成年後見制度利用促進専門家会議 第4回成年後見制度の運用改善等に関するワーキング・グループ [2021年10月16日(Sat)]
成年後見制度利用促進専門家会議 第4回成年後見制度の運用改善等に関するワーキング・グループ(令和3年9月29日)
≪議事≫(1)有識者等による報告「後見人等報酬等」 (2)意見交換 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_21255.html ◎資料1 成年後見制度の運用改善等に関するワーキング・グループC検討項目 ○それぞれの担い手の基本的役割・育成と後見人等の交代について ○報酬決定と報酬助成のあり方について ○その他 ◎資料2 最高裁判所資料 ○報酬算定の基本的な考え方について 1 検討の趣旨 1 成年後見制度利用促進 基本計画の趣旨→「利用者に寄り添った運用」として,「後見人による財産管理の側面のみを重視するのではなく,認知症高齢 者や障害者の意思をできるだけ丁寧にくみ取ってその生活を守り権利を擁護していく意思決定支援・身上保 護の側面も重視し,利用者がメリットを実感できる制度・運用」へ改善を進める。 ・従前の実務では・・・。 ・中間検証報告から→本人や親族から,身上保護等の観点も踏まえた十分な後見事務を行っておらず 後見人等への報酬支払について負担感が大きいと感じられるケース,専門職団体等から,本人の財産が少ない事案では,後見人等の行った事務の量や専門性等に見合う報酬額が付与されていない。後見人等の報酬の在り方は,後見人等を選任する際に期待した役割を後見人等がどのように果たしたかという評価の問題。 2 検討の視点→「事務の内容や負担の程度等に応じた報酬」「予測可能性の確保」「報告事務の負担にも配慮」「中間検証報告→本人の資産が少ない場合においても制度を適切に利用することができるようにすること・・・。」「「裁判事項」であることによる報酬算定の在り方検討の構造的な難しさ→個別に違うから」 3 検討の経過→現在,2回目のヒアリングの結果を踏まえ,実際の運用を見据えて裁判所内部で引き続き検討中。↓ ・第2回ヒアリングの結果概要について→1 基本的な理念について 2 報酬算定に対する予測可能性について 3 標準的な事案における基本的事務に係る報酬額と 加算・減算のイメージについて 4 標準的な事案のイメージと事案のバリエーション について 5 報酬算定における専門職後見人の専門性について 6 報酬助成制度の拡充について 7 総合支援型監督人について ○第2回ヒアリングの結果を踏まえた家庭裁判所における考え方の整理(概要) ・後見人就任・就任時固有の事務・初回報告→定期報告→終了事由発生・終了時固有の事務・最終報告 ○第2回ヒアリングの結果を踏まえた家庭裁判所における考え方の整理(各論)→1 専門職後見人の専門性を要する(専門性が発揮される)事務の事務負担の適切な評価 2 標準的な事案の水準よりも報酬額が加算・減算される事案のイメージ 3 身上保護事務の評価 ○今後の課題↓ 1 予測可能性の確保のための方策(報酬のめやす等)→司法作用としての性質を踏まえた上で一定の範囲で類型的な整理を検討し,その整理を分かりやすく正確に示すと共に,標準的な 事案における報酬額のイメージと同時に,個別の事情に応じた増減があり得ること等の全体像をいかに誤解を生じさせることなく示す ことができるか 2 後見事務報告書式等の検討→必要な記載事項を慎重に整理した上で報告の内容と負担のバランス調整が必要 3 財産少額事案における報酬の確保 −報酬助成等の環境整備の問題−→新たな報酬算定の運用の基盤となる報酬助成等の環境整備の問題 ⇒ 運用開始時期にも影響。 ◎資料3 有識者等報告資料「倉敷市成年後見制度利用支援事業について」(倉敷市福祉援護課 主任 渡邊 美和子 氏) →わかりやすい資料なのでご一読を。↓ 1 倉敷市における権利擁護支援体制について 2 倉敷市成年後見制度利用支援事業 3 倉敷市成年後見制度利用支援事業の助成件数と助成額の推移 4 倉敷市の現状→5の項目あり。本人・親族申立でも成年後見制度利用支援事業の対象者になることから、高齢者支援センター (地域包括支援センター)や、障がい者支援センター(地域活動支援センターI型)等の関係機関 が、法テラスを活用したり、弁護士や司法書士の先生方と連携して、本人・親族申立ての支援を するノウハウを持っている。(市は必要に応じてバックアップ) 5 課題・意見@→被後見人が、自治体をまたぐ 異動をすると、利用支援事業が受けられない場合がある。