方で、現行の精神保健福祉法⇒入院時に任意入院が行われるよう努める旨の規定が置かれている(第20条)が、入院中の患者について、任意入院への移行を求 める明文規定は設けられていない。 入院治療を含めた精神科医療は、本人の意思を尊重する形で行われることが重要 あり、患者の同意を得ることが困難な状況で入院を開始することを要した場合にも、その後の症状等の変化に応じて対応する必要があることから、医療保護入院中の患者についても、その症状に照らし本人が同意できる状態になった場合は、速やかに 本人の意思を確認し、任意入院への移行や入院治療以外の精神科医療を行うことが 必要である。 こうした確認は、入院中に日々行われるものであるが、制度上もこうした確認が確 実に行われることを一定の頻度で担保できるよう、医療保護入院の入院期間(注)を 定め、精神科病院の管理者は、この期間ごとに医療保護入院の要件を満たすか否かの 確認を行うこととするべき。 注 具体的な期間⇒医療保護入院者における当初の入院計画での予測入院月数は、6割 以上の入院者が「3ヶ月以上6ヶ月未満」とされていることを踏まえ、「3ヶ月ごと(入院から6ヶ月経過後は6ヶ月)」とすることが考えられる。一方、検討会では、入院期間の短縮を図る 観点から「1ヶ月ごと(入院から6ヶ月経過後は3ヶ月)」とする意見もあった。 また、検討会では、具体的な検討を進めるに当たっては、現行の退院支援委員会、 定期病状報告等の制度との整合性に留意する必要があるとの意見や、本人の意思に 反して入院させる心理的な負担を家族に繰り返し求める点に配慮が必要との意見が あった。さらに、入院期間を定める場合には、入院届の審査を担う精神医療審査会の 事務が増加することも考えられることから、適切な人員上の手当を含む対応について検討が必要との意見があった。 こうした制度上の枠組みのほか、入院期間の短縮化に向けては、入院が長期に及ぶ 背景について、調査研究等を活用して実態に即した検討を長期的な視野で進めるべき。 具体の制度及び実際の運用の在り方の検討を進めるに当たっては、こうした意見 についても考慮していくことが必要である。

(A) 退院促進措置の実態を踏まえた拡充策→退院促進措置の実態に関する調査(注)⇒平成 25 年改正の退院促進措置の導入により、新規入院患者の退院促進に向けた 院内連携は着実に進展。長期入院者の退院に向けては、地域援助事業者等との地域・院外での連携等、地域により課題が見られ医療保護入院以外の入院者に対する退院措置のあり方にも課題が見られる。 こうした現状に照らし、担当者調査では、医療保護入院者の早期退院に必要と感 じている取組として、家族への適切な支援のほか、行政・基幹相談支援センター・ 市町村障害者相談支援事業・地域支援者・ピアサポーター・弁護士等司法関係者の 関わり、診療報酬の見直しが挙げられる とされている。 注 令和3年度障害者総合福祉推進事業「退院後生活環境相談員の業務と退院支援委員会の開催 等の実態に関する全国調査」(公益社団法人日本精神保健福祉士協会)。 こうした結果を踏まえ、⇒医療保護入院以外の入院者についても退院促進措置の対象とすべき。 こうした対象者の拡大や、地域援助事業者等との更なる連携を実現しつつ、支援 の質を担保していく観点からは、専門職の活用が重要となるため、必要な人員等が 確保できるよう、診療報酬における適切な評価を含めた検討を行う必要がある。
(B) 長期在院者への支援→長期在院者の支援に向けては、実際に訪問し、一人の顔の見える患者、自治体の住 民の一人として支援を進めていく取組が重要と考えられ、そうした観点から、市町村 が地域生活支援事業として実施する障害者相談支援事業実施要領においては、権利 擁護のために必要な援助の例として「精神科病院を訪問し、入院患者の退院に向けた 意思決定支援や退院請求などの権利行使の援助を行うよう努めること」とされてい る。 慣れない環境での入院治療はそれだけで孤独や不安を伴うなか、病院の中で、十分 に自分の気持ちや状況について話を聞いてもらえない、説明が得られない、伝えては みたが上手く伝わらない等の体験が重なることで、当初抱えていた孤独や不安が増大 し、これにより、次第に退院を諦めざるを得なくなり、長期在院につながっていくこ とが考えられる。 こうした観点から、市町村の長期在院者への支援→当事者、ピアサポー ターとの協働のもと、長期在院者自身の視点から行われることが望ましい。そのため、 市町村において都道府県等と連携しながら、当事者、ピアサポーターと協働できる体 制の構築を進めていくことができるよう、国においても十分な基盤の整備を検討する ことが重要。 ○ 地域生活の実現に向けては、利用者と同じ立場に立って相談・助言等を行うことが、 本人の不安の解消や、自分は一人ではないという安心やエンパワメントにつながっ ていくという観点を踏まえ、令和3年度の障害福祉サービス等報酬改定において、ピアサポートの専門性について新たに評価が行われている。 国においても、長期在院者支援に積極的な自治体の取組を支援するとともに、先進 的な自治体の取組が全国の市町村で実施できるように共有を図るなど、市町村のバ ックアップを進めるべき。 また、退院促進措置に係る連携先として、地域援助事業者に加え、地域生活支援事 業において障害者相談支援事業を実施する市町村を追加すべきである。

