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第10回 成年後見制度利用促進専門家会議(web会議) [2021年09月11日(Sat)]
第10回 成年後見制度利用促進専門家会議(web会議)(令和3年8月23日)
≪議事≫@成年後見制度の利用の促進に関する施策の進捗状況(報告) A権利擁護支援の地域連携ネットワークの機能に関する意見交換 B次期基本計画に係る中長期的な課題等に関する意見交換
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_20446.html
◎資料3 各委員提出資料
◎資料3−1 星野委員提出資料
次期成年後見制度利用促進基本計画の中長期的課題に関する意見↓
1.基本的な考え方について
→一度代行決定を行った場合においても、必ず意思決定支援に戻る→逆に、代行決定で対応しなければ、本来の意思決定支援すら困難な状況に 陥っている当事者がいることを忘れてはならず、そこを互助や地域住民の支え合いと置き換えられることのないような記述が必要と考えます。
2.専門職による受任(担い手)の整理について→親族や市民後見人と、専門職後見人の 受任が求められる事案の違いを、法的根拠に基づいて示すことは必要。また、 このような事案においても、市民後見人単独ではなく、専門職との複数後見が実現すれば、 法的福祉的課題等の解決後、市民後見人が単独になったとしても本人の意思に寄り添った後見事務が期待できるのではないでしょうか。この点、家庭裁判所の後見人等の選任の あり方にも関係する課題として整理が必要と考えます。
3.公的後見の必要性について→ 専門職による個人受任や法人後見という仕組みだけで、「1」で述べたレスキュー型の 権利擁護としての成年後見制度は十分なのかという議論がさらに必要。この場合は、レスキュー型が検討される事案だけではなく、現状では報酬負担が難しく、成年後見制度利用支援事業も活用できないような無報酬事案と呼ばれるものへの対応も求められ、公的後見の担い手としては行政職員だけではなく、見識のある専門職が活用されるという構想が考えられます。
4.家庭裁判所の機能強化と中核機関の役割整理について→都道府県やブロック単位でしか協議の場に参加できないという多くの 家庭裁判所の機能をどのように強化することが可能なのか、協議検討が必要と考えます。 また、中核機関が家裁の役割(監督機能)を安易に担わないように都道府県とともに専門 職団体が家裁にしっかり発信し、家裁とともに検討していくことが重要と考えます。このような検討に関与できる専門職の人材育成は、専門職団体として急務と考え、具体的な取 組みを可能な範囲で基本計画に示す必要。さらに、各専門職団体が取り組んで いる不正防止へ向けての対応や、あってはならないことですが解任事案が発生した際の 対応、結果なども明らかにすることによって、利用者の安心や信頼を得て成年後見制度が 活用されることに資すると考えます。
5.法改正の必要性の検討について→ 本会は、2010 年 11 月に法務省及び厚生労働省に、「成年後見制度とその運用の改善に 関する意見」を提出していますが、そのなかで、成年後見制度における三類型についての 課題を指摘しております。類型のない諸外国の運用なども参考にして、さまざまな立場からの協議検討を求めていました。また、2017 年 2 月には「『成年後見制度利用促進基本計画の案』に盛り込むべき事項について」として、以下の意見を内閣府成年後見制度利用促 進室へ提出。⇒「成年被後見人等の権利制限に係る措置の見直し」への意見
