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第8回「副業・兼業の場合の労働時間管理の在り方に関する検討会」資料 [2019年07月25日(Thu)]
第8回「副業・兼業の場合の労働時間管理の在り方に関する検討会」資料(令和元年7月9日) 
《議題》報告書(案)について
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_05690.html
◎参考資料1:第7回検討会における委員の主なご意見
1.健康管理について
○ 健康管理をどうするか→上限規制の通算をどうするかが、本来枠組みとして先にあるのではないか。
○ 2つの会社にまたがる健康問題になるので、それを複数の会社に分けて判断すること自体が、健康管理の観点からしたら無理と認識されているのではないか。
仕組みとして産業医の場合は権限強化なども行われているが、本人以外に何らかの意見を出すこと自体がほとんど無理という認識は、もう一度 確認しておく必要があるのではないか。あなたはこっちで何時間働いて、こっちで何時間働く仕事をしているから、この会社に原因がありますということを、健康管理の観点から区別することは難しいのではないかと整理をしておく必要があるのではないか。
○ 現行の枠組みの狭間に位置するようなケースが恐らく兼業・副業を観点に 入れると出てくるということをどう考えるか。 ストレスチェックの対象になる方は、常勤の方の4分の3を超える以上の 時間にかかわっている方が対象になっているが、現実的に兼業・副業を考え ると、どちらも4分の3には達していないけれども、複数の事業所で働いているような方が、通算をすると4分の3を当然超えることが出てくる。こう いうことが起こった場合に、そもそもストレスチェックの対象にするのかと か、対象とするならば誰が責任主体となってやるのかということは、制度的 にどのように考えるか。 もう一つは、ストレスチェックの場合には、基本的には本人の情報の保護が 重視されているので、ストレスチェックの結果そのものは、直接は最初に事業 者にはフィードバックされない。申し出があればとなっているが、特に兼業・ 副業のようなケースであると、必ずしも会社側に申し出をする前の、例えば保 健師に相談するとか、そういうところでとどまる可能性もあるので、実効性をどう担保するのかという議論は少し広く考えておく必要があるのではないか。
○ 50 人未満の事業所の場合には、ストレスチェックは努力義務になっている が、長時間の面接指導は全事業所が対象になっているので、50 人を超えない場合に、片方は努力義務で、片方は全事業所の義務になっているものに対して、制度上どのように手当てをして整理をするのか、もう少し確認しておく必要があるのではないか。
○ 健康確保は本人に委ねるという考え方もあり得る。 また、事業主に健康確保措置を義務付けるのではなく、兼業・副業先での 労働時間把握義務を課すにとどめ、実際には労働者自身による長時間労働の抑制を促すということも考えられる。
○ 健康管理と労働時間管理を切り分けて議論することは難しいので、上限規制をどうするのかということ、それがどういう形になった場合には健康管理 はどうなのかということの両方を見ながら議論する必要があり、労働時間を通算するのかどうかとか、労働時間管理についての方針が決まらないと、なかなか健康管理単独では議論が難しいのではないか。

○ 健康管理だけの議論をすると、基本的には御本人の自己管理ですというような方向で議論をせざるを得なくて、ほかの理由から時間通算する、もしく は時間把握をするのであれば、それを使ってということもあり得るが、これだけ議論すると何となく、最終的には本人に任せるという方向で行かざるを得なくなってしまうのではないか。

2.上限規制について
○ 行政解釈が裁判で覆ることがあり得ることは、今一度考えなければいけな いし、副業・兼業促進の観点からの議論となると、昭和 22 年当時の行政解釈 をそのまま維持することが適切かどうか、いまの時代に合った解釈も考えなければいけないのではないか。
○ 厳密な労働時間管理の上で上限規制を厳格に適用する場合、兼業・副業の 事実や労働時間についての不申告を理由とする懲戒等を招くおそれがある。 他方、健康確保や労働者が家庭生活や地域社会で活動する時間の確保の観点から、上限規制を超える労働は労働者にとっても許されないとして、規制を及ぼすということも考えられる。