B より一層の権利擁護策の充実(視点3) ↓
(具体的な方策)
→病院管理者が医療保護入院を行った場合に医療保護入院者に対して書面で行う告 知の内容について、現行の精神保健福祉法では、入院措置を採る旨、退院請求・処遇 改善請求に関すること、入院中の行動制限に関することが定められている。 こうした入院措置がどのような理由から行われたのか、患者が医師から説明を受ける機会を保障するとともに、入院措置を行う精神科病院の管理者について慎重な判断を促し、患者の権利擁護を図るため、告知を行う事項として、新たに入院を行う理由 を追加すべきで、都道府県知事等が行う措置入院についても、同様の対応を行うべき。医療保護入院の同意を行う家族等は、退院請求権や処遇改善請求権を有する ことから、告知を行うことが求められる旨を明文で規定すべきである。

C 今後の検討課題について→誰もが安心して信頼できる入院医療が実現されるよう、今後、患者の同意が得られ ない場合の入院医療のあり方などに関し、課題の整理を進め、将来的な見直しについて検討していくことが必要。
(患者の同意が得られない場合の入院医療のあり方に関する基本的な考え方)→医療へのアクセス確保の観点から、患者の状況・症状によっては、その同意によらない入院を行えないとすると、患者の不利益につながることがあるのではないか。患者本人の同意がない場合の入院手続について、精神科と他科とで対応を区別 する合理性があるか。 他方で、精神科の入院患者⇒その特性を踏まえた入院手続とともに、 退院等に向けた支援や入院中の処遇の改善、入院から退院までの患者の権利擁護 に向けた支援の内容・担い手等、他科の場合よりも充実した権利擁護の仕組みが必要ではないか。 また、検討会において、平成 24 年6月の「入院制度に関する議論の整理」で示 された考え方に対しては、患者の同意が得られない場合の入院医療の必要性が、直 ちに現行通りの医療保護入院の必要性を意味するものではないため、両者を区別 して検討すべきとの意見があった。こうした意見を踏まえた上で、今後、患者の同 意が得られない場合の入院医療のあり方について、さらに検討を行うことが必要 ではないか。
(患者のニーズに応じた医療の提供等)→統合失調症の急性期の状態等にあり患者が明確に同意を拒否している場合がある一方、認知症等により病状は安定しているものの患者自身が有効な同意の意思表 示を行えない場合が増えている現状も踏まえ、精神疾患の特性により、様々な場合 があり得ることを念頭に置く必要があるのではないか。 認知症等の入院患者が増えている現状のもと、患者の状態に応じた適切なサービ スを提供し、生活の質(QOL)を向上させる観点からは、今後精神病床のダウンサイジング(縮小のこと)と並行して患者のニーズに応じた医療・居住の場の整備を進めていくため の方策の在り方について、既存の制度の枠組みに限ることなく検討していくことも 重要ではないか。
(関係者の負担等)→さらに、患者が医療にアクセスすることが阻害されないようにしつつ、医療機関 や患者、現行法では同意を行うことが求められている家族等、特定の者に過度の負 担を求める仕組みとならないように留意することも必要ではないか。
(海外の制度との対比等)→精神疾患を有する患者は、どのような体系で入院医療を受けることができるのか、 海外の制度と対比しながら、患者の同意が得られない場合の入院医療のあり方につ いて、総合的な検討を進めることが必要ではないか。

