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第22回社会保障審議会福祉部会 資料 [2019年07月27日(Sat)]
第22回社会保障審議会福祉部会 資料(令和元年7月22日)7/27
《議事》(1)地域共生社会に向けた包括的支援と多様な参加・協働の推進について
(2)社会福祉法人の事業展開等の在り方について
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_05799.html
◎資料2地域共生社会推進検討会中間とりまとめ(本文)
T 検討の経緯
○ 厚生労働省
→「地域共生社会の実現」を今後の福祉改革を貫く基本コンセプトとして、「地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律」において、社会福祉法が改正され、地域福祉の推進の理念 が明記されるとともに、市町村が包括的な支援体制づくりに努める旨が規定された。
○ 改正法の附則→公布後3年(令和2年)を目途に、包括的な支援体 制を全国的に整備するための方策について検討を加え、その結果に基づいて 所要の措置を講ずることとされている。
○ これらを受けて、包括的な支援体制づくりを具体化するため、平成 28 年度 より「地域共生社会」の実現に向けた地域づくりの強化を図る取組の推進のた めのモデル事業が実施。昨年度(平 成 30 年度)時点で、151 の自治体がモデル事業を活用しながら、体制の構築 の検討と実践を進めている。
○ また、昨年 10 月に厚生労働省に設置された「2040 年を展望した社会保障・ 働き方改革本部」→論点の一つの柱として地域共生・地域の支え合いの実現に向けた取組の検討が据えられ、本年5月 29 日に検討の方向性が示されており、本年6月 21 日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方 針 2019」(骨太の方針)においては、「全ての人々が地域、暮らし、生きがいを共に創り高め合う地域共生社会を実現する」として、「断らない相談支援な どの包括支援や多様な地域活動の普及・促進について、新たな制度の創設の検 討を含め、取組を強化する」との方向性が示された。
○ このような政策の流れを踏まえて、包括的な支援体制を全国的に整備する ための方策について検討を行うとともに、より広い視点に立って、社会の変化 や個々人のニーズの変化、各地域で生まれつつある実践等を踏まえ、今後社会 保障において強化すべき機能や、多様な社会参加と多様な主体による協働を推進していく上で必要な方策について検討を行うことを目的として本検討会は設置され、これまで、計5回にわたり議論を重ねてきた。

U 福祉政策の新たなアプローチ
1 個人を取り巻く環境の変化と今後強化すべき機能
(1)これまでの福祉政策の枠組みと課題
→他の先進国同様に、人生において典型的と考えられるリスクや課題を想定し、個々のリスク・課題の解決を目的として現金給付や福祉 サービスなどの現物給付を行うという、基本的なアプローチの下で、公的な福祉サービスの量的な拡大と質的な発展を実現してきた。これにより、経済的な意味での生活保障やセーフティネットの確保は大きく進展。その一方で、高齢、障害といった対象者別の制度の専門性は高まったものの、 個別制度の適用要件に該当しない者は支援の対象とならない、8050 問題のような複合的なニーズに柔軟に対応できない、人生を通じた一貫した支援が受けられないといった課題が指摘され、相談支援の実践は、このような課題への対応に苦慮している様子が明らかとなってきている。
(2)個人や世帯を取り巻く環境の変化 →例えば、個人や世帯が抱える生きづらさやリスクが複雑化・多様化しており、・ 社会的孤立など関係性の貧困の社会課題化、・ 生活困窮を始めとする複合的な課題や、人生を通じて複雑化した課題の顕在化、・ 雇用を通じた生活保障の機能低下(例えば、就職氷河期世代の就職困難、不安定雇用) などの変化が見られている。 また、世帯構造についても、 ・ 高齢化や生涯未婚率の上昇に伴う単身世帯の増加 ・ ひとり親世帯の増加 など、生活保障の一部を担ってきた家族の機能にも変化が見られている。 さらに、社会の変化→・ 共同体機能の低下(血縁、地縁、社縁の脆弱化)、・ 少子高齢化や急速に進む人口減少などの人口動態の変化、・ 経済のグローバル化や安定成長への移行など経済環境の変化、 などが見られている。
○ このような個人や世帯を取り巻く環境の変化に呼応する形で、個人の価値観やライフスタイルの多様化が見られており、例えば、・ 他者や自然とつながりながら生きるといった、経済的な豊かさに還元できない豊かさの追求、・ 家族観や結婚観の変化、・ 働き方の多様化 などが生じている。
(3)今後強化が求められる機能→元来、個人の人生は複雑・多様であるが、近年その複雑化・多様化が一層進んでいるといえる。相談支援の実践においても、経済的困窮や、病気、住まいの不安定などの課題が複合化した事例が多く見られている。また、教育問題など福祉領域以外の課題が関係する場合、生きづらさの背景に、家族の問題や本人の不安、ひきこもりなど本人や家族の社会的孤立といった関係性の貧困が存在する場合、自己肯定感・自己有用感が低下している場合など、既存制度の 枠組みのみでは対応が難しい事例、支援に時間を要する事例も多く見られている。このことから、今後の福祉政策を考えるに当たり、典型的なリスクを抽出し対応する従来の枠組みの延長・拡充のみでは限界があるといえる。 今求められているのは、一人ひとりの生が尊重され、複雑・多様な問題を抱えながらも、社会との多様な関わりを基礎として自律的な生を継続していくこ とができるように支援する機能の強化である。

