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第8回「副業・兼業の場合の労働時間管理の在り方に関する検討会」資料 [2019年07月24日(Wed)]
第8回「副業・兼業の場合の労働時間管理の在り方に関する検討会」資料(令和元年7月9日) 
《議題》報告書(案)について
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_05690.html
◎資料1「副業・兼業の場合の労働時間管理の在り方に関する検討会」報告書(案)
X.実効性のある労働時間管理や健康管理の在り方に向けて
→ここまでの概略から見えてきたこととして、我が国の労働の実状等に鑑み、実効性のある労働 時間管理や健康管理の在り方を考えるに当たっての課題と、これを解決するための方向性としては、↓↓

1.現行制度の課題
(1)健康管理につい
て→現行制度では、労働安全衛生法において、事業者に対し、定期健康診断や、 ストレスチェック制度、1か月の労働時間に基づいて把握した長時間労働を 行っている者への医師の面接指導等を義務付けるとともに、労働者の健康状 態に応じ、必要な就業上の措置を行わなければならないこととしている。ただし、複数の事業者間での労働時間は通算せずに、実施対象者の選定をすること となっており、主に、以下の課題が考えられる。→副業・兼業をしている者の労働の状況が把握される仕組みとなっていない ことから、副業・兼業をしている者に対する特別の健康確保対策はとられていないこと。
(2)上限規制について→現行制度では、通算の結果、上限規制を超えて労働させた事業主が法違反となるが、主に、以下の課題が考えられる。→上限規制を遵守するためには、少なくとも、通算した労働時間が上限規制 を超えそうな労働者については、日々厳密に労働時間把握を行う必要性あるが、こうした厳密な労働時間の把握は実務上かなり難しく、使用者からすると副業・兼業自体を認めることに慎重になり得ること。
(3)割増賃金について→・ 割増賃金規制が時間外労働の抑制装置になり得るのは、同じ事業主の下で 働いていることが前提であって、別の事業主の下で働く場合に、本業・副業 間での割増賃金の通算が時間外労働の抑制装置となり得るか疑問であること。 ・ 現行制度では、労働時間の通算に当たっては、労働契約の先後で判断する こととなっており、日々、副業・兼業先の労働時間数の把握が必要となるが、こうした厳密な労働時間の把握は実務上かなり難しく、使用者からすると、 副業・兼業自体を認めることに慎重になり得ること。また、この煩雑さは 日々の法定労働時間超えで直ちに生ずることから、上限規制の場合よりも その頻度は大きい。 ・ 使用者としては、このような煩雑さから、通算して法定労働時間を超える者は雇わないこととなり、副業・兼業をして収入を得たいという労働者の雇 用をかえって阻害するというデメリットとなり得ること。
(4)副業・兼業先の労働時間の把握方法について→現行制度では、「副業・兼業の促進に関するガイドライン」において、労働 者からの自己申告により副業・兼業先での労働時間を把握することが考えら れるとされているが、上記(1)から(3)に関連し、以下のとおり課題が考 えられる。 ↓↓
労働者からの自己申告で労働時間を把握する場合)→ 副業・兼業を行う者が増えると事務量が増え、煩雑になること。 ・ 企業としては自己申告が正しいかどうかが分からないこと。 ・ 労働者が副業・兼業の事実を使用者に知られたくないなど、自己申告を 望まないことがあり、企業が副業・兼業先の労働時間数を把握することが 困難な場合があること。 ・ 労働者の自己申告といった場合、労働者が副業・兼業をしている事実の みを申告し、労働時間数の申告は拒むことがあり得ること。
(使用者間で、労働者の労働時間数などの情報のやりとりをする場合)→自己申告の場合と比較すると、使用者から積極的に情報収集する必要があり、副業・兼業を行う者が多くなると、事務量がより膨大となること。 ・ 副業・兼業先の労働時間数も通算した労働時間管理を適切に行おうとしても、他社の適切な対応がなければ困難となること。
(上記のいずれの場合でも生じうる課題)→ ・ 労働時間に関する法制度や労働者の働き方が制度創設時と異なってお り、フレックスタイム制が創設されたり、短い時間を複数組み合わせて 働く者がいたり、副業・兼業先の労働時間の把握が困難となっていること。

2.今後の方向性
(1)議論の前提