4−4−2.医療保護入院の同意者について
(1) 現状・課題
→ 「これからの精神保健医療福祉のあり方に関する検討会」報告書(平成 29 年2月)では、現在の家族等同意の機能について、入院することを本人に代わって同意することではなく、@医師の判断の合理性(説明に対する納得性)、A入院治療が本人の利益に資するかについて、本人の利益を勘案できる者の視点で判断する点にあると整理できる。 その上で、@については、現在の家族等同意では、家族等に医学的な専門知識まで必ず しも求めてはおらず、医師が家族等に対し、理解しやすいよう丁寧に病状や入院治療の 必要性等を説明した上で、家族等が医師の説明に納得して判断できれば足りると考えら れる、Aについては、家族等には、本人についての情報をより多く把握していることが期 待されていると考えられる、とされている。 検討会では、家族等同意については、同意したことで家族の精神的負担や本人との関 係性の悪化につながるため、廃止してほしい、また、市町村長同意については、医療機 関の判断を追認する形で手続が行われているのではないか、との意見があった。

(2) 今後の取組
(同意者についての議論)
→医療保護入院の同意者に関する検討会での意見を整理。⇒P52表、「前提の考え方」「理由」「課題」について「(現行)家族等」「(現行)市町村長」「指定医のみ」「代理人」「病院外の精神保健福祉士」「司法」のそれぞれの意見説明。
(医療保護入院の同意者について)→現状では、家族等、市町村長以外の同意者を想定す ることは現実的には容易でないため、家族等同意及び市町村長同意⇒現行の 仕組みを維持することになるものと考えられる。 ただし、家族等同意についての家族等の負担、市町村長同意についての医療機関の判 断の追認に係る意見⇒検討会での議論も踏まえ、適切な対応を検討すべき(注)。 その上で、引き続き、今後の医療保護入院患者数の推移等を踏まえながら、適切な制度のあり方を検討していくことが必要。 注 具体的に考えられる方策の具体例 →家族等同意:入院医療を必要最小限にするための予防的取組の充実、緊急時における受診前相談及び入院外医療の充実、精神疾患や精神障害に関する普及啓発(特に学校教育における普及啓発)、予算事業を活用した家族同士の交流の場の提供。 市町村長同意:現行の「市町村同意事務処理要領」に基づく事務処理の要請。

4−4−3.本人と家族が疎遠な場合等の同意者について
(1) 現状・課題
→家族等同意の機能は、本人について多くの情報を把握し、「本人の利益を勘案できる者 の視点で判断する点にある」と整理されているが、本人と家族が疎遠な場合等は、こうした機能を期待することは困難な場合がある。 他方で、市町村長同意は、現行の精神保健福祉法において「家族等がない場合又はその家族等の全員がその意思を表示することができない場合」とされているため、疎遠であっても家族がいる場合等は、当該家族の意向を確認する必要がある。
(2) 今後の取組→長期間の音信不通等により家族が同意・不同意の意思表示を拒否する場合、家族がどうしても同意・不同意の判断を下せない場合等、当該家族の意向を確認することができない場合は、市町村長が同意の可否を判断できるようにすべき。 また、例えば、患者本人と家族等との間でDV、虐待等が疑われるケースの場合は、 DV防止法や虐待防止法等の規定による一時保護等の措置の対象となっているかにつ いて、配偶者暴力相談支援センター、児童相談所、市町村等の公的機関への確認を通じ、 客観的に判断することもあり得ると考えられる。したがって、こうしたケース⇒DV、虐待等の関係にある家族に代わり、市町村長が同意の可否を判断できるよう にすることについて、実務的な課題の整理を行いながら、検討することが適当。さらに、検討会において、医療保護入院の同意については、家族等ではなく、基本的 に市町村長が行うこととしてはどうか、との意見もあった。今後、医療保護入院の縮減 を図っていく中で、本人の利益を勘案できる者の視点で判断するという家族等同意の意 義、市町村の体制整備のあり方と事務負担への影響についても勘案しながら、さらに検 討を進めていくことが必要である。