○ 上限規制を適用するかどうかと、健康確保措置をどうするかという点は連動してくる。仮に上限規制を通算して適用しないという選択肢をとるのであ れば、健康確保のほうでもしかしたら何らかの対応をとらなくてはいけないのではないか。 一方で、仮に上限規制を通算して適用しない、本人の裁量に任せるというよ うな選択肢をとったとしても、結果として、例えば社員が健康を損ねて裁判に なったときに、果たしてどちらの企業が責任を負うのかの判断が難しいとなると、企業としては社員の健康確保という観点に加えて、企業のリスクマネジメ ントという観点からも、通算して長時間労働することはできれば避けてほしいと考えるのではないか。 例えば最近予め通算の労働時間の上限を設定し、通算してその上限の範囲であれば副業・兼業を認めるような事例も出てきているので、そのような形で副 業・兼業を促進していくことはあり得るのではないか。 すでにモデル就業規則で、副業を制限・禁止できる条件が列挙されているが、その中に通算した労働時間が一定の上限を超えると、副業・兼業を制限・ 禁止できるという条件を加える、つまりモデル就業規則を一部変更するのも 1つのやり方なのではないか。もちろん、通算した労働時間の上限もいくつか段階があり、どこを上限にするかは検討する必要がある。
○ 複数就業の場面では、上限規制との関係で通算をしないとしても、企業側 がリスクマネジメントとして副業先の労働時間を制限することはありうる。 反対に、通算するとした場合には、仮に企業側が副業先の労働時間を制限し ていたとしても、労働者がこれを超えて労働した場合には、企業側が刑事責任 を問われるおそれも生じることになる。 いずれにしても、副業先での疲労により体調不良が明らかに認められるケ ースでは、副業の事実について本業使用者が認識していないとしても、安全 配慮義務に基づく対応をすることが求められる可能性がある。
○ 通算をしないことにすれば、自由に副業・兼業ができて促進できるという 議論があり得る。 しかしそうは言っても、副業・兼業で健康を害する人がいた場合に、それを 全く規制しない、そういう状況でよいのかということになってくると、潜在的 なリスクの観点から、むしろ副業・兼業を企業のほうでも抑制することになる かもしれない。そういうことも考えておく必要があるのではないか。 副業・兼業をできるいわば枠のようなものを仮に考えるとしたときに、どういう枠が実際上設定できるのかは、かなり技術的にも難しいことになってくるのではないか。 本業の使用者がある程度の時間、自分のところで残業させる枠も確保した上で、その余った部分でのみ副業を許容するような枠になるのか。 それとも、ある労働者にとっては、むしろ副業のほうが自分にとっては能 力を活かせる活動であって、むしろそちらに注力したいという人にとって、 その枠を本業の使用者のほうが先にとってしまうというような枠の設定でよいのか。これは一例だが、そのように枠を設定するとしても、望ましい副業・ 兼業というのはどういうものか。これは非常に多様なので、妥当な枠の設定 が可能かどうかということも詰めて検討する必要が出てくるのではないか。
○ バイトの掛け持ちみたいなものをたくさんやっている人がいた場合に、そ のときにどこが主なのか、従なのかはなかなか決めにくい状況もある。機械 的に決めることはできるのかもしれないが、主と従という部分も少し考え直 す必要はあるのではないか。マルチで仕事している人たちにどのような総労 働時間規制をかけていくのかという議論をしたほうがいいのではないか。 ○ 労働政策として妥当な副業・兼業を認めていこうという方向からすると、 一定の雇用・雇用の場合に施策を展開することは十分あり得る。昭和22年以来の通算するという行政解釈をとってきたことを踏まえたソフトランディン グ的な対応かもしれないが、そういう対応はあり得る。 昭和22年当時のように1日単位で時間外労働を全部把握して、それに違反 した場合に罰則をかける形でのやり方は非常に困難であるし、しかも、弊害 のほうが大きいであろうということであれば、副業・兼業をしたいという人 たちは、むしろ非雇用という形で働いたり、あるいは健全でない形での展開 が生じてしまうこともあるのではないか。 そこで、非雇用で働く場合には、これは雇用の問題でないとなると、もとも と規制はかからないので、副業・兼業をするかどうか自体は本人の選択だとい うことも加味して考えると、雇用・雇用の場合に本人がそれを申告してきた場 合には、一定の労働政策としての対応を考えるという選択肢はあり得るのでは ないか。