成年後見制度申立にあたっては、「後見事務のガイドライン」で整理された意思決定支援を踏まえた後見事務の実現へ向けて、 すべての当事者に対して申立にかかる本人の意向や状況を把握する必要があります。そのためには、類型を撤廃し、すべてを補助類型の考え方で行い、申立について、あるいは 必要と判断された代理権や同意取消権の付与について本人同意が得られない場合などは、 本人情報シート等を活用し、必要性の判断を中核機関の支援検討会議等で第三者性を担 保して検討すること、申立に進んだ際にはそのプロセスを家裁と共有することにより家 裁が開始の審判や本人に対して最低限限定的に本人にとって必要な権限を後見人等に付 与することが可能となるような流れが必要と考えます。また、「後見事務のガイドライン」 で整理されたように、本人の意思をそのまま実現することが本人にとって回復できない 侵害を与える場合や、本人の意思が推定できないが緊急に保護的対応が必要とされる事 案などは、必要以上の権限付与がなされる可能性が高いため、課題に対応したのちに、改めて意思決定支援能力アセスメントを行い、必要最小限の権限付与にかえていくことが 求められます。 これらの取り組みは、現状においても地域格差がみられており、担当者の努力による運 用改善だけでは困難であり、法改正の必要性の検討への積極的な検討、取り組みが求められると考えます。 また、報酬のあり方については、後見人等としての適正な報酬額だけを議論するのでは なく、利用者側が支出可能な金額を検討することも同時に行われる必要があり、現在の成 年後見制度利用支援事業の適用のみでは解決できない課題であると考えます。報酬については運用改善だけではなく、法 862 条で規定されている「家庭裁判所は、後見人及び被 後見人の資力その他の事情によって、被後見人の財産の中から、相当な報酬を後見人に与 えることができる。」という条文を改正する必要があると考えます


◎資料3−2 西川委員提出資料
中間取りまとめ以降のワーキング・グループに関する中長期的な課題認識等
1 地域連携ネットワークにおける法務局の位置付けの明確化について

中核機関は、最低限のコーディネート機能等を整備することで手一杯になることも予想され、ネットワークを構成する様々な機関が、それぞれの特徴を活かした活動を展開していくことが期待される。
法務局が成年後見制度に関する一般的な広報をしたり、相談を受けたりすることは、今すぐにでもできることだと思われるし、 個別の事案の相談や、担い手の育成・活動の促進(市民後見人の研修・育成・活 躍支援、法人後見の担い手の育成・活動支援等)、そして後見人支援といった活動についても、相応の準備期間と予算を確保すれば、事業として実施することが できるのではないか。例えば、複数の市町村が広域で市民後見人の 育成や法人後見の担い手の育成、活動支援等の事業を行う場合に、法務局の機能 の一部を活用することも考えられる。法務局が後見人支援の機能の一部を担う ためには、家庭裁判所、中核機関等との情報の共有が課題となるが、その点さえ クリアすることができれば、例えば、支援と監督の橋渡しの機能等を期待することもできる。 市町村や都道府県の役割を補完する機能を中心に、地域連携ネットワークの 機能強化の方策のひとつとして、法務局の活用を積極的に位置付ける議論が進むことを期待したい。

2 任意後見契約公正証書作成時における公証人の契約への関与の在り方について
(1)制度解説 DVD の作成、そのコンテンツの公開

地域包括支援センター等の支援や専門職、中核機関等の関与なしに法定後見 の申立てをする親族等は、多くの場合、家庭裁判所に申立ての相談に行き、そこ で成年後見制度や後見人の事務等について解説した DVD を視聴する機会があるようである。DVD のコンテンツは裁判所のウェブサイトでも公開されている ので、誰でも視聴することができる。 同様に、任意後見契約を締結する当事者も、例えば、公証役場で任意後見制度 や任意後見人・任意後見監督人の事務等について解説した DVD を視聴する機会 を設けることはできないだろうか。というのも、実際に締結されている任意後見 契約の約7割は、非専門職を任意後見受任者とするもの、必ずしも任意後見制度や任意後見人・任意後見監督 人の事務について正確に理解した上で契約を締結しているわけではないことを、実際に選任された専門職は、しばしば実感している。 