4−4−4.精神医療審査会について↓
(1) 現状・課題
→「精神医療審査会に関するアンケート調査」調査報告書(令和4年3月 公益社団法人 日本精神保健福祉士協会)⇒委員の確保が困難、委員の日程調整が難航する等の理由で審査期間が長期化してい る現状。精神医療審査会の事務局が、必ずしも処遇改善請求までには至らない、医療機関に 訪問し、患者の話の傾聴や情報提供を行うといった業務についても、患者の権利擁護 の観点から担っている現状 が把握された。 精神医療審査会⇒行政機関との関係性が必ずしも明確ではない中で、委員の確保や委員間の日程調整が整わず、退院等請求の審査期間が長期化する等、専門的機関としての機能が十分に果たせていないとの指摘がある。
(2) 今後の取組→精神医療審査会の機能向上に向けては、全国精神医療審査会連絡協議会との意見交換 を行うなど、審査会の実態を把握した上で、引き続き、実効的な方策を検討する必要。研究事業による分析を深め、精神医療審査会運営マニュアルの改正を目指すべき。 他方、措置入院者⇒現在、定期病状報告の際に精神医療審査会の審査の対 象としているが、国際人権B規約(市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規 約))9条4項の趣旨を踏まえ、精神保健福祉法において、措置入院を行った時点で速や かに精神医療審査会の審査を実施できるようにすることが望ましい。 また、精神医療審査会運営マニュアルでは、合議体を構成する医療委員、法律家委員 及び保健福祉委員について、審査に係る患者と一定の関係性がある場合等に議事に加わ ることができないと定められているが、保健福祉委員について、具体的にどのような者 が想定されるかは示されていない。そうした点を踏まえ、保健福祉委員について、具体 的には、精神保健福祉士、保健師、看護師、公認心理師等が想定されるが、都道府県知事等の判断により、例えば、当事者や家族も含めることができることを示すべきである。

4−5 患者の意思に基づいた退院後支援
(1) 現状・課題
→国会での審議を踏まえ、「地方公共団体による精神障害者の退院後支援 に関するガイドライン」(平成 30 年3月厚生労働省障害保健福祉部長通知)が示されている。まず、退院後支援のガイドラインについて見直しを行い、退院後支援⇒津久井やまゆり園事件の再発防止策を契機とした取組ではないことを明文で規定するこ とが必要。その上で、入院形態を問わず、退院後支援を行うものとされるガイド ラインとの乖離がなくなるよう、退院後支援の推進に向けた方策を整理していくことが 求められている。
(2) 今後の取組 ↓
(ガイドラインに基づく退院後支援の推進に向けた施策)
→患者の意思に基づいた退院後支援は、入院早期から支援体制を構築し、病院と連携しながら、多職種・多機関の協働を図るものであり、「包括的支援マネジメント」の一環と しての位置付けを有する。 より一層充実した退院後支援を実現していくためには、広く患者の入院形態を問うこ となく支援が行われるよう、より一層の推進策の検討が必要。 そうした観点のもと、引き続き、退院後支援の効果等を見極めつつ、診療報酬における 適切な評価を含めた検討を行う必要。 (警察の会議への参加)→警察の関与を心配に思う当事者がいる一方、警察の支援を希望する当事者がいること を踏まえ、警察の会議への参加の可否について検討することが必要である。 退院後支援のガイドラインでは、「会議には防犯の観点から警察が参加することは認め られず、警察は参加しない」と明記されている。例外的に警察が支援関係者として、「警 察が支援関係者として本人の支援を目的に参加することは考えられるが、この場合は、 本人及び家族その他の支援者から意見を聴いた上で、警察以外の支援関係者間で警察の 参加についての合意を得ることが必要。この際、本人が警察の参加を拒否した場 合には、警察を参加させてはならない」と規定されている。これは、単に本人の同意の下 で参加するという規定では、強引に同意を求めていく状況も考えられるためである。 ガイドラインは、警察の会議への参加について慎重な手続が求められているが、こうした手続を設けてもなお警察の関与を不安に思う当事者がいるとの意見を踏 まえ、関係省庁から各都道府県警察に対して、法令の規定に基づく適切な個人情報の取扱いを求める通知を発出し、地域によって対応にばらつきが生じないよう依頼する 等の対応を検討すべきである。