○ 企業人事の立場では、自己申告をさせることは、内容はもちろん労働時間 についても、企業にとっては重要なことではないか。例えば競業でやってい ないか、どういう仕事をしているのかとか、どのぐらいの収入があるのかと か、収入はともかくとしても、その一環として、労働時間を報告してもらう のは、人事上はそんなに追加的な手間には多分ならないはずなので、それは、 十分可能ではないか。 割増賃金の議論とも関連するが、ある程度長い期間で自己申告をしてもらう ということは、健康確保という先ほどの議論とも関連した上では、十分あり得 るのではないか。
○ 労働時間の把握については、兼業開始するタイミングで申告を求める方法 の他、労働者自身に労働時間の把握を委ね、上限規制に抵触しそうになった タイミングで申告を求める方法が考えられる。 本業使用者が副業先の労働時間を制限できるとの建前をとった場合、副業の 比重が労働者自身の中で高まったときに、本業使用者に対して、労働時間の調 整を求める権利を認めるかという点も立法的課題となりうる。 ○ 副業・兼業が労働者の自由な意思によってなされていること、これは建前 かもしれないが、このことを前提にして議論を進めなければいけないのでは ないか。 副業・兼業の促進は、労働者が強制された副業・兼業をすることを促進する ものではないはずである。そうすると、労働者の自由な意思によって、副業・ 兼業が選択されていると見るべきである。そのように考えていくと、申告に基 づく上限規制の適用という考えはなじむのではないか。 通算した上限規制を厳格に適用しない場合に懸念されるのは、実態としては ほぼ同一の使用者同士が労働者に副業をさせるようなケースが出てくるのではないか。そうしたときに、同一の使用者と認定できれば問題ないが、別の使 用者と判断せざるを得ない場合に何か上限規制をかける方法というか、使用者 側が副業・兼業制度を悪用して、労働時間規制を免れることが起きないように することを考えることは必要ではないか。
○ 実態としては使用者が異なってるとはいえないような場合には、厳格に1 つの使用者と見て規制すべきであり、その潜脱は許されてはならない。 もう一つ、副業・兼業は自発的な意志による副業・兼業が前提ということ で、自己申告がある場合には、労働時間の規制も考えるといった場合におい て、どのようにやるかというのは次の実効性の確保とも関連してくる。 労働基準法の32条によると、1日単位で把握しなければいけないことにな る。これまでの過労死認定基準なども、月単位での時間外労働が80時間とか 100時間というように一定のタームにおける時間外労働として議論してきて いるところだが、労働基準法自体は1日8時間という1日単位で規制をして いる。 この点は仮に副業・兼業という形であって通算をする場合、実効性があるよ うな通算の仕方を考えておかないと、形式上通算をすることになったのだけれ ども、実態として回らないことになると、その規制の実効性がなくなり、違法 状態が蔓延しかねない状況にもなって、労働基準法上の規制としては非常に問 題がある。実効性のある規制としてどのように考えられるかということについ て、さらに検討を深める必要があるのではないか。
○ 請負労働者が別の事業所の企業でも雇用される、つまりダブルワークのよ うになったときに、双方の労働時間が通算されないとすると、トータルの労 働時間が長時間化する懸念もそれなりにあるので、特に請負労働者の副業化 みたいなものが起こったときに、どういう支障が出てくるかということにつ いては少し整理しておく必要があるのではないか。
○ 仕事を始めた時点での副業は、使用者の制度悪用ではなくて、労働者側の 意思だが、時間外労働が組み合わさったときにどのように判断すべきか。副 業・兼業は、労働者の意思といえる場合であっても、時間外労働を強制され た、余儀なくされたような場合にどのように考えていくという問題があるの ではないか。 ○ 例えば会社の社長が別に経営している法人で仕事をするケースや会社同士 の関連性がみられるケースについてまで、上限規制との関係での通算を行わ ないとするのか、あるいは、上限規制の緩やかな適用を認めるのかといった 点については更に検討の必要がある。 ○ 上記の例について、仮に同一使用者でないとした場合であっても、これを 副業・兼業として、やはり自分の健康を守るために労働時間規制を適用してほしいと労働者自身が思って、自己申告した場合には、通算して労働時間に 規制をかけることが可能だとすると、そういうことでなければ、むしろ自発 的なものとして許容するという形で受けることは可能ではないか。