専門職や中核機関の関与のない状態で、任意後見契約公正証書の作成のため に公証役場を訪れた方には、まずは任意後見制度や任意後見人・任意後見監督人 の事務について解説した DVD を視聴していただくことにより、例えば、実際に任意後見人による支援を受ける段階に至ってから初めて、本人が、任意後見人の 報酬のほかに、任意後見監督人の報酬を負担しなければならないことを知った などということは、避けられるはず。 例えば法務省、日本公証人連合会等のウェブサイトでいつでも視聴できるよう にしておけば、任意後見契約における本人や任意後見受任者は、契約締結前に視聴した DVD の内容を忘れてしまっても、あるいは任意後見人の事務等について 疑問が生じた場合にも、いつでも容易に、改めて任意後見制度の概要やポイント、 任意後見人の責任等を確認することができるようになる。
(2)「重要事項説明書」による説明等の工夫
任意後見契約公正証書の作成前に、公証人が、任意後 見制度のポイント、法定後見制度や通常の任意代理の委任契約に基づく財産管 理等の代理との違い、任意後見人の権限の限界(できないこと)、任意後見契約 の解除の手続等を記載した「重要事項説明書」を任意後見契約の当事者に交付して、その内容を説明し、確認していただいた上で、任意後見契約公正証書を作成 するといった工夫をすることもできるのではないか。重要事項説明書の交付による重要事 項の説明・確認は、介護サービスや障害福祉サービスの利用契約の締結に当たっても行われることが少なくないので、成年後見制度の利用者にとっては、それほど違和感のない手続であると思われる。ちなみに、リーガルサポート東京支部では、別添のような書式を用意して、契約の形式に応じて使い分ける工夫をしている。それでも、「委任者が、受任者に対し、精神上の障害により事理を弁識する能力が不十 分な状況における自己の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務の全部又 は一部を委託し、その委託に係る事務について代理権を付与する委任契約であ って、任意後見契約が登記された後に、精神上の障害により本人の事理を弁識す る能力が不十分な状況にあるときに、本人、配偶者、四親等内の親族又は任意後 見受任者の請求により、家庭裁判所が任意後見監督人を選任した時から、その効力を生ずる旨の定めのあるもの」という任意後見契約の骨格となる部分は共通しているのであるから、その部分に係る重要事項を列挙した標準的な「重要事項説明書」の書式を用意しておくことはできるはず。そのような重要事項説明書の標準的な書式を、法務省、日本公証人連合会等のウェブサイトに掲載して 公開すれば、任意後見制度一般の広報にもなる。それほど予算がかかることでは ないと思われるので、是非、積極的な対応をお願いしたい。

3 後見人の報酬の在り方等について
(1)管理財産額の多寡の考慮について
後見人の報酬
→事件を担当する家庭裁判所の裁判官が個別の事案 ごとに諸事情を考慮して職権で判断すべき裁判事項であって、最高裁判所等が 特定の判断を指示し、又は何らかの規準や運用指針を示してそれに沿った一律の運用がされたりする性質のものではない(したがって、全国一律の報酬基準を 定め、それに沿った運用とすることは、そもそも想定されていない)との前提の下、後見事務を行う専門職として、裁判官が個別の事案ごとに行う判断に一般的に有用と思われる情報を提供する趣旨から、若干の意見を申し述べる。
(ア)後見人が行った事務の内容や負担等に応じて報酬額を算定する(事務の内容や負担の程度等を考慮して、各事案における適正妥当な報酬額を算定) こと、
(イ)財産管理事務のみならず、身上保護事務についても(本人の意思の 尊重・意思決定支援の側面も含めて)適切に評価すること、
(ウ)後見事務が適 切に行われていなければ報酬を減額すること、
(エ)事案ごとに発生する付加的な事務→別途報酬を算定すること、