4−6 不適切な隔離・身体的拘束をゼロとする取組 ↓
(1) 現状・課題
→隔離・身体的拘束は、精神保健福祉法上、精神科実務経験を有し法律等に関する研修を修了した指定医の専門的知見に基づき、代替方法によることは困難であり、医療・保護を図る上でやむを得ないと判断された場合に、必要最小限の範囲で行われる。 このように、精神科医療機関における隔離・身体的拘束は、法律の規定により、患者 の権利擁護に十分配慮することとされている。 精神科病院の医療は患者のために行われるものであり、患者の尊厳が確保されること が何より重要。誰もがいざというとき、安心して信頼できる入院医療を実現するには、患者の権利擁護に関する取組がより一層推進されるよう、実際の医療現場において、精神保健福祉法の規定に基づく適正な運用が確保されることが必要である。 諸外国においても、やむを得ない場合に患者の隔離・身体的拘束を行う制度は存在し ており、人権擁護の仕組みとともに運用されている。 ○ そうした観点から、不適切な隔離・身体的拘束をゼロとすることを含め、隔離・身体的拘束の最小化に、管理者のリーダーシップのもと、組織全体で取り組み、行動制限最小化を組織のスタンダードにしていくことが求められている。
(2) 今後の取組 ↓
(処遇基準告示(注)の見直し等)
注 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第 37 条第1項の規定に基づき厚生労働大臣が定める 基準(昭和 63 年厚生省告示第 130 号)→ @ 現在「基本的な考え方」で示されている切迫性・非代替性・一時性の考え方について、処遇基準告示上で要件として明確に規定するべき。 A 単に「多動又は不穏が顕著である場合」に身体的拘束が容易に行われることのな いよう、「多動又は不穏が顕著である場合」という身体的拘束の要件は、多動又は不 穏が顕著であって、かつ、患者に対する治療が困難であり、そのまま放置すれば患者の生命にまで危険が 及ぶおそれが切迫している場合や 常時の臨床的観察を行っても患者の生命にまで危険が及ぶおそれが切迫している場合に限定し、身体的拘束の対象の明確化を図るべきである。 その上でBCのプロセスにより、組織全体で@の3要件を満たすか否か、Aの定義に 当たるかどうかを判断できる体制を構築するべきである。 この点に関し、検討会では、「多動又は不穏が顕著である場合」は拡大解釈のおそれ があるため要件から削除すべきとの意見、身体拘束を原則廃止すべきとの意見があった 一方、治療の必要性の観点も考慮されるべきとの意見があった。他方で、治療の必要性 の要件については、身体的拘束について新たな対象を生み出すおそれがあるのではない かとの意見、点滴等生命維持のために必要な医療行為を行うための身体固定について、 短時間の場合であっても一定のルールのもと行うこととすべきではないかとの意見があ った。 今後、「多動又は不穏が顕著である場合」という要件を見直すに当たり、非代替性の 要件の判断手法(注)や行動制限最小化委員会の在り方に関する課題を含め、調査研究 等により、告示の見直し内容とあわせ、実際の運用について、具体的な現場の指標とな るよう、検討を深めていくことが必要。 注 非代替性の要件の適正な判断に資するよう、国や医療関係者等が、身体的拘束に至らないため の代替手段について、精力的な検討を行う必要がある。

B 隔離・身体的拘束の最小化について、管理者のリーダーシップのもと、組織全体 で取り組む。隔離・身体的拘束の可否は、指定医(注)が判断するとともに、院内 の関係者が幅広く参加したカンファレンス等において、病院全体で妥当性や代替手 段の検討を行う旨を明示するべきである。 注 指定医については、患者の人権を守るため、管理者とともに行動制限最小化に組織全体で取 り組み、行動制限の最小化を組織のスタンダードにできるようにしていくことが期待されてい る。 国としても、指定医の資質を担保した上で、安定的な確保に向けた方策を検討するととも に、指定医研修のシラバスを定期的に見直し、研修の機会を通じて、指定医に直接に訴えてい くことが必要である。