○ 雇用・非雇用で非雇用が兼業的な働き方の場合には規制しないというのが 大方の今回の流れなので、極限な例を考えれば、労働者に非雇用で業務委託 をさらにさせていくような雇用主もあり得ないわけではない。その場合も総 労働時間を自己申告してもらうことは可能なのかもしれないが、上限規制で あるとか、労働時間の規制という話からは、今の私たちの議論だと外れてし まうように思うので、原則論として一応総労働時間を把握することを、極端 に言えば非雇用であったとしても、設ける必要はあるのではないか。
○ 雇用か非雇用かというのは客観的に判断されるというのが前提。非雇用の 業務請負契約という当事者間の了解で役務を提供していても、客観的にそれ が指揮命令に服した労務の提供と評価されたら、それは雇用・労働であって、 労働法制は適用されるということは前提としている。当事者間がこれは非雇 用だねと了解していても、裁判所に訴えた場合には、これは非雇用ではなく て雇用ということは十分あり得る。そのように客観的にも雇用と評価されな いものについては、労働法制が規制することはできない。つまり指揮命令に 服していないし、業務の委託についても自由に断れるような、そういう自由 があっての役務提供ということであれば、これは純然たる非雇用ということ になる。それについては恐らく通算とかいう話は問題となってこない。これ は世界中で同様の議論があり、雇用類似の検討会でも議論しているが、非雇 用と当事者が思っていても客観的にはそれは労働・雇用であるという誤った 分類(ミスクラシフィケーション)の問題は常に生じ得るので、それについ ては厳格に、客観的に労働法制を適用していくことを前提の上で整理すべき ではないか。
○ 労働基準法32条は、週単位40時間、1日単位8時間という規制であり、こ れを本人の自己申告によった場合には通算するという制度を仮に考えた場合 には、それは本当に1日単位でやるのかということになってくる。しかし、 諸外国でも大体通算をすると言っているのは週単位の40時間とか、そういう 規制を前提に通算する話が展開しているので、もし通算を考えるということ であれば、やはり実効性も考えた上でワーカブルな制度を考える必要が出て くる。その場合に現在の労働基準法のままでよいのか、その点も併せて考え る必要が出てくるかもしれない。
○ モデル就業規則にあるとおり、副業・兼業を制限・禁止できるという前提 に立つと、最初に副業・兼業を社員が申し出てきたときに、どれぐらい副業 先で働くのかを申告してもらう。その後、副業のウエートを高めるという場合には、もう一回、副業・兼業をどう位置づけるかを、特に本業の会社と社 員が話し合うというステップが必要になるのではないか。 個別の労働時間をそんなに厳密に管理する必要はないということは賛成だ が、多分副業のウエートが高まるのであれば、やはり相談してもらわないと本 業の会社が困ってしまうのではないか。 ○ 労働時間規制を通算して適用してほしいと申告するという選択肢を設ける のであれば、働いている先全部に申告するプロセスになるのか。そのあたり も整理する必要があるのではないか。 ○ 自己申告とは一体どの程度の頻度で、どのタイミングでやってもらうのか という議論はやはりある。年に1回とか定期的に報告させて、変わったのな らば、そこでもう一回話し合うようなこともあり得る。 何となく変わり始めたときと言っていると、実務上結構難しいのではないか。 自己申告といったときに、どの程度の頻度で出してもらうのか、そこまで法律 で考える必要はないのかもしれないが、実務上は考えておいたほうがいいので はないか。 ○ 自己申告を定期的に求める設計のほか、本業使用者に対し、労働時間の調 整を求めるといったニーズが生じたその都度、申告をするという選択肢もあ り得る。後者については、本業使用者に対して労働時間調整を求める権利を そもそも認めるかという点が前提として問題となりうる。
○ 上限規制を緩やかに通算する場合、その適用を特例として認める方法と労 使協定の締結により認める方法が考えられる。労使協定の締結による方法に ついては、副業している労働者の利益をどこまで反映できるかという点に疑義がある。