→労働時間の通算制度については、前述のとおり、工場法の時代からあるものであるが、当時も今も、労働者の健康を保護するための規定であることには変わりはないと考えられる。しかし、当時とは異なり、現在では、変形労働時間制、フレックスタイム制 などの弾力的な労働時間制の創設や、非正規雇用労働者の増加、様々な働き方 の普及などに伴い、労働時間を通算して把握することや、通算した労働時間に 基づく上限規制の遵守や割増賃金の支払いが実務的に非常に困難となっている。 また、働き方の多様化によって、必ずしも労働時間だけが、労働者に負荷を 与える要素では無くなってきているという側面も生じつつある。 一方、副業・兼業を希望する労働者や実際に副業・兼業を行う労働者が増え ている現状においては、副業・兼業による長時間労働が懸念されることも踏ま えれば、副業・兼業を行う労働者の健康確保の充実は重要な課題となっている。これらを踏まえ、本検討会では、今後の方向性について、以下の通り整理。↓↓
(2)健康管理について→副業・兼業を行う労働者の健康確保の観点から、新たに、労働者の自己申告を前提に、各事業者が通算した労働時間の状況(例:月の総労働時間)を 把握することも考えられる。ただし、副業・兼業は労働者のプライバシーに配慮する必要があること、 事業者を跨がることから、労働者自身による健康管理も重要になり、また、 事業者は副業・兼業先の労働までは把握しきれないことから、事業者に責任 を課すとしても、副業・兼業せずに自社のみで働いている労働者に対する責 任とは差違が生ずるものと考えられる。また、産業医については、委嘱されている事業者との関係で専門的な立場 から健康管理の一端を担っており、委嘱関係にない副業・兼業先の労働につ いて直接的に対応することは困難であることに留意が必要。 ○ このようなことを前提として、健康確保措置に係る制度の見直しの方向性 としては、例えば、以下のようなことが考えられる。↓↓
@ 事業者は、副業・兼業をしている労働者について、自己申告により把握 した通算労働時間などを勘案し、当該労働者との面談、労働時間の短縮その他の健康を確保するための措置を講ずるように配慮しなければならないこととすること(公法上の責務)
・ 現行においては、通算した労働時間に基づく労働者の健康管理が労働安 全衛生法令上位置づけられていないため、事業者に通算した労働時間を把 握の上、労働者の状況に応じて、必要があれば労働時間の短縮等の何らか の措置を講ずることを求めるもの。
・ 公法上の責務として設けるため、いかなる措置も講じていない場合は行政指導の対象。
・ 一方で、この措置のみでは不十分ではないかという指摘はあり得るとこ ろであり、労働者自身による健康管理がより重要になる。

A 事業者は、副業・兼業をしている労働者の自己申告により把握した通算 労働時間について、休憩時間を除き一週間当たり四十時間を超えている時 間が一月当たり八十時間を超えている場合は、労働時間の短縮措置等を講 ずるほか、自らの事業場における措置のみで対応が困難な場合は、当該労 働者に対して、副業・兼業先との相談その他の適切な措置を求めることを 義務付けること。また、当該労働者の申出を前提に医師の面接指導その他 の適切な措置も講ずること。
・ 通算した労働時間が現行の労働安全衛生法においても健康管理上の措置 が求められているほどの長時間労働となった場合に、より強い措置を求め るもの。 ・ ただし、この場合においても、労働者のプライバシーに配慮する必要が あること、他の事業場の労働時間を直接コントロールすることができない こと等の理由により、労働者の自主性を尊重した措置にならざるを得ない と考えられるもの。 ・ また、適切な事後措置まで視野に入れた場合には、当該責務は所定労働 時間の長さ等により事業者間で差をつけることも検討課題。 〇 上記は、あくまで、考えられる選択肢の例示である。その他、労働時間の長さにかかわらず、労働者から副業・兼業を行っている旨の申告があった場合に、 現行の健康確保措置の枠組みの中に組み込むこと等も考えられる。また、副業・兼業の場合の健康管理の在り方については、労働時間の上限規制や割増賃 金などその他の部分でどのような選択肢をとるかによっても、変わり得ると 考えられることに留意すべき。
(3)上限規制について→(2)に記載された現行制度の課題で見たように、上限規制を遵守するためには、労働時間を通算することを前提としている。しかし、この通算を行うために、複数の事業場の労働時間を日々厳密に管理することは、企業 にとって、実施することが非常に困難な場合が多い。この結果として、@違 法状態が放置され労働基準法に対する信頼性が損なわれかねないこと、A労 働者が保護されない事態になりかねないこと等を踏まえ、制度見直しの方向性としては、↓↓