C Bと同様、行動制限の最小化を管理者の責任のもと組織のスタンダードにしてい く観点から、⇒行動制限最小化委員会の定期的な開催。隔離・身体的拘束の最小化のための指針の整備。従業者に対し、隔離・身体的拘束の最小化のための研修を定期的に実施。

D さらに、隔離・身体的拘束を行うに当っては、現在、患者にその理由を「知らせ るよう努める」とされている、法律に基づく適正な運用を担保すべく、これ を「説明する」と義務化するべきである。 その際、当該説明については、単に形式的に行われるのではなく、入院中の処遇に 関するものとして患者がその内容を十分に把握できるようにすることが重要。このため、処遇改善請求等の権利内容についても説明するとともに、患者がその内容 を把握できない状態にある場合は、再度説明を行う必要がある旨を明らかにするべき。

E こうしたプロセスを確保し、隔離・身体的拘束を最小化するための診療報酬上の 取扱いを含む実効的な方策を検討するべきである。
F 検討会では、上記の他、重度訪問介護を利用している障害支援区分6の入院中の 患者は、24 時間見守り、意思決定支援、コミュニケーション支援を内容とする重度 訪問介護の活用が可能となっている。さらに入院中の利用者の状態像や支援ニーズ 等に関するデータ等の収集を行い、入院中の重度訪問介護の利用によるコミュニケ ーション支援等の必要性を判断する基準や指標等を検討する必要があるとの意見が あった。

4−7 精神病床における人員配置の充実について
(1)歴史的経緯
→わが国の精神医療行政⇒精神病院法(大正8年制定)により、公的精神病 院を設置する考え方が初めて明らかにされたが、公立精神病院の設置が進んでいない状 況もあり、民間の代用精神病院制度が設けられた(注1・2)。 注1 代用病院制度:精神病院法では、⑴内務大臣は道府県に精神病院の設置を命じることができ、道府県が設置した精神病院は地方長官の具申によって当該命令により設置したものとみな すことができる、⑵内務大臣は⑴の精神病院に代用するため私立精神病院を指定することがで きる(代用精神病院)とされた。 注2 昭和6年には、患者総数7万余人に対し、収容人員は 1.5 万人程度(うち公立精神病院:0.2 万人程度、私立精神病院:1万人程度)とされている。
戦後、精神衛生法(昭和 25 年制定)により、精神病院の設置が都道府県に義務付け られたものの、昭和 29 年7月の全国精神障害者実態調査によって、精神障害者の全国 推定数は 130 万人、うち要入院は 35 万人で、病床はその 10 分の1であった。 このため、同年、精神衛生法が改正され、民間精神病院の設置・運営に要する経費の 国庫補助の規定が設けられ、民間病院を中心とした病院・病床の整備が進められた。5 年後の昭和 35 年には約 8.5 万床に達する等、精神障害者に対する医療保護の充実が図られた。 医療従事者の確保・養成が課題となる中、昭和 33 年には厚生事務次官通知(注1) が発出され、いわゆる「精神科特例」として、精神科病院における配置標準(注2)⇒医師は他の病床の3分の1、看護師は他の病床の3分の2と規定された。 注1 厚生事務次官通知に関して、昭和 33 年各都道府県知事宛厚生省医務局長通知において、医師 の確保が困難な特別な事由があると認められるときは、暫定的にこれを考慮した運用も止むを得 ないことが示された。 注2 医療法上、人員配置標準を満たさない場合であっても、直ちに業務停止とは連動されておら ず、最低基準ではなく「標準」とされている。
こうした歴史的な経緯もあり、民間精神科病院⇒必ずしも十分とはいえな い基盤のもと、地域における過大なニーズに対応する役割を担ってきたとの指摘もあ る。