○ 例えば自己申告があった場合に、使用者は違っても労働時間を通算すると、 現行法では1日単位で必ず通算して、それで8時間をちょっとでも超えたら 罰則がかかり割増賃金規制もかかるということになりかねない。そういう状 況を現実にワーカブルな形にするために、労基法の最低基準の例外を認めるための労使協定ということであれば、これまでの労基法上の原則的な規制の 例外を認めるための労使協定と同じ位置づけなので、可能ではないか。

3.割増賃金について
○ 副業・兼業を推進する立場に立つのであれば、通算しないことが結論になり得るが、さまざまな選択肢を提示するという観点からあえて割増賃金通算する場合について申し上げると、上限規制の議論のところでも出てきたよう に、一日一日の割増賃金の計算はおよそ現実的ではないので、そこの計算の仕方や、あるいは申告の仕方を簡易化するような運用、特例を考える必要があるのではないか。
○ 労働基準法32条は、週40時間、1日8時間を超えて「労働させてはならな い」ことを使用者を名宛て人にして命じている。仮に割増賃金を副業・兼業 と通算して両者を足して法定時間を超えた場合に割増賃金を払わせることに なると、自分が時間外労働を「させ」たのではないにもかかわらず、割増賃 金の支払い義務が発生し得ることになるのは、現行法の解釈としても、本当にそれでよいのかという問題がある。昭和22年以来、通達としてそうなって いたが、本当にそれはそうなのかは考える必要があるのではないか。 昨年調査に行ったヨーロッパの3カ国では、使用者が違う場合に割増賃金 請求権に関して通算して割増賃金が発生するような制度をとっている国はいずれもなくて、それは賃金の問題であって、健康確保のための労働時間の通算とは全く別の問題であるという整理がされていた。労働基準法32条も、基本的には健康確保のために法定時間以上働かせてはならないという規制であ り、そういうことを踏まえて再度この問題を位置づけてみる。すなわち割増 賃金については通算するのは必ずしも合理性がないという考え方は十分成り立ち得るのではないか。
○ 労働者が割増賃金を期待して時間外労働を引き受ける傾向は、一定程度見られるが、そのような理由から副業・兼業をする、また、そうした副業・兼 業を促進するのは、副業・兼業の促進の趣旨から逸脱するのではないか。 割増賃金の1つの意義として、1つの会社、1人の使用者が労働者を必要以 上に拘束することに対する補償という面がある。副業・兼業は一定程度労働者 の意思、選択によることを考えると、使用者が拘束しているからその補償的な 意味合いで割増賃金を支払うという論理は、副業・兼業の場合には当てはまら ないと考える。
○ 割増賃金→労働時間を通算すべきではないという考えだが、多様な選択肢という観点から、仮にこの制度を維持するのであれば、日々の労 働時間で割増賃金を請求する形ではなく、月単位で請求する形があり得る。 ただ、副業労働者が割増賃金を請求しやすくする仕組みを採用した場合、副 業労働者の雇用を回避する方向に動く可能性もあり、こうした仕組みの採用に は疑問がある。
○ 自己申告によって、いわば健康確保のために通算して上限規制を及ぼし得るとしても、割増賃金規制もかかることにするかどうかは選択の問題となるのではないか。 上限規制をかけたとしても、割増賃金規制については別にすることが、選 択肢としてあり得るのではないか。自己申告をすることによって、割増賃金が発生すると、使用者としては最初からほかの人より1.25倍払わないと雇えない労働者ということになると、そういう方は雇わないし、例えば有期契約 であったら次の更新はやめておこうということになる。副業・兼業をしてい る大多数の方は、収入が低いので副業・兼業をしておられるわけで、その労 働者のニーズにかえって背く結果をもたらしかねない。 健康の確保が必要だということであれば、長時間規制はやるけれども、割増賃金規制については別に扱う。そういう選択肢もあり得るのではないか。
○ 自己申告と割増賃金をかけるという、その2つは矛盾があるのではないか。 いずれにしても労働者が正しいことを言っているかは、どこかの段階で問題 にはなるのだろうが、雇用主として見た場合に、自己申告で労働時間を言ってもらったときに、オーバーに言っているのではないかという要素をどのようにコントロールするのか。 健康管理のほうは、十分論理は成り立つが、割増賃金を自己申告で進めていくのは、実態上そういうことをやっているところはあるけれども、制度として は矛盾があるのではないか。

