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技術革新(AIなど)が進展する中での労使コミュニケーションに関する検討会(第3回 [2020年02月26日(Wed)]
技術革新(AIなど)が進展する中での労使コミュニケーションに関する検討会(第3回)(令和2年2月10日)
《議題》 (1)ヒアリング (2)その他
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_09594.html
◎参考資料1:第1回(令和元年 12 月 26 日開催)プレゼンテーション概要
◯戎野委員から↓↓

・ 労使関係を、ここでは「労働者と使用者が経済活動を目的として様々な形で形成する社会関係」と広義に捉える。
・ 1955 年に示された「生産性運動実施の三原則」は、戦後の労使紛争を克服し生産 性向上を図って経済成長を実現するための一つの指針であり、いわゆる「日本的労使関係」を形成する機軸となった。労使とも国民経済的観点に立ち、短期的には自己を抑制し、中長期的な発展を図るものである。相矛盾する生産性向上と雇用維持を両立するには、企業の拡大、シェアの拡大、そして内需拡大が必要となり、その ためには公正な分配が求められる。労働者と企業、双方の将来の利益・発展につながる構造で、企業の発展が、労働者の生活の向上や発展になり、また逆もしかりで あるという、労使の一体化構造である。
・ しかしながら、1990 年代半ば以降、雇用の維持と生産性向上が両立しない状況が 発生する。経済環境が大きく変化し、厳しい雇用状況の中で、少なからぬ日本の労働者が雇用を失う一方、企業は海外展開や非正規労働者への代替等による人件費削減を進め、経営危機を乗り越えようとすることが発生した。企業は、株主比率の変化等により短期的な業績が強く求められ、これまでとは異なる労使関係を形成するようになった。「疎隔化した労使関係」である。労働者は、企業の発展のために尽力すれば、自らの生活が向上・安定するということが実現しなくなる。このように企 業の発展と労働者の生活の向上は同じベクトルではなく、ひいては、日本経済の発展もそれらと同じベクトルではないことが生じた。
・ そして、労働者の意識も変化した。新入社員が会社を選択する理由は、1970 年代 以降「会社の将来性を考えて」が第1・2位だったが、現在は1割未満にすぎず、 「仕事が面白い」ことを求める人が多くなり、相対的に短期的な視点になっている。また、「いずれリストラにあう」と感じている新入社員の割合が 41%もいる。 つまり、将来にわたって、自分の雇用・仕事・就業人生が、企業と一体にあるとは考えておらず、現在は売り手市場で雇用環境が良くても、将来の雇用には不安を抱 いている。
・ このような労使関係の変容は、職場に様々な問題を発生させている。現在、人手不足状態の職場は非常に多いが、特に若年層が足りず、年齢構成にゆがみが生じ、 計画的な配置転換が難しく、若年層の人材育成に問題が生じている。中堅層は、本来若年層がやるべき仕事を代わりに行い、業務量が増加し、後輩や部下を指導、教育する時間が不足している。また、自らの能力向上のための時間もなく、モチベー ション低下も起きていた。そして、教育が不十分で若年層は成長できず、そのため 仕事ができず離職し、さらに人手が足りなくなって、一層教育が出来ないという負のサイクルも発生している。これでは、新しい技術革新への取組み、そのための人 材育成に向けての基盤が不十分ではないかと考える。
・ こうした問題の要因は人員にあるが、これだけ深刻でありながら、要員について 労使で協議・交渉しているところは少なく、例えば、新卒採用数について労使交渉・協議をしているところは 15.9%に過ぎない。労働者と使用者の発展のベクトル が異なってくると、将来にわたる問題には議論が向けられ難くなる。
・ 将来に向けた取組として、教育について見てみると、OECD の中で日本の OJT 実施率は平均を下回り、off-JT についても企業の能力開発費が相対的に低い状況にある。そして、労働者の能力不足に困っていると回答する企業の割合が、日本は諸外国に比べ高い。このように、人材が量的不足から質的不足にまで発展しつつあり、 その原因の一つが、今の職場の状況にあり、その背景には労使関係の変容があると考える。

・ この問題を克服した二つの事例を紹介する。
(事例1)↓↓

岐阜県にある介護事業所は、人手不足によって倒産の危機に陥ったが、 それは、地域の介護事業の危機でもあった。これを、技術革新とそれを担う労使関係の再構築によって乗り越えた。iPad 等の活用により介護の技術や資格のない人、 短時間・短日数勤務の人も一定の業務や役割を担える体制を作り、掲示板の活用による業務の効率化、動画により自分で勉強できる体制の整備など、技術革新を図った。そして、労使でこの地域社会のために皆で力を合わせて働くことが必要であるという認識を共有し、労使のベクトルが同じ方向を向くようにした。これにより、 高校生のアルバイトから 80 代の高齢者まで様々な人がそれぞれの役割を担って働く ようになり、人手不足が解消した。
(事例2)↓↓
姫路城修復に携わり、高い技術力を持つ建設会社でもこの 20 年間縁故採用以外の新入社員が入らず、会社のみならずこれからの建設業界も危惧されるところであった。しかし、多くの社員には危機感は乏しく、今のままでも自分は何とかなると考え、企業や産業の将来には無関心であった。そのような中、今の 40 代の技術では、将来、姫路城を修復できないという経営者の危機意識から、子会社を作り、元ひきこもりの人や女性などの若い人を採用し、新技術も導入し、70 歳代のベテラン職人が教育を行った。教育訓練では動画や SNS を活用し、教育制度の変更も行い、長期的な視点で育成できるよう職人を全員正社員にし、多能工化を図った。 今では、芸術大学出身者も新入社員として入社するようになり、女性、高齢者等多 様な人材が活躍する職場となった。さらに、これまでモチベーションの低かった他 の職人の気持ちにも変化が生じ、自らの技能向上に努めるようになった。「国の宝に ならんか」という宣伝広告のとおり、労使ともに社会のために貢献しようという一 体化構造を作った。
・ 本検討会において、長期的視点と社会的視点を大事にしてはどうかと考える。 これまで話してきたように、短期的な合理性と長期的な合理性が必ずしもマッチし ない中で、将来の技術革新のための長期的な合理性をどう追求していくのか、ま た、個人の利益が必ずしも企業の利益ではなかったり、将来の社会のためには必ずしも合理的でなかったりする中で、如何にそれぞれの合理性を調整するのか、そう いった時間軸と社会軸という2本の軸の中で見ていくことは重要であると考える。          (以上)

次回は、検討会(第3回)最後の資料「参考資料2:第2回(令和2年1月 17 日開催)プレゼンテーション概要」からです。
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