本人の権利擁護のた めにも、全国で同じ条件のもとで利用できる制度としていただきたい。 6 課題・意見A→市の財政負担が重く、高齢化の進展に伴い、制度の維持が困難となっ てきている。自治体に対する国補助を拡大し、安定した財源を確保していた だきたい。 7 課題・意見B→全国どこでも、後見人等が一定の基準に基づいた報酬を受けられるような 助成制度への見直しを検討していただきたい。 ○参考資料:倉敷市の中核機関の支援の流れと考え方 【権利擁護支援のポイント】→「困っている」という相談は、何が権利擁護に繋がる相談なのかわからない場合が多く(例:認知能力が低下して、支払いができなくなっている。カード ローンで、たくさん借金を重ねて、返済に困っている。介護や医療が必要な状態だけど、協力をしてくれる親族がいない、等)、相談先は、幅広く必要。また、相談を受けた機関が、必要な関係機関に繋げるネットワークが必要。困っている世帯は、世帯内に複数の課題を抱えている場合が多く、一つの部署や一つの機関のみで解決しない場合がほとんどであり、支援機関同士の連携が必要。支援のための協議機能が必要。関係機関が複数になる場合、どの機関が中心で動くか決めて、解決までの情報共有や進捗管理をしながら進める必要がある。 【事業内容】→「相談窓口(権利擁護に関する相談、発見、気づき)」「制度利用促進(受任者マッチング)専門職団体 法人後見(社協等) 市民後見人 親族後見人」「後見人支援」 ◎資料4−1 後見人ごとの活動事例について(市民後見) ○69歳 男性 要介護1 両親と弟は亡くなり頼れる親族はいない 疾患:統合失調症 心疾患 精神保健福祉手帳2級所持 経済状況:障害厚生年金 A年3月 市長申立て(後見類型) ○生活歴 ○生活上の課題 ○市民後見人選任までの経緯 ○市民後見人の後見活動@➁B ○市民後見人の活動を振り返って↓ ・ 毎週訪問して本人の話をよく聴く 〜生活歴や好きなこと、嫌いなこと、大切にしていること、やりたいことをなど本人のことをよく知ろうとする姿 勢〜 ・普通の暮らしの継続→ 喫茶店でのモーニング(地域の習慣)や居酒屋・ スナック・お墓参り 施設内外の草取りや園芸を楽しむ ・地域とのつながりを継続するため、 地域の理解や支援者が広がる ・終末期やお墓についての意向を確認する ことで最後まで本人らしい人生に寄り添う ◎資料4−2 後見人ごとの活動事例について(法人後見) 1.法人について→精神障害者家族・精神障害者・市民・医師・行政担当者(保健所、福祉事務所生活保護課等)が設立した。 2.事例1 姉から暴力を受けた事案で個人での受任が断られた事例→@〜➃参照のこと。 3.(事例1)生活歴から後見人等選任までの経緯→@〜B参照のこと。 4.(事例1) 受任から生活が安定するまでの間、後見人等が行った事→➃➄参照のこと。 5.(事例2 ) 精神障害者支援に詳しい法人に依頼したいと希望を受けた事案→@〜➃参照。 6.(事例2)生活歴から後見人等選任までの経緯→@➁参照。 7.(事例2) 受任から生活が安定するまでの間、後見人等が行った事→➃➄参照。 8.(まとめ)法人後見の特長 ↓ @ 一般的な法人後見の特長→@ 長期に支援が必要と見込まれる当事者に対しての支援が可能 A 法人として組織対応することで、個人では受任が難しいような事案の受任が可能 B 法人として業務の監査体制をもっている A 社会福祉法人が法人後見に携わることのご本人への支援のメリット→@ 地方自治体による法人の指導監査体制が整っており、不正行為が行われにくい A 国による情報公開体制が整っており、財産状況や運営状況がチェックできる B 社会福祉法人として決められた基本財産があり、財政基盤がしっかりしている C 長く活動を続けている実績があり、地域関係機関との連携が支援に活かせる D 地域に根付き、長年活動を続けており、地域住民や関係機関が法人の良し悪しを評価できる E 福祉の支援に携わってきたそれぞれの法人の専門性を成年後見での支援に活かすことができる F 専門職等の受任者が少ない地域でも、社会福祉法人が候補者となりうることで、選択の幅が広がる ◎資料4−3 後見人ごとの活動事例について(社会福祉士) ≪社会福祉士の専門性を活かした事例≫ ○本人の意思を尊重した生活の実現にむけた チームづくりの事案(社会福祉士@) 【概要】→• Aさん、50 歳代前半、男性。中程度の知的障害があり、療育手帳所持。障害基礎年金6万数千円と工賃収入数千円の月額約 7万円の収入と150万円程の預金あり。 