 といった、これまでの成年後見制 度利用促進専門家会議において最高裁判所から示されている基本的な考え方に ついて、概ね異論はない。 これに敢えて付け加えるべき視点があるとすれば、管理財産額の多寡の考慮 についての考え方。後見事務を評価するに当たり、身上保護事務と同様に、 財産管理事務についても適切に評価をするためには、ある程度は管理財産額の 多寡を考慮すべきではないか。 後見事務の内容や負担の程度等に応じて後見人の事務ひいては報酬を評価する場合でも、管理財産額が多額になれば、後見事務の内容や負担は付随的に大きくなることが通常である。社会においては、一般に物の価値の高低が様々な費用 の算定基準となっており、後見人の報酬算定においても、管理財産額を一切考慮 しないという考え方は、社会通念にも反するのではないか。 管理財産額が多額であること自体によって、本人にとって保護される利益は 大きくなり、後見人の財産管理の責任が重くなるのであるのだから、これを正当 に評価するとともに、他方で、管理財産が少額である場合は、たとえ事務量が多 いときであっても、本人の報酬負担も財産に応じて小さくなるような考え方も、 後見人に付与される報酬に関する現行法の規律を前提とした場合には、実務上 相応の合理性を有してるのではないかと考える。
(2)後見人の報酬の助成制度の抜本的な拡充の必要性について
現状の実務
→本人の財産が少なく、後見人の報酬を支出することが できない事案が相当数に上っており、成年後見制度利用支援事業等の報酬助成 制度の拡充が喫緊の課題。 「成年後見制度利用促進施策に係る取組状況調査結果(詳細版)」によれば、 成年後見制度利用支援事業等の後見人の報酬の助成制度は、着実に全国の市町 村で整備されてきており、申立人(首長申立て案件に限らず利用できること)、 類型(後見類型だけでなく保佐類型、補助類型、監督事件でも利用できること)、 生活保護案件であるか否か等にかかわりなく、適用されるようになってきてい るが、反面、案件ごとの助成限度額を一律に切り下げる自治体も出てきており、 後見事務の内容や負担の程度等に応じた報酬の確保が覚束ない事例も増えてきている(※)。 また、報酬助成に関する要綱上、助成金の支給対象者について、申立人、類型 等についての限定はないものの、「別表に定める基準を満たす者」という定めを置き、別表では、「世帯合計収入額(年額)」(申請日の属する月の前月から遡った 1年間の実収入額)の要件として、世帯の人数ごとに一定金額以上(「2人世帯 200万円以下」「3人世帯 250万円以下」等)と定め、かつ、「資産(現金、 預貯金、有価証券等)」の要件として「世帯員が居住する家屋その他日常に必要 な資産以外に活用できる資産がないこと。また、助成金の支給対象者を含む世帯 員の預貯金額の合計が最低生活費の半年分以上あれば、助成金の支給対象者を 含む世帯員の財産から支弁し、不足分を助成することとする。」「申請日において、 収入及び資産基準両方を満たすことを条件とする。」などと定め、要するに、本 人の属する世帯の収入が一定の基準を超え、又は本人の属する世帯に資産があれば、本人の収入・資産(後見人等の報酬の原資とすることができる財産)が全くなくても、報酬助成がされない仕組みを採用している自治体がある。このよう な実際には利用できない報酬助成の仕組み(要綱や、これに基づく実務の運用) は、早急に見直していただく必要がある。 後見人の報酬助成の仕組みを抜本的に見直すことができなければ、後見人に とっては、たとえ正当に評価された報酬を付与するとの審判を受けても、実際に は報酬を受領することができないという案件が増加するだけという結果になっ てしまう。そのような状態になった場合には、現状でも深刻な課題とされている 制度の担い手不足に更に拍車をかけ、本人の権利擁護支援の充実という成年後見制度の利用促進の目的に反する結果になるおそれもある。 後見人の報酬の在り方について議論・検討をするのであれば、最低限、同時に 後見人が家庭裁判所の審判によって決定された報酬額を実際に確実に受領する ことができる状況が制度的に担保されるような方策も議論・検討すべき。 これまでは、厚生労働省が、全国の市町村における後見人の報酬の助成制度の実情を正確に把握し、成年後見制度利用支援事業その他の後見人の報酬助成の 制度が隙間なく運用されること推し進めてきているが、もはやそれだけでは、後 見人が行った事務の内容や負担等に応じた報酬を確実に受領できる状況を制度 的に担保するという観点からは、十分とは言えないように思われる。後見人の報 酬の助成の在り方については、早急に抜本的な拡充を検討する必要があり、生活保護における後見扶助の新設等の可能性のほか、例えば法務省等においても、成 年後見制度を持続可能な制度とするための新たな財源の確保等を検討する必要 があるのではないか。社会的コストの配分という観点からも、より詳細な議論・ 検討をすべき時期が来ているように思う。

