• もっと見る
«社会保障審議会年金部会における議論の整理 | Main | 「難病・小児慢性特定疾病研究・医療ワーキンググループ」のとりまとめを公表いたします»
<< 2024年04月 >>
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30        
最新記事
カテゴリアーカイブ
月別アーカイブ
日別アーカイブ
社会保障審議会年金部会における議論の整理 [2020年01月18日(Sat)]
社会保障審議会年金部会における議論の整理(令和元年12月27日)
社会保障審議会年金部会の「議論の整理」について
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08721.html
V 今後の年金制度改革の方向性
・ これまで述べたように、本部会では、社会保障制度改革国民会議報告書や社 会保障制度改革プログラム法に規定された課題のうち、短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大及び高齢期の就労と年金受給の在り方について、 2019(令和元)年財政検証におけるオプション試算の結果も参照しながら、議論を進め、今般の年金制度改革として行うべき事項を整理した。 しかし、公的年金制度が、2004(平成 16)年改正の財政フレームの下、長期にわたり老後生活の基本を支えるという役割を引き続き果たすためには、 今回の年金制度改革が与える影響や今後の社会経済の変化の動向などを検証し、社会経済や労働市場の変化に対応した制度の在り方について雇用政策とも連携しながら今後とも検討を進めていく必要があることは言うまでもない。 社会経済状況に応じて5年に1度財政検証を行う公的年金制度には、制度改革、その効果検証、社会保障の動向把握、年金財政の現状把握と将来像の投影 というPDCAサイクルが組み込まれている。このサイクルにおいて、オプション試算は社会経済の変化に対応した改革志向の議論を進めていく上で必要不可欠なものである。今後とも、課題に対応した内容の充実も含めて、オプション試算を重視した改革論議を進めていくべきである。
・ 以上のような視点を持ちつつ、本部会として、今般の制度改正に加えて、さらに検討を進める年金制度改革の方向性について、下記の通り整理する。

1 被用者保険の適用拡大
・ 今般の改革
→短時間労働者に対する適用拡大は、中小企業への負担 に配慮する観点からまずは 50 人超の企業までの適用となったが、本来は、企業規模要件を撤廃し、50 人以下の企業に対しても、被用者である者には被用 者保険を適用すべきである。
・ したがって、今後は、今回の 50 人超規模までの適用拡大により生じる影響 の検証を行った上で、更なる拡大をどのように進めていくかを議論すべきである。検証の際は、今回の適用拡大で中小企業や従業員がどのように行動した か調査するとともに、企業経営にどのような影響を与えたかなどについて、関係者からの意見を聞くことも必要である。
・ 個人事業主の事業所の適用業種の見直しについても、今回の改正では、弁護士・税理士・社会保険労務士等の法律・会計事務を取り扱う士業を適用対象に加えることとしたが、本来被用者には全て被用者保険を適用すべき、との原則 からすると、この適用業種についても、その他の業種への拡大を引き続き検討すべきである。さらに、労働者にとっては少しでも早期に保障が確保されることが望ましいことから、各業界の任意包括適用の活用を促す取組状況を適宜 聴取・把握していく必要がある。
・ また、短時間労働者への適用拡大により、複数の事業所において短時間就労 で保険適用を受ける者が今後増加する可能性もあり、複数事業所就業者に係 る適用事務を合理化し、事業主の事務負担軽減を図るよう、関係者の意見を広 く聞きつつ検討を進めるべきである。
・ なお、兼業・副業も含め、適用基準を満たさない就労を複数の事業所で行う者に対する保障の在り方についての問題が提起されている。この問題は、事業 主の責任で適用事務を行うという被用者保険の基本的枠組みや、実務上の実 行可能性、適用拡大の進展状況等も踏まえつつ考えるべき課題である。 さらに、フリーランスやギグワーク、請負型で働く者などが増加する中、制度的には個人事業主であっても実態は雇用に近い働き方をしている者への保障の在り方についての問題も提起されている。この問題は、労働法制上の整理 とともに、保険料を賦課する報酬や保険料負担・納付を行う者の定義等の従来 の被用者保険にはない困難な論点をはらむ問題であるが、働き方の広がり等も 踏まえつつ、検討していく必要性が指摘された。
・ 第3号被保険者制度→前回の「社会保障審議会年金部会における 議論の整理」(平成 27 年 1 月 21 日)において、第3号被保険者を将来的に縮小していく方向性を共有するとともに、第3号被保険者については単に専業 主婦(夫)を優遇しているとの捉え方ではなく、多様な属性を持つ者が混在していることを踏まえた検討が必要であることについても認識を共有した。その上で、まずは、被用者保険の適用拡大を進め、被用者性が高い人については 被用者保険を適用していくことを進めつつ、第3号被保険者制度の縮小・見直 しに向けたステップを踏んでいくことが必要であると整理されている。 今回の適用拡大はこの方向性に沿って一歩前進するものであり、引き続きこの方向性に沿った対応を進めていく必要がある。