80歳代前半の母と同居していたが、母の認知症の進 行に伴い同居生活が困難。生活環境を整える必要から、市長申立により1年前から後見開始(後見類型)。 就労継続支援B型事業所に通所。グループホーム入 居。相談支援事業所による計画相談。 ・生活歴から後見人等選任までの経緯 ・生活が安定するまでの間、後見人等が行ったこと ○虐待対応で家族との交流の再開を 目指した事案(社会福祉士A)→Bさん、60歳代後半、男性。長男との共有名義の自宅に妻(60歳代前半) と長男家族と同居。50代後半の頃に脳出血にて倒れる。身体に麻痺は 残らなかったが高次脳機能障害と診断され、生活全般に見守りが必要な 状態。発症後、リハビリ病院を経て、退院したが、職場復帰は叶わず、会 社を退職した。 もともと若い頃から妻に対するDVがあった。 支援者がBさんに介護サービスを利用するよう勧めるが、Bさんの障害を 理解できない妻がBさんの生活を厳しく指導。Bさんの年金等を妻が管理し、Bさんには一切現金を渡さず、心理的虐待、経済的虐待と認定され た。 妻は成年後見制度を利用して自分が後見人になるつもりで申立てを行 いたいと支援者に相談、中核機関が支援。家裁と連携をとり、事前に社 会福祉士会から推薦を受けていた社会福祉士が後見人として選任され た事案。(後見類型) ・生活歴から後見人等選任までの経緯 ・生活が安定するまでの間、後見人等が行ったこと ○社会福祉士の専門性の要素 @の事例は社会福祉士の受任事案の特徴を表現したもの( 首長申立38.3%、障害48.3%(2020年1月末概況) 福祉サービス利用が目的、財産が少額で報酬が見込めない。) ・本人意思を尊重した福祉サービスの提供がなされているかを常に意識。 ・意思決定支援のチーム形成に関するアセスメントと後見人の役割の遂行。 ・意思決定支援のプロセスを経なければ適切な身上保護、また、 財産管理は遂行できないと考える。 Aの事例は虐待対応において社会福祉士に求められる要素を表現したもの ・虐待に至らざるを得なかった養護者も、何らかの支援を必要としており、 本人の後見人等として、養護者支援チーム形成への働きかけを行い、 養護者支援チームとの連携をはかる。 (決して後見人が一人で養護者支援を行わない) ・エンパワメントアプローチの実践により、夫や父親としての家族内での役割を本人 が担い、認められることで、自分の価値を確認するためのサポートを行う。 ・後見開始前の虐待対応として分離・保護した状況も踏まえ、本人の意思決定支 援に丁寧に関わり、家族との交流の再開を目指す。 ・社会福祉士は、人々やさまざまな構造に働きかけるなどの専門性を発揮し、後見 業務に携わっている。 ◎資料4−4 後見人ごとの活動事例について(司法書士) ≪司法書士の専門性を生かした 事例の報告≫ ○財産を調査した結果、遺産分割、 不動産の売却等を要した事例 【概要】→Aさん 90歳代前半、夫が10年前に他界し、自宅に独居 • 遺族年金を月額15万円、共済年金を月額7万円受給。 実姉の娘二人と養子縁組をしたが折り合いが悪く、高校を卒業すると二人とも就職して家を離れてから疎遠となり、 夫の葬儀の時に会った程度。 遺産分割協議がまとまらず、自宅・賃貸している旧住宅は 夫名義のまま。 自宅の風呂場で転倒して緊急入院し、病院で治療を続け ている。 令和元年から成年後見制度利用(保佐類型)。 ・生活歴・保佐人選任までの経緯 ・生活が安定するまでの間、保佐人が行ったこと ・成年後見制度を利用するきっかけは入院費を支払うためであったが、保佐人に就任して財産調査を 行ったところ、遺産分割が必要であることが判明した事例。 非常に労力を使った事件だったが、就任期間が半年と短かったこと、遺産分割で本人の財産が法定相続分以上に増えたわけではないこと、相続した土地を一部売却したが建物解体費用と相殺したた め、固定資産評価額よりも大幅に低い代金で売却したこと、何よりも本人の預貯金が数十万円しか 残らなかったため、報酬には反映されなかった。 ○親族からの経済的虐待があった事案 【概要】→Bさん 80歳代半ば 妻と子どもが二人。 団体職員を定年まで勤めて退職、 厚生年金(月額約15万円)受給。 釣りをしていた際に岩場で転倒し、救急搬送 され、入院中。 ・生活歴・補助人選任までの経緯 ・生活が安定するまでの間、補助人が行ったこと ・本件は、親族対応が困難な事案として専門職が適任と判断され補助人に選任された。 本人は月額15万円程度の厚生年金を受給していたが、そのために入院費が月額10万円程度と 高額だった。 