(2) 今後の取組
(人員配置の充実について)
→いわゆる「精神科特例」については、昭和 33 年の厚生事務次官通知により定められ ていたが、平成 13 年の医療法改正に伴い、当該通知は廃止。 医療法上、精神病床⇒一般病床・療養病床と異なり、病床種別上、機能が 細分化されていないという違いがある。 こうした中で、精神病床における人員配置標準⇒療養病床と同等の基準が 設けられているほか、診療報酬上、急性期の精神病床⇒一般病床と同程度の 医師・看護師の配置を求め、早期に退院できるよう促している。 「精神科医療の機能分化と質の向上等に関する検討会」における平成 24 年の意見の整理でも、今後の方向性として、病床の機能に応じ、看護職員に加え、精神保健福祉士、作業療法士、理学療法士等の多職種の従事者による人員配置とする旨が示されている。 入院患者数の減少に応じて、精神病床について医療計画に基づき適正化を図っていくとともに、入院患者に対してより手厚い人員配置のもとで良質な精神科医療を提供できるよう、個々の病院の規模や機能に応じ、医師・看護職員の適正配置や精神保健福祉士、作業療法士、公認心理師等を含む適切な職員配置を実現していくことが求められ る。

4−8 虐待の防止に係る取組
(1) 現状・課題
→医療機関の従事者による身体的虐待、性的虐待、精神的虐待、放棄・放置、経済的虐 待といった虐待行為はあってはならないものであるが、医療機関従事者による虐待事案 が現に発生している状況にある。こうした悪質な行為は潜在化させてはならず、精神科 医療機関⇒都道府県等を通じ、虐待行為の発生防止に加え、早期発見、再発 防止に向けた対応を行っている。 また、令和2年3月に報道された精神科病院における虐待事案を受け、 @ 精神科医療機関に対し、虐待事案の発生防止や早期発見の取組強化、事案が発生し た場合の都道府県等への速やかな報告を要請するとともに A 都道府県等が行う実地指導において虐待が疑われる事案の把握を強化し、虐待が強 く疑われる場合は、事前の予告期間なしに実地指導を実施できることとする等、指導 監督の徹底を図っている。

(2) 今後の取組↓
(障害者虐待防止法に基づく虐待防止措置の徹底)
→管理者のリーダーシップのもと、虐待行為の発生防止、早期発見、再発防止に向けた 取組を組織全体で推進し、より良質な精神科医療を提供することができるよう、虐待を 起こさないことを組織風土、組織のスタンダードとして醸成していくための不断の取組が重要。 こうした観点から、国においても、医療機関及び都道府県等に対して、障害者虐待防 止法第 31 条の虐待防止措置の取組例について周知を進め、虐待行為の発生防止、早期発 見、再発防止の徹底を図っている。 ○ 精神科医療機関の中には、病棟単位での倫理カンファレンスの実施、患者や家族の声 の傾聴等を通じて、虐待が起きないようにするための組織風土を醸成することにより、 虐待行為の潜在化防止を図る取組も見られることから、医療従事者による積極的な取組を行う現場づくりを実現していくことも重要。
虐待行為の潜在化を防ぐための仕組み)→他方で、医療機関は、障害者虐待防止法に基づく通報義務の対象とされておらず、通報者保護の仕組みが設けられていない。虐待の疑いを発見した精神科医療機関の職員等 が、行政機関への通報を躊躇し、悪質な虐待行為が潜在化することのないよう、通報義 務及び通報者保護の仕組みを設けることについて、制度上の対応を検討するべき。
こうした仕組みが整備されることにより、早期の通報が可能となり、虐待の被害がエスカレートすることを防ぐことが可能となる。さらに、通報を契機に精神科医療機関が 再発防止策を講じることが可能となり、より良質な精神科医療の提供に向けて、虐待を 起こさない組織風土の構築・徹底に資する効果も期待される。 具体的な仕組みのあり方については、検討会では、障害者虐待防止法を改正して設ける考え方と、精神保健福祉法を改正して設ける考え方について議論が行われ、双方を支持する意見があったが、いずれにしても、精神科医療機関における虐待行為の早期発見、 再発防止に資する実効的な方策となるよう、制度化に向けた具体的な検討を行うべき
(虐待防止委員会の開催等)→ 虐待が起きないための組織風土の構築にも資するよう、虐待防止委員会の開催、 虐待防止のための指針の整備、虐待防止のための研修の実施等についての規定を設ける ことを検討すべきである。 注 外部の第三者を活用するための方策の検討が必要である。

次回も続き「V 各論点 5.障害福祉サービス等の質の確保・向上について」からです。

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