2 対人支援において今後求められるアプローチ
○ 福祉の専門職による対人支援は→
・ 具体的な課題解決を目的とするアプローチ、・ つながり続けることを目的とするアプローチ に大別できる。このうち、「具体的な課題解決を目的とするアプローチ」は、本人が有する特定の課題を解決に導くことを目的とするものであり、このアプローチを具体化する制度は、それぞれの属性や課題に対応するための支援(現金・現物給付) を重視した設計となっている。このアプローチは、その性質上、本人や世帯の抱える課題や必要とされる対応が明らかな場合に有効である。これに対して、「つながり続けることを目的とするアプローチ(以下「伴走型 支援」)」は、支援者と本人が継続的につながり関わりながら、本人と 周囲との関係を広げていくことを目的とするもの。それを具体化する制度は、本人の暮らし全体を捉え、その人生の時間軸も意識しながら、継続的な関わりを行うための相談支援(手続的給付)を重視した設計となる。また、 伴走型支援は、生きづらさの背景が明らかでない場合、自己肯定感・自己有用 感が低下している場合、8050 問題など課題が複合化した場合、ライフステー ジの変化に応じた柔軟な支援が必要な場合に特に有効であるが、同時にこれは、直面する困難や生きづらさの内容にかかわらず、長期にわたる場合も含め、 本人の生きていく過程に寄り添う支援として、広く用いることができる。
○ 対人支援→一人ひとりの生が尊重され、自律的な生を継続していくことができるよう、本人の意向や本人を取り巻く状況に合わせて、2つのアプローチを「支援の両輪」として組み合わせていくことが必要。特に、 冒頭に示した日本の福祉政策の課題と個人を取り巻く環境の変化に鑑みれば、 伴走型支援の意義を再確認し、その機能を充実していくことが求められている。
○ そして、いずれのアプローチにおいても、本人を中心として寄り添い伴走する意識をもって支援に当たることを、今後より重視していくことが求められている。

3 伴走型支援を具体化する際の視点
○ 専門職が伴走型支援を用いることによって、対人支援において以下のよう な質的な変化が起こり、個人の自律的な生を支えることにつながることが期待される。
→・ 個人が複雑・多様な問題に直面しながらも、生きていこうとする力を高めることに力点を置いた支援を行うことができる、・「支える」「支えられる」という一方向の関係性ではなく、支援者と本人 が人として出会い、そして支援の中で互いに成長することができる、・具体的な課題解決を目的とするアプローチとともに機能することによって、支援者と本人との間に重層的な支援関係を築くことができる、・孤立した本人の他者や社会に対する信頼が高まり、周囲の多様な社会関係 にも目を向けていくきっかけとなり得る
○ 一方で、元来、個人の人生は多様かつ複雑なものであることを踏まえると、個人の自律的な生を支える、社会へ関わるための経路についても多様であることが望ましく、専門職による支援のみを社会とつながるきっかけとして想定することは適切でない。
地域の実践では、専門職が関わる中で、地域住民が出会い、お互いを知る場 や学び合う機会を設けることを通じて、徐々に住民同士のケア・支え合う関係 性が新たなつながりを生んでいる事例が見られる。従来からの民生委員・児童 委員の活動に加え、最近ではボランティア団体などによる「子ども食堂」、「認知症カフェ」など、地域において多様な社会的課題への取組が広がっている。相互の学びから生じるつながりは、多様な参加の機会を生み、一人ひとりの 生の尊重や自律的な生の継続へとつながる。そして、こうしたつながりは、制度を通じた包摂と相まって、地域におけるセーフティネットの基礎となるが、 これと同時に、専門職による伴走型支援が普及し、福祉の実践が地域に開かれていくことで、本人と地域や社会とのつながりを回復させることができ、社会における包摂が実現されていく。
○ このように、現行の現金・現物給付の制度に加えて、専門職による伴走型支援と住民同士のケア・支え合う関係性の双方を基盤として、地域における多様 な関係性が生まれ、それらが重なり合うことで、地域における重層的なセーフ ティネットが構成されていく。
○ したがって、福祉政策の新たなアプローチに基づく制度を検討するに当た っては、一方において専門職の伴走型支援により地域や社会とのつながりが希薄な個人をつなぎ戻していくことで、包摂を実現していく視点と、他方にお いて専門職との関係以外に社会に多様なつながりが生まれやすくするための 環境整備を進めるという視点という、双方の視点が重要である。

4 重層的なセーフティネットの構築に向けた公・共・私の役割分担の在り方 ○ 福祉政策の新たなアプローチの下では、公・共・私の役割分担についても、 「自助・互助・共助・公助」を固定的に捉えるのではなく、・(準)市場の機能を通じた保障(福祉サービス、就労機会など)、・共同体・コミュニティ(人と人との関係性)の機能を通じた保障(地域におけるケア・支え合いなど)、・行政により確保される機能を通じた保障(現金・現物給付、伴走型支援を 含む手続的給付など)、のそれぞれが連携しながら、バランスの取れた形で役割を果たし、個人の自律を支えるセーフティネットを充実させていくという考え方に転換していく必要がある。

次回は、資料2の続き「V 包括的な支援体制の整備促進のための方策」からです。
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