就任時、預貯金・現金はほとんどなかったが、生活保護受給ではないことから成年後見制度利用 支援事業(申立費用・報酬の助成)の対象とならず、申立費用も1年後の事務報酬も、確保すること はできなかった。 ○司法書士に推薦依頼があるケース (司法書士が専門性を発揮しているケース)↓ 1 本人を支援する体制がない又は希薄等により身上保護上の課題がある→(1)未婚 ・ 配偶者が既に死亡し、子がいない (2)配偶者又は子、兄弟姉妹等がいても、過去の経緯により関係が断絶し、協力が得られない (3)虐待(ネグレクト、経済的虐待等) (4)親族間に紛争があり親族・関係者間の調整、事務の公正性に注意・配慮が必要 (5)(権限の有無は別として)医療同意、死後事務等への適切な検討・対応が予想される 2 財産管理上の課題がある→(1)財産(資産・負債)状況が不明(調査が必要) (2)財産を搾取されている(又は搾取されている可能性が窺われるので調査等対応が必要) (3)消費者被害を受けている(又は受けている可能性が窺われるので調査等対応が必要) (4)多数の借金や未払金があり、全体の収支予測が困難 (5)不動産の管理(空家、多数の不動産、不動産の広域所在 etc.) (6)不動産の売却 (7)土地の境界確定が必要 (8)相続・遺産分割手続が必要 (9)債権の回収 (10)訴訟(債務不存在確認請求、抹消登記請求、地代・管理費等請求 etc. )対応(応訴を含む) ◎資料4−5 後見人ごとの活動事例について(弁護士) ≪弁護士の専門性を活かした 事例の報告≫ ○事例1 親族間紛争と法的課題のあった事例 【概要】→高齢の本人(女性、85歳、要介護2、認知症中程度)は自宅 でひとり暮らしをしているが、近所に住み本人の世話をしている長女(姉)と隣県に住む長男(弟)とが、本人の財産管理や介護のあり方などを巡って日頃から対立。 長男(弟)が、長女が自分の近くに母をおいて財産を取り込もうとしているとして、本人につき後見開始を申立て。裁判所は 親族間紛争があるため、弁護士を後見人に選任。選任当時、本人所有の自宅兼アパートのローンの返済が滞っていた。子らの 主張がしばしば対立、後見人の判断が自分の意に沿わないと、 激しい苦情や非協力につながる傾向あり。 弁護士後見人が、親族間紛争の中、本人の置かれた状況を本人 の意思・利益や法的視点から的確に整理し、法的課題を解決したり、親族調整を図ったりしながら、本人のためによりよい生 活支援を目指して活動した事例。 ・生活歴から後見人選任までの経緯 ・生活が安定するまでの間、後見人等が行った主なこと ○事例2 高齢者虐待への対応事案 【概要】→ 高齢(80代)の認知症のある本人(女性、要介護4、認知 症自立度V)が、同居の娘(60代)による虐待(身体、ネ グレクト、経済)を受けているとケアマネジャーから通報があり、A市が高齢者虐待を認定した対応したケース。 • 本人を「やむをえない事由による措置」で特別養護老人ホー ムに入所して分離をはかり、娘との面会制限をかけて、本人 の安全を確保するとともに、市長申立により、成年後見開始 審判を申立てた。 • 弁護士後見人が選任され、市の虐待対応担当者や地域包括C と協議・連携した対応を行い、年金の収入の確保とともに、 本人の安定した生活場所の確保、滞納した利用料の返済、娘 からの様々なクレームへの対応などにあたった事案。 ・生活歴から後見人等選任までの経緯 ・生活が安定するまでの間、後見人等が行ったこと→1年弱経過後の現在⇒引き続き、娘からは様々なクレームを受けつつも、本人は施設で安定した生活が 可能となり、娘の面会も継続している。本人も娘の面会時には、表情も和らぎ、笑 い声も出るようになった。 ○弁護士の専門性をいかした後見事案の例→法的課題があり交渉や訴訟対応(調停、審判などを含む)が必要な事案。財産管理や身上保護を巡って親族間の対立があり中立的な立場で調 整を求められる事案。虐待や消費者被害などの権利侵害があり、本人の救済・支援や早急 な環境調整が求められる事案。現に刑事事件が絡むような事案。法人の経営や事業承継等に関係する事案。身寄りがなく、亡くなった後も含めて相当の調査や事務が予想される事案。財産が不明で積極的な調査が必要な事案。保有財産が高額・複雑な事案。不動産など高価品の処分等が想定される事案。後見人不祥事の後任として調査。被害回復・法的手段等を行う事案。後見監督業。 次回も続き「資料5 有識者等報告資料「ドイツにおける法定後見人の報酬制度」」からです。 |