例えば、 @ 労働者の自己申告を前提に、通算して管理することが容易となる方法を 設けること(例:日々ではなく、月単位などの長い期間で、副業・兼業の 上限時間を設定し、各事業主の下での労働時間をあらかじめ設定した時間 内で収めること。) ・ 副業・兼業先の月の労働時間の上限を設定し、それを前提に自社の労働時間管理を行うことを認めること等により、労働時間管理を容易にしよ うとするもの。 ・ 他の事業場における労働時間の変動を考慮する必要がなくなるため、企 業の予測可能性が高まり、リスクマネジメントを図ることが可能になる。 ・ 一方で、自社における労働時間を長く確保しようとするため、副業・ 兼業の上限時間を限りなく短くする可能性があり、無限定に設定すること を認めて良いかは検討が必要である。・ また、本業及び副業・兼業の業務状況に応じて、複数の事業場間の労働 時間を変動させることがあるような場合、本業の労働時間を短縮してもらうなど本業の企業と調整できるようにすることも課題であり、引き続き検 討して行くことが必要。・なお、全企業が当該方法をとることができるとするやり方もあるが、労使協定が締結された企業のみ当該方法をとることができるとするやり方もあると考えられる。
A 事業主ごとに上限規制を適用することとするが、通算した労働時間の状 況を前提に適切な健康確保措置を講ずることとすること ・ 上限規制を事業主ごとの適用とすると、事業主はより労働時間の管理がしやすくなり、労働者も副業・兼業を行いやすくなる。 ・ しかしながら、この場合、通算した労働時間が過労死ラインを超えるよう な場合が生じることになり、労働者の健康確保が図られないおそれがある。 ・ このことから(2)で述べた健康確保措置を適切に行わないと、労働者の 保護が図られなくなるおそれがあることに留意が必要である。 ・ なお、この案を採った場合でも、別の事業主の下で働く場合と異なり、同 じ事業主との間で複数の異なる労働契約を締結する場合や、同一の事業主 の複数事業場で働く場合、事業主間で同一の労働者を雇用していることについて明確な認識がある場合等については、法の潜脱とならないよう、通算することが適切だと考えられる。 ・ また、実務的には、各企業において、自社と副業・兼業先の労働時間を通 算した上限時間を就業規則に盛り込むなどの対応をとることが望ましいと 考えられる。
〇 上記は、あくまで、考えられる選択肢の例示である。その他、労働者自身が 月の総労働時間をカウントし、上限時間に近くなったときに各事業主に申告 すること等も考えられる。また、副業・兼業の場合の上限規制の在り方につい てどうしていくかについては、健康管理や割増賃金などその他の部分でどの ような選択肢をとるかによっても、変わり得ると考えられることに留意が必要である。
(4)割増賃金について→その支払いのために、(3)の上限規制と同等以上 の厳密な労働時間管理を実施することが必要となる。しかし、日々、他の事 業主の下での労働時間を把握することは、企業にとって、実施することが非 常に困難であって、結果として、@違法状態が放置され労働基準法に対する 信頼性が損なわれかねないこと、A別の事業主の下で働く場合に、現行の通 り労働時間を通算して割増賃金の支払い義務があることが、時間外労働の抑 制装置となっていない面もあること等を踏まえ、制度の見直しの方向性とし ては、例えば、以下のようなことが考えられる。↓↓
@ 労働者の自己申告を前提に、通算して割増賃金を支払いやすく、かつ時 間外労働の抑制効果も期待できる方法を設けること(例:使用者の予見可 能性のある他の事業主の下での週や月単位などの所定労働時間のみ通算し て、割増賃金の支払いを義務付けること)
・ 現行の制度においては、契約の先後関係や所定外労働時間の実労働の順 序で割増賃金の支払いが決まることになっており他の事業場における労働 時間に影響を受けるが、他の事業場における実労働時間を日々把握するこ とは困難であることから、契約の先後関係や所定外労働時間の実労働の順 序に影響を受けず、予見可能性のある仕組みとすることが考えられる。 ・ そうした場合、例えば、労働者からの自己申告により把握した他の事業場 の所定労働時間のみを前提として、自社における所定労働時間と通算し、割 増賃金の支払いは、自社における所定外労働時間について対象にすること にすると、使用者の予見可能性を高めることが可能になる。もちろん、この 場合、割増賃金の支払いが義務付けられるのは、自らの労働時間と他の事業場の所定労働時間の合計が法定労働時間を超えていることが前提。