※例えば、次のような事例は、一定数の案件を 受託している専門職であれば、誰もが経験していると言ってよい「あるある事例」。→行政、介護、医療のキーパーソン・主な支援者が次々入れ替わっていくこのような事例こそ、成年後見人等が支援チームの核となって、一貫して本人の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務の支援をすることがで きる例であり、本人にとって専門職による第三者後見を利用することのメリットを享受することができるケースだと思われる。しかし、現在の成年後見制 度利用支援事業の報酬助成制度は、このような支援を行う成年後見人等、更には成年被後見人等に対する十分な助成にはなっていないのではないか。
〔事務の内容や負担の程度等に応じた後見人等の報酬の確保ができているとは思えない事例〕→ 本人(被保佐人)は自宅アパートで独り暮らし。初回財産目録上の預金額は、特別定額給付金の受給直後であったにもかかわらず10万円程度。 保佐人は、就任直後に5か所の事業所と在宅の介護サービスの利用契約を締結。ケアマネジャーとともに在宅介護サービスの利用の手配をし直し、利用料の口座振替の手続をとったほか、持病の治療のための複数の診療所への定期通院や、薬局での薬の受渡しにつ いても、必要な手配をし、料金支払の事務(一部の診療所、薬局等では、振込みによる診 療費等の支払に応じていないため、そのような診療所、薬局等では、料金の窓口支払を余儀なくされる。)を行い始めたものの、その直後に(保佐開始後約3か月が経過した時点で)本人は、脳梗塞を発症して自宅で転倒しているところを発見され、総合病院に救急搬送、そのまま入院。保佐人が入院手続をとった。 急性期の治療を終えたものの、自宅に戻って生活することは困難と言われ、リハビリができる病院等を探すよう総合病院の医師から指示された。しかし、本人の資産と収入では、入院できる病院・入所できる施設を探すことがなかなかできず、入院先の総合病院からは、 再三再四、早期の退院を要請された(総合病院から毎日のように他院入院又は入所の申込 手続の進捗状況の確認を求める連絡が来る)。総合病院の医療ソーシャルワーカー(MSW)から、複数のリハビリ病院・老健等の介護保険施設を紹介されたが、申込みをしても、成年後見制度を利用しているというだけで、病状急変時の他院受診の付添い等24時間365日の対応ができないとの理由で受入れができないと言われたり、「その収入・資産では、利用料の支払ができないので、入所は困難。」「生活保護受給者は受け入れていない。」 等の理由で断られ続けた。10年前、20年前の話ではなく、昨年の話である。その後、 MSW からは、「リハビリはあきらめて特養の入所待ちをするしかない。」「本人の収入・ 資産ではユニット型の特養への入所は厳しいので、多床室のみの特養への入所を検討するほかない。しかし、多床室の特養は、どこも入所まで数年という単位で時間がかかる。」 「生活保護受給が決まれば、介護付き有料老人ホームへの入居も視野に入るが、生活保護受給証明書の提出がなければ、入所の審査はできないと言われた。」と言われ、その後は ケアマネジャー、地域包括支援センター職員、市職員にも協力を仰ぎ、周辺の市町も含め、 ありとあらゆる種類の施設を探したが、資産・収入が乏しいこと、生活保護受給が確定していないこと等を理由に、入所可能な施設等を探すことができず、最後は MSW から、「現時点で市内には入院・入所できる先はない。周辺の市町も探しているが厳しい。」「最 悪のケースとして、在宅のサービスを組み合わせて自宅で生活するという選択も考えな ければならない。」