2 高齢期の就労と年金受給の在り方
・ 先に述べたように、在職老齢年金制度は拠出制年金における例外的な仕組 みであり、同じような所得を得る者間での公平性の問題、賃金増加分の半分に 相当する年金が停止されるという比較的厳しい制度であるという制度の性質、 また、繰下げ受給をしても在職支給停止相当分は増額対象とならないことを考えると、今回は改正しない高在老を含めた高齢期の年金と就労の在り方については、引き続き検討を進めていく必要がある。 今後、生産年齢人口の減少が加速化する中で高齢期の就労の重要性が増し、 高齢期の就業が多様化する中、フルタイムなど現役期の働き方に近い形で就労 する高齢者も増加していけば、現行の制度のままでは、高齢期にも現役平均程 度で就労を続ける者にとって、年金水準の充実の効果が得にくいこととなる。 今後、マクロ経済スライドの調整により、将来世代の所得代替率が長期的に 調整されていくことも踏まえれば、就労の長期化を年金制度に反映することにより、長期化する老後生活の経済基盤の充実が図られるよう、今後の高齢期の 就労の変化を念頭に、高齢期の就労と年金の在り方について検討を進めていくことが求められる。
・ また、高齢者が個々人の生活スタイルに合わせて、年金受給開始時期を柔軟 に選択できるようになることは、高齢者の働き方の多様化が進む中で非常に 意義が大きい。高齢者雇用においては、より多様な形での就業機会の確保が進められる中、就労と年金の組合せの選択がより多様で柔軟にできるよう、引き 続き検討を続けるべきである。

3 年金制度の所得再分配機能の維持
・ 2009(平成 21)年、2014(平成 26)年財政検証結果に引き続き、2019(令 和元)年財政検証結果においても、1階部分の基礎年金部分のマクロ経済スラ イド調整期間は、2階部分の厚生年金(報酬比例部分)よりも長期化していることが確認された。基礎年金は、所得の多寡にかかわらず一定の年金額を保障する所得再分配機能を有する給付であり、この調整期間の長期化は、年金制度 の所得再分配機能の低下を意味することとなる。この再分配機能を維持することは、基礎年金のみを受給する者だけでなく、厚生年金の受給者にとっても、 その高齢期の経済基盤を充実させるために非常に重要である。
・ 被用者保険の適用拡大は、その分国民年金の拠出金負担を減少させ、国民年金財政を改善させて基礎年金のマクロ経済スライド調整の早期の終了に資するものであることから、基礎年金の所得再分配機能の維持のためにも、被用者保険の適用拡大を、今回の適用拡大以上に、さらに徹底して進める必要があることは明らかである。
・ なお、2019(令和元)年財政検証において、平成 28 年年金改革法による年金額改定ルールの見直しの影響が、将来世代の給付水準の上昇につながることが確認されたところであるが、マクロ経済スライドの効果については、引き 続き、その状況の検証を行うべきである。
・ その上で、今後は、基礎年金の所得再分配機能を維持する更なる方策として、 保険料拠出期間の延長についても、必要となる財源確保の在り方も検討した 上で、就労期間の長期化等の高齢者の雇用実態等も踏まえて検討すべきである。 また、基礎年金が、厚生年金と国民年金の被保険者が公平に拠出して支える仕組みであることを踏まえつつ、報酬比例部分と基礎年金のバランスを確保して基礎年金の所得再分配機能を維持していくため、どのような方策が可能か、 引き続き検討するべきである。