4.その他
○ 副業・兼業の推進
→@生産性の向上やイノベーションを進めるようなものの推進であり、A収入面からのものを別に禁止するという趣旨ではないけれども、Aを積極的に推進するということではないのではないか。 そうなると、@を特別扱いする方向は、大いにあり得る。ただ、@とAの区 分が難しいので現実的ではない。もし仮に区別ができるのであれば、異なる 規制のほうが@の副業・兼業の推進に寄与するのではないか。
○ 生産性の向上と収入面の区別は、いずれもセルフインタレストであり、区別は難しい。 生産性の向上やイノベーションにつき、当該企業における利益に還元されるものに限定するのであれば、一応の区別は可能だが、法律の適用に際しての切り分けは困難ではないか。企業が副業を推進している場合に労働契約上の配慮義務がより重くなることはありうるかもしれないが、労働時間規制の適用の場面でこれによる相違を設けることは困難と考える。
○ 副業・兼業は基本的には私生活の領域である。つまり、モデル就業規則で示されているような、本業に支障が出る等、雇用者が何らかの不利益を被る 場合に限っては、ある程度規制がかけられるかもしれないが、私生活の領域 には介入できないというのが基本原則。 そうすると、逆もしかりで、生産性の向上やイノベーションにつながるか ら促進したいという、そういうコントロールも本来はできず、ここを分けて考えるのは、やはりなかなか難しいのではないか。
○ 生産性の向上は2種類あって、企業の生産性向上と個人の能力アップという話と両方あって、能力アップのためであったらば、区別をするという議論もあり得るという話。ただ、それが回り回って企業の利益につな がるとなると、それはちょっとグレーなところに入ってくるかなという気はするので、やはり分けられないのではないか。
○ 雇用・非雇用→非雇用のほうを労働法制で規制することは難しい。 ただ、現行の兼業・副業ガイドラインなどを見ていても、個人事業主として 兼業・副業を行う場合についても、過労等により業務に支障をきたさないようにする観点から、就業時間を把握することを通じて、長時間にならないように配慮することが望ましいといったような規定は入っており、とりわけ健康管理という観点からは、そういった就業時間の把握が望ましいこともあり 得る。 ただ、実際問題として、使用者に健康確保措置を義務付ける立法を行う場合 に、自営の就業時間も含めることが妥当かは慎重な検討が必要である。
○ もし割増賃金が通算なしという方向に行くのであれば、実際に日々なり 月々の総労働時間の把握ということの実効性がかなり難しいことを認めざる を得ないのではないか。 そうすると、何のために時間を通算するのか、もし健康管理という観点であ るのであれば、例えばもともと最初の時点で雇用主のほうは兼業・副業をする かどうかは、労働契約のところでも出てくるので、その時点で、今でいう長時 間の面接指導の枠組みに入れてしまえば、別に時間の把握は無理にしなくても、 健康障害の防止も可能になるのではないか。今の雇用・非雇用の議論も、それ を申告した時点で長時間の枠組みに入れてしまう。 もう一つの意味は、そもそも兼業が悪いのか、主が悪いのかを健康管理上区 別できない以上、どんな形であれきちんと健康管理を受けていただくという仕 組みとしては、もうそれでいいのではないか。
○ 難しいのは非雇用といったときに健康を害する活動というか、健康に支障のある活動は、非雇用でも十分起こり得る。そのグレーゾーンが結構あって、 例えばボランティアであるとか、そういうものをどのように考えるのか、考慮する必要はあるのではないか。
○ 労働時間規制は、労働者の健康確保ということなので、健康確保が目的だ とすれば、何も労働時間を必ず通算するのだけが唯一の選択肢ではなくて、 労働時間規制ができたときは、工場労働者のような肉体労働者が8時間以上 働いたら健康を害するだろうということからできてきたが、非常に多様な働き方がなされている中で、健康確保のためにはむしろストレスチェックとか、別の方策が有効かもしれないということであれば、それで同じ目的が達せら れるのであれば、技術的に非常に困難な問題がたくさんある通算をどこまで やっていくか。いずれの選択がより妥当なのかというのは、十分に議論して 詰めるべき課題ではないか。

次回は、「第22回社会保障審議会福祉部会 資料」からです。
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