という趣旨のことを言われるに至った。 関わりを拒絶している家族(配偶者)から資産調査についての同意が得られない(介護保険の保険者である市が配偶者の資産調査をすることができない)ため、介護保険負担限度額認定を受けられないことが、施設入所(継続的な利用料の支払)が困難となっている 主な原因であるため、上記の入院(転院)・入所先を探す作業と並行して、@やむを得ず、 関わりを拒絶している家族(配偶者・子)に翻意(介護保険 負担限度額認定申請のため に必要となる資産調査への同意)を促す連絡を取り続けるとともに、A市の介護保険担当課には、家族(配偶者・子)とは10年以上前から絶縁状態であり、これまでも担当ケア マネジャー等が何度も連絡をしているが全く反応がないことを、裏付資料等を添えて説明した上で、介護保険負担限度額認定をするよう上申し、あわせて、介護保険 要介護認定区分の変更の申請をし、B福祉事務所には、生活保護受給の相談をした。しかし、@依然として家族からの反応はなく、A介護保険担当課からは、現行の介護保険制度の下では、負担限度額認定申請をする者に戸籍上配偶者がいる場合には、実質的に婚姻関係が破綻しており、その状態が10年以上継続しているときであっても、申請書に申請者の配偶者の署名押印(資産調査についての同意)がないときは、負担限度額認定申請を受け付けることができず、申請者に代わって市が家族から同意を得ることもできないので、負担限度額認定はできないとの説明を受け、B生活保護についても、電話では何度か相談を重ねたが、福祉事務所の窓口での相談(申請)は、すぐには予約を入れることができなかった。 福祉事務所からは、最初の電話相談から3週間後の日を指定され、その日に窓口に相談(申請)に来るよう指示され、ようやく福祉事務所の窓口で生活保護の申請をしたところ、(預金調査、扶養照会等の調査を経た後の約2週間後の日付けで)申請が却下された上で、(その約1週間後の日付けで)境界層該当措置となり、それにより生活保護の申請をした日に遡って介護保険負担限度額認定を受けたのと同様の状態となった。
上記の手続と並行して、さらに市には、高齢者虐待(ネグレクト)によるやむを得ない 事由による措置(施設入所等の措置)を検討するよう要請していたところ、境界層該当措置となったことにより、年金収入の範囲で何とか利用料の支払ができると見込まれる状 態になったため、ようやく受入先のショートステイ事業所が見つかり(保佐人から施設入所等の措置の検討を要請されていた市の担当者が、措置ではなく契約でのショートステイ先を確保し)、入院から26日目に、ようやくショートステイ利用契約を締結することができ、総合病院を退院した。その後、約半年間、ショートステイを継続的に利用し、入院から約7か月後に、ようやく(契約による)特別養護老人ホーム入所が決まり、保佐人に対する代理権(自宅アパートの賃貸借契約の解除の代理権)の付与及び居住用不動産の処分の許可の申立てをし、これらの審判がされた後に、本人の自宅アパートの賃貸借契約を解除。本人の意向を確認しながら、自宅アパート内の動産(家財道具)の廃棄処分を業者に委託するとともに、寺院に依頼して仏壇の性根抜きの供養等も執り行った。アパート退去後、敷金は全額の返金を受けた。本人は市税の滞納があったため、市の担当課と分割納付の協議を行った上で、収入の範囲で分割納付し、総合病院退院後は、入院保険金の支払請求の手続もとった。 就任後1年間で、基本的事務のほかに上記のとおりの特別な事務を行った場合であっても、市の成年後見制度利用支援事業の報酬助成は、本人が施設入所の場合には月額1万 2000円(在宅の場合には月額2万円)が上限とされており、報酬付与の対象機関の大 半を占める入院やショートステイ利用の期間が在宅扱いにはならないとすると、報酬助成額(上限額)は15万円程度ということになる。
〔後見人等の報酬助成制度の運用上の課題〕 ↓