4 その他
・ 今回行う制度改革は、働き方の多様化、高齢期の長期化に対応する観点から、 主に老齢年金を射程とした改革となっている。しかし、公的年金制度について は、障害年金・遺族年金についても、社会経済状況の変化に合わせて見直しを 行う必要がないか検証し、その結果に基づいた対応についての検討を進めて いくべきである。
・ また、働き方の多様化、高齢期の長期化が進む中、老後の所得保障や退職後の生活設計の情報に対するニーズは高まっている。年金制度→広報 媒体の多様化や世代の特性も踏まえつつ、様々な媒体を適切に用いた周知を行いながら、正しい情報を正確に伝え、関係者の理解を得ていくことが重要である。その際、地域や事業所における年金委員の活用も図っていくべきである。 これに関連して、年金に関して様々なウェブサイトがあることで、かえって 知りたい情報にアクセスすることが難しいとの指摘もあったことから、2019 (平成 31)年4月、厚生労働省ホームページ上に、ライフイベントごとに必 要な年金情報が整理されたサイトである「年金ポータル」が開設されたところであり、引き続き広報の充実・強化に取り組むとともに、戦略的な広報展開を 検討すべきである。 また、2019(令和元)年財政検証でも、世帯類型ではなく一人当たりの賃金 水準によって所得代替率が決まることやその水準がどのようになるかを示し ているが、このように、モデル年金以外の所得保障の状況についてもイメージ できるようにわかりやすく示す工夫を重ねていくことが今後とも重要である。
・ 高齢期の生活は多様であり、それぞれの方が望ましいと考える生活水準や、 働き方の希望、収入・資産の状況なども様々である。公的年金制度に関する関 心内容として「自分が受け取れる年金はどのくらいか」が最も高くなっており、 制度自体の広報・周知に加えて、個々人の老後の公的年金の支給額等がいくら となるか若い頃から見通せるようにすることが、老後生活や年金に対する不 安を軽減するためにも重要である。次期制度改正で、高齢者が自身の就業状況 等に合わせて年金の受給開始時期の選択肢を 60〜75 歳までに拡大することも 踏まえれば、その必要性は一層高まる。 こうした観点から、これまでも「ねんきんネット」による年金見込額試算の 充実などが取り組まれているが、さらに、公的年金、私的年金を通じて、個々 人の現在の状況と将来の見通しを全体として「見える化」し、老後の生活設計 をより具体的にイメージできるようにするための仕組みを検討すべきである。
・ さらに、個別の制度の仕組みや個々人の状況の情報提供にとどまらず、誰もが人生を歩んでいく上で避けることのできないリスク(年金制度の場合は稼得能力の喪失)に対して、社会全体で連帯して備える社会保障制度という大きな枠組みの中で、貯蓄ではなく保険の考え方を基本に構築されている年金制度の意義や位置付けを理解してもらうことも重要であり、子どもの頃から生 涯を通じた年金教育の取組を進める必要がある
・ 最後に、公的年金制度の在り方については、様々な意見があるが、国民全体の幸福、我が国全体の発展に資するような改革が何かを十分に検討し、今後も、 将来世代のための改革の議論を続けていくことが重要である。

次回は、新たに「「難病・小児慢性特定疾病研究・医療ワーキンググループ」のとりまとめを公表いたします」からです。
トラックバック
※トラックバックの受付は終了しました

コメントする
コメント