・また、例えば日ごとではなく週単位の法定労働時間を上回るかどうかにより、割増賃金の支払いを行うようにすれば、実務上も簡易に行うことが可能になる。 ・ このようにした場合、自社における所定外労働時間の変動が自ら支払う割増賃金の増減に影響するようになるので、割増賃金の時間外労働の抑制装 置としての機能がより働きやすくなると考えられる。 ・ 一方で、様々な働き方がある中で、所定労働時間が日々変化する労働者も いることから、実務上の手間がそれほど軽減されない場合もあり得る。また、割増賃金の支払いを抑制するため、自社の所定労働時間を長めにとるよう になる可能性があることに留意が必要。・また、労働者の自己申告を前提として、割増賃金を通算する制度とする 場合、企業にとっては、(2)や(3)に比べ、特にその客観性が重要になると考えられる。
A 各事業主の下で法定労働時間を超えた場合のみ割増賃金の支払いを義務 付けること
・各事業主の下での法定外労働時間についてのみ割増賃金の対象とする場合、予見可能性は高まり、労働時間管理の煩雑さは解消されるほか、自社 の労働時間のみを考慮すればよいことから、割増賃金の時間外労働の抑制 措置はより働きやすくなる。 ・ 一方で、この場合、現行の解釈における取扱いを変更することになることから、労働者の保護に欠けることのないよう、上限規制や労働者の健康 確保措置を含めた全体の措置の中での対応にすることが求められることに 留意が必要。・また、別の事業主の下で働く場合と異なり、同じ事業主との間で複数の異 なる労働契約を締結する場合や、同一の事業主の複数事業場で働く場合、事 業主間で同一の労働者を雇用していることについて明確な認識がある場合 等については、法の潜脱とならないよう、通算することが適切だと考えられる。
〇 上記は、あくまで、考えられる選択肢の例示。その他、割増賃金の支 払いについて、日々計算するのではなく、計算・申告を簡易化すること等も考えられる。
5)他の事業主の下での労働時間の把握方法について
〇 上記(2)〜(4)のいずれについても、他の事業主の下での労働時間の把 握方法については、労働者のプライバシーへの配慮や HR Tech(Human Resource Technology)の普及状況等に鑑みると、労働者の自己申告が基本となると考えられる。労働者の同意もあり、事業主間でのやりとりでできる場合には、それを妨げるものではないと考えられる。
〇 一方、労働者の自己申告を基本とするとしても、1(4)で触れたように、 副業・兼業の事実のみ申告し、労働時間数の申告を拒む場合はどうするのか、 また、どの程度の客観性を求めるのか、例えば何らかの証明書を求めるのかに ついては、(2)〜(4)でどのような選択肢をとるのかによっても変わり得 ると考えられる。
○ また、どのようなタイミング、どのような頻度で労働者の自己申告を求める かについては、(2)〜(4)でどのような選択肢をとるのかによっても変わ り得ると考えられ、引き続き検討をしていくことが必要である。
(6)その他 →@主に年収の高い層が、企業内だけでは身につけられない 幅広い経験を身につけ、生産性の向上やイノベーションを進めるようなもの、 A主に年収の低い層が、収入面の理由から行うものがある。これらについて、 取り扱いを変えることも考えられるが、実際には区分の基準を検討すること は困難だと考えられる。
〇 また、副業・兼業は雇用の場合だけでなく、非雇用の場合もあるが、本業も 副業・兼業も雇用の場合は、指揮命令下に入って残業せざるを得ないというこ ともあり、労働法制で保護する必要性もあると考えられる。しかし、雇用の副 業・兼業の保護を図ろうとして厳格な規制になってしまうと、労働者が副業・ 兼業をしにくい、企業が副業・兼業を行う者を雇わないなどにより、副業・兼 業の非雇用化が進み、かえって労働法制の保護が及ばない事態を招きかねず、 かえって収入面から掛け持ちをしている者の不利益に繋がりかねないことに も留意が必要である。

Y.おわりに→本検討会においては、労働時間法制の歴史的経緯、企業や労使団体へのヒアリング、諸外国の視察結果等を踏まえ、精力的に議論を行い、以上の通り、検討結果をとりまとめたところである。この報告書を踏まえ、労働者の健康確保や企業 の予見可能性にも配慮した、副業・兼業の場合の実効性のある労働時間管理の在 り方について、労使の参画の場である労働政策審議会において、引き続き積極的な議論が行われることを期待する。

次回は、「参考資料1:第7回検討会における委員の主なご意見」からで第8回最後の資料てす。


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