なお、後見人等の報酬助成に関する各市町村の要綱→通常は、報酬助成額(上限額)が定められており、例えば、A 市では、@「家庭裁判所が 報酬付与の審判において決定した報酬額」、A「ただし、以下の助成限度額を 超えた部分については、助成対象とはならない。」として、(ア)「成年被後見人 等が在宅で生活している場合(助成限度額)月額2万円」(イ)「成年被後見人等 が施設等に入所している場合(助成限度額)月額1万2000円」と定められ ているが、同じ県内の同規模の B 市では、これが、@「家庭裁判所が決定した 成年後見人等に対する報酬額」、A「ただし、ご本人が一部負担できる場合は、 その額を除いた額。なお、助成上限額は以下のとおり。」(ア)「在宅の場合月 額2万8000円」(イ)「施設入所の場合 月額1万8000円」と定められて いる。 後見人等が、ほぼ同じ支援をしても、本人の住所地によって、報酬助成額(上 限額)にかなりの差が生じていることも問題だが、そのほかにも、B 市の要綱 では、「ご本人が一部負担できる場合は、その額を除いた額」という、非常に不明確な(実質的には(ア)(イ)の具体的な定めを無意味にするような)基準が導入されており、しかも、A 市の要綱でも B 市の要綱でも、本人が在宅か施設 入所可かの判断の区別は、要綱を読んだだけでは必ずしも明確には判断できな い。
上記の例では、本人は、保佐開始後1年間のうち、特養(介護保険施設)に 入所して生活していた期間は、最後の約2か月間であり、それ以前の約10か 月間は、介護保険制度の在宅介護サービスを利用し又は総合病院に入院していたのだが、報酬付与の審判の申立てに当たり、事前に、市に、実際の報酬助成 額(のめやす)を照会しても、「家庭裁判所が決定した額の範囲内ということしか(それ以上の具体的な額は)言えない。」という回答しか得られない。そのような回答しか得られなければ(つまり、具体的な事案において実際に支給 される(可能性のある)助成額が分からなければ)、後見人等に対する報酬の 付与に関する現在の民法の規律を前提とする限り、家庭裁判所は、「本人の財 産額(+実際に(確実に)助成される額)」を超える額を、報酬として後見人 等に付与する審判をすることはできないことになる。 そのため、例えば、上記の例で、本人の住所が A 市にある場合であって、後見人等に対する報酬付与申立時の本人の資産(預貯金)額が「最低生活費」程度であるときは、家庭裁判所は、後見人等に対して月額1万2000円(年額 14万4000円)を超える報酬を付与する審判は、理論上はできないことになる(実際には、家庭裁判所が、月額1万2000円を超える報酬を後見人等 に付与する審判をすることもあるが、敢えてそのようなことはしない家庭裁判所も少なくない)。 このような、いわば「両すくみ」の形になることによって、結果的に、家庭 裁判所が報酬付与の審判において決定する報酬額が、一般的に適正と考えられ る金額よりもかなり低額に抑えられることになるのは、まさに助成として支出 する額の上昇を抑えたい市町村の思惑どおりなのかもしれないが、このような 非常に使いにくい助成制度が広がっている現状は、制度利用者から見れば、何のための報酬助成制度なのかという疑問を禁じ得ない。このようなおかしな運用も、早急に改善していただきたい。

4 成年後見制度の運用改善の先を見据えた議論について
今後、主に成年後見制度の運用改善等ワーキング・グループにおいて、適切な 後見人等の選任・交代等の推進、任意後見・補助・保佐の利用促進、報酬助成の 在り方等について検討が行われるものと思うが、現在の実務の目詰まりのとり あえずに解消を図るだけでなく、更に本人のための利用しやすい成年後見制度 を目指すのであれば、制度の運用改善にとどまらず、制度の在り方そのものの検 討も必要となると思われる。
例えば、民法上は、本人が精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分で あって、家庭裁判所への申立てがあれば、本人にとっての支援の必要性や、家族 等による事実上の支援の状況、あるいは日常生活自立支援事業等の他の制度の 利用の状況にかかわらず、本人の判断能力の不十分さの程度に応じて(本人の判 断能力の不十分さという基準のみで)支援の類型が決まり、その類型に従って成 年後見制度による支援が開始されることになっている。しかし、家庭裁判所が後 見等の開始の審判をするに当たり、本人にとっての必要性や、家族や他の制度に よる支援の状況を考慮することなく、本人の判断能力の状態のみを見て、一律に 成年後見制度の利用につなげることが、「本人のための利用しやすい制度」の在るべき姿なのだろうか(*)。 また、「本人のための利用しやすい制度」を目指すのであれば、三類型の一元 化や、開始の審判の効力に期限を付すこと(定期審査の導入)などの検討は、いずれ避けて通ることができない課題となると思われるが、そのような検討をするためには、あわせて、家庭裁判所の人員の増強を真剣に検討し、あるいは家庭裁判所の役割を整理し直す等の検討も必要になるはず。家庭裁判所は、こ れまでも、様々な工夫をして、増加し続ける成年後見関係事件に対応してきたが、 今後、更に家庭裁判所に中核機関との連携の強化等を求めるのであれば、事務処 理の工夫だけではどうにもならないほどの事務量や負担の増加が家庭裁判所に は見込まれる。中核機関と家庭裁判所とが適切に役割を分担して、それぞれの立 場から地域連携ネットワークを支え、あるいは適切な形でのネットワークへの 関与を維持することができる体制を早急に構築する必要があり、そのためには、 まずは中核機関の支援の機能と家庭裁判所の監督の機能とをきちんと整理する ことが必要。そしてその上で、支援の機能と監督の機能のほかにその両者 の橋渡しの機能も含めて、適切な役割分担の検討を具体的に行うことが求められる。本人のための成年後見制度を本気で目指すのであれば、これ以上、家庭裁 判所の事務処理上の負担の増加に目をつぶり続けるわけにはいかないだろう。 家庭裁判所が成年後見事件、成年後見制度において担うべき役割について、一層 踏み込んだ検討が必要になると考える。 後見人等の報酬等の在り方についても、もちろん、報酬助成の仕組みのより一 層の拡充が確実に必要だが、そもそも、現在の成年後見制度が、判断能力が不十 分な高齢者、障害者等の権利擁護支援の重要なツールとして、福祉的な機能を重く担っている現状において、後見人等への報酬の付与に関する現行法の、「家庭 裁判所は、後見人及び被後見人の資力その他の事情によって、被後見人の財産の 中から、相当な報酬を後見人に与えることができる。」という規律が適切なもの であると言えるのかという観点からの検討も、必要なのではないか。 
 他方、成年 後見制度は、定型的な役務(サービス)を提供する仕組みではなく、支援が必要 な人に、いわば1人の人が付いて、必要性に応じて柔軟に、継続的に支援をする仕組みであり、だからこそ、家庭裁判所が関与(監督)し、その報酬も家庭裁判 所が決定する制度として設計されている。そのような成年後見制度の特性・後見人等の事務(支援)の実態を踏まえた、適正な報酬の付与の在り方と報酬助成の 在り方を検討する必要がある。 具体的な例を挙げていくときりがないが、今後のワーキング・グループでは、 成年後見制度の運用改善にとどまらず、成年後見制度の在り方そのものの検討 も躊躇することなく積極的に行う必要があると考える。
*一例を挙げれば、住宅ローンを完済し、これを被担保債権としていた抵当権の抹消登記を 申請する必要がある場合において、主債務者の親が物上保証人(担保提供者)となっているときに、主債務者は、その物上保証人が医師から重度の認知症と診断されているのであれば、成年後見制度を利用しなければ抵当権の抹消登記の申請はできないと言われるこ とになる。たとえその物上保証人が特別養護老人ホームで安定した生活を送っているような場合であっても、結論としてはそうなるのだが、このような場合にも、本人にとって、 成年後見制度(重装備の後見類型)の利用が必ず必要なのだろうか。

◯(様式1)任意後見契約等の重要事項説明書
◯(様式2)財産管理等委任契約における監督業務の重要事項説明書


次回も続き「資料3−3 中村